【論 文
1
UDC :624.
073.
14 日本建築学会構造系論文報告集 第 373 号・
昭 和 62 年 3月裁
断
図 を も
と
に し た
膜
構
造
物
の
実
初期
つり
合
い
状
態
の
解析
正 会 員 正 会 員 正 会 員坪
吉
黒
田
田
川
張
泰
二*新
* *嗣
* * *1.
序 近 年,
大空間を合理的に覆う構法 として膜構造が注 目 さ れ,
わ が国に おい て も 多くの実 験 的お よ び解 析 的 研 究Z〕−
S)をベー
スと して いくつ か の恒久 膜 構 造 物が実際に 設計・
施工91〜
13〕さ れて いる 。 膜 構 造 物の解 析・
設 計 を行 う場 合,
その構 造 的 な特 殊 性か ら,一
般の構 造 物と は異な る解 析・
設 計が必 要であ り,
現 状で は図一
1の左 側に示す フ ロー
に従っ て設 計さ れて いる。 第1段 階の解 析は初 期 形 状 解 析と呼ば れ,
構 造 的な膜 応 力の つ り合い条 件を満 足しつ つ 設 計 者の意 図 する曲 面 形 状に近い形 状 を決 定する解 析で ある。
こ の初 期 形 状 解 析に関して は,
石 井の等 張 力 曲 面 を差 分 法 あるいは フー
リエ 級 数 展 開 法に よ り数 値 解 を求める方 法14) , 安 宅 等に ょ るHellinger
−Reissner
の 変分原理に基づ く汎 関 数の 停 留条件よ り形 状 を決 定す る方 法15〕,
有限要 素法に よ り 膜 応 力を 既知と して変形後のつ り合い条件よ り形 状 を 決 定す る手法が 石井16) ,Haberi7
〕 , 吉田 1B} 等に よ り な さ れ て いる。 第 2段 階の変形 解 析は,
初 期 形 状 解析に よ り決 定さ れ た曲 面に種々 の外 力が作 用 し た時の変 形・
膜 応 力 を求め 膜構造の安全性を評 価 する解 析であ る。 特に膜 構 造にお い ては,
大変形によ る幾 何 学 的 非 線 形 性,
膜 材が圧縮 力 に抵 抗で き ないために生じ る 「しわ (Wrinkling)の処 理,
あ るいは膜 材 料の持つ 異 方 性・
材 料 非 線 形 性 等 を考 慮す る必 要が ある。
こ の変 形 解 析に お い て も,
幾 何 学 的 非 線 形 性 を考 慮 し た解 析 手 法が数 多 く提 案さ れ ている。
特に膜 構 造 特 有の 「Wrinkling
」の処 理に関し ては, 横 尾 等に より軸 対 称 空 気 膜 構 造のWrinkling
状 態を シェ ル 理 論に基づき解 析 し たもの19),
吉 田 等に よ る岩 盤の No−
Tension 解 析に適 用 されて い る応 力 遷 移 法 を用いた ものee ),
真 柄 等に よ る Wrinkling の基 本メ ジ ャー
と して 「主ひずみ」を用いた もの Zl},
安 宅 等に よ る非 線 形 計 画 法 を用い て圧縮主応 力 を生じ さ せ ない も の等が あ る22) 。 既往の設 計・
解 析の フロー
初期 形 状 解 析 変 形 解 析 INP凵T 膜 材の 材 料 特 性 外 荷 重 (雪・
風 ) 実 際の施工 の フ ロー
平面展 開 図 の作成 ↓ 平 面 裁 断 図の作 成o
OUTPUT 外 荷 重に よ る変 形 膜 応力 分布 ↓ 安全 性 の評 価 膜パ ネ ル の溶 着 ↓ 膜パ ネル の 取 付 ↓ 膜張 力導入一
実 初 期 釣 合 状 態 完 成 裁断図 を もとに し た一
実 初 期 釣 合 状 態の解 雀 本 論 文の一
部は文 献1)におい て発 表し た。
章 鹿 島建設 技 術 研 究 所 # 鹿島建設 情 報シ ステム部 * * * 鹿 島建 設 構 造 設 計 部 (昭 和 61 年 10月9日原 稿 受理 } 図一
1 解 析のフロー
以 上に示し たよ うに膜 構 造の解 析に関し て多く の 研究 者によ り種々 の方 法が提 案さ れ ている が,
その大部 分は 最 初に膜 応 力 分 布 (一
般 的に は等張力)を仮定して初 期 つ り合い形状 (一
般 的には等 張 力 曲面 ) を求め,
その後 荷 重 時の変形 解析を実 施し,
構 造 物の安 全 性を評 価して い る。
一
方, 膜 構 造 物の実際の施工手 順を考えて み ると,
現 状では図一
1の右 側に示す よ うに,
初期形 状 解 析よ り求 め ら れた曲 面 (一
般 的に は非可 展曲 面)を 「裁 断 図」と 呼ば れ る数 枚の平 面 膜に分 割し, これ を相互に接 続 (溶 着 )し所 定の境 界 構 造に取り付けてい る。
この裁断 図は一
般的に等 張 力 曲 面を測 地 線 を利用 してい くつ かの 平 面一
101
一
Architectural Institute of Japan
NII-Electronic Library Service Arohiteotural エnstitute of Japan
展 開 図に分割し23}
−
26〕,
こ の展開図 か ら初 期 張 力による 膜 材の伸び 量 を経験 と 「カン」に基づ い て差し引い て作 られて い る。 し た がっ て, 非 可 展曲面を平 面展開する時 の誤 差お よ び初期張力に よ る膜材伸び量の推 定 誤 差 等に より,
実 際に施 工 さ れ た膜 構 造 物の張 力分布お よ び形 状 は最初に仮定し た等 張力状態お よ び等張力 曲面と一
致す る保 証は な く,一
部に過大な張力が発生 し た り,
逆に張 力が導入 さ れ ず 「し わ」が 発 生 す る 場合も あ り得る。
こ の よ うな実 際の施工手順を考慮す る と,
前述 した既 往の解 析 手 法では構造物の真の安全性お よび挙動を評価 で きず, 実 際の施工におい て与え ら れ る裁 断 図を 既知と し た初期 形 状 解 析 を な す必 要がある。 こ の 種の実 際の施工手 順 を考 慮し た解 析は,
筆者等2η に よ り ケー
プル ネッ ト構 造 物 を対 象と してすで に提案さ れ てい る。一
方, 膜 構 造に関 して は最 近Phelan 等 28)に よ り既往の設 計 手 法 とは異な り裁 断 図をべ一
スと し た新しい設計手法 (
Integrated
Design
Method )の提案が なさ れてる が
,
具体 的な設計解析 手法の確立はま だ な さ れ て い な い のが現 状で あ る。本論文で は, 実 際の施 工時に おいて与え られ る裁 断 膜 パ ネル を相 互に溶 着し所定の境界に取り付け た時のつ り 合い 状 態 を新しく 「実 初 期つ り合い状態」と定義し
,
こ の実初期つ り合い状態に お け る膜 張 力 分 布お よ び曲 面 形 状を求め る新しい解 析 手 法 を提 案 する。ll.
問題の定 義 お よび 解 析の仮定本論文で新し く定 義する 「実 初 期つ り合い状 態」と は, 図
一2
に示す よ う に, 寸 法 が既 知の数 枚の平 面 膜パ ネル を相互 に接 続 (溶 着 )し,
所 定の境界位置に取り付け た 時のつ り合い状 態で あり。 こ のつ り合い 状態は既 往の設 計で用い られ てい る等 張 力 仮定に基づ く初期つ り合い状 態と は異な り張 力 分 布は一
様では な く形成さ れる曲 面 も 等 張 力曲面で は な い。
本 論文は, 前 述の よ うに定 義し た 「実初期つ り合い状 態」を決定す る解 析 手 法 を提案す る も の であり
,
解 析に おける主要な仮定条件を下記に示す。(1) 寸 法が既 知の膜パ ネル は平 面を な し無張力状態 で ある
。
(2 ) 膜材料は織糸方 向 (縦 糸お よ び横糸)を考 慮 し た直交 異 方性の弾 性 体で ある。 (
3
> 膜パ ネルは 三角形 膜要素の集 合で モデル化し,
要 素内で の膜 応 力は一
定で あると仮 定す る。(4 ) 膜パ ネルの周囲に位 置す る要素節点は溶着によ
り隣接パ ネル に取り付 く節 点 (溶 着 節 点)と境 界 に取り付 く節 点 (境 界 節 点 ) より構 成さ れ る。
(
5
> 相互に溶 着さ れ る隣 接 膜パ ネル上の一
対の 溶 着接点は同
一
節点 とし, 解 析におい て同じ座 標値と す る。
(6 ) 境界節点は与え られ た既 知の境 界位置に固定さ れ, 解析に おいてこ の位 置は移 動し ないもの と す る。 皿 定 式 化お よ び解析手法 1
.
つ り合い方程式 前 述した仮定に基づ き,
無 応 力 状 態の平 面 膜パネル を 相互に溶 着 し所定の 境 界位置に固定し た時の最 終つ り合 い状 態 を 考え る。 そ の中の 三角 形 要 素 を取り出し,
図一
3に示 すよ うに要 素内で一
定の膜 応 力σ( ax,
σ s,
Txy〕と等 価な仮 想 辺 張 力F
帆 ,,F
」.
,
F
融 を定 義すると両者の間 に次式の線 形 関 係が成 立す る。
laF
=
[T ]副 「・
・
……・
…………・
…・
…・
………
(1) こ こ で変 換マ トリックス [T
]は次 式で与え られ る。
[・…i
[
蕪 撚 灘
]
………・
…・
……・
・
一 ………・
(2) t:膜 要 素の厚さhs
,
島,
hm
:節点i,
ゴ,
m か ら対辺に下し た垂線の長さlw,
ntw
等 :辺 むの要素局所座標系に対す る方 向 余 弦 最 終つ り合い状態におい て外力 は な くt 三 角 形 要 素の 膜 応 力 すな わ ち等価 辺 張力だ け でつ り合っ てい るもの と 仮 定すると,
任 意の 自由節点i
にお け るつ り合い方 程 式 は次 式で表さ れ る。Σ
1
λ‘h ”w, o“IT
Fo=
10
} T…………一 …・
・
一
(3
) JF
“ :膜 要 素の辺ij
の等価辺 張力h
,,μ“, Ow:辺ij
の全 体 座 標系に対す る方向余弦 Σ :i節 点を共 有す る膜 要 素の辺の総 和 Ji
および ノ節 点の全 体 座 標系で の座標を(Xt,
Ys,
Z
,}, (X丿,Y
丿,
Z
」)と すると,
く
・ー
、
C、
.
裁 断 平 面 膜 図一
2.
A’
B C’
D:
形 成 さ れ る 曲面 実 初 期つ り合い状態の定 義 図一
3 モ デル化お よび等 価 辺 張 力一
102
一
N工 工一
Eleotronio LibraryλtJ
=
(X,−
L X ‘)f
1. μ‘,=
(Y
∫− Y
‘)/t
“………
………
(4 ) η‘,; (Z
丿一Z
‘)/1
,丿tw;
[(X
丿一
丿【t} 2 十(y
,− y
∂ 2 十(Z
,− Zt
) 2 ]1〆2・
・
一
(5
) (4
}, (5
}式を (3
)式に代入 し, (3
)式を すべ て の 自由節点に関し重ね合わ せ る と系全体の つ り合い方 程 式が得ら れ る。
2.
定 式化 つ り合い方 程 式に おいて, 何 を既 知 変 数と し何 を未 知 変数にする か に よ り次の 二 つの定 式化が考え られ る。
定 式 化1
:膜 応 力 を既 知と し, 節点 座標を未知変数 とし た定 式化。
定式 化2 :膜応力お よ び節点座標を ともに未 知変数 と し各膜要 素の無応力状態に お け る寸法 を既 知量 と し た定 式化。
上記の定式化の 中で,
定式 化1
は既往の初期 形状解析 と同じ も の で あ り, 膜応 力 分布を与え て そ れ につ り合う 曲面形状を求め る もの であ る。
こ の 場合には (1 )式よ り,
IF
}「=
[T
]−
11al「・
…………・
…・
………・
………
(6
) とな り, [T]−
1 の陽な表 示は下 式と な る。 [・・一
・−
ll
・
[
2
ざ
一
(α 2十 δ2−
c2)(α2一
わ2−
c2)/8αム ど〕(α2− b2
十c2)/4
ム c(α2十b2−
c2)/4
∠1
]
一
… α,b,
c :三角形膜 要素のつ り合い 後の辺 長 △:三 角形膜要 素のっ り合い 後の面積 (6
),
(7
)式 を (3
)式に代入 す る と等価辺張 力は 消去 さ れ次式のつ り合いが得ら れ る。
Σユ1
λ‘丿,
μw,
ηt]T[Tt
」]−
tl σ己丿} 7= {o
}………
(8
) ’ [Tt
」]−
1 :[T
]−
Lの内F
“ に関与す る行ベ ク トルlatJ
}:辺i
ノを有す る要素の膜応 力 (既 知) (8 )式は未 知変 数で あ る自由節点の座標(却 の みの 関 数と な り,
し かも未 知 変 数の数とつ り合い方 程 式の数 が一
致し解が得ら れ る。一
般 的に は,
全 膜 要素につ いて一
定の膜応 力 を指定し等張力曲面を求め る 。一
方,
定式化2は本論文で新し く定義し た 「実 初期つ り合い状態」の解析で あ り, 無 応 力状態に お け る裁 断膜 パ ネル形状を既 知と してつ り合い 方 程 式よ り実初 期つ り 合い状 態に おける節 点 座 標お よ び膜 応 力 (等 価辺張 力 ) を求 めるもの である。 し た がっ て (3)式のつ り合い方 程 式におい て未 知変数であ る等 価 辺 張 力を消 去し,
その た め に等 価 辺 張 力と既 知 変 数で あ る裁 断 膜パ ネル の形 状 パ ラメー
タの 関 係を定義す る必 要が あ る。 裁断 膜パ ネル の形状を決定す るパ ラ メー
タ と して,一
般 的には 裁断図平面座標系にお ける節 点 座 標が考え ら れ る が,
この座 標値は各裁断膜パ ネル の各々 の平面 座標系 の与え方に依 存し一
義的に決定する事は困難で あ る。 し た がっ て, 本解析に お い て は座 標 系に依 存 し ない不 変量 で あ る無 応 力状 態に おける三角 形 要 素の辺 長を裁 断 膜パ ネル の形 状 を決 定 する パ ラ メー
タ と して選 択し た。 前 述 し たよ うに膜 材 料は弾 性 体である と仮 定す る と,
実 初 期つ り合い状 態に おける等 価 辺 張 力F
(FtJ,
F
,m,
Fmt)と無 応 力 状 態か らの三角 形 膜 要素の 辺の伸び 量 AL、
{Alw,ム砺, Atmc)は線 形 関 係に あり,
次式の よ うに 定 義 可 能である。
IFF
=
[K
]IALIT
ニ
[K
](}LIT−
1Lol
’)
・
…
t…
t・
・
…
(9
) 上式に お い て, L 〈t‘∫, IJm , ら‘)はつ り合い後の辺 長,L
。(。1
“,。ljm
,。lmt
)は既 知 量 として与え られ る無 応 力 状 態 の辺 長である。
(9)式 を変 換して次 式 が得ら れる。
IAL
}「=
[K ]−
ilFIT=
[C ]IF
}「………
(10 ) こ こで, マ ト リッ クス [C
]の成 分 を考えると, 第 1列 目 は 辺 ∫∫に単 位の張 力 を与え た時の各 辺の伸び量であ り, 本解析では こ の量 を通常の平面 有 限 要素法 を適 用す ることにより数値を定め た。
同 様に し て [C
]の各 成 分の 数 値 を 定め, その逆マ トリック ス として [K
]の全 成 分 が求め ら れ る。
こ の [K
]マ ト リックス は無 応 力状態に お け る 三角 形 膜要 素の局 所 座 標 系の節 点 座 標お よび材 料 定数よ り一
義的に決定さ れ,
未知変数に依在 し ない常数 で構 成さ れ るマ トリックス であ る。 (9
)式を (3} 式 に代入 して,
つ り合い方 程 式と して次 式が得ら れ る。 Σ {ん丿,μ‘,,
η.} T [κ‘」(ILIT
−
IL
。IT
=
IO
ト・
…………
(11> 」 [K
‘,]:[K
]の内,
辺 σにの み関与す る行ベ ク ト ル (11
)式に おい て [KtS
]は定数,
L
。は既 知量,
他の変 数は すべ て未知変数で あ る自由節点の座標値 (X
)で表さ れ るの で これ を解くこと が可 能と な る。
3.
数 値 解 析 法 定 式 化 1の場 合は (8 >式を,
定 式 化 2の場 合は (11) 式 を全 自 由節 点につ い て重ね合わせ る と系 全 体のつ り合 い方 程 式 が得 られ, 次 式で表 示 する。 9(X)=
0……・
…・
…・
………・
・
…・
・
………
(12) 上 式は未知変数で あ る自由節点の全体座標系で の座標 値 (X
)に 関す る非線形 運 立 方 程 式で あ り,Newton
Raphson
法を用い て数値解を求め る。
今X
の初期値をX
。, 修正 量 をAX
と す る と, X =X,十 ∠LX・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
−t…
−4・
・
・
…
(13) 9(X);
9(Xo十 ∠LX)・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
(14) (14)式 をAX
に関 し展 開 し線 形 項の み を と る と, 9(丿r
)≒9 (Xe
}十[∂9 /ax
]x.
x,
・
∠IX
=O ・
・
・
・
・
・
…
(15 ) とな り, 修 正 量AX
は次式で求め ら れ る。
△X=
[一
∂9/∂X]ILx,
・
9(Xo)………・
…・
(16)一
103
一
Architectural Institute of Japan
NII-Electronic Library Service Arohiteotural エnstitute of Japan
Y (WARP )
倉
凹ODEL−
1一
xL )E
!
1EiEi1
!
ii2
:
E111
!
]
コ
§
鬥ODEL
−
2 MODEL−
3一
80
.
寸 図一
4 解 析モデル (H.
P.
曲 面)MODEL−
1蠡
L
馴
」
a
・tg9_
9
凹ODEL−
2幽
凹ODEL−
3 詞籌
国
N」
−9
・2eL .
! 」
一剄
」
一_9
・9SL9
」
剥
図一
5 裁 断図寸法お よ びメッ シュ レイアウ ト (16
)式に おい て,
g(X
。)は初期 値X
。における節 点 不 つ り合い を示し,
[一
∂g/∂X ]ILx,
は,
X。に お ける接 線 剛 性マ ト リッ ク ス で ある。 (13
)〜
(16
)の操 作を g(X
)≒0にな る まで繰り返せ ば 最 終つ り合い状態の 解が得ら れ る。N
.
解 析 例お よび 考 察’
1.H ,
P .
曲面モ デル こ こで は提案し た解析手法を単純な膜構造モデル に適 用し,従来の手法と比較し本提 案手法の必要性を述べ る。
(1) 解 析モデル 解 析モ デル は図一
4に 示 す三種 類の膜 構 造で あり,
MQDEL一
ユ は曲 率の な い平 面 膜,MODEL
−
2・MOD ・
EL−3
は平 面 投 影 寸 法が同一
で曲 率が異 なる H.
P.
曲 面 であ る。
こ の モ デ ル に対 し,
前 章で示し た 2種類の定式 化によ る 初 期つ り合い状 態の解 析を実施 す る。
まず 定 式 化1に基づ く解 析では, すべ ての膜 要 素につ い て σ.
=
a。
;
5kgf
/cm の等 膜応力を指定し て,
既往の 解 析・
設 計で用い ら れて いる等 張 力 曲 面を算 出し た。一
方,
定式 化 2に基づ く解 析で は,
定 式 化1により算 出された等張力曲面を 既往の 測 地線を用いた裁断図解析 により 4枚の平 面 展 開 図に分 割 し (図一
4参 照 ),
各々 の 展 開 図につ い てX
方 向 [横糸 (FILL
)方 向]の寸 法のみ を片側 1% ずつ 両側で2
%縮めて裁断図を決 定 し,
これ らの裁 断 図 を 相 互に 溶 着 し所定の境 界 に 取 り付 け た時の実 初 期つ り合い状 態 を算 出し た。
解 析は対 称 性 を考 慮し て 1/4曲 面につ い て実 施し た。 表一
1 解 析に 用いた材 料 定 数 Thickness t=
0.
08cm Yo凵ng.
sMod 凵lus WARPFILLE・
・
t=
658kgf/cm EY・
t=
218kgf /cm ShearModulus G.
.
・
t=
57k巳f/cmPOI550n
’
sRatio V罵
Y=
OB7V 脳=
0.
29一
104
一
6
.
0
60
60
60
奮
繕
1
一
LEDOM
のく
PRA
凵LAITINI
黛
撚蠡
’
.
モ だ く譲
灘、
纛40
80
40
80
80
40
TOO
l20
60
00
20
40
60
80
100
14
.
O
l2
O
一
図一
6 膜 応 力 分 布 解 析 結 果 (実 初 期つ り合い状 態}20
40
60
60
80
100120
140
Stress
Leve1
(
kgf
/
cm)
105
Architectural Institute of Japan
NII-Electronic Library Service Arohrteotural エnstrtute of Japan
(
80100
120140
40
OO
20
40
60
80
40
匚
=
工
::::麗
盤
鹽蠶靉邏 鹽 驪
靉 圏 驪 ■■ ■■ ■
■ ■
Level
lOO
l20 140
Stress
(
kgf
/
cm
)
図一
7 膜 応 力 分 布 解 析 結 果 (風 荷重載 荷 時) 定 式 化2
の解析に用いた裁 断 図の寸 法およびメ ノシュ レ イアウ トを 図一
5に, また膜 材 料の諸定数を表一1
に示 す。
ま た,
定式 化1
で算出さ れ た等 張 力 初 期つ り合い状態 お よび定 式 化2で算 出さ れ た実 初 期つ り合い状態 を 初 期 値と し て, こ れ に吹上 げ風 荷 重を 想定し た全 面 上 向きの 等 分 布 荷 重 (100kgf
/m2 )を作用させ , 初 期状 態の差 異 かその後の外 力に よ る挙動に 及 ぼ す影 響 を解 析に より検 討し た。 (2 ) 解析 結果お よび考 察 定 式 化 2に基づ く実 初 期つ り合い状 轡の膜 応 力 分 布を 図一
6に示す。
図に示して いな い か定 式 化1に基っ く既 往の 初 期 形 状 解 析 て は 全 モ デ ル共膜 応 力 分 布は 5kgf
/cm の一
様 分布て あ る。
本 図に示す ご と く,
定式 化 2に基っ く解析に よ り得ら れ た膜 応 力 分 布は か なり乱れ て お り,
曲 率が大きい 曲面ほと 乱れの変 動 幅は大き く な っ て い る。
こ の乱れ の要因 と し て次の 2項 目が 考えられ る。要 因
1
非可 展 曲 面 をい くつ かの平 面 展 開 図に 分割 し た時の近 似 誤 差 要 因2 平 面 展 開 図か ら初期張 力に よる膜 材の伸び 量を縮め る時の伸び量の推 定 誤 差 これ らの 要因の内,MODEL
−
1は平 面 膜モ デル て あ る の て要 因 1に よる誤 差は な く,
図一
6に示 すMOD
EL−
1の膜 応 力 分布の乱れ はすべ て要 因2に基づ く もの て あ る。
こ の要 因2に関し,
本 来 膜 材 料は織 糸 方 向に依一
106
一
N工 工一
Eleotronlo Llbrary存した直交異方性 材料であり初期 張 力による伸び量は縦 糸
,
横糸の両 方向につ いて考慮す る必要が ある。
しか し ながら, 実 際の裁 断 図 作 成 過 程に おい ては一
方向特に伸 び 量 が 大 きい横 糸 方 向のみ を縮め,
ボアソ ン比に よ り縦 糸 方 向に も張 力が導入 され る とい う手法が一
般的に用い られ てい る。
本 解 析 例におい てもこ の手 法 を踏 襲して裁 断 図 を 作 成 し たが,
縮め量の 決 定に 関して はMOD ・
EL −
1にっ い て片 側0.
75%,
1.
0%,
L 25% の 3 ケー
スを取り定 式 化 2に基づ く予 備 解 析 を実 施し た。 この予 備 解 析の 結 果 図一
6の MODEL−1
に示す よ う に縮め 量 横 糸 方 向 片 側 1% で ほ ぼ 5kgf
/cm の一
様分布に近 い膜 応 力分 布が得ら れ, こ の縮 め 量は妥 当で あっ た と判 断さ れ る。
一
方,MODEL
−
2・MODEL −
3の膜 応 力 分 布は かな り乱れ て お り, 前 述の考 察 を考 慮 する とこ の乱れの大 部 分は要 因1に依 存 するもの と思わ れ る。 特に曲率の大き いMODEL
−
3で は縦 糸 方 向の溶 着 部 分 近 傍に過 大な膜 応 力 が 発 生 し, その大きさは等 張 力 仮 定 (5kgf/cm ) の 2〜
3倍に も達して い る。 し た がっ て,
こ の膜 応 力分 布の乱れ を減 少さ せ る た め に は よ り精 度の良い展 開 図の 作 成 方 法の開 発 あるいは さ らに分 割 数 (裁 断 図の枚 数 〉 を増 加 させ平 面 近 似の誤 差 を減 少 させ る必 要がある。MODEL
−
3にっ い て,
定 式 化 1お よ び定 式 化 2に基 づ く初 期つ り合い状 態 を初 期 値 として, 全 面 上 向きの等 分 布 荷 重 を 載 荷し た時の解 析 結 果 を図一
7に示 す。
本 図 の上 段は荷 重 載 荷 時の膜 応 力 分 布, 下 段は初 期 状 態か ら の増分膜 応 力の分 布 を示す。
本 図に示す よ うに, 載 荷 時 の膜応 力 分布は定 式 化 1, 定 式 化 2の解 析 結 果に顕 著な 差 異が 認 め ら れ る が,
増分膜 応 力分布は ほ ぼ一
致し てい る。 こ の事は, 初期状態の応 力 分布の差異が その まま載 荷 時の応 力 分 布の差 異, す な わち構 造 物の終 局 安 全 性に 直接 影 響を 及 ぼ すことに な る。
以 上, 単純な モ デ ル につい て既 往の等張 力仮 定に基づ く初期つ り合い状態と,
実 際の施工手順に従っ た裁断図 に基づ く実 初期つ り 合い状 態の差 異 を 示 し た が, 曲 率の 大き なモ デルに おい ては そ の差異が顕著であ り,
既往のC
写 真一1
実構 造 物の外 観 解析・
設計手法で は架空の モ デル を解析し ていること に な り,
構 造物の真の挙動お よび安全性を評価す る に は本 論 文で提 案し た新しい 実 初 期つ り合い状態の 解 析を な す 必 要が あ る。 2.
実施工膜構造物へ の適用 こ こで は,
提 案 した実 初 期つ り合い状 態の解 析 手 法 を 実 際に設 計・
施工 さ れ た膜 構 造 物に適 用し,
提 案 解 析 手 法の実 構 造 物へ の適 用 性お よ び妥当性を検 討す るa 解 析 を適 用し た実 膜 構 造 物の外 観を写 真一1
に示す。 本 構 造 物は約30m
×30
m の空 間を7.2m
間 隔の格 子状 に配 置された鋼製パ イ プの アー
チ骨組架構に 四 フッ 化エ チレ ン樹 脂ガラ ス繊 維 膜を張っ た テンショ ン膜 構 造で あ る2} 。 本 構 造 物の正方形 膜パ ネル の1
ユ ッ トを解析の適 用 対 象とし,
本 施工 が始まる前に,
与えられた裁 断 膜パ ネル を試 験 的に境 界フ レー
ム に取り付け実 初 期つ り合い 状 態 を完 成 させ解 析との比較 を実 施 し た。
図一
8に膜パ ネル が取り付け られ る周辺境 界 構 造 物の 形状お よび寸 法 を, 図一
9に膜パ ネル の裁断図 を示 す。
こ の裁 断 図は等 張 力 曲 面 (5kgf/cm ) を 既 往の測 地 線 に基づ く解 析に よ り 3枚の平 面 展 開 図に分 割し,
各々 の 展 開 図につ い て横 糸 方 向 (FILL
}に片 側L5
% (両 側D
A
図一
8 境 界構 造の形 状 卜 2,
臼LL 亀 崖≦
ト 244,
1FlLLC
B
図一
9 載 断図の形状寸法一
107
一
Architectural Institute of Japan
NII-Electronic Library Service Arohiteotural エnstitute of Japan
D
A
WARP
C
B
Fl
しL
図一
10 膜応 力分 布解 析 結 果 (実 初 期っ り合い状 態 )D
A
魁・
馨
di軆
図一
11 実施工で観 察さ れ た 「し わ」C
B
で 3,
0%)つ つ縮めて得られ たもの で ある、
解 析に用い た膜 材料の諸 定 数は表一
1の とお りで ある。
定 式 化 2に基づき,
こ の裁 断 図 を 相 互に溶着 し境 界 構 造に取り付け た時の実 初 期つ り合い状 態の膜 応 力 分 布 解 析 結果 を 図一
10に示す。 本 図に示す よ う に,
解 析に よ り得 られ た膜応 力 分布は設計に お い て 仮定し た5
kgf
/cm の 等応 力分布と は異な り,
応 力の乱れ は顕 著で あ る。
こ の乱れ の傾向と して, 膜パ ネル中央 部の横 糸 方 向 (FILL
)は約10kgf/cm の一
様で はあるが 過 大な応 力分 布 と なって いる。 こ の横 糸 方 向の過 大 応 力は,
推 定 し た裁 断 図の縮め量 (3.
0%)が大き過ぎた もの と 思 わ れ る。一
方, 縦糸方 向 (WARP
)の応 力分布では溶 着 部 端 部の過 大 応 力およびコー
ナー
部における過 少 応 力が 顕著で あ り,
特にコー
ナー
部では圧 縮 応 力 (図の斜 線 部 分 〉が 生 じ た。 こ の コー
ナー
部は膜面の曲率が特に大き い領 域で あり, 解 析により圧 縮 応 力 が 生じ ること はこ の 部 分に 「し わ」が発 生する ことになる。
この解 析 結果に 対し, 実 際に施工された膜パ ネル の実初期つ り合い状態 の正 確 な膜 応 力 分 布の把 握は不可能であっ た が,
図一11
に示す よ う な位置に実 際の 「し わ」が観 察さ れ た。 この 「し わ」の発 生位 置は解析結果と良い一
致を示し,
提案 解 析 手 法の実 構 造 物へ の適 用性お よび妥 当性が確認さ れ た。
v .
結 本 論 文で は既 往の等張 力仮 定に基づ く膜 構造物の初期 形 状 解 析と は 異 な り, 実 際の施工時に おい て与え ら れ る 裁断膜パ ネルを既知変数と し,
これ を相互に溶 着し所定 の境界位置に取り付け た時のつ り合い状 態を新し く 「実 初期つ り合い状態」と定 義し,
こ の 状態の解 析 手 法を提 案し た。 提案し た解 析手 法を単純な膜 構 造モデル に適 用 するこ とに よ り,
既 往の解 析 手 法で は実 際の施工 さ れた膜 構 造 物の真の 挙 動お よ び安 全 性を評 価 することは で きず,
本 解析手法の 必要性が確認 さ れ た。
ま た本 解 析 手 法を実 際 に施 工 さ れ た膜 構造物に適用 し,
解 析 手 法の適 用 性お よ び妥 当性が検証さ れ た。
さ らに提 案し た解 析 手 法は,
本 論 文に示す実 初 期っ り 合い状 態の解析 以 外に,
実 際の施工時の解 析と して下 記 に示す問題にも 適用 可能で あ り応 用の広い解 析 手 法であ る。 (1 ) 溶着し た膜パ ネル を境 界構造に取り付け膜パネ ルに張 力 を導入 する場 合,
導入手 順に従い本 解 析 を順 次 適 用す るこ とにより, 導入 すべ き張力量お よび 境 界 構 造に生じ る施 工 時の反 力が把 握 可 能で あ る。
一
108
一
N工 工一
Eleotronio Library(2 )実 施工において境 界 構 造に施工誤 差が ある時
,
こ の誤差によ る膜パネル の応 力 変 動が把 握 可 能で あ る。 最 後に本 論 文の結果,
実際の膜 構 造 物の安 全 性 を支 配 す る重要な要因 と して裁 断図の良 否が考え ら れ,
現 状の 裁断図作成 手 法で は設 計に おい て仮 定した 等 張 力 状 態の 形成 は 困難で あ る と思われ る。
し たがっ て,
今 後は本 論 文で提 案し た解析 手法 を発 展さ せ, 可 能な限り等 張 力 状 態に近い 実 初 期つ り合い状 態が得ら れ るよ うな裁 断 図 作 成の新しい アプロー
チを示す予 定である。
謝 辞 本研究に当た り, 有 益な御 指 導と御 教 示 を賜っ た京 都 大学教 授 中 村 恒 善 博士に感 謝の意を表しま す。
参 考 文 献 1) 坪 田張二,
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一
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VD旦.
2Architectural Institute of Japan
NII-Electronic Library Service ArchitecturalInstitute of Japan
SYNOPSIS
UDC:624. 073. 1q
THEORETICAL
ANALYSIS
OF
ACTUAL
INITIAL
EQUILIBRIUM
STATE
FOR
MEMBRANE
STRUCTURES
BASED
ON
CUTTING
PATTERNS
by HARUJI TSUBOTA, ARATA YOSHIDA and YASUTSUGU
KUROKAWA, Kajima Corporaton,Members of A. I.
J.
Current analytical methods
for
determining
an initialequilibrium configuration of membrane structures arebased
on the assumption thatthe mernbrane stressdistribution
is uniform all over the surface.On
theotherhand,
a typicalfabrication
process ef these stTucturesis
that a complex curved surfaceis
divided
into
some planernem-brans
strips called "cuttingpatterns",
they are assembled each other andfinally
they are stretchedbetween
thefixed
boundary
structures,Therefore, the actual stress
distribution
deviates
from
the assumed uniform stress state and overstessed or non-stressed(wrinkling)
regions possiblyoccurin
theactual membrane structures,'
'
In thispaper, this actual
initial
equilibrium stateis
clearlydefined
inconsideration of actualfabrication
pro-cess and a new analytical method
for
determinining
thisequilibrium stateis
proposed.In
the analysis, thegeometry and material properties of thecutting