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もうひとつの住まい方のすすめ

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Academic year: 2021

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(1)第2章 人口縮小社会に向けて. もうひとつの住まい方のすすめ. An Encouragement of Alternative Housing and Living 小林秀樹. KOBAYASHI Hideki. 千葉大学大学院工学研究科. Graduate School of Engineering, Chiba University. もうひとつの住まい方推進協議会. Alternative Housing & Living Association. 最近、「集まって住む」ことの良さを求める動きが注目され. 2.今日、 共助が再評価されている. るようになった。具体的には、高齢者が集まって暮らす住ま. しかし今日、衰退した共助をもう一度見直す動きが強まって. い、子育て家庭のシェアハウス、居住者参加による住まいづく. いる。その理由は、自助の不安定さと、財政難による公助の縮. り、団地での助け合い、若者のルームシェア、等々である。さ. 小である。まず、公助についてみてみよう。周知のように、人. らに、東日本大震災を契機に、絆やコミュニティの大切さが指. 口減少により経済が縮小に向かう一方で、少子高齢化によって. 摘されている。これらの動きは一過性ではなく、大きな時代変. 福祉需要が増えることは確実とされている。その結果、一人当. 化の表れであると考えられ、もうひとつの住まい方の背景と. たりの福祉予算は縮小せざるをえない。すでに多くの人々が、. なっている。. 年金と福祉の将来に懸念をもっている。それに備えるために、 私たちはどのようにすればよいのだろうか。それは、福祉の縮. 1.時代とともに拡大してきた自助と公助. 小があっても生き抜けるように、「安上がりでも心豊かな暮ら. 地域における人と人のつながりは、これまで衰退の一途をた. しの実現」を模索することであろう。とはいえ、そのような暮. どってきた。とくに、サラリーマン世帯にとっては、仕事によ. らしを自助によってのみ実現することは容易ではない。その理. る地域のつながりは乏しく、子育てを終えると地域との関係を. 由は、自助の領域も不安定になっているからである。. 失いやすい。もちろん、そのような人間関係の中では、「顔が. 今日、若者も高齢者も単身世帯が多数を占めるようになっ. 分かる範囲での助け合い」つまり「共助」の意義を見いだすこ. た。それとともに、これまで大きな役割を果たしてきた家族内. とは難しい。. の助け合いが衰退している。つまり、従来の自助とは、「世帯. 昔の村落社会では、いうまでもなく共助が中心であった。農. と市場」が向き合うことであり、そこに家族内の助け合いが加. 業生産のためには互いに助け合うことが必須であったからであ. わっていた。しかし今日の自助とは、「個人と市場」が向き合. る。しかし、その後、産業化が進展しサラリーマンが中心の社. うことである。地縁や血縁が衰退し、個人がむき出しで市場に. 会になると、「自助」の領域が拡大する。自助とは、各世帯が. さらされる厳しさに、私たちは耐えられるのだろうか。. 市場の中で、お金でサービスやモノを買う領域のことである。 それと並行して地縁や血縁は衰退し、それを補うように社会保. 3.疑似家族の時代─安心と安あがりを求めて. 障の充実が進んだ。つまり、様々な福祉サービスを受けるとい. 若者世代においては収入格差が広がり、しかも安定収入が. う「公助」の領域が拡大したわけである。こうして自助=市場. あっても将来不安が強い。そのような状況への自衛策の一つ. と、公助=福祉が拡大する中で、共助(互助を含む)はコイン. は、集まって住むことで、安上がりな生活費と生活の潤いを求. の裏表のように、次第に衰退していった(図1)。. めることであろう。それが、ルームシェアの広がりとなって表. 図1 共助の衰退と再評価の流れ. 32. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-4 No.92 2016.

(2) れている。. 担う領域は、緊急時に病院に電話するといった軽い助け合いで. 一方の高齢者はどうだろうか。現在は、相応の福祉があると. ある。しかし、そのような助け合いでも老後の不安を軽減す. はいえ、将来不安から生活費は安く抑えたいと思うことが普通. る。加えて、集まって住むこと自体がメリットを生み出す。防. だ。しかも、老後生活に必要なことは、経済と介護だけではな. 犯上の安心感、安上がりな住居費、住まいやサービスの共同発. い。寂しくない、生き甲斐があるといった情緒面が重要になる。. 注、共用施設の充実、そして仲間がいることの楽しさである。. かつては、三世代同居が、経済、介護、情緒と3拍子そろっ. これからの課題は、自助・共助・公助のうまい組み合わせで. た住まい方であった。それに代わる住まい方は何だろうか。老. ある。それにより、共助は重荷ではなく、暮らしの豊かさに転. 人ホームの増加に加えて、国勢調査では、高齢者の非親族世帯. 換するのである。その組み合わせは、ケース・バイ・ケースで. の急増がみられる(図2)。その多くは、男女の茶飲み同居と. あり、具体例を通して、その知恵を学んでいくことになろう。. みられるが、さらに高齢者のグループリビングや若者に空き部 屋を提供するホームシェアも登場している。. 5.もうひとつの住まい方の時代へ. このように、若者から高齢者まで「集まって住む」ことが模. 「もうひとつの住まい方」の様々な事例は、このような時代. 索されている。これは、いわば「疑似家族」の時代の始まりを. を先取りしている。そこでは、住まい手同士の「共同」生活の. 示唆する。もちろん、事業者が運営する老人ホームやグループ. 良さはもちろん、住宅を運営する側の「協同」の仕組みも重視. ホームにおいても、家族のような居心地の良さが求められてい. される。例えば、働き手が運営を担うワーカーズコレクティブ. る。. が注目される。さらに、異なる組織同士の「協働」も鍵を握 る。例えば、高齢者住宅を単独で建設するのではなく、福祉施. 4.重荷にならない助け合いを求めて─自助・共助・公助. 設、診療所、子育て支援施設、スーパー等の事業者と協力して. の組み合わせ. 複合拠点をつくれば、自助・共助・公助が連携したモデルとな. 今日の課題は、集まって住むことを通した「共助」の再構築. るだろう。加えて、そのような住まい方にふさわしい「共有」. である。しかし、その共助が重荷になっては長続きしない。例. 等の所有形態と資金調達の仕組みも重要になる。. えば、高齢者の住まいで同居人が寝たきりになったら介護でき. このように共同・協同・協働・共有をキーワードとして、も. るだろうか。恐らく無理だろう。やはり、その段階では、民間. うひとつの住まい方の可能性を探ることが、これからの時代を. や公的な介護サービスの導入が不可欠になる。つまり、共助が. 豊かに暮らすための鍵となるはずである。. 図2 シェア居住(非親族世帯と下宿の合計数) 右は65歳以上. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.23-4 No.92 2016. 33.

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