香川畢立薬科大学学術報告 42
栄養繁殖によるキメラ甘藷の後代について
桑 田 晃,山 本 喜 良
Vegetativelypropagated progenies
Of chimericalsweet potatoes
BY Hikaru KUWADAand KiyoshiYAMAMOTO
(L左boratory ofPlant Breeding)
(Received Mayl,1953)
l 穂
甘餞のキメラに関しては既にその一部を報貸した(桑田I948,1949).その後,さきに(桑田1948)
報壊した沖縄百号経のキメラに就いて,更に詳細な調査を2ケ年に亘って行い,典餐乗殖を童とする
甘藷について,育種上層意すべき若干の新しい知見を得た..玄に実験結果の概要を戟貸する.
本稿を草するに当り終始御懇篤なる静狩導を賜、つた京都大学教授香川冬未博士並びに周助教授赤藤
克己将士に対し深甚ゐ謝意を表サる次第である。
Ⅱ 葵験方法及び用いた記号
栽培準及び実験雰準を手頃報(桑田1949)の如くである・用いた記号並びに藷皮の色に関する呼び芳 ーも第1表に示す如く・,麿報(桑田1949)に周いキもの≒同錬であ昂r第1表 記 号 及 説 明
分1記 号 特 丑■実験結二果 1947年に発現した沖縄首号俸のキー1,キー2及びキー3の3偶のキメラ個体の後代を栄養繁殖に ょり1950年迄継続栽培し,キメラ発現の横位を調査した結果は第2表,第3表及び第4表に示す如く である、 (A) 沖縄首号種キー1(第2表)1947年のW及びwr/wは何れも1948年にはWとRとWRを生じ,その内R及びWRのr卑土1949年にを手
金部Rとなり,更にこのRのr(3:.1950年にも全部Rとなった。1948年のW及びWRのWほ1949年にはWOLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
第5巻第1争て1953)
欝2衰 キ メ ラ 甘 帝 の 後 代
43
t)
1.1948及び1948 に於て,・例えば W(7)十∵Wとあ るはW7個体中1 備体の藷を次期 の硬藷とした夢 を指す.. W(8)−W、:こ:
とあるはWβ個 体中1個体の魔 の1傭及び他の 個体の藷の.2.個 を次期に唾藷と した事を指す三 以下同様 19471948 牡
1949 1950キメラ僧体 苦学及び蕗 藷番号及び 韓∴色 凹瑚体の青色 翌年 出現個体の藷色 翌年度 出現個体の諸 卑び個体畢 鱒舘の草 認 ザ.洞件数 穏琴申色 色及び僻体数
Wごこ ☆3∴」 ∴r− r Ⅵ′(2) R(9) .′1好 r 1打W(ア)ー
綴ほ.芸
R(5) ニ」呼、■、・・・ W(7) 滑 W W Ⅵ7(10) 予÷
簸〉:、て・8).− R(.5) r ナ R(1b) r → rR ぐち) ナW(ユ0) rl■て汁サR(9)∴∴.. w4こノ∴ 蛇′「 ニ
二 、■W=・
に ︶︶の 問ばね毎色 のゝ答 R自 川∵ とて ヰ あ 年於 W と 2 畦藷よりⅥ7が9 個体,WRが5僧 体現れた事を指 す. 以下同様 3.1947年の帝替 号及び預皮の色 の偶に於てW,r 及びwr・の記・琴・ の次の数字ほ1 個体中の讃の番 ・琴を指す.第3未 年メ ラ甘藷二の後\代
又はRのみ, ⅥrとR,Wと WR,WとR とWRを生じ, ユ949年のW及 びWRのWは 1950年にはW 叉ほRのみ、, WとWR,一R とWR,Wと Rと じた∴而して 1949年のR叉 ほWRの工・は 1950毎には金 部Rとなった. :爽に1947年の 1947 1.948 ∵㌧ト嘉季長琴纂 爾番号及び 望野蒜管象 翌年皮 出現個体の無色 翌年皮 出現個体の緒 帝 色 箪詔の色 及び個体数 藷の色 色寂び個体数
☆一 Ⅵr(ユ0) wl、、 Ⅵr(4) 沖 Ⅴ(4)・ R(4) 鱒i:…テ,:;;書
R、(5)‘ 革 草 キ ‡’ニ晶ほ
2: WRW2
rl・、
〔註〕 第2表に同じOLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
44 香川県立羞料大学学術報告 r及びwr/rほ1948年にほrlほR,r3ほWとR,Wr/ごほWとRとWRを生じたが,以降はすべてRとな 、つた. (B) 沖縄首骨種キー2(第3表)
1947年のYは1948年には全部Wを生じ,このWのWは1949年にはWとWRを生じた.更に1.949年の
W及びWRのWは1950年KlほW‘,R,WR,WとRとWRを生じたが.,1949年の噺Rのrほ1.950年には仝部 Rとなった.叉1947年のrは1948年以降全部Rとな?た。(C)沖縄百号穣キr3(第4表)
(A)及び (B) 亭仝く相似串 現象が見らか た/そゃ詳細 な革述は省略 する.第4衣 キ メ ラ甘藷わ後代
師 1947 ユノ94.8㌧ 1 195か蒜蒜讐茜雲塊星 色 出魂痛棒の帝色 及び個体黎 翌∴年度 種蘭の色 安痍廟簡 出現個体の裔 色及び個体数
田 沖 ∴R∴(∼11)十 軸Wl■・ ■柑濁攣
官 R(1) 号 キ I W(5) W‖キ
W・− W(11) W■(8) 3 w3 -- Ⅵr(9) wRi冨去…鼓妄) ・ w W(6)∴ミ W−・ 田 W(9) r R(、、9) W− r W(10) R(9) i諾R‡…i
W)
Wrlr サ R(5) r − R(1き)■・
セ(10)■ウ 【誅〕 第2表に同じ皿 考
蕪 以上実敬わ年数,取り扱った系統数 及び個体数は少いが,1950年迄の実験 の.範囲内に於て,藷皮の色の変り方及 び固定慶を数的に検討すると第5表 (その1),(をの2)の如くである. 免ず葉巻的世代の替り冒をT・単位と.し 考えると第5表(その1)の如ぐで, 第五表(その1) 譜皮の変り方及び固定虔 例 数 藷皮の変 り 力 キー11キー2 一 キーー31合 計 赤より白(赤串 を含む)を生ず る場合ほ争−1, 2,3を通じて 僅かに2例,即 ちキー1の1947 年産のr3より1 948年に.5偲体の第5表(その2) 藷皮の変り方及び固定庶
〔■註〕分母は全数,分子は個数OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
第5巻第1号(1953) 45
W,同じくキrlの1947年のWr/rより1948年に2個体のW及び1個体のWRを生じたのみである.白
より赤(赤白を含む)を生ずる場合むよキー吏リ213を獲じて亭1例がある。叉白より白を生ずる場合は 24例であり,赤より赤を生ずる場合は47例である.而して赤を出発点とした49例申赤のみを生ずる場 合は47例,白を出発点とした55例中日?みを生ずる場合は24例と・なっている‖伺叉巣養的世代の替り 削こぶける相付け薗の本数を単位と.して考える、と魔5表(その2)の如ぐ℡,赤藷からの417本の竃よ り赤譜を生ずる場合ほ409本の多きに対し,白譜或は赤白藷を生ずる場合は僅かに・8本に・過ぎない.叉 白預からの454本の■苗より白藷を生ずる場令と赤藷或は赤白諸を生ずる場合は天・々284本と170本であ る..以上の寄実より明かに白色と赤色の固定度の聞に著しい差異を示し,後者の方が顕著に高い‖而 して赤色と白色以外の藷皮の色が出頭しない点よりすれば,赤白両形質に関与して,恐らく突然変異 を起し易い不安定な・・一・因子についての差異があるのではないかと想像され,且つ因子の突然変異の頻 度は方向により大いに異るがゝ∴復帰約めものせあ、為∴か一ょる因子み変化の原因及び機構の詳細につい てほ更に研究を要する“ 1947年に.沖縄官骨種粧於て発見ぎれた譜皮の動こ腐するキメラの栄養紫殖による後代を調査した 赤より赤を生ずる割合ほ自よ’り甘を垂ザ右割合より、大で,胡かに赤色の固定度が高い..赤,白雨形質 に周与して,突然変異を起し易い不東定な一因子が想像され,この因子の突然変異の頻度は方向によ り大いに異るが復帰的のものである。 Ⅵ (1)桑田典,1948:甘藷の塊根及び茎葉笹現れるキノメラに・ついて−,日本作物学傘単軌17巻 て2)−一一,1949:甘藷のヰメラに屈する二三の漸知見、∵計本作物学令帯革,I9巻 R占su111占Studiesweremadeonthevegetativelypギ?pagatedprogepies of chirneras of sweet potatoe$
inregardtothesurfacecolourof storage‡r6ots)i正、〝OKINAWAこNo”160〝・
The frequency of the appe亭ranCe Of thelightred、fromthe saTr!eCOlourwasmuchlargerthan
thatof thelightyellowfromthe甲甲?・On}the′Otherhand・thefre9uenCyOfthechange fromlight
ye110W tOlight redwasmuchlargerthanthatfr・Omlight redtolight yellow−Sothat the degreeof
COnStanCyOf thelight redismuchlar’gerCOmpa亨edwiththatof theyellow・ThereInaybe concer・
nedagenewhichismutableandr?VerSibleinitschange,andthemutatingfrequencyof thegene
is二Very muCh different as to the direction of the change