2012年 9 月 3 日
Code No. 862 2栗原市立栗原中央病院放射線科
Slice Profile Measurement Using a Crossed Thin-ramps Method in
Three-dimensional Magnetic Resonance Imaging
Rei Yoshida,1, 2* Yoshio Machida,1 Takahide Ogura,1 Hajime Tamura,1 Takeo Hikichi,2 and Issei Mori1
1Health Sciences, Tohoku University Graduate School of Medicine 2Department of Radiology, Kurihara Central Hospital
Received November 25, 2011; Revision accepted September 3, 2012 Code No. 862
Summary
Recent progress in variable-flip-angle fast spin-echo technology has further extended the utility of three-dimensional (3D) magnetic resonance imaging (MRI) for clinical application. The slice profile in 3D MRI is the point spread function that has a sync form in principle, whereas a slice profile in 2D imaging provides information on characteristics of selective radio frequency excitation. We investigated the optimal condition to measure 3D slice profiles using a crossed thin-ramps phantom. We found that the profile data should cover a large area in order to evaluate both the main lobe and side lobes in the slice profile, and that the appropriate slice thickness was 2 mm. We also found that artifacts in the direction perpendicular to the slice create an offset error in the measured slice profile when 3D imaging. In this paper, we describe the optimal condition and some remarks on the slice profile evaluation for 3D MRI.
Key words: three-dimensional (3D), slice profile, point spread function, sync function
*Proceeding author
緒 言
磁 気 共 鳴 イメー ジング 装 置(magnetic resonance imaging system: MRI)において,三次元フーリエ変換法 (three-dimensional Fourier transform: 3DFT 法)は,立体 的に構造を把握するための撮像法として広く用いられ ている.当初,繰り返し時間(repetition time: TR)を短縮 できるグラジエントエコー(gradient echo: GRE)法を ベースとして実用化されたが,TR 短縮の難しいスピン エコー(spin echo: SE)系撮像においても,マルチエコー 化した高速スピンエコー(fast spin echo: FSE)法で用い られるようになった.特に,大きなエコー数(echo train length: ETL)を設定可能な heavy T2強調撮像に適して
おり,MR 胆道膵管撮像をはじめとする MR ハイドログ ラフィ撮像に用いられた.その後,高磁場装置における radio frequency(RF)パルスの比吸収率上昇対策として も有効性の高い低フリップ角再収束パルスの開発が進 み,フリップ角を変化させることでマルチエコー信号の みかけの信号変動あるいは T2減衰を抑制し,T2の短い 実質組織でも画像のボケ(ブラーリング)を抑制可能な 可変フリップ角 FSE 法として確立された1, 2).非選択再
収束パルスによってエコー間隔(echo spacing: ESP)を短 縮することで大きな ETL 設定を可能とする方式なども 順次取り入れられ,短時間で高分解能の 3D 高速 FSE 撮像が可能になっている.しかしながら,単純に TR を 短縮した GRE 系の 3D 撮像と違い,各エコーの信号強 度特性が完全にフラットになるわけではないため,三次 元 k 空間への MR 信号の割り当て方法の違いによっ て,3D 画像の各断面のブラーリングに違いが生じるこ とが報告されている3).このような近年の 3D 撮像法の 進歩に対応するために,3D 撮像法の画質評価の必要性
があらためて高まってきたということができよう.われ われも,可変フリップ角 3D-FSE の T2強調膝画像にお いて,3D 矢状断撮像の原画像の方が,3D 横断撮像か ら得た矢状断の断面変換像よりもかえって空間分解能 の低下やアーチファクトの発生が顕著である例を経験し ており,今回の検討の直接的な動機付けの一つとなっ ている. ところで,3DFT 法を用いた MRI の 3D 撮像におけ る点広がり関数(point spread function: PSF)は,読出し (readout: RO)方向,位相エンコード(phase encode: PE)
方向,スラブ選択 / スライスエンコード方向[以下では 単にスライス選択(slice-selective: SS)方向と記す]の 3 方向とも,k 空間での収集打ち切りを表す矩形波をフー リエ変換した sinc 関数が基本形となる.したがって, 3D撮像の「スライス」は,2D 撮像における選択励起によ るスライス特性とは大きく異なる sinc 形状のプロファイ ルをもっており,大まかには,そのメインローブは空間 分解能を表し,サイドローブはリンギングアーチファク トを表すことが知られている.PSF あるいは modulation transfer function(MTF)の精確な計測法としては,宮地 らによる複素減算法による MTF 計測の報告などがある が4, 5),今回は,一般に入手可能なファントムを用いた 従来からの「スライス特性」の評価法として検討を行っ た.スライス特性の代表的な評価法としては,くさび法 や傾斜板法があるが6∼8),今回は傾斜板法を用いて「ス ライスプロファイル」の最適な計測条件について検討を 行った.また,PE 方向についても同じ方法でプロファ イルの計測を行うことによって,SS,PE 方向における 空間分解能やアーチファクトの比較評価が可能になると 考え検討を行った.以上の検討を進めた結果,適切な 計測条件についての知見を得るとともに,実際の計測に おけるいくつかの問題点─特にファントム周辺構造のス ライス方向へのリンギングアーチファクトの混入などの 3D撮像に固有の問題点を経験した. われわれの最終的な目標は臨床を含めた画質の評価 であるが,適切な評価を行うためにも,評価法そのもの に関する今回の経験を報告することが重要であると考 えた.本論文では,今回の検討を通して得られた,傾 斜板法による 3D 撮像のスライスプロファイル計測の適 切な設定条件,計測上の注意点,あるいは補正方法な どについて報告する. 1.方 法 1-1 MR 装置およびファントム 使用した MR 装置は静磁場強度 1.5 T の Philips 社製 Achieva SE,使用コイルは頭部用クワドラチャコイル で,使用ファントムは装置付属の傾斜薄板ファントムで ある.ファントムの外観と構造を Fig. 1 に示す.ファン トム主要部は内径約 200 mm,高さ 50 mm の円柱状 で,ファントム内の厚み 20 mm の領域に,信号を発生 しない材料で作られた二つのくさび状の傾斜板が傾斜 角 11.3˚ で配置されており,これらで囲まれた 1 mm 厚 の 薄く平らな 部 分 に,硫 酸 銅 溶 液(CuSO4・5H2O: T1=366.3 ms,T2=326.2 ms)が満たされているものである (以後,表現を簡潔にするためにこの薄く平らな部分 を傾斜板と称す).さらに,傾きによる誤差を補正す るために,二つの傾斜板が対になって配置されている (Fig. 1c).そのファントムを,矢印の静磁場方向に向け て設置した(Fig. 1d). 1-2 プロファイルの測定方法 1-2-1 撮像シーケンスおよび使用ソフト 撮像シーケンスは,T2強調の 3D FSE を用い,TR: 2000 ms,TE:260 ms,ETL:64,ESP:8 ms,再収束 フリップ角:180˚,profile order/turbo direction はマルチエ コーを ky 方向にリニアに充填する linear/Y とした.さら に比較対象用として 3D GRE 撮像を行い,TR:30 ms, TE:4.6 ms,フリップ角:20˚ とした.いずれのシーケン スにおいても,FOV:256×256 mm,収集および再構成 マトリクス:256×256,加算回数:1,測定回数は 1 回と した.スラブ厚は,スライス方向の折り返しの影響を避 Fig. 1 Crossed thin ramps phantom used in
this study.
(a) External view, (b) volume render-ing image (front cut), (c) dimension of crossed thin ramps shown in the projection image, and (d) phantom setting in MRI system.
けるために厚めの 90 mm とし,スライス厚 2 mm,スラ イス枚数 45 を基本条件とした.また,再構成あるいは 画像フィルタ処理は操作上可能な範囲ですべてオフと し,プロファイル計測用の三次元絶対値画像データを 得た. 次 に, 測 定 で 得 ら れ た d i g i t a l i m a g i n g a n d communications in medicine(DICOM)形式の画像を,ア メリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)で開発されたフリーウェアである ImageJ9)に取り 込みプロファイルデータを得た.これをテキスト形式で Microsoft Excelに取り込み計算およびグラフ表示を 行った. さらに得られた結果の正 確 性を評 価するために Wolfram Mathematica 7.0でシミュレーションを行った. 1-2-2 スライスプロファイルの計測 1-1 に示したファントムの撮像で得られた 3 断面像に 認められる,x,y,z 軸に対するファントムの回転誤差 に対し,オブリーク撮像を用い補正を繰り返すことに よって直交 3 断面像を得た.その直交 3 断面像にスラ ブを設定し(Fig. 2a),x 軸方向を読み出し(RO)方向,y 軸方向を位相エンコード(PE)方向として設定して撮像 を行った.傾斜板の中心付近を含み,後述するオフ セットの影響の小さいスライス画像を選択し,計測精度 向上のために,その面内で傾斜板長軸方向に沿った点 線(Fig. 2b)とその隣接平行 5 ラインの加算平均によって プロファイルを得た(Fig. 2c). 傾斜板の長軸方向の長さは 70 mm であり,この範囲 がスライスプロファイルを計測することが可能な領域で ある.今回用いた傾斜板の傾斜角が 11.3˚[=arctan(1/5)] であることから,上記計測可能領域 70 mm に対応する 実空間でのスケールは,その 1/5 の 14 mm である. 1-2-3 PE 方向のプロファイル計測 PE 方向のプロファイル計測に関する位置関係を Fig. 3 に示す.前節で述べたのと同様のプロファイルを PE 方 向で観察するため,1-2-1 で述べた実験条件の一部を, 収集マトリクス:128×128(ピクセルサイズ:2×2 mm) [PE 方向ピクセルサイズ(2 mm)を,SS 方向のスライス 厚(2 mm)と揃えてプロファイルを比較するためである] 再構成マトリクス:256×256 とした.スラブを,Fig. 3a に示す向きで撮影することによって,傾斜板部分の断 面が斜めのライン状に現れる(Fig. 3b).Fig. 3c のように PE方向の線 ROI(region of interest)のプロファイルを計 測することによって,PE 方向に対するプロファイルが 得られるが,PE 方向においても計測精度向上のため に,傾斜板中心近辺の隣接する 4 画像の,同一位置の オフセットの影響の小さい線 ROI データを加算平均し たものを PE 方向のプロファイルデータとした. 1-3 検討項目 1-3-1 検討項目 1:3D 撮像のスライスプロファイ ル計測に適したスライス厚の検討 SS 方向のプロファイル計測に適したスライス厚を決定 Fig. 2 Measurement of slice profile.
Three-dimensional imaging slab and the slice for profile measurement are shown in (a). The image (b) is the selected slice with a line ROI (dotted line) on which the slice profile (c) is obtained.
するための検討を行った.撮像シーケンスは 1-2-1 で 示した T2強調 3D FSE とし,スライス厚を 4.0 mm,
3.0 mm,2.0 mm,1.5 mm,1.0 mm,0.5 mm と段階的 に変化させてそれぞれの 3D 元画像を得た.得られた 3D 画像からスライスプロファイルを求め,その形状や 表示範囲を比較した.次に,半値幅(full width at half maximum: FWHM)を求め,さらに設定したスライス厚 と得られた FWHM の関係が把握しやすいように,相対 FWHM(r-FWHM=FWHM/ ス ラ イ ス 厚)を 求 め た. FWHMの計測において,プロファイル全体にオフセッ トが発生した場合には後述するオフセット補正を行っ た.なお,FWHM と r-FWHM の算出には式(1)と式(2) を用い,傾斜板の傾きによる誤差の補正のための回転 補正を行った6). θ=sin−1[(w 2−w1)sin(2α)/(w2+w1)]/2 ………(1) FWHM=w1tan(α+θ) ………(2) ここで,角度 θ は第一の傾斜板の回転誤差,w1は第 一の傾斜板から計測される FWHM,w2はもう一対の傾 斜板から計測される FWHM,角度 α は第一の傾斜板と 撮像面をなす角度である. なお,緒言で述べた 3D 撮像の原理上,3D 撮像にお けるスライスプロファイルの基本形は sinc 関数であり, スライス厚を変えても広がりが変化するだけである.こ こでのスライス厚を変えた検討は,スライスプロファイ ル自体のスライス厚依存性を確認するためのものでな く,評価法としてどれが適切であるかを確認するために 行った. 本件についての詳細は考察にて議論する.また,実 際のプロファイル算出や半値幅計測処理においてはオ フセット補正が重要な役割を果たしたが,それについて も考察にて議論する. 1-3-2 検討項目 2:SS 方向と PE 方向のプロファ イルの比較 T2強調の 3D FSE と 3D GRE における SS 方向と PE 方向のプロファイルおよび FWHM・1/10 値幅(full width at tenth maximum: FWTM)を求め,空間分解能やリンギ ングの比較評価を行った. 2.結 果 2-1 検討項目 1:スライスプロファイルのスライ ス厚依存性 Fig. 4 に,スライス厚を 4.0 mm から 0.5 mm まで段 階的に変化させることによって得られたスライスプロ ファイルを示す.計測されたプロファイルは複数の山型 の形状を示し,各スライス厚ともスムーズな曲線の形状 を示した.4 mm スライス厚以上のプロファイルでは, 矢印の部分に傾斜板のない無信号部分での信号上昇 (オフセット)が観察された.それに対して 2 mm スライ ス厚では,プロファイルの表示範囲が広くオフセットも 軽微であった.2 mm スライス厚のプロファイルに対し て,1.5 mm スライス厚以下では設定スライス厚が小さ くなるほどプロファイル形状が細くなり,形状の観察が 困難になった.Table に FWHM の計測結果を示す.4∼ 1.5 mmスライス厚の範囲では,r-FWHM が 1.2 から 1.3 程度であり,1 mm では 1.33,0.5 mm では 1.70 と大き な値を示した. 2-2 検討項目 2:SS 方向と PE 方向のプロファイ ルの比較 Fig. 5 に SS 方向のプロファイルと PE 方向のプロファ イルの計測結果を示す.3D GRE では SS 方向のプロ ファイルと PE 方向のプロファイルは類似した形状を示 した.それに対し T2強調の 3D FSE では,SS 方向のプ ロファイルが原理どおり sinc 形状を示したものの,PE 方向のプロファイルは sinc 波形のサイドローブ部分が 崩れ,プロファイル全体が山形に変化した.次に半値幅 と FWTM による数値の比較を行った(Fig. 6).SS 方向 に対し PE 方向の FWHM はわずかに増加した程度で あったが,PE 方向の FWTM は SS 方向に対し 2 倍近く 大きくなった.
Fig. 3 Measurement of profile in phase encod-ing direction.
(a) Location of 3D Slab and slice section which is used for profile measurement. (b) Acquired 3D images. (c) Profile data in phase encoding direction is measured on the line ROI on the slice image which includes a thin ramp.
Fig. 4 D e p e n d e n c e o f s l i c e profile shapes on slice thickness.
(a) 4 mm, (b) 3 mm, (c) 2 mm, (d) 1.5 mm, (e) 1 mm, and (f) 0.5 mm slice thickness profiles. 4 mm slice thickness data has offset (arrow).
Table FWHM value dependence on slice thickness
Slice thickness (mm) 4 3 2 1.5 1 0.5
FWHM (mm) 5.07 3.75 2.58 1.97 1.33 0.85
r-FWHM 1.27 1.25 1.29 1.31 1.33 1.70
Upper column: slice thickness given by scan setting, and Middle column: measured FWHM. Ratio is shown given in the lower column. Thinner slice data have larger FWHM value.
Fig. 5 Profile data measured in SS and PE directions. (a) SS profile data (gray line) and (b) PE profile data (black line) are shown. While the SS and PE profile data have almost no difference in GRE data, PE profile data has larger side lobes in PE data.
a b
a b
Fig. 6 Comparison of FWHM and FWTM of profiles between SS and PE direction. FWHM values of SS and PE profile data are about the same in GRE case. On the other hand, FWHM of PE profile data is slightly wider than that of SS profile, and FWTM of PE profile data is almost twice compared with that of SS data.
3.考 察 3-1 MRI における 3D 撮像 MRI における 3D 撮像は,3DFT 法が標準的な方法 として確立している10).緒言でも触れたように,SS 方向 には PE 方向と同じように位相のエンコードが行われ, フーリエ変換による画像化の原理としては,これらの両 方向で違いはない.「スライス特性」といっても選択励起 による特性11, 12)ではなく,PSF から決まるものである. 傾斜板のような薄い面形状の被検体からの像として観 察した場合には,基本形は sinc 関数そのものとなる.
基本形が sinc 形状であるため,選択励起のプロファ イルを計測するのとは違ったいくつかの注意が必要にな る;(1)裾野の広い sinc 形状を観察するためには,撮像 条件として設定したスライス厚に対して何倍かの広い 範囲で観察する必要がある.(2)点広がり関数を表す sinc関数の値は x∼±0.60π のときに 0.5 となり,した がって,FWHM は理論上であっても設定したスライス 厚のおよそ 1.2 倍程度となる.(3)前項は傾斜板の厚み がゼロの場合に相当するが,厚みがゼロよりも大きく なった場合にも,半値幅は大きく変化しない.実際に計 算によって求めたプロファイルを Fig. 7 に示す.傾斜板 の厚みの設定スライス厚に対する比 r を,r=0,0.5, 1.0,1.5,2.0 と変化させたときのプロファイル形状であ る.実際の計算は,矩形波のフーリエ変換である sinc 波形を 256 点サンプリングしたデータに対して,十分に 大きな 217 点でゼロ詰め離散フーリエ変換を施した.そ の中心部の右側半分強を表示したものである.上記 (1)から(3)の傾向が確認できる13).FWHM の計算値 は,r=0 から順に,1.202,1.221,1.286,1.427,1.731 と なっており,傾斜板の厚みがスライス厚の半分の r=0.5 であれば r=0 との差異は 1.6%程度である.例えば全体 像の把握を目的とする検討であれば,本法は十分に有 用であるものと思われる. 3-2 今回の計測結果 実際に計測を行った結果を順に考察する.今回の実 測結果も基本的には前節の内容に沿うものであると考え られた.Fig. 8 は,絶対値として計測したプロファイル のサイドローブ部分を,上記原理を念頭に置いてマ ニュアル操作によって交互に符号反転処理したもので あるが,±3π 相当の範囲の sinc 波形が観察されてい る.PSF あるいは MTF の計測まで想定した場合にはさ らに注意深い計測が必要であるが,スライス特性として 観察する場合でも,二次元の選択励起特性に比べかな り広い範囲を観察する必要があろう.今回使用したファ ントム形状では,3 mm 以上のスライス厚では計測可能 な範囲が足りず,2 mm であればある程度十分にカバー できると考えられた.上述のように,傾斜板の厚みとの 関係からもスライス厚 2 mm であれば,FWHM の計測 誤差は 1.6%程度に抑えられる.スライス厚をさらに薄 くするとプロファイル形状を表現するのが困難であっ た.スライス厚が傾斜板厚みに対して薄すぎることやプ ロファイルの算出間隔の不足によるものと考えられる. また,2 mm スライス厚における SS 方向のプロファ イルの FWHM は 2.58 mm であり,スライス厚の 1.29 倍程度であった.これは,スライス厚と傾斜板厚の条 件に基づいた sinc 関数と矩形関数の畳み込みによる FWHMの計算値 1.22 倍に対して若干大きめであった. その原因として SS 方向の k 空間フィルタの影響などが 考えられるが,さらなる検討が必要である.なお,1 mm 以下の薄めのスライス厚で r-FWHM が大きめだったの は,スライス厚が傾斜板厚に対して薄く計測するピクセ ル数が不十分であったためと考えられた.また,上記畳 み込みによる計算上も,1 mm 厚では 1.29 倍,0.5 mm 厚では 1.73 倍と急激に変わることが確認できる. 次に,SS 方向と PE 方向プロファイル比較について 考察する.3D GRE では k 空間に充填するエコーの信 号強度がほとんど変化しないために,SS 方向のプロ Fig. 7 Thin-ramp thickness dependence of the slice profile of
three-dimensional imaging.
The example which simulated dependence of the slice profile shape on relative thin-ramp thickness r using Math-ematica. In turn, the results of (a) r=0, (b) r=0.5, (c) r=1.0, (d) r=1.5, and (e) r=2.0 are shown. Imaging conditions used in this study of 2 mm is equivalent to the condition of (b)
r=0.5. It was found that the effect of relative thickness r in the profile measurement is not large.
ファイルと PE 方向のプロファイルは同様の形状および 同程度の FWHM を示したと考えられた.以上のことか ら,1-2-2 に示した SS 方向のプロファイルの計測方法と 同様に,1-2-3 に示した PE 方向のプロファイル計測方 法は妥当な方法であると考えられた. T2強調の 3D FSE では,PE 方向のプロファイルでは メインローブの幅が増大したが,サイドローブ形状の変 化はより顕著であり FWTM で 2 倍近くの増大として観 察された.今回使用した T2強調撮像(TE:260 ms)は,マ ルチエコーを ky 方向(PE 方向)に充填する方法で,1 励 起あたりのデータ収集時間は 512 ms(ESP 8.0 ms× ETL 64)と長いものだった.この条件下で T2減衰波形をフー リエ変換して得たプロファイルの絶対値および実部・虚 部のシミュレーション結果を Fig. 9 に示す.シミュレー ション結果に示す絶対値の山型形状に対し,今回の計 測によって得られた T2強調 3D FSE の PE 方向のプロ ファイルは類似した形状を示し,それは T2減衰の影響 によってプロファイルの変化が引き起こされたと思われ た.計測した絶対値プロファイルでは位相情報が消失 してしまうものの,SS 方向と PE 方向のプロファイルの 違いを観察することは十分に可能であると考えられた. 次にオブリーク撮像を用いることによる計測精度につ いて考察する.今回のプロファイル計測では,National Electrical Manufacturers Association(NEMA)で規定され ている撮像方法(撮像面にオブリーク撮像は用いない)と は異なり,x,y,z 軸に対しオブリーク撮像を繰り返す ことによって断面像を収集し,スラブ設定を行った.こ の方法による回転誤差と FWHM を計測したところ,回 (b) By applying the alternate sign-inversion procedure, ±3πpseudo sync shape is obtained (manually processed in this
case). 2 mm data is used.
Fig. 9 Effect of T2 decay for profile shapes.
(a) is a simulated echo signal calculated on condition of T2 326.2 ms, TE 260 ms, ESP 8.0 ms, and ETL 64.
(b) is the result of Fourier transforming the echo signal (a), which is equivalent to the profile of the phase encoding direction. (b) modulus, (c) real part, and (c) imaginary part are shown, respectively.
転誤差は 0.057˚±0.0266˚(平均 ± 標準偏差:n=8),回転 誤差による計測誤差は 0.52%,FWHM の計測誤差も 0.9%程度とごくわずかであった.以上のことから,3D 撮像にオブリーク撮像を用いることによる計測精度への 影響は小さいものであり,撮像方法としては問題がない と考えられた. 3-3 計測上の問題点,課題など 次に,実際の計測を通して明らかになった問題点や 課題について考察を行いたい.今回の計測条件で現れ た問題点として,ファントム傾斜板周囲の無信号部分に 現れたアーチファクトが直接プロファイルに影響するこ とが挙げられる.Fig. 10a は,Fig. 2a の画像の無信号部 分を詳細に観察するためにウィンドウを絞って表示した ものである.矢印で示した横方向に広がるパターンは, 画像の上方の有信号領域から発生した Gibbs 現象によ るリンギングアーチファクトと考えられる14).方法で述 べたとおり,プロファイルは傾斜板中心部の横方向の線 ROI上で観察するが,リンギングアーチファクトによっ て値が上昇している部分にこの線 ROI を設定した場合 には,ROI 上の信号値が全体的に上昇する.すなわ ち,スライスプロファイルのオフセットとして観察され ることになる.設定スライスが厚めであるほどリンギン グアーチファクトの間隔が広くなり,影響も離れた位置 にまで及ぶので,プロファイル計測用スライス断面への 影響が大きくなりやすいことがわかった(Fig. 4).ただ し,2 mm 程度のスライス厚でも ROI の設定位置によっ てはオフセットの影響を受けることがある.Fig. 10b に 示すように,本来リンギングアーチファクトは発生元の 直近で負値となり,次が正値,再び次は負値と,正負 を交互に繰り返すが,リンギングアーチファクト単独で は負値部分も絶対値画像上では正値となる.ただし, 他の信号成分との相互干渉は,絶対値を取る前に生じ るので注意が必要である.今回のプロファイルにみられ るオフセットも,もともとは正負どちらもとり得ることに なる. プロファイル形状の正確な把握だけでなく FWHM や FWTMの計測上もできるだけ正確なオフセット補正が 必要である.Fig. 11 に,今回検討したプロファイル データ補正処理の概要を示した.図左側の(b)∼(d)に オフセットが正値の場合の処理例を示す.上記の発生 機序を踏まえた符合反転とオフセット補正を行った.図 右側(e)∼(g)はオフセットが負値の場合である.いずれ の場合も,一部領域の符号反転処理後に,傾斜板のな い両端「無信号部分」の平均値を減算するオフセット補 正処理によって本来のプロファイルと思われる形状を得 ることが可能であった.絶対値のプロファイルデータの 形状にはバリエーションがあるようにみえるが,いずれ の場合も同じ要因から説明でき,処理のフローとしては 同一のものでよいと思われた.ただし,上述のように位 相情報を考慮しなければならない場合もあるため,より 精確な計測のためには複素計測が必要となる4).した がって,リンギングの影響の少ないプロファイル計測条 件(2 mm 厚など)を選択し,プロファイル計測用の線 ROIも,周期性をもつリンギングの値がほぼゼロになる 領域に設定することが望ましいと考えられた.また,オ フセットレベルの把握には,信号雑音比と均一性が重 要と考えられるが,今回の計測条件では第二サイドロー ブが確認できたので計測上問題はないと考えられた. しかし,ノイズレベルに近いオフセットが存在する場 合,その信号成分が正か負か判断が困難な場合があ り,マニュアルによるオフセット補正によっては計測誤 差として計測される可能性があると思われる. また,上記のリンギングアーチファクトと同様に,3D 撮像ではゴーストアーチファクトがスライス方向にも発 生し,計測用のスライス面に混入した場合プロファイル 計測の妨げとなる場合があるので注意が必要である. Fig. 12は,1-2-1 の条件で取得した画像で,画像の上 下方向が SS 方向である.矢印で示した部分をはじめ画 像全体に,振動が原因と考えられるゴーストが認めら れる. 以上から,3D 撮像では,ウィンドウ調整などで画像 上のアーチファクトを十分に観察したうえで,プロファ イル測定に使用するラインを設定すべきであろう. 本論文では,主に 3D 撮像における傾斜板法による 計測法そのものについて述べた.3D 撮像のスライス特 Fig. 10 Gibbs ringing observed in SS direction.
(a) Gibbs ringing artifact can be seen as stripe pattern in horizontal direction (arrows). Proximal one (solid arrow) is larger than distal one (dotted arrow). (b) Shows modulus expression of oscillating
Fig. 11 Correction procedure for profile data.
Ringing artifacts shown in Fig. 10 are observed as offset on the profile data. Correction procedure for positive offset profile is shown in the left column (b)–(d). Sign-inversion for the data indicated by thick black line and offset correction by subtracting the average of no-signal area in both sides is applied. Right column (e)–(g) is an example of correction for negative offset profile. Although the shapes of observed profile (b), (e) are quite different, correction is carried out using same algorithm. Both examples are 2 mm thickness data.
Fig. 12 Ghost artifacts in slice direction.
Ghost artifacts (arrow) in slice direction should be carefully treated. Artifact in this figure is caused by table vibration.
性の評価には,特殊なファントムを用いた試みもある が15, 16),われわれは,より一般的な手法を用いたアプ ローチを検討している.今後は,プロファイル計測の撮 像条件の最適化や臨床画像の画質との関連,さらに可 変フリップ角 3D FSE への適用を検討し,最終的には, 画質の改善に結び付けていきたいと考えている. 4.結 語 傾斜板法を用いて,高速スピンエコー系 3D 撮像の スライスプロファイルの計測を行った.その結果,ほぼ フーリエ変換 MR イメージング法の原理から期待され る sinc 形状の計測結果が得られた.今回の評価条件下 では,2 mm 程度のスライス厚を設定することによって 良好なプロファイルを得ることができ,その結果,各エ ンコード方向の空間分解能やアーチファクトの評価が可 能になった.また,スライス方向へのリンギングアーチ ファクトの評価への影響など 3D 撮像固有の問題点を経 験し,その原因および補正法について考察を行った. 以上の検討から,3D 撮像の特性を考慮することによっ て,傾斜板法を用いたスライスプロファイル評価法は, 3D撮像法に対する有用な評価法の一つとなり得ると考 えられた. なお,本論文の要旨は,第 67 回日本放射線技術学会 総合学術大会(2011 年 4 月,横浜:東日本大震災の影 響によって 5 月にウェブ開催)にて発表した. 参考文献
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Fig. 3 位相エンコード方向のプロファイル計測 (a)スラブとプロファイル計測に用いるスライスの位置関係を示す.(b)は得られた 3D画像を示す.(c)は傾斜板を含むスライ ス内に設定した線ROIを示す.この線ROI上でプロファイルを計測する. Fig. 4 スライスプロファイルのスライス厚依存性 設定スライス厚を,(a)4 mm,(b)3 mm,(c)2 mm,(d)1.5 mm,(e)1 mm,(f)0.5 mm,として得られたスライスプロファイ ル.4 mmスライス厚ではオフセットが認められた(矢印). Fig. 5 スライス方向と位相方向のプロファイル SS方向のプロファイル(灰色線)とPE方向のプロファイル(黒線)を示した.GREではSS方向とPE方向のプロファイルに大き な違いはなかったものの,T2強調画像ではPE方向のサイドローブが大きい形状となった. Fig. 6 SS方向とPE方向のプロファイルの半値幅と 1/10値幅の比較 GREではSS方向とPE方向の半値幅はほぼ同じだった.一方T2強調画像では,PE方向の半値幅はSS方向に対して大きな 違いがなかったものの,1/10値幅は 2 倍近くの値だった. Fig. 7 3D撮像のスライスプロファイルの傾斜板厚み依存性 スライスプロファイル形状の,相対傾斜板厚み r(= 傾斜板厚/設定スライス厚)への依存性をMathematicaを用いてシミュレー ションした例.順に,(a)r=0,(b)r=0.5,(c)r=1.0,(d)r=1.5,(e)r=2.0,としたときの結果を示す.本検討で用いた 2 mmの撮 像条件は,(b)の r=0.5の条件に相当するが,プロファイル計測における r の影響は大きくないことがわかる. Fig. 8 サイドローブの符号反転表示 (a)得られたスライスプロファイルは絶対値データである.(b)はマニュアル操作によってサイドローブを交互に符号反転したも の.±3π 相当の範囲のsinc形状をもつことがわかる.2 mm厚データを使用. Fig. 9 T2減衰のプロファイル形状への影響
FSEにおけるエコー信号はT2減衰の影響を受ける.(a)はT2326.2 ms,TE 260 ms,ESP 8.0 ms,ETL 64としたときのエコー
信号で,これをフーリエ変換して得た結果(b)が位相エンコード方向のプロファイルに相当する.(b)は絶対値,(c)実部,(d)虚 部,である.Mathematicaを用いて計算した. Fig. 10 スライス方向に現れるリンギングアーチファクト (a)図の横方向のパターンは,周辺構造からのリンギングアーチファクトと考えられる.構造の近位(実線矢印)から遠位(点線矢 印)に行くに従って減衰する.(b)は,振動成分が絶対値表示される様子を示したものである. Fig. 11 プロファイルの補正処理 Fig. 10のリンギングアーチファクトはプロファイルデータ上ではオフセットとなる.オフセットが正値の場合の補正処理例を左 側の(b)∼(d)に示す.黒いラインで示した領域を符号反転処理後,プロファイル両端の無信号部の平均値を差し引くオフセッ ト補正処理を行った.右側の(e)∼(g)は負値の場合の処理例である.計測によって得られたデータ(b),(e)の形状はかなり異 なるものであるが,同じ処理フローによって補正できた.両例とも 2 mmスライス厚のデータである. Fig. 12 スライス方向のゴーストアーチファクト スライス方向のゴーストにも注意が必要である.矢印で顕著にみられる.本例は天板の振動が原因と考えられた. Table 半値幅のスライス厚依存性 最上段は撮像条件上の設定スライス厚,中段が実測した半値幅である.下段には両者の比を示した.スライス厚が薄くなると 値が大きくなった. 問合せ 〒 987-2205 栗原市築館宮野中央 3-1-1 栗原市立栗原中央病院放射線科 吉田 礼