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(1)

省エネ運転制御を用いた自動運転車両の開発

Development of an autonomous driving control vehicle using energy-saving control

三 島 康 之*1 Yasuyuki MISHIMA 北 村 高 志*1 Takashi KITAMURA 1. はじめに 自動車から排出される CO2 の削減および省エ ネルギー化は重要な課題となっており,ITS 技術 を利用した輸送部門の省エネルギー化を図るため, (財)日本自動車研究所(JARI)を始めとする官民 学の16 機関は,エネルギーITS 推進事業「自動 運転・隊列走行に向けた研究開発」プロジェクト を(独)産業技術総合開発機構(NEDO)より受託し 要素技術実用化の推進に取り組んでいる. 自動運転・隊列走行の研究開発では,高速道路 と市街路での自動運転技術による CO2 削減を目 指し開発を進めている.高速道路では,車車間通 信や各種センサを用いて電子連結による車間距離 4m の隊列走行を実現し,空気抵抗の低減による CO2 削減および道路利用の効率化を行う.また市 街路では,車両の各種情報を利用した最適速度制 御による高度な省エネ走行を実現するとともに, 周辺車両への影響を含めた交通流全体における CO2 削減と省エネの実現を最終的な目標として いる(図1,図 2). 自動運転による省エネ走行では,ドライバが入 手できる情報以外の様々な情報を車両の制御に利 用することにより,車両のエンジン特性や道路情 報を用いて燃料消費量を予測し,予め効率の良い 速度パターンを計算して走行することが可能であ る.このためドライバの個人差に因らない安定し た省エネ運転が可能となる. 今回の報告では,車両モデルの精度について, 単独車両による市街地コースでの省エネ走行実験 とシミュレーションを比較し,自動運転による省 エネ効果をドライバの運転と比較検証した結果に ついて紹介するとともに,省エネ運転についての 考え方も合わせて紹介する. 図1 自動運転のコンセプト 図2 実験車両(市街地用小型トラック) 2. 自動運転省エネ走行のための車両制御 自動運転による省エネ走行を行うためには,精 度の高い車両制御モデルと実用性の高い省エネ走 行アルゴリズムの開発が重要となる.たとえば, ある重量の車両をある速度パターンで走行させる 時に必要とされる駆動トルクは,車両の加速に必 要な力と走行抵抗の和に比例したものになる.設 定した速度パターンで走行するには,要求される 駆動トルクを出来るだけ正確に出力する精度の高 いエンジン制御と車両制御が必要となる. 本システムでは要求される目標加速度に必要と JARI Research Journal 20120604 【研究活動紹介】 *1 一般財団法人日本自動車研究所 ITS研究部 発IC 着IC 発荷主A 発荷主B 発荷主C 着荷主A 着荷主B 着荷主C 自動運転・隊列走行 省エネ走行 (市街地) 省エネ走行(市街地) 自動運転・省エネ走行 自動運転・省エネ走行 市街地 都市間 市街地 高速道路 隊列走行 (都市間) 高精度GPS 操舵モータ ブレーキアクチュエータ ECU 観測室

(2)

なるトルクを車両モデルから導くことによって, エンジンとブレーキの制御を行った.自動運転省 エネ走行の実用化を考えた場合,車両モデルの各 コンポーネントは出来るだけ設計値を用い,同じ 構成の車型の車両には同じ車両モデルを利用出来 る事が望ましい.開発段階でチューニングによる 解決を行うと,実用化の際に省エネ効果の汎用性 確保が難しくなると考えられるからである. 図3 車両モデルのイメージ また省エネ走行には,効率の良い走行パターンが 必要であるが,ドライバが省エネ運転を行う場合, 経験や運転技術などの個人差や道路環境の変化等 の影響により,常に省エネ運転を行うことは難しい. 自動運転では,エンジンや車両の状態などの情報を もとに仕事量を最小にする速度パターンを計算す ることにより,走行環境に応じた最適な省エネ運転 を実現できる最適速度パターンを検討した. 最適速度パターンを計算するにあたり,車両の燃 料消費量と相関があると思われるさまざまなモデ ルの検討を行った.車両の重心運動の仕事量は最も 基本的な物理量のひとつであり,仕事量が最小とな る速度曲線は,エネルギー消費も最小となると考え られる.自動運転省エネ走行では,燃料消費量を最 小にする速度パターンとして,仕事量(仕事We) を最小にする最適速度パターンを適用した. 3. 最適速度パターン生成アルゴリズム 仕事Weを最小にする速度パターンv(t)は,一 定時間Tで距離Lを走行する条件で求める.走行 区間の道路勾配は既知とし,車両が発生する力を Fとした運動方程式は(1)式で表わされる. R F dt dv m   (1) R は走行抵抗であり,(2)式で表される.

cos

sin

2

1

AC

v

2

mg

mg

R

D

r

(2) 第1 項は空気抵抗,第 2 項はころがり摩擦抵抗, 第3 項は勾配抵抗で θ は距離 s の関数である. 仕事Weは回生制動は行わないものとして,負 の力(制動力)は無視すると,(3)式で示される. vdt F ds F W T L e ) 0 , max( ) 0 , max( 0 0

  (3) Weを最小化する速度 Vw(t)は,エネルギー消費 を最小にするという意味で最適と考えられる.車 両の燃料効率がほぼ一定であれば,Weは燃料消費 量に比例し,速度Vw(t)は燃料消費量を最小化する ことが出来る. 速度 Vw(t)の計算は動的計画法の考え方に基づ き,Weを速度パターンに,v(t)を変数にとる汎関 数とみる. 時刻t,距離 s,速度 v の状態に至る最小の仕事 We(t, v, s)は,初速 v0, 距離 s0 から加速度a で ts秒 間走行するときの仕事をD(ts, v0, s0, a) としたと き,tsを十分に小さく取れば(4)式で表すことがで きる. (4) ここでΑ は駆動可能な加速度の集合とし

v

s

を(5)式とする. s s s t v v at s at v ) ( 2 1 2     (5) 時刻0 で距離 0,速度 0 の状態から発進した場 合の仕事We(t, v, s)は(6)式で表わされる.

)

0

,

0

(

)

0

,

0

(

0

)

,

,

0

(

s

v

s

v

s

v

W

e (6) 単位時間ts,単位加速度asを定め,時間と駆動 加速度(m/s2 車重(kgf) 走行抵抗(N) エンジンモデル エンジントルク(N) ブレーキトルク(N) 走行抵抗モデル ブレーキモデル パワートレイン モデル )} , , , ( } , , ( { min ) , , ( a s s v v t D s s v v t t W s v t W s s e a e              ρ:空気密度,A:前面投影面積,CD:空気抵抗係数,μ:路面摩擦例数, m:車重,g:重力加速度,θ:道路勾配

(3)

可能な加速度Α を離散化し,単位速度 vs,単位距 離ss(7)式で,式(4)を離散化し(8)式とする. 2 2 1 s s s s s s t a s t a v   (7) (8) n,i,j,k は離散化した加速度,時間,速度,距離 である.(8)式を使って,(6)式の時刻 0 の条件から 目標到着時点まで計算すると,最小仕事を漸近的 に求める事が出来る.各ステップにおけるmin で 選択した加速度を記録し,それを目標到着時点か ら出発時点まで逆に辿ることによって最適仕事速 度パターンを計算できる. また,ここでの速度Vw(t)の最適性は燃料効率を 一定と仮定しているので,加速度の選択範囲Α は, 燃料効率を考慮して決定する必要がある.エンジ ンの燃料効率の変化を評価するために,エンジ ン・パワートレインを含めたモデルで検討した. まず,燃料消費量C を求めるため,タイヤトルク Ttire,回転速度ωtire,慣性等価質量me,ギア比Ntf, エンジンのトルクTe,回転速度ωeηtfをトルク伝 達効率,Q をトルクマップとし以下のように計算 する.meはギア比の2 次関数で,R は(2)式で定義 した走行抵抗である. tire tire e tire tire R v R dt dv m m R T

2 } ) {(     tire tf e tire tf e tf

T

N

T

N

,

(9)

TQTe e edt C 0 ) , (   (10) (10)式より,燃料消費量 C を最小化する速度 VC(t)も同様の方法による計算で求め,実車に適用 して評価を行った. (11) C(t,v,s,g)は時刻 t,速度 v,距離 s,ギア g の状態 に至る最小の燃料消費量,Dc(ts,v0,s0,a,g)は,速度 v0,距離s0,ギア位置g の状態から加速度 a で走 行するときの燃料消費量である.Γ は g とその上 下のギアを表す(シーケンシャルシフト). しかし,この方法で計算した速度パターンはト ルクマップやシフトスケジュールに強く依存する ため,実車での走行が困難であることが分かった. そのため,このモデルを用いて加速度の選択可能 な範囲を決定し,この時の仕事最小速度パターン を自動運転用の最適速度パターンとした. 図4 は,加速度の選択範囲Αの最大値を変えて, 最小仕事パターンと最小燃料パターンを計算した 結果である.高い加速度を選択可能にすれば仕事 は減少するが,高すぎると燃料効率が悪化し燃料 消費量は増加する.加速度の選択範囲Αは,この 計算結果を元に決定した. 図4 仕事と燃料消費量の計算値 4. 自動速度制御 速度制御を行うための自動速度制御モデルの概 要について述べる.制御目標を時系列の距離関数 とすると,計算上の走行抵抗と加速度からタイヤ に加わるトルクと回転速度が計算出来る.(9)式か らエンジントルクとエンジン回転速度を計算し, トルクマップからアクセル開度を決定し,タイヤ トルク-ブレーキ圧マップとエンジンブレーキ効 果のマップからブレーキ操作量を決定し,車両の 加速度の制御を行った.実車での実走ではモデル 誤差や外乱による誤差を補正するために,タイヤ トルクに走行距離の偏差のPID フィードバック 項を加え,ギア位置は,AT のシフトスケジュー ルに従う設定とした. ◆ fuel consumption ◆ work )} , 2 , ( } 2 , , 1 ( { min ) , , ( n n j k n j D n j k n j i W k j i We n e           



) , , , , ( ) , , , ( min min ) , , , ( g a s s v v t D g s s v v t t C g s v t C s c s a g                 

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5. 車両モデルの精度の検証結果 シミュレーションによる燃料消費量の計算結果 を実験車の燃料消費量の実験結果と比較し,車両 モデルの精度の検証を行った.車両モデルの精度 が十分高ければ,実験車で走行した時とシミュレ ーションの結果が同様の燃料消費量を示すはずで ある.様々な走行パターンでの実走データが計算 値と同じ結果になるのであれば,自動運転の速度 制御に最適速度パターンを適用することによって 省エネ運転の実現が可能になると考えられる. 今回の検証では,複数の走行パターンでの比較 を行うため,シミュレーション実験と実車実験を 行い,それぞれの燃料消費量が同様の結果になる か検証を行った.表1 に実験車の諸元を示す.試 験コースは,図5 に示す道路線形を持つコースを 日本自動車研究所の模擬市街路に設定した. 表1 車両諸元 JARI自動運転車両の主要諸元 数値 1 全長mm 7005 2 全幅mm 1975 3 全高mm 3400 4 重量kg 5300 5 ホイールベースmm 2795 6 最小回転半径mm 6500 distance(m) h ei gh t( m ) (JARI模擬市街路) 図5 検証用コース概略 平均速度と発進加速度がそれぞれ異なる複数の 実車による走行速度パターン(図 7,図 9)と, その実車実験の結果と燃料消費量のシミュレーシ ョン実験を比較した結果(図 6,図 8)を示す. その結果,実車とシミュレーションの双方ともほ ぼ同様の傾向を示し再現性も高いことを確認する ことができた.以上のことから,自動運転省エネ 走行に必要な精度の高い車両モデルの開発が出来 たと言える. 図6 平均速度の異なる速度パターンの検証結果 図7 平均速度の異なる速度パターン 図8 発進加速度の異なる速度パターンの検証結果 図9 発進加速度の異なる速度パターン 33m 27m 100 200 300 400 500 600 700 800 900 ◆ act ◆ sim ◆ act ◆ sim ave speed(km/h)

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6. 省エネ効果の検証結果 自動運転による省エネ走行による CO2 削減/ 省エネ効果を検証するために,模擬市街路に設定 した図5 の試験コースにて複数のドライバによる 燃費評価実験を実施し,自動運転省エネ走行との 燃料消費量の比較を行った.評価実験には 21 名 のドライバが参加した. ドライバには普段の走行方法から燃費モニタを 参考に燃費の良い走行方法で走行するように指示 を行い,自動運転省エネ走行は,仕事量を最小に する走行パターンを使用した(図10). 図10 ドライバと自動運転の燃料消費量比較 実験の結果,自動運転の最適速度パターンによ る走行では,ドライバの運転と比較して全速度域 で燃料消費量が少なく,省エネ効果が高いことが 確認出来た(図11). 図 11 自動運転とドライバの省エネ運転比較 7. まとめ ITS 技術を利用した単独車両による自動運転省 エネ走行の実験を実施し,車両モデルと最適速度 パターンの妥当性の検証と省エネ運転の効果を検 証した.自動運転省エネ走行は,精度の高い車両 モデルと効率の良い最適速度パターンを車両制御 に用いることにより燃料消費量を抑え CO2 を削 減できることを確認した. 自動運転技術の開発過程で得られた成果をどの 様に社会に還元するかが課題になるが,省エネ走 行は社会の要望が高く,より早い段階での実用化 が求められている.今後は自動運転省エネ走行が 周辺車両に与える影響など,交通環境全体での CO2 削減への取組みについても検討を進め,より 実用性の高いシステムの実現を目指し開発を行う 予定である. 参考文献 1) エコドライブ普及促進協議会:エコドライブ普及・推進 アクションプラン(2006) 2) 青木啓二ほか:自動運転・隊列走行システムの開発(第 1 報),自動車技術会学術講演会前刷集, No94-9,p.1-4 (2009) 3) 青木啓二,森田康裕:自動運転・隊列走行システムの 開発概要(第 1 報),自動車研究,Vol.31,No.10, p8-10(2009) 4) 鵜川洋:GPS を用いた自動運転システムの開発,自動 車研究,Vol.32,No.1,p.35-40(2010) 5) 鵜川,北村:省エネルギー速度制御による燃費改善,自動 車研究,Vol.33,No.3,p.6-10(2011) 6) 鵜川洋,北村:省エネ速度パターンでの自動運転によ る 燃 費 改 善 , 自 動 車 技 術 会 学 術 講 演 会 前 刷 集, No.99-11 p.7~10 (2011) 7) 鵜川,北村:省エネルギー速度制御による燃費改善, 自動車研究2011.3,p.6-10(2011)

8) Karl Johan Astrom and Richard M. Murray. Feedback Systems,PRINCETON UNIVERSITY PRESS(2009)

9) Gillespie, T., "Fundamentals of Vehicle Dynamics", SAE Technical Paper R-114, (1992)

average speed(km/h) 0.119 0.106 0.094 0.093 0.08 0.085 0.09 0.095 0.1 0.105 0.11 0.115 0.12 0.125 0.13

worst dri ver aver agedriver best driver opti mal

fu el co ns um pt io n( L) 最適速度パターンの 燃料消費量

参照

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