J.JPn.Acad.Mid.,Vo1.6,No.1,PP.23∼30,1992
原
著
分 娩 進 行 に伴 う産 痛 の 強 度
―主観的疼痛 と子宮収縮の関連 ―
ProgressionofLaborPaininPrimiparasandMultiparas -AnalysisofSubjectiveLaborPainandUterinecontractions― 我 部 山 キ ヨ 子(KiyokoKABEYAMA)* 近 藤 潤 子(JunkOKONDO)** 要 約 初 産 婦41人 と経 産 婦64人 に対 し,分 娩 中 の5時 期(潜 伏期・活 動 期・極 期・分 娩 第二 期・分 娩 第三 期) の 産 痛 の 主 観 的 強 度 を,TheVisualAnalogueScale,TheVerbalRatingScale,TheMcGill-Melzack PainQuestionnaireの3つ の 主 観 的疼 痛 の 測 定 用 具 を用 いて 測 定 した 。 そ の 中 の44人 の 産 婦 に対 して, 潜 伏 期・活 動 期・極 期 で は主 観 的 疼 痛 の測 定 と同時 期 に,分 娩 第二 期 で は 単独 に,電 気 生 理 学 的 測 定 装 置 を用 い て,30分 間 子 宮 収 縮 の ピー ク値 を測 定 し,両 者 の 関 係 を調 べ,次 の 結 果 が得 られ た。 初 産 婦 で は極 期 で 最 も疼 痛 得 点 は高 く,経 産 婦 で は分 娩 第 二 期 が 最 も疼 痛 得 点 は高 か っ た。初 産 婦 と 経 産 婦 の比 較 で は 分 娩 第 一 期 まで は,初 産 婦 の 疼 痛 得 点 が 経 産 婦 に比 べ て有 意 に高 く,分 娩 第二 期 と分 娩 第 三期 で は,反 対 に経 産 婦 が 有 意 に疼 痛 得 点 が 高 か っ た。 主 観 的 疼 痛 得 点 と子 宮 収 縮 の 強 度 の 関 係 で は,初 産 婦 は 活 動期 に,経 産 婦 は活 動 期 と極 期 に比 較 的 高 い相 関 が 得 られ た。 Abstract Thepurposeofthisstudywastosystematicallydescribethedimensionsofpainduringthe progressionoflaborinprimiparasandmultiparas.Thecharacteristicsofpainwereoperational-izedasresponsesof41primiparasand64multiparasto3self-reportmeasures,theVisualAnalogue Scale,theVerbalRatingScaleandtheMcGill-Melzackpainquestionnaire,whenthecerviwas dilated0-3cm,4-7cm,8-9cm,10crnandthirdstage.With440utof105laboringwomen,theuterine contractionsweremeasuredbytocographiesexceptStageIII. Thefindingsofthisstudyaresummarizedasfollows. 1.primiparashadmostintensepainindilationof8-9cmandmultiparashadmosntensepaininsta
ge.
2.PrimiparashadsignificantlymorepaininStagesIthanmultiparas. 3.MiltiparashadsignificantlymorepainduringStagesⅡandⅢthanprimiparas. 4.Threeself-reportmeasurestendedtobebettercorrelatedwiththeuterinecontractionsin *京 都 大 学 医 療 技 術 短 期 大 学 部 助 産 学 特 別 専 攻(SpecialDivisionofTheScienceofMidwifery ,CollegeofMedical Technology,KyotoUniversity) **聖 路 加 看 護 大 学(St .Luke'sCollegeofNursing) 日本助 産 学 会誌 第6巻 第1号(1992) 23分 娩 進 行 に伴 う産 痛 の 強 度 dilationof4-7cmandof8-9cm. Itissuggestedthattheanalysesoflaborpainbybothsubjectiveandobjectivemethodsmaygain profoundknowledge. Iは じ め に 産 痛(分 娩 時 の 痛 み)は,人 類 生存 の歴 史 と と もに 存 在 した が,そ の 科 学 的 研 究 は欧 米 で は 近 年 始 め られ たば か りで,日 本 に お い て は ほ とん ど な され て お らず,産 痛 の 実 態 は ほ とん どわ か って い な い とい うの が 現 状 で あ る。 産痛 の 解 明 が 進 ん で い な い原 因 に は,第1に, 痛 み は 定 義 が 明 確 で な く,測 定方 法 が 確 立 して い な い こ とが 挙 げ られ る。 痛 み は,生 理 的(感 覚 的) 性 質 と感情 的性 質 の2つ の 側 面 を含 ん で い る とい わ れ1),生 理 的側 面 に つ い て は,産 痛 研 究 の 領 域 で は,客 観 的 測 定法 の1つ と して子 宮 収 縮 を測 定 し て きた2),3)。しか し,痛 み は 元 来 そ の 人 の 主 観 的 な 感 覚 で あ り,感 覚 的側 面 と感情 的 側 面 の ど ち らを も測 定 す る必 要 が あ る。ま た,子 宮 収 縮 と主 観 的 強 度 の 関連 に つ い て は,外 国 にお いて ただ1件 の 報 告4)が な され て い るの み で,ほ とん ど調 べ られ て い な い。 第2に,従 来 の産 痛 研 究 は,ほ とん どが 産 後 や 分 娩 初 期 の1回 の み の測 定 で あ るが,産 痛 は分 娩 開 始 か ら分 娩 終 了 ま で,そ の 様 相 が 刻 々 と変化 し, 一 時 期 を と らえ た だ け で は ,そ の 実 態 が 把握 で き な い ため,分 娩 の 全時 期 を 通 じて,少 な くと も複 数 回 の 調 査 が 必 要 で あ る。 II研 究 目 的 以上 の よ う な問 題 の 所 在 と研 究 の 必要 性 を踏 ま え,本 研 究 は以 下 の こ とを 目標 と した。 1.分 娩 進 行 に伴 う産 痛 の 主 観 的強 度 の推 移 を調 査 す る。 2.産 痛 の 主観 的 強 度 と電 気 生 理 学 的 測 定 装 置 に よる子 宮 収 縮 の 関係 を検 討 す る。 Ⅲ 前 提 1.分 娩 に伴 う痛 み の 知覚 は,対 象 が 表 現 す る範 囲で 測 定 で き る。 主観 的疹 痛 は,痛 み の 全 体 を 測 定 して い る。 2.限 界 は あ るが,陣 痛 の 強 度 は,客 観 的 に測 定 す る こ とが で きる。 電 気 生 理 学 的 測 定 装置 に よ る測 定 は,子 宮 収 縮 を測 定 す る もの で,痛 みの 全体 を測 定 す る もの で は な い。 IV研 究 の 対 象 と 方 法 1.調 査 対 象 1)産 痛 の 主観 的 強 度 の 調 査 対 象 調 査 対 象 は,神 奈川 県 に あ る総 合 病 院 の産 婦 人 科 を受 診 し,調 査 の 趣 旨 に 同意 の得 られ た妊 娠36 週 以 降 で,1991年6月15日 か ら9月10日 まで に分 娩 した産 婦 の計177人 で あ る。 対 象 は,以 下 の 条件 を満 た して い る。 ① 単 胎 で,正 常経 膣 分娩 を した者 ② 陣 痛 促 進 剤 を使 用 しな か っ た者 ③ 筋 無 力 症 の な い者 ④ 胎 盤 圧 出法 や 胎 盤 用 手 剥 離 を受 け なか った 者 ⑤ 日本 語 を母 国 語 とす る者 2)子 宮収 縮 の 調 査 対 象 電気 生 理 学 的 測 定 装 置 は,腹 壁 等 の介 在組織 を 通 して 測 定 す る ため,対 象 の 身体 条 件 に影響 され るこ とか ら,上 記1)の 対 象 の 中 で,以 下 の条 件 を 満 た す産 婦44人 で あ る。 ① 非 妊 時 の カ ウプ 指 数 が24以 下 の 者 ② 妊 娠 中 の 体 重 増 加 が12kg以 下 の者(松 本5)に よれ ば,日 本 人 妊 婦 の 妊 娠 中 の体 重増 加 は12 kg以 下) 2.測 定 用 具 1)産 痛 の主 観 的 強 度 の 測 定 用 具 測 定 用 具 と して,以 下 の4方 法 を使 用 した。 (1)10cmのVisualAnalogueSeale(以 下,VAS) VASは 一 方 に 「痛 み は な い 」,他 方 に 「これ 以 上 の 痛 み は な い くらい 強 い」 を配 して い る。 対 象 自 らが 自分 の 痛 み の程 度 を,10cmの 直線 上 に指 で 指 し示 して,そ の 中心 を測 定 す る もの で あ る。「痛 み は な い」を0,「 これ 以 上 の 痛 み は な い くらい 強 い 」 を100と して,点 数 化 した 。 (2)VerbalRatingscale(以 下,VRS) 痛 み は な い=0,軽 度=1,中 程 度=2,強 度= 3,激 烈 な痛 み(こ れ 以 上 の 痛 み は な い くら い強
分娩 進 行 に伴 う産痛 の 強 度
い)=4と,5段 階 に分 け,数 字 と言 葉 の 両 方 を併 記 して,対 象 に 自分 の 現 在 の 痛 み の程 度 を選択 し
て も らっ た。
(3>McGill-Melzack Pain Questionnaire(以 下 MPQ) MPQ6)は 感 覚 的 ・感 情 的 ・評 価 的 ・そ の 他 の性 質 を表 す4つ の 言 語群(合 計78の 言 語)か らな る。 MPQは 日本 で は信 頼性 ・妥 当性 の 検 証 は さ れ て い な い が7),パ イ ロ ッ トス タデ ィで選 択 され た 言 葉 に 固有 の 傾 向 が あ り,分 娩 の時 期 に応 じて疼 痛 得 点 も増 加 した の で,測 定 用 具 と して採 用 した。 評 価 方法 は,各 言 語 群 の うち,最 も弱 い表 現 で あ る初 行 を1と し,次 行 を2と す る よ うに ラ ンク 値 をつ け,全 言 葉 か らの 総 合 ス コア を求 め た。 な お,各 言 語群 の 中 で,複 数 の 言 葉 が選 ば れ た場 合 に は,最 も後 に配 置 され た言 葉(す な わ ち,項 目 間 で最 も高 得 点 の 言 葉)に つ い て点 数 化 した。 (4)分娩 直 後 の 後 向 きの 総 合 評 価 さ らに,産 痛 を総 合 的 に評 価 す る た め に,分 娩 終 了後2時 間 以 内 に,分 娩 経 過 中 に最 も痛 か っ た 時 期 とそ の持 続 時 間 を,統 制 型 の 質 問 紙 に よ っ て 後 向 きの 聞 き取 り調 査 を行 っ た。 2)子 宮 収 縮 の 測 定 用 具,測 定 法,部 位 子 宮 収 縮 の測 定 用 具 につ い て は,(1)マ ル チ式, ア ク トカル デ ィオ グ ラ フMT-430,TOITU,(2)分 娩 監 視 装置 ・MT-810B,TOITU,テ レ メ ー タ受 信 機 ・MT-271を 使 用 した。 測 定 時 の 体 位 は,仰 臥 位 か側 臥 位 と し,同 一 対 象 で は異 な っ た時 期 の 測 定 にお い て も同 一 体 位 と した。 ま た,ベ ル トの 装着 は,ベ ル トを腹 壁 に ピ ッタ リ とあ て,そ れ よ り も3cmき つ く装 着 し,装 着 強 度 を統 一 した。 さ らに,鈴 村8)に よ る と,分 娩 第 一 期 で は 子 宮 底 優 位 の 収 縮 が93%に 認 め ら 図1子 宮収縮 曲線 の測定部 位 れ,分 娩 第二 期 には 子 宮 底 優 位 が 少 な くな る こ と か ら,測 定 用 の トラ ンス ジ ュ ーサ ー の部 位 は,分 娩 第 一 期 で は 子 宮底 部,分 娩 第 二 期 で は 子 宮 底 部 よ り もや や 下 方 の臍 窩 を避 け た腹 部 の 中央 付 近 と した。 子 宮 収 縮 曲線 の測 定部 位 は,Corlietal.9)の 研 究 に よ る と,ピ ー ク値 がVASと の 相 関 が 最 も高 い こ とか ら,ピ ー ク値 の み を測 定 した 。 図1は, ピー ク値 の 測 定 部 位 で あ る。 3.調 査 時 期 1)産 痛 の 主 観 的 強 度 の 測 定 時 期 VAS・VRS・MPQの 調 査 時 期 は フ リー ドマ ン の 頸 管 開 大 曲 線 に従 い,子 宮 口開 大 度 に よ って, (1)潜伏 期(子 宮 口開 大3cm以 下),② 活 動 期(子 宮 口開 大3.5∼8cm未 満),(3)極 期(子 宮 口開大8∼ 10cm未 満),④ 分 娩 第二 期(子 宮 口 開大10cm以 上 児 娩 出 まで),⑤ 分 娩 第三 期(児 娩 出 後 か ら胎 盤 娩 出 まで)の5期 に分 け た 。 な お,子 宮 口 開大 度 の判 定 は,医 師 お よび 助 産 婦 の 診 察 に よ っ た。 また,分 娩 第 二期 と第 三 期 は,分 娩 後 の 処 置 終 了後 か ら分 娩 後2時 間 以 内 の 間 に聞 き取 り調 査 を 行 い,分 娩 第三 期 に 関 して は,同 じ質 問 紙 重 複 に よる対 象 へ の波 及 効果 を考 慮 して,VASの み を 行 っ た。 2)子 宮 収 縮 の測 定時 期 子 宮 収 縮 の 測 定 時 期 は,分 娩 第 一 期 で は質 問 紙 の調 査 と同時 期 に30分 間 測 定 し,分 娩 第 二 期 で は 努 責 開 始 前 に 単独 で30分 間 測 定 した 。 4.分 析 方 法 初 産 婦 と経 産 婦 は分 娩 に 関 す る諸 条 件 が 異 な る た め,両 群 の 特 徴 を相 殺 しな い よ うに,2群 に分 け て分 析 した。分 析 に は,統 計 学パ ッケ ー ジHAL-BAUを 使 用 し,判 定 は 有 意 確 率 を5%と した。
V結
果
1.対 象 数 妊 娠 中 に同 意 の 得 られ た177人 の うち,調 査 の 趣 旨 と条 件 に合 致 したの は,初 産 婦41人,経 産 婦64 人 の 計105人 で あ っ た。 分 娩 の 時 期 別 対 象 数 は,潜 伏 期 で は29入,活 動 期 お よび 極 期 で は87人,分 娩 第 二 期 で は105人,分 娩 第 三 期 で は101人 で あ る。潜 伏 期 に対 象 数 が 少 な い の は,対 象 が 入 院 した と きに は す で に その 時 日本助 産 学会 誌 第6巻 第1号(1992) 25分娩進行 に伴 う産痛の強度 表1対 象 の背景 期 を過 ぎて い た た め で あ る。 ま た,活 動 期 と極 期 に も対 象 数 がや や 減 少 して い るが,そ れ は分 娩 進 行 の早 さの た め に,診 察 で その 子 宮 口開大 時 期 を 把 握 で きず,デ ー タが 収 集 で き なか っ た もの で あ る。 2.対 象 の 背 景 出 産 回 数 は,表1に 示 す よ う に,初 産 婦 が41人 (39.0%),一 経 産 が49人(46.7%),二 経 産 が15人 (14.3%)で あ っ た 。対 象 の 平 均 年 齢 と 標 準 偏 差 は, 初 産 婦 で は26.8±3.8歳,一 経 産 で は30.7±3.9歳, 二 経 産 で は31.9±2.8歳 で,1990年 の 厚 生 省 の 「人 口 動 態 統 計 」10)に よ る と,第 一 子 の 母 親 の 年 齢 は 27.0歳,第 二 子 は29.5歳,第 三 子 は31.8歳 で あ る の で,ほ ぼ 同 値 で あ っ た 。 3.分 娩 進 行 に 伴 う産 痛 の 実 態 1)分 娩 の 時 期 別疼 痛 得 点 表2は,分 娩 の 時 期 別,初 産 ・経 産 別疼 痛 得 点 を 示 し た もの で あ る。初 産 婦 は 分 娩 第 一 期 ま で は, VAS・VRS・MPQと も に 各 前 の 時 期 よ り も疼 痛 得 点 は 有 意 に 上 昇 し た が,分 娩 第 二 期 に は 有 意 に 下 降 し た 。 分 娩 第 三 期 も有 意 に 下 降 し,潜 伏 期 の 図2初 産経産 別痙 痛得点 の推移 VASよ り も低 くな って い た。 経 産 婦 で は分 娩 第二 期 まで,VAS・VRSは 有 意 に上 昇 を 続 け て い た 。MPQは 分 娩 第 一 期 で は 有 意 に上 昇 したが,分 娩 第 二期 は極 期 よ り もや や 減 少 した。 分 娩 第三 期 で も有 意 に減 少 したが,初 産 婦 と異 な り,潜 伏 期 よ りも疹 痛 得 点 は高 くな っ て い た。 2)初 産 ・経 産 別疼 痛 得 点 初 産 婦 と経 産 婦 の疼 痛 得 点 を比 較 す る と,分 娩 第 一 期 ま で は 図2に 示 す よ う に,3種 類 の 測 定 用 表2分 娩 の 時期 別疼 痛 得 点(VAS・VRS・MPQ)の 平 均.標 準 偏 差 お よ び 検 定 注)*P<0.05,**P<0.01,***P<0.001
分娩進行に伴 う産痛の強度 図3出 産回数 別疼痛 得点の推移 具 で,初 産 婦 の疼 痛 得 点 が 経 産 婦 よ り も高 く,特 に 活 動 期 と極 期 で は,初 産 婦 の 得 点 が 有 意 に 高 く な っ て い た(活 動 期:い ず れ もP<0.05,極 期: 同P<0.01)。 分 娩 第 二 期 で は,VASとVRSの 2種 類 の 得 点 に お い て,分 娩 第 一 期 と は 反 対 に 経 産 婦 が 初 産 婦 よ り も 有 意 に 高 く な っ て い た が (VAS:P<0.05,VRS:P<0,01),MPQで は ほ ぼ 同 値 で あ っ た 。 分 娩 第 三 期 で も,経 産 婦 が 初 産 婦 よ り も 有 意 に疼 痛 得 点 が 高 く(P<0.05),初 産 婦 と経 産 婦 で は,分 娩 第 二 期 を境 に疼 痛 曲 線 の 形 が 異 な っ て い た 。 3)出 産 回 数 別 にみ た疼 痛 得 点 図3は,出 産 回 数 別疼 痛 得 点(VAS)の 推 移 を 示 した もの で あ る。 分 娩 第一 期 の 全 時 期 で 出 産1 回 目が疼 痛 得 点 は最 も高 く,次 いで2回 目が 高 く, 3回 目が最 も低 く,特 に極 期 で は 有 意 の 差 が 認 め られ た(P<0.05)。 分 娩 第 二期 と第 三 期 は,反 対 に疼 痛 得 点 は1回 目が最 も低 く,次 い で2回 目が低 く,3回 目が 最 も高 く(第 二 期:P<0.05),出 産 回 数 に よ っ て き れ い な得 点 分 布 が 認 め られ た。VRSとMPQで 図4初 産経産 別最 も強 い疼痛 の持続 時間 も,同 じ結 果 が 得 ら れ た 。 4>分 娩 直 後 の 後 向 き の 総 合 評 価 (1)最 も強 い疼 痛 の 持 続 時 間 図4は,初 産 ・経 産 別 最 も 強 い疼 痛 の 持 続 時 間 を 分 娩 か ら 遡 及 的 に み た も の で あ る。 初 産 婦 で は,30分 以 上1時 間 以 内 が 最 も多 く16人(39%) で,次 い で2時 間 以 内 が10人(24.4%)で あ っ た 。 最 も強 い 疹 痛 が2時 間 以 上 続 い た と 答 え た 入 は12 人(29.3%)で,6時 間 以 上 続 い た と答 え た 人 も い た 。 経 産 婦 で は,30分 以 内 と答 え た 人 が 最 も 多 く40入(62.5%)で,次 い で30分 以 上1時 間 以 内 が 多 く16人(25.0%)で,両 者 で56人(87.5%) に も 及 ん だ 。 最 も強 い疼 痛 が2時 間 以 上 続 い た と 答 え た 人 は,わ ず か に1人(1.6%)で あ っ た 。 (2)疼 痛 が 最 も強 い 時 期 図5は,産 痛 の 最 も強 い時 期 を,分 娩 か ら遡 及 図5産 痛 の最 も強 い時期 日本助 産 学会 誌 第6巻 第1号(1992) 27
分娩 進 行 に伴 う産痛 の強 度 的 にみ た もの で あ る。 初 産 婦 で は,分 娩 の2時 間 以 上 前 か らが16人(39.0%)と 最 も多 く,次 い で 分 娩 の2時 間以 内 が11入(26.8%)で,両 者 で65.8 %に 及 ん だ。 経 産 婦 で は,分 娩 の1時 間 以 内 が28 人(43.8%)で 最 も多 く,次 い で分 娩 時 の み が24 人(37.5%)で,両 者 で81.3%に も及 ん だ 。 こ の よ うに,最 も強 い と訴 え た時 期 は,初 産 婦 で は 分娩 か らや や 離 れ た時 期 で,経 産 婦 で は分 娩 の時 期 に 限 局 して いた 。 4.主 観 的疼 痛 得 点 と子 宮 収 縮 の 関係 1)主 観 的疼 痛 得 点 と子 宮 収 縮 の 変 化 図6は,子 宮 口開 大 度 別 子 宮 収 縮 回 数 ・子 宮 収 縮 の ピー ク値 お よびVASの 推 移 を示 した もの で あ る。 子 宮収 縮 回 数 は子 宮 口の 開 大 に 伴 っ て増 加 し,子 宮 収縮 の ピー ク値 も多 少 の 増減 はみ られ る が,子 宮 口の 開 大 に伴 っ て上 昇 して い た。 一 方, VASは 陣 痛 開 始 の 当初 で あ る子 宮 口開 大1∼2 cmの 時 に は,子 宮 収 縮 の ピー ク値 に比 べ て 高 く評 価 され て い た。 2>主 観 的疼 痛 得 点 と子 宮 収 縮 の 相 関 表3は,時 期 別VAS・VRS・MPQ・ 子 宮 口 開 大 度,子 宮 収縮 回 数,子 宮 収 縮 の ピー ク値 の 相 関 で,ほ ぼr=0.5以 上 を示 した もの で あ る。初 産 婦 にお いて は,活 動 期(N=11)で は,VASと ピー クの 最 大 値 はr=0.582,VASと ピー クの 平 均 値 はr=0.565で,有 意 で は な い が 比 較 的 高 い値 が 得 られ た。 他 の 時 期 で は,有 意 な相 関 は な か っ た。 図6子 宮口開大度 別子宮収 縮回数 ・ ピー ク値 ・VASの 推移 表3時 期 別VAS,VRS,MPQ,収 縮 回 数, 子 宮 収 縮 の ピ ー ク値 の 相 関 注)*P<0.05 経 産 婦 に お い て は,活 動 期(N=16)で は,VRS と ピ ー ク の 最 大 値 はr=0.559(P<0.05)で 有 意 な 相 関 を 示 し,極 期(N=18)で も,VRSと ピー ク の 最 大 値 で はr=0.526(P<0.05)と 有 意 な 相 関 を 示 した 。 分 娩 第 二 期(N=10)で は,MPQと ピ ー ク の 最 大 値 はr=0.674(P<0.05)で,有 意 な 相 関 が 得 られ た 。 一 方 ,子 宮 収 縮 回 数 と疼 痛 得 点 の 関 係 で 有 意 な 相 関 が 得 ら れ た の は,経 産 婦 の 極 期 の み で,子 宮 収 縮 回 数 とMPQの 間 の 相 関 は,r=0.488(P< 0.05)で あ っ た 。 VI考 察 1.分 娩 進 行 に 伴 う 産 痛 の実 態 1)分 娩 の 時 期 に よ る 産 痛 の 強 度 の 変 化 分 娩 進 行 に 伴 う疼 痛 得 点 の 推 移 は,Gaston-Jo-hanssonら11)やLowe12)が 報 告 し て い る 。 初 産 婦 に お い て は,産 痛 が 最 も強 い 時 期 は調 査 者 に よ っ て 異 な っ て い た が,Gaston-Johanssonら は,極 期 の 産 痛 が 最 も強 い と報 告 し て お り,本 調 査 の 結 果 と 同 じ で あ っ た 。 こ の よ う に 初 産 婦 が,子 宮 収 縮 の 最 も強 い 分 娩 第 二 期 で な く,分 娩 第 一 期 の 終 わ り で あ る極 期 を
分娩進行に伴 う産痛の強度 最 も強 い と評 価 した 理 由 は,分 娩 第一 期 は初 め て 産 痛 を経 験 し,進 行状 態 も,い つ 分 娩 が終 了 す る の か も予 測 が た た な い こ と,極 期 に は児 頭 の 下 降 に よっ て 子宮 頸 神 経 節 が 刺 激 され,陣 痛 は ます ま す強 くな り,陣 痛 の た び に腹 圧 が 引 き起 こ され る 現 象 が 生 じ,一 人 で は耐 えが た い状 況 にな るが, この 時期 は分 娩 第 二 期 の よ うに 常時 助 産婦 が傍 ら につ いて ケア をす る状 態 とは 異 な り,ケ ア が分 娩 第 二 期 よ りや や 希 薄 な状 況 に あ る こ と等 が,大 き な原 因 で は な い か と推 測 され る。 一 方,経 産 婦 に お い て は,前 述 の ど ち らの 調 査 で も,分 娩 進 行 に伴 っ て 産痛 が 強 くな り,し か も 分 娩 第 二 期 ま で調 べ たLoweの 調 査 で は,分 娩 第 二 期 が 最 も強 くな っ て お り,本調 査 と同 じ結 果 で, 子 宮 収 縮 の ピー ク値 の 変化 に も対 応 して い た。 し たが っ て,初 産 ・経 産 の 産 痛 の 実 態 に合 わ せ た, 特 に初 産 婦 は極 期 の ケ ア の 充 実 を図 る な どの 分 娩 管理 が重 要 で あ る。 2)疼 痛 得 点 に 与 え る出 産 回 数 の 効 果 分 娩 第 一 期 を1回 の み 調 査 した 従 来 の 報 告 で は,初 産 婦 が 経 産 婦 よ り も産 痛 が 強 い とす るの が, 一致 した 見解 で あ った が,分 娩 中 を複 数 回 調 査 し た報 告 に お い て は,必 ず し も見 解 は一 致 して い な い。 本調 査 で は,分 娩 第 一 期 に お い て は,初 産 婦 は経 産 婦 よ りも疼 痛 得 点 は高 値 で,特 に活 動 期 と 極 期 は 有 意 の差 が 認 めら れ,分 娩 第 二 期 と第三 期 で は 反対 に経 産 婦 が 初 産 婦 よ り も高 値 で,特 に分 娩 第 二期 で は 有 意 の 差 が 認 め られ,分 娩 直 後 の 後 向 き調 査 で も同 じ結 果 が 得 ら れ た 。 前 述 し た Loweは,初 産 婦 は経 産 婦 よ り も分 娩 第 一 期 の 早 期 ・活 動期 に は よ り強 い痛 み を経 験 し,分 娩 第二 期 に は よ り少 な い 痛 み を経 験 した こ とを報 告 し, 部分 的 で は あ るが 同 じ結 果 が 得 られ た。 出産 回数 が疼 痛 得 点 に及 ぼ す影 響 は,村 松13)が 335人 の 経 産 婦 の 分 娩 第 一 期 の 産 痛 を 後 向 き に調 査 し,分 娩 回 数 が増 す につ れ て 産 痛 自覚 の 程 度 が 弱 ま るこ と を報 告 して い る。 本 調 査 で は,分 娩 の 進 行 に伴 っ て前 向 き調 査 を行 っ た もの で あ るが, 同 じ結 果 が得 られ た 。 分 娩 第 一 期 に 出産 回 数 が 増 す に従 っ て,疼 痛 得 点 が 減 少 す る理 由 は,出 産 回 数 を重 ね る に従 っ て 組織 が 伸 展 しや す くな る こ とや,ま た 一 度 経 験 し て い る ため に予 測 が た つ こ と に よ る精 神 的 ゆ と り も考 え られ る。 分 娩 第 二 期 で は 出 産 回 数 が 増 す に 伴 い短 時 間 で 急 速 な組 織 伸 展 が 生 じる こ とに よる 痛 み,分 娩 第 三 期 で は 出産 回 数 が 増 す に伴 っ て強 くか つ 長 くな る後 陣痛 の影 響 な ど,機 能 的 お よび 器 質 的 原 因 が 推 測 で きる。 2.主 観 的疼 痛 と子 宮 収 縮 の 関係 Hardyら14)は 電 気 的 刺 激 に よ る疼 痛 計 を 使 用 し,鈴 村 ら15)はBallon法(内 測 法)に よ って,子 宮 収縮 の 強 さ は分 娩 進 行 に伴 っ て増 加 し,分 娩 第 二 期 が 最 も強 か っ た こ とを報 告 した 。本 調 査 で も, 分 娩 進 行 に伴 っ て 子 宮 収 縮 の ピ ー ク値 は 高 くな り,分 娩 第 二 期 が 最 も高 くな っ て い た こ とか ら, 外 測 法 で も内 測 法 とほぼ 同様 の 結果 が得 られ る こ とが 示 され た。 ま た,初 産 ・経 産 と もに,子 宮 収 縮 と産痛 の 主 観 的 強 度 の 関 係 に お い て,比 較 的 高 い相 関 値 が 得 られ た の は,初 産 婦 で は活 動 期 だ け で,経 産 婦 で は活 動 期 と極 期 の 二 時 期 で,潜 伏期 と分 娩 第 二 期 (経 産婦 で はMPQだ け は,有 意 な相 関)は 相 関 し て い な か っ た。 この こ とか ら子 宮収 縮 の 刺 激 を受 け始 め た ば か りの 潜 伏 期 に は,特 に 初 産婦 で は, その 感 覚 刺 激 を主 観 的疼 痛 と して 高 く評 価 す る傾 向 が あ る と推 測 さ れ る。 活 動 期 に 比較 的 高 い 相 関 が 得 られ た理 由 は,あ る一 定 の刺 激 を反 復 して 与 え られ る こ とに よっ て,そ の 感 覚 刺 激 を比 較 で き, 表 現 で きる よ うに な る の で あ ろ う。 しか し,極 期 に な っ て,感 覚 刺 激 の性 質 が 異 な る と,初 産 婦 は 経 験 した こ との な い刺 激 の た め に(本 論 文 で は触 れ な か っ た が,潜 伏 期 と活 動期 の 産 痛 の 性 質 は類 似 し,極 期 で は異 な る),主 観 的疼 痛 と子 宮 収縮 は 相 関 しな くな る が,経 産婦 で は 以 前 の 経 験 と比 較 して判 断 で き,相 関 した の で は な い か と考 え られ る。 分 娩 第二 期 に相 関 して い な か った の は,分 娩 第 一 期 まで は子 宮 収 縮 と主 観 的 強 度 の 測 定 は同 時 期 で あ るが,分 娩 第二 期 で は 測 定 時 期 が 異 な る こ と も関係 して い る と考 え られ る。 さ らに,子 宮 収 縮 の ピー ク の 最 大 値 ・最 小 値 ・ 平 均 値 と主 観 的疼 痛 得 点 の 関係 で は,初 産 ・経 産 と もに,特 に ピー ク の最 大 値 と有 意 な相 関 が 得 ら れ た。 こ の こ とか ら,人 は 刺激 を受 け た場 合,あ る一 定 の 時 間 内 で は最 も強 い 刺 激 を感 覚 刺 激 と し て受 け取 り,そ れ を評 価 す る と推 測 で きる。 日本 助 産 学会 誌 第6巻 第1号(1992) 29
分娩進行 に伴 う産痛の強度 VII結 論 1.分 娩 進 行 に伴 う主観 的疼 痛 の 実態 1)初 産 婦 で は,疼 痛 得 点 は分 娩 第一 期 に は潜 伏 期,活 動 期,極 期 と各 前 の 時 期 よ り も有 意 に増 加 し,極 期 で最 も高 く,分 娩 第二 期 ・分 娩 第 三 期 で は有 意 に減 少 した 。 2)経 産 婦 で は,疼 痛 得 点 は分 娩 第二 期 まで は有 意 に増 加 し,分 娩 第 二 期 が 最 も高 く,分 娩 第 三 期 に は有 意 に減 少 した 。 3)分 娩 第一 期 まで は,初 産 婦 の疼 痛 得 点 が 経 産 婦 に比 べ て有 意 に 高 く,分娩 第 二 期 と第 三 期 は, 反 対 に経 産 婦 が初 産 婦 に比 べ て疼 痛 得 点 が 高 か っ た。 4)分 娩 第一 期 で は 出 産 回 数 が 増 す に従 っ て疼 痛 得 点 が低 く,分 娩 第 二 期 と分 娩 第三 期 で は反 対 に 出産 回数 が増 す に従 って疼 痛 得 点 は 高 く,分 娩 機 転 に伴 う機 能 的 ・器 質 的 原 因 が 示 唆 さ れ た。 2.主 観 的疼 痛 と子 宮収 縮 の 関 係 1)主 観 的疼 痛 と子 宮収 縮 の 関 係 で は,初 産 婦 の 活 動 期 と経 産 婦 の活 動 期 と極 期 に比 較 的 高 い相 関 関 係 が得 られ,し か も経 産 婦 で は 有意 な相 関 が 得 られ た。 2)ま た主 観 的疼 痛 は,特 に子 宮 収 縮 の ピー ク の 最 大 値 との相 関 が高 く,あ る一 定 の 時 間 内 で は, 産 婦 は最 も強 い感 覚 刺 激 に反 応 し,評 価 す る こ とが 示 唆 され た。 3)さ らに,子 宮 収 縮 回 数 は 経 産 婦 の 極 期 に お い て,MPQと の み有 意 な相 関 が 認 め られ,収 縮 回 数 の 増 加 は,痛 み の反 応 成 分 で あ る感 情 的性 質 に作 用 す る こ とが示 唆 され た。 VIIお わ り に 以 上 の こ とか ち,初 産 婦 にお い て は極 期 の ケ ア の 充 実,経 産 婦 に お い て は分 娩 第 二 期 お よび分 娩 第 三 期 の 産 痛 軽 減 の た め の ケ アの 充 実 な ど,産 痛 の 実 態 に即 した援 助 法 を早 急 に確 立 す る必 要 が あ る。 こ の よ う に産 痛 に 実 証 的 な 分 析 を 加 え る こ と は,産 痛 の 予 期 的指 導 に非 常 に有 用 で,産 婦 の 安 楽 ケ ア の 向上 の基 礎 を な す もの で あ る。 謝 辞 稿 を終 わ るに臨 み,研 究施 設 を提 供 して いただ き ま した 国家公務 員共済 組 合連 合会稲 田登 戸病院 産婦 人科 部長 水川春 男 先生,産 婦 人科 婦 長 中本 加寿代 氏 に心 か ら感 謝 い た します 。 引用文献
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