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菊の茎頂培養における放射線照射の影響 II 圃場での生育-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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(1)

菊の茎頂培養における放射線照射の影響

Ⅰ 圃場での生育

馬渕敏夫,※ 桑田晃

Ⅰ 緒 論 放射線育種の分野では,変異体の作出と分離の新しい手法が組織培養を導入することによって確立された。すなわち, NITSCHら(1969)(2)は,タバコで,絹培養から生じた幼常に,かラス培養びんを通じてγ線を照射して変異体を育成し た。また,重松ら(1969)(3)は,セクタ・一状の変異花の花色部分から組職培養によって突然変異体を分離育成した。 本実験では,菊の茎頂を培養し,植付後まもなくγ線を照射して,その影響ならびに生育状況をみた。第Ⅰ報では, 生存率は線量の増加とともに減少したこと,20KR照射区てカルス化がおこりやすい傾向が恵められたこと,セクタ岬

状の葉緑素突然変異体,全線の奇形菓をもった変異体が出現したことを報告した。そこで,本報では,これらの変異体

および順調に発育した個体の罫場での生育状態と生育中に出現した変異体について報告する。 本実験を遂行するにあた「),御指導御援助をいただいた遺伝育種学研究室山本書良助教授ならびに故狩野邦雄教授を はじめとする花井研究室諸氏に深く感謝する。 なお,本論文は日本育種学会43固講演会において発表した。 Ⅱ 材料および方法 7月照射に供試した菊品種『金天竜』は,植付後6ケ月日の1972年1月26日より10月3日までの間に,また10月照射 に供試した菊品種『天竜の朝』は,植付後6ケ月日の1972年4月11日よF)1973年2月14Eほでの間に,そ・れぞれ逐次, 試験管からポリ鉢へ鉢上げを行った。なお,試験管から植物体をとりだすとき基部から根が切れた個体には,その基部 に発根剤ルートンを塗抹した。鉢上げ後は,ビニール袋,バソト,播種箱を利用して蒸散作用を抑制しながら徐々に普 通の栽培方法に馴化させ,順次圃場へ移植した。囲場での管理は,自然放任栽培拷に従った。生育調査は,両品種とも に,1972年6月10日までに圃場に移棺した個体を対象に,1972年12月13日に,主幹の主枝の生育状態を調査した。その 後,株を堀り上げずに饗場で越冬させた。1973年の調査は1972年の調査方法に従っだ。 Ⅲ 結果および考察 TablelのNo1およびNo2は,それぞれ1972年12月13EJおよび1973年12月10日における圃場での生育状態を示す。『金 ′∫■ablel小Growth ofplants jr∫adiatedb:y r−rayS Nol・1(On Dec..13,11972)

Treatment Noof Noof Leaf Flowe王 timd(2)

Theflowering

No.0†

(KR) plantlng

Cultiv8r

.chlcrOphyll malfof

5 3 14 1 0 1047 0 0(0)(5) 5 40 114√2 0 Kin−tenryu 3 10 1181 0 10 5 3 0 (July) 20 3 19 0

+ mat10n

20 5 4 0 0 1(4) Contr0Ⅰ 13 U 0 0 0 0(0) 5 3 0 10 0 0 5 0く0) Tenr叩− 2

ロ 0

ロ 0 0 0 0(0) nO−8Sa 0 731 4 O 1 0 6 3(2) 0 445 0 0 0 0(0) 0 735 0 2 0(0)

5 5

4 0 1020 0 ロ 0 0(0) 欺鰍:州脇剛農業改1ミ汗/史所

(2)

香川大学農学部学術報告

No.2(On上)ecnlq1973) 79

Treatment

Noof Noor Plant Stem l

Leaf Flower

CuItぬr (KR)

N0Of No.of No. of T■heflowering No. of

mutants m乱tions

elght (.p竺? f8SCト トChIo−Ophy11 malfor_ time(21

mations 5 3 14 6 1b78 5 0 0 0 0 0 0(0)(4) D 40 101 2 0 0 0 2 0(0) Kin−tenryu 3 9 1057 0 0 0 0 5 0 0(0) (July) 10 3 1220 3 0 0 0 0 0 0 0(0) 20 17 ZO 5 0 ContIOl 13 13 128.0 0 0 0 0 0 0(0)

TenJyu−

5

Notes(1)Plantlets which were able to transplantin the′field beforeJun10,1972

(2)+and L Show earlier andlater than the controIs zespectR,ely

(3)One of threeis bush−1ike stem (4)Non−flowering p18nt

(5)()shows the numbeIOf flower correhtive to the fasciation of stem (6)Plantswhichwere abl占togrowin the fieldonDec,1972 (7)1nvestigation on May 4,1973 天竜』およぴ『天竜の朝』ともに,6月10日までに圃場へ移相しえ.た個体数は,線量が多くなるに従って少なくなる傾 向がみられた。また,『金天竜』では,圃場へ移相した後も生育途中で枯死する個体が各試験区でみられた。両品種と もに草丈の伸長は,放射線照射によって抑制されている傾向がみられた。Tablel(No2)に示しキごとく十両品種と もに越冬した個体数は少なく,特に20KR区では越年した個体はみられなかった。 圃場で見出された変異体はFig.1∼10に示す。このうち,葉緑素突然変異体(Fig.1および2)は,いづれもキメラ

Fig.ト4h Mutants occurred byirradiatiQn Fig.ト2h Chlorophyllmutant Fig.3.Bush−1ike mutant

(3)

Fig… 5−8lPlantgrowthin the field Fig..5−7.Mutant Fig,.8Normal

Figl9−10Fasciatedinnoresence mutation

Fig。9.Cultiva(:Kin−tenryu Fig‖10 Cultivar:Tenryu−nO−aSa

(4)

香川大学農学部学術報告 81 であったが,『天竜の朝』において10KR3日目区で1個体,同じく10KR5日目区で2個体出現した。草性がブシュ 状の突然変異体(Fig。3)が,『金天竜』において5KR3日目区で1個体出現した。また,『金天竜』において5K R5日目区で一見枯死しそうな感じの奇形葉をもった変兵体(Fig.4)が出現した。『金天凱において20KR5日目 区で生じた全線の奇形菓をもった個体の圃場での生育状態をFig.5,6および7に示した。これらの変異体は,徐々に 回復し,Fig..7に示したように,対照区の菊(Fig.8)の菓とよく類似した菓を形成したが,菅形成に到らなかった。 また,帯化した個体数と線量との相関関係はみられなかったが,帯化と花形が関連している個体がみられた(Fig・9 および10)( 開花期については,放射線を照射した個体は対照区の個体に比し,栽培1年目では,遅れる傾向がみられたが,栽増 2年目では,ほぼ同じ個体が多かった。BowENら(1961)(1)は,放射線を照射した菊は対照区の菊よりも開花が遅れ る傾向がみられ,極く少数の個体は照射当代では菅を形成しなかったことを報告している。本実験では,BowENらの 観察と同じ傾向がみられ,未着菅の個体が『天竜の朝』において5KR5日目区で2個体出現した。ノしかし,開花期の 早い個体が,『金天竜』において5KR3日目区で2個体出現した。なお,1972年6月10日以後に圃場へ移植した個体 であるが,開花期の早い個体が,『天竜の朝』において5KR5日昌区で1個体,同じ〈10KR5日目区で1個体みい だされている。これらの『天竜の朝.』でみいだされた変異体は,寒菊である『天竜の朝』の変異体であるが,9月上旬 に開花した。 本実験に供試した『金天竜』および打天竜の朝』においては,花色の変異はみいだされなかった。なお,『天竜の軌 において,開花期後半からだんだん赤紫色を帯びる個体がみられたが,これらは気温生理的条件の変化等によるもの と考えられる。 以上,菊の茎頂培養への放射線照射の影響は,生育全般にわたってみられ,変異を誘起する方法として有効であると いえよう。今後,照射方法,培地,供試品種,材料の生理自勺条件,供試する部位などの多くの問題点の解決がまたれる と同時に,菊以外の材料についてもその適用申ヾ考えられる。 Ⅳ 摘 要 (1)菊の茎頂培養後にγ線を照射して得られた幼植物を圃場に植付け,放射線嘲寸の影響をみ,変異体の作出につとめ た。 (2)供試品種は『金天竜』および『天竜の朝』で,1972年6月10日までに圃場へ移植できた個体数は,両品種ともに線 量の増加とともに減少の傾向がみられた。なお,『金天竜』では,圃場でも枯死する個体がみられた。 (3)両品種ともに,圃場で越冬できた個体は少なく,特に20KR区では越年した個体はみられなかった。 (4)両品種ともに,草丈の伸長は放射線照射によって抑制される傾向がみられた。 (5)閲場での生育中に,葉緑素突然変異体が『天竜の朝』における10KR3日目区で1個体,同じく5日目区で2個体 出現したが,いづれもキメデであった。草性がブシュ状のものが『金天竜』において5KR3日冒区で1個体出現し た。また『金天竜』において20KR5日目区で全線の奇形兼をもった個体が出現したが,この個体は,葉形が徐々に 回復し,対照区七類似の菓を形成した。 (6)対照区よりも開花期が早い個体が『金天竜』において5KR5、日員区で2個体出現した。また,『天竜の軌にお いて5KR3日目区で1個体,同じl〈10KR5日目区で1個体出現した。なお,花色の変異はみいだされなかった。 (7)茎頂培養後まもなく放射線照射することにまって多様な変異を誘起することが可能である。 Ⅴ 文 (1)BowEN,H.J.M“,C’AWSE,PAい DICK, M.J。:The、induction of sportsin chrysan− themum by gamma radiation,Radiation Bolany, 1“297−303(1962)

(2)NITSCH,J,.P,NrTSCH,C‖,et PEREAU− LEROY,P。:Obtention de mut息ntS a partir

de pollen,CR月cαd‖ 5cPαアよざ,5eγよe 上) 献 269,650(1969) (3)重松康司,松原尚生,橋本貞夫:ポットマムのγ一 線照射による育種一変具した花床部分からの変異体 の分離育成について,昭和44年度東京都立アイソト ープ総合研究所年報88−89(1969)。

(5)

RADIATION EFFECTS ON SHOOT TIP CULTURE OF CHRYSANTHEMUM

II Plant Growth in the Field

Toshio MABUCHエand H駄aru KuwADA

Summary

(1)Young chrysanthemums were planted after beingirrIadiated at the time of shoot

tip culture andtheinfluence ofirradiation was evaluated frIOm the point of view of

establishment of mutants.

(2)Two cultivar・S,Kin−tenryu and Tenryu−nONaSa Were uSedin this experiment.

The percentage of cultivars healthy enoughto transplant onJune lO.1972 showed a

decreaseinproportion to theincrease of dosage.Some plants of cultivar Kin−tenryu died

afterbeing transplanted.

(3)Fewplants ofeitherICultivar could overwinter,andin particular no plant

irradiated by gamma−r・ayS Of 20KR.

(4)Plant height showed a tendency ofinhibitioninboth cultivarso

(5)Three chlorophy11mutants showing chimera appeared.One of them wasinthe

cultivar Tenryu−nO−aSairradiated bylOKR at 3days after planting;tWO Of them were

inthe cuitivar Tenryu−nO−aSairradiated bylOKR at 5days after planting.One mutant

exhibiting malforImation of entireleaves appearedin the cultivar Kin−tenryuirradiated by

20 KR at 5 days after・planti・ng.This mutant gradually recovered a shape resembling

normalleaves.

(6)Two plants which bloomed earlier than the controIsappear・edinthe cultivarKin−

tenr・yuirTadiated by 5KR at 5days after planting.Simi1arly,tWO mutantS With an

earlier flowering tin1e appearIedin the cultivar Tenryu−nO−aSairradiated by 5KR at 5

days after planting andlOKR at 5days after planting・There was no observable color

mutatlOn。

(7)The results of this experiment show the possibility ofinducingmutationinchrys−

anthemums byirradiating them with gamma−rayS SOOn a壬ter・the beginning of shoot tip

culture.

参照

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