Ⅲ 歩行練習 転ばぬ前に能力アップ ・ ・ ・
歩行
練習
転ばぬ前に能力アップ・・
・
歩行
練習
転ばぬ前に能力アップ・・
・
能力に合った練習方法を!
誰もが自分の足で歩けることを望んでいます。しかし、歩行訓練は意欲を持って取り組みやすい練習でもある反面、 その環境や介助の方法によって、転倒を引き起こしかねません。 ここでは以下の①~③の注意点をふまえ、安全に楽しく練習できるポイントを挙げます。歩行様式の種類
麻痺や怪我がある場合、杖や足を出す順番を決めることで、痛みや膝折れを防ぎ、自分で歩くことができます。 片杖の場合は、三動作歩行から開始して、二動作歩行へ。二動作歩行は普通の歩行リズムと同じです。 四動作歩行は両方の杖をつく場合に行う方法で、大振り歩行は両方の下肢が麻痺している場合に行う方法です。Ⅱ
歩行練習のすすめ
Ⅰ
監 修 東京慈恵会医科大学 リハビリテーション科 理学療法士 中山 恭秀 教 授 安保 雅博 毎日やってみましょう! 左から杖(T字杖)、 四点杖、歩行器(持 ち 上 げ 式 )、 歩 行 車 と 呼 び ま す。 今 日、 障害や用途に合わせ た歩行補助具が多数製造されております。詳しくは歩行補助具 のパンフレットをご覧ください。 ま た、 片 方 に 杖 を 使 用 す る 時 は、 障害がある側の反対側で持ちます。 足に怪我をしても同じです。 お間違えのないように… 杖……… 健筋… 麻痺側… 両側で杖を使用する場合。主に松葉杖の場合。 右杖 → 左足 → 左杖 → 右足 三動作歩行に慣れたら、目標にしましょう。 杖と麻痺側を同時 に出す → 健筋 両側の下肢に麻痺がある場合に行います。 小振り歩行という歩き方もあります。 両杖 → 両方 の 足( 杖 よ り 前 に 振 り だす)①環境は整っていますか?
歩く練習をするために十分な空間を確保することが大切です。足先のひっかかりやすいコードや段差の有無を 事前に調べ、無くすか最小限にしましょう。なにより、室内を歩くことが楽しくなる配慮を!②歩行補助具は合っていますか?
能力に合った歩行補助具を選択されていますか? また、破損していませんか?③歩くのに適した服装にしましたか?
パジャマで練習もいいですが、ぜひ洋服やジャージなどに着替えてください。ズボンの裾はひきずっていませんか? 慣れないうちはスリッパなどのかかとのない履物や、すべりやすい靴下での歩行練習は危険です。 杖 → 麻痺側(筋力の弱い側) → 健筋(筋力の強い側)① 三動作歩行(さんどうさ・ほこう)
③ 四動作歩行(よんどうさ・ほこう)
② 二動作歩行(にどうさ・ほこう)
④大振り歩行
歩行練習の方法
歩行の介助
1 人で歩くことが難しい場合は、介護をされる方が手伝って歩く練習をしましょう。 介護される方への注意点は以下の 4 つです。生活動作の中で!
ご高齢の方や障害をもつ方は、筋力の低下や歩行の平衡機能の低下などマイナス面が増加しやすいものです。 歩くことは日々の生活にリズムと変化を与え、ご本人の意欲だけではなく、精神機能の活性化にもつながるでしょう。 歩く練習としてだけでなく、トイレに行くこと、郵便物を取りに行くことなど、目的がはっきりとあり、本人 が意欲をもてる生活動作に結びつけましょう! 毎日継続して行えること、それが上達への近道です。最終チェック
①杖をつく側は?
→健筋(筋力の強い側)につきましょう。②杖をつく位置は?
→左右の足と正三角形を描くようなイメージで。③杖の長さは?
→ 肘を軽く曲げて持つ高さ。肘を伸ばして立って、床から手首まで の長さにすればおおむね一致します。④転倒防止対策は万全ですか?
→介助ベルトはしていますか? ゆるすぎるのも危険です。 →履物は大丈夫ですか? 踵が入る履物を。 →しっかり覚醒していますか? ボーッとしていませんか?Ⅲ
病院や施設では平行棒を用いて歩く練習を始め ます。これは、平行棒が、最も安定して歩行す ることができるからです。 ご自宅でも廊下の両側に手すりを設置したり、片 側の壁と杖などと併用して応用するといいでしょ う。安全面には配慮してください。 平行棒は立ち上がり練習やスクワットなど、基本 的な練習にも有効な器機で、自宅用もあります。Ⅳ
①平行棒内歩行練習
平行棒②かかとからついてつま先で蹴る
正常歩行の大切な要素です。麻痺や痛 みなどがある場合は無理に行わず、イ メージするだけでもいいでしょう。③応用歩行練習
【横歩き】
真正面につま先 を向けて左右へ 体重を乗せて歩 きましょう。【タンデム歩行】
継足(つぎあし)歩行ともいいます。安定性の向上 を図ります。直線が安定してから導入しましょう。 ご本人の麻痺側(筋力の弱い側:図の赤い 半身)に介助者はできるだけ体を接近させ ましょう。立つ位置
【腋の下の保持】 介助者の手を後方から差し込み、手の 甲をご本人の体に押しつけて固定する。 膝崩れや体重移動のお手伝いができる。支持
【手のひらの保持】 ご本人の肘を軽く固定し、手のひらを下から 支え持つ。 【介助ベルトの保持】 腰に装着したベルトをしっかり持つ。 ※ベルトをつかんで助ける力 は、始めは強めに、徐々に 弱くしていきましょう。両方で杖を使用する場合の介助
杖や足を出す順序を介助 者が声かけしながら。 声かけは非常に大切です。しかし、ご本人は一生懸命集中しようとし ているでしょうから、焦らず、ゆっくりとご本人に安心感を与えるよ うにしましょう。バランスを崩したら止まって深呼吸して、もう一度。声かけ
Ⅴ
Ⅵ
安定して歩くために、幾つかの歩行練習を併用することを おすすめします。平行棒でも、廊下の手すりでも構いません。歩行補助具とは
歩行補助具(ほこうほじょぐ)とは、歩くことを助けてくれるリハビリテーションの道具で、体重を支えたり(免 荷)や、歩く時のふらつきを助けるものです。治療用としても、生活場面で機能の不足を補う道具としても用 いられているものです。大きく分けると3つに分類
歩行補助具は、杖とクラッチ、そして歩行器の3つにわかれます。症状と時期によって使い方が異なりますの で見てみましょう。杖
ふらつき防止と僅かな体重負荷(体重の 10%程度) が可能。体重をかけすぎると手首に負担がきます。クラッチ
体重負荷を助けると同時に、支えが杖よりも多いの で安定性も杖より高い。両手で使う場合もあります。歩 行 器
大きな安定性が特徴。不整地や段差、階段に適さな い面もあるが屋外でも使用可能です。代表的な歩行補助具
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執 筆 東京慈恵会医科大学附属病院 リハビリテーション科理学療法士 中山 恭秀 監 修 東京慈恵会医科大学 リハビリテーション科 教 授 安保 雅博Ⅱ
Ⅲ
~特徴と選ぶポイント~
歩きを手助けしてくれる
歩行補助具ってなぁに
同じように見えるけど どれを使えばいいのかな?1. T字杖
(Tじつえ) 一般的に「杖」といえばこのT字杖と いう種類を指します。特徴は、転ばぬ 先の杖程度の機能と、安価で簡便であ ることにあります。適応は広範囲で、 幾分足がふらつく方や長距離歩くこと が不安な方などです。杖
2. 四点杖
(よんてんづえ) 4つの足を持つT字杖です。足が4つあ るので、杖そのもので立っていられるの で、T字杖よりも高い安定性が得られま す。しかし、4つの足のため、不安定な 道や踊り場の狭い階段では、安定性が劣 ります。適応は半身麻痺の方、ご高齢で T字杖では不安な方などです。杖
注意事項
①杖を付く側
杖は麻痺のある側や怪我のある側の反対の手で持ちます。 テレビなどで同じ側で着いていたりするのを良く見ますの でご注意ください。②杖の高さ調節
杖先を前に 15cm、外側に 15cm 程度の位置について、 肘を軽く曲げた状態で高さを設定します。Ⅳ
3. 松葉杖
(まつばづえ) 杖という呼び名が定着していますが、機能で見 るとクラッチになります。最も有名な歩行補助 具です。歩き方は脇で腋窩パッドを挟みます。 一般的には整形外科疾患の患者さんが、手術後 や安静期間に使います。 両手で使うと、片足を浮かせた状態で歩くこと が可能です。 また、手術後や怪我をした後、徐々に体重をか ける練習をします。片方で使ったりもします。 概ねですが、手術をされた足(もしくは怪我を した足)に2/ 3以上体重をかけて良くなると 片方の杖で歩く、片松葉杖歩行の練習をします。クラッチ
4. ロフストランド・クラッチ
松葉杖と並んで、病院ではよくお目 にかかる歩行補助具です。整形外科 疾患によく使われます。松葉杖の脇 に挟んでいるパッドに換わり、腕の 部分にカフと呼ばれる支える部分が あるのが特徴です。整形疾患で痛み や筋力低下などを残した状態で退院 する場合はお勧めします。松葉杖ほ ど大げさには見えないです。このク ラッチは、主に片手で体重が支えら れる程度の方に適しています。クラッチ
5. プラットフォームクラッチ
リウマチ杖とも呼ばれるクラッチ です。リウマチの方は、手首に過 剰なストレスをかけることが禁忌 の場合が多いため、腕で体重を支 持することで手首の負担を軽減す ることを目的に作られたもので す。リウマチ以外ではあまり目に することがありませんが、特徴的 なクラッチです。クラッチ
6. 持ち上げ式歩行器
四足で、両側にグリップがある歩行 器で、持ち上げ式と交互式という二 つの種類があります。持ち上げ式は 可動するところが無いので安定性に 優れており、持ち上げて前に出し、 そこまで足を運ぶようにして使いま す。交互式は、前面にある横のバーが動き、スイングする ことで杖のような歩行が可能となります。これらは医師や 理学療法士が適応を判断しますが、一人では立っていられ てある程度の腕の力や把持力があれば適応になります。 その為、片麻痺には適応にならないことが多いです。歩行器
7. キャスター付き歩行器
タイヤの付いた歩行器です。腕で支 持することができるので、支持性は 高く立位の安定性は高いのですが、 タイヤがついているので立位の安定 性は持ち上げ式歩行器よりも劣りま す。しかし、実際の歩行ではスムー ズに移動させることができるので、 病院や施設では多く用いられます。 適応は広範囲です。歩行器
8. 歩行車
いわゆる“手押し車”です。 屋外を想定した歩行器で、買 い物篭のついたものや坐面の ついたものなどがあります。 ブレーキをすると固定性も高 いので、退院後の利用頻度も 高いです。適応も広範囲ですが、重度の片麻痺に は適さないと言えます。買い物を考えると、T字 杖より、この歩行車を選ぶ方も少なくありません。歩行器
転倒予防
近年、転倒予防について、様々な報告がされています。「私は転ばないだろう」「私には無縁だ」という方にも ぜひ“転倒”についての知識を持っていただきたいと思います。まずは注意すること、次に判断すること、そ して予防について考え、少し運動してみるのはいかがでしょうか。なぜ転んでしまうのか?
転倒は圧倒的に高齢者に起こりやすい と言われています。その原因としては、 ①視野、視力の低下 ②筋力の低下 ③感覚の低下 ④バランス能力低下 ⑤反応性の低下 などがあります。転んで残る後遺症
転倒後、最も怖いのが骨折です。手首や大腿骨の骨折が多いと言われていま す。骨折の治療には、手術が必要な場合もあり、その入院期間は1ヶ月以上 となることもしばしばです。 たとえ、骨折がなかったとしても、転倒を経験したことにより、恐怖心をいだ くことになります。動くことが怖くなり、二次的に力が弱くなってしまいます。転びやすい場所は…
①家の中では
床やトイレの立ち座り、床の滑るお風呂場も注意が必要です。 十分に気をつけ、必要があれば手すりを設置しましょう。(詳し くは住宅改修のパンフレットをご参照ください。) 部屋と廊下の境目やじゅうたんの切れ目など数㎝の段差や、電化 製品のコードは不注意による転倒が起こりやすい場所です。Ⅰ
転倒予防
考えてみよう!行動してみよう!
Ⅱ
執 筆 東京慈恵会医科大学 リハビリテーション科 理学療法士 木山 厚 監 修 東京慈恵会医科大学 リハビリテーション科 理学療法士 中山 恭秀 教 授 安保 雅博Ⅲ
Ⅳ
障害物が
見えにくい
ボーッと
する
足はちゃんと
あがっている
かなぁ…?
!
力が弱い
フラフラする
すべりそう…
もう遅い…
アッ!
落とし穴
視界が悪くなる夕方や、 夜中にトイレに起きる 際は注意して下さい。 何かにつかまったり、 壁を伝って歩いたり すると良いでしょう。 ただし、固定されて いない家具などは危険 ですのでトイレまでの 道のりを一度確認して おくと良いと思います。