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ドイツの地方税財政制度 [ 目 次 ] (1)地方行政制度等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 131 ① 地方の行政制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 131 (a)地方自治体の区分 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 131 (b)行政組織とその長・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 135 ② 国家機構と地方自治体の関わり ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 137 (a)連邦参議院 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 137 【参考】その他の連邦諸機関 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 138 (b)ドイツ都市会議等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 140 (c)財政計画委員会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 141 ③ 地方の所掌事務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 141 (a)連邦と州の役割分担 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 141 (b)市町村の権限および事務 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 144 (2)地方の財政状況等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146 ① 連邦、州、市町村の財政比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146 ② 州の歳出・歳入構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 151 ③ 市町村の歳出・歳入構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 151 (3)地方税制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154 ① ドイツ税制の特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154 (a)税収の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154 (b)共有税制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154 (c)租税に関わる権限配分 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156 ② 主な税の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 161 (a)共有税 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 161 (b)連邦税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 162 (c)州税 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 163
(d)市町村税 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 165 ③ 主な税の歴史 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 168 (4)交付金・補助金制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 177 ① 連邦−州間での交付金等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 177 (a)財政調整制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 177 (b)財政調整の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 188 (c)特定補助金 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 190 ② 州−市町村間での交付金等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 193 (a)基準交付金による財政調整 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 194 (b)営業税納付金と所得税の市町村への配分 ・・・・・・・・・・・・ 194 (c)NRW州の交付金制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 195 (5)地方債制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 200 ① 公債の発行状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 200 ② 公債の主な引受先 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 201 ③ 公債制度の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 202 (a)州債 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 203 (b)市町村債 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 204 【参考】財政破綻予防措置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 204 (付録)ドイツ地方税財政関係データ等 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 207 【参考文献】 ・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 219
(1)地方行政制度等 ① 地方の行政制度 (a)地方自体体の区分1 ドイツ連邦共和国はその名の示すとおり、16 の州からなる連邦制国家である。州に は市町村が存在し、基礎的な地方自治体としての役割を果たしている。また、州と市 町村の間には市町村連合としての郡が存在している。 ドイツにおける自治体を州を含めて区分するならば、州−地方自治体<郡−市町村 >の 3 層制となっていると言える(図 2-1-1)。 ⅰ 州(Land) 連邦国家を構成する各州は固有の憲法を持ち、議院内閣制に基づく州議会と州政 府を持つ一つの国家である。その意味で日本の都道府県とは性格を異にする。 現在、ドイツに 16 の州があるが、このような形になったのは 1990 年の東西ドイ ツの統一によるものである。単一制国家であった旧東ドイツに 5 州が新設され、こ の 5 州が旧西ドイツ 11 州からなるドイツ連邦共和国に編入され、現在の 16 州とな 1 州、市町村、郡などに関する記述は、縣公一郎「州及び市町村の行政機関」大西健夫編『ドイツの政 治』1992 年、伊東弘文「ドイツの地方財政」和田八束、野呂昭朗、星野泉、青木宗明編『現代の地方財 政(新版)』1999 年、山下茂、谷聖美、川村毅「比較地方自治」1992 年、財団法人自治体国際化協会「ド イツ地方行政の概要」2000 年 などによる。 図2-1-1 自治体の区分 連邦 州 <16> 郡<440> 市町村 <13,854> (Bund) (Land) (Kreis) (Gemeinde)
うち特別市 <117> ・・・市自体が郡 (Kreisfreie Stadt) うち都市州 <3> ・・・都市自体が州 (Stadtstaat) (注1)<>内は1999年末時点の数 (注2)郡は財政統計上、市町村に含まれる (出典)Statistisches Jahrbuch 2000, Statistisches Bundesamt(StBA)等により作成 地方自治体
った。 州は下部組織として多数の郡や市町村を持つ 13 の広域州と、都市自体が州でもあ る 3 都市州(ハンブルク州、ブレーメン州、ベルリン州)とに分けることができる。 こ れ ら の 州 に つ い て 概 観 し て 見 る と ( 表 2-1-2 )、 面 積 で は バ イ エ ル ン 州 (70,548km2)が最大となっている。日本との比較で言えば、北海道(83,452 km2)を やや下回る程度の面積である。逆に面積で最小の州は都市州であるブレーメン州 (404km2)であり、東京都(2,102km2)の 5 分の 1 の面積しか持たない。最大のバイ エルン州と最小のブレーメン州は 175 倍の開きがある。一方、人口はノルトライン・ ヴェストファーレン州が最大で、1797 万人となっており、最小はブレーメン州の 67 万人となっている。人口密度は都市州であるベルリン州(3835 人/km2)、ハンブル ク州(2253 人/km2)、ブレーメン州(1660 人/km2)が他の州に比べて高くなってい る。 表2-1-2 州別人口・面積(1998年) 人口 面積 人口密 度 千人 構成比 km2 構成比 人/km2 旧西ドイツ 1 シュレスヴィッヒ・ホルシュタイン 2,761 3.4% 15,769 4.4% 175 2 ハンブルク 1,702 2.1% 755 0.2% 2,253 3 ニーダーザクセン 7,853 9.6% 47,614 13.3% 165 4 ブレーメン 671 0.8% 404 0.1% 1,660 5 ノルトライン・ヴェストファーレン 17,971 21.9% 34,080 9.5% 527 6 ヘッセン 6,032 7.4% 21,115 5.9% 286 7 ラインラント・ファルツ 4,020 4.9% 19,847 5.6% 203 8 ザールラント 1,077 1.3% 2,570 0.7% 419 9 バーデン・ヴュルテンベルク 10,408 12.7% 35,752 10.0% 291 10 バイエルン 12,069 14.7% 70,548 19.8% 171 (小計) 64,564 78.7% 248,453 69.6% 260 11 ベルリン 3,414 4.2% 890 0.2% 3,835 旧東ドイツ 12 メクレンブルク・フォアポンメルン 1,803 2.2% 23,171 6.5% 78 13 ブランデンブルク 2,582 3.1% 29,476 8.3% 88 14 ザクセン 4,506 5.5% 18,413 5.2% 245 15 チューリンゲン 2,470 3.0% 16,172 4.5% 153 16 ザクセン・アンハルト 2,690 3.3% 20,447 5.7% 132 (小計) 14,051 17.1% 107,679 30.2% 130 合計 82,029 100.0% 357,022 100.0% 230 (出典)Statistisches Jahrbuch 2000, StBAより作成
また、人口一人当り名目 GDP を東西ドイツ別に見るとその特徴が浮かび上がる。 旧西ドイツ 10 州の平均値が 49,763 マルクであるのに対して、旧東ドイツ 5 州の平 均値は 27,713 マルクとなっている。東側の一人当り名目 GDP は西側の 6 割にも満た ない状況である(図 2-1-3)。 ⅱ 市町村(Gemeinde) 州以下の地方自治組織である「Gemeide」が「市町村」と呼ばれる。市町村は 1999 年末時点で 13,854 ある。日本と比べるとおよそ 4 倍強の数があり、比較的小規模な ものが多い。 地方行政サービスの大半を提供するのがこの市町村である。ドイツ連邦共和国の 憲法である基本法(第 28 条第 2 項)では「市町村に対しては、法律の範囲内におい て、地域的共同体のすべての事項を自己の責任において規律する権利が保障されな ければならない」1とされており、市町村に対して、自治権が保障されている。 1 基本法の条文については、以降においても原則として、高田敏、初宿正典編訳「ドイツ憲法集」1997 年をもとにしている。 図2-1-3 州別一人当り名目GDP(1998年) (出典)Statistisches Jahrbuch 2000, StBAより作成 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000 100,000 シュ レスヴィッヒ ・ホル シュ タイ ン ハン ブルグ ニー ダー ザク セン ブレ ーメン ノル トライ ン・ヴィ ストフ ァー レン ヘッ セン ライ ンラン ト・ファ ルツ ザー ルラ ント バーデン ・ヴェ ルテ ンベ ルク バイ エル ン 旧西 ドイ ツ平 均 ベル リン メクレ ンブ ルク ・フォア ポンメ ルン ブラン デン ブルク ザク セン チュ ーリ ンゲ ン ザク セン ・アンハ ルト 旧東 ドイ ツ平 均 全体 (DM) 旧西ドイツ 旧東ドイツ
ⅲ 郡(Kreis) 市町村が行う行政サービスの中には、小規模ゆえに、一市町村で業務を行うこと が非効率となるものやその財政力を超えてしまうもの、また広域事業に関わるもの などがある。市町村よりも上位レベルで実施した方が効率的な事務については、市 町村の連合組織によって実施される。市町村連合にはいくつかの種類があるが、代 表的なものが「郡」である。郡は単に市町村の連合体としての性質を有するだけで なく、州の下級行政機関としての役割も持ち、市町村の監督なども行う。郡にも自 治権は認められているが、市町村に与えられているような全権限性(後述)は有し ていない。郡は独自の税源をほとんど持たず、州からの交付金や市町村からの納付 金、手数料等が主な歳入源となっている。 州法により各市町村は郡に所属することが定められているが、市町村の中でも人 口が比較的大きい都市は特別市(Kreisfreie Stadt)と呼ばれ、郡に所属せず、市 自体で郡の仕事も合わせ行う。特別市となる要件は各州により異なるが、概ね人口 10 万人以上とされる。1999 年末時点で郡は 440 あるが、117 の特別市を除けば、各 市町村はいずれかの郡に属していることになる。 財政統計上においては、郡は市町村の中に含まれる形で表示されるのが普通であ る。 ⅳ その他の市町村連合組織 (ⅰ)市町村小連合 郡よりも狭い領域において市町村がまとまって事務を行う連合組織がある。市 町村小連合または、狭域市町村連合と呼ばれる。市町村小連合を組織する各市町 村は通常、独自の行政官庁と職員を持たず、市長も名誉職的な存在となっている。 この場合、市町村は地区または集落として性格が強い。 市町村小連合は郡と市町村の間に置かれ、市町村の事務、例えば、予算出納事 務、住民登録・選挙事務などを共同実施する。 市町村小連合は各州に存在するわけではなく、また、存在している州において も呼び名は異なる。例えば、①アムト(Amt):シュレスヴィッヒ・ホルシュタイ
同体(Verwaltungsgemeinschaft):バイエルン州など、となっている。 (ⅱ)市町村大連合 逆に郡の領域を越えた大規模な市町村連合も一部の州において存在する。これ らは、市町村大連合または広域市町村連合と呼ばれる。市町村大連合では社会福 祉や地域開発に関わる事業を行う。バイエルン州の 7 つの県(Bezirke)やノルト ライン・ヴェストファーレン州の 2 つの地域連合(Landschaftverbände)などが代 表的なものである。 (ⅲ)目的組合 この他にも複数の市町村が特定事務を行うことを目的として結成される目的組 合(Zweckverband)がある。具体的には上下水道、ごみ処理、電気、近距離交通、 スポーツや音楽施設の維持管理などが行われる。これらは、関係市町村の協議に より設置されるのが通常であるが、特別の法律に基づいて設立される場合もある。 (b)行政組織とその長 ⅰ 州 州は住民によって選出された議員からなる州議会を持つ。州議会は州首相や各大 臣の認証に加え、州の立法を任務とする。議員の選出方法は連邦議会選挙に準じ、 基本的に小選挙区制である。通常、その任期は 4 年程度となっている。また議員の 選挙権、被選挙権は、18 歳以上のドイツ国民であり、当該州に一定期間居住するこ とが要件とされる。 州の長たる州首相は州議会からの間接選挙で選ばれるが、州は議院内閣制を採っ ており、議会で過半数の議席を獲得した政党の代表者が州の首相となる。過半数に 満たない場合は最大多数政党が他の政党と連立政権を形成することになる。
ⅱ 市町村1 市町村の組織形態は、各州の定める市町村法により定められているが、一般に次 のような 4 つのタイプに分けられる。 (ⅰ)北ドイツ評議会型 イギリスの占領下にあったニーダーザクセン州で行われている。市町村議会によ って、市町村の代表である市町村長が選ばれる。市町村長は同時に議会の議長も務 める。議会はこの市町村長とは別に、行政長を選出する。行政長は議会から委ねら れた行政事務を執行する。議会に比較的強い権限が認められているのが特徴である。 (ⅱ)南ドイツ評議会型 南ドイツのバーデン・ヴュルテンブルク州とバイエルン州、また、旧東ドイツの ブランデンブルク州、チューリンゲン州、ザクセン州で採用されている。市町村議 会議員、市町村長ともに直接住民より選出される。市町村長は行政の長として事務 を遂行し、また議会の議長も務める。市町村長が強い権限を持つことが特徴とされ る。 (ⅲ)参事会型 プロイセンの市町村制が起源となっており、シュレスヴィッヒ・ホルシュタイン 州の都市部(郡部は市長型)、ヘッセン州、ブレーメン州で行われている。議会から 合議制機関としての参事会が選ばれ、この参事会が議会の決定に従い行政を行う。 参事会は市町村長と各参事で構成される。 (ⅳ)市長型 フランスの占領下にあったライラント・ファルツ州とザールラント州、と旧東ドイ ツのメクレンブルク・フォアポンメルン州で行われている。住民から選出される議 会から市町村長が選ばれ、この市町村長が議会の議長と行政の長を務める。市町村 長は、議会から選ばれた助役の補佐のもと行政を指揮する。 こうした区分は近年変容しつつあり、特に市町村長を直接選挙する方向への動き が出ている2。 1 片木淳「地方分権の国 ドイツ」1988 年 P263-267、竹下譲「世界の地方自治制度」1999 年 P115-118、
なお、都市州であるベルリン、ブレーメン、そしてハンブルクは都市であると同 時に州であり、他の州と同様議院内閣制による州議会と州政府からなっている。 ② 国家機構と地方自治体との関わり (a)連邦参議院(Bundesrat)1 ⅰ 構成 連邦参議院は州が連邦の立法や行政に参加・協力するための機関である。連邦参議院 は、各州政府の代表から構成される。通常、州首相や州大臣、州次官の中から選ばれ る。さらに議員代理として、その他の州大臣、州次官が任命される。 各州の議席数は州人口に応じて配分されることになる。人口 700 万人以上の州では 6 名、600 万人以上の州では 5 名、200 万人以上の州では 4 名、それ以下は 3 名となっ ている。各州は議席数と同数の表決権を持っている。ただし、その表決権は州で一括 して行使しなくてはならない。つまり、ある州が 5 票の表決権を持っていた場合、3 票を賛成、2 票を反対に投ずるようなことはできない。連邦参議院の議員には任期が ないが、州議会選挙の結果に基づき、州政府によりその任免が行われる。 ⅱ 機能 連邦法の発案権は連邦政府、連邦議会、連邦参議院の三者に認められている。ただ し、多くの法律は連邦政府によって連邦議会に提案される。連邦予算を除けば2、政府 法案は最初に連邦参議院に送られなければならず、これに対して連邦参議院は賛否の 態度を明らかにし、修正を提案することができる。連邦政府はこの意見に対して文書 で見解を表明することとなる。こうして政府法案、連邦参議院の意見、そして政府見 解をもとに連邦議会で審議が始まる。審議を経て、議決された法案はここで再度連邦 参議院に回される。これに際して、回付された法律案が政府原案に対していかなる修 正が加えられているか、また、連邦参議院の意見を考慮したものとなっているかどう かが検討される。この結果、連邦議会の議決に異議がある場合には、連邦参議院は両 1 村上淳一/ハンス・ペーター・マルチュケ「ドイツ法入門」2000 年、石田光義「基本法と連邦諸機関」 大西健夫編『ドイツの政治』1992 年、片木淳「地方分権の国ドイツ」1988 年などによる。 2 連邦予算は予算法(Haushaltsgesetz)という法律として成立する。なお、予算法案の発案権は一般の 法案と異なり、連邦政府のみに与えられている。
院協議委員会の招集を要求することができる。委員会は両院からの同数の議員で構成 され、両者の意見を調整する。この委員会の調整案に対しても、不満が残る場合は、 連邦参議院は拒否権を発動することができる。以下に述べるような各州の利害に関わ る法律は連邦参議院の同意が必要なため、拒否権が発動されれば、その法律は不成立 となる。 連邦参議院の同意が必要とされる法律は基本法上で示されている。大きく分けて、 ①基本法の改正(基本法第 79 条第 2 項)。連邦参議院の三分の二以上の賛成が必要で ある。②州の財政に影響を及ぼす法律。例えば付加価値税の配分を定める法律(基本 法第 3、4 項)など。③州の行政権に関わるもの。連邦法律に基づいて州が行う委託行 政に関わる法律(基本法第 87c、d条)、連邦と州との共同事業(基本法第 91a 条)、 などとなっている1。 【参考】その他の連邦諸機関2 ①連邦議会(Bundestag) ドイツにおける国民代表議会は連邦議会である。連邦議会は政治的意思形成におい て中心的役割を演じている。議員は、普通・直接・自由・平等および秘密選挙によって 選ばれる(基本法第 38 条第 1 項)。具体的には、以下のような制度となっている。 有権者は 2 票の投票権を持つ。①このうち 1 票は、自己の選挙区における候補者に 投票する(小選挙区制)。これによって、議員定員のうち半数(328 名)の議員が確定 される。②もう一票は、政党名簿に投票する。この結果に従って、全議席(656 名) が各政党に配分される。③次に、②で決まった各政党の議席数のうち、①の小選挙区 で当選した人から議席が与えられ、残りの議席は名簿の順位によって決められる。こ のため実質的には比例代表制となっている。なお、議員の任期は 4 年である。 ②連邦大統領(Bundespräsident) 国 際 法 上 連 邦 を 代 表 す る 元 首 は 連 邦 大 統 領 で あ る 。 連 邦 大 統 領 は 連 邦 集 会 1 実際に、連邦法の約半数は、連邦参議院の同意を要する法律と言われる。 2
(Bundesversammlung)によって選出される。連邦集会は大統領を選出する目的でのみ召 集される。連邦集会はすべての連邦議会議員と各州議会から選出される同数の代議員 により構成される。州の代議員の中には議員でなくても、人格と功績を認められて指 名される場合もある。連邦大統領は、中立性を保障するため連邦および州政府にも、 また立法機関にも属さない。大統領の持つ権限としては、外国との条約締結権や連邦 首相の任命および連邦大臣の任免権、連邦裁判官、連邦公務員、軍人の任免権や恩赦 権などを持つ。ただし、その権限は弱く、形式的なものに留まっている。 ③連邦首相(Bundeskanzler) 連邦首相は連邦大統領の提案にもとづき、連邦議会で選出される。この際、議会で 過半数の票を得たものが、連邦大統領によって、首相として任命される。組閣権を持 つのは連邦首相だけであり、首相は大臣の人事案を作成し、連邦大統領にその任命を 提案する。首相は大臣の数およびその所掌範囲を決定するとともに、閣議での議長も 務める。首相は基本政治方針を決定するが、各大臣はこの政治方針に従って、所管事 務を自己の責任で指揮していく。このように現在のドイツにおいては連邦大統領に比 べ、連邦首相の立場は非常に強いものとなっている。 ④連邦憲法裁判所(Bundesverfassungsgericht) 連邦憲法裁判所は基本法の遵守を監視する機関であり、他のすべての機関から独立 した連邦の裁判所である。第二次世界大戦後、基本法(第 92 条以下)に基づいて創設 された。 連邦憲法裁判所は 2 部制(基本権部・国法部)で、各部には 8 名の裁判官がいる。 裁判官は多くの場合、他の連邦裁判所の裁判官または大学教授の出身で、連邦議会と 連邦参議院により半数づつ選ばれる。任期は 12 年(ただし、68 歳になると任期中で も定年)で、再選は認められない。 連邦憲法裁判所が判断を下すことができるものとして主に以下のようなものがある。 ・ 抽象的違憲審査:連邦法や州法が基本法と一致しているか、また、州法が連邦法 と一致しているかについて、具体的な権利侵害がなくても連邦憲法裁判所は判断 を下すことができる。抽象的違憲審査は連邦政府、州政府、連邦議会議員の 3 分
の 1 以上の申し立てに基づいて行われる。 ・ 具体的違憲審査:連邦憲法裁判所以外の裁判所は、具体的事件の決定に関わる法 律が違憲と判断されるときは、連邦憲法裁判所の判断を求めなければならない。 連邦憲法裁判所は訴訟については判断せず、憲法判断のみ行う。 ・ 憲法訴願:何人も法律や行政処分、判決などによって、自己の基本権等を侵害さ れたときは憲法異議を申し立てることができる。ただし、通常はその前に管轄裁 判所に訴えが認められなかった場合に限られている。 ・ 自治体の憲法訴願:市町村は、基本法第 28 条の自治権が侵害されたときに憲法異 議を申し立てることができ、それに対して連邦憲法裁判所は決定を下す。 連邦憲法裁判所はドイツの税・財政制度の変遷を見ていく上でも重要な意味を持つ。 というのも、過去幾度となく税や財政制度に関する憲法裁判が起きており、連邦憲法 裁判所の判断が下されている。実際、現行の制度においても、過去の判決が基礎とし て根付いているものも多い。州間財政調整制度にいたっては、連邦憲法裁判所より今 なお、見直しが迫られている。 (b)ドイツ都市会議等 すでに述べたとおり、州が連邦の立法過程に参加する制度として連邦参議院が存在 する。一方、地方における基本的な自治組織としての市町村が連邦や州に対して働き かける組織も存在する。ドイツ都市会議(Deutscher Städtetag)、ドイツ市町村連盟 (Deutscher Städte-und Gemeindetag)、ドイツ郡会議(Deutscher Kreistag)である1。 構成自治体はドイツ都市会議では、すべての特別市と比較的規模の大きい(郡に所属 する)市町村、ドイツ市町村連盟は郡に所属する市町村、ドイツ郡会議はすべての郡 となっている。 これらの組織は、連邦政府や連邦議会などの連邦諸機関に対して、また組織によっ ては州やEUに対して、市町村や郡の利益を表明する。同時に、構成員に対する情報 提供、また構成員同士の情報交換の場としての役割も担っている。 連邦は、法律作成の際、適宜こうした組織に打診して、市町村の利害を考慮するこ ととなっており、この打診に対して市町村は利害表明を行う。また、連邦レベルの審
議機関、例えば下記の財政計画委員会には、こうした組織の代表者がメンバーとして 加わり、影響力を行使している。 (c)財政計画委員会(Finanzplannungsrat)1 財政計画委員会は、連邦、州、市町村および市町村連合間における予算や財政計画 の調整を行う機関であり、1968 年の連邦と州の予算法の原則に関する法律(予算原則 法)に基づき設置された。そのメンバーは連邦大蔵大臣、各州の大蔵大臣、市町村・ 市町村連合の代表者からなる。議長は連邦大蔵大臣が務める。 財政計画委員会は、通常年 2 回(6 月と 11 月)に開催され、①景気の見方、②各々 の財政状況、③中期財政見通しなどについて協議を行ない、勧告を出している。 調整を行う機関とはいえ、基本法や諸州の憲法により、それぞれの財政的独立が保 障されているため限界があるとされる。 ③ 地方の所掌事務 (a)連邦と州の役割分担 ドイツは連邦制国家である。従って、一国家としての州に自立性と統治権が認めら れなければならない。基本法第 30 条でも「国家の権利の行使および国家の任務の遂行 は、この基本法が別段の定めをなさず、または、許していない限りにおいて、州のな すべき事柄である。」とされている。その一方で、連邦には、国家運営上、各州を超え た統一的な支配権も必要とされる。したがって、連邦と州間でいかに権限配分を行う かは大きな問題となり得る。ドイツにおいては、立法権の多くを連邦に与え、行政権 の多くを州に配分することで両者のバランスを図ろうとしている。 ⅰ 立法権の配分2 立法権は「専属的立法権」、「競合的立法権」、「大綱的立法権」の 3 つに区分され ている。 1 片木淳「地方分権の国ドイツ」1988 年 P177, 財団法人自治体国際化協会「統一ドイツと財政調整」 1994 年などによる。 2 連邦と州の間の立法権・行政権の配分に関する記述は主に、大西健夫編『ドイツの政治』1992 年によ る。
(ⅰ)専属的立法権(ausschließliche Gesetzgebung) 連邦は、外交、通貨および造幣制度、関税、通商条約などについて専属的立法権 を有している。これらについては、連邦だけが立法を許される。州は連邦法律によ って明示的に授権された場合のみ、立法権を行使できる。 (ⅱ)競合的立法権 (konkurrierende Gesetzgebung) 連邦と州の双方が立法権を持つことになる。ただし、州は連邦がその立法権を行 使しないあいだに限って立法権をもつというものである。州が先に立法していても、 連邦がその立法権を行使すれば、州の定めていた法律の効力は失われる。具体的に は、民法、刑法、戸籍制度、経済法、公的扶助、労働法、道路交通、税法などがあ る(基本法第 74 条、第 105 条第 2 項)。 連邦も連邦全体に統一的な規定が必要とされる場合以外には立法権を行使できな いが、事実上、上記のような分野における統一の必要性から、そのほとんどの分野 ですでに連邦が立法権を行使している。 (ⅲ)大綱的立法権 (Rahmen- Gesetzgebung) 連邦は例えば大学制度のような原則的な規定を定める権利が与えられている。そ の原則規定に基づき、州はその詳細について定めなくてはならない。大学制度のほ かには、州や市町村の公務員に関する規定や国土計画などがある。 連邦に与えられた立法以外の領域は、すべて州が専属的立法権を持つ。基本法第 70 条第 1 項では「州はこの基本法が連邦に立法の権限を付与していない限りにおい て、立法権を有する。」とされている。ただし、連邦の権限が広範囲に及ぶため、実 際には州の権限は限られている。州に与えられている領域は、州憲法制定権、地方 自治法、警察法、教育制度などとなっている。 ⅱ 行政権の配分 立法権に比べると、行政権の多くは州に配分されている。 (ⅰ)連邦の行政 連邦の専属的立法で制定された法律を連邦機関で自ら執行するものを連邦固有行
(ⅱ)州の行政 州固有の業務としては、①州が自ら立法した法律の執行に関わるもので、教育・ 文化行政、警察行政など、②州が連邦法律をその固有の事務として執行するもので、 産業経済分野、国土社会基盤分野、保健衛生などがある。 次に連邦からの委託行政として、共有税(所得税、法人税、付加価値税)等の徴 収、経費の半分以上を連邦が負担する金銭給付を伴う連邦法(住宅手当法など)の 実施、国防代役業務、高速道路管理などがある。 最後に共同事業がある。これは、連邦と各州が共同の枠組み計画を策定し、それ に基づき州が実施するものである。連邦による州への財政援助が認められている。 具体的には、地域経済構造改善、農業構造改善、大学拡張新設計画、教育計画、学 術援助である。 (参考 1)間接連邦行政システム ドイツにおける連邦が競合的立法権と大綱的立法権を行使して制定する連邦法律 の実施を各州がその固有の事務として担当する原理は、「間接連邦行政システム」と 呼ばれ、連邦法律の実施を原則として連邦固有の行政機関が担当するアメリカの「直 接連邦行政システム」と大きく異なっていると指摘されている1。 (参考 2)協調的連邦主義2 1949 年の基本法制定当初は、連邦と州との権限が厳格に区分されていたが、そ の後、連邦と州が国家的性格を保ちながらも、互いの連帯の強化する、いわゆる 「協調的連邦主義」へと進んだ。これは 1969 年の財政改革の中での共同事務の導 入に端的に現れている。こうした結果、連邦政府の州行政への干渉が制度化され、 集権化が進んだとされる。 1 縣公一郎「州及び市町村の行政機関」大西健夫編『ドイツの政治』1992 年 P83 による。 2 廣田全男「ドイツの地方分権」藤岡純一編『地域と自治体第 23 集 特集 海外の地方分権事情』1995 年 P50−52 などを参考とした。
(b)市町村の権限および事務 ⅰ 市町村に与えられた自治権 市町村は基本法第 28 条第 2 項において、地域的共同体のすべての事項を律する権 利が保障されている(いわゆる全権限性の原則)。市町村は全権限性の原則に基づい て、次のような権限を有するものとされる。地域共同体に関するすべての事務を市 町村自らの判断で規律できる権利や予算を執行し、財産を管理する権利、市町村の 行政組織を定める権利、また、公務員の採用、昇格、配置転換、および解雇する権 利、さらには、市町村がその地域の関係事項について、条例を制定する権利など、 である。 ⅱ 市町村事務 市町村事務は州憲法や各州の定める市町村法により左右されるため一様ではない が、市町村に残された裁量面、および地方自治体事務か国家的事務かによって、以 下のように分類できる1。 (ⅰ)委任事務 連邦および州の事務(国家的事務)を市町村が委託を受けて行うものである。こ の場合、市町村は 州の下級行政機関として、州からの詳細な指示のもと事務を行う。 州は、その財源措置を行わなければならない。具体的には、戸籍管理、パスポート、 国勢調査、保健所、連邦・州の選挙の実施など。 (ⅱ)指示を受ける義務的事務 市町村が行うべき事務で、州からの指示のもと行う事務であるが、市町村にも若 干の裁量の余地が残る。州はそれに見合う財源を交付しなければならない。例とし ては、公営住宅建設、住民登録、建築監督、交通規制など。 (ⅲ)義務的事務 市町村が法律(基本的には州法)でその事務の実施を義務付けられているもので ある。義務的事務は市町村固有の事務であり、事務の具体的な実施方法は市町村の 裁量に任されている。義務的事務の例としては、道路建設、上下水道、ごみ処理、 消防、学校建設などがある。
(ⅳ)任意的事務
任意的事務は州によってその内容を規制されることはない。市町村の判断によっ て実施する事務のことである。市町村は、この事務について条例を定めることがで きる。州は市町村事務の法的適合性のみをチェックするにとどまる。任意的事務の 例として、劇場、博物館などの文化関連、スポーツ施設、公営企業経営などがある。
(2)地方の財政状況等 ①連邦、州、市町村の財政比較 (a)GDPに占める公的部門の割合 ドイツにおける政府歳出の対GDP比は 26.4%(SNAベース、1997 年)と、日本と 概ね同じ水準にある(図 2-2-1)1 。連邦、州、市町村で分けてみると、それぞれ、9.5%、 10.5%、6.3%となっており、州が最も歳出規模が大きく、次いで連邦、市町村の順と なっている。 また、移転移出を除くベースでは、GDPに占める割合は 13.8%となる(図 2-2-2)。 これを最終消費支出と総固定資本形成に分けると、最終消費支出は 11.8%(連邦 2.2%、 州 6.1%、市町村 3.5%)、総固定資本形成は 2.0%(連邦 0.3%、州 0.4%、市町村 1.3%) となっており、総固定資本形成は日本の 1/3 の水準である。 図2-2-1 政府歳出(移転支出も含む)の対GDP比 36.1% 39.9% 24.0% (注1)ドイツ:1997年、日本:1998年度 (注2)政府部門間移転は除く (出典)国民経済計算年報 平成12年版、OECD National Accounts 1999 より作成 国 9.3% 地方 15.4% 連邦 9.5% 州 10.5% 市町村6.3% 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% ドイツ (26.4%) 日本 (24.8%) 対GDP比
(b)税収規模 1997 年のドイツにおける税収の対国民所得比(租税負担率)は 29.2%であり、日本 に比べると大きくなっている1(図 2-2-3)。これを連邦、州、市町村に分けると、連 邦税は 14.8%、州税は 10.7%、市町村税は 3.7%となる。 1 国民負担率はドイツが 55.9%(1997 年)、日本は 36.9%(2001 年度)。 2.4% 1.1% 7.6% 4.9% 2.2% 0.3% 6.1% 0.4% 3.5% 1.3% 0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0% 12.0% 14.0% 16.0% 18.0% 最終消費支出 総固定資本形成 ドイツ (13.8%) 日本 (16.0%) 連邦(2.4%) 地方(12.5%) 国(3.5%) 市町村(4.8%) 州(6.5%) (注)ドイツ:1997年、日本:1998年度 (出典)国民経済計算年報H12、OECD National Accounts 1999より作成 図2-2-2 GDPに占める政府部門の割合 図2-2-3 租税負担率 (注)ドイツは1997年、日本は2001年度(見込み)
(出典)OECD Revenue Statistics, National Accounts 等により作成
国税 13.4% 地方税 9.2% 連邦税 14.8% 州税 10.7% 市町村税 3.7% 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% ドイツ (29.2%) 日本 (22.6%)
また、その税収を大きく個人所得課税、企業所得課税、資産課税、消費課税、その 他に分類すると(1998 年)、連邦税では、消費課税のウエイトが 58%と高く、次いで 個人所得課税が 36%となっており、この 2 種類で大半を占める(図 2-2-4)。州税は消 費課税が 45%、個人所得課税が 43%と同程度になっている。市町村税は、個人所得課 税が 63%を占め、次に企業所得課税が 16%、資産課税が 15%となっており、連邦や 州と比べると消費課税のウエイトが小さく、その代わり、個人所得課税、企業所得課 税、資産課税のウエイトが大きくなっている。 図2-2-4 租税の分類 企業所得課税 6% 個人所得課税 36% 消費課税 58% ① 連邦税の分類(1998年) 資産課税 5% 消費課税 45% 個人所得課税 43% 企業所得課税 7% ② 州税の分類(1998年) 企業所得課税 16% 個人所得課税 63% 消費課税 6% 資産課税 15% ③ 市町村税の分類(1998年)
(c)公債残高等 1998 年の財政収支のGDP比はそれぞれ連邦▲1.5%、州▲0.7%、市町村は+0.1% となっている(図 2-2-5)。州と市町村の動きをみると、近年赤字の縮小傾向が見られ、 特に市町村においては 1998 年において財政収支のGDP比はわずかではあるが黒字化 している。 債務残高のGDP比は連邦が 25.2%、州は 16.3%、市町村は 4.4%となっている(図 2-2-6)。市町村は低位安定しているが、連邦および州は緩やかながらも悪化傾向にあ る。 図2-2-5 財政収支のGDP比 (出典)Finanzbericht, BMFなどにより作成 図2-2-6 債務残高のGDP比 (出典)Finanzbericht, BMFなどにより作成 -2.5 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 93 94 95 96 97 98 連邦 州 市町村 (%) 0 5 10 15 20 25 30 93 94 95 96 97 98 連邦 州 市町村 (%)
(d)公務員数 ドイツの公務員数は 446 万人(1998 年 6 月末)となっており、就業者に占める割合は 12%となっている。 連邦の公務員数は 52 万人であるが、州は 236 万人、市町村は 158 万人と州公務員が 半数以上を占めている(図 2-2-7)。州は教職員や警察官を抱えていることなどもって、 連邦や市町村よりも公務員数が多くなっている。また、連邦は防衛関係(33 万人)が 多く、連邦公務員数の 6 割を占めている。一方、市町村は連邦や州に比べ、偏りが小 さく、幅広く行政サービスを行っていることが窺える(図 2-2-8)。 (注)連邦の一般行政のうち防衛関係は71%。 (出典)StBAホームページより作成 市町村 158万人 州 236万人 連邦 52万人 図2-2-7 連邦、州、市町村の公務員数(1998年6月末) (注)連邦には防衛関係(33万人)が含まれる。 0% 20% 40% 60% 80% 100% 市町村 州 連邦 一般行政 教育・科学・研究 社会保障 健康・スポーツ 住宅・地域政策等 その他 図2-2-8 公務員数内訳(1998年6月末)
②州の歳出・歳入構成 州の歳出総額(1998 年、5479 億マルク1)のうち大きなものは、市町村などに対する 交付金・補助金等で歳出の 36.7%を占める2(図 2-2-9)。また、人件費も 32.6%と大き なウエイトを占めている。これは教員や警察官が州の公務員となっているからである。 その他には、不動産維持管理費や光熱費、備品購入費からなる物件費が 8.2%を占め、 債務に関わる利払費は 6.7%となっている。また、元本償還費は歳出の 13.0%を占める。 歳入総額(1998 年、5432 億マルク)のうち 58.2%は税収により賄われている。また、 起債収入は 17.5%を占める。連邦からの交付金・補助金は歳入の 12.1%を占め、うち一 般交付金は 4.7%、特定補助金は 7.4%となっている。なお、一般交付金は連邦補充交付 金を、特定補助金は共同事業、投資のための財政援助、金銭給付を伴う連邦法によるも のの合計とした3。 歳入計(ただし、起債収入除く)から歳出計(ただし、元本償還費を除く)を差し引 くと財政収支(Finanzierungssaldo)が算出され、1998 年においては 281 億マルクの赤 字となっている(対GDP比で▲0.7%)。 ③市町村の歳出・歳入構成 1998 年における市町村の歳出(1998 年)は 2938 億マルクとなっており、交付金・補助 金等が 31.1%となっている(図 2-2-10)。市町村において交付金・補助金の額が大きいの は社会給付費も含まれるためである。次いで、人件費が 25.9%となっている。また、建 設投資等が 477 億マルクと歳出の 16.2%を占めているのが特徴である。金額ベースでも 連邦の 135 億マルク、州の 152 億マルクに比べて大きく、公共投資が市町村を中心に行 われている姿が窺える。 歳入(1998 年)は 3002 億マルクで、そのうち税収が占める割合は 31.6%と、州に比べ、 その水準は低いものとなっている。州からの交付金・補助金は 30.2%と税収とほぼ同水 準である。交付金を一般交付金と特定補助金に分けると、それぞれ、17.7%、12.5%と なっており、一般交付金のウエイトがやや大きい。また、起債収入は 5.9%となってい 1 ドイツにおいては、歳出、歳入ともに特別財源措置と呼ばれる起債収入や元本償還費等を除く形で表記 されることが多いが、ここでは起債収入および元本償還費を歳入および歳出にそれぞれ加えている。 2 経常・資本勘定別の歳入・歳出内訳は付表 2-6 参照。 3 それぞれの概要については(4)交付金・補助金制度を参照。
る。 財政収支(1998 年)は 49 億マルクの黒字となっている(対GDP比で+0.1%)。 図2-2-9 州の歳出・歳入構成 (出典)Finanzbericht 2000, BMF等により作成 一般交付金 4.7% 特定補助金 7.4% 起債収入 17.5% その他 12.2% 税収 58.2% ②歳入構成 【総額:5432億マルク】 (注)一般交付金は連邦補充交付金額、特定補助金は共同事業、投資のための財政援助、 金銭給付を伴う連邦法によるものの合計とした。 物件費 8.2% 利払費 6.7% 建設投資等 2.8% 元本償還費 13.0% 交付金・補助金等 36.7% 人件費 32.6% ①歳出構成 【総額:5479億マルク】
図2-2-10 市町村の歳出・歳入構成 一般交付金 17.7% 特定補助金 12.5% 起債収入 5.9% その他 32.3% 税収 31.6% ②歳入構成 【総額:3002億マルク】 (出典)Finanzbericht 2000,BMF により作成 物件費 17.5% 利払費 3.7% 交付金・補助金等 31.1% 建設投資等 16.2% 元本償還費 5.6% 人件費 25.9% ①歳出構成 【総額:2938億マルク】
(3)地方税制度 ①ドイツ税制の特徴 (a)税収の状況 州の税収(1998 年)は、歳入の 58%を占めており、その 82%は共有税からの配分 である。共有税以外の州の税収としては自動車税(税収に占める割合:5%)、不動産 取得税(同 3%)、相続税(同 2%)、ビール税(同 0.5%)などとなっており、税収と しては大きいものではない(表 2-3-1)。 市町村の税収が歳入に占める割合(1998 年)は 32%となっている。税収の内訳を見 ると、共有税が 45%を占め、残りは営業税(38%)、不動産税(15%)で大半を占める ことになる(いずれも物税1とされる)。また、犬税などの地域的個別税の税収は 1% 程度を占めるに過ぎない。 (b)共有税制度 ドイツの租税は、共有税、連邦税、州税、市町村税に分類できる。このうち連邦税、 州税、市町村税は各行政機関に固有の税であるが、共有税(Gemeinschaftsteuer)は、 その税収が予め決められた比率で連邦、州、市町村にそれぞれ配分される。ドイツの 1 直接税のうち、特定の財産や収益に着目して、課税が行なわれる租税のこと。所得や財産の帰属する人 表2-3-1 州および市町村の税収内訳(1998年) 州の税収 金額 シェア 市町村の税収 金額 シェア (10億DM) (%) (10億DM) (%) 州税 37.3 11.7% 市町村税 58.0 55.2% 自動車税 15.2 4.8% 営業税(連邦・州への納付後) 40.2 38.3% 不動産取得税 10.8 3.4% 不動産税 16.2 15.4% 相続税 4.8 1.5% 地域的個別税 1.2 1.1% ビール税 1.7 0.5% その他 0.3 0.3% その他 3.2 1.0% 共有税からの配分 47.1 44.8% 共有税からの配分 260.9 81.9% 所得税 41.8 39.8% 所得税・法人税 149.2 46.8% 付加価値税 5.3 5.0% 付加価値税 111.7 35.1% 合計 105.1 100.0% 営業税からの配分 7.9 2.5% 鉱油税の配分 12.4 3.9% 合計 318.5 100.0%
税制の特徴はこの共有税が全税収の 73%(1999 年)を占めるところにある。 ⅰ 共有税の配分割合 基本法では所得税、法人税および付加価値税の税収は、連邦と州に共同に帰属する と規定されており、これら 3 税目を共有税としている。また、所得税と付加価値税の 一部は市町村にも配分されることとなっている。これらの税は一括されたあとに、一 定の比率で配分されるのではなく、それぞれの税で異なった比率で各行政レベルに配 分される。この配分割合は、所得税の場合、連邦に 42.5%、州に 42.5%、市町村に 15.0%となっているが、法人税については連邦と州だけで分け合い、ともに 50%ずつ となっている。付加価値税の配分割合(2000 年)は連邦 52.0%、州 45.9%、市町村 2.1%となっている1。 ⅱ 共有税の水平的配分 連邦と州(または市町村)の間での配分が決まると、次は、それをどのように州間 (または市町村間)で分け合うかが問題となる。共有税のうち、所得税および法人税 は、地域収入原則(徴税地基準)に従い各州に配分されるが、付加価値税は、地域収 入原則ではなく、人口基準と財政力基準をもとに各州へ配分されている2。このような 差異が生じた理由の一つには、付加価値税を地域収入の原則で配分することの実際上 の問題がある。特に輸入付加価値税においては、その管理は連邦の財務官庁が行って おり、州の財務官庁が関与していないため、地域収入の原則に基づいて配分すること は困難である。もう一つに、所得税、法人税における州の財政高権に配慮したことが 挙げられる。付加価値税は歴史的に連邦税との認識が強かったのに対して、所得税お よび法人税は歴史的に州に帰属していたことがあり、それゆえ州への配慮を示し、地 域収入の原則を採ったとされる。付加価値税においては、財政調整機能を有するため、 1 付加価値税の配分比率がこのような数字となっているのは、具体的には次のような計算による。①連 邦に 5.63%が配分され、②その残りの部分から 2.2%が市町村へ配分され、③さらにその残りを連邦が 50.25%、州が 49.75%で分け合う。連邦が予め配分される 5.63%部分は年金保険への助成金の増額に対 する補償措置である。市町村への 2.2%の配分は市町村税であった営業資本税の廃止に伴うものである。 2 以下の記述は、伊東弘文「連邦・州間財政調整をめぐる憲法紛争の発生と解決」原田溥、津守常弘編 『現代西ドイツの企業経営と公共政策』1989 年、伊東弘文「現代ドイツ地方財政論」1995 年による。
詳しくは後述することとし、以下では所得税、法人税の州間での配分方法に触れてお く。 <所得税、法人税の水平的配分> 所得税および法人税の州間での配分は、上述のとおり、地域収入原則に基づいて配 分される。すなわち、州税務署で徴収した金額に応じて、各州に配分されることにな る。ただし、以下のような場合は調整が行われる。 例えば、ある企業が本社とは別に営業所を持ち、それらを通じ複数の州で営業して いるような場合である。このようなときは、企業が本社所在地で納税した賃金税1は、 そこから従業員の居住地に応じて各州へ再配分されることになる。法人税の場合は、 本社所在地の州に収められた後、各営業所の存在する州に再配分する手続きがとられ る。 また、所得税の市町村取得分は、こうした方法とは異なり人口比例に近い形で配分 される。まず、市町村に配分されるべき所得税(全体の 15%部分)は、まず、地域収 入の原則に従って、各々の州に配分される。次に、州は、各納税者が支払った所得税 のうち課税所得が 40,000 マルク以下の部分を合計し、そのウエイトに応じて、各市町 村に所得税を配分する。納税者の多くは 40,000 マルク以上の所得を持つため、こうし た配分方法は、人口比例で市町村に配分した場合と大きな差はなくなる2。 (c)租税に関わる権限配分 租税に関する権限配分は基本法により示されている。その権限は収益権、立法権、 行政権の 3 種類がある。収益権は、その税収を受け取る権利を示し、立法権は、租税 の立法に関わる権利を示す。行政権は、その税の徴収・管理を行う権利を示す(表 2-3-2)。 ⅰ 収益権 (Ertragskompetenz) 税の帰属は基本法第 106 条の各項において示されている。具体的に、共有税を除
いて、連邦に属するものとしては、関税、タバコ税、鉱油税、保険税などがある。 同様に州に属するものとして、相続・贈与税、自動車税、ビール税、不動産取得税1な どがあり、市町村に帰属するものとして、営業税、不動産税、地域的個別税がある。 ドイツにおいては、収益権の帰属先と以下に述べる立法権の帰属先とが大いに異 なる。例えば、自動車税について、税収は州に帰属するが、立法は連邦となる。一 般に、各税は共有税を除けば、連邦税、州税、市町村税といった分類が可能である が、この分類は収益権の帰属先に合わせたものである。 1 不動産取得税は原則的に州に帰属するものであるが、州はその税収の全部または一部を市町村に移譲す ることも可能となっている。 表2-3-2 租税に関する権限 立法権 収益権 行政権 鉱油税 連邦 連邦 連邦(税関) 蒸留酒税 連邦 連邦 連邦(税関) 発泡ぶどう酒税 連邦 連邦 連邦(税関) タバコ税 連邦 連邦 連邦(税関) 連帯付加税 連邦 連邦 州 保険税 連邦 連邦 州* 所得税 連邦 連邦/州(市町村関与) 州* 付加価値税 連邦 連邦/州(市町村関与) 州* 法人税 連邦 連邦/州 州* ビール税 連邦 州 連邦(税関) 相続・贈与税 連邦 州 州 防火税 連邦 州 州 不動産取得税 連邦 州 州 自動車税 連邦 州 州 競馬・スポーツ・宝くじ税 連邦 州 州 賭博場徴収金 連邦 州 州 営業税 連邦 市町村(連邦・州) 州/市町村 不動産税 連邦 市町村 州/市町村 飲料税 州 市町村 市町村 犬税 州 市町村 市町村 狩猟・漁業税 州 市町村 市町村 教会税 州 教会 州/教会 (注)*印は連邦からの委任
ⅱ 立法権 (Gesetzgebungskompetenz) (ⅰ)連邦の立法権限 連邦に与えられた立法権には、まず基本法第 105 条第 1 項による関税および専売 の専属的立法権がある。つまり、これらについては、連邦のみが立法権を有するこ とになる。さらに同第 2 項では、「連邦は、その他の租税の収入の全部または一部が 連邦に帰属する場合、または第 72 条第 2 項の要件が存する場合には、これらの租税 について、競合的立法権を有する」とされる。「収入の全部または一部が連邦に帰属 する」ものとして、連邦税や共有税が当てはまるが、さらに、続く「第 72 条第 2 項の要件が存する場合」の一文によって、州税、市町村税のほとんどについても連 邦が競合的立法権を持つことになる。基本法第 72 条第 2 項では、法的または経済的 統一の必要性がある場合には、連邦に競合的立法権を認めているのである。実際に、 飲料税や犬税などの地域的個別税を除けば、ほとんどの税について連邦が立法権を 行使している。 (ⅱ)州と市町村の立法権限 州税については連邦法で規定されている。税率等の自由度は与えられていない。 市町村税である地域的個別税については、州に立法権が与えられている(基本法 第 105 条第 2a項)。ただし、連邦法ですでに定められた税と同種のものではないこ とが要件とされる。地域的個別税には犬税や飲料税、別荘税などがある。通常、こ うした税については州法によって市町村に条例制定権を与えている。市町村は、一 般的にその税率、課税ベース、また、そもそもその税を導入するかどうかについて 決定することができ、また新税を導入することも可能である。通常、新税を導入す る場合は監督機関の承認が必要となっている。ただし、ヘッセン州などのように州 の承認は必要とされないところもある1。 市町村税である営業税や不動産税についての立法権は連邦に属するが、市町村に は、その税率設定権が付与されている。つまり、連邦法によって、その課税ベース や税額算出方法等は決められているが、税率のみ市町村が決めることができるので ある。両税ともに税率の幅についての制限は設けられておらず、市町村の裁量に任
されている。そのため、税率格差が存在する。営業税の州ごとの平均税率(賦課率) は最小で 293%、最大で 470%となっている1(表 2-3-3)。また、不動産税A(農林 業用)では最小で 150%、最大で 322%、不動産税B(一般用)は最小で 302%、最 大で 600%となっている。ただし、近隣の市町村間では、企業誘致の面などから競争 があるため、税率はあまりかけ離れたものにはならない傾向にあるとされる。 なお、基本法上においても「自治権の保障は財政上の自己責任の原則を含む。こ の原則は、経済力に関連する税目の税率決定権が市町村に保障されることを含む(基 本法第 28 条第 2 項)」と市町村の税率の自由度を認めている。 立法権は上述のとおり、連邦に集中している。ただし、税収の全部または一部が 州や市町村のものとなる税の立法には連邦参議院の同意が必要となることから(基 本法第 105 条第 3 項)、州は連邦参議院を通じて、連邦の立法過程に関与することに なる。 1 営業税の課税ベースは原則として営業利益の 5%、不動産税の課税ベースは不動産評価額の 0.35%(一 般用)となっている。 表2-3-3 営業税および不動産税の州別平均賦課率(1998年) (単位:%) 営業税 不動産税A 不動産税B バーデン・ヴュルテンベルク 360 320 335 バイエルン 379 322 332 ヘッセン 414 262 330 ニーダーザクセン 370 311 355 ノルトライン・ヴェストファーレン 423 201 400 ラインラント・ファルツ 372 271 319 ザールラント 425 242 331 シュレスヴィッヒ・ホルシュタイン 343 248 302 ブレーメン 416 248 530 ハンブルク 470 225 490 ベルリン 390 150 600 ブランデンブルク 293 225 338 メクレンブルク・フォアポンメルン 324 231 339 ザクセン 403 272 377 ザクセン・アンハルト 346 265 345 チューリンゲン 343 225 320 全体 390 275 366 (出典)Statistisches Jahrbuch 2000, StBA
(参考)包装税の違憲判決1 ヘッセン州カッセル市は 1992 年 7 月 1 日から使い捨て包装材に対して、包装税を課 した。包装材の納税義務者は最終販売者で、飲食物を販売した時点で納税義務が生じ る。 しかし、包装税が導入されると、カッセル市内のファーストフードチェーン事業者 と自動販売機の設置業者が包装税条例は違法であるとして訴えを起こした。 それに対し、連邦憲法裁判所は 98 年の 5 月の判決において、包装税条例は無効であ るとの判決を下した。その理由は、連邦がすでに定めていた廃棄物法のコンセプトに 包装税が矛盾しており、市町村の権限行使の範囲を超えるもの、としたのである。 連邦の廃棄物法は、「目標の具体化とそれに適した手段の選択は、専門知識かつ利害 関係を有する全ての関係者に委ねている」とし、「国家的義務や禁止の規定よりも、で きるかぎり関係者による協力の下で廃棄物の抑制を図るべき」という考え方に基づい たものである。 しかし、包装税は、他に妥当な手段があるかどうかを検証することなく、特定の行 為(使い捨て包装材の使用をやめること等)を誘導するものであること、個人的な解 決策により、集団責任の遂行をなおざりにする動機を与えること、また、限定された 対象者(包装材の最終販売者と消費者のみ)を対象としていることなどの理由から、 違憲との判断が下されたのであった。 他の市でも、すでに同様の税や課徴金が導入されていたが、カッセル市での違憲判 決をもとにそれらの税も廃止されることとなった。 ⅲ 行政権 (Verwaltungskompetenz) (ⅰ)行政権の配分 基本法第 108 条に定められた税務に関わる行政権は州のウエイトが高い。ドイツ における基礎的な考え方である、立法権は連邦へ、行政権は州へ、といった権限配 分方法は、租税においても確認できる。 1 以下の記述は、室田哲夫「ドイツにおける企業課税と環境課税をめぐる最近の動きについて」地方財務
連邦で扱うものは、関税、その他個別間接税(連邦税)、輸入付加価値税等である。 州で扱うものは、基本的には、それ以外ということになる(基本法第 108 条第 2 項)。具体的には、州固有の事務として、州税1と市町村税の徴税を行う。市町村の みに帰属する税については、州は市町村にその管理を委託することも可能である(基 本法第 108 条第 4 項)。その他に、州は連邦からの委託事務として、共有税(輸入付 加価値税を除く)と保険税、連帯付加税の徴収も行っている。 市町村が扱う税は、州が市町村に委任した市町村税ということになる。市町村に おける担当部署がこれらの税の徴収を行う。 (ⅱ)税務行政の組織2 税務行政上の組織としては、連邦と州に最高官庁として、それぞれ大蔵省が存在 している。その下には、連邦と州の共通の機関である上級財務管理局(Oberfinanz- direktion)がある。その局長は連邦大蔵大臣と州大蔵大臣が指名し、連邦政府と州 政府から承認され、連邦大統領と州首相とによって任免される。すなわち局長は連 邦の公務員であると同時に州の公務員でもある。 上級財務管理局は連邦部門と州部門に分かれている。それぞれの下には関税や個 別間接税などを扱う税関(Zollämter)と、州税や共有税などを徴収する税務署 (Finanzämter)が存在する。 ②主な税の概要3 (a)共有税 ⅰ 所得税 (Einkommensteuer) ドイツに居住する人はその国籍に関わらず、所得税が課せられる。居住とは通常 6 ヶ月以上継続的に滞在する場合を指す。課税対象は国内外の全所得である。また、 非居住者であっても、ドイツ国内を源泉とする所得や資本利得について課税される。 1 ただし、連邦が徴収するビール税は除く。 2 尾崎護「G7の税制」1993 年、伊東弘文「財政・租税制度」大西健夫編『ドイツの政治』1992 年によ る。 3 各税の内容については、監査法人トーマツ「EU加盟国の税法」1997年、European Commission「Inventory of taxes — Levied in the Member States of the European Union 17th edition」などを参考とした。
所得税は累進税率となっており、最低税率は 19.9%、最高税率は 48.5%で、ゼロ 税率適用最高限度額は 14093 マルクである(2001 年)。税制改革により現在、税率 の引き下げ等が進んでおり、2005 年にかけて段階的に最低税率(15.0%)、最高税 率(42%)の引き下げとゼロ税率適用限度額の増額(15000 マルク)が行われてい る。 (参考)賃金税(Lohnsteuer) 給与所得者の所得税は、雇用者によって給与支払時に源泉徴収されるかたちで納 付される。これが賃金税である。そして、税務年度終了後に年間の所得税申告を行 う。すなわち、賃金税は所得税の前払い分としての性格を持ち、年末調整あるいは 所得税申告によって、過払い、または不足額が調整されることになる。 ⅱ 法人税 (Körperschaftsteuer) ドイツの法律により設立された法人および経営管理の中心がドイツである法人は 居住法人となる。居住法人は全世界所得に対して法人税が課税される。非居住法人 は特定の国内源泉所得、資本所得に対して課税される。居住法人については、留保 利益の 40%、配当利益の 30%の税率が適用されていたが、税制改正によって、2001 年より一律 25%へ引き下げられた。 ⅲ 付加価値税 (Umsatzsteuer) 人的課税対象はすべての事業者で、自由業者や輸入業者も含まれる。また、非居 住者であってもドイツ国内で財やサービスを提供するものは事業者と見なされる。 事業者は国内で行われる財とサービスの提供に対して課税される。ただし、金融 取引、不動産取引、保険、輸出などは非課税である。一般税率は 16%で、食料品や 書籍などは軽減税率の 7%が適用される。 (b)連邦税 連邦税のうち主なものについては以下のとおりとなっている。
売価格の 21.96%となっている。納税義務者は製造者または輸入者。 ⅱ 保険税 (Versicherungsteuer) 保険会社が受け取った保険料に対して課される(生命保険・健康保険を除く)。リ スクがドイツ国内に存在するものに対して課される。標準税率は保険料の 15%。 ⅲ コーヒー税 (Kaffeesteuer) 生コーヒー(豆)、コーヒーエキス等の製造・輸入に対して課せられる。 ⅳ 鉱油税 (Mineralölsteuer) 動力用燃料、暖房用燃料および潤滑油としての石油等に課せられる。 ⅴ 連帯付加税(Solidaritätszuschlag) 旧東ドイツ復興支援を目的として導入された。所得税額・法人税額の 5.5%が連 帯付加税として徴収される。 (c)州税 ⅰ 自動車税 (Kraftfahrzeugsteuer) 自動車税は、自動車の所有に対して課される。納税義務者は自動車の保有者であ る。乗用車であれば、ガソリン車、ディーゼル車別に、排出ガス基準の達成度合い に応じて異なる税率が適用される。路線バスに対する課税免除、電気自動車に関わ る特例などがある。 ⅱ 相続・贈与税 (Erbschaft‐und Schenkungsteuer) 相続税は、相続によって得られた財産に対して課せられる。贈与税は相続税の補 完として、相続税を免れるために生前贈与を防止する税制である。相続税および贈 与税は通常同様の扱いで同じ税率が課される。税率は 7%∼50%となっており、受 益者との血縁関係および資産価値により、税率は異なる。
ⅲ 不動産取得税 (Grunderwerbsteuer)
不動産取得税はドイツ国内における不動産(証書)を取得したときに課税される。 契約時の価格が課税標準となり、税率は 3.5%である。通常は不動産取得税に関わ る不動産取引においては付加価値税は免除される。
ⅳ 競馬、宝くじ税(Rennwett- und Lotteriesteuer)
競馬税は競馬の主催者に対して課される。宝くじ税は公営の宝くじ組織に課され る。税率は掛け金の 16.2/3%である。 ⅴ 賭博場課徴金(Spielbankabgabe) 公営カジノの営業に対して課せられる。通常粗利益の 80%が徴収される。 ⅵ ビール税 (Biersteuer) 1 プラトー(ビールの麦汁エキスの基本濃度)に 1.54 マルク(100 リットルにつ き)が課され、納税義務者は製造者または輸入者となる。 ⅶ 教会税 (Kirchensteuer) 教会税を徴収することのできる教会の活動費用に充てられる。教会の所属員であ れば、教会自身または州の税務官庁を通じて、所得税をベースに、その 8%または 9% の教会税が徴収される。 (参考)財産税(Vermögensteuer)の執行停止 1995 年 8 月連邦憲法裁判所は統一価格について、基本法に定める平等原則に反し、 違憲との判決を下した1。これに伴い州税として徴収されていた財産税が、1997 年 より執行停止されている。 財産税は個人及び法人の全資産から負債を控除した純資産に対して課されるもの である。資産の評価にあたっては、土地や家屋に間する統一的な算定基礎である統 一価格(Einheitswert)が使われていた。この統一価格は 1964 年に創設され、1974