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英国企業のグローバル展開と管理会計の国際移転に関する一考察--日本企業との比較を中心にして---香川大学学術情報リポジトリ

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香 川 大 学 経 済 論 叢 第71巻 第2号 1998年9月 321-363

調 査

英国企業のグローパル展開と管理会計の

国際移転に関する一考察

一一一日本企業との比較を中心にして一一一

井 上 信 一

しはじめに一調査の意図と限定 わが国企業のグローパル化は, 1985年のプラザ合意以降急速に進展し,現在に至っ ている。わが国企業の管理会計/原価管理の現状と課題に関する調査研究の一環とし て,筆者はこれまで,わが国企業のグローパル展開により経営活動のグローパノレ化だ けでなく同時に会計管理,とりわけ管理会計/原価管理の国際移転の実態とその課題 を明らかにしてきた。その際,調査方法として,日本企業の日本本社への面接調査/ 郵送調査と共に,海外に進出した日系企業への面接調査/郵送調査などにより,英国 を中心にしたヨーロッパ地域,アジア地域,北アメリカ地域及びオセアニア地域に進 出している日系企業への調査研究を継続的に行ってきた。 本稿では,以上のような筆者のこれまでの日本企業及び日系企業への管理会計の国 際移転の調査研究を踏まえて,ロンドン大学のマイケノレ・ブロムウィチ教授及びマイ ノレズ・ギーツマン上級講師の協力を得て行った英国企業(英国の本社)への郵送調査 と,筆者がそれまでに行った日本企業(日本の本社)への調査結果を比較分析するこ とにより,英国企業の経営実践と管理会計実践とその課題について,日本企業の場合 と比較検討する。そのことにより,英国企業の経営実践と管理会計実践の特徴と課題 の一商を明らかにすることを意図している。 本稿で使用されるデータは,その詳細は付録-1 (調査の概要)に述べられている が,英国企業については, 1993年/94年に行われた調査であり,回答率は26,,36%で

(2)

-322- 香川大学経済論叢 516 ある。それに対して日本企業のデータは, 1991年から1992年に掛けて行われた調査 データであり,回答率は53.1%である。(なお米国企業の調査データを一部用いている が,これは1993/例年に行ったものであり,これについての詳細は今後公表する予定 である。) また本稿の構成は,次のようになっている。最初に英国企業と日本企業の回答企業 の概要をまず比較検討する。 次に,英国企業と日本企業の経営活動(経営実践)の特 徴と課題を明らかにする。そして両国の製造企業の経営実践の特徴を踏まえて,両者 の管理会計の特徴と課題を検討する。そして最後に,英国企業と日本企業の経営実践 と管理会計の特質を指摘してまとめとする。

2

.

回答企業の概要 ここでは経営実践及び管理会計の笑態の比較分析をするための前提として,まず郵 送調査に回答のあった英国企業及び日本企業の概要を明らかにする。

2-1

生産方式別の産業構成 まず回答企業の生産方式別(1)組立生産, 2)機械的進行生産, 3) 化学的進行 生産及び 4) その他に分類する。)にタイプ分けをすると,生産方式別の産業構成は, 以下のとおりになる。 まず英国企業の場合には,組立生産が36..3%で,全体のほぼ1/3を占めている。 それ以外には,化学的進行生産が226%であり,機械的進行生産も 20..2%を占めてい る。上記の3つのタイプに入らない企業も 20..9%を占めている。以上のように,英国 企業の場合には,組立生産は相対的に多くなっているが,組立生産以外の企業もバラ エティに富んでおり,企業の生産方式別の業種分類は多様性が高いといえる。 それに対して,日本企業の場合には,組立生産は48..6%と,半数近くの企業数を組 立生産型の企業が占めている。それ以外には,化学的進行生産が24..3%,機械的進行 生産は141%,その他は13..0%という比率になっている。その結果,日本企業の場合 には,電機機械,輸送用機械,一般機械,精密機械など組立生産型企業が産業構成の 中心になっており,化学,製薬などの化学的進行生産型企業が全体の1/4近くを占

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517 英国企業のグローパル展開と管理会計の国際移転に関する一考察 -323 めているのが特徴である。 生産方式 1 )組立生産 2 )機械的進行生産 3 )化学的進行生産 4 )その他 表 - 1 生 産 方 式511]の企業構成 英国企業 36..3% 20.2 22υ6 20..9 牢)n = 124 (UK), n = 206(JPN)

2

-2

回答者の所属 日本企業 48リ6% 14..1 24引3 13..0 英国企業と日本企業それぞれの回答者の所属部署は,表-2のとおりである。表か らもわかるとおり,英国企業の場合は,調査票の宛先を経理部宛に郵送したこともあ り,調査票への回答者の所属部署は,大部分 (89..44%)は経理部である。それ以外に は,予算管理部 (311%),経営企画部(1..86%),そして管理部 (062%) からの回 答が一部みられる。 それに対して日本企業の場合は,調査票を国際事業本部宛に郵送した関係もあり, 国際部からの回答が 27..04%,経理部からが 25,51%そして国際企画部からが 21..43% と,国際本部(国際部,国際企画部など)と経理部が,調査票への回答部署の主要な ものである。 表 - 2 回答者の所属部署 部 署 英国企業 部 署 日本企業 1)経理部 144 ( 8944%) 国際企画部(課) 42 ( 21. 43%) 2 )原価管理部(課) 。( 0) 国際部(諜) 53 ( 27,04) 3 )予算管理部(課) 5 ( 311) 国際経理部(課) 7 ( 357) 4 )経営企画部(室) 3 ( L86) 国際販売部(課) 7 ( 357) 5 )管理部(謀) 1 ( 062) 経理部(課) 50 ( 2551) 6 )総務部(課)

o

(

0) 経営企画部(課) 14 ( 714) 7)その他 7 ( 435) その他 23 ( 11,73) N 161 (1000 ) 196 (100,0 )

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-324 香川大学経済論叢 518

2

-3

回答者の職位 英国企業と日本企業の回答者の職位を,表 3により検討してみる。まず回答者の 職位は,英国企業の場合には,取締役以上の職位の経営者からの回答は68れ54%と, 7 割近い比率を占めている。それ以外には,部長職からと課長職からの回答がそれぞれ 10,11%を占めているのが目だった特徴である。それに対して日本企業の場合には,取 締役以上の経営者からの回答は6,,29%と少なし部長職からの回答は35,85%,課長 職からの回答は43ι0%と,回答者の大部分を占めている。 以上のように調査票への回答者は,英国企業では取締役以上の経営者からの回答が 大部分を占めているが,日本企業の場合には課長職と部長職からの回答が多くなって いるのが特徴である。 職 位 1)取締役以上 2 )部長 3 )課長

4

)

係長 5 )その他 N 2-4 因企業の経営規模 表

-3

回答者の職位 英国企業 122 ( 6854%) 18 ( 10 11) 18 ( 10目11) 13 ( 730) 7 ( 393) 178 (10000) 日本企業 10 ( 629%) 57 ( 3585) 69 ( 4340) 11 ( 6 92) 12 ( 755) 159 (100,,0 ) 回答企業の経営規模は,表-4に示すとおりである。まず英国企業の平均値は 2 億54百万ポンドというのが1社あたりの平均資本金額である。売上高は, 16億12百 万ポンドであり,従業員数は8,301人というのが,英国企業の平均値でみた規模に関 する平均像である。 それに対して,日本企業の経営規模の平均値は,資本金2億42百万ポンド,売上高 27億 53百万ポンド,従業員数は7,269人である。英国企業は日本企業と比べて,従業 員数で約1,000人大きし逆に売上高では日本企業の約6割弱である。資本金につい ては,英国企業の場合が日本企業よりも幾分大きいというのが,英国企業と日本企業

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519 英国企業のクゃローパ1レ展開と管理会計の国際移転に関する一考察 -325 の1社あたりの平均像である。 それ以外の指標としては,輸出比率と海外生産比率を,両国企業のグローパル化を 計る一つの指標として調査を行った。まず輸出比率は,英国企業の場合29..70%である のに対して,日本企業の場合は17..85%と,英国企業が12%近く海外への製品の輸出 比率が高くなっている。海外生産比率についても同様で,英国企業の場合は27..24%で あるのに対して,日本企業は1204%と,英国企業の海外生産比率が15%以上高くなっ ている。このように輸出比率と海外生産比率からみたグローパル化は,ヨーロッパに 位置する英国企業の場合が,輸出比率と海外生産比率のいずれでみても,日本企業よ りもグローパル展開が進んでいるといえる。 表- 4 回答企業の経営規模 経営規模 英国企業 日本企業 平均値 標準偏差 企業数 平均値 標準偏差 企業数 資本金(;B百万ポンド) 253 656 121 242 362 203 売上高(;B百万ポンド) 1,612 7,946 123 2,753 5.583 202 従業員数(人数) 8,301 22,438 121 7,269 12,281 200 輸出比率(%) 29..70 26..58 107 17..85 16..64 195 海外生産比率 (%) 27..24 3LOO 98 12..04 13..07 168 *)為替レートは, iIOl..OOポンド=¥160円(調査時点での為替レート)で換算した。 2 - 5 取締役の構成 次に,英国企業と米国企業の取締役会にどの程度外国国籍の経営者が入っているか, 表一5により検討してみる。そのことにより,英国の親会社の人事面での国際化を明 らかにする。(ここでは日本企業の調査結果は表一5の注に示した数値しかないので, 米国企業の場合と比較検討する。) 英国企業の取締役数の平均値は, 7..70人であるのに対して,米国企業の場合は10.. 34人と,米国企業の場合が平均値で2..64人多くなっている。 その取締役会の構成員の国籍を見てみると以下のとおりになる。英国企業の取締役 会の構成員の国籍は,英国人が5..98人と取締役会の構成員の大半を占めており,それ

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-326ー 香川大学経済論議ー 520 以外には,米国人を中心にした北アメリカの国籍を持つボード・メンバーは0..72人に すぎない。 また米国企業の場合も,ボード・メンバーは,米国人が10山16人と,英国企業以上 に,ほとんどの取締役会の構成員はアメリカ人であり,それ以外の国籍の取締役会メ ンバーは,欧州人(英国人を含む)026人,カナダ人0..05人と,限られた構成数になっ ている。 表-5 取締役会の構成 取締役の国籍 英国企業 米国企業 平 均 値 標 準 偏 差 企業数 平均値 標準偏差 企業数 取締役数(人) 7..70 2..62 123 10..34 3.15 94 (国籍): 英国人(人) 5.98 2.68 123 欧州人(人) 26 1 01 92 北アメリカ人(人) 72 L33 123 05 23 92 米国人(人) 10..16 2..78 92 その他(人) .97 L51 123 *) i欧州、│人」は,米国企業の場合には,英国人を合むすべての欧州人を意味する。「北アメ リカ人」は,英国企業の場合には,米国人+カナダ人を意味し,米国企業の場合には,カナ ダ人のみを意味する。なお(ー)は,調査察の中に調査項目がないことを示している。 *本)なお,日本企業の詳細な調査数字はない。ただ日本本社の取締役会のメンバーに,外国 国籍の取締役がいる企業は,回答企業202社のうち17社 (842%)に過ぎない。このよう に,日本企業の本社の取締役会に外国人取締役がいるのはいまだごく一部の企業に限られ ているようである。 2 - 6 地域別海外子会社 ここでは,表

-6

により,英国企業と米国企業の

1

社あたりの海外子会社について みてみる。(なお英国の場合も海外に子会社や関係会社を持っている多国籍企業76社 についてのみ,以下では集計を行っている。またここでも米国企業と比較をしている。) 英国企業の1社あたりの海外子会社数は17..68社であり,米国企業の場合には1社 あたり 28..19社である。英国企業と米国企業とを比較すると,米国企業が所有してい る海外子会社数は平均値で11社近く多くなっている。

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521 英国企業のグローバJレ展開と管理会計の国際移転に関する一考察 -32界一 地域別の海外子会社数は,英国企業の1社あたりの平均値は,ヨーロッパで8..81社, 北アメリカ(米国+カナ夕、)で3..78社,アジア(日本を除く)で2..51社,そして日 本で仏41社というのが,英国企業の平均像である。それに対して,米国企業の場合は, ヨーロッパで10..60社,カナダで2..69社,アジア(日本を除く)で3..03社,そして 日本で0..71社になっている。アメリカ企業の海外子会社数が多かったこととも呼応し て,米国企業の地域別の進出も企業数も多くなっていることが窺える。 表-6 地域別海外子会社数 地 域 英国企業 米国企業 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 海外子会社総数 17.68 21.26 74 28..19 6L06 72 (地域別) ヨーロッパ(会社数) 8.81 13..04 74 10..60 15..01 72 北アメリカ(会社数) 3..78 5..61 74 2..69 4..21 72 アジア(除日本) (会社数) 2 51 3..34 74 3..03 5..11 72 日本(会社数) 41 ..86 74 .71 L24 72 *)表中の「北アメリカ」は,英国企業の場合には,米国+カナダを意味し,米国企業の場合 には,カナダのみを意味する。 3.英国企業と日本企業の経営実践とその課題 この節では,英国企業と日本企業において,どのような経営実践がなされているか を比較検討する。具体的には,日本的経営実践,親会社の国際部門,海外子会社のロー カル経営者,地域統括会社,海外子会社の研究開発のローカル化,海外子会社への(製 品企画から生産までの)製造職能のローカル化,及び海外子会社の経営職能のローカ ノレ化のレベルについてそれぞれ比較検討する。 3 - 1 日本的経営の実践 ここでは英国企業において,いわゆる「日本的経営」と呼ばれている経営職能をど の程度導入しているか,表一7により検討する。(ここでも,日本企業の日本的経営実

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522 香川大学経済論叢 -328-践の数字がないので,米国企業の場合と比較する形で検討する。) 日本的経営実践 英米企業 の差 米国企業 平均値 企業数 英国企業 平均値 企業数 経営職能 1 i A U F U 。 。 ハ υ q o n , a q δ 1 l o o p O F b 、 } ヲ i n r “ の ノ “ 司 E A 咽 E A 内 べ υ の ノ “ n υaA 叩 44A ﹃ A q も U F ヘ υ 内 ︿u r -w n べ υ A V A リ ハ リ ハ リ ハ υ ハ リ ハ H V A H V A H V A H V ハ υ A υ A U

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ー ム ヴ a っ “ 。 , u ヮ “ Q ν 1 ム ワ a y ム t i ウ t F b y i A u n t ︽ b 巧 d 巧 t ウ d n b η i a U 氏 U 巧 d £ υ 氏 U ヴ t η t 346( 3) 334( 5) 338( 4) 357(1 ) 3 53( 2) 299( 8) 303(7 ) 304( 6) 2 93( 9) 2 79(10) 2..58 (11) 211(12) L54(14) L81(13) ワ ム Mnυ っ “ つ 白 1 i A U A υ A 宮 o o q u 氏 υ つ ゐ 1AQo n t 巧 i n i η , d ウ 4 ヴ a 7

ι υ R U ι υ ι U F O 巧 , t p o 367( 1) 3 54(2) 353( 3) 343( 4) 323( 5) 2 76 ( 6 ) 266(7 ) 263( 8) 2 52 ( 9) 2ι1 (10) 2 02(11) 1引76(12) 1..54(13) L50(14) 1)多能工の養成 2) 5 S運動(清潔な工場) 3)現場主義経営 4)平等主義 5) QCサークJレと提案制度 6) 原価企画 7)大部屋主義 8)集団的意思決定 9)デザ、イン・イン 10)ジョブ・ローテーション 11) 年功賃金制度 12) 年功昇進制度 13)標準服(制服)の着用 14) ノーレイオフ政策 表

-7

l

i

l

i

-*)表中の数字は,以下のように決定された。「全然実施していない」→l点 rある程 度実施している」→3点 r全面的/積極的に実施している」→5点として,回答企 業の合計得点をだし,それを回答企業数で割って 1社当たりの平均値を算出した。 括弧の中の数字は,英国企業,米国企業それぞれの日本的経営実践の実施レベルの順位を 示している。 なお「英米企業の差」は,米国企業の平均値から英国企業の平均値を差し号│いた差を意味 している。従ってプラスの場合は,米国企業での実践レベルが高いことを,また逆にマイナ スの場合には,英国企業の実践レベルが高いことを意味している。 英国企業及び米国企業におけるいわゆる「日本的経営」と呼ばれる幾つかの経営実 これまでに海外進出した臼系企業の場合の調査結果に比べると, 践の導入レベルは, 日本的経営実践といわれる 全般的には低くなっている。英国企業及び米国企業では, 4点台にある経営職能は,いずれの 活動を積極的に行っている企業は比較的少なく, 国にもみられない。そのような状況の中で i多能工の養成j,i 5 S運 動j,i現場主義 経 営j,i平等主義j,iQCサークルと提案制度」などは 3点以上(ある程度導入されて

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5

2

3

英国企業のグローパル展開と管理会計の国際移転に関する一考察 -32.少ー いる)であり,英国企業で比較的多く導入されている。また多能工の養成. 5 S運動, 現場主義経営という 3項目については,英国企業の場合が米国企業に比べて,幾分

r

a

本的経営実践」を積極的に導入していることが窺える。 それに対して r原価企画j. r大部屋主義j. r集団的意思決定j. rデザイン・インj. 「ジョブ・ローテーション」などの経営実践は,少しは導入されているというレベル にあり,いずれの場合も,米国企業の場合が英国企業よりも導入割合は高くなってい る。 英国企業,米国企業のいずれの場合にも,ほとんど導入されていない日本的経営実 践は 3種の神器と呼ばれる年功賃金制度,年功昇進制度,ノーレイオフ政策(終身 雇用制).や制服(標準服)の者用である。英国企業及び、米国企業のいずれも導入水準 は低く,ほとんど実践されているとはいえず,日本企業に個別的な(国有の)政策の ようである。ただそれでもスコア (r日本的経営実践」の導入レベル)の上では,どち らかといえば,米国企業の場合が少し高くなっている。 3 - 2 親会社の国際部門 英国企業と日本企業それぞれの親会社の中に,海外子会社を統括する部門(例えば 国際部門など)を組織上所有しているかどうか,また所有している場合には,その形 態は地域別かそれとも製品別になっているかどうかを,表-8により検討する。 まず国際部門を所有しているのは,英国企業では

3

3

.

.

7

6

%

であり,日本企業では印刷

47%

と,日本企業の場合,国際部門を所有している企業が

2

5

.

7

1

%

も多くなっている。 それだけ日本企業は,輸出あるいは海外生産にカを入れているのであろうか。それと も英国企業の場合は,国際化(多国籍化)が世界で最も早く行われたこと,あるいは 地域統括会社が多いことから窺えるように,それだけローカノレ化が進展しており,地 域統括会社などに海外子会社の経営権限を委譲しているためであろうか。あるいは各 事業部に海外子会社を含めた管理権限を委譲してることの結果であろうか。そのこと の具体的な解明は,今後両国企業への面接調査などによる,詳細なフォローアップ調 査を待つ必要がある。 次に,親会社に国際部門がある場合,海外子会社を統括する部門の組織は,地域別

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-330- 香川大学経済論叢 524 に組織されているのかあるいは製品別に組織されているのであろうか。英国企業では, 地域別に組織されている企業は68.18%,日本企業のその比率は66..67%と,地域別に 組織されている企業は,英国企業と日本企業との間でほぽよく似た数字になっている。 それ以外では,製品別が英国企業で1364%,日本企業で紅白43%,そして(地域別と 製品別のマトリックス)が,英国企業で18.18%,日本企業で1

1

.

90%になっている。 英国企業の場合には,マトリックス型の紙織が幾分多く,逆に日本企業では製品別の 組織が多くなっている。 有無と形態 1)有り 2 )無し (国際部門のタイプ): a)地域別 b)製品別 c) a)

+

b)のマトリックス 15 (6818%) 3 (13 64) 4 (18 18) 日本企業 113 (5947%) 77 (40 53) 28 (6667%) 9 (21 43) 5 (lL90) *) r国際部門有り」と回答した企業のうち,英国企業の場合は3社,日本企業の場合は, 71 社がその形態がa)b) c)以外,あるいは不明(無回答)である。表中の国際部門のタイプ の数字は,不明とその他の部分を除外して計算した。 3 - 3 海外子会社のローカル経営者 海外子会社におけるローカル(現地)経営者が,どの程度英国系企業と日系企業の 社長,経理部長及び人事部長などのポストを占めているか,表

-9

により検討する。 そのことにより,海外子会社における人的側面でどの程度ローカル化(人のローカル 化)が達成されているか比較してみる。 まず英国企業の海外子会社・では,海外子会社の社長ポストをローカルの経営者が占 めている比率は, 10 15社(英国企業1社当たりの海外子会社17.68社、(平均値)のう ちの57..41%を占めている:以下同様。)である。経理部長ポストの場合は, 10“19社 (57.64%)と,ほぽ社長ポストの場合と同様に過半数の企業が経理部長ポストのロー カル化をすでに行っている。人事部長のポストの場合は,現地経営者が占めているの

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525 英国企業のグローパル展開と管理会計の国際移転に関する一考察 -331-は, 7..33社 (4L46%) に過ぎないのが英国企業の実態である。 それに対して,日本企業の海外子会社の場合は,社長ポストは 4..93人(日本企業の 場合の 1社当たりの海外子会社、は 16..31社であるので,海外子会社の社長職のローカ ル化比率は 3023%である:以下同様),経理部長ポストも 4“93人 (3035%)を占め, 人事部長は 5..36人 (32..80%)と,社長ポスト,経理部長ポストに比べると,幾分人 事部長のローカル化が進んでいることがわかる。それは,日本企業の場合には,海外 子会社を設立する際,人的側面では,まず現地の人事部長の採用を行い,その人を中 心に現地子会社の従業員を順次採用して行くという手順をとる企業が多いことを,海 外子会社の経営者から面接調査の際などにたびたび聞いたことともある程度符合する ことである。 ただ英国企業と日本企業を比較すると,トップの経営者のローカル化という面では, 社長,経理部長,人事部長のいず、れの面でも,英国企業が日本企業よりも遥かにロー カル化が進んでいることが理解できる。ただ人事部長の場合は,上述のような理由と も相まって,日本企業の場合,ある程度ローカルの経営者にマネジメントを委譲して いることも明らかになった。 表

-9

海外子会社のローカル経営者 役職 英国企業 日本企業 平均値 標準偏差 企業数 平均値 企業数 1)社 長(人数) 10..15 17.96 73 4..93 175 2)経理部長(人数) 10..19 18..85 73 4..95 175 3 )人事部長(人数) 7.33 19..11 73 5..36 175 *)表中の数字は,英国企業及び日本企業それぞれの場合,ローカルの経営者が占めている企 業数を示している。

*

*

)

1社当たりの海外子会社数は,次のとおりである。英国企業の場合には, 1社当たり海 外子会社は 17..68社あり,日本企業の場合には, 1社当たり 16..31社ある。 3 - 4 地域統括本社 最近の日本企業の海外進出は,グローパJレ展開を北米,欧州,アジア地域の3極あ

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-332- 香川大学経済論叢 526 るいは上述の3地域に日本を加えた4極に分けて,地域ごとに海外子会社を統括する 地域統括本社

(

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を形成し,地域統括会社に権限を委譲し,そこ を中心に地域別のグローパル展開をはかる方向にあるように思われる。そこで以下で は,英国企業と日本企業が各地域にどの程度地域統括本社を保有しているか検討する。 まず最初に,地域統括会社の有無を,表-10により検討する。地域統括本社がある のは,英国企業の場合は60..53%と, 6割以上の企業に地域統括本社がすでにあること が分かる。それに対して日本企業では,地域統括会社があるのは2086%の企業に地域 統括会社があるにすぎない。英国企業と比べると,地域統括本祉がある企業の比率は 約1/3である。ただ日本企業の場合には,計画中の企業も 20.32%あり,そのことに 注目する必要はある。 それでは次に,英国企業と日本企業それぞれがどの地域に地域統括本社を設けてい るかをみてみる。まずヨーロツパに地域統括会社があるのは,英国企業では51..16%と 過半数を占めているが,日本企業の場合は1892%と,欧州に地域統括会社を持ってい る企業は日本企業の場合はいまだ2割に満たない。 次に,北アメリカに地域統括会社がある英国企業は72..09%と7割を越えているが, 日本企業の場合はヨーロツパの場合に比べると地域統括本社がある企業は多くなって いるが,それでも北アメリカに地域統括本社がある企業は20..86%にすぎない。最後に アジアの場合の地域統括会社は,英国企業の場合は,ここでも印刷14%と6割近い比率 に達しているが,日本企業の場合は8.93%と 1割に満たない比率である。 いずれの地域でも,英国企業の場合は,地域統括本社を持っている割合が日本企業 の場合に比べて圧倒的に高くなっている。これは,英国企業の海外進出の長い歴史と 共に,英国企業の経営スタイルがより分権化しているケースが多いことと関係が深い ように思われる。それに対して,日本企業の場合は,海外進出の歴史が比較的浅いこ とと同時に,アジアの場合には,日本本社との地理的な近接性などから,日本本社の コントロール下におかれる場合も多いようである。それに対して,北アメリカとヨー ロッパは地理的な遠隔性からも,地域統括会社の必要'性は高いという事情も,日本企 業の数字には反映されているようである。

(13)

527 英国企業のグローパル展開と管理会計の国際移転に関する一考察 -333ー 表ー10 地域統括本社 地域統括会社 英国企業 日本企業 1 )有り 46 (6053%) 39 (2086%) 2 )無し 30 (39 47) 110 (5882) 3 )計画中 38 (2032) (地域別): 1)ヨーロツパ(会社数) 22 (5116%) 35 (18 92%) 2 )北アメリカ(会社数) 31 (72ρ9) 39 (20目86) 3 )アジア(会社数) 25 (5814) 15 ( 8 93) *)日本企業の場合,全体の数字は,最も地域統括本社の多い北米の場合の数字を示してい る。 3 - 5 研究開発のローカル化 ここでは,海外子会主士にどの程度研究開発部門(広義) (製品企画,研究開発(狭義), 設計部門)を持っているか,表-11により検討する。そのことにより海外子会社への 研究開発部門の国際移転の実態を明らかにすると同時に,原価企画など日本的な管理 会計が機能する前提条件(土壌)を明らかにすることも意図している。 まず研究開発部門(広義)が海外子会社にある企業は,英国企業で55..56%を占め, 臼本企業では37..31%にすぎない。ここでも英国企業の場合が,海外子会社に研究開発 部門を持っている企業の比率が18..25%も高くなっていることが理解できる。 つぎに,製品企画,研究開発(狭義),設計のどのレベルで,英国企業と日本企業は それぞれ研究開発部門を,どの程度海外子会社に所有しているのであろうか。 英国企業の場合は,研究開発(狭義)のレベルが最も高く 44..44%を占め,製品企画 段階41..27%,そして設計段階が 39リ68%と,いずれも 40%程度の企業が研究開発(広 義)の部門を海外子会社に所有しているといえる。 それに対して,日本企業の場合にも,研究開発(狭義)を海外子}会社に持っている 企業は37.31%であり,英国企業と比べると低いが,それでもかなり高い数値になって いる。それに対して,設計部門は30..37%,そして製品企画部門は 22..92%にすぎない。 特に日本企業の場合には,製品企画部門を海外子会社に持っている企業が少ないのが 特徴である。

(14)

334 香川大学経済論叢 528 英国企業の場合を,日本企業の数字と比較してみると,英国企業の場合が研究開発 部門を海外子会社に所有している企業の割合は全体的に高くなっており,また個々の 研究開発機能で比較しても,英国企業は研究開発機能をより多く海外子会社に国際移 転していることがわかる。 R&Dの有無 1)有り 2 )無し 表ー 11 海外子会社の研究開発部門 英国企業 35 (5556%) 28 (4444) (レベル別の「有り」の比率): 1)製品企薗 2 )研究開発(狭義) 3 )設計部門 26 (41リ27%) 32 (44 44) 25 (3968) 日本企業 72 (3731%)

+

121 (6269)+ 44 (22 92%) 72 (3731) 58 (3037) +)日本企業の場合 i有り」の比率は,研究開発部門(狭義)の数字を使っている。 3 - 6 製造職能のローカル化 ここでは英国企業と日本企業について,それぞれの海外子会社の製造機能(広義: 製品企画から設計,製造準備,そして実際のものづくりをする生産段階までを含む) を黍直的(時系列)にみた場合,どの程度ローカルの海外子会社にそれらの職能を国 際移転しているか,地域別に検討してみる。 1) ヨーロッパ地域 まず最初に,ヨーロッパ地域における場合を,表ー 12により比較検討する。ヨーロツ パ地域においては,製造活動(広義)全体をみてみると,英国企業のヨーロッパ大陸 への近接性など地理的ロケーションから当然のことかもしれないが,英国企業と日本 企業を比べると,英国企業が海外子会社への製造職能のローカル化のレベルが高く なっていることが理解できる。 英国企業の場合は,製品企画,基本設計という上流(源流)段階のスコアは約 3..50 点であり,詳細設計 (363点),製造準備 (379点)そして製造 (3.98点)段階と,

(15)

529 英国企業のグローパル展開と管理会計の国際移転に関する一考察 335ー 生産活動の下流に行くにつれてローカル化は徐々に進展している。数値的には,いず れの製造職能も,ほぽ3点、台の中・後半に位置しており,ある程度ローカル化が進展 していることが窺える。 それに対して,日本企業の場合は,製造段階(狭義)以外は,いずれの製造機能も 2点台の前半にあり,ヨーロツパ地域では,海外子会社への製造機能のローカル化が いまだ余り進展してるとは言い難い状況にある。具体的には,基本設計職能は2“19点 と,大部分の機能が日本の親会社で行われていることがわかる。また詳細設計も

2

..4

6

点,製品企画2..48点と,少しずつローカル化は進展してる様子であるがいまだ臼本企 業は,日本の親会社主導の製造スタイルになっているといえる。 表一12 海外子会社への製造職能のローカル化(ヨーロッパ) 製造のステージ 英国企業 日本企業 平均値 標準偏差 企業数 平均値 企業数 1)製品企画段階 3..49 152 47 2..48 142 2 )基本設計段階 3..48 1.58 44 2 18 142 3 )詳細設計段階 3..63 162 46 2..46 142 4 )製造準備段階 3..79 165 47 2..98 142 5)製造段階 3..98 164 47 3..57 142 *)表中の数字は, 1社当たりの平均値と標準偏差である。表中の数字は,以下のように計算 された。「全面的に日本本社で行われている」場合には 1点,...,「日本本社と海外子会 社との問で半分半分に分担されている」場合には3点 海 外 子 会 社 で 全 面 的 に 行 わ れている」場合には5点として,回答企業の合計点を出し,それを回答企業数で割って, 1 社当たりの平均値を算出した。(以下の北米,アジアの表も同様である。)

2

)

北アメリカ地域 それでは次に,表一13により,北アメリカの場合を検討する。まず、最初に,北アメ リカの場合は,英国企業と日本企業のいずれの場合も,そのロ}カJレ化のレベルはヨー ロッパ地域の場合に比べて高くなっており,それだけ広義の製造機能全体がよりロー カルに行われていることが理解できる。 次に,北アメリカにおける英国企業と日本企業の海外子会社への製造機能のローカ

(16)

-336- 香川大学経済論叢

5

3

0

ル化のレベルを検討する。全体的には,ここでも英国企業の場合が日本企業の場合よ りも,いずれの製造機能(広義)もローカル化のレベルが高くなっている。 具体的には,英国企業では,製品企画がローカル化のレベノレが最も{尽く

(

37

6

点), 基本設計機能

(

39

2

点)も

3

点台である。詳細設計と製造準備はいずれも

4

.

.

1

3

点であ り,製造機能(狭義)も

4

.

.

1

5

点と,ローカル化のレベルが高くなっているといえる。 それに対して,日本企業の場合は,基本設計機能のローカノレ化のスコアが最も低く (2.

3

2

点),次に製品企画

2

ω

6

1

点,詳細設計

2

.

.

6

4

点という順になっているが,いずれも

2

点台にあり,日本の親会社中心に行われている。製造準備は

3

.

.

3

9

点と

3

点台であり, 製造段階は

3

.

.

9

5

点と,とりわけ製造段階は海外子会社が中心にローカルに行われてい る。日本企業の場合は,アジア地域の海外子会社は生産基地としての性格が強く,製 造段階あるいは製造準備段階を中心にアジア地域へ国際移転を行っているといえる。 製品企画,基本設計,詳細設計というより源流 (up-stream)の活動は,英国企業に比べ て,日本の親会社で集中的に行われているというのが実態である。 表一

1

3

海外子会社への製造職能のローカル化(北米) 製造のステージ 英国企業 日本企業 平均値 標準偏差 企業数 平均値 企業数

1

)製品企画段階

3

.

.

7

6

1

3

9

4

1

2

.

.

6

1

1

5

0

2

)基本設計段階

3

.

.

9

2

1

3

3

4

0

2

.

.

3

2

1

5

0

3

)詳細設計段階

4

.

1

3

L40

4

0

2

.

.

6

4

1

5

0

4

)製造準備段階

4

1

3

L47

3

9

3

.

.

3

9

1

5

0

5

)製造段階

4

.

.

1

5

L55

3

9

3

.

.

9

5

1

5

0

*)表中の数字の説明は,表

-13

と同様である。

3

)

アジア地域 アジア地域の英国企業と日本企業の海外子会社のローカル化のレベルは,表

-14

の とおりである。全体的な傾向としては,アジア地域の製造機能のローカノレ化は,英国 企業では,源流レベルのローカJレ化はヨーロッパの場合よりも幾分遅れているが,製 造準備,製造段階はヨーロッパ地域の場合よりも,ローカル化が進展してるといえる。

(17)

531 英国企業のグローパル展開と管理会計の国際移転に関する一考察 -337-ー それは,源流管理(製品企画,設計)は英本固などで行い,アジア地域で製造及びそ れに近い活動(製造準備など)を行っているようである。それに対して,日本企業の 場合は,アジア地域の場合には,源流段階の経営機能は日本の親会社で行い,製造職 能及び製造準備職能をアジア地域で行うという傾向がより顕著であり,基本的に日本 の親会社で製品企画,基本設計,詳細設計を行い,製造準備の段階からアジア地域の 日系企業へ国際移転しているということが,表-14の数字から読みとれる。 表ー14 海外子会社への製造職能のローカル化(アジア) 製造のステージ 英国企業 日本企業 平均値 標準偏差 企業数 平均値 企業数 1)製品企画段階 3 32 L57 34 2..34 162 2 )基本設計段階 3..47 1.44 32 1..99 162 3)詳細設計段階 363 1 45 32 2..34 162 4 )製造準備段階 394 L46 34 3..19 162 5)製造段階 400 L48 34 3..89 162 *)表中の数字の説明は,表-13と同様である。 3 -6 海外子会社への経営職能のローカル化 次にここでは,製造機能(広義)だけでなく,経営職能を水平的(過程的)にみて, 購貿,販売,

R&D

,設計,サービス,人事,財務職能などの経営職能がどの程度ロー カル化されているか,より広いパースぺクティブから検討する。 1) 欧州の海外子会社 まず最初に,表-15により,欧州、│の海外子会社の場合について検討する。英国企業 も日本企業も,欧州地域では,どのような経営職能がより多くローカ1レ化されている かを考察する。 まずローカル化の順位(オーダー)については,英国企業と日本企業の聞に,ほぽ 同じ傾向がみられる。すなわち最もローカル化が進んでいるのは,人事機能(ローカ ノレズ)であり,サービス機能,販売機能,購買機能,製造機能,設計機能,

R&D

(18)

338 香川大学経済論叢 532 能,財務機能(運転資金:これは英国のみ),人事機能(派遣社員),そして財務機能 (設備投資;英国のみ)というオー夕、ーになっている。 ただ欧州、│におけるローカル化のレベル(スコア)は,人事機能(派遣社員),設計機 能,研究開発機能のローカル化は,英国企業の場合が日本企業よりも高く,逆に販売 機能,サービス機能,人事機能(ローカノレズ),製造機能,購買機能などについては日 本企業の場合がローカル化のレベルが高いという特徴がみられる。 表一15経営職能のローカル化(欧州) 経営職能 英国企業 日本企業 日英企業 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 平均値 企業数 の差 1)製造機能 3..34 (5) 1 31 44 3..72 (5) 138 +0..38 2)購貿機能 3..64(4) 1 33 47 3.98(4) 138 +0..34 3)販売機能 3 73 (3) 1 30 51 433 (3) 138 +0..60 4)サービス機能 3..82 (2) 1“28 51 434 (2) 138 +0..52 5) R&D機能 2..93 (7) L42 42 2 21 (7) 138 -0..72 6)設計機能 3..26 (6) L36 43 2 50 (6) 138 -0..76 7)人事機能(ローカルズ) 398 (1) 1 23 48 4 46(1) 138 +0..48 8)人事機能(派遣社員) 277 (9) L36 43 1..69 (8) 138 -L08 9)財務機能(運転資金) 2..88 (8) L36 50 10)財務機能(設備投資) 220 (1的 L34 50 *)表中の数字は, 1社当たりの平均値,標準偏差及び問答企業数を示している。表中の数字 は,以下のように計算された。「寅社(親会社)で全面的に決定される」を1点 r親 会社と海外子会社との話し合いで決定される」を3点 r全面的に海外子会社で決定 される」を5点として,回答企業の合計点を出し,それを回答企業数で割って社当たり の値を算出した。なお, (ー)は,調査察にそのような質問項目が無いことを示している。 なお「日英企業の差」という項目は,日本の平均値から英国の平均値を引いた差を示してい る。すなわちプラスは,日本企業の方がローカJレ化が進展していることを示し,マイナスは 英国企業の方がローカル化が進展していることを示している。 2) 北アメリカの海外子会社 ここでは,表-16により,北アメリカの海外子会社への経営職能のローカノレ化の実 態について,日英企業を比較する形で検討する。まず英国企業の場合には,ローカlレ 化の高い経営活動は,人事機能(ローカルズ)(421点 :1位),購買機能(409点 :

(19)

533 英国企業のグローパル展開と管理会計の国際移転に関する一考察 -339-ー 2位),製造機能 (403点 :3位),サービス機能 (402点 ;4位)及び設計機能 (4 00点 5位)が4点台で,北アメリカの英国系企業へのローカlレ化が最も進んでいる 経営機能であるといえる。英国系企業でその次にローカル化が進展しているのは,販 売機能 (3,86点 :6位), R&D機能 (355点 :7位)などの経営機能であり, 3点 台の後半のスコアになっている。ローカル化が余り進んでいない経営機能は,人事機 能(派遣社員)(316点 :8位),財務機能(運転資金)(3 16点 :9位),とりわけ財 務機能(投資資金)(218点 :10位)である。これらの機能は,いずれも 3点台の前 半あるいは2点台の前半にあり,英国の親会社で主に意思決定がなされているのが現 状である。 次に日本企業の場合,最もローカノレ化が進展しているのは,人事機能(ローカルズ) (4,51点 1位),サービス機能 (4ι3点 :2位),販売機能 (4,39点:3位),購買 機能 (418点 :4位)及び製造機能 (4れ01点 :5位)は4点台にあり,それらの経営 機能の大部分が北アメリカの日系企業に国際移転されているといえる。それに対して, 設計機能 (264点:6位),研究開発機能 (251点 :7位)及び人事機能(派遣社員)

(

1

7

3

点:

8

位)と,これら研究開発(広義)及び日本から派遣経営者の人事は,大 部分日本の親会社で意思決定がなされているといえる。 英国企業と日本企業を比べてみると,日本企業の場合はローカル化されている経営 機能(分権化)と日本の親会社に保持されている経営機能(集権化)とが明確に分か れているのが特徴的である。日英企業のローカJレ化の平均値の差でみてみると,日本 企業のローカル化が進んでいる機能は販売機能,サービス機能,人事機能(ローカlレ ズ)であり,英国企業に比べて幾分日本企業のスコアが高い(ローカル化されている) のは,購買機能,製造機能である。逆に,人事機能(派遣社員), R&D機能,設計機 能は,英国企業のスコアが圧倒的に高く,それだけ英国企業はそれらの経営機能をロー カルの企業に委譲している比率が高いことが窺える。

(20)

534 香川大学経済論叢 34(} -経営職能のローカル化(北米) 日英企業 の差 日本企業 平均値 企業数 英国企業 標準偏差企業数 経営職能 平均値 1)製造機能 2)購 買 機 能 3)販売機能 4)サービス機能 5) R&D機 能 6)設 計 機 能 7)人事機能(ローカJレズ) 8)人事機能(派遣社員) 9)財務機能(運転資金) 10)財務機能(投資資金) *)なお表中の数字は,表-15の数字と同様である。なお「日英企業の差」という項目は,日 本企業の平均値から英国企業の平均値を引いた差を示している。すなわちプラスは,日本企 業の場合がローカJレ化が進展していることを示し,マイナスの場合は英国企業のローカJレ 化が進展していることを示している。 アジア地域の海外子会在 3) 表-16 十0..02 +0..08 +0..54 十0.41 -0..96 -134 +0れ30 -1.43 164 164 164 164 164 164 164 164 4 01 (5) 418 (4) 4..39 (3) 4..43 (2) 2 51(7) 2..64 (6) 4..51 (1) 173(8)

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(21)

535 英国企業のグローバル展開と管理会計の国際移転に関する一考察 -341ー 計職能 (2..36点::6位),人事職能(派遣社員)(L59点 :7位)や研究開発職能 (1 25点 :8位)は 3つの地域の中では,最もローカル化されておらず,大部分を日本 本祉で意思決定しているようである。 英国企業と日本企業のスコアの差は,製造職能については,日本企業のローカル化 が英国企業に比べて0..76点も高くなっている。それ以外では,サービス機能,販売機 能,購買機能や人事機能(ローカlレズ)も,日本企業の場合がかなり高いことが表か ら窺える。それに対して,これまでのヨーロッパ,北アメリカと同様に,研究開発機 能,人事機能(派遣社員)や設計機能は,英国企業の場合が遥かにローカルに国際移 転(意思決定及びオペレーションの両面で)されていることが窺える。 表一 17 経営職能のローカル化(アジア) 経営職能 英国企業 日本企業 日英企業 平 均 値 標 準 偏 差 企 業 数 平均値 企業数 の差 1)製造機能 3 28(6) L30 32 4..04 (5) 154 十0..76 2)購買機能 3..84 (3) L07 37 4 06 (4) 154 +0..22 3)販売機能 3..81 (4) 1 13 42 4..13(3) 154 +0..32 4)サービス機能 385(2) L23 39 423 (2) 154 +0..38 5)R&D機能 3 00(7) L39 34 1..25 (8) 154 -L75 6)設計機能 344(5) 1.31 34 2..36 (6) 154 -108 7)人事機能(ローカルズ) 4..24 (1) .86 41 453 (1) 154 +0..29 8)人事機能(派遣社員) 2“81 (8) L28 36 1..59 (7) 154 -L22 9)財務機能(運転資金) 2 79(9) 121 43 10)財務機能(投資資金) 231 (lO) 109 42 *)なお表中の数字は,表-15の数字と同様である。なお「日英企業の差」という項目は,日 本の平均値から英国の平均値を引いた差を示している。すなわちプラスは,日本企業の方が ローカル化が進展していることを示し,マイナスは英国企業のローカ1レ化が進展している ことを示している。 以上のことより,英国企業の場合は,ローカル化が最も進んでいるのは北米の子会 社であり,次にアジアの子会社,そして最後にヨーロッパの子会社というオーダーに なっている。その理由としては,ヨーロッパは,英国から地理的にも近接しており, ある程度英国の親会社から指揮命令することが多いことも大きな理由のーっとして指

(22)

-342- 香川大学経済論叢 536 摘できるのでなかろうか。 それに対して, 日本企業の場合には, ローカノレ化が最も進んでいるのは,北米の子 会松であり, ヨーロツパとアジアはケースパイケースであるといえる。すなわち製造 職能などの物作り関係は, アジア地域の海外子会社へのローカル化が進んでいる。 し かし研究開発や設計機能,派遣社員の人事機能のローカノレ化は, L>.句み、ミ? 口ぷr

よりローカル化されているといえる。

4

.

英国企業と日本企業の管理会計の実態と課題 ヨーロッパ地域の場 ここでは,英国企業の管理会計の実態と課題を明らかにするため, 日本企業の場合 との比較を中心に述べることにより, その特徴を検討する。具体的には,月次報告制 度とその内容,国際振替価格の方法,業績評価の方法,資金調達の方法,予算管理の 方法及び意思決定権限のあり方について検討する。 4 - 1 月次報告書とその内容 英国企業及び日本企業の海外子会社から, それぞれの親会社への月次報告制度があ るかどうか, またある場合の月次報告書の内容を尋ねてみる。 1) 月次報告制度 まず、最初に,英国企業と日本企業それぞれに,海外子会社からの月次報告制度があ るかどうかの結果は,表-18のとおりである。それによると,ほぼすべての企業に月 次報告制度があることが理解できる。すなわち,月次報告制度があるのは,英国企業 で 97..37%であり,日本企業でも 96..01%と,英国,日本のいずれの企業でも,ほとん どすべての企業に月次報告が制度化されており,月次報告制度のない海外子会社はご く一部の企業に過ぎないことがわかる。ただ月次報告制度のある企業は,英国企業の 場合, 日本企業の場合よりも少し (L36%) 高くなっている。

(23)

537 英国企業のグローパル展開と管理会計の国際移転に関する一考察 -343-有 無 1 )月次報告制度はある 2)月次報告制度はない *) UK(n==76), JPN(n==201)。 度一業一概

ω

制 一 企 一 7 2 告 一 国 一

ω(

報 一 英 一 一 1 2

:

同 月 -表 一 日本企業 195 (9601%) 6 ( 3 99) 2)月次報告制度の内容 それでは次に,月次報告制度の内容を,表ー19により検討する。全体的には,日本 企業と比較して,英国企業の場合は,月次報告制度のある企業の比率がいずれの項目 においても高くなっている。具体的には,まず損益計算書については,英国企業と日 本企業いずれの場合にも,海外子会社から損益計算書の報告をほとんどすべての親企 表一19 月次報告制度の内容 月次報告制度の内容 英国企業 日本企業 1 )月次損益計算書 72 (9863%) 175 (9615%) 2 )月次貸借対照表 65 (8904) 158 (86..81) 3) 目標と実績の比較(売上高と利益) 69 (9452) 144 (79..12) 4) 製品の不良率 14 (1918) 53 (2912) 5 )予算と実績の差異 68 (93..15) 139 (76..37) 6) 従業員数のトレンド 59 (8082) 99 (5440) 0) 資金計算書 104 (5714) 7)在庫(原材料,仕掛品,製品) 121 (6648) 8) 海外子会社聞の取引 59 (8082) 20 (10 99) 9 )その他 55 (7534) 17 ( 934) N 73 182 *)複数回答可能。なお(ー)は,調査項目がないことを示している。 業は要求している。次に多い月次報告書の内容は,英国企業では,目標と実績の比較 (売上高と利益),予算と実績の差異,及び月次貸借対照表であり,ほぽ90%以上の企 業で報告がなされている。英国企業では,上記以外にも,従業員数のトレンド,海外

(24)

344

香川大学経済論叢 538 子会社聞の取引などの情報も, 80%近い企業において月次報告がなされているが,製 品の不良率は20%弱の企業で報告されているに過ぎない。 それに対して,日本企業では,月次損益計算書以外のスコアは,最も数値が高いの は月次貸借対照表,目標と実績の比較(売上高と利益),予算と実績の差異分析である が,その数値は87%から76%の間にあり,英国企業に比べるとそのスコアは低くなっ ている。在庫,資金計算書,従業員数のトレンドは66%から 54%の間にあり,過半数 の企業が報告を行っているといえる。製品の不良率は英国企業よりも高いが,その数 値は29%に過ぎない。海外子会社聞の取引は11%弱に過ぎず,英国企業と比べると非 常に低いことが理解できる。 4-2国際振替価格 この項では,英国企業と日本企業における親会社と海外子会社聞で,原材料・部品 あるいは製品を売買(企業内国際振替)する場合の国際振替価格の実態についてみて 行く。まず最初に,親会社から海外子会社へ原材料・部品あるいは製品の振替をする 場合について,そして次に逆に,ある海外子会社から原材料・部品あるいは製品を本 国の親会社に国際振替をする場合について考察する。 1) 国際振替価格(親会社から海外子会社への国際振替) ここでは,親会社から海外子会社への国際振替をする場合について,表-20により 考察する。 全体的な傾向としては,英国企業の場合には市価基準をベースにした国際振替価格 の方法が,原材料の振替と製品の振替のいずれの場合にも高くなっている。逆に日本 企業の場合には,原材料と製品のいずれの国際振替の場合にも利用度が高いのは,原 価+利益基準であるが,製品の国際振替の場合には市価基準を利用する企業も半数近 くを占めている。原価基準については,日本企業では,原材料と部品の振替をする場 合には21%位の企業で用いられている。この数値は英国企業の場合と比べると高く なっている。原価基準の利用は,いずれの国でも最も少ないが,英国企業には,原価 基準の利用は原材料と製品のいずれの場合にも,日本企業よりも少なくなっている。

(25)

539 英国企業のク。ローパル展開と管理会計の国際移転に関する一考察 -345 表 -20 国際振替価格(親会社から海外子会社へ) 国際振替価格 英国企業 日本企業 原材料 製品 原材料 製品 a)市場価格基準 40..35% 4098% 8..07% 18.82% b)市場価格マイナス販社の諸経費 12 28 14 75 2L12

*

27..89 市価基準合計 52..63 55 73 29..19 47..06

*

c)原価基準(実際原価) 8..77 3 28 8..07 4“71 d)原価基準(標準原価) 7..02 6..56 13..04 5“29 原価基準計 15..79 9.84 21..11 10..0

e)原価プラス利益基準(実際原価) 14..04 14..75 21..12 2L18 f)原価プラス利益基準(標準原価) 15..79 16..39 28..57 23..53 原価プラス基準合計 29..83 3L14 49..69 44“71 g)その他の方法 L75 3..28 L86 1..76 N 57 61 161 170 *)日本企業の場合叫印は交渉価格(negotiatingprice)Jを含んでいる。 2) 国際振替価格(海外子会社から親会社への国際振替) 次に海外子会社から親会社へ製品,原材料の国際振替価格の実態を表 -21により考 察する。 英国企業では,この場合にも,やはり過半数の企業では市価基準を,国際振替価格 の方法として利用しており,製品振替の場合には,市価基準の利用が幾分多くなって いることが理解できる。それに対して,日本企業の場合には,やはり原価十利益基準 が 50%前後の比率を占めており,最も多く利用されている。そして原材料と部品の振 替には,原価+利益基準を利用する企業が幾分多くなっている。 次に多いのは,英国企業の場合には原価+利益基準であり,原材料の場合には 26 90%,そして製品の場合には 36..54%を占めている。日本企業の場合には,市価基準が 2番目に多く利用されており,原材料の場合には 3411%,そして製品の場合に 42. 86%と,製品の振替の場合が 875%多くなっている。

(26)

-346- 香川大学経済論叢 540 余り利用されていない国際振替価格の方法は,この場合にも原価基準であり,英国 企業及び日本企業のいずれでも,それを利用している企業は最も少なくなっている。 とりわけ製品の振替の場合に,いず、れの企業でも少なくなっていることが理解できる。 表-21 国際振替価格(海外子会社から親会社へ) 国際振替価格 英国企業 日本企業 原材料 製品 原材料 製品 a)市価基準 44..23% 4423% 7.75% 14..97% b)市価基準マイナス販社の諸経費 9.62 1154 26.36 * 27..89* 市価基準合計 53.85 55..77 34.11 42..86 c)原価基準(実際原価) 9.62 192 6.98 4..08 d)原価基準(標準原価) 7..69 3..85 6.98 4..08 原価基準合計 17..31 5..77 l3..96 8“16 e)原価プラス利益基準(実際原価) 11 54 19..23 21 71 2245 f)原価プラス利益基準(標準原価) 15..36 17..31 30..23 27..21 原価プラス基準合計 26..90 36..54 51..94 49..66 g)その他の方法 1 92 1..92 1.55 2..04 N 52 52 129 147 *)日本企業の場合(.)印は r交渉価格 (negotiatingprice)Jを含んでいる。

3

)

国際振替価格の価格交渉力 原材料(部品)や製品の国際振替を親会社と海外子会社の間で行う場合,そのため の国際振替価格の交渉と決定は,親会社と海外子会社の間でどのようになされている のであろうか,表-22により検討する。 まず最初に全体的な傾向としては,国際振替価格の決定権限は,いずれの場合(日 本企業の3)が3..01点で両者の交渉でとなっているのを除いて)も,親会社の方に意 思決定権限が留保されている場合が多いことである。ただ傾向としては,親会社から 海外子会社に原材料(部品)や製品を国際振替をする場合が,海外子会社から親会社 に国際振替をする場合よりも,価格交渉カが親会社に留保されているケースが多いこ

(27)

541 英国企業のグローパル展開と管理会計の国際移転に隠する一考察 -347-ー とがわかる。 具体的には,まず1)親会社から海外子会社に原材料(部品)を販売する場合の価 格交渉力は,英国企業で 2ド54点,日本企業で 2..43点と,英国企業と日本企業の聞で は,日本企業の親会社の価格交渉力が幾分高くなっている。ただ英国企業及び日本企 業のいずれの場合も,親会祇の方に価格交渉力がより多く留保されていることが窺え る。次に2)親会社が海外子会社に製品を販売する場合の価格交渉力は,英国企業で 2ι7点,日本企業で 2..64点と,この場合も親会社サイドに価格交渉カがより多く留保 されている。英国企業と日本企業の聞では,英国企業の方が親会社の価格交渉カが高 いようである。 表 -22 国際振替価格の価格交渉力 価格交渉カ 英国企業 日本企業 日英 平 均 値 標 準 偏 差 平 均 値 標 準 偏 差 差 1 )貴社が海外子会社に原材料(部品)を販売 2..54 1 21 2..43 ..87 -11 2 )費社が海外子会社に製品を販売する場合 2..47 119 2..64 .72 +.17 3 )海外子会社が寅社に原材料(部品)を販売 2..60 L20 3..01 “66 十.39 4 )海外子会社が貴社に製品を販売する場合 2..64 L20 2..95 .59 十 31 *)回答企業数:UK: 1): 64 2): 64 3): 64 4): 64,日本:1)・ 162,2) : 173, 3) : 137

4) : 152

*

*)表中の得点(数字)は 1社あたりの平均値であり,以下のように計算した。「親会社 が振替価格を決めるのに決定的な権限を持っている」を1点 r親会社と海外子会社 のネゴシエーション(交渉)により決定する」を3点,...,そして「海外子会社が国際振 替価格の決定に決定的な権限を持っている」を5点として,回答企業の合計得点を計算し, それを回答企業数で割って 1社あたりの平均値を算出したものが表中の数字である。 今度は海外子会社から親会社に原材料(部品)及び製品を販売する場合の振替価格 の決定の際の価格交渉力を検討する。 3)海外子会社が親会社に原材料(部品)を販 売する場合の価格交渉力は,英国企業では 2..60点,日本企業では 3..01点となってお り,日本企業の場合 r親企業と海外子会社とが交渉により決定する」という段階にき ており,すべてのケースの中で,最も海外子会社よりの数字になっている。最後に,

(28)

-348 香川!大学経済論叢 542 4)海外子会社が親会社に製品を販売する場合の価格交渉力は,英国企業で 2..64点, 日本企業で 2..95点と,英国企業の場合,親会社の価格交渉力は日本企業の場合に比べ て幾分高くなっている。 4 - 3 業績評価 ここでは,英国企業及び日本企業において海外子会社の業績評価(海外子会社その ものとその経営者のそれぞれについて)をどの程度の企業が行っているか,また行っ ている場合の業績評価の基準はどのようなものであるかを検討する。 1) 業績評価の有無 まず最初に,海外子会社は企業それ自体とその経営者の業績評価をそれぞれ行って いるかどうか,表 -23により検討する。 まず最初に,海外子会社それ自体の業績評価を行っている企業は,英国企業で

8

1. 08%になっているが,日本企業ではその比率が 75..13%と,日本企業の場合が 4..95% 低くなっている。 それに対して,海外子会社の経営者の業績評価は,英国企業では 6301%の企業が 行っており,日本企業では 60.21%と,この場合も英国企業が 280%日本企業の場合 よりも高くなっている。 海外子会社の業績評価について,英国企業と日本企業の場合との聞で,企業自体の 業績評価をしている割合が海外子会社の経営者の業績評価をしている企業の比率より も高いという傾向は両者とも同じであるということは興味深いことである。ただ業績 評価を行っている企業の比率は,海外子会社それ自体の場合も,またその経営者の場 合のいず、れの際も,英国企業が幾分高くなっていることも注目に値する。 表 -23 海外子会社の業績評価 業績評価 英国企業 日本企業 会社自体 経営者 会社自体 経営者 1)業績評価を行っている 8L08% 63..01% 75.13% 60.21% 2 )業績評価を行っていない 18..92 36..99 24..87 39..79 N 74 73 193 191

(29)

5

4

3

英国企業のク。ローパル展開と管理会計の国際移転に関する一考察 -349-ー 2) 業績評価の基準 それでは次に,海外子会社の業績評価を行っている英国企業及び日本企業は,業績 評価の基準としてどのような尺度を用いているか,表

-24

及び表一

2

5

により考察す る。 a)業績評価の基準(会社それ自体の場合) まず最初に,海外子会社(それ自体)の業績評価の基準について,表

-24

により考 察する。 英国企業の場合は海外子会社の業績評価の基準として,利益(予算と実績)の比較 が

3

0

3

点(1位)で,最も高いスコアになっている。理論的には最も合理的で,西欧 企業では広く利用されている投資利益率(ROI)も 2,,93点 (2位)と,利益(予算と実 績) の比較に近い数字になっている。上記の二つが英国企業の海外子会社の業績評価 の主要な基準になっている。 次に多いのは,予算(計画と実績)の比較 (L83: 3位),売上高(予算と実績)の 比較 (L22:4位), 売上高利益率(ROS) (1,,19: 5位),年度の利益額(L05:6位) の基準が1点台であり,英国企業(それ自体)の業績評価の基準として,比較的重要 視されている。 それに対して, 日本企業での海外子会社の業績評価基準の場合は,利益(予算と笑 績)の比較

(247

点 :

1

位)が最も高いのは,英国企業と同様であるが, ただそのス コアは英国企業の場合と比べて低くなっている。次にスコアが高いのは,売上高利益 率(ROS) (2,,35: 2位),年間の利益額 (1“93: 3位),売上高(予算と実績)の比較 (L 93: 3位)であり, 日本企業で多く用いられている指標が,海外子会社の業績評 価の場合にも広く用いられていることがわかる。 西欧企業では広く用いられている投資利益率(ROI)は,英国企業と比べると利用度 は低く (L69 : 5位)なっている。また市場占有率 (L27::6位) も1点台とスコア は低いが,英国企業の場合と比べると, 日本企業ではかなり利用されていることが窺 える。 以上英国企業と日本企業の海外子会社の業績評価基準を比較してきたが,傾向とし ては,英国企業及び日本企業のそれぞれの圏内の親会社や事業部の評価基準と同じ指

(30)

-35(ト 香川大学経済論叢 544 標を用いる傾向にあるようである。 表一24 業績評価の基準(会社ぞれ自体) 業綴評価基準 英国企業 日本企業 平均値 企業数 平均値 企業数 a)投資利益率

(

R

O

I

)

2..93(2) 59 1..69(5) 130

b

)

売上高利益率

(

R

O

S

)

1 19 (5) 59 2.35 (2) 130 c)売上高(予算と実績)の比較 1..22 (4) 59 1..93 (3) 130 d)利益(予算と実績)の比較 3 03(1) 59 2ι7(1) 130 e)予算(計画と実績)の比較 L83(3) 59 f)年間の利益額 105(6) 59 193(3) 130 g)操業開始以来の累積利益額 24 UO) 59 64(8) 130 h)市場占有率 44(7) 59 1..27 (6) 130 i)製品の品質 24U曲 59 38 (9) 130 j)親会社や他の海外子会社との協力関係 ..41 (8) 59 ..32 U曲 130 k)進出先国との良好な関係 19 U3) 59 05 U5) 130 1 )従業員の訓練 12 (14) 59 ..09 U2) 130 m)従業員の退職率 ..08日 59 “05 U4) 130 n)生産性の改善 36(9) 59 72(7) 130 0)良い企業市民 07 U3) 130 P)その他 24U曲 59 .15

u

n

130 *)(ー)は,調査票の中に,そのような質問項目がないことを示す。 本*)表中の数字は,以下のように計算されている。 5点→最も重要な項目, 4点→2位, 3 点→3位, 2点→4位,そして5番目に重要な項目→l点として,回答企業の各項目ごとの 合計点を集計して,それを回答企業総数で割って 1社あたりの平均値を算出した。 表中の括弧の中の数字は,英国企業,日本企業それぞれの業績評価基準の重要性の順位を 示すものである。 3) 業績評価の基準(経営者の場合) 次に,英国企業及び日本企業の海外子会社、の経営者の業績評価を,表-25により考 察する。 まず英国企業の海外子会社の業績評価の指標は,利益(予算と実績)の比較(290: 1位),投資利益率(231: 2位)のこつの指擦が飛び抜けて高くなっている。これは, 海外子会社(それ自体)の場合と同様である。次に重要な業績評価の指標は,予算(計

(31)

545 英国企業のグローパJレ展開と管理会計の国際移転に関する一考察 -351ー 画と実績)の比較 (183.. 3位),売上高(予算と実績)の比較 (143.. 4位),売上 高利益率(ROS) (1 31 •• 5位)であり 1点台のスコアで,比較的利用されている指 標であるといえる。 表一25 業績評価の基準(経営者) 業績評価基準 英国企業 日本企業 平均値 企業数 平均値 企業数 a)投資利益率 (ROI) 2 31(2 ) 42 L08( 5) 96 b)売上高利益率 (ROS) 1 31 (5) 42 1 91(2) 96 c)売上高(予算と実績)の比較 1 43( 4) 42 1 88( 3) 96 d)利益(予算と実績)の比較 2 90 ( 1) 42 2 31(1) 96 e)予算(計画と実績)の比較 1 83( 3) 42 f)年間利益額 83( 6) 42 L71(4) 96 g)操業開始以来の累積利益 24(12) 42 43( 9) 96 h)市場占有率 38(10) 42 1 08( 5) 96 i)製品の品質 62( 8) 42 43( 9) 96 j)親会社及び他の海外子会社との協力関係 69 ( 7 ) 42 98( 7) 96 k)進出先悶との友好関係 24(12) 42 06(14) 96 1 )従業員の訓練 21(14) 42 36(11) 96 m)従業員の退職率 12(15) 42 20(13) 96 n)生産性の向上 55 (9) 42 86( 8) 96 0)良き企業市民 29(1l) 42 06(14) 96 p)その他 21 (12) 96 *) (-)は,調査票の中に,そのような質問項目がないことを示す。

*

*)表中の数字は,以下のように計算されている。 5点〉最も重要な項目, 4点→2位, 3 点参3位, 2点→ 4位,そして 5番目に重要な項目→ l点として,回答企業の各項目ごとの 合計点を集計して,それを回答企業数で割つ‘て社あたりの平均値を算出した。 表中の括弧の中の数字は,英国企業,日本企業それぞれの業綴評価基準の重要性の順位を 示すものである。 それに対して,日本企業の海外子会社の経営者の業績評価の指標は,利益(予算と 実績)の比較 (231: 1位)が最も高く,売上高利益率 (L91: 2位),売上高(予算 と実績)の比較

(

1

山88“

3

位)及び年間利益額

(

17

1

:

4

位)という指標が続いてい る。また市場占有率は(108.. 5位)になっている。傾向としては,日本企業それ自

参照

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