安 全 性 評 価 制 度 の 歴 史
1973 大腸菌を用いて遺伝子組換え実験に初めて成功 1976~ 各国で組換えDNA実験の安全性確保の指針が策定 1989 農林水産省が組換え体の野外利用のための安全性評価 指針策定 1991 厚生省(現 厚生労働省)が組換え添加物の食品の安全性 評価指針を策定(1996 組換え種子植物の指針策定) 2001 食品の安全性評価が食品衛生法改正で義務化 2003 食品安全委員会設置、CODEXガイドライン策定 組換え飼料の安全性評価義務化 カルタヘナ議定書発効、国内法制定 1982 経済協力開発機構(OECD)において、組換え体の産業利 用のための検討が開始 → 勧告、レポートの公表 2000 CODEXバイオテクノロジー特別部会での検討開始 LMOの国境間移動に関する「カルタへナ議定書」が合意 1996 わが国が遺伝子組換え食品の安全性を確認・商品化CODEX 委員会
• バイオテクノロジー食品特別部会
(2000~2003年、議長国:日本) ¾ モダンバイオテクノロジーにより生産された食品の安全性に関す る国際ガイドラインの策定 リスク分析のための原則 遺伝子組換え植物のための ガイドライン 遺伝子組換え微生物のための ガイドライン (付属書:アレルギー性予測 のためのガイドライン) (付属書:アレルギー性予測 のためのガイドライン)• 第2期:2005~2008年、議長国:日本
加盟国に候補議題の調査を実施し、第1回会議で検討
消費者の健康の保護、食品の公正な貿易等を目的としてWHOとFAO が設置した食品の国際規格を作成している国際機関GM食品の安全性評価の
基本的考え方
組換える前の既存の食品と比較しうること
Concept of Substantial Equivalence(実質的同等性の概念)
科学的に同等の安全性を確保し、商品化を認める
食品の安全性は個別成分ごとに行うのは困難
¾既存の食品を比較対照にして総体的に評価する
¾組換えDNA技術によって付加されることが予想される
全ての性質の変化について、その可能性を含めて安
全性評価を行う
新 し い 食 品 開 発 の 歴 史
みんなバイテクを使った食品 生物の力を利用して食品を作ってきた その原因を調べると遺伝子に行き着いた 生 物 を 改 造 し て 商品化されている大果系トマト トマトの原種 トマト野生種従来育種で行われてきたこと
従来育種で行われてきたこと
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交配育種
交配育種
(おしべとめしべによる交配と、
(おしべとめしべによる交配と、
優良個体の選別)
優良個体の選別)
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突然変異
突然変異
(自然に起こるまたは人為的に
(自然に起こるまたは人為的に
起こした突然変異と、
起こした突然変異と、
優良個体の選抜)
優良個体の選抜)
約 約1010,000,000年前の農耕の開始とともに、野生植物(雑草)から栽培種年前の農耕の開始とともに、野生植物(雑草)から栽培種 を創り出してきた を創り出してきた・
・
遺伝子組換え
遺伝子組換え
(分子レベルでの育種;形質ごと
(分子レベルでの育種;形質ごと
の改良)
の改良)
DNA 遺伝子(タンパク質の情報) (いつ、どこで、どのくらい、どんな) DNAの構造 z 遺伝子は全ての生物が持つ z 遺伝子は毎日一杯食べている z 遺伝子は消化・分解される z 遺伝子は生物間の移動が可能 リン酸 塩基 糖
リ ス ク と つ き あ う
• 食品を含めどんなものにもリスクがある
• リスクのとらえ方は人によって差がある
食品添加物 農薬 タバ コ 大気 汚染 おこ げ ウイ ル ス 食 品 性 生 活 職 業 アル コ ー ル 放 射 線 医 薬 品 工 業 製 品 43.5% 24 30 1 11.5 9 4 2 10 7 35 3 4 1 3 1 1 主婦 疫学専門家 暮らしの手帖25号(1990)何がガンの原因となると思うか?
リ ス ク と つ き あ う
• 食品を含めどんなものにもリスクがある
• リスクのとらえ方は人によって差がある
• リスクを知り、正しい判断をするためには
努力が必要
¾科学知識を身につける努力
¾メディアの情報の正確性を見分ける努力
¾情報の批判的に読み取る努力
事実と意見、編集の有無、キャスターのイメージ等 あらゆる情報を一度批判的に考える < 分析的思考ができる 一般的科学用語がわかる < 科学用語を正しく使える 「リスクとつきあう」吉川慶子著(有斐閣選書)組換え食品の安全性評価
z使用した植物・DNAの情報
¾ 作物・食用の歴史、導入DNA(ベクター含む)の由来・塩基配列 利用した材料 の履歴書 導入した遺伝 子による影響 z導入遺伝子の影響
¾ コピー数、安定性、意図しないタンパク質の生産等 z導入遺伝子産物(タンパク質)の評価
アレルギー性・有毒性の評価,代謝系への影響、動物試験 z導入遺伝子産物(タンパク質)の影響
¾ 生産される量、通常食するタンパク質の量との比較等 z食品としての成分比較
¾ 成分分析(主要成分,微量成分,機能成分,有害成分)の比較 作られるタンパ ク質の量的変化 作られるタンパ ク質による影響 組換え体全 体への影響組 換 え 大豆を
例 に し て
遺伝子導入
どうやって除草剤耐性ダイズは作られるの?
CaMV35S プロモータ CTP 配列 cp4-epsps NOS ターミネータ 除草剤 グリホサートに耐性とする ための組換えるDNA ダイズゲノム ホスホエノールピルビン酸 シキミ酸3-リン酸 グリホサート(除草剤成分)×
5-エノールピルビルシキミ酸3-リン酸 (必須)芳香族アミノ酸 トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン EPSPS EPSPS:5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸合成酵素 CP-4 EPSPS (組み換える遺伝子) タンパク質生産の“ON” スイッチ タンパク質のアミノ酸配列情報 タンパク質を葉緑体に運ぶ配列大豆構成成分分析の項目
z主要構成成分
タンパク質、脂質、炭水化物、灰分、繊維分 zアミノ酸組成
アスパラギン酸、スレオニン、セリン、グルタミン酸、プロリン、グリシン、 アラニン、アルギニン、システイン、メチオニン、トリプトファン z種子貯蔵タンパク質の組成
z脂肪酸組成
パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等 z栄養阻害物質
トリプシンインヒビター、フィチン酸、レクチン、ラフィノース、スタキオース z機能成分
ゲニステイン、ダイドゼイン、グリシテイン、クメステロール等 zビタミン、ミネラル類
トコフェノール、リン、カリウム等Stephen R. Et al: J.Nut. 126, 702-716(1996)
RR大豆の栄養阻害成分、機能成分
商品化GM系統 親系統
食 物 ア レ ル ギ ー の 特 徴 と 評 価 法
・一部の人々が特定食品にアレルギーを示す (大人;1-2%,子供;5-8%) ・一部の食品はアレルゲンとして知られている (ピーナッツ、そば、卵、牛乳、小麦等170種が知られている) ・どんな食品もアレルギーを引き起こす可能性がある (タンパク質のアレルギー誘発性) ・ 既存アレルゲンのアミノ酸配列に相同性があるか ・ 食品中の主要タンパク質であるか ・ 消化性が悪いか(10~70kDaのペプタイドが残る)(組換え体: 導入タンパク質の安全性評価)
・ 組み換えた遺伝子からのタンパク質の発現量 ・ 人工胃液・腸液による消化性試験 ・ タンパク質データベース検索による有害タンパク質とのアミノ 酸配列の比較Harrison, L.A. et al: J.Nut. 126, 728-740(1996)