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用地事務における不在者財産管理人制度について

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認可地縁団体設立による共有名義土地の

取得手続における展望と課題

庄司 知史

岐阜国道事務所 用地第二課(〒500-8262 岐阜市茜部本郷1-36-1) 公共事業に必要な土地を取得するに際し、土地登記簿に記録されている登記名義人が多数 共有となっている場合がある。このような土地を取得する際の展望と課題について、地方自 治法に規定する「地縁による団体」の設立、及び、「認可地縁団体が所有する不動産に係る 登記の特例」の申請によって用地取得を予定している具体的事例をもとに検証する。 キーワード 多数共有地,登記,認可地縁団体 登記の特例

1.はじめに

全国各地に存在する多数共有地は、解決に膨大な時間 と労力を要するため、以前より公共用地取得に際し大き な問題となっている。 多数共有地とは、土地登記簿に記録されている登記名 義人が多数となっている土地のことである。 多数共有地となる経緯は幾つかあるが、その一つとし て明治の市制町村制施行により行われた明治の市町村合 併において、旧村(大字、区、部落等)が所有していた 財産を市町村財産とすることに反対し旧村の財産を代表 者名や構成員名で土地登記簿に登記し、地元の財産とし て管理していた土地というものがある。 このような土地は、現在も土地登記簿に記載されてい る登記名義人の相続登記がされず、明治時代のままとな っており、現在、登記名義人の法定相続人を調査すると 数十名~数百名規模にまで拡大している状況を生んでい る。このような多数共有地の用地取得は困難を極め、用 地事務に大きな負担となっているとともに工事進捗にも 影響を及ぼすことも多々生じている。 この具体例をもとに、多数共有地を公共用地として取 得する際の解決策の1つとして取り組んだ事例を紹介す るとともに、今後の展望と課題を検証する。

2.事例の紹介

(1)本件の状況 岐阜国道事務所が施行する道路事業用地内に登記名 義人52名となっている多数共有地がある。 土地登記簿を確認すると、その52名は明治時代に地元 の構成員であった者であり、現在に至るまで相続等の権 利移動がほとんど登記されていない土地であった。 土地登記簿から「1」で紹介した経緯で多数共有地と なったのではないかと推察できる。 登記名義人の52名は既に全員が死亡しており、法定相 続人は総勢400名以上であった。この中には、遠方、海外、 さらには不明者の存在も想定され、膨大な労力と時間を 要することが懸念された。 地元精通者への聞き取りによると、当該山林は古くか らその地元に居住する住民が共同で管理及び使用収益を 享受してきた共有地であり、個人の持分権利は無く、地 元全体の共有財産であるとのことであった。 また、本件は平成27年5月末現在、供用時期を間近に控 え工事期間を考慮すると今年度中に用地取得を行う必要 がある事業用地でもある。 (2)本件の問題 本件の問題点は、多数共有地である上に登記時点が古 く相続が発生しているにも関わらず権利移動が行われて いないこと及び実質的な権利が地元であることにある。 通常、相続が生じている土地の用地取得については、 登記名義人を起業者に変更するに先立ち相続手続きが必 要となる。 相続手続きとは、相続人に該当する者全員の遺産分割 協議、あるいは法定持分による相続のいずれかの方法で、 当該財産の帰属先を確定させる手続きを指す。 相続手続きには専門的な知識を要すること、専門家に 依頼した場合費用負担が生じること、また本件土地の場

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合、あくまで地元総有の財産であると言うものの、各法 定相続人が相続手続きを進めることについては、難色を 示すことが想定された。 そこで、相続手続きと用地取得について、どのような 手法で法定相続人に説明し理解を得ていくのか、土地の 実質的な所有者である地元と慎重に協議を行った。

3.地元との協議

地元の役員と協議を重ねる中で、問題として上がった のは登記名義人の相続手続きを完了したとしても登記名 義が一時的に現在の名義人に変わるだけで、数十年後に は現状と同様の多数共有状態に陥ってしまう可能性があ るということであった。 地元としては公共用地として取得されない土地につい ても今後の管理が必要である。 そこで、今後は、土地を一元管理でき、さらに相続問 題も発生しない法人格のような機能を持つ組織若しくは 団体を作るという方針となった。 このような、理想的な組織に該当したのが、認可地縁 団体の制度である。

4.認可地縁団体制度について

(1)認可地縁団体制度の概要 多数共有地が存在している一因として、地元や自治会 が不動産等の資産を保有していたとしても、地元や自治 会は不動産登記名義人として認められないことにあっ た。 そのような事態を解消するため、平成3年4月2日公布 施行の地方自治法の一部を改正する法律により「地縁に よる団体」(地方自治法第260条の2)が権利能力を取得す る制度が創設された。 地縁による団体(以下「認可地縁団体」)とは「町又は 字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する 者の地縁に基づいて形成された団体」(地方自治法第260 条の2第1項)と定義されている。 一定の区域に居住する住民を構成員とする団体とは、 簡単に言うと自治会や町内会等を指す。これらの自治会 や町内会は前述のとおり権利能力を有していないとし て、これまで不動産の登記名義人とはなれなかった。 しかし、地方自治法に定める団体を設立することで、 これらの団体が権利能力を取得し、登記名義人としての 地位を取得出来る。 これが、認可地縁団体制度の趣旨である。 (2)設立手続き a)設立要件 設立要件を簡単にまとめると、以下の4つがある。 ・団体が、団体の存する区域の地域社会の維持及び形成 に資する地域的な共同活動を行うことを目的とし、現 に活動しているもの ・団体の存する区域が、住民にとって客観的に明かなも のとして定められていること ・区域内に住所を有する全ての個人が構成員となれ、そ の相当数が現に構成員となっていること ・規約を定めていること 以上の要件は全て充足しなければならない。 従って、認可地縁団体の設立を検討している場合は、 これらの要件を満たしているか十分に検証し、関係する 市町村と事前に調整しておく必要がある。 b)設立までの流れ まず、前述の要件を全て充足する団体の構成員による 総会を開催する。その総会において、設立についての決 議を得る必要がある。 その後、総会決議を証する書類、構成員名簿、保有資 産目録等を作成し市町村長に対して認可申請を行う。 市町村長による認可を受けることで、認可地縁団体が 設立される。

5.認可地縁団体制度を活用した土地整理について

認可地縁団体の設立により、団体名義での不動産登記 が可能となったわけであるが、土地の共有名義状態を解 消するには、関係する法定相続人全員から「委任の終了」 に係る承諾書を徴し、土地名義を認可地縁団体に変更す る登記手続きを経る必要がある。 「委任の終了」の「委任」とは、構成員が認可地縁団 体から登記事務に係る事項を受任していたものと解し、 それが認可地縁団体の設立により不要となったため、受 任していた事務を「終了」するという趣旨である。 なお、相続が生じている土地において、各人が相続登 記を行っているとき、あるいは遺産分割協議を実施した ときは、それらの手続きによって確定した相続人から登 記に必要な書類を徴し、認可地縁団体へ所有権移転登記 を行うことになる。 この場合、徴収する書類の内容については法務局の登 記官と事前に協議を行うことが望ましい。 ここで特に留意しておかなければならないことは、認 可地縁団体となった場合であっても、その土地がすぐに 認可地縁団体名義に変わるわけではなく、関係者全員の 同意はあくまで必要であることである。 本件においても、400名を超える法定相続人について 「委任の終了」に係る書面を徴収しない限り、あるいは 相続登記を行わない限り、登記名義の整理は出来ないと いうことである。 実務の上では、この所有権移転に費やす膨大な時間と

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労力及び費用が、多数共有地を解決する上で大きな障害 となっている。

6.認可地縁団体制度の利点

(1)地元側の利点 a)設立費用 認可地縁団体は、市町村長の認可により法人格を取得 し、法人登記は市町村長が行う告示をもってこれに代え ることとされている。従って、法務局の法人登記簿への 登記は不要であるとされ、設立時にも登録免許税がかか らない。 このため、認可地縁団体が設立時に必要なのは用紙代 程度であり、費用負担を抑えることが出来る。 b)信用性 委任の終了について法定相続人に理解を得る際に、一 番問題となるのは事情を知らない遠方居住者の存在であ る。 それらの関係者への説明時に、当該団体が市町村長に より認可された団体であるという事実は、説明の信憑性 を高める効果があると言える。 c)訴訟 団体は規約に定める範囲内で権利能力を有する。 そのため、財産の維持管理主体となれるだけでなく、 当該財産に関する訴訟当事者となることも可能である。 従って、仮に認可地縁団体への登記整理に非協力的な 関係者がいた場合には、認可地縁団体が所有権確認訴訟 を提起することが出来る。 その際、認可地縁団体の保有資産であるという事実は 原告に有利に働くとの見解もある。 d)維持管理 土地の維持管理・団体運営については、いずれも規約 に明示されているため、比較的容易な組織運営が可能と なる。 e)公租公課 認可地縁団体が収益事業を行わない場合は、租税に対 する減免措置を設けている地方自治体がある。 実際に、本件では法人県民税と法人市民税の一部が免 除となるとのことである。 (2)起業者側の利点 本件のような多数共有地を認可地縁団体として整理す る場合、起業者側にも利点がある。 a)契約相手方の確定 仮に、本件のような認可地縁団体制度を活用しない場 合、土地売買契約の相手方は、登記名義人本人若しくは、 その相続人である。 共有地の売買には、法定相続人全員の同意が必要であ る。そのため、起業者としては、まず法定相続人を確定 させ、確定させた法定相続人全員の同意を得る必要があ る。 契約に際しては、法定相続人全員から同意が得られた 時点で、契約書、遺産分割協議書等の相続書類、登記承 諾書及び印鑑証明書を同時期に徴収する必要がある。 本件のように400名を超える法定相続人がいる場合、説 明を開始してから契約調印までに相当の期間が必要とな るため、説明をしている間あるいは書類収集を進めてい る間に、その法定相続人が死亡し、さらに相続が発生し てしまうことが考えられる。このように、契約対象者の 確定が非常に困難で、不安定なものになる。 しかし、本件のように認可地縁団体を設立し、登記名 義を認可地縁団体名義に集約する方法によれば、認可地 縁団体への移転登記手続きを個別に進めることができる。 これにより最終的には、全ての土地名義が認可地縁団体 名義に変更されることで法定相続人が確定するため、起 業者はその時点で認可地縁団体と契約することになる。 認可地縁団体を活用しない場合と比べて、契約相手方 の確定が容易である。

7.所有権移転の方法と現状

本件については、平成23年12月より地元の代表者と市 町村担当者と具体的な解決策について協議を開始した。 当然、登記名義人の相続等の権利調査は既に行ってい た。その後、地元の代表者と平成24年6月に認可地縁団体 制度の活用を決定し、同年9月に地元説明会を開催、平成 24年11月に地元が認可地縁団体認可申請を行い、同月設 立が認可された。 設立にあたり、地元が役員会を設置し、その役員会と 起業者で協議を進めた。重要事項の決定は役員会で行い、 地元の住民との連絡調整は役員を通して行なった。 このように、地元の役員会、市町村担当者の積極的な 協力により、設立まではスムーズに進むことができた。 ただし、認可地縁団体を設立したからといってすぐに 問題が解決するわけではない。 ようやく、登記名義人の法定相続人から認可地縁団体 への所有権移転を行える状態となったのである。 認可地縁団体より、費用負担を抑えた方法で認可地縁 団体への所有権移転を進めたいという要望があった。 費用負担は、主に登記に係る費用である。補償額の範 囲内ではあるが、契約ができないため補償金の支払いは できず、一時的にでも認可地縁団体の費用負担が発生す るのである。 費用負担を抑えたいという要望により認可地縁団体へ の所有権移転の方法として、登記名義人52名をその1人を 1系統と考え、系統毎に持分を集約し所有権を移転するこ ととした。 また、平成26年度には認可地縁団体への所有権移転に

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非協力的な法定相続人の存在が明確になって来ており訴 訟に発展した場合の費用を見据え、系統全ての所有権が 移転できない場合については、所有権移転に了解を得た 法定相続人から認可地縁団体に持分毎の所有権移転を行 い、訴訟対象者を減らすこととした。 平成27年3月時点の認可地縁団体への所有権移転登記 の状況は、320名を超える法定相続人の協力を得て、41 系統の所有権移転登記完了というところである。 所有権移転が完了していない理由は、反対者(持分の 主張等)、相続人不明(相続人の戸籍が戦災で焼失)、 海外居住者というものである。

8.所有権移転登記ができない場合の対応方法

(1)所有権確認訴訟の提起 反対者については反対者に対して所有権確認訴訟の提 起を行う必要がある。過去の判例によると、認可地縁団 体が有利である。 現在、これに該当する法定相続人は約100名存在してい る。 約100名に対し提訴する場合、裁判に要する費用は訴訟 代理人報酬にもよるが、数十万円となる。 また、提訴から判決まで期間は約半年と言われている。 本件においては、認可地縁団体の役員へ説明したとこ ろその必要性については理解を得たものの、費用負担が 問題であり、総会で合意が得られるかが課題であるとい うことであった。 (2)不在者財産管理人制度の活用 相続人不明者に対しては、不在者財産管理人制度を活 用する。 不在者財産管理人制度とは、家庭裁判所が申立により 不明者自身や不明者の財産について利害関係を有する第 3者利益を確保するため、財産管理人選任等の処分ができ るというものである。不在者財産管理人は、財産を管理、 保存することができる。 なお、公共用地取得時の契約については不在者財産管 理人の権限外行為となる。このため、不在者財産管理人 は財産処分について、権限外行為の許可の申立てを行い 許可の審判を得たうえで、土地の契約を行う。 こちらについては契約締結までに約9ヶ月程度期間を 要する。 (3)海外在住者への対応 海外在住者が日本在住者と異なる点については、「印 鑑証明書」がないということと、「戸籍の附票、住民票」 がないことである。 これにかわるものが「サイン証明」と「在留証明書」 である。 現地の日本領事館へ旅券、運転免許証等を提示して申 請することができる。 この場合、海外在住者は自身に何らメリットのない手 続きのために労力をかけることとなる。さらに、現地日 本領事館から遠方に在住している場合であれば、なおさ ら労力が必要であり協力を得がたくなる。 解決に要する期間は想定できない。

9.認可地縁団体が所有する不動産登記に係る特例

制度について

このような状況下で、「認可地縁団体が所有する不動 産に係る登記の特例」が平成27年4月1日に施行された。 (1)認可地縁団体が所有する不動産登記に係る特例制度 の概要 全国的に認可地縁団体に所有権を移転するには、本件 と同様膨大な時間と労力及び費用が必要であることが大 きな課題となっていた。 法定相続人に理解を得られず、公共用地取得が困難で あることから事業計画を変更せざるを得なくなった事例 もあるほどである。 また、全国の認可地縁団体は平成25年4月時点で44,008 団体あるが、このような多数共有土地問題を抱える認可 地縁団体は、16,296団体存在している。今後、さらに多 くの事業に影響が出ると言われている。 そこで、このような問題に対応するため、地方自治法 の一部改正が平成26年5月30日公布され、「認可地縁団体 が所有する不動産に係る登記の特例」(地方自治法第260 条の38)が平成27年4月1日に施行された。 認可地縁団体が長期に渡って管理している土地につい ては、認可地縁団体が所在する市町村長に対して、疎明 資料を添付し認可地縁団体の所有する不動産である旨の 申請を行い、市町村長が所有を認めた際に証明書が交付 される。この証明書により認可地縁団体への所有権移転 登記又は、保存登記が可能となるというものである。 また、「疎明資料」の「疎明」とは、確からしいこと を推測できるという意である。 (2) 認可地縁団体が行う「認可地縁団体が所有する不動 産に係る登記の特例」の申請手続について 認可地縁団体側が申請を行い、起業者と契約を締結す るまでの実際の流れについて参考例として紹介する。 a) 事前準備 事前準備としては以下の2つがある。 ・申請手続きの市町村担当課と書類作成等について事前 相談を行う ・申請の該当不動産に対する法定相続人の把握と法定相

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続人に対し、認可地縁団体名義へ変更することへの説 明を行うこと(同意を得ることが望ましい) ただし、法は法定相続人への説明については触れてお らず、方法等については市町村の担当課、認可地縁団体 の判断によるものとなる。 説明、同意については、申請の事前要件として必須条 件とはなっていないが、異議の申述が申請後の公告手続 き期間中に起こらないようにするための1つの手段であ るとお考え頂きたい。 本件においては、現在この事前準備の段階であり、市 町村担当課との協議を行っているところである。 また、事前説明については、認可地縁団体へ所有権移 転登記を進める段階で所在が判明している法定相続人全 員に説明を行っているため、これをもって申請手続きに 望む考えである b) 総会の開催 認可地縁団体の規約に基づき総会を開催する。必要と なる総会での議決内容は以下の2つである。 ・申請対象不動産の所有に至った経緯についての議決 ただし、申請対象不動産について、認可地縁団体が 市町村に提出している保有資産目録又は、保有予定資 産目録に記載がないものに限る ・「認可地縁団体が所有する不動産に係る登記の特例」 制度を申請することについての議決 c) 「認可地縁団体が所有する不動産に係る登記の特例」 の申請 認可地縁団体は市町村長に対して申請を行う。 その際に、認可地縁団体の所有不動産であることの疎 明資料を添付する必要がある。 疎明資料として明示する内容を簡単にまとめると以下 の4つである ・認可地縁団体が不動産を所有していること ・認可地縁団体が不動産を10年以上所有の意思をもって 平穏かつ公然と占有していること ・不動産の表題部所有者又は所有権の登記名義人の全て が認可地縁団体の構成員又はかつての構成員であった ものであること ・不動産の登記関係者(表題部所有者、所有権の登記名 義人、これらの相続人)の全部又は一部の所在が不明 であること d)疎明資料の確認と公告手続き これらの疎明資料の確認ができた場合、申請をうけた 市町村は、3ヶ月以上の公告手続きを行う。 確認ができなかった場合には、申請書の返却を行う。 e)異議の申述と証明書の交付 公告期間において異議の申述がなければ、市町村長は 「不動産の所有権の保存又は移転の登記をすることにつ いて登記関係者の承諾があったとみなし、市町村長が公 告を行ったこと及び登記関係者等が公告期間内に異議を 述べなかったことの証明書(以下、「証明書」という。) の交付を認可地縁団体に行う。 異議の申述があった場合には、資格要件の確認を行う。 資格要件を簡単にまとめると以下の2つである。 ・不動産の登記関係者(表題部所有者、所有権の登記名 義人及びこれらの相続人)であること ・不動産の所有権を有することを疎明する者であること 上記2点のいずれかに該当する資格が認められた場合 には特例手続きを中止する。 f)所有権移転登記 認可地縁団体は、市町村長から交付された証明書を用 いることで、不動産の所有権の保存登記及び所有権の移 転登記を申請することができる。 手続き全体の流れについては図-1のとおりである。 地縁団体 申請 (疎明資料の添付) 確認できた場合 異議の申述がない場合 申請書の返却 法務局 登記 (所有権の保存又は移転 の登記) 市町村 疎明資料の確認 確認できない場合 公告手続 異議の申述があった場合 確認できた 場合 確認できな い場合 特例手続の中止 証明書の交付 異議を申述した者に係る 資格要件の確認 図-1 「認可地縁団体が所有する不動産に係る登記の特 例」手続きフロー g)総会の開催と契約締結 所有権が認可地縁団体名義に移転すれば、公共用地取 得のための手続きである起業者との契約締結が可能とな る。 契約締結は資産の処分に該当するため、契約締結前に 認可地縁団体の規約に基づき、総会の議決が必要となる。

10.認可地縁団体が所有する不動産に係る登記の

特例制度の活用による展望と課題

本事例である「認可地縁団体が所有する不動産に係る 登記の特例」による効果と課題について考える。 施行以前は、認可地縁団体と用地取得契約を締結する ためには、法定相続人全員から個別に書類を徴し、認可

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地縁団体名義へ所有権移転登記の手続きを経ることが必 要であった。 本件においても、「7」でも触れているとおり、地元 が認可地縁団体を設立してから登記名義人52名中41名の 所有権移転登記を認可地縁団体名義にするまでに要した 期間は約3年に及ぶ。 さらに、所有権移転登記を進めるためには、反対者に 対しての所有権確認訴訟の提起、不在者財産管理人制度 等の活用が必要である。 全ての所有権が認可地縁団体名義となるまでには認可 地縁団体の設立から4年以上、地元との協議、認可地縁団 体設立、権利調査等を含めると5年以上の年月を要するこ とが想定される。 「認可地縁団体が所有する不動産に係る登記の特例」 制度の活用により、早ければ認可地縁団体設立から約半 年で市町村長から証明書を交付されることも可能である。 ただし、公告期間中の異議の申述があった場合、特例 手続が中止になることに十分に理解する必要がある。 このため法定相続人に対して予め十分な説明を行い、 同意を得た状態で申請手続きを行うことが望ましいこと は明らかである。 特に登記関係者(表題部所有者、所有権の登記名義人、 これらの相続人)については、要件の中で申述内容には 触れていない。 つまり、異議の申述を行い申述者が登記名義人の法定 相続人であれば特例手続きを中止すると解せる。 特例手続きの中止は「認可地縁団体が所有する不動産 に係る登記の特例」制度の活用ができなくなることと同 意である。 「認可地縁団体が所有する不動産に係る登記の特例」 制度の活用ができなくなると、施行前の方法をとらざる を得ないため、膨大な時間と労力及び費用の消費に対し て何ら解決にならないのである。 現在、本件においては認可地縁団体への所有権移転に 同意を得られていない法定相続人が存在しており、現在、 認可地縁団体の役員とともに反対者への対応方法につい て協議をしているところである。 どういった状況で申請手続きに望むのかは、認可地縁 団体の判断にもよるところであるが、異議の申述を行う 可能性のある反対者への対応が、今回施行された「認可 地縁団体が所有する不動産に係る登記の特例」活用時の 課題であると考える。 しかし、「認可地縁団体が所有する不動産に係る登記 の特例」制度はそれにさえ注意すれば、賛成者、反対者、 不明者問わず、市町村長から交付された証明書をもって 認可地縁団体名義へ保存登記及び所有権移転登記ができ るというものであり、このこれまで最大の課題であった 膨大な時間と労力及び費用の消費を大幅に削減し克服で きると考えられる。

11.本件の現状と今後

本件については、認可地縁団体を設立した地元及び市 町村の協力のもと、実に3年余の間、認可地縁団体名義へ の所有権移転の手続きを進めてきたところである。 ほとんどの登記関係者は早くから認可地縁団体への所 有権移転に同意頂いたものの、それ以外の登記関係者に ついては自己の法定持分を主張する等の理由で、なかな か同意が得られなかった。 前述したとおり、現在は、所有権移転が認可地縁団体 名義に52系統中41系統完了している。 残る11系統の理由内訳は、下記の3つである。 ・海外居住者であるため同意は得ているが、書類の手続 きができていない(1系統) ・登記関係者の一部が自己の法定持分を主張する等の理 由で認可地縁団体への所有権移転に反対している(7系 統) ・相続人が不明の状態である(3系統) 現在、当該市町村も、認可地縁団体も早期に解決でき ることを強く望んでおり、「認可地縁団体が所有する不 動産に係る登記の特例」制度の活用に向けて認可地縁団 体とともに当該市町村の担当課と協議を行っているとこ ろである。 今後は、「認可地縁団体が所有する不動産に係る登記 の特例」制度を活用して認可地縁団体名義へ所有権移転 を進め、早期の用地取得を実現させるべく協議を進める 予定である。

12.まとめ

明治時代の多数共有地の用地取得について、地方自治 法第260条の2「地縁による団体」及び同法260条の38「認 可地縁団体が所有する不動産に係る登記の特例」を進め ている事例を紹介してきた。 多数共有地は、時間の経過とともに相続人の数もふく れあがり、平成22年以前の戸籍については保管期間が80 年であることから登記関係人の特定ができなくなるとい われている。 多数共有地問題は、それが、事業進捗並びに事業着手 に与える影響が大きく、解決に向けて取り組むべき課題 であると言える。 本事例については、多数共有地の解決に必要な時間と 労力及び費用の大幅な削減が想定できた。 本事例の検証が、多数共有地問題の解決手法の1つとし て参考となり、より有効な手法への道すじとなることを 期待している。

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