「伊方町三崎地区低周波音被害」報道の捏造と真実 2008/7/15 テレビ朝日報道ステーション報道 中野有朋 Ⅰ. 報道内容の誤りと捏造 報道では、盛んに低周波音、低周波音といって報道している。しかしその 基のデータは超低周波音のデータであり、低周波音のデータではない。誤り である。 報道では上図が放映されている。しかし、その下図に示されている測定結果 は、上図に示されている低周波音ではない。これは上図にはない超低周波音の データである。 まず図の横軸を見ると 0 から 20Hz となっている。周波数が 20 Hz 以下の音波 は低周波音ではなく超低周波音である。
低周波音は周波数が 20Hz から 100Hz の範囲の音であり、低周波音と超低周波 音は異なったものである。 これは国際規格でもはっきり区別して定められている(下記Ⅱの 1.1 参照)。 超低周波音は耳に聞えない音波であり、振動感覚器で人体に感じられる音波 であり、低周波音は耳に聞こえる音である。 さらに図の横軸に「音の高さ」と書いてある。これは誤りである。 低周波音の場合は耳に聞える音であり、低く聞える場合は低音(低周波音)、 高く聞える場合は高音(高周波音)といっている。超低周波音は耳に聞えない 音波であるから、音の高低などはない。 それから横軸に 0 から 20Hz までの周波数目盛りが普通の目盛りで書いてある。 しかし、通常の超低周波音の測定では、このような目盛りは使用しない。対数 目盛りを使用し、1/3 オクターブバンドごとに表す。 例えば図の 10Hz 以降の目盛りは 12.5、16、20、25、31.5 であるから、図の 15Hz と描いてあるところは 31.5Hz になるはずであるが? 一体どんな測定器で 誰が測定したものであろうか。このデータの信頼性は極めて低い。 このような測定においては、今は通常、有資格者(環境計量士)が行うのが 一般である。有資格者が測定したデータであればこの様な誤りを犯す筈はない。 素人が適当に測定したものではないか。 次に縦軸をみると「音の大きさ」と書いてある。これは耳に聞える音の感覚 的大きさをあらわす用語であり、耳に聞えない音波に「音の大きさ」などはな い。 音波の強さである。単位に dB とあるところからみて、縦軸の数値は音波 の強さを表す音圧レベルである。 以上のように超低周波音と低周波音は異なって扱われるものである。 結局、超低周波音のデータを用い、異なった音である低周波音にすり替えて 報道している。測定データを見ると、すぐわかることであるから、意図的に行 ったものとしか思えない。 出ていない超低周波音の測定データを基に、低周波音が 70dB も出ている などと報道している。 捏造データに基づいた誤った報道である。 上図中の、「今回の測定」というデータを見ると、周波数 10Hz から 20Hz の 範囲の測定値は約 50dB となっている。 それから参照値を見ると、周波数 10Hz から 20Hz まで、音圧レベルはだんだ ん小さくなっているが、10Hz の音圧レベルは約 90dB、20Hz の音圧レベルは約 80 dB となっている。 「今回の測定値」の 10Hz の音圧レベル 50 dB は参照値の 90dB より 40dB 小さい。 40dB 小さいということは、1 万分の 1 ということである。20Hz の場合は 30dB 小 さい。すなわち千分の 1 の大きさである。
結局、周波数 10Hz から 20Hz の範囲では、実際に出ている超低周波音の大き さ(測定値)は、参照値の 1 万分の 1 から千分の 1 の大きさである。 さらに 1Hz から 5Hz の測定値を見ると最大値は音圧レベル 70dB くらいとなっ ている。 また、1 から 10Hz の範囲には参照値など定められていない。 この図には、意図的と思われるが、最も大事な超低周波音の感覚閾値が記載 されていない。 健常者の人体に感じられる超低周波音の音圧レベルは 1Hz で 130dB 以上、5Hz で 110dB 以上となっている。これを超低周波音の感覚閾値といっている。 これは、以前から、多くの資料、文献に載っており、超低周波音問題に関係 しているものにとっては一般常識となっており、この結果を基に、超低周波音 の国際規格も定められている。 「今回の測定値」の 1Hz の測定値は 70dB であるから 1Hz の感覚閾値 130dB よ り 60dB 小さい値である。すなわち健常者の感覚閾値の百万分の 1 である。 また 5Hz の場合は 110dB より 40dB 小さい。すなわち 1 万分の 1 である。 結局、周波数 1Hz から 5Hz の範囲では、実際に出ている超低周波音の大きさ は、健常者の人体の超低周波音感覚閾値の百万分の 1 から 1 万分の 1 の大きさ である。 通常、感覚閾値以下の超低周波音の場合は、その存在が知覚できないので、 閾値以下であれば、超低周波音は出ていないといっている。従ってこの大きさ であれば全く超低周波音は出ていないということである。 この意味を誤解してか意図的か、これを、音をすり変え、低周波音が 70dB も 出ているなどと誤った報道をしている。まさに視聴者を惑わす、というよりも 騙す報道である。 冒頭の報道の誘導質問に対する住民等の答えにあったような、交感神経の緊 張や頭痛などは、健常者であれば、このような超低周波音で起こる筈がない。 伊方町の住民は健常者ではなく音響的異常者であると報道しているようなも のである。 健全な住民にとっては全く迷惑な話ではないか。 参照値の 1/10 のエネルギと称する周波数 10Hz、音圧レベル 82dB の超低 周波音で体感実験をして、人体に感じられる。と報道している。 実際の 1000 倍も大きい音波にすり替え実験している。事実の隠蔽、捏造 である。 上記の「今回の測定値」を見ると、実際に出ている 10Hz の音圧レベルは 50dB であり、参照値の 1 万分の 1 の大きさである。従って体感実験に使用した音波 は、参照値の 1/10 ではあるが、実際に出ている音波の 1000 倍の大きさである。
また出ている音波はブロードバンドであり、体感実験に使用した 10Hz の純音 波とは全く性質の異なる音波である。 なぜ実際に出ている音波と同じ性質の音波、同じ大きさの音波で体感実験を しないのか。実際の音波では体感できないことが明らかであるからと思われる。 参照値の 1/10 を強調し、実際に出ている音波と性質の全く違った 1000 倍も 大きい音波で実験し、感じるなどとは、事実を隠蔽し、意図的に音をすり替え、 ありもしない被害を、強調しようとするものである。 「低周波音がどのように人体に影響を及ぼすかはこれからの課題である」と いう発言が報道されている。 今回の報道の内容からみてこれも誤りである。 「超低周波音」については、既に何十年も前から多くの実験結果が発表され、 人体影響ばかりでなく動物影響なども明らかになっている。しかし 20 Hz から 100Hz の低周波音については明らかではない。 放映でコメントを述べたものが、発言とおり、この低周波音についての発言 であれば、そのとおりであるが、今回の超低周波音についての発言であれば、 全く勉強不足である。 報道全体の流れから見て、意図的に今回の超低周波音について発言者を誘導 したものとしか考えられない。 「参照値は 15 分間低周波音を聞き 9 割の人が不快と感じる値であると報道 している」これは全くの捏造である。 参照値は 9 割の人が不快と感じない値である。 参照値は「10%値」であると環境省の「低周波音問題対応の手引書」にも明 記されている。この値は報道とは全く反対で、10%の人が不快と感じ、90%の 人が不快に感じないということを表す値である。
10%値に対する無理解か意図的かは定かでないが、全く反対の報道をしてい る。報道全体の流れから見て、ここで言う参照値は、報道サイドが意図的に捏 造した参照値であるといってよい。 「参照値は被害の目安」であると、盛んに報道している。 これも意図的な捏造である。 参照値については環境省の手引書に詳しく書かれている。しかし参照値は「被 害の目安」を表すなどとはどこにも書かれていない。環境省が被害の目安であ ると言ったとしているが、そんなことを言うはずがない。 「低周波音の状況を的確に判断するための目安となる値」と明記してある。 そして対策目標値、環境アセスメントの環境保全目標値、作業環境のガイドラ イン、規制基準、要請限度とは異なるとも明記してある。 「被害の目安」などとはまさに捏造である。これも意図的に勝手に報道に都 合のいいように作り上げたものとしか考えられない。 感覚閾値の 1 千万分の 1 の超低周波音を取り違え、発電していないとき に比べ発電時には 20 倍も 30 倍も低周波音が大きくなり問題であるとして いる。全くの誤りである。 下の上図を見ると発電していないときは 1Hz の音圧レベルは 60dB である。こ れは健常者が人体に感じられる超低周波音の大きさの1千万分の1の大き さである。また発電時には 70 dB である。これは百万分の 1 の大きさである。 下図では横軸の周波数 1Hz から 5Hz は隠されているが、発電していないとき に比べて発電したときには矢印の分だけ、低周波音が大きくなり問題であると している。確かに縦軸の数値を見るとそのとおりである。
しかし縦軸の 70dB という数値は人体に感じられる超低周波音の百万分の 1 の 大きさ、60dB は 1 千万分の 1 の大きさである。全く人体に感じられない超低周 波音である。 これを普通の騒音の表し方で表すと、この 70dB は-60dB 、60dB は-70dB と いう大きさを表す。0 をはるかに下回る数値である。 60 dB から 70dB になったからといっても、これらは全く無視できる大きさで ある。 体重 70kg の人の体重がその 1 千万分の 1 の 0.007 グラムから百万分の 1 の 0.07 グラムに増えたから、大問題だというのと同じである。あいた口がふさがらな いとはこのことである。 1Hz の超低周波音の 60dB や 70dB という値の意味が全く理解されていないのか、 意図的なのか定かではないが、周波数が隠されているところを見ると意図的と
も考えられる。これは捏造データを強調したものである。 教授の健康被害の発言、ラットの被害実験は、音の周波数、音の強さを全 く示さず、また音をすり替え、被害を強調した誤った報道である。伊方町の、 感覚閾値の百万分の 1 の超低周波音でこんなことが起こる筈はない。 上図では、教授は健康被害があったケースと同じレベルの低周波が検出され たといっている。しかし、周波数が何 Hz の音であり、また音圧レベルが何 dB で あるかは全く示されていない。 それを確かめ、伊方町の測定値と比べるのが当然であるが、報道では全くそ れは無視され、被害だけが強調されている。 どんな音の問題においても音の問題の場合、周波数と音圧レベルを明記しな いと影響などはわかるものではない。そんな一般常識のかけらも持ち合わせて いないでよくこのような報道ができるものである。 また上の下図では、ヘリコプターの音によるラットによる実験が示されてい
るが、これも周波数何 Hz で音圧レベル何 dB の音であるか全く示されていない。 またヘリコプターの音と「今回の測定値」の音波とは全く違ったものである。 今回の音波は耳に聞えない超低周波音であり、ヘリコプターの音ははっきり 聞える可聴音である。 テレビ局の人間が音の違いもわからないとは情けない。わかってやったとす れば捏造である。この報道も音をすり替え、被害を強調したものである。 紛糾する住民説明会という報道は、調査結果の事実を全く無視した、一方 的なやらせ的報道である。 説明会においては、住民を、ぐる、になってだましたとか、住民に説明した のは、うそであるなどという発言だけを報道し、調査事実の説明を全く無視し て報道している。 住民の発言をそのまま返すと、今回の報道は、ぐる、になって視聴者をだま した報道であると言ってもよい。 何十年も超低周波音問題に係ってきたが、今までにこんないい加減なものは 見たことはない。 こんなものを基に天下のテレビ朝日の報道ステーションが放映するとは、一 体どういうことなのであろうか。 最後に古舘氏がコメントを述べている。その内容に異論はなく尤もな所もあ る。しかし、このようなことでは、いくら立派なことを言っても、全く空々し い発言としか感じられなくなる。 以上に述べた内容の詳細は、筆者についての分だけでも、次に示す著書、最 近の論文・報文及び著書に引用されている多数の文献にすべて載っている。 数十年来、超低周波音問題等に係わり、実務経験豊富な専門家(わが国には 数人位)の間では、超低周波音問題等はすでに 20 年以上も前に解決ずみの問題
となっている。いまさら問題にするようなことはない。 超低周波音等が正しく理解されていればこれらに係るトラブルなど起こる筈 はない。しかし、今回のような誤った報道が一因となって無用なトラブルを引 き起こしているわけである。 著書 1. 中野有朋:入門 超低周波音工学、技術書院(1981) 2.同上:低騒音化技術、同上(1993) 3. 同上:超低音(聞こえない音)、同上(1994) 4. 同上:環境振動、同上(1996) 5. 同上:実践 騒音対策-騒音・低周波音・超低周波音-、日刊工業新聞社 (2000) 6.同上:超低周波音(基礎・測定・評価・低減対策)、技術書院(2002) 7.同上:改訂低騒音化技術、同上(2003) 8. 同上:低周波音・超低周波音トラブル解決法(あの音が私を苦しめる?) 同上(2005) 論文・報文 1.中野有朋:超低周波音と低周波音⑥、環境管理(2000/4) 2.同上:低周波音等対策事例ノ-トより⑦、環境管理(2000/6) 3.同上:超低周波音・低周波音対策事例 100 件より、日本騒音制御工学講演 論文集(2001/9) 4.同上:低周波音の対策と事例、資源環境対策(2001/9) 5.同上:騒音、低周波音に係る最近の問題と対策、環境管理(2003/4) 6. 同上:低周波音トラブル解決策、訴訟のすすめ;日本騒音制御工学会秋季 研究発表会講演論文集(2004/9) 7.同上:騒音レベルと等感度曲線による低周波音の評価と実際、日本騒音制 御工学会研究発表会講演論文集(2006/4) 8.同上:地下鉄道による戸建住宅の低周波音の対策と実際、日本騒音制御工 学会研究発表会講演論文集(2006/9) 9.同上:風力発電機からの発生音について、日本騒音制御工学会技術発表会 講演論文集(2008/9) Ⅱ 伊方町三崎地区風力発電所における超低周波音・振動・騒音調査結果 (平成 19 年 10 月 16 日) 全く無視され、隠蔽されている伊方町三崎地区風力発電所の実際の調査結果 は次のとおりである。 本調査における測定は、測定に係る有資格者(環境計量士)が計量法第 71 の
条件に合格した騒音測定器及び JIS、ISO 規格等に従った超低周波音測定器によ って行われたものである。報道におけるような無資格者の測定によるものでは ない。
1. 調査結果及び影響評価
1.1 超低周波音、低周波音、騒音とは
国際規格 ISO 7196(Acoustics-Frequency-weighting characteristic for infrasound measurements)によると、周波数 1Hz から 20Hz の範囲を超低周波音、 20Hz から 20000Hz の範囲を可聴音と定めています。 超低周波音は耳に聞こえない音波です。従って普通は出ていても聞こえない のでわかりません。しかし、その大きさが極めて大きいときには、人体の全身 に分布している振動受容器というもので感じられることがあります。 可聴音は耳に聞こえる普通の音です。通常この中の 20 から 8000Hz の範囲の 音が騒音として扱われております。そして更に、規格化された定義はありませ んが、通常、20 から 100Hz 位までの範囲を低周波音、1000Hz 以上を高周波音と よんでおります。低周波音とは、例えばブーンとかボーと聞こえる音楽でいう 低音のことです。高周波音とはピーとかピューと聴こえる高音のことです。 従って、低周波音も高周波音も独立した音ではなく騒音の一部に過ぎません。 環境省の「低周波音問題対応の手引書」では、1Hz から 100Hz の範囲を低周波 音として扱っていますが、これは手引書の中だけのことで、公的規格等で定め られ、一般に認められたものではありません。 異なったものである超低周波音と低周波音を混同して扱うことは誤りで、国 際規格とも異なっています。これがわが国の低周波音問題を混乱、誤解させる 一因になっています。 従って実際問題においては、国際規格に従って、超低周波音と低周波音を含 む騒音の測定調査が行われております。 1.2 低周音測定結果と評価 我々の超低周波音の感じ方は、健常者の場合、周波数が低くなるにつれて鈍 くなることがわかっております。この感じ方をG特性といって国際規格に定め られております。そして超低周波音の感覚的大きさをG特性音圧レベル(単位 はデシベル、記号は dB)という量で表すことが定められております。 前記の国際規格によると、健常者の人体に感知される超低周波音の大きさは G特性音圧レベルが 100dB 以上であり、90dB 以下では感知されることは少ない とされています。 1)風車周辺の超低周波音 風車周辺の超低周波音は風車からの距離、風向、風速等によって大きさが変 わります。幾つかの超低周波音測定結果の中で最も大きい測定値はG特性音圧
レベル約 73dB となっています。 これは、風車から約 5m離れた屋外の、地上約 1.5mの高さで、昼間、測定し た値です。 人体に感知されるレベルを 90dB としても、これより 17dB も小さい値です。 17dB 小さ いと いう ことは 、感 知さ れる 音のエ ネル ギの 約 1/50 の大 きさ ( )であるということです。従って人体に感知される超低周波音は 風車周辺には存在しないと判断されます。 音は、例えば水銀やカドミウムなどのような物質ではなく、空気の微弱な振 動であり、蓄積されることはないので、このような超低周波音が健常者の人体 に悪影響を及ぼすことは全くないといってよいでしょう。 人体に感知されない超低周波音は何百年以上も前から、今も地球上のどこに でも出ていることが知られています。 従って風車近傍で終日作業等を行っても、超低周波音の影響は全くないと判 断されます。 2)住宅内の超低周波音 住宅周辺の超低周波音も風車からの距離、風向、風速等によって大きさが変 わります。幾つかの超低周波音測定結果の中で最も大きい測定値はG特性音圧 レベル約 70dB となっています。 これは、風車から約 220m離れた住宅の屋外、地上約 1.5mの高さで、夜間、 測定した値です。住宅内での測定値は住宅構造の遮音によりこれより、若干レ ベルは小さくなります。 住宅内のレベルを屋外と同じとしても、90dB より 20dB 小さい値です。これは 感知される音のエネルギの 1/100 の大きさです。 従って、住宅内でも健常者には超低周波音は感知されず、また感じられない ので睡眠に対する影響も全くないと判断されます。 1.3 騒音測定結果と評価 低周波音を含む騒音の聞こえ方は、健常者の場合、周波数が 1000Hz より低く なるにつれて鈍くなることがわかっております。この聞こえ方を国際的にA特 性といっております。そして聞こえる騒音の大きさを国際的にA特性音圧レベ ル(単位デシベル、記号 dB)という量で表すことが定められております。 A特性音圧レベルは、我が国においては、計量法において騒音レベルと定め られております。両者は同じものです。 室内騒音の基準については、環境基本法の「騒音に係る環境基準について」 において、屋内の環境基準が定められております。窓を閉めた状態で、夜間は 騒音レベル 40dB 以下、昼間は 45dB 以下となっています。
夜間の 40dB は道路に面する地域で睡眠影響を免れるレベルとして定められた ものです。しかし道路交通騒音のない一般地域では、睡眠影響を生じないレベ ルは 35dB 以下とされています。これは中央環境審議会の「騒音の評価手法等の 在り方について(答申)」に定められております。 昼間の 45dB は日常会話に対する影響が全くないレベルとして定められたもの です。 作業環境騒音の基準にいついては、音源に近接する場所で行われる屋外作業 に従事する作業者の騒音障害を防止することを目的に、労働安全衛生法に基づ き労働基準局長通達として出された[騒音障害防止のためのガイドライン]に 定められています。障害を生じない騒音レベルは 85dB 以下となっています。こ のレベルを注意限界レベルといっております。
またWHOのガイドライン(Guidelines for community noise)によると、 騒音レベル 70dB 未満の騒音を長期間受けても、障害は起こらないとされていま す。 さらに、騒音の例を示すと次表のようになります。 以上の基準等はすべて低周波音を含んだものです。 表 騒音の例 場所 騒音レベル dB 静かな住宅地の昼 40~50 平均的な事務所内 50~60 静かな街頭 60~70 騒々しい街頭 70~80 地下鉄・バス車内 80~90 1)風車周辺の騒音 風車周辺の騒音も超低周波音と同様に、風車からの距離、風向、風速等によ って大きさが変わります。幾つかの騒音測定結果の中で最も大きい測定値は騒 音レベル約 64dB となっています。 これは、風車から約 5m離れた屋外の、地上約 1.5mの高さで、昼間、測定し た値です。 これは、静かな街頭程度の騒音です。また注意限界レベルより 21dB、WHO の 70dB よりも 6dB 小さい値です。 従って、風車近傍で長期間、作業等を行っても、騒音による障害等は起こら
ないと判断されます。 2)住宅内外の騒音 住宅辺の騒音も、風車からの距離、風向、風速等によって大きさが変わりま す。 幾つかの騒音測定結果の中で最も大きい測定値は、住宅内で騒音レベル約 34dB となっています。 これは、風車から約 170m離れた住宅内の閉めた窓から 1m離れた床上約 1.2 mの高さで、夜間、測定した値です。 これは一般地域の健常者について睡眠影響を生じないレベルの 35dB 未満です。 従って騒音による睡眠影響は極めて小さいものと判断されます。 なお、我が国の家屋の平均的防音性能は窓を閉めた状態で 25dB 程度とされて いるので、この場合の住宅外の騒音は、34+25=59dB 程度になります。これは 住宅外での測定結果とほぼ一致しています。 2. 家屋の振動 地震のような短時間の一過性の地盤振動によって建物に物的被害を生じるの」 は振動レベル 85dB 以上の場合です。しかし長期にわたり振動が加わる場合には これより小さい値になります。 環境庁(現在の環境省)の調査結果によると、このような振動による物的な被 害感を生じない限界はおよそ振動レベル 70dB 程度とされています。 なお、振動レベルとは人体に感じられる振動の大きさを表す量です(単位は デシベル、記号は dB)。そして健常者の人体の振動感覚閾値は振動レベル 55dB で、これ未満の振動は健常者の人体に感じられません。 風車から約 220m離れた住宅の屋外地面で測定した振動レベルは、振動レベル 計の計量下限値 30dB 以下で、小さくて測定できない結果になっております。 計量下限値 30dB としても、被害感を生じない限界の振動エネルギの 1/10000 の振動で、人体にも全く感じられない振動です。 従って、このような振動によって家屋が揺れるなどということは全くあり得 ないと判断されます。 3.建具のがたつき 人体に感知される超低周波音の音圧レベルよりもかなり小さい音圧レベルで 住宅の窓や戸などの建具ががたつくことがあります。 これは共振現象によるものです。 建具にあたった超低周波音の周波数と、建具の固有振動数とが一致すると、超 低周波音が小さくても、建具はそのエネルギを吸収して振動は増大し、遂には、 極めて大きい振動となります。この現象を共振といっております。 共振によって大きくなった振動によって、建具が、取り付け枠などと衝突し
てがたがたするわけです。 固有振動数とは建具を自由に振動させたときに発生する振動の周波数で、ど んな物にもその物に固有の周波数が存在します。 取り付けた状態の建具の固有振動数がちょうど超低周波音の周波数範囲にあ るので、共振が起こりやすく、共振した時にがたつくわけです。しかし、共振 しなければがたつきません。従って超低周波音によって必ずがたつくというわ けではありません。 一般の建物に使用されている 15 種類の障子、雨戸、各種ガラス窓を用いた環 境庁(現環境省)の委託実験結果によると、がたつき始める最低の音圧レベル はおよそ下表のaに示す大きさであることが知られています。これをがたつき の閾値といって、がたつきの起こる大きさの目安として一般に使用しています。 表 がたつき閾値、感覚閾値及び超低周波音測定値 周波数 Hz 5 10 20 a がたつき閾値 dB 70 75 80 b 感覚閾値 dB 112 100 91 c 測定値 dB 66 57 56 b に示す人体の感覚閾値に比べてみると非常に小さい音圧レベルです。 従って、建具ががたつく位であれば健常者の人体には感じられず、悪影響が あるなどということはありません。 幾つかの超低周波音測定結果の中で最も大きい測定値であった、風車から約 220m離れた住宅の外側の周波数ごとの音圧レベルは表の c に示すとおりです。 がたつき閾値を大きく下回っています。 従って、風車の超低周波音によって 建具ががたつくとは考えられません。 4. 風車からは原理的に超低周波数や低周波数の回転音は発生しない 風車に限らず、送風機やプロペラ機などのように、羽根が回転するものから 発生する音は二つあります。一つは羽根の回転音、もう一つは渦流音です。 4.1 回転音 これは、回転する羽根が空気を圧縮することによって発生する音です。 例えば家庭にもある扇風機についてみると次のようになります。 扇風機の電源を入れると回りだし、羽根一枚一枚は見えず一定の回転数で回 ります。このとき羽根近くに耳を近づけると、ブーンという音が聞こえます。 これが回転音です。 これは羽根の回転が速いため、羽根にあたる空気がまわりに逃げるひまがな
く圧縮され、音波が発生するからです。「空気が圧縮されるので音になる」と いうのが音響学の基本原理です。 この音は回転数に羽根の枚数を掛けた周波数の回転音になります。 しかし電源を抜くと、回転は遅くなり、羽根一枚一枚が見える位になると、 ブーンという音はしません。回転が遅いため羽根にあたる空気がまわりに逃げ 圧縮されず、回転音にならないからです。空気がただかき回されているだけで す。 プロペラ機の場合は通常回転が速いので、ブルブルンという強い回転音が発 生します。 しかし風車の場合は羽根一枚一枚が見えるくらい回転が遅いので、回転音は 発生しません。周囲の空気がかき回されるだけです。これは理論的にも明らか になっています。天井に取り付け、室内空気の攪拌に用いる市販のプロペラフ ァンと同じです。従って羽根が回っても、回転数に羽根の枚数を掛けた超低周 波数や低周波数の回転音は発生しません。 4.2 渦流音 これは、回転する羽根の周辺に発生する渦がつぶれる音です。例えばシュー とかヒューというような、いわゆる風切り音です。渦流音には広範囲の周波数 成分が含まれますが、主な周波数成分は耳に聞こえる高周波音です。 風車のように、羽根の寸法が大きくなると、羽根を横切る流速が速くなるの で発生音は強くなります。 風車の直下では、聞いてみるとわかるように、羽根が回転し丁度直下にきた 時、最も大きく聞こえます。従って、羽根の枚数に回転数をかけた回数大きく 聞こえます。これはこの回数変動する、耳に聞こえる渦流音です。超低周波音 ではありません。 結局、風車からは、耳に聞こえる高周波の変動する風切り音は発生しますが、 感知される超低周波音は発生しません。 5. 風力発電装置からは原理的に感知される超低周波音は発生しない 音は物体の振動によって発生しますが、「振動する物体の寸法が音の波長よ り小さい場合には、ほとんど音を発生しない」というのが音響学の基本原理で す。 超低周波音の周波数範囲は 1Hz~20Hz ですが、これを波長で表すと 340m~17m となります。海の波でいう極めて大きな波になります。 従ってこれ以上の寸法の物体が振動しないと感知される超低周波音は発生し ません。 風力発電装置は風車のほかに、増速機、発電機、変電装置などからなってい ますが、これらの寸法はいずれも超低周波音の波長より十分に小さいので、こ
れらからも感知される超低周波音を発生することはありません。 6.風力発電装置の騒音 風力発電装置は風車のほかに、増速機、発電機、変電装置などからなってい ることから、これらから、低周波音含む機械騒音は発生します。これは通常の 騒音の問題です。 騒音問題については、問題がある場合には、低減方法はすでに明らかになっ ているので、敷地境界線において騒音レベルの測定及び周波数分析を、定めら れた測定器で行い発生原因を特定し適切に対処することによって解決すること ができます。 7.結言 三崎地区風力発電所からの超低周波音については、風車周辺及び住宅内にお いては健常者の人体に感知される超低周波音は存在せず、また建具をがたつか せる超低周波音も存在しないこと、騒音(低周波音を含む)については、風車 周辺では静かな街頭程度、住宅内では睡眠影響の極めて小さい程度の騒音であ ること、及び振動については、風車周辺及び住宅内外において健常者の人体に 感知される振動は存在しないことなどから、風車等の発生音及び振動は、人の 健康を保護し、周辺の生活環境を保全する上において、支障はないものと考え られます。 以上