• 検索結果がありません。

(1) プロジェクトの背景 必要性等 1 背景インドネシア (Indonesia) は世界最大の地熱ポテンシャル ( 約 2 万 9,000MW 世界の 40%) を有しているが 現在保有の地熱発電設備容量は約 1,200MW( 国内ポテンシャルの約 4%) にすぎない これに対して インドネシア政

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "(1) プロジェクトの背景 必要性等 1 背景インドネシア (Indonesia) は世界最大の地熱ポテンシャル ( 約 2 万 9,000MW 世界の 40%) を有しているが 現在保有の地熱発電設備容量は約 1,200MW( 国内ポテンシャルの約 4%) にすぎない これに対して インドネシア政"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

平成 24 年度

インフラ・システム輸出促進調査等事業

(円借款・民活インフラ案件形成等調査)

インドネシア・東ヌサテンガラ州地熱発電事業化調査

報告書

【要約】

平成25年2月

経 済 産 業 省

新 日 本 有 限 責 任 監 査 法 人

独 立 行 政 法 人 日 本 貿 易 振 興 機 構

委託先:

日本工営株式会社

伊藤忠商事株式会社

富士電機株式会社

三菱重工業株式会社

新日鉄住金エンジニアリング株式会社

(2)

(1) プロジェクトの背景・必要性等

① 背景 インドネシア(Indonesia)は世界最大の地熱ポテンシャル(約2万 9,000MW、世界の 40%)を有してい るが、現在保有の地熱発電設備容量は約 1,200MW(国内ポテンシャルの約 4%)にすぎない。これに対し て、インドネシア政府は、豊富な地熱ポテンシャルを活用すべく、第二次クラッシュ・プログラム(Crush Program-II)において、地熱発電設備容量を 2014 年までに約 4,000MW、さらに 2025 年までに約 9,500MW へ増加させることを目標に掲げており、地熱発電事業への民間投資を期待している。しかしながら、制 度面など各種制約により、これまでのところ地熱開発は円滑には進展していない地熱開発が円滑には進 展していないのが現状である。これに対して、インドネシアでは、制度的基盤整備を進め、民間資金を 呼び込んだ地熱開発を促進する努力をしている。 一方、大部分の電力をディーゼル発電に依存している離島では、発電用燃料の価格高騰により、高い 費用での発電を余儀なくされ、PT Perusahaan Listrik Negara (Persero)(国営電力会社(PT PLN))や補 助金を拠出しているインドネシア政府の大きな財政的負担となっている。インドネシアにある離島の多 くは火山島であり、地熱資源が豊富に賦存していることから、インドネシア政府は地熱発電を、ディー ゼル発電の代替電源とするとともに、電化率の向上に寄与したいとしている。

近年の制度的な基盤整備の進展に鑑み、本共同提案法人は世界省エネルギー等ビジネス推進協議会 (Japanese Business Alliance for Smart Energy Worldwide (JASE-W))地熱作業班インドネシアサブ作 業班に参加して関係機関との意見交換、情報収集、現地踏査等を実施した結果、インドネシア政府が東 ヌサテンガラ州(East Nusa Tenggara Province)を含む東部インドネシアの開発を推進していること、 また日本企業の参入を期待していることを考慮して、本調査の実施に至ったものである。

② 必要性

東ヌサテンガラ(East Nusa Tenggara)州フローレス(Flores)島では、全島を縦断する 70kV の送電線 が建設中であるものの、現在のところ全島を連携する送配電システムがなく、散在する 38 か所のディー ゼル発電所と2か所の小水力発電所から地域ごとに独立した 20 KV の配電網で 80 近い地方に個別に電力 が供給されているのが現状である。2011 年のインドネシアの平均電化率が約 73%であるのに対して、フ ローレス島を含む東ヌサテンガラ州では約 40%弱にとどまっている。また、フローレス島でのディーゼル 発電による電力供給では、電力総収入に対して総支出は2倍以上になっている。 幸い、フローレス島は豊富な地熱資源に恵まれており、ウルンブ(Ulumbu)地点で5MW、マタロコ (Mataloko)地点で 2.5MW の地熱発電所の建設が進行中であるが、フローレス島全島の電力需要を賄うた めには、70kV の送電線建設と相まって、さらにベース電源となる発電所の建設が必要となっている。本 調査は、ウルンブ地点で地熱発電所の建設の可能性を検討するものである。

(2) プロジェクトの内容決定に関する基本方針

① インドネシア電力開発計画との整合性の確認 インドネシアでは発電設備の増強が電力需要に追いつかず、電力不足が続いている。こうした状況

(3)

の中、大統領は電力開発を促進するために第一次クラッシュ・プログラム(2007 年)、第二次クラッシュ・ プログラム(2010 年)を発令した。このうち第二次クラッシュ・プログラム(大統領令 no.4/2010)で は、再生可能エネルギー(地熱、水力)を利用して、容量 5,181 MW(約 51%)の発電施設を開発し、ま た、約 50 %の容量を Independent Power Producer (独立系発電事業者(IPP))の活用によって賄おうと するものである。

本事業は、第二次クラッシュ・プログラムの基本方針と整合させながら、地熱エネルギーを活用して 東ヌサテンガラ州フローレス島の電化率の向上に寄与しようとするものである。

② 地熱開発計画-対象サイトの選定にかかる基本方針

ウルンブには、面積約 1,000ha の PT PLN の Wilayah Kerja Pertambangan(地熱開発鉱区(WKP))がすで に設定され、自己資金により 2.5 MWx2ユニットの地熱発電施設が建設されつつある1。また、ADB 資金に

より同様に 2.5MWx2ユニットの設備の据え付けが進行中である。

ウルンブ地熱地区では、既存の PT PLN の鉱区を取り巻く地域 20x20km 範囲に、Preliminary Survey Assignment の公募が Ministry of Energy and Mineral Resources (エネルギー・鉱物資源省(MEMR))に よってなされている(添付1:MEMR 公示 104Pm/30/DJE/2011)。JASE-W が行った調査では、MEMR や PT PLN が参加した会議が行われ、本件調査への協力が得られている。また、この調査に基づいて本件提案を行 った本共同提案企業は、この地域を調査対象とすることを MEMR から勧められている(添付2:サポート レター)。 以上の背景から、調査対象サイトは、MEMR によって指定された 20x20km の開発鉱区候補地とすること を基本方針とした。 ③ 事業実施形態にかかる基本方針 ウルンブの地熱開発事業は PT PLN による電力供給事業計画 東ヌサテンガラ州版(Rencana Usaha Penyediaan Tenaga Listrik/Electricity Power Supply Business Plan for East Nusa Tenggara (RUPTL-PLN NTT (2011-2020))に計画されている。それによれば、現在開発中の設備容量は 10MW(4x2.5MW)、開発予 定が 10MW である。開発予定の5MW は PT PLN の事業、5MW は IPP 事業による開発と計画されている(添 付3:RUPTL-PLN NTT (2011-2020)から)。 本報告書では、民間資金の導入を目論む第二次クラッシュ・プログラムにしたがい、基本的には民間 資金活用の IPP 地熱開発計画を検討した。 一方、次節に述べるように、自然条件やその他の条件によっては、PT PLN が事業主となる場合もある ことが判明した。このため、借款活用事業や他融資、あるいは独自資金による Engineering, Procurement and Construction (設計・調達・建設(EPC)) 調達などの可能性も示した。

④ WKP の設定と事業形態

地熱開発鉱区(WKP)は、地熱ポテンシャルの予備調査(Preliminary Survey)の結果に基づき、MEMR が設定する制度となっている(MEMR 大臣令 no.11/2008)。WKP の設定後、ウルンブ地熱地域の場合は、マ

(4)

ンガライ県(Manggarai Ragency)が WKP を取り扱う権限を有している。ただし、1つの地熱貯留層に対 して1つの WKP と定められている(MEMR 省令 11/2008)。 本調査の結果、地熱貯留層が分離しているかどうかは不明瞭で、11 つである可能性が否定できないの で、本調査地域の地熱開発は PT PLN が既存の WKP を拡大を通してのみ実施が可能となることもありうる。 ただし、WKP の設定には、その他のファクターも加味されるとのことなので、事業主や事業形態につい ては、まだ不透明である。従い、本報告書では、IPP 事業も含めた可能な開発シナリオを示し、それぞれ の場合における課題を述べた。 ⑤ 地熱資源開発に係る基本方針 既存報告書のレビュー、広域地表踏査、地化学調査および MT 探査結果から、以下が判明した。  既存 PT PLN の鉱区の外側では、リイカルデラ (Rii Caldera)周辺の地熱ポテンシャルが最も高 い。  リイカルデラ以外の地点では、地熱ポテンシャルが低いと推測される。  既存の地熱資源推定値や調査結果から、リイカルデラ内では、20MW 程度以上の地熱発電開発の ための十分なポテンシャルを有すると考えられる。  貯留層の詳細な連続性は不明である。 以上から、詳細については、調査井含めた今後の調査によって確認する必要はあるが、現時点では、 最も地熱開発のポテンシャルがあるリイカルデラ内を対象として基礎調査を実施することとした。 ⑥ 設備容量の提案に係る基本方針 設備容量設定の基本方針は次のとおりとした。  可採資源量以内の設備容量とする。  RUPTL-PLN NTT (2011-2020)に示されている需要予測や電力設備計画を考慮する。  再生可能エネルギーの最大利用を考慮する。  ウルンブの地熱条件に最適な施設を提案する。  その他工事条件を考慮する。 検討の結果、ウルンブ地熱地区では、既存 2.5 MW2ユニット及び現在工事中 2.5 MW2ユニットの合計 10MW の設備容量に加え、新たに 20MW の設備新設を提案した。 ⑦ 環境社会側面の検討に係る基本方針 環境社会面からの検討にかかる基本方針は次の通りした。 環境社会面から本件事業実施における課題の有無と規模を検討した。検討にあたっては、JICA 環境社 会配慮ガイドラインに基づき環境社会面への影響を予備的に予測し環境社会配慮項目を把握した。 インドネシアの法的手続きは政令 No.27/2012 によって環境影響評価システム(AMDAL)が規定されて おり、対象事業規模は環境省令 No.5/2012 に記されている。本件事業の地熱ポテンシャルの高い地域が 保全林の近くに位置していること、送電線が事業に含まれる場合、保全林を通過する可能性が高いこと などから、AMDAL の必要性の有無について検討した。また、地熱発電は CO2 排出削減の観点から環境改善 効果が期待されるため、排出削減量を推定する。また CDM プロジェクトとしての可能性を検討した。

(5)

(3) プロジェクトの概要

① プロジェクトの概要 上プロジェクト概要は、次のとおりである。  ウルンブ地区の地熱資源の最大活用を鑑み、既存の施設合計 10MW に加え、新たに 20MW の施設 を建設する。  電力は、県都ルテンに建設予定の変電所に 70KV の送電線で送り、建設中のフローレスを縦断す る 70kV の送電網に連結する。 発電設備は、コストパフォーマンスや建設期間、維持管理の容易さ、ディーゼル電力の早期代替などを 考慮して、20MWx1ユニットとした。 事業概要 坑井掘削計画 :生産井戸3本の掘削、50t/h(井戸一本当たり) 発電設備 :20 MW x 1ユニット タービン :単車室多段短流復水タービン :主蒸気温度 184.1 ℃ 発電機 :全閉水冷式3相同期発電機 :定格出力2万 7,500 kVA、力率 0.8 PT PLN による関連事業 送電線 :建設中 70kV 送電線 ラルアンバジョ(Laluan Bajo)-ルテン(Ruteng)-バジ ャワ(Bajawa)-ムバイ(Mbay) ロパ(Ropa) 連結 :PT PLN によりルテン-ウルンブ-バジャワの経路で連結予定 予備的な環境社会影響評価をした結果、大気、廃棄物、騒音、振動、悪臭および地形地質について中 程度の影響が発生することが予想され、保護区、生態系、用地取得、景観、労働条件については軽微な 負の影響が予想された。しかし、本プロジェクトとそれ以外の環境社会影響のより小さい他の選択肢と の比較検討結果、本件事業地域において環境社会への負の影響より小さい代替案はないものと考えられ る。 また、発電所地点は保全林に位置しておらず、さらに想定される地熱開発事業は、インドネシアが定 めるEIA システム(AMDAL)の適用を必要とはしない。ただし、事業者は UKL(環境管理計画)-UPL(環 境モニタリング計画)文書を作成提出する必要がある。一方で、発電所からルテンへの送電線は保全林(ル テン自然レクリエーション公園)を通過する可能性があり、その場合はAMDAL が必要となる。 なお、本事業実施により、既設発電所から排出される CO2の削減効果があり、その削減量は原油換算で 136,148 t-CO2/年と換算される。 事業総額は、1億 1,223 万 USD となった。予備的な経済・財務分析結果は次のとおりとなった。  経済分析

(6)

経済的内部収益率(EIRR) :20.94% 便益費用比率(B/C) :2.32% 経済正味現在価値(ENPV) :1億 663 百万 USD  財務分析 財務的内部収益率(FIRR) :11.96% 費用便益比(B/C) :1.18 財務正味現在価値(FNPV) :1,704 万 USD 評価指標を、経済分析では想定した割引率 10%、財務分析では WACC10.2%とすると、本事業は経済・財務 的にはフィージブルという分析結果となった。 ② 事業形態、資金源候補 1) 新たな WKP が設定できる場合

事業形態/事業主 :IPP ないし 地方政府と連携した Public Private Partnership(官民パー トナーシップ( PPP)) 資金源候補 :JBIC プロジェクトファイナンス、JICA 海外投融資など 資金の課題 :政府保証の有無 2) WKP が既存 PT PLN の拡張となる場合 事業主 :PT PLN 資金候補-1 :借款 資金調達課題 :インドネシアにおける借款抑制 参画形態 :ロット毎のコントラクターあるいは総合建設会社へのサプライヤー 資金候補-2 :JBIC 輸出信用など 資金調達課題 :政府保証の有無 参画形態 :EPC コントラクター 3) キャッシュ・フロー分析 新たな WKP が設定できて民間投資家が投資する場合のキャッシュ・フロー分析を、次の2ケースにつ て行った。 ケース A(GFF 活用型):地熱ポテンシャル調査費用を地熱ファンドから調達、それ以外の事業資金は投 資家の出資金(Equity)と市中銀行からの借入にて賄う場合 ケース B(民間型):地熱ポテンシャル調査から運転開始までの全ての資金を投資家の出資金と市中銀 行からの借入にて調達する場合。 キャッシュ・フロー分析の結果、GFF 型のエクイティーIRR は 15.5%、民間型では 12.16%となった。 評価指標をインドネシア商業銀行の2012 年の投資向け貸し出し金利 12.25%を採用すると、GFF 型で は事業実施の妥当性が認められるものの、民間型では事業実施の妥当性は低いという結果となった。

(7)

(4) 実施スケジュール

スケジュールを示すためには、インドネシアで以下にかかる制度が明確化あるいは改善されている必 要がある。

 固定価格買い取り制度(Feed-in Tariff (FIT))にかかる MEMR 省令 11/2012 に則った WKP 設定の 手順の改善  FIT にかかる MEMR 省令 11/2012 に則った WKP 入札手順の明確化  地熱ファンドの運用規定の明確化・実行性  ウルンブ地熱地区の開発方針 ウルンブ地点で事業を実施する場合は、WKP の保有者によって実施スケジュールが異なる。次の2パタ ーン3ケースについて概略的なスケジュールを示す。  ケース A:新たな WKP が設定され、地方政府が入札を行う場合 ケース-A1: 地方政府が地熱ファンドを活用してポテンシャル調査を行い、その後 に WKP の開発鉱区権の入札を行う場合 ケース-A2:地方政府がポテンシャル調査を行わないで WKP の入札を行う場合  ケース B:WKP が PT PLN の場合 --- ① ケース A:新たな WKP が設定され、地方政府が入札を行う場合 MEMR によってウルンブ地点に新しい WKP が設定されて地方政府に開発鉱区権が付与される場合、 以下のような2つのケースが考えられる。 ケース A1:地方政府が地熱ファンドを活用してポテンシャル調査を行い、その後に WKP の 開発鉱区権の入札を行う場合

(8)

表1 地熱発電所建設工程表(ケース A1) 出典:調査団作成 ケース A2:地方政府がポテンシャル調査を行わないで WKP の入札を行う場合 表2 地熱発電所建設工程表(ケース A2) 出典:調査団作成 1 地熱ファンドによる予備調査 1 地表踏査 2 地化学調査、物理探査 3 浅井戸試掘 (3 holes x 300 m) 3 深井戸試掘 (3 holes x 1,500 m) 4 坑井試験、シュミレーション 2 WKP 入札期間 3 用地取得 4 開発段階 1 生産井・還元井の掘削 2 坑井試験・シュミレーション 5 地熱資源評価 6 環境調査 1 発電所関係(UPL/UKL) 2 送電線 (EIA) 7 建設段階 1 土木工事・施設整備 2 地熱発電施設・蒸気設備 3 送電線 8 管理・運営段階 6年目 スケジュール 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 1 WKP 入札期間 2 地熱ファンドによる予備調査 1 地表踏査 2 地化学調査、物理探査 3 浅井戸試掘 (3 holes x 300 m) 3 深井戸試掘 (3 holes x 1,500 m) 4 坑井試験、シュミレーション 3 用地取得 4 開発段階 1 生産井・還元井の掘削 2 坑井試験・シュミレーション 5 地熱資源評価 6 環境調査 1 発電所関係(UPL/UKL) 2 送電線 (EIA) 7 建設段階 1 土木工事・施設整備 2 地熱発電施設・蒸気設備 3 送電線 8 管理・運営段階 5年目 スケジュール 1年目 2年目 3年目 4年目

(9)

② ケース B: WKP が PT PLN の場合 表3 地熱発電所建設工程表(ケース B) 出典:調査団作成 1 入札期間 (EPC) 2 地熱ファンドによる予備調査 1 地表踏査 2 地化学調査、物理探査 3 浅井戸試掘 (3 holes x 300 m) 3 深井戸試掘 (3 holes x 1,500 m) 4 坑井試験、シュミレーション 3 用地取得 4 開発段階 1 生産井・還元井の掘削 2 坑井試験・シュミレーション 5 地熱資源評価 6 環境調査 1 発電所関係(UPL/UKL) 2 送電線 (EIA) 7 建設段階 1 土木工事・施設整備 2 地熱発電施設・蒸気設備 3 送電線 8 管理・運営段階 6年目 スケジュール 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目

(10)

(5) 実施に関するフィージビリティ

① 事業に関するフィージビリティー 経済・財務分析の結果、本事業はフィージブルであるという結果となった。 また、IPP/PPP 事業を想定したキャッシュ・フロー分析を行った結果、地熱ファンドを活用する場合は、 事業実施の妥当性が認められるが、地熱ファンドを活用しない場合は事業の妥当性は認めがたいという 結果になった。 一方、事業を進めるにあたり次のような課題がある。  ウルンブ地区調査地区では PT PLN が WKP を保有し地熱発電所を建設中である。この地区の地熱貯 留層が単一の可能性もあり、IPP/PPP 事業を実施するために必要な WKP を新たに設定できない可能 性がある(この場合は PT PLN の拡張事業)。  FIT 制度が MEMR によって発布されたが、WKP 入札制度など、関連制度が未整備である。  地熱ファンド制度は新たに制定されたものであり、まだ活用の実績がない。運用細則が検討され ている段階である。 事業に実施には、上記課題を注視する必要がある。 ② 円借款の要請 次に述べる課題が調査団によって認識される。  インドネシア政府は借款の借り入れを抑制している。  第二次クラッシュ・プログラムのリストにないプロジェクトには、原則新たな借款を用いない方 針となっている。  地熱開発促進プログラムによって既に5案件を対象とした円借款 E/N が締結されており2、当面の 開発優先順は確定されている。  PT PLN は、ウルンブ規模(20W)の地熱発電所建設に借款を用いることは消極的である。  円借款による事業においては国際競争入札(QCBS)が行われるため、小規模地熱発電事業では、 技術的に優位にたつ本邦企業よりも廉価で提供する他国企業の参入を許す可能性がある。  以上等の理由により、ウルンブ地熱案件を円借款で実施する可能性はなお検討する必要があると考え られる。 ③ 事業の必要性と事業推進方法 一方、フローレス島における電力供給能力改善は、フローレス島住民の為のみならず PT PLN やインド ネシアにとっても喫緊の課題である。フローレス島の一部では地熱発電機器/施設の建設が進んでいる が、フローレス島の現況改善のためには、品質の高い地熱発電施設を導入して豊富な地熱エネルギーを 活用することが重要であると考えられる。 しかしながら、前節の理由から、借款によらない民間企業の参入が期待されるが、試掘調査のリスク 2 外務省 HP(http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/23/8/0818_02.html)

(11)

軽減や現行制度の改定、また PT PLN の事業となった場合の資金調達など、課題は多い。 ウルンブ地熱開発にかかる事業環境を見据える必要がある。

(6) 我が国企業の技術面等での優位性

発電設備の中核機器となる地熱蒸気タービン・発電機においては、日本メーカーは開発・設計・製造 から建設・運転・保守の分野にわたり世界に多数の実績を有している。地熱蒸気タービン・発電機の設 備容量の世界市場シェアでは日本製が 67%を超える高いシェアを占めている。インドネシアにおける地 熱蒸気タービン・発電機の日本企業のシェアは設備容量で 79%、台数では合計 27 ユニットの内、18 ユ ニットを占めている。 地熱発電所においては、地熱蒸気タービン・発電機の性能・信頼性が発電所の経済性および信頼性を 左右することから、十分な納入・運転実績を持つ日本メーカーの優位性は高い。また、地熱発電所は硫 化水素ガスを含む大気や蒸気に機器が曝されるため、硫化水素ガスによる腐食を防止するための処置が 重要となる。地熱蒸気が直接触れる部分への適切な材料選定や電気・制御装置への対策ノウハウ等も日 本メーカーの優位性となる。イタリア、米国等、また近年では中国のメーカーとの競合もあるが、イン ドネシア側にとっても発電効率や機器メンテナンスで優れた日本メーカーの機器を選定する理由は十分 にあるものと考えられる。

(7) 案件実現までの具体的スケジュール及び実現を阻むリスク

本事業を IPP/PPP 形態で実施する場合は、地熱ファンドを活用する場合にのみ事業の妥当性が認めら れることが明らかになった。ただし、地熱ファンド制度の運用細則制定や WKP の確定、FIT 制度と整合し た WKP の入札制度など、事業実施に不可欠な要素が明確にされる必要がある。このため、現段階では具 体的なスケジュールは策定し難い。ここでは、実現を拒むリスクや課題をのべる。 インドネシア政府は地熱開発の努力を続けているが、ウルンブ地熱事業を進めるにあたって様々な一 般的な課題やウルンブに関わる課題が認められる。本件共同提案者は、これらの課題など投資環境を 注視していく所存である。 ① IPP/PPP で事業を進める場合 (Case-A) a. ウルンブ地熱地区の地熱開発にかかる政策の確定に関し IPP/PPP プロジェクトか PT PLN プ ロジェクトかを確定する必要がある。 b. 電力固定価格買い取り制度が MEMR によって公布されたが、関連制度が整備されておらず、 整合性がとれていない。このため、WKP の入札評価がどのように行われる不透明。今後の制 度整備状況をフォローする必要がある。 (ア)WKP の開発鉱区権限の入札と入札評価方法に関する制度の改定 (イ)Preliminary Survey Assignment に関する制度の改定

c. また、固定買い取り価格そのものに関する議論もインドネシア政府内で行われている。 d. WKP の取り扱いが地方政府に移管されたのち、地方政府が地熱ファンドを使用した地熱ポテ

(12)

ンシャル調査を行うか、そのまま WKP の入札を行うのかを規定する制度が不在。このため、 PPP 提案事業者が Preliminary Survey Assignment に応募すべきかの判断を行い難い。 e. 地方政府が地熱ファンドを活用して地熱ポテンシャル調査を行う場合: (ア)活用実績がない。 (イ)フィージビリティ調査(Feasibility Study (F/S))を行うタイミングや実施期間が 不透明。また、JICA-PPP-F/S のタイムリーな活用が可能かどうかの検討が必要 f. 地方政府が地熱ファンドを活用しないで WKP の入札を行う場合: (ア)IPP/PPP 事業者が試掘ファンドを活用する場合のリスクヘッジ/リスク軽減方法 (イ)IPP/PPP 事業として認可されるために必要なフィージビリティ調査の実施時期 g. WKP の入札では、F/S の提出が求められているが、ケース A1 地熱ファンド活用による地熱 ポテンシャル確認後の入札とケース A2地熱ポテンシャルが確認される前の入札では、自ず と F/S の精度が異なる。両者の入札制度の整合性を図る必要がある。 h. 地熱関連制度で定める WKP 入札における F/S 要求事項と PPP 関連制度で定める PPP 事業入 札における F/S 要求事項の整合性を図る必要がある。 i. WKP 落札者は1億 USD の試掘井戸掘削のための預託金を積む必要があるが、現実的ではない 上、投資家の投資意欲を削いでいる可能性がある。現実的な金額に変更する必要があろう。 j. 提案されている規模の地熱発電所を IPP/PPP で建設するための資金源は、民間銀行融資を 併用した JBIC プロジェクトファイナンス、JICA 海外投融資の活用が考えられるが、実現の 可能性についてフォローする必要がある。 ② PT PLN 事業ですすめる場合 (Case-B) a. ウルンブ地熱地区の地熱開発にかかる政策の確定:IPP/PPP プロジェクトか PT PLN プロジ ェクトかの確定をする必要がある。 b. JBIC のバイヤーズ・クレジットなどが候補として考えられるが、PT PLN は政府保証が必要 な資金調達には消極的である。資金調達が課題である。 c. EPC コントラクターを調達する必要がある。

(8) 調査対象国内での事業実施地点がわかる地図

図1に調査対象地域を示す。

(13)

図1調査対象地域

出典:MEMR 資料をもとに調査団作成 PLN WKP

調査対象範囲

参照

関連したドキュメント

この条約において領有権が不明確 になってしまったのは、北海道の北

新設される危険物の規制に関する規則第 39 条の 3 の 2 には「ガソリンを販売するために容器に詰め 替えること」が規定されています。しかし、令和元年

・条例手続に係る相談は、御用意いただいた書類 等に基づき、事業予定地の現況や計画内容等を

3000㎡以上(現に有害物 質特定施設が設置されてい る工場等の敷地にあっては 900㎡以上)の土地の形質 の変更をしようとする時..

②藤橋 40 は中位段丘面(約 12~13 万年前) の下に堆積していることから約 13 万年前 の火山灰. ③したがって、藤橋

   手続内容(タスク)の鍵がかかっていること、反映日(完了日)に 日付が入っていることを確認する。また、登録したメールアドレ

真竹は約 120 年ごとに一斉に花を咲かせ、枯れてしまう そうです。昭和 40 年代にこの開花があり、必要な量の竹

第76条 地盤沈下の防止の対策が必要な地域として規則で定める地