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コミュニケーションの立場からみた絶対値記号の必要性

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Academic year: 2021

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卒業論文要約【鳥取大学数学教育研究,第 8 号,2006】

コミュニケーション

コミュニケーション

コミュニケーション

コミュニケーションの

の立場

立場

立場

立場からみた

からみた絶対値記号

からみた

からみた

絶対値記号

絶対値記号

絶対値記号の

の必要性

必要性

必要性

必要性

川口 卓己 指導教員:溝口 達也 Ⅰ Ⅰ Ⅰ Ⅰ...研究.研究研究の研究の目的のの目的目的と目的ととと方法方法方法方法 1.1. 1.1.1.1. 1.1.研究研究研究研究ののの動機の動機動機動機 まず私は,日常行われているコミュニケーシ ョンという言葉に興味を持った.数学の学習に おいても常にコミュニケーションは行われて おり,このコミュニケーションを意識すること で,よりよい授業作りを可能にすることはでき ないのかと考えた. そこで,まず数学におけるコミュニケーショ ン と は 何 で あ る の か に つ い て , NCTM Standard「コミュニケーションとしての数学 (Mathematics As Communication)」を参考 にした.そのなかで私は,以下のような記述に 注目した. 以上 3 つの点で,数学的コミュニケーション における数学的記号についての記述から,数学 的コミュニケーションにおける,数学的記号と いう側面に注目し,数学的記号の役割と必要性 について考察していく. ここで,数学教育において,様々な概念につ いてなぜそうなるのかといったような概念の追 求を行うことは,数学をより理解する上で重要 であると考える.そしてそれは数学的記号につ いても同様ではないのかと考え,数学的記号に ついての理解は、数学をより理解することに関 係するのではと考える. そこで,数学を学習するにあたって多くの場 面で登場する数学的記号.そして私たちは無意 識のうちにその記号を受け入れ,使用している. しかしながらそれでは数学的記号を理解したと は考えることができないのではないのか.また それ以前に私たちには数学的記号を理解すると いう考えが存在しないのではと考える.つまり, 記号の表現方法のみを理解し上で,なぜこの数 学的記号が使われるのかといった考察がなされ ていないということである.現に数学的記号を 学習する場面において表現の方法は教師を通じ て知るのみで,利用することに重きをおいてい るように感じられる. 以上のことから,数学的記号を用いることは 決定的な必要性が存在すると考える.そこで, 数学的記号の必要性について考察していく. 1.2. 1.2. 1.2. 1.2.研究研究研究の研究ののの目的目的目的目的 本研究の目的は,コミュニケーションの視点 から注目した数学的記号について,その数学的 記号の必要性とはなんであるかを明確にするこ とで,生徒にとっての数学的記号の必要性を見 出すことである. そこで数学的記号の具体的な事例として,絶 対値をとりあげて考えていくこととする.絶対 値については中学校 1 年における「正負の数」 において学習するのであるが,教科書での扱い も小さく,学習指導要領においても用語として 「絶対値」と一言記しているのみであるにもか かわらず,中学校数学においてだけでなく,多 くの場面で絶対値が登場するというということ 記号表現の必要性は,概念の探求の中で起 こる.数学的概念や記号について討論する 過程において,生徒はそれらのつながりに 気がつくようになる. 生徒の数学的な概念と,数学的概念を記述 し表現することための言語や記号を発達さ せることは,記号の必要性を作り出し,記 号に意味を与えるような一連の具体的場面 注意深く計画し,組織することによって促 される. 数学的概念が表現した記号としっかり結び ついていることが本質的である.

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から,絶対値の意味とは何であるのかをはっき り理解しているのかという疑問のためである. そこで絶対値の定義が,中学校第 1 学年「正負 の数」における「数直線状における 0 からある 数までの距離」といったもので,生徒は絶対値 を理解したといえるのであろうか.また,絶対 値の記号化する必要性とはなんであるのかを検 討していきたい. 課題 1 絶対値の概念およびその記号化のプロ セスの考察 課題 2 学習場面における絶対値の記号化の必 要性についての考察 1.3. 1.3.1.3. 1.3.研究研究研究研究ののの方法の方法方法方法 先に設定した課題を次のように解決していく. 課題 1 については,絶対値そのものの概念の 追求と絶対値がどのように記号化されてきたの かを,歴史的背景から考察することで絶対値を 記号化することの意義と必要性,絶対値記号の 役割について見出す. 課題 2 については,課題 1 で見出した絶対値 の記号化の意義と必要性,絶対値記号の役割を 教育の営みとして,学習場面で絶対値がどのよ うな状況で用いるのか,生徒にとっての記号化 とは何であるかを考察することで学習場面に おける絶対値の記号化の意義と必要性,絶対値 記号の役割を見出す. 以上の課題を解決することで,数学的記号の 必要性となんであるかを明確にし,生徒にとっ ての数学的記号の必要性を見出す. Ⅱ Ⅱ Ⅱ Ⅱ...本論文.本論文本論文の本論文のの構成の構成構成構成 第 1 章 研究の目的と方法 1-1.研究の動機 1-2.研究の目的と方法 第 2 章 絶対値の概念と記号化 2-1.歴史的背景における絶対値の概念と記号 化 2-2.学習場面における絶対値の概念と記号化 第 3 章 絶対値の概念と記号化の必要性 3-1.絶対値の概念と記号化の必要性 3-2.学習場面における生徒の絶対値の概念と 記号化の必要性 第 4 章 研究のまとめ 4-1.まとめ 4-2.今後の課題 (1 ページ 35 字×35 行,30 ページ) Ⅲ ⅢⅢ Ⅲ...研究.研究研究研究ののの概要の概要概要 概要 3.1 3.13.1 3.1...歴史的背景.歴史的背景歴史的背景歴史的背景からのからの絶対値からのからの絶対値絶対値絶対値のののの概念概念概念概念 今日における絶対値の定義は「数直線状での, 0 からある数までの距離」である.このことか ら私は数について歴史的背景をみることで,絶 対値の概念がなぜ必要となったのかについて 考察する. まず,絶対値の概念が存在しないとされるユ ークリッド原論をもとに,数についての認識を みる.ユークリッド原論において数は,「単位の あつまったもの」と定義されている.また,ユ ークリッド原論において扱われる数や量に関し て は ,「 正 の 数 と す る 」 と い う 記 述 , 2 2 2

2

)

(

a

+

b

=

a

+

ab

+

b

を図形上の問題と して見ていることから,数を正の整数として扱 っていることがわかる. これはアリストテレス的数の見方がなされて いるためである.これは『数も,その存在の仕 方として,「5 個のあめ」や「10 台のバス」の ようにあるいは「前から 7 番目の人」といった ように,数が常に何らかの大きさを伴った対象 と結びついた仕方で存在する(溝口 1995)』と いう考えである. ここで一言「大きさ」としているが,対象と なりうる「大きさ」は長さや面積など様々な「大 きさ」が存在する.そこでその様々な「大きさ」 について考察することを考える.ここでそれぞ れの「大きさ」は基準となるものが存在し,そ の基準を用いてそれぞれの「大きさ」について 考察することは可能である.しかし性質の異な るもの同士ではその基準となるものが異なるた め考察することができないのではと考える. そこで,現代の定義である「原点からの距離」 という絶対値の「(正の)大きさ」をもうけるこ とで,様々な数を比較・考察することができる. つまり絶対値は様々な数に対する新たな「大き さ」として必要とされたのではと考える. 以上のことから,歴史的背景から見出した絶 対値の概念の必要性は以下のように考える. ① 数における絶対値という新たな「大きさ」 3.2 3.2 3.2 3.2....歴史的背景歴史的背景歴史的背景からの歴史的背景からの絶対値からのからの絶対値絶対値の絶対値のの記号化の記号化記号化 記号化 絶対値の記号をはじめて用いたのは, Weierstrass の「Mathematische Werke Vol.Ⅰ (Berlin,1894)」とされている.

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して極限の概念,ベクトルや複素平面において 用いられている.その一例として近時計算につ いて取り上げる. 近似計算において,近似値 a の良さは真値 x からの偏差,つまり絶対誤差

ε

=

a −

x

によっ て考えられる.そして各々の近似値と絶対誤差 の精度に関して考察する際,相対誤差

ε

/

x

に より表す.このとき真値 x,絶対誤差

ε

ともに その大きさを考察の対象としているために,絶 対値の概念を用い表している. このように絶対値という概念を用いる際、そ の「大きさ」に対して という記号で表すこと により,簡潔かつ明瞭な考察を可能にしたと考 えることができる. 次にベクトルの概念の場合において,ベクト ルの「大きさ」を絶対値を用いて記号化するこ とにより,代数計算を可能にすると考える.こ れは内積における考察や,円を表すこと.さら には,複素平面においても同様な考察ができる. 歴史的背景から見出した絶対値の記号化の必 要性は以下のようにまとめることができる. ② 考察を簡潔かつ明瞭にする ③ 代数計算を可能にする 3.3. 3.3.3.3. 3.3.絶対値絶対値絶対値の絶対値ののの概念概念概念概念とと記号化とと記号化記号化記号化のののの必要性必要性必要性必要性 課題 2「学習場面における絶対値の記号化の 必要性についての考察」に対しては,歴史的背 景から見出した絶対値の概念とその記号化の必 要性を,今度は学習場面において考察する.学 習場面において絶対値の概念とその記号化はど のように利用され,そこに生徒はどのような必 要性を感じているのか. また,歴史的背景から見出した絶対値の概念 とその記号化の必要性は,学習場面における生 徒が感じる必要性に当てはめることができるの かについても考察していく. では,前章であげた 3 つの絶対値の概念とそ の記号化の必要性から,生徒が感じるであろう 必要性について考察していく. ① 「数における絶対値という新たな『大きさ』」 について 絶対値は中学校第 1 学年において導入されて いることをもとに考える. この段階において絶対値の概念を導入するこ とで,正負の数における乗法除法における演算 を説明しているのみである.よって生徒が絶対 値が本当に必要であると感じているとは考えが たい. しかし中学校,高等学校と数学を学習してい くうえでこの絶対値という「大きさ」の概念と 絶対値の「正の数」を表すということが必要と 感じるのではと考える. ②「考察を簡潔かつ明瞭にする」について 絶対値の記号は,極限の概念やベクトル,複 素平面,または点と直線の距離など様々な場面 で用いられている. そこで生徒は繰り返し用いられる概念につい て記号化を行うことにより,その概念を簡潔に 表せるということを理解する.さらにはその記 号を用いた考察に関しても簡潔に表すことを可 能にすることを理解する. 以上の点から生徒は記号化を,その概念を多 く扱う場面を通すことで,記号化の必要性を感 じると考える. ここで,中学校においてなぜ絶対値の記号化 を行わないのかについては,絶対値を用いた複 雑な考察を行う機会がないことが要因であると いうことが上の考察からわかる. ③「代数計算を可能にする」について この点については,歴史的背景と同様ベクト ルや複素平面の概念において考えることができ る. 新しく登場したベクトルいう概念を,絶対値 という概念によりその「大きさ」を記号化し表 すことにより,ベクトルの性質について考察す ることができる. さらには,ベクトルの「大きさ」を記号化す ることにより,内積や円においての代数計算を 可能にする.このことから生徒は絶対値の概念 とその記号化の必要性を感じるのではと考える. Ⅳ ⅣⅣ Ⅳ...研究.研究研究研究ののの結果の結果結果 結果 4.1.4.1.4.1.研究4.1.研究研究研究のまとめのまとめのまとめ のまとめ 本研究の目的は,コミュニケーションの視点から 注目した数学的記号について,その数学的記号 の必要性とはなんであるかを明確にすることで, 生徒にとっての数学的記号の必要性を見出すこ とを目標に研究を進めてきた. 絶対値の必要性としては以下の3つ点が考え ることができる.

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① 数における絶対値という新たな「大きさ」 ② 考察を簡潔かつ明瞭にする ③ 代数計算を可能にする そして学習場面における生徒が感じる絶対値 の必要性としては, ①’ 様々な数に対して「大きさ」を与えることが できる ②’ 記号化することにより考察を簡潔にする ③’ ①’で与えた「大きさ」について代数計算を 可能にする の 3 つの点を上げることができる. そしてこの 3 つの点は,生徒は絶対値の概念 を利用していく場面を多く設定することで,絶 対値を用いることのよさを感じるのだというこ とを見出すことができた. 4.2. 4.2.4.2. 4.2.今後今後今後今後ののの課題の課題課題課題 本研究において,数学的コミュニケーション の中における数学的記号,その中でも絶対値と いう概念に注目して,必要性とはなんであるの かを考察してきた. そこで,数学では絶対値以外に様々な数学的 記号が存在する.そのことから一般的な数学的 記号の数学的コミュニケーションにおける位置 づけと役割とはなんであるのかについて見出す 余地がある. そして数学教育における数学的記号の必要 性をふまえた上での学習実践について考察す ることで,より生徒の数学的記号に対する認識 と,数学的記号の利用のあり方について考察し ていく余地がある. 引用 引用引用 引用・・・・参考文献参考文献参考文献参考文献 ・文部科学省検定済教科書 中学校数学科用 「 楽しさひろがる 数学 1 2 3 」 啓林館 文部科学省 H18 年度 ・文部科学省検定済教科書 高等学校数学用 「 数学 ⅠⅡⅢABC 」 ・「NCTM Standard (1989) 」 ・「 数学史-形成の立場から- 」 中村 幸四郎 1981 ・「 正負の数のイメージ その背後にある数の見 方の転換(数学教育)」 溝口 達也 1995.6 ・「 数学のあけぼの ギリシャの数学と哲学の源 流を探る 」 アルパッド・K・サボー 1976 ・「 アリストテレス 形而上学 上 下 」 出 隆 1959 ・「 A HISTORY OF MATHEMATICAL

NOTATIONS 」 Florian Cajori

参照

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