IoT サービス用シームレスプラットフォームシステムの基礎研究
[研究代表者]内藤克浩(情報科学部情報科学科)
[共同研究者]鈴木秀和(株式会社
モビリン)
研究成果の概要 モノのインターネットと呼ばれるIoT(Internet of Things)が注目されており、近年多くのサービス提案が行われて いる。具体的には、一部の自動車などはリモートメンテナスを実現するための携帯電話モジュールが内蔵されており、 故障時などは遠隔地から障害箇所の診断などが行える。一方、多くの家庭で利用されるWiFi を利用する IoT 機器も 発売されているが、その多くが設置時のネットワーク設定が必要であり、情報技術の知識がなければ、IoT 機器を適 切にネットワークに接続することが困難である。このようなネットワークの接続性に関する課題は、多くのオフィス・ 家庭で導入されているブロードバンドルーターなどのファイヤーウォールが原因である。IoT サービスを今後普及さ せるためには、ネットワーク設定を簡易にすることで、ネットワークの接続性を改善する手法が非常に重要になると 考えられる。 本研究では、IoT 機器のネットワーク接続性を実現する要素技術と、特に多数の IoT 機器を包括的に管理可能な規 模拡張性を持つプラットフォームシステムの研究を行なっている。本年度は主に、今まで検討を進めてきたプラット フォームシステムを実現するための通信プロトコル部の再設計を進めている。また、Cloud サービスなどでも一般的 に利用されるLinux OS において、処理プロセスが増加した場合のオーバーヘッドについても、定量的な評価を実施 してきた。これらの評価の結果、通信処理ごとにスレッドを起動することにより、独立したスレッドが通信処理を分 担する方式の場合、通信処理が増加した場合には、大きな処理オーバーヘッドが発生することが確認された。 研究分野:モバイルネットワーク キーワード:IoT, イターネット, 通信プロトコル, NAT 越え, モビリティ 1.研究開始当初の背景 モノのインターネットと呼ばれるIoT(Internet of Things) が注目されており、一部の車のリモートメンテナンス、ホ ームオートメーションなどのサービスが始まりつつある。 IoT で接続されるネットワークとは、通常はインターネッ トであるが、インターネットには利用している通信プロト コルの都合から、いくつかの課題がある。大きな課題の一 つ が 、 多 く の 家 庭 ・ 企 業 に お い て 導 入 さ れ て い る NAPT(Network Address Port Translation)と呼ばれる技術で ある。NAPT を導入しているネットワークでは、インター ネット側から NAPT 配下のネットワーク機器にアクセス が不可能となり、IoT 機器を遠方から操作するなどに大き な支障が発生する。つぎに、IoT 機器が互いに通信を行う ことにより連携したサービスを提供する場合には、互いの IoT 機器のネットワーク上での位置を把握する必要がある。 しかしながら、既存のインターネットでは、接続される場 所が未知の IoT 機器を一般的な利用者が管理することは 困難であり、IoT 機器をネットワーク上で探し出すための 枠組みが必要である。さらに、近年のインタネットでは、 新しいプロトコルであるIP(Internet Protocol) Ver. 6 が普及 を始めている。しかし、現在主流であるIPv4 との互換性 がないため、IPv4 と IPv6 間の相互接続を行うための通信 技術も将来的には必要不可欠である。2.研究の目的
本研究では、IoT 機器のネットワーク接続性を実現する 要素技術と、特に多数のIoT 機器を包括的に管理可能な規 模拡張性を持つプラットフォームシステムの研究を実施 している。本年度は主に、今まで検討を進めてきたプラッ トフォームシステムを実現するための通信プロトコル部 の再設計を実施した。また、クラウドサービスなどでも一 般的に利用されるLinux OS において、処理プロセスが増 加した場合のオーバーヘッドについても、定量的な評価を 実施する。 3.研究の方法 (1) 通信プロトコルの設計 提案システムを実現するためには、IoT 機器を認証する 枠組み、IoT 機器のネットワーク接続状態を把握する枠組 み、IoT 機器間の通信を成立させる枠組みが必要不可欠で ある。本研究では、図1 に示す通信シグナリングを設計す ることにより、上記の必要要素を実現する。図1 は IoT 機 器の双方がグローバルIP アドレスを利用している場合の 通信シグナリングである。まず、双方のIoT 機器はログイ ン処理を行うことにより、提案するプラットフォームへの 参加処理を行う。この処理を通して、IoT 機器とクラウド 間で利用する通信用暗号鍵などの設定が終わる。次に、IoT 機器は自身のネットワーク接続情報をクラウドに送信す ることにより、ネットワークの接続情報の登録を行う。こ の処理により、クラウドは各IoT 機器がどのようなネット ワークに接続されているのかを把握することが可能とな る。次に、IoT 機器が相互通信する場合、クラウドが双方 の IoT 機器のネットワーク接続情報に応じた通信手順を 双方のIoT 機器に指示することにより、IoT 機器が互いに メッセージを交換し、直接通信を開始する。なお、直接通 信には、個別の通信用暗号鍵が準備されるため、クラウド が相互通信に関与はしているが、IoT 機器間の相互通信安 全性は保証されている。 (2) クラウドシステムの基礎性能評価 クラウドシステムの規模拡張性の基礎評価として、通信 処理をスレッドにより処理する場合のオーバ 図1 通信シグナリング例(グローバル IP アドレス間) 図2 スレッド数に対する CPU 利用率 ーヘッドの評価を実施した。評価には Amazon EC2 上の Linux OS を利用し、同 OS 上でスレッドを多数生成した場 合のCPU 利用率を測定した。インスタンスタイプとして は、仮想CPU16 個、メモリ容量 64GB の m4.4xlarge を利 用した。なお、本評価で利用する評価プログラムは、スレ ッド生成のみを行い、その他の処理は一切行わない仕様と した。結果より、実質的な処理を行わない場合においても、 スレッド数の増加に伴いCPU 利用率は増加を続けていく ことが確認された。これは、スレッド間の処理を切り替え るためのCPU オーバーヘッドが大幅に増加したためと考 えられる。また、スレッドベースで処理をするクラウド設 計は規模拡張性の観点から向いていない可能性が高いこ とが判明した。 NMS for CN AS NMS for MN CN MN
Login Req. over SSL/TLS
Login Res. over SSL/TLS Key Distribution ACK
Login Req. over SSL/TLS Key Distribution
ACK Login Res. over SSL/TLS Registration Req.
Registration Res.
Keep alive Registration Req.
Registration Res.
Direction Req. with FQDNCN
Node Information Req. Node Information Res.
Route Direction Route Direction
ACK ACK Route Direction
ACK Tunnel Req. Tunnel Res.
ACK Global IPv4 / IPv6 Dual stack(IPv4/IPv6) Dual stack(IPv4/IPv6) Dual stack(IPv4/IPv6) Global IPv4 / IPv6
4.研究成果 本研究では、IoT 機器のネットワーク接続性を実現する 要素技術と、特に多数のIoT 機器を包括的に管理可能な規 模拡張性を持つプラットフォームシステムの研究を進め てきた。本年度は特に、プラットフォームシステムを実現 するための通信プロトコルの設計を見直すとともに、クラ ウドサービスの規模拡張性が高い実装方法を模索するた めの、基礎的な評価を実施した。結果より、今後のクラウ ドサービスの実装では、スレッドベースではなく、イベン トベースの処理機構を利用することが必要であることが 明らかになった。 5.本研究に関する発表
(1) Hisayoshi Tanaka, Hidekazu Suzuki, Katsuhiro Naito, Akira Watanabe 、“ Implementation of Secure End-to-End Remote Control System for Smart Home Appliances on Android”、The IEEE International conference on Consumer Electronics ICCE 2019、Las Vegas, USA、January 2019.
(2) Katsuhiro Naito, Kohei Tanaka, Kensuke Tanaka 、“ 発 CYPHONIC: Overlay Network Technology for Cyber Physical Communication”、The 10th International Multi-Conference on Complexity, Informatics and Cybernetics: IMCIC 2019 、 Orlando, USA、March 2019.