• 検索結果がありません。

ROSE リポジトリいばらき ( 茨城大学学術情報リポジトリ ) Title 中学生のアタッチメント スタイルといじめ行動の関連 新しいいじめアンケート作成の試み Author(s) 柳田, 美智子 ; 金丸, 隆太 Citation 茨城大学教育学部紀要. 教育科学, 68: Is

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ROSE リポジトリいばらき ( 茨城大学学術情報リポジトリ ) Title 中学生のアタッチメント スタイルといじめ行動の関連 新しいいじめアンケート作成の試み Author(s) 柳田, 美智子 ; 金丸, 隆太 Citation 茨城大学教育学部紀要. 教育科学, 68: Is"

Copied!
21
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

お問合せ先

茨城大学学術企画部学術情報課(図書館)  情報支援係

http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html

ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポジトリ)

Title

中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動の関連

― 新しいいじめアンケート作成の試み ―

Author(s)

柳田, 美智子; 金丸, 隆太

Citation

茨城大学教育学部紀要. 教育科学, 68: 533-552

Issue Date

2019-01-29

URL

http://hdl.handle.net/10109/13774

Rights

このリポジトリに収録されているコンテンツの著作権は、それぞれの著作権者に帰属

します。引用、転載、複製等される場合は、著作権法を遵守してください。

(2)

中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動の関連

― 新しいいじめアンケート作成の試み ―

柳田美智子*・金丸隆太**

(2018 年 8 月 31 日受理)

The Relations between Attachment Style and Bullying in

Junior High School Students.

Michiko Yanagita*, Ryuta Kanemaru** (Accepted August 31, 2018) 要 約  本研究は,中学生1042名を対象にいじめを把握する自作の生活アンケートとECR-RC9 を同時に実施し,中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動の関連を把握したもの である。更に分析結果から質問項目を吟味し,アタッチメントの視点をとり入れた新しい いじめアンケートの作成を試みた。いじめ被害傾向について,アタッチメント・スタイル 安定群,回避群,不安群,回避不安群の4群全ての間に1%水準で有意差が認められ,回 避不安型,不安型,回避型の順で被害を受けやすいことがわかった。また加害に関しては 回避・不安の区別によらずアタッチメントの不安定さは加害のリスクが高いということが 示された。被害でも加害でも最もリスクが高い群は,アタッチメントの回避不安群であっ た。また探索的因子分析の結果より,不安群は大人に援助要請はできるが友達にはできな い傾向が示唆された。 はじめに  Bowlbyはアタッチメントを,人生早期に限らず生涯にわたってその人自身の心的状態あるいは 他者との関係のとり結び方などを説明しうる総合的な概念として扱っていた(数井ら,2005)。ア タッチメントとは,危機的な状況に際して,あるいは潜在的な危機に備えて,特定の対象(養育 者)との近接を求め,またこれを維持しようとする生物個体の傾性であり,他の個体とくっつくこ         *茨城県教育委員会スクールカウンセラー(〒 310-8588 茨城県水戸市笠原町 978 番 6;Ibaraki Prefectu-ral Board of Education, Mito310-8588 Japan).

**茨 城 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科( 〒 310-8512 水 戸 市 文 京 2-1-1; Graduate School of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).

柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 533

(3)

とによってネガティブな情動状態を低減・調節しようとする生物行動的安全制御システムである

(Bowlby, 1969/1982)。児童期までにおいて既に,アタッチメント・スタイルが不安定型の子どもは,

社会的コンピテンスが低くいじめられやすいということがTroy & Sroufe(1987)の研究によって

報告されている。また5歳ごろまでに,養育者との関係をおおもとにして対人関係一般に関する「内

的作業モデル(Internal Working Model: IWM)」が形成される。更に,Hazan & Zeifman (1994)は,

8歳から14歳までにアタッチメント対象が両親から友人へと徐々に移行すると報告した。これら のことは,児童期から思春期の間にアタッチメント対象は主に友人が担うように変化することを意 味している。そのため,特に中学生にとっては児童期よりも友人の意味が大きくなり,その友人か ら何らかの不当な扱いを受けることは,より厳しく強い対人葛藤を引き起こすであろうと予測でき る。  このように,アタッチメントの概念は思春期のいじめ問題に適用できるものである。それだけで なくアタッチメント理論は乳幼児から成人までを対象に様々な問題に重要な示唆を与え得る概念で あり,心理臨床の現場に非常に高い親和性を持つものである。中でもスクール・カウンセリングの 現場においては,アタッチメント理論を適用することで,効果的ないじめ対応がなされる可能性が あるであろう。 問 題  いじめ被害者や加害者については,その特性や傾向,性質記述的研究は多数存在している。また, アタッチメントと,非行傾向,自己イメージ,友人関係,摂食態度,対人不安,精神的健康,レジ リエンス,アイデンティティ,自我発達危機,などとの関連がすでに検討されている。しかし,アタッ チメントの視点でいじめ当事者を記述した研究や集団データを実証的に検討した研究は日本におい てはほとんど見当たらない。一方で海外では,Troy & Sroufe(1987)が幼稚園児を対象とした研究で, 安定型は不安定型よりも相手をいじめることが少なく,いじめられず,回避型に加害行動がみられ る傾向にあったということを報告している。Nickerson et al.(2008)の10歳から14歳を対象とし た研究では,自分が被害にあっていることや,いじめを傍観しているかどうかについて,母親に対 するアタッチメントに関連があると報告した。May(2011)の8歳から13歳を対象とした研究では, 回避型は攻撃的で,不安型はいじめの標的になるという結果が得られた。大学生を対象にしたいじ めとアタッチメントの関連を調べたWilliams(2011)は,女子において,母親への回避が高く,父 親への不安が高いと心理的に攻撃的になりやすかったこと,また,母親への不安が高いと対人関係 において攻撃的になりやすかったことを示した。男子においては父親への不安が高いと攻撃的にな るという結果が出た。また男女問わず母親への不安が高いと子ども時代に同年代からのいじめの被 害者になる可能性が高かった,ということが報告されている。  アタッチメントの測度については,実証研究において,乳児を対象としたストレンジシチュ エーション法(Strange Situation Procedure: SSP)でアタッチメントが測定され(Ainsworth et al., 1978),乳幼児向けのアタッチメントQ-sort法が開発された(Waters & Deane, 1985)。その後,成 人のアタッチメント測定であるアダルトアタッチメントインタビュー(Adult Attachment Interview: AAI)が開発された(Main & Goldwyn, 1984)。更に,恋愛対象へのアタッチメントを捉えるアタッ

茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019) 534

(4)

チメントスタイル質問紙(Attachment Style Questionnaires: ASQ)が開発され(Hazan & Shaver, 1987),自己と他者の2つの評価次元から4類型を提示する4類型愛着スタイル尺度(Relationship Questionnaire: RQ)が案出された(Bartholomew & Horowitz, 1991)。

 アタッチメントの類型は,Ainsworthが回避型(Aタイプ),安定型(Bタイプ),アンビヴァレン

ト型(Cタイプ)の3分類を見出し,その後,無秩序・無方向型(Dタイプ)を追加された(Main

& Solomon, 1990)。AAIにおいては,安定自律型,アタッチメント軽視型,とらわれ型,未解決型,

分類不可能型の5つの類型に分けられている。成人のアタッチメント研究の領域から,Hazan らが

自己報告的質問紙を開発したことにより,その簡便さからアタッチメント研究の範囲が恋愛・配 偶者関係に広がった。まず,Bartholomew & Horowitz(1991)が提案した「回避」と「不安」の2

次元モデルによって4つのカテゴリーで表現された。「回避」の次元は,「他者との心理的親密性に 対する不快感,また,他者に依存にすることへの不快感,心理的独立性を維持しようとする欲求」 によって規定され,そして「不安」の次元は,「アタッチメント対象からケアと注意を求めようと する強力な欲求,また,アタッチメント対象が欲求に応じる力や意思があるのかについて持つ深い 疑念,分離や見捨てられることへの恐れ」から考えられている。Brenning et al.(2011)は,アタッ チメント回避は,自己信頼と個性を過度に強調することを必要とし,自己定義の発達課題を扱う際 に本源的ではない方法を示すもの,アタッチメント不安は,他者の利用可能性に対する信頼の欠如 と関係し,主に関係性の発達の障害を反映すると述べている。4つのアタッチメント・カテゴリーは, 「回避」次元も「不安」次元も程度の低いものを【安定型(secure)】,「回避」が高く「不安」が低 いものを【拒絶回避型(dismissing-avoidant)】,「回避」が低く「不安」が高いものを【不安型(anxious)】, 「回避」も「不安」も程度の高いものを【恐れ・回避型(fearful-avoidant)】としている。  このようにアタッチメント・スタイルが「回避」と「不安」の2次元に集約できることが示さ

れると,“親密な対人関係体験尺度(The Experiences in Close Relationships scale: ECR)”が作成さ れた(Brennan et al., 1998)。このECRは,信頼性と妥当性が認められ,現在アタッチメント・ス

タイルの測度の規準となっている。ECRは成人向けにアタッチメント対象を「親密な他者」とし

て作成され,改良を重ねECR-RS(The Experiences in Close Relationships―Relationship Structures Questionnaire)が作られた(Fraley et al., 2011)。さらに,ワーディングを児童向けに改変し子ど も 向 け のECR-RC(The Experiences in Close Relationships Scale-Revised for use with children and adolescents)が作成された(Brenning et al., 2011)。これを参考に,日本語版の児童・生徒を対象と

したECR-RC9が作成された(中尾・数井・村上, 2016)。また,ECRはアタッチメント対象を,母親, 父親,友人,恋人など選択できる質問紙となっているが,日本語版ECR-RC9は,アタッチメント 対象を児童用には「おうちの人」,中学生用には「家の人」としている。本研究ではこのECR-RC9 を使用する。  なお,測度によってアタッチメントの類型は様々な呼称を用いることとなっているが,【恐れ・ 回避型(fearful-avoidant)】は,近接と回避が同時に活性化され,そこに心理的葛藤が生じるとい う意味でSSPにおける無秩序・無方向型(Dタイプ)になぞらえられることが多い。また,AAIの 軽視型は【拒絶回避型(dismissing-avoidant)】に,とらわれ型は【不安型(anxious)】に近似する と言われている。本研究では,「回避」が高く「不安」が低い【拒絶回避型(dismissing-avoidant)】 を【回避群】と,「回避」も「不安」も程度の高い【恐れ・回避型(fearful-avoidant)】を【回避不 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 535

(5)

安群】とし,4カテゴリーを【安定群】,【回避群】,【不安群】,【回避不安群】と呼ぶこととする。 目 的  アタッチメント・スタイルによって規定される対人方略は,援助要請の際にも特徴を表す。「回避」 が強いと援助を求めることを良いと感じずに援助を受けにくく,「不安」が強いと援助を求めるが シグナルが伝わりにくく,結果として援助を受けにくいということになる。更に「回避」と「不安」 の両方ともが強い子どもには,援助を求めない,その結果援助を受けられない,という傾向がある とされている。  そこで本研究では,学校の現場においてアタッチメント理論を有効活用できるように,いじめと アタッチメント・スタイルとの関連を検討し,同時に,新しい簡便ないじめアンケートを作成する ことを目的とした。アンケートにアタッチメント・スタイルを把握できる質問項目を取り入れるこ とで,生徒にとっては答えやすく,また実施者にとってはより効果的な生徒対応を考えることので きる,簡便な質問紙であるいじめアンケートの完成を目指した。 方 法 調査対象:地域性と学校規模を考慮した合理的サンプリングによって抽出し,調査協力の承諾を得 たX県内の公立中学校3校で実施した。1・2・3年生の計1042名に質問紙を配布し,回答総数は 961名であった。性別不明,全同回答,欠損値多数など不備のある回答を除外した結果,分析対象 者を882名(1年生男子151名,1年生女子151名,2年生男子151名,2年生女子116名,3年 生男子165名,3年生女子148名)とし,有効回答率は85.0%となった。 調査時期: 2015年9~10月。 調査方法:個別自記式,集合調査形式で実施され,質問紙は各教室で担当教員により配布・回収さ れた。担当教員にはアンケート実施の手順書を配布し,実施前の説明文言を構造化した。実施時間 は約5分で,配布・回収の時間も含めて約10分で終了した。 倫理的配慮:質問紙の実施の前に,回答は自由意志に基づくこと,回答しないことによって不利益 は生じないこと,回答した内容には守秘性が保たれることを保証した説明文を回答者全員に配布し た。説明文の紙に回答済み用紙が挟まった形で回収し,研究者以外が回答を見ることのないように 配慮した。なお,本研究は茨城大学教育学部研究倫理委員会の承認を得た(承認番号15005)。 調査内容:①生活アンケート(柳田・金丸, 2015):仮定した因子とそれぞれの項目数は「被害」 11項目,「加害」5項目,「傍観」4項目,「LINE」4項目の4因子の他,「生活」6項目,「意識」6 項目,「援助資源」5項目の合計41項目である。これらの質問項目で,いじめ被害,加害,傍観の

程度や,生活習慣,意識,援助資源の有無について調べた。②ECR-RC9: the Experiences in Close Relationship inventory - Revised Childの略であり,9項目からなるアタッチメント・スタイル質 問紙である。Brenning et al.(2011)のthe Experiences in Close Relationships Scale-Revised for use with children and adolescentsを参考にして,児童・生徒用の日本語版が中尾・数井・村上(2016) によって作成された。生活アンケートとECR-RC9と合わせて合計50項目,5件法[1: とてもあて

茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019) 536

(6)

はまる~5: 全くあてはまらない]とし,質問紙はマークシート方式とした。なお,アタッチメン ト4群は回避得点,不安得点それぞれの平均点を境界として,回避得点が17.29より高く,不安得 点も11.40より高い【安定群】,回避得点が17.29より低く,不安得点が11.40より高い【回避群】, 回避得点が17.29より高く,不安得点が11.40より低い【不安群】,回避得点が17.29より低く,不 安得点も11.40より低い【回避不安群】と命名し分類した。なお回避得点,不安得点ともに,低い ほど回避または不安傾向が強いことを意味する。 結果と考察 1 )アタッチメント・スタイル4群のいじめ被害・加害平均値の差  アタッチメント・スタイル安定群,回避群,不安群,回避不安群の4群を独立変数,いじめ「被 害」得点と「加害」得点をそれぞれ従属変数とした一元配置の分散分析を行なった。4群の「被害」 得点と「加害」得点の平均値と標準偏差を表1に示す。  なお,この得点は高いほど被害にあわない,加害をしない状態を表し,低いほど被害にあう,加 害をする状態を表す。  分散分析の結果,「被害」,「加害」双方とも4群の平均値に1%水準で有意差がみられた。フィッ シャーのLSD検定による多重比較の結果,「被害」は4群すべての間に1%水準で有意な差がみら れた(図1)。また「加害」は,安定群とそれ以外の3群(不安定群)との間に有意差がみられた(図 2)。 表1.アタッチメント 4 群のいじめ被害・加害の平均値と標準偏差 図1.アタッチメント 4 群の被害尺度平均得点 図2.アタッチメント 4 群の加害尺度平均得点 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 表1. アタッチメント 4 群のいじめ被害・加害の平均値と標準偏差 安定群 (n=270) 回避群 (n=205) 不安群 (n=175) 回避不安群(n=232)

Mean SD Mean SD Mean SD Mean SD

被害因子 34.44 4.75 32.90 5.48 30.66 5.53 29.22 6.37 加害因子 12.13 2.47 11.52 2.59 11.30 2.55 11.10 2.82 26.0 27.0 28.0 29.0 30.0 31.0 32.0 33.0 34.0 35.0 安定 回避 不安 回避不安 被 害 尺 度 得 点 ** ** ** ** ** ** 図1. アタッチメント 4 群の被害尺度平均得点 10.4 10.6 10.8 11.0 11.2 11.4 11.6 11.8 12.0 12.2 12.4 安定 回避 不安 回避不安 加 害 尺 度 得 点 ** ** * 図2 アタッチメント 4 群の加害尺度平均得点 **p<.01 *p<.05, **p<.01 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 表1. アタッチメント 4 群のいじめ被害・加害の平均値と標準偏差 安定群 (n=270) 回避群 (n=205) 不安群 (n=175) 回避不安群(n=232) Mean SD Mean SD Mean SD Mean SD

被害因子 34.44 4.75 32.90 5.48 30.66 5.53 29.22 6.37 加害因子 12.13 2.47 11.52 2.59 11.30 2.55 11.10 2.82 26.0 27.0 28.0 29.0 30.0 31.0 32.0 33.0 34.0 35.0 安定 回避 不安 回避不安 被 害 尺 度 得 点 ** ** ** ** ** ** 図1. アタッチメント 4 群の被害尺度平均得点 10.4 10.6 10.8 11.0 11.2 11.4 11.6 11.8 12.0 12.2 12.4 安定 回避 不安 回避不安 加 害 尺 度 得 点 ** ** * 図2 アタッチメント 4 群の加害尺度平均得点 **p<.01 *p<.05, **p<.01 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 表1. アタッチメント 4 群のいじめ被害・加害の平均値と標準偏差 安定群 (n=270) 回避群 (n=205) 不安群 (n=175) 回避不安群(n=232) Mean SD Mean SD Mean SD Mean SD

被害因子 34.44 4.75 32.90 5.48 30.66 5.53 29.22 6.37 加害因子 12.13 2.47 11.52 2.59 11.30 2.55 11.10 2.82 26.0 27.0 28.0 29.0 30.0 31.0 32.0 33.0 34.0 35.0 安定 回避 不安 回避不安 被 害 尺 度 得 点 ** ** ** ** ** ** 図1. アタッチメント 4 群の被害尺度平均得点 10.4 10.6 10.8 11.0 11.2 11.4 11.6 11.8 12.0 12.2 12.4 安定 回避 不安 回避不安 加 害 尺 度 得 点 ** ** * 図2 アタッチメント 4 群の加害尺度平均得点 **p<.01 *p<.05, **p<.01 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 537

(7)

2 )生活アンケートの因子構造  「生活アンケート」41項目の結果に対して探索的因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行 なった。まず先行研究で採用された4因子構造を検討するために,因子数を4に指定して因子分 析を行なったところ,「被害」「関係安定」「生活」「LINE」というまとまりがみられ,「加害」や「傍 観」の項目は除外された。因子パターン行列を吟味した結果,より多い因子数が適切であることが 推測された。そこで因子数を増やして分析を続けた結果,8因子構造で結果が安定した。質問紙作 成時に仮定していた因子は「被害」11項目,「加害」5項目,「傍観」4項目,「LINE」4項目,「生 活」6項目,「意識」6項目,「援助資源」5項目であったが,8因子構造では「生活」,「意識」,「援 助資源」の項目が異なる因子のまとまりに再構成された。なお,8因子構造を採用することにより 因子によっては含まれる項目数が2~4項目と少なくなり,妥当性が低下したが,最終的には因 子の解釈可能性を重視しこの8因子構造を採用することとした。  41項目を8因子構造で分析した際に,負荷量が0.4以下になった項目を除外して再度分析した 結果を,「被害」「関係安定」「LINE」「生活(睡眠)」「加害」「傍観」「関係不安」「加害意識」と最終的 な結果として因子を命名し,項目数は30項目となった。なお,「LINE」,「生活(睡眠)」因子の項 目はいじめ行動との関連を仮定しないが,いじめの実態をできる限り正しくとらえるためのバッ ファー項目として取り入れた。 3 )アタッチメント・スタイル4群の記述統計値  ECR-RC9は,アタッチメント・スタイルを家族に対する「(親密性への)回避」と「(見捨てられ) 不安」の二次元で測定する。回避得点(6項目,range 6-30)と,不安得点(3項目,range 3-15) の平均点(SD)はそれぞれ17.29(5.39),11.40(3.07)であった。全体の分布は,図3,図4の 通りである。回避得点は正規分布に近似し,不安得点は安定側(不安が低い)に偏った9点,12点, 15点を頂点とする三山分布の形となった。これら全体を,平均点で分けて【安定群】,【回避群】,【不 安群】,【回避不安群】の4つに群分けした。4群の記述統計値は表2の通りである。 図3.「回避」合計得点の分布(n=882) 図4.「不安」合計得点の分布(n=882) 茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019)

得点 得点 (n) (n) 図3. 「回避」合計得点の分布 (n=882) 図4. 「不安」合計得点の分布 (n=882) 茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019)

得点 得点 (n) (n) 図3. 「回避」合計得点の分布 (n=882) 図4. 「不安」合計得点の分布 (n=882) 茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019) 538

(8)

4 )ECR-RC9における学年・性別の特徴  回避の合計得点と不安の合計得点をそれぞれ従属変数,学年と性別を独立変数とした2要因の分 散分析を行なった。回避得点において,性別で主効果(F(1,876)=24.53, p<.01)が認められ,男子 の方がアタッチメント回避傾向にあることがわかった。学年に有意差はなかった。また不安得点に おいては,学年,性別ともに有意な差はみられなかった。 5 )アタッチメント・スタイルの特徴を明確化した4群の学年・性別の特徴  4群の特徴をより強く表すサンプルを抽出するために,平均値±0.5SDを境界として群分けした。 この結果,安定群(n=167),回避群(n=100),不安群(n=52),回避不安群(n=91)という合計 410名が抽出された(表3)。これは全体の46.5%に該当する。各群の生活アンケート8因子の平 均値を表4に示す。そして,この4群ごとに生活アンケート8因子合計得点を従属変数,学年と 性別を独立変数とした2要因の分散分析を行なった。分散分析の結果,有意差がみられた組み合わ せは次の通りである。  【安定群】において,LINE因子で性別が5%水準で有意であった。加害因子で性別が5%水準で有意, 更に学年性別の交互作用が1%水準で有意であった。傍観因子で学年が1%水準で有意差があり, 下位検定のフィッシャーのLSDで2年生と3年生の間に1%水準の有意な差が認められた。関係不 安因子では学年に10%水準で有意傾向,LSDでは1年生と3年生の間に5%水準で有意差があった。 加害意識因子で性別に1%水準で有意な差があった。  【回避群】において,関係安定因子で性別に10%水準で有意傾向がみられ,更に学年・性別の交 互作用が5%水準で有意であった。LINE因子で学年が10%有意傾向,LSDで1年生と3年生の間 に5%水準の有意な差があった。生活(睡眠)因子では学年で1%水準の有意差,LSDで1年生と 表2.アタッチメント・スタイル 4 群(平均値分け)の記述統計値 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 表2. アタッチメント・スタイル 4 群(平均値分け)の記述統計値 安定群 (n=270) 回避群 (n=205)

Mean SD Median Mode Mean SD Median Mode

生活アンケート 第1 因子:被害 34.44 4.75 35 40 32.90 5.48 34 40 第2 因子:関係安定 26.89 4.36 27 29 20.02 4.93 21 23 第3 因子:LINE 8.23 8.94 0 0 9.13 8.99 12 0 第4 因子:生活(睡眠) 7.94 2.15 9 10 7.11 2.42 7 10 第5 因子:加害 12.13 2.47 12 15 11.52 2.59 12 15 第6 因子:傍観 8.21 2.01 9 10 7.83 2.23 8 10 第7 因子:関係不安 5.61 2.22 6 6 5.85 2.36 6 6 第8 因子:加害意識 7.08 1.96 7 6 6.62 1.82 7 6 ECR-RC9 回避得点 22.44 3.36 22 18 12.80 3.49 14 14 不安得点 13.83 1.29 15 15 13.70 1.25 14 15 不安群 (n=175) 回避不安群 (n=232)

Mean SD Median Mode Mean SD Median Mode

生活アンケート 第1 因子:被害 30.66 5.53 31 32 29.22 6.37 30 25 第2 因子:関係安定 24.18 4.19 24 21 20.66 5.04 21 22 第3 因子:LINE 9.75 8.28 12 0 9.55 8.31 12 0 第4 因子:生活(睡眠) 8.02 1.99 8 10 7.21 2.37 8 10 第5 因子:加害 11.30 2.55 11 11 11.10 2.82 11 12 第6 因子:傍観 7.61 2.04 8 10 7.56 2.15 8 10 第7 因子:関係不安 6.09 1.95 6 6 5.85 2.28 6 6 第8 因子:加害意識 7.45 1.85 7 7 6.84 1.90 7 6 ECR-RC9 回避得点 20.06 2.56 19 18 13.16 3.15 14 17 不安得点 8.85 1.87 9 9 8.45 2.16 9 9 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 539

(9)

3年生の間に1%水準で,2年生と3年生の間に5%水準で有意な差が認められた。傍観因子では学 年において5%水準で有意,LSDでは1年生と3年生,2年生と3年生の間に5%水準で有意差が あった。  【不安群】においては,LINE因子で学年・性別の交互作用が5%水準で有意差が認められた。し かしその他の因子では有意差はみられなかった。  そして【回避不安群】において,被害因子で学年・性別の交互作用が10%水準で有意傾向であ ることが認められ,LSDでは1年生と3年生の間において5%水準で有意であった。被害因子にお いて有意差が認められたのは,性別・学年の群分けにおける分析結果を含めても,この群がはじめ てである。生活(睡眠)因子は学年に1%水準の有意差があり,LSDで1年生と3年生の間に1% 水準で,2年生と3年生の間に5%水準で有意な差があった。また,傍観因子で学年・性別の交互 作用が1%水準で有意差が認められた。加害意識因子でも交互作用が5%水準で有意差が認められ た。 6 )生活アンケート8因子とアタッチメント回避・不安の相関  すべての学年・性別において,回避得点と関係安定の間に1%水準で有意な中程度の相関が認め られた。特に1年生においてはr =.61と最も高く,このことにより「家族に対して自分の話ができ ず回避すること」と「他者との肯定的な関係を求めず悩みを話せないこと」に相関がある,という ことが明らかになった。また,不安得点といじめ被害の間に1%水準で有意な中程度の相関がみら れた。これは,「家族から大切に思われていないと不安を感じていること」と「いじめ被害にあう こと」の間に関連があることを表す。なおこの相関は,1年生がr =.47でやや強く,3年生がr =.29 でやや弱かった。更に,女子と1年生において,回避得点といじめ加害の間に1%水準で有意な弱 い相関がみられた。「家族に対して自分の話ができず回避すること」と「つい友達を傷つけてしま うこと」が関連していることがわかった。回避と加害の相関については男子ではr =.07で相関がな かった。一方で,回避得点といじめ被害に有意な弱い相関(r =.26, p<.01)があることも明らかになっ 表3.アタッチメント・スタイルの特徴を明確化した 4 群の学年・性別ごとの人数 表4.アタッチメント・スタイルの特徴を明確化した 4 群の平均値と標準偏差 茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019) 表3. アタッチメント・スタイルの特徴を明確化した 4 群の学年・性別ごとの人数 1 年生 2 年生 3 年生 男子 女子 安定群 (n=167) 59 55 53 61 106 回避群 (n=100) 32 33 35 66 34 不安群 (n=52) 23 8 21 21 31 回避不安群 (n=91) 36 28 27 51 40 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 表4. アタッチメント・スタイルの特徴を明確化した 4 群の平均値と標準偏差 安定群(n=167) 回避群(n=100) 不安群(n=52) 回避不安群(n=91) Mean (SD) Mean (SD) Mean (SD) Mean (SD) 第1 因子:被害 35.08 (4.85) 32.63 (6.25) 30.96 (6.06) 27.76 (7.01) 第2 因子:関係安定 27.82 (4.18) 19.01 (5.26) 25.77 (3.91) 19.65 (5.56) 第3 因子:LINE 8.19 (9.01) 8.46 (8.90) 10.52 (8.65) 9.18 (7.93) 第4 因子:生活(睡眠) 7.98 (2.16) 6.68 (2.59) 8.13 (2.21) 6.88 (2.45) 第5 因子:加害 12.43 (2.44) 11.37 (2.77) 11.35 (2.27) 10.64 (3.06) 第6 因子:傍観 8.18 (2.16) 8.01 (2.20) 7.63 (2.16) 7.22 (2.25) 第7 因子:関係不安 5.89 (2.30) 6.25 (2.24) 5.56 (2.12) 6.08 (2.30) 第8 因子:加害意識 7.39 (2.09) 6.92 (1.92) 6.88 (1.73) 6.96 (2.22) 茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019) 540

(10)

た。このことから「家族に対して自分の話ができず回避すること」は,加害だけでなく「いじめ被 害にあうこと」との間にも弱い相関があるということがわかった。ここでは女子と1年生において のみ相関係数が.30を超えた。加えて,LINE因子については,アタッチメント不安とLINEトラブ ルの間にr =.22の有意な弱い相関が認められた。そしてアタッチメント回避とLINEトラブルにつ いては,ここでも女子と1年生においてのみに1%水準で有意な弱い相関が認められた。生活(睡 眠)因子に関しては,回避と不安で相関係数に違いがみられた。これは,「回避が高いこと」と「睡 眠時間が短いこと」に弱い関連があり,また,「不安の高低」と「睡眠時間」は関連がないという ことを示している。表5に,学年・男女別の結果も含めたPearsonの相関係数を示す。 図25.回避不安群「被害」合計得点(n=91) 茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019) 図23. 回避群「傍観」合計得点(n=100) 男子 女子 男子 女子 男子 女子 図27.回避不安群「傍観」合計得点(n=91) 茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019) 図23. 回避群「傍観」合計得点(n=100) 男子 女子 男子 女子 男子 女子 表5.生活アンケート 8 因子とアタッチメント「回避」「不安」の相関係数 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 表5. 生活アンケート 8 因子とアタッチメント「回避」「不安」の相関係数 1 被害 2 関係安定 3 LINE 4 生活(睡眠) 5 加害 6 傍観 7 関係不安 8 加害意識 ECR 回避 不安 .26.39**** .59.16**** .15.22**** .01 .20** .15.18**** .17.11**** .04 -.04 .08 -.05 n=882 *p<.05, **p<.01 1 被害 2 関係安定 3 LINE 4 生活(睡眠) 5 加害 6 傍観 7 関係不安 8 加害意識 ECR 回避不安 .33.47**** .21.61**** .30.26**** .26 .06 ** .12 .27*** .22 .09 ** -.06 -.13* .16** .04 n=302(1 年生のみ) *p<.05, **p<.01 1 被害 2 関係安定 3 LINE 4 生活(睡眠) 5 加害 6 傍観 7 関係不安 8 加害意識 ECR 回避不安 .38.20**** .17.57**** .24 .07 * -.05 .04 .10 .15* .06 .05 .05 .11 .12* .10 n=267(2 年生のみ) *p<.05, **p<.01 1 被害 2 関係安定 3 LINE 4 生活(睡眠) 5 加害 6 傍観 7 関係不安 8 加害意識 ECR 回避不安 .25.29**** .60 .12*** .10 .17* .04 .27** .18 .16**** .22.18**** .10 -.04 -.01 .05 n=313(3 年生のみ) *p<.05, **p<.01 1 被害 2 関係安定 3 LINE 4 生活(睡眠) 5 加害 6 傍観 7 関係不安 8 加害意識 ECR 回避 不安 .39.22**** .57 .09*** .24 .08 ** -.05 .22** .07 .14** .06 .23** -.10* .06 -.01 .08 n=467(男子のみ) *p<.05, **p<.01 1 被害 2 関係安定 3 LINE 4 生活(睡眠) 5 加害 6 傍観 7 関係不安 8 加害意識 ECR 回避 不安 .31.38**** .61.25**** .22.20**** .08 .19** .15.29**** .11 .16*** .02 .01 .11* .01 n=415(女子のみ) *p<.05, **p<.01 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 541

(11)

7 )生活アンケートトップダウン項目の合計得点とアタッチメント回避・不安の相関  生活アンケート(柳田・金丸,2015)で検証されたいじめに関連する4因子(被害,加害,傍観, LINE)とそれぞれ相関の高かった質問項目をトップダウン項目とし,アタッチメントの回避得点, 不安得点との相関を分析した(表6)。表5の相関分析の結果と同様に,アタッチメント不安と被 害に1%水準で有意な中程度の相関がみられた。特に1年生に関してはr =.44(p<.01)と他の性別・ 学年群よりも高い相関となった。そして,弱い相関も含めると,アタッチメント回避と不安の両方 ともが,すべての学年・性別において被害因子と有意な相関があることがわかった。また,1年生 と女子のアタッチメント回避得点と,加害因子,LINE因子の間に1%水準で有意な弱い相関がみら れた。アタッチメント回避と傍観の相関については,男女で違いがみられ,女子の方がやや傍観と の関連が高いという結果となった。ECR-RC9の得点と傍観との相関における性差については,男 子は不安がr =.25(p<.01)であるのに対し,回避の男子は傍観因子とはほぼ無相関であった。女子 に関しては傍観に対して,回避も不安も同程度の相関を示した。 8 )アタッチメント・スタイルの把握を含めた質問項目の吟味  最終的に完成させるいじめアンケートの質問項目とアタッチメント・スタイルとの関連を精査す るために,生活アンケートとECR-RC9の質問項目すべてに対して探索的因子分析を行なった。負 荷量.40以上を基準として分析を行なったところ,ECR-RC9の9項目がすべて負荷量.40以上になっ たまとまりは,4因子構造と5因子構造でみられ,弁別的妥当性が確認された。4因子構造で生活 表6.生活アンケートのいじめトップダウン項目とアタッチメント「回避」「不安」の相関係数 茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019)

6. 生活アンケートのいじめトップダウン項目とアタッチメント「回避」「不安」の相関係数

被害 加害 傍観 LINE ECR 回避不安 .20** .36** .16** .13** .20** .11** .15** .22** n=882 *p<.05, **p<.01 被害 加害 傍観 LINE ECR 回避不安 .28** .44** .25** .11* .12* .27** .30** .26** n=302(1 年生のみ) *p<.05, **p<.01 被害 加害 傍観 LINE ECR 回避不安 .14* .39** .10 .17** .07 .09 .07 .24** n=267(2 年生のみ) *p<.05, **p<.01 被害 加害 傍観 LINE ECR 回避不安 .18** .25** .11 .14* .16** .21** .11 .17* n=313(3 年生のみ) *p<.05, **p<.01 被害 加害 傍観 LINE ECR 回避不安 .14** .38** .04 .14** .07 .25** .08 .24** n=467(男子のみ) *p<.05, **p<.01 被害 加害 傍観 LINE ECR 回避不安 .26** .34** .24** .13* .16** .15** .22** .20** n=415(女子のみ) *p<.05, **p<.01 茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019) 542

(12)

アンケートとECR-RC9の項目が同じ因子にまとまったため,解釈可能性の観点から,4因子構造 を採用した。第1因子「いじめ被害とアタッチメント不安」,第2因子「アタッチメント非回避(安 定)」,第3因子「生活の乱れとLINEトラブル」,第4因子「承認欲求と自信」と命名した(表7)。  項目間の関連をみると,これまでの結果と同じようにここでも「アタッチメント不安」と「いじ め被害」が関連していることが第1因子によって示された。不安と被害の関連以外でこれまでみら れなかった特徴的な結果に,第1因子の中に「40. 友達に困ったことを話せる」が負の負荷量で入っ たことがある。「話せる」というまとまりは予備調査では「援助資源」因子,生活アンケートの因 子分析では「関係安定」因子に仮定されていた。なお,他者からの被援助性を表す「話せる」項目 は第2因子の「アタッチメント非回避(安定)」因子にまとまっている。第2因子で話せる相手とは, ECRの「家の人」,生活アンケートの「家の人」「先生」である。つまり,「不安」と「被害」の関 連の中に,大人には話せても「友達には0 0 0 0話せない」という関連も組み込まれた結果になった。  また,生活アンケートのみの因子分析結果で負荷量.40に届かなかったがこの分析で.40以上の 負荷量を示した項目が2つあった。「31. パソコンやスマホを1日に何時間も使っている」,「32. 友 達と遊ぶよりも一人でパソコンやスマホをしていた方が楽しい」である。この分析ではLINE因子 のまとまりはなくなり,「36. LINEなどで友達にメンバーから外されている」が第1因子の「いじ め被害とアタッチメント不安」に入った。その他のLINEに関係する項目は,睡眠に関する2項目, そして31番,32番と同じまとまりになったため,第3因子「生活の乱れとLINEトラブル」に入っ た。第4因子の項目はすべて,生活アンケートの結果における「関係安定」因子に入るものであるが, 被援助性を表す「話せる」関連の項目は第4因子には入らず,第2因子を形成した。そのため第4 因子に残った項目の特徴を考えて新たに「承認欲求と自信」と因子名を付けた。  内的整合性を検討するためにCronbachのα係数を算出したところ,第1因子「いじめ被害とアタッ チメント不安」がα=.80,第2因子「アタッチメント非回避(安定)」がα=.69,第3因「生活の 乱れとLINEトラブル」がα=.71,第4因子「承認欲求と自信」がα=.70であった。  生活アンケートの因子構造で述べた通り,生活アンケートとECR-RC9の結果を併せて行なった 探索的因子分析の結果より30個の質問項目を抽出し,更に生活アンケートとECR-RC9の結果を 併せて行なった探索的因子分析の結果(表7)から,前者の30項目に入っていなかった項目が2 つ抽出された。本研究では,生徒の援助の受け方・求め方を同時に知ることに重点を置き,内容的 妥当性を踏まえてこの後者の2項目を取り入れ,ECR-RC9と32項目で合計41項目の質問紙を完 成させることとした。また,生徒の自由な声を拾うために,自由記述欄を設けた。完成した質問紙 は表8の通りである。新番号の太字はトップダウン項目,下線は逆転項目を表す。 総合考察 1 )アタッチメント・スタイルからわかるいじめの被害,加害の兆候  いじめを把握するためにはまず「被害」得点と「加害」得点に注目する必要がある。その各得点 がアタッチメント・スタイルによって差があるかについて検討したところ,「被害」得点は4群の すべての間に1%水準で有意な差が認められた。図1で示したとおり,被害のリスクが高い順から, 【回避不安群】,【不安群】,【回避群】,【安定群】となった。生徒のアタッチメント・スタイルを把 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 543

(13)

表7.生活アンケートとECR-RC9 の因子分析結果(主因子法・プロマックス回転) 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 表 7. 生活アンケートと ECR-RC9 の因子分析結果(主因子法・プロマックス回転) 番号 項目内容 因子負荷量 1 2 3 4 第1 因子: いじめ被害とアタッチメント不安 α=.802 19 友達から、今、嫌なことをされていると感じる。 .709 -.041 -.047 .165 17 友達に、仲間はずれにされている。 .682 .070 .082 -.003 20 友達からされる嫌なことは、長い間続いている。 .646 .006 -.003 .089 ECR7 家の人は、自分をあまり好きではないのかと心配だ。 .619 -.179 -.143 .012 ECR9 私は、家の人が本当は私のことを大切に思っていないかもしれない、とよく心配になる。 .603 -.063 -.145 .003 ECR8 自分が家の人を大切に思うのと同じくらいに、家の人は自分を大切に思っているのかと気にかかる。 .516 -.004 -.123 .030 27 自分を理解してくれる人は、周りにいない。 .510 -.050 .044 -.136 10 掃除や給食の仕事を押し付けられることが多い。 .476 .125 .076 -.117 21 以前、友達からされた嫌なことを、忘れられない。 .475 -.069 .021 .315 6 学校でのグループ活動は避けたい。 .444 .042 .178 -.235 7 昼休みをどう過ごそうかと悩むことがある。 .441 -.029 .073 .062 29 同級生がしている嫌なことは、長い間続いている。 .430 .084 .231 .144 36 LINE などで友達に、メンバーから外されている。 .420 .075 .353 .001 40 友達に困ったことを話せる。 -.419 .162 .195 .376 第2 因子: アタッチメント非回避(安定) α=.687 ECR1 私は、いつも、困ったことや心配事を、家の人に話す。 .099 .926 -.031 -.038 39 家の人に困ったことを話せる。 -.161 .809 .055 -.004 ECR2 私は、家の人に個人的なこと(あまり他の人には知られたくないこと)を相談する。 .188 .797 -.115 -.028 ECR3 困ったときに、家の人と話をすると、気分が楽になる。 .074 .759 -.096 .073 ECR4 私にとって、家の人をあてにする(頼りにする)ことは簡単なことだ。 -.140 .577 .051 .034 41 先生に困ったことを話せる。 -.090 .449 .041 .138 ECR6 自分のことについて多くを家の人に話すことは、気が進まない。 .102 -.439 .136 .208 ECR5 私は、自分が心の奥で考えていることや感じていることを、家の人に知られたくない。 .052 -.409 .186 .298 第3 因子: 生活の乱れと LINE トラブル α=.705 2 夜12 時前には寝ている。 .226 .092 -.527 .235 31 パソコンやスマホを一日に何時間も使っている。 -.119 -.124 .486 -.022 32 友達と遊ぶよりも一人でパソコンやスマホをしていた方が楽しい。 .171 -.110 .475 -.118 3 毎日7 時間以上寝ている。 .174 .140 -.451 .183 33 LINE などで友達をメンバーから外したことがある。 .067 -.014 .444 -.048 34 LINE などで友達に、メンバーから外されたことがある。 .299 .022 .427 .004 35 LINE などで友達が、メンバーから外されたことを知っている。 .117 -.056 .417 .212 24 つい友達をいじってしまう。 -.063 -.034 .402 .133 第4 因子: 承認欲求と自信 α=.700 25 学校の先生にほめられたい。 .167 .133 -.099 .617 26 家の人にほめられたい。 .176 .175 -.165 .588 38 得意なことをほめてくれる人がいる。 -.359 .259 .097 .434 因子間相関 1 2 3 4 1 因子:いじめ被害とアタッチメント不安 - 第2 因子:アタッチメント非回避(安定) -.268 - 第3 因子:生活の乱れと LINE トラブル .432 -.136 - . 第4 因子:承認欲求と自信 -.005 .334 .115 - 茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019) 544

(14)

表8.アタッチメントの視点を取り入れた新しい中学生用いじめアンケート 茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019) 表 8. アタッチメントの視点を取り入れた新しい中学生用いじめアンケート 旧 新 [1:とてもあてはまる,2:あてはまる,3:どちらでもない,4:あてはまらない,5:全くあてはまらない] 9 1 自分は学校で一人でいても平気だ 1 2 3 4 5 8 2 学校で一人でいることはつらいことだ 1 2 3 4 5 39 3 家の人に困ったことを話せる 1 2 3 4 5 38 4 得意なことをほめてくれる人がいる 1 2 3 4 5 41 5 先生に困ったことを話せる 1 2 3 4 5 37 6 自分には得意なことがある 1 2 3 4 5 25 7 学校の先生にほめられたい 1 2 3 4 5 26 8 家の人にほめられたい 1 2 3 4 5 ECR1 9 いつも、困ったことや心配事を、家の人に話す 1 2 3 4 5 ECR2 10 家の人に個人的なこと(あまり他の人には知られたくないこと)を相談する 1 2 3 4 5 ECR3 11 困ったときに、家の人と話をすると、気分が楽になる 1 2 3 4 5 ECR4 12 私にとって、家の人をあてにする(頼りにする)ことは簡単なことだ 1 2 3 4 5 ECR5 13 自分が心の奥で考えていることや感じていることを、家の人に知られたくない 1 2 3 4 5 ECR6 14 自分のことについて多くを家の人に話すことは、気が進まない 1 2 3 4 5 40 15 友達に困ったことを話せる 1 2 3 4 5 7 16 昼休みをどう過ごそうかと悩むことがある 1 2 3 4 5 6 17 学校でのグループ活動は避けたい 1 2 3 4 5 21 18 以前友達からされた嫌なことを忘れられない 1 2 3 4 5 10 19 掃除や給食の仕事を押し付けられることが多い 1 2 3 4 5 27 20 自分を理解してくれる人は周りにいない 1 2 3 4 5 17 21 友達に仲間はずれにされている。 1 2 3 4 5 20 22 友達からされる嫌なことは長い間続いている 1 2 3 4 5 19 23 友達から今嫌なことをされていると感じる 1 2 3 4 5 ECR7 24 家の人は、自分をあまり好きではないのかと心配だ 1 2 3 4 5 ECR8 25 自分が家の人を大切に思うのと同じくらいに、家の人は自分を大切に思っているのかと気にかかる 1 2 3 4 5 ECR9 26 家の人が本当は私のことを大切に思っていないかもしれない、とよく心配になる 1 2 3 4 5 28 27 同級生が人に嫌なことをしているのを見かける 1 2 3 4 5 29 28 同級生がしている嫌なことは長い間続いている 1 2 3 4 5 36 29 LINE などで友達にメンバーから外されている 1 2 3 4 5 34 30 LINE などで友達にメンバーから外されたことがある 1 2 3 4 5 35 31 LINE などで友達がメンバーから外されたことを知っている 1 2 3 4 5 33 32 LINE などで友達をメンバーから外したことがある 1 2 3 4 5 2 33 夜 12 時前には寝ている 1 2 3 4 5 3 34 毎日 7 時間以上寝ている 1 2 3 4 5 24 35 つい友達をいじってしまう 1 2 3 4 5 31 36 パソコンやスマホを一日に何時間も使っている 1 2 3 4 5 32 37 友達と遊ぶよりも一人でパソコンやスマホをしていた方が楽しい 1 2 3 4 5 22 38 理由もなく人を傷つけたくなることがある 1 2 3 4 5 23 39 つい友達を傷つけてしまう 1 2 3 4 5 13 40 やり返すことは悪くないので友達にたくさんやり返している 1 2 3 4 5 18 41 友達に嫌なことをされてもやり返さない 1 2 3 4 5 感想がありましたらご自由にどうぞ。 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 545

(15)

握したときに,この順序で被害の兆候がみられる可能性があると言える。またこのことは,いじめ られているのは誰か,という「被害」の側の視点のみでなく,「アタッチメント不安定の度合い」 という視点で生徒を観察することにより,“被害の前触れ”をつかむことにも役立つであろう。  また,「加害」得点では【安定群】と,【回避群,不安群,回避不安群】の間に有意差が認められ た。回避群,不安群,回避不安群の3群の間には差は認められなかった。3群をまとめて【不安定 群】と呼べば,つまり,【安定群】と【不安定群】の間に差がみられた。アタッチメント・スタイ ルが回避であっても,不安であっても,回避不安であっても,同程度の加害リスクがあると想定で きる。このアタッチメント【不安定群】の生徒に対して,加害の兆しがないかどうかを注視するこ とは,いじめトラブルを未然に防ぐ一つの手段になるであろう。 2 )いじめとアタッチメント・スタイルの関連  すべての学年・性別において,回避得点と関係安定の間に1%水準で有意な中程度の相関がある ことが明らかになった。このことから,家族に対するアタッチメント回避が強い子どもは,家族だ けでなく,友達や先生などの他者にも話せない,ほめられるなどの他者との肯定的な関係を求めな いということが考えられる。また,アタッチメント不安といじめ被害の間に,r =.39の相関が見ら れたことは,家族に対して不安が強いことといじめ被害にあいやすいことには関連があるというこ とを示唆している。なお,この相関は,1年生がr =.47でやや強く,3年生がr =.29でやや弱かった。 被害のトップダウン3項目とアタッチメント不安との関連においても,中程度の相関が認められた。 ここでも1年生がr =.44(p<.01)と他の性別・学年群よりもやや高い相関を示し,1年生のアタッ チメント不安は他群よりも被害との関連が強いことがわかった。1年生は発達段階的に,まだ家族 を安心の基地にして探索行動をとる傾向が他学年よりも強いと言えるのかもしれない。  更に,1年生と女子において,回避得点といじめ加害の間に1%水準で有意な弱い相関が認めら れ八つ当たり的に加害へと向かっている可能性も考えられる。また児童期に近い1年生では,家族 に対するアタッチメントが活性化しやすいことが加害との関連を説明するかもしれない。  一方で,海外の先行研究では回避と加害の関連が多く報告されているが,本研究では回避得点と いじめ被害の間にもr =.26の弱い相関があった。回避であれ不安であれ家族に対するアタッチメン トが不安定な生徒は,いじめ被害に関連する可能性があるということが明らかになった。  またここで1年生と女子においてのみ,1年生でr =.33 女子でr =.31と他群よりもやや高い相関 係数を示した。1年生と女子に関しては,アタッチメント回避が加害だけでなく,特に被害にも関 連していると言える。更に,回避群の中でも1年生と女子はLINEトラブルに関しても高い相関係 数を示した。このように,1年生と女子が非常に近い傾向であることが明らかになったことは大変 興味深い。回避群は,他者と親密になることを避け,家族に話さず当てにできないという傾向があ る。このタイプの中で特に1年生と女子にいじめリスクが高まるということは,他群と比較して1 年生と女子にとっては,家族に話せない,また,家族を当てにできないことが対人関係のリスクを 高め,逆に言えば,家族と話せることで対人関係のリスクが低まる,という重要な示唆が得られた。 家族と話せるように支援することは,特に1年生と女子に関して有効であると言える。家族と話せ ない場合は,SCなど家族以外の大人がその役割を担うことが重要である。  また,アタッチメント不安と傍観の間には全体的に弱い相関がみられた。アタッチメント回避と 茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019) 546

(16)

傍観の相関については,男子よりも女子の方がやや相関が高いという結果となった。被害と傍観の 重複性が示されたが(柳田・金丸,2015),不安と被害の関連と同様に,不安と傍観の関連もある と考えられる。傍観の性差については,男子は不安がr =.23(p<.01)であるのに対し,回避の男子 は傍観因子とはほぼ無相関である。女子に関しては傍観に対して,回避も不安も同程度の相関を示 した。  なお,生活(睡眠)因子に関して,回避と不安で相関係数に違いがみられた。「回避が高いこと」 と「睡眠時間が短いこと」に関連があり,また,「不安の高低」と「睡眠時間」は関連がなかった。 思春期から青年期にかけて睡眠の時間帯が遅れやすく成人すると加齢とともに睡眠時間が少なくな ることが知られているが,回避群と不安群においてこのような生活態様が示された。 3 )中学生男子のアタッチメント・スタイル  男子は全体で見れば,被害因子,LINE因子,加害因子,関係不安因子で,学年を経るにつれて 問題が少なくなる方向へと変化する傾向があった。しかし,アタッチメント・スタイルごとに学年 上昇の変化を分析すると,回避群と不安群の男子に限っては,被害について2年生でいったん落ち 着くが3年生になって再び悪化し,また加害については学年を経るにつれて増えていた。なお,回 避不安群の男子は,回避群,不安群とは反対に,学年を経るにつれて被害も加害も少なくなるとい う全体の結果と同じになった。この結果を受けて,回避不安群の「親密になることが快適でない, 拒絶されることを恐れる」という特徴を考慮すると,他者とかかわらなくなることが進めば被害も 加害も減っていく,という構図も見えてくる。また回避不安群は,男子は3年生になるとLINEト ラブルが減る傾向にあるのに対し,2年生で一度安定した後3年生で再び大きく落ち込む(LINE トラブルが増える)という,他群にみられない傾向を示した。このLINEの結果は被害・加害の結 果とは相反するものである。また3年で落ち込むという傾向は後述する回避不安群の女子の傾向と 類似している。回避不安群の複雑な対人関係がここに垣間見ることができる。いずれにしても,回 避不安群は4群の中で被害も加害も最も多い得点であったということを留意しなければならない。  加害意識の変化について群ごとに注目すると,学年を追うごとに,回避群と回避不安群はやり返 さない意識へと向かう傾向があった。回避不安群の男子は,意識と行動が一致して成長につれて「加 害しない」方向へ向かっているが,回避群の男子は,意識では加害しない方向に向かうが,行動と しての加害は学年を追うごとに増えているという矛盾がみられた。  なお,不安群の加害意識は2年生で高まるという傾向があった。しかし安定群においても2年 生で関係安定,傍観,加害意識の因子において悪化した。つまり,アタッチメント安定群の男子に おいても,2年生になると「家族に話せず(話さず),大人にほめられたいと思わず」「いじめを見 ることが多くなり」「やり返したくなる」ということが明らかになった。家族に対して回避的になっ たり,いじめが多くなってストレスを抱えることは,中学2年生の男子にとっては自然な変化であ るとも言えるであろう。 4 )中学生女子のアタッチメント・スタイル  女子に関しては全体的に,加害,傍観,関係不安,加害意識が2年生で悪化し,3年生で回復す るというV字型の傾向があった。アタッチメント安定群の女子においても,加害,傍観,加害意識 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 547

(17)

は2年生で悪化するが3年生で問題が軽減し,また関係不安の意識も3年生で低くなった。被害因 子の関連については,全体と安定群では1年から3年を通して被害の程度は変わらないようであっ たが,回避群と不安群は2年生で悪化した。また,女子の回避不安群においては,2年生で一時的 に問題が少なくなるが3年生で再び悪化するという逆V字型の傾向が,被害,関係安定,LINE,睡眠, 傍観因子でみられた。これは特に被害因子と傍観因子において3年生で問題が少なくなる男子の回 避不安群と,全く異なる傾向である。3年生で再び悪化して大きく落ち込むという傾向について, アタッチメントが不安定な程度の高い女子特有のものであるとも言うことができ,また,回避不安 群の男子よりも女子の方が,いじめストレスを受けやすいと言える。すなわち,アタッチメントの 不安定さは男子よりも女子に好ましくない影響を与えると言えるのかもしれない。  その他,他群の傾向とは異なるものに,回避群の女子のLINEトラブルが学年を追うごとに減り, 回避不安群の女子の加害意識が,学年を追うごとに増していくという点が挙げられる。LINEにつ いて,安定群,不安群,回避不安群の女子は2年生でいったん問題が軽減し3年でまたトラブルが 増える逆V字型であるが,回避群だけが学年を追うごとにトラブルが減っている右肩上がりのグラ フになっている。この流れは男子に多く見られるもので,回避群の女子はLINE利用に慣れてくる とともにトラブルを感じずに利用を続けている,という特徴的な傾向があることがわかった。また 回避群の女子は,加害と加害意識でも学年が上がるにつれて加害しない方向になっている。このこ とは単純に,回避群に関しては適応的な性質があるとも解釈できる。また,回避群の関係安定因子 に着目すると,男子は「話さない」傾向が強まる一方で,女子は2年生でポジティブな対人関係を 持つようになる。「話せる,ほめられたい」という因子において,回避群でも得点が上がったとい うことは,「話せる」という点で,女子にその能力があることが考えられるであろう。加害意識に ついては,回避不安群の女子だけが,わずかにではあるが右肩下がりのグラフになっており,これ はつまり,「やり返したい」という意識が学年を経るにつれて増す傾向にある。また,加害につい ても回避不安群の女子は,2年生で悪化すると3年生で回復しない傾向を持つ。これは複数の因子 において3年生で再び悪化する特徴を持つ回避不安群女子に特有の傾向であると言えるであろう。 3年生で被害も加害も落ち込む回避不安群の女子にとって,発達段階を経ることは好転材料とはな らないようである。回避不安群において,特にいじめ被害と加害の結果に限って性差を見た場合, やはり男子よりも女子に悪い影響を及ぼしていると考えられる。 5 )回避群と不安群の特徴  いじめ被害の平均点は,安定群34,44,回避群32.90,不安群30.66,回避不安群29.22であった。 最頻値をみると,安定群40,回避群40,不安群32,回避不安群25である。回避不安群の被害得 点の低さ(被害にあっている高さ)が際立っていることがわかる。図5,6の結果からもわかるよ うに,アタッチメントの不安定さは,いじめリスクと関連があると改めて言うことができる。また, 回避よりも不安が強い方が,いじめ被害にあっていることがわかった。不安得点の分布は,回避得 点が正規分布に近似していたのに対し,安定側に大きく偏っていたことからも,不安が高い生徒は 非常に少数派であると言える。さらに,厳密な群分けにおいても不安群はn=52と最も少なかった。 不安群といじめ被害の関連は上に述べた通りであるが,不安群のリスクの高さについてここでも改 めて言及したい。Brenning et al.(2011)が述べるように,アタッチメント不安は他者信頼の欠如 茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019) 548

(18)

による「関係性」の問題に関連する。一方,アタッチメント回避は自己信頼や自己定義の課題に取 り組む際に過度で派生的な方法を取るという問題に関連する。すなわち,回避型の関心は「自己」 に向き,不安型の関心は「他者」に向いていると言うことができる。本研究で得られた回避群と不 安群の違いで特徴的だったことに,回避が強い生徒は睡眠時間が比較的短く,LINEトラブルは男 女ともに3年生になるほど少なくなり,不安が強い生徒は睡眠時間が比較的長く,LINEトラブル は学年性別を問わず存在するという傾向があった。中学生を対象とした本研究において,関心が自 己に向かっている回避群は身体的社会的に成長のラインに乗っており,関心が他者に向かっている 不安群は必ずしもそうとは言えないという差異が浮かび上がったように解釈できる。 6 )因子分析からわかった不安群のリスク  生活アンケートとECR-RC9を合わせて行なった探索的因子分析の結果,アタッチメント不安型 の生徒は,「大人」には助けを求めても「友達」には助けを求められない,ということが示された。 アタッチメント4群の関係不安因子(学校で一人でいられる)の平均点は安定群5.61,回避群5.85, 不安群6.09,回避不安群5.85であった。この得点は低いほど「学校で一人でいられない」という ことであるため,不安群が最も「学校で一人でいられる」と回答していることになる。このことは, 第1因子「いじめ被害とアタッチメント不安」の中に,「40 友達に困ったことを話せる」という質 問項目が負の負荷量0.4以上で入ったことを説明するであろう。見捨てられ不安が強い不安群の生 徒たちは,困ったことは大人には話せるけれども,友達には話せない,すなわち,まだ本当の仲間 関係を構築することが上手くできていないのではないか。このことは,「アタッチメント対象とし ての家族」という土台が弱いために,友人とも上手くアタッチメント関係を形成できないのかもし れない。このような不安群の生徒に対しては,まずは大人が不安タイプのわかりづらいSOSを的確 に察知して,アタッチメント対象として機能することが大切である。アタッチメント対象として機 能するとは,すなわち,子どもが近接してきたときには温かく迎え入れ,安心感を育てることであ る。そのためには,学校の教員だけでなく,家族である保護者,あるいは養育者の力が当然必要に なってくるであろうが,大人にしっかりと守られる感覚を持ってこそ友人関係を発達させることが できるという不安群の傾向を理解して,いじめ対応にあたることが大切であろう。 7 )「新しい中学生用いじめアンケート」の提案  表8に示した「新しい中学生用いじめアンケート」は,いじめにまつわるネガティブな感情をで きるだけ想起させない言葉を用い,かつ生徒が答えやすい質問を取り入れたアンケートである。合 計41項目あるが,いじめ被害の目安となるトップダウン項目の番号は,19,21,22,23であり, この点数が低いほどいじめ被害にあっているということがわかる。また,項目番号27,28は傍観 のトップダウン項目であり,この点数が低いほどいじめが存在するということがわかる。39,40 は加害のトップダウン項目を仮定しているが更に妥当性を検討する必要があり,加害傾向の目安と することができる。  これらの得点でいじめのスクリーニングができた後には,項目番号9~14でアタッチメント回 避の傾向をみることができる。アタッチメント回避とは,援助を求めることを良いと感じず,援助 を受けにくいタイプである。9~14の得点が低いほど(9~12を逆転項目とする)【援助を求めら 柳田・金丸:中学生のアタッチメント・スタイルといじめ行動 549

(19)

れないタイプ】だとわかる。なお,13,14が逆転項目となっている。項目番号24~26では,アタッ チメント不安の傾向をみることができる。アタッチメント不安とは,見捨てられ不安が高く,援助 要請が伝わりにくいという特徴があり,24~26の得点が低いほどその生徒が【大人と話すことは できるが,SOSがわかりにくいタイプ】とわかる。  なお,項目番号1,2は生徒の「意識」,3~14は「アタッチメント回避」,15~29は「いじめ被害, 傍観,不安傾向」,30~38は「生活の乱れとLINE利用」,39~41は「加害傾向」を表す質問の まとまりになっている。3~12番,15,33,34,41番を逆転項目とすることで,得点が高い方が望 ましい結果として統一される。ただし,「意識」については導入であるため,得点の高低は参考値 として考える。  アタッチメントの不安定さは,上に述べたように,被害にも加害にも関連する。その不安定さを 判断するためにはECR-RC9の結果の見方の通り,実施したアンケートの回避得点と不安得点の平 均点より高いか低いか,を基準として判断する。本研究の合理的サンプリングによって得られた n=882の結果では,回避得点17.29,不安得点11.40が平均点すなわちcut off得点であった。得点 のrangeは,回避6-30,不安3-15である。本研究の平均得点はECR-RC9を実施した際にアタッチ メント・スタイルを把握するための目安として提案できると考えられる。  アタッチメント・スタイルを指標としていじめの兆候を掴み,そしていじめ被害の実態と照らし 合わせて援助方略の特徴を考慮しながら生徒に働きかけることは,より効果的ないじめ対応になる であろう。そして,アンケートによっていじめが発見されたならば,その後の対応こそが重大であ る。教員は生徒にどのように働きかけるべきか,熟慮を迫られるであろう。嘉島(2010)は,安 易な解決を図ることでかえって根深い恨みを残しいじめが陰に隠れてしまうということを指摘して いる。被害側だけでなく加害側の生徒のアタッチメント・スタイル,すなわちその生徒の対人関係 の持ち方,援助の受け方,求め方の特徴を念頭に置くことは,問題を突破する糸口となり得るかも しれない。 今後の課題  本研究の考察において学年差について触れたが,これらは横断的なサンプリングから言えること であり,厳密な学年上昇の変化を捉えられてはいない。厳密な発達段階の変化を知るためには,今 後,縦断研究が実施される必要がある。  本研究ではアタッチメント・スタイルを把握するECR-RC9を使用し,アタッチメント対象は日 本語版にならい「家の人」とした。海外の先行研究はアタッチメント対象を「母親」と「父親」な どに分けている。先行研究のように,母親と父親のそれぞれに対するアタッチメントの違い,男子 の父親に対するアタッチメントなどを測定すれば,また新しい考察が生まれると考えられる。 謝 辞  本論文の作成に当たって,茨城大学教育学部教授の数井みゆき先生より,長きにわたっての指導, 助言を賜った。ここに厚く感謝の意を表する。 茨城大学教育学部紀要(教育科学)68 号(2019) 550

参照

関連したドキュメント

大学は職能人の育成と知の創成を責務とし ている。即ち,教育と研究が大学の両輪であ

 大正期の詩壇の一つの特色は,民衆詩派の活 躍にあった。福田正夫・白鳥省吾らの民衆詩派

[r]

記述内容は,日付,練習時間,練習内容,来 訪者,紅白戦結果,部員の状況,話し合いの内

バックスイングの小さい ことはミートの不安がある からで初心者の時には小さ い。その構えもスマッシュ

大学教員養成プログラム(PFFP)に関する動向として、名古屋大学では、高等教育研究センターの

加納 幹雄 (Mikio Kano) 茨城大学 名誉教授...

加納 幹雄 (Mikio Kano) 茨城大学 名誉教授..