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Taro-第248号

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Academic year: 2021

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企業・産業動向レポート

= 2015年4月1日~30日の報道内容 =

Ⅰ.各分会所属企業、関連企業・関連地域の状況

◎東北各造船所関連 ◆国交省、石巻市の造船事業者復興へ補助金交付 国土交通省は27日、東日本大震災で被災した中小造船事業者 を支援する補助金の交付を決定したと発表した。宮城県石巻市の聖人堀鐡工所(阿部幸一社長)に対し、14億9,000万 円(総事業費22億4,000万円)を交付することを決めた。国交省は「造船業等復興支援事業費補助金」の制度を2013年 度予算で創設。補助金の基金約160億円を設置し、補助金業務を行う機関として日本財団を選定。同財団が13年8月か ら事業者による交付の申請を受け付けてきた。補助金交付の申請受付は今年3月末で終了している。今回の補助対象 事業者である聖人堀鐡工所は、同じく補助対象事業者である玉木造船化工を吸収合併した上で、石巻市から買い上げ る敷地に工場などを移転、新設する。事業実施期間は今年5月から17年3月。 ◆三菱重工、横浜金沢工場から撤退 ≪エンジンやタービン他工場へ移管、年度内≫三菱重工業が、横浜市の金沢地 区での生産事業から撤退する。23日に生産再編計画を発表した。金沢工場の定置用エンジンの生産事業は相模原製作 所に移管する。関連会社を通じて手掛けるタービンとボイラーの生産は、国内外の拠点に移す。来年3月までに移管を 完了する予定。工場跡地の利用法は未定。製品ごとに拠点を集約、最適化することで競争力を高める。横浜では本牧工 場で船舶修繕事業を手掛けているが、今回の発表は金沢工場のみの生産再編プランとなる。金沢地区では、三菱日立 パワーシステムズ(MHPS)を通じ、火力発電システム機器として中小型の蒸気タービンやボイラーを生産している。価格 競争の激化を背景に、海外生産を中心にした体制に転換する方針。タービンは中国のライセンス供与先に、ボイラーはM HPSフィリピン工場に、それぞれ生産の主体を移す。三菱重工として金沢工場で手掛けている発電向け定置用エンジン の製造は、相模原製作所に移管する。相模原にエンジン事業を集約して人員や設備を一体運営することで、需要が拡 大している分散型電源への機動的な対応を強化する。金沢地区の技術統括本部総合研究所などの研究開発人員と設 備は、関連製品事業の移管に連動して異動・集約する。金沢工場の今後の活用については、横浜市などと協議しながら 検討するという。三菱重工の横浜での歴史は、1891年に「横浜船渠」として現在のみなとみらい地区で船舶修理を手掛 けたことに始まる。その後に新造船や機械に進出し、1966年には本牧工場も新設した。だが、80年に新造船から撤退。 横浜みなとみらい21の開発を背景に、新たに金沢工場を建設して、1982-83年に金沢工場と本牧工場にそれぞれ機能 を移管した。本牧工場はLNG船をはじめとした船舶修繕拠点となり、金沢工場は発電関連や環境関連の装置の事業拠 点として運営してきた。 ◆三菱重、横浜の工場閉鎖へ【朝日新聞/4.24】 三菱重工業は、発電用の機器をつくる横浜市金沢区の工場を2016 年3月末に閉鎖する。生産を人件費の安い海外に移し、新興国などで売りやすくする。従業員約360人は配置転換する。 面積は東京ドーム7個分の約33万平方㍍で、今後の使い道は横浜市と協議する。23日、発表した。中小型の火力発電設 備は中国や韓国のメーカーとの価格競争が激しく、コスト削減のため国内生産を続けるのは難しいと判断した。 ◆三菱重工 横浜・金沢工場閉鎖【日刊工業新聞/4.24】 ≪拠点集約 国際競争力を向上≫三菱重工業は横浜製作所 ・金沢工場(横浜市金沢区)を閉鎖する。同一敷地内の三菱日立パワーシステムズ(MHPS)横浜工場(金沢地区)も生産 を打ち切る。同地域では産業用火力発電システム機器や定置用エンジンなどを手がけてきたが、2015年度末までに国 内外の他工場に全製品・機能を移管する。今後の活用については横浜市などと協議して決める。合計359人の従業員は 配置転換する。製造拠点を集約し、国際競争力を高める狙い。三菱重工とMHPSは23日、横浜・金沢地区の事業を国内外 拠点に移管すると発表した。同工場・地区は82年に稼働。敷地面積は約33万平方㍍。操業は年40万時間程度だったと いう。中・小型火力発電システムやエンジン、環境装置などを手がけてきたが、コスト競争力を維持するのが困難になっ た。すでに横浜製作所では陸上風車の生産も終息している。修繕船事業などを手がける本牧工場(横浜市中区)は維持 する。今後、MHPSが所掌する産業用火力発電システム機器については中・小型蒸気タービンをライセンス供与先の中国 のパートナー会社へ、中・小型ボイラーをフィリピン工場へそれぞれ移管する。三菱重工の定置用エンジンは相模原製 作所に人員や設備を集約。エンジン事業として一体運営することで、世界で広がる分散型電源需要に対応する。また、 金沢地区の三菱重工技術統括部総合研究所ならびにICTソリューション本部システム技術開発部の研究開発人員につ いては、関連製品事業の移管に連動した人員配置を行う。 ◆環境装置事業を統合【日本経済新聞/4.24】 ≪三菱重・日立、10月新会社、火力発電関連一貫供給体制≫三菱重 工業と日立製作所は発電プラント用の環境装置事業を統合する。火力発電プラントから環境装置まで一貫して提供で きる体制を整え、低価格製品で攻める欧州や韓国のメーカーに対抗する。共同出資会社の三菱日立パワーシステムズ (MHPS)が23日発表した。統合するのは、石炭火力発電所などから出る排ガスに含まれる大気汚染の原因物質を除く集 じん装置の事業だ。MHPSは統合の受け皿となる新会社を10月1日に設立する。三菱重工子会社の三菱重工メカトロシス テムズ(神戸市)と日立子会社の日立プラントコンストラクション(東京・豊島)がそれぞれ事業を切り離し、新会社に集約

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する。新会社は設立当初の売上高で約150億円、社員数は約240人となる。社名や資本金は今後決める。事業統合で品 ぞろえと販売体制を強化し、技術開発やアフターサービスも共同で取り組む。2017年度をめどに売上高200億円を目指 す。集じん装置は、排気中のすすや粉じんなど粒子状物質(PM)を電気を使って吸引したり、特殊フィルターに通したりし て除去。大気中に出さないようにする。三菱重工と日立は集じんの方法やシステムに違いがある。2社の強みを生かし て付加価値の高い機種を開発し、販売の一本化で収益力を高める。MHPSば14年2月、三菱重工と日立の火力発電シス テム事業を統合して誕生した。三菱重工とMHPSは23日、横浜市金沢区にある発電プラント設備の工場を閉鎖すると発 表した。中小型の蒸気タービン製造を中国の協力会社へ、中小型ボイラーはMHPSフィリピン工場に移管する。分業体制 でコスト競争力を高める。 ◆「再建プラン」に4つの疑問【CОMPASS/5月】 ≪三菱重工の長崎分社化、勝ち目はあるか≫三菱重工業が10月1日付 で長崎造船所香焼工場での大型商船事業を二つの子会社に分社化する。建て直しに向けて、船舶事業を解体するよう な形での「抜本改革」を示したが、果たして勝算はあるのか。三菱重工は客船の巨額の赤字を受けて、今回の再建策を まとめた。長崎造船所香焼工場での大型商船の建造は今後、LNG船やLPG船に集中する。その上で、事業を二つに分社。 香焼工場内に船舶建造事業会社として100%出資の「MHI船海エンジニアリング」を発足し、長崎のガス船に関する営業・ 設計・調達・製造・修理をこの新会社に移管する。これとは別に、製造の上流工程に当たるブロック製造も別途分社化す る。艦艇事業や、下関造船所での商船事業は引き続き本体に残し、客船建造はエンジニアリング事業として本体に残 す。三菱の造船分社については、昨年の早い段階から業界内でも推測が広がっていた。だが今回、具体的な分社計画 が公表されると、その内容に驚きの声が上がった。「このプラン作成に、船舶部門の人間は関与していないのではない か」(造船経営者)。そんな憶測が業界内に広がっているのは、「造船屋の発想が見えない」(同)からだ。疑問点はいく つかある。まずは分社化によるブロック製造事業。他の造船所へのブロック外販も進め、年間生産量を拡大する計画と いうが、「日本で最も高い三菱重工のコストで造るブロックに競争力はあるのか」(造船大手幹部)という疑問が上が る。三菱重工は、香焼工場の内業工場のキャパシティーをフル活用することで競争力を出せると解説する。確かに現 在、ブロック外注の逼迫で単価は上昇している。ただそれでも、専業造船所の外注相場に三菱重工がコストを合わせる ことば簡単ではない。疑問の2点目は、「ガス船特化」の方針だ。「得意船種であるガス船の連続建造による生産合理 化」が狙いとはいえ、バルカーなどの大宗船への特化ならまだしも、需要の山谷が大きい船に決め打ちすることはリス クが高い。現実にLNG船では、最近でも2008-10年の3年間で発注隻数が世界全体でわずか10隻という「谷」があった ばかりだ。また3点目は、解体的分社の弊害だ。近年、造船所の勝ち残り策は多様化が進んでいるが、共通しているのは 「規模のメリット」と「一体運営による全体最適化」だ。だが三菱重工だけが、この方向性から背を向けるかのようだ。一 昨年の事業ドメイン制への移行と今回の分社により、組織の上で船舶部門は「艦艇」「客船」「下関造船所の造船事業」 「香焼工場のブロック製造」「香焼工場の商船建造」に分割される形になる。この形で競争力を出せるのか。そして4点 目。技術者集団による技術開発力という三菱重工の最大の強みが、この形では棄損されるのでは、ということだ。造船 業では「自社生産がセットでなければ技術は維持できない」と一般的にいわれている。エンジニアリングをメーンにし て成立させることば、欧州に例があるとはいえ、簡単ではない。当面は、このプランで仕事量は機能しそうだ。三菱重 工の次の中期経営計画は15年-17年度が対象だが、この3年間だけでみれば、ガス船とブロックの需要はある。だがそ の先に、三菱重工の船舶部門はどのような未来を描いているのか。“事業規模5兆円”という目標にまい進する三菱重 工の中で、客船による巨額の赤字を計上した商船事業は、声を失ったかのようだ。分社によって商船事業の奮起を促 す、という上層部の狙いがあるにしても、三菱重工が示した解体的分社という道筋は、同じ船に乗る同業他社や顧客、 あるいは、三菱重工の追い落としを狙う毎外のライバルには、再建への厳しい道のりを感じさせている。三菱の最後の 戦いが始まろうとしている。

Ⅱ.国内造船・造機関係の動向

◆1-3月受注4割減の330万㌧ ≪国内造船、国内船主向け・タンカー比率増≫日本船舶輸出組合(輸組)が14日発表し た今年1-3月の輸出船契約実績は計56隻義333万総㌧(157万CGT)で、総トンベースで前年同期比37%減だった。バル カーの発注が低迷する中、VLCCやLNG船などの大型船を成約し、受注量はタンカーの比率がバルカーを上回った。ま た、海外向けが中心だった直近2年と比べて、実質国内船主向けの比率が高まっている。昨年以降の日本の新造船受注 量を四半期別にみると、1-3月が529万総㌧、4-6月が532万総㌧、7-9月が146万総㌧、10-12月が277万総㌧となってお り、今年1-3月の受注量は昨年7月以降の水準を上回った。ドライバルク市況の低迷により、今年に入ってからも新造受注 は依然として低迷しているものの、タンカーなどの成約が受注量を押し上げた。タンカーの受注量がバルカーを上回っ たのも大きな特徴だ。1-3月の受注船を船種別にみると、バルカー39隻・150万総㌧に対して、タンカー15隻・154万総㌧ となっている。バルカーを主力とする日本の造船所が多い中で、タンカーの受注量がバルカーを上回るのは異例。VLC CやLNG船などの大型船がタンカーの受注を牽引した。また、実質国内船主向けの割合が増加した。56隻のうち純輸出 船は12隻で、隻数ベースで国内向けが8割近くを占めた。2014年度の実績をみても、総トンベースで実質国内向けが69 %となっており、12年度の51.2%、13年度の57.3%から大幅に増加。海外船主の発注が一巡し、国内船主向けの案件が 多くなっている。契約は引き続きドル建て中心の傾向が続いている。造船ブーム期には円建てが7-8割を占めていた が、14年度は円建てが15%にとどまり、外貨建てが81%だった。1-3月の竣工量に相当する通関実績は、前年同期比6% 増の97隻・393万総㌧だった。 ◆3月の受注、2割の152万総㌧ ≪契約船の船種多様、竣工量は146万総㌧≫日本船舶輸出組合(輸組)がまとめた3 月の輸出船契約実績は30隻・152万総㌧で、総トンベースで前年同月比19%減だったものの、昨年7月以降では最も多か

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った。3月の契約船の内訳はコンテナ船2隻、バルカー23隻(ハンディ11隻、ハンディマックス6隻、パナマックス2隻、石炭 運搬船1隻、鉄鉱石運搬船3隻)、タンカー5隻(VLCCl隻、アフラマックス1隻、LPG船1隻、ケミカル船2隻)となっている。30 隻のうち純輸出船は6隻と、実質国内船主向けが8割を占めた。3月の受注船の契約態様は、トン数ベースで円建て契約 18.9%、円・外貨ミックス6.4%、外貨建て74.7%だった。現金払い契約は100%、商社契約は25.8%。納期別では2015年 度もの6.8%、16年度もの9.9%、17年度もの32.8%、18年度もの50.5%だった。竣工量に相当する通関実績は、前年同 月比10%増の33隻・146万総㌧だった。 ◆活況造船、迫る苦境 ≪円安順風 生かし切れず≫2014年度の輸出船受注量が13年度比22%減と3年ぶりにマイ ナスに転じた。石炭や穀物などを運ぶばら積み船が大幅に落ち込んだ。大手各社が将来の収益源と期待する海洋資源 開発船事業にも誤算が生じている。足元のドックの活況とは裏腹に、再び苦境が迫ってきている。円安の追い風で復活 したかに見えたニッポン造船。「短い春」に終わるのか。≪ブラジル事業で損失、昨年度の受注2割減≫日本船舶輸出組 合が14日発表した14年度の輸出船契約実績は1,288万総㌧だった。受注の大部分を占めるばら積み船は38%減。だが 「造船所自体は忙しい状況が続いている」(三井造船)。住友重機械工業の横須賀製造所(神奈川県横須賀市)。年間3 隻だったタンカーの建造を15年度から4-4・5隻に増やす。一時は造船からの撤退も選択肢の一つにあがったが、17年ま で仕事量を確保しており、黒字化も視野に入ってきた。「徐々に協力工も増やす」(別川俊介社長)と当面事業を続ける 方針だ。日本の造船受注量は09年度に600万総㌧台まで落ち、14年ごろには造る船がなくなるという「14年問題」がさ さやかれていた。それが円高修正で13年度は1,600万総㌧超と、文字通り息を吹き返した。ドックを占めているのは当時 受注した船だ。足元の受注減は数年後の苦境を意味する。ライバルの中韓勢に対して価格競争力を取り戻したのに肝 心の仕事が来ない。これが現状だ。≪運賃は4割低下≫中国の経済減速や船自体の供給過剰に資源安も加わり、ばら積 み船の運賃水準は「歴史的な安値圏」(海運大手幹部)に沈む。総合的な値動きを示すバルチック海運指数(1985年=1, 000)は13日時点で578。1年前に比べ4割低い。新たに船を発注しようという動きは影を潜める。タンカーや液化天然ガ ス(LNG)船には一定の需要があるが、中小を中心にドック能力の限界からばら積み船しかつくれない造船会社も多い。 「(受注全体は)15年も苦しい状況が続く」(日本造船工業会の佃和夫会長)との見方が大勢だ。14年問題に危機感を抱 き、造船各社は12-13年に相次いでブラジルの造船会社に資本参加した。ジャパンマリンユナイテッドはIHIや日揮と、三 菱重工業は今治造船や名村造船所などと組んで出資。川崎重工業を含め3陣営が顔をそろえた。狙いはブラジル沖合 にある世界屈指の大型海底油田・ガス田開発向けの特殊船。同国でノウハウを蓄積し、今後日本の領海内などでも期待 される海洋資源開発市場への本格参入をもくろんだ。そこに誤算が生じた。汚職疑惑などで国営石油会社ペトロブラス の経営が混乱。同社向けの資源船を受注していた出資先の造船会社に資金が回らなくなり、IHIは15年3月期単体決算 で90億円の特別損失の計上を迫られた。ブラジル側から受注し、愛知事業所(愛知県知多市)で進めていた船体建造も 中止した。名村造船所も21億円の特損計上を発表済みだ。「やはり新興国ビジネスは難しい」。川重の村山滋社長はこ ぼす。出資先が新工場を稼働したばかりだが、建造作業は巡航速度に達していない。≪中韓では再編も≫事業環境の悪 化は中韓勢も同じだ。両国では銀行や国の主導で造船所の閉鎖や再編計画も進む。日本でも14年間題を控えて川重と 三井造船の経営統合構想など再編の動きが浮上したが、現在は鳴りを潜めている。今治造船は1月に大型ドック建造を 決めた。韓国勢が得意な大型コンテナ船市場を取りに行く。三菱重工は10月に長崎造船所で手掛ける商船建造などの 事業を分社し、他社との連携を強めていく構えだ。抜本的な体質強化策を打てるのは手持ち工事にまだ余裕がある今 しかない。 ◆14年度受注22%減の1,288万総㌧、バルカー中心 タンカーも増加、船舶輸組 日本船舶輸出組合(船舶輸組)が14日 発表した2014年度の輸出船契約(受注)実績は、1,288万総㌧(629万標準貨物船換算㌦=CGT)となり、前年度比22% 減(CGTベースで21%減)だった。船内騒音規制の駆け込み発注などで14年6月までは堅調だったが、同年7月以降は落 ち込んだ。船種ではタンカーが増加したものの、依然としてバルカーが中心となっている。14年度の契約隻数は、272隻 で前年度比146隻減。このうち、バルカーは140隻減の208隻で、ハンディマックス、ハンディサイズ、パナマックスが中心 だった。油送船は8隻増の44隻で、ケミカル船、アフラマックスタンカー、LNG(液化天然ガス)船などが隻数を伸ばした。 貨物船は10隻減の20隻で、内訳はコンテナ船9隻、一般貨物船6隻、自動車運搬船5隻だった。14年度契約輸出船の船主 系列別受注量の割合(総トン数ベース)は、邦船系が69%と前年度の57%からシェアを拡大。このほか、欧米系11%(前 年度13%)、ギリシャ系6%(同12%)香港系4%(同4%)その他10%(同14%)だった。契約は全て現金払いで、トン数ベー スの契約形態内訳(シェア)は円建て15%、円・外貨ミックス5%、外貨建て81%。商社契約は15%だった。納期別内訳は1 4年度3%▽15年度24%▽16年度23%▽17年度37%▽18年度12%▽19年度1%。竣工量を示す14年度輸出船通関実績 は、1,176万総㌧(546万CGT)で2%減(CGTベースで3%増)、隻数は8隻増の282隻。14年度末の輸出船手持ち工事量は 632隻、2,764万総㌧(1,350万CGT)だった。前年度末は658隻、2,772万総㌧(1,310万CGT)。≪3月もマイナス継続≫15年3 月単月の輸出船契約実績は、152万総㌧(67万CGT)で前年同月比19%減(CGTベースで28%減)、隻数は17隻減の30隻 だった。うち海外船主向けの純輸出船は6隻にとどまった。30隻の船種別内訳は、コンテナ船2隻、ハンディサイズバル カー11隻、ハンディマックスバルカー6隻、パナマックスバルカー2隻、石炭運搬船1隻、鉄鉱石運搬船3隻、VLCC(大型原 油タンカー)1隻、アフラマックスタンカー1隻、LPG(液化石油ガス)船1隻、ケミカル船2隻。契約は全て現金払いで、トン数 ベースの契約形態内訳は円建て19%、円・外貨ミックス6%、外貨建て75%。商社契約は26%だった。納期別内訳は、15 年度7%▽16年度10%▽17年度33%▽18年度51%。 ◆昨年度、輸出船契約/21.9%減1,288万1,550総㌧/3年ぶりマイナス 日本船舶輸出組合(JSEA)が14日発表した201 4年度の輸出船契約実績(一般鋼船)は、前年度比21.9%減の1,288万1,550総㌧となり3年ぶりに前年実績を割り込ん だ。3月単月の契約実績は9カ月連続のマイナス。バラ積み運搬船を中心に「海運市況の低迷に伴い、新造船の発注が 減っており、厳しい時期が続く」(JSEA)との見方が出ている。14年度の契約隻数は272隻(13年度418隻)。内訳は貨物船 20隻、バラ積み運搬船208隻、油送船舶隻。納期別内訳(比率)は、14年度3.1%、15年度23.6%、16年度23.4%、17年度3 6.7%、18年度12.1%、19年度1.1%。通関実績は282隻、同2%減の1,176万4,821総㌧。3月末時点の輸出船手持ち工事量

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は632隻、2,764万1,720総㌧。造船各社はおおむね2~3年分の仕事量を抱えている計算。ただ、足元では新造船の供給 圧力が大きく、船価回復は難しい展開。「バラ積み船に受注を重ねてきた中堅造船所は苦しくなる可能性がある」(関 係筋)と見る向きはある。一方、3月単月の輸出船契約は前年同月比19.2%減の152万2,900総㌧。隻数は30隻。内訳はコ ンテナ船2隻、ハンディ型バラ積み船11隻、ハンディマックス型バラ積み船6隻、パナマックス型バラ積み船2隻、石炭運搬 船1隻、鉄鉱石運搬船3隻、VLCC(超大型タンカー)1隻、アフラマックス型油送船1隻、液化石油ガス(LPG)運搬船1隻、ケミ カルタンカー2隻。納期別内訳(比率)は15年度6.8%、16年度9.9%、17年度32.8%、18年度50.5%。通関実績は33隻、145 万8,492総㌧。 ◆23・2%/2014年の日本の造船所の受注シェア 今年は年明けから2万TEU型のメガコンテナ船をロット受注するなど 存在感を見せている日本の造船業。かつては“造船ニッポン”と呼ばれた日本の造船業だが、受注規模では現在、中国、 韓国に次ぐ3番手だ。ただ、省エネ船の評価や円安の定着などで、昨年から巻き返しの兆候も徐々に表れている。日本 の造船所の世界に対するプレゼンスをデータから検証してみたい。IHS(旧ロイド)統計(1-9月実績の確定値と10-12月速 報値の合計)〔グラフ①〕によると、2014年の世界の新造船受注量は計2747隻・8,375万総㌧(約4,605万CGT)で、造船 ブーム最終年の08年並みの高水準となった。中国、韓国、日本の順位は変わらなかったものの、日本の受注シェアが20 %台を回復した。日本の受注シェアは中国が台頭する2000年代前半までは3-4割あったが、中国の台頭とともにシェア は2割以下に減少した。昨年は円安の定着や省エネ船への評価のほか、船内騒音規制前の駆け込みを背景に、日本は 受注を伸ばした。船種別のシェアは〔グラフ②〕の通り。バルカーでは中国、タンカーとガス船では韓国が圧倒的なシェ アを占めたものの、日本は6万重量トン超のハンディマックスを中心としたバルカーや、日本向けのシェールガス商談が あったLNG船で存在感を見せた。バルカーでは、4万重量トン以下の小型で40.0%、5万-8万5000重量トンの中型で37. 7%、ケープサイズで21.8%が日本のシェアとなっている。ガス船のシェアは、LNG船が17.0%、LPG船が17.8%だった。 また、4万重量トン以下のタンカーでは、日本のケミカル船ヤードが受注を伸ばしたことから50.7%の過半シェアを取っ た。14年の特徴ともいえるのがコンテナ船だ。日本はメガコンテナ船の受注で韓国や中国に出遅れ、コンテナ船のシェ アはここ数年1-6%にとどまっていたが、14年は今治造船やジャパンマリンユナイテッドがメガコンテナ船をロット受注し たことで2割超のシェアに達した。今治造船は今年も、2万TEU型を計13隻受注している。14年はLNG船やメガコンテナ船 など日本向けの大型商談が多かったことも日本の受注を後押ししたとはいえ、高付加価値船でも世界市場で存在感を 示した。今後、海洋案件の低迷から韓国大手との競合激化も想定されるが、円安の定着という追い風もあり、より一層 の巻き返しに期待が寄せられている。 ◆手持ち工事量/2,764万総㌧に増加 日本船舶輸出組合がまとめた今年3月末時点の手持ち工事量は632隻・2,764万 総㌧(1,350万CGT)で、総トンベースで2月末時点から増加した。納期別の内訳は、2015年度引渡分298隻・1,159万総㌧、1 6年度184隻・809万総㌧、17年度126隻・627万総㌧、18年度23隻・156万総㌧、19年度以降1隻・14万総㌧だった。 ◆2月の造船統計、竣工29隻 国土交通省がまとめた2015年2月の造船主要53工場の鋼船受注・建造実績は、起工2 2隻・79万7,000総㌧、竣工29隻・77万総㌧、竣工船価895億円だった。竣工船のうち国内船の実績は自動車航送船1世、 その他船舶3隻の計4隻・8,000総㌧だった。輸出船は25隻・76万2,000総㌧で、内訳は貨物船が21隻(一般貨物船2隻、 ばら積み船9隻、鉱石兼ばら積み船8隻、セメント専用船1隻、木材件ばら積み船1隻)、油送船は4隻(一般油送船1隻、LPG 船1隻、化学薬品分2隻)だった。シンガポールやパナマ、マーシャル諸島、バミューダ諸島、インドネシア向けに竣工した。 鋼船修繕実績は102隻で、工事金額は30億円だった。 ◆能力増強の設備投資を再開/三井造船玉野、人材確保と多能工化も課題 三井造船の玉野艦船工場は、効率化と 能力増強を目指した設備投資を再開する。金融危機後は老朽設備の更新に絞り込んでいたが、15年度に小組立工場の 建屋を新設し、整流化によつて組立工程の生産効率を15%高めて能力を引き上げる方針。その後も効率化に向けた投 資を進める考えだ。また、一般商船と艦艇・官公庁船を組み合わせた工場運営のため、人材の確保・育成が大きなテー マとなっており、多能工化や、設計要員を中心とした確保に力を入れる。玉野事業所の玉野艦船工場は、造船ブーム期 にはドッククレーン増設などの能力アップの設備投資を行うとともに、工場全体として効率化と能力増強に向けた長期 の投資計画に着手していた。08年に大型の鋼材加工センター「深井鋼板切断工場」を新設、09年には曲げ加工専用の 工場を増設するなど、建造工程の上流から設備の整備を進めていた。だが、ここ数年は新規ルール対応に必要不可欠 な設備や、老朽設備の代替更新に絞り込んでいた。効率化を目指す新規の設備投資が手薄になっていた格好だが、こ れを再開する。14年度は老朽代替として、修繕用の1号ドックのゲートと、鋼板切断工場のNC切断機1基の老朽代替を実 施した。15年度は鋼板切断工場のもう1基の切断機と修理艦用ドックのクレーン代替を行う。これに加えて、大型投資と して小組立工場の建屋を建て直す予定だ。前艦船工場長の三宅俊良氏(取材時。現在千葉事業所長)は「残るは小組、 大組。組立工程の整流化がこれまで課題だったが、小組立工場の強化により最終組立工程の前段階に仕事を分散させ て、全体の生産効率向上による月産能力の向上を図る。組立工程全体で、15%の効率向上を見込む」と語った。玉野艦 船工場では複数の中型バルカーと、防衛省向け艦艇、巡視船などの官公庁を組み合わせた建造体制をとっている。今 後の手持ち工事としては、年6~7隻のバルカー建造で17年までの仕事量をほぼ確保。今年は省エネ船シリーズの6万6, 000重量㌧型バルカーを5隻、6万重量㌧型バルカーを2隻、官公庁船を2隻進水する予定だ。それ以降は保安庁向け巡 視船1隻と防衛省の潜水艦救難艦(ASR)を除くと、バルカー建造が主体となる。商船と艦艇・官公庁船では工事内容が

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大きく異なるため、船台の状況に応じて艤装と船殻の比重が変わる。だが近年は陸上工事との人の取り合いで協力工 の確保が難しいため、自社で多能工の育成を進める。人材面では設計を中心とした人材不足も深刻だ。また人材確保 以外に設計能力の課題も挙げる。「これまでは同じ船型の連続建造で通用する時代だったが、省エネ船など時代に合 った設計が求められる。その間も官公庁船の仕事があり、設計能力の向上が必要だ。設計の技術力の差は顕著に表れ るので、どのように強化するかが問われている」(三宅氏)。人員拡充に向けて、設計では15年度に従来と比較してより 多くの新入社員を設計へ配属する。また、フィリピンの設計子会社DASHエンジニアリングの造船設計部でも船の詳細設 計を行っており、今後もDASHの活用が増えそうだ。生産現場では、4月に施行された新制度を利用し、玉野では現在8人 にとどまる外国人研修生の受け入れを順次増やしていく方針だ。 ◆常石造船/本社工場に大型投資 ≪マザー工場強化、400トンクレーンなど≫常石造船が、本社のある常石工場に大 型の設備投資を行うもようだ。関係筋によると、吊り能力400㌧のクレーン複数基導入などを計画しており、「数十年ぶ りの大型投資」になるようだ。これまではフィリピンと中国の海外2エ場の強化を優先し、設備投資は海外での生産能力 拡張を目的とする投資に集中していた。だが、常石工場は国内唯一の生産拠点となり、海外造船所の技能者訓練など を行う「マザーヤード」としての役割を増している。大型投資によって競争力を高める方向性を打ち出すことで、国内 生産の重要性も改めて示した格好だ。常石工場への設備投資としては、直近では2009年に新塗装基準(PSPC)に対応 するため大型の塗装工場を建設していた。今回の設備投資はこれを上回る規模となるもようで、クレーン代替など、 「数十年ぶりの大型投資」になるとみられる。常石造船は造船事業の戦略として「海外生産」を軸に置き、フィリピン・セ ブ島のツネイシ・ヘビーインダストリーズ・セブ(THI)と中国の常石集団(舟山)造船の海外2工場の生産体制を強化して きた。設備投資の点でも、過去20年間は海外を優先。近年では2010年までの3年間でフィリピンと中国に約500億円を 投資しており、THIでは第2工場を建設し、舟山では船台を拡張するなど、大規模な設備を整えた。この間、国内でも塗装 工場や組立工場の増設、設備の代替なども行っていたが、全体的には国内は老朽設備の更新や補修などがメーンとな っており、投資は抑制されていた。今回久しぶりの国内への大型投資に踏み切る背景には、常石工場の重要性が高まっ ていることがありそうだ。今年1月に多度津工場を今治造船に売却したことで、国内の生産拠点は常石工場だけとなっ た。海外工場の技能者の研修をはじめ、常石工場はグループ全体の人材育成や技術拠点としての「マザーヤード」とし ての重みを増しているため、工場としても競争力を高める必要がある。また、フィリピン・中国の2工場は大型投資が一 段落し、今後は大規模な設備投資よりも、生産性向上によって建造量を増やす段階に入ったことも背景にあるようだ。 いわゆる「円安による生産の国内回帰」とは異なり、海外生産の競争力を高めるためにも国内を改めて強化する必要 があったといえる。 ◆広島工場に1,200トンクレーン新設 ≪今治造船、大型コンテナ船の生産性向上へ≫今治造船は、広島工場の建造ドッ クに吊り能力1,200トンのゴライアスクレーン1基を設置する。老朽化した既存クレーンの代替との位置づけだが、能力が アップすることでブロック大型化などによる生産性向上の効果を見込んでいる。同工場が得意とする大型コンテナ船 の競争力を高めたい考えだ。広島工場はドック2基で新造船を建造している。西側の1号ドック(全長378mX幅59m)には、 800トン型クレーン2基と200トン型2基の計4基のクレーンが設置されており、一方の東側の2号ドック(382mX56m)には80 0トン型クレーンが2基ある。このうち1号ドックで、既存の200トンクレーンを撤去し、1,200トンクレーンを新たに設置する。 稼働は来年の見込みだ。クレーン能力を高めることで、ドックへの搭載ブロックを従来よりも大型化でき、ブロック数が 減少、ドック期間が短縮するなどの生産効率化が見込める。広島工場では現在、川崎汽船向け1万4,000TEU型コンテナ 船シリーズを建造中。先月末に1番船“Millau Bridge”を引き渡しており、これ以降の半年間で計5隻を竣工する予定にあ る。その後にケープサイズ・バルカーなどの建造を挟みつつ、再び川汽向けに1万4,000TEU型5隻と、台湾船社エバー グリーン向けに同型船5隻を連続建造する予定。メガコンテナ船を主力製品とするうえでは、短期間にまとめて隻数を 用意するロット対応が重要となる。大型設備を整えて生産性を高めれば、コストや納期対応の両面でコンテナ船の競争 力を高めることができる。吊り能力1,200トンのゴライアスクレーンは現時点で国内最大の能力。三菱重工が長崎造船所 香焼工場で1基、大島造船所が2基、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)が有明事業所で2基をそれぞれ運用している。今 治造船は丸亀事業本部に新設する大型ドックでも、1,200トンクレーン3基の導入を計画している。 ◆造船協力会社人員、5年ぶり増加 《景況感改善も「人員は不足」》日本造船協力事業者団体連合会(日造協)がまと めた「日造協実態調査報告」によると、造船協力会社の昨年7月時点での人員数は前年度に比べて0.3%増加した。人 員増加は5年ぶり。景況感も改善しているが、一方では人員不足を挙げる声が多かった。日造協が会員を対象とした書 面調査の結果を公表した。人員数は、技術員が前年に比べて1%減少する一方、工員が1%増加した。協力会社の人員数 は2013年度から造船ブームを背景に7年連続で増加したが、2010年7月の調査からは連続で減少していた。国内造船所 の操業減少で協力会杜も規模を縮小していたが、操業回復に伴う協力会社への仕事量拡大で、再び増加に転じたよう だ。一方、人員不足については、現在「不足している」とする回答が全体の57%を占めてあり、今後「不足する」とする 回答は66%もあった。また、2015年度の景気見通しについては「良い」とする回答が全体の19%で、「悪い」の17%を上 回り、久しぶりに景況感がブラスとなった。このほか、2013年度の造船売上高は前の年度に比べて12%減。、調査対象年 度が、外注需要の急増する直前の時期にあたることも影響したようだ。 ◆「造船は構造改革に踏み込むべき」 ≪造工・佃会長、2年振り返り三菱分社化にも言及≫日本造船工業会の佃和夫 会長は21日、任期中最後となる定例会見を開き、この2年の造船業を振り返った。日本造船業の最大の課題として「何に も増して体力強化」とし、「痛みを伴う分業と協業が必要」「皆が取り組んではいるが、事業構造改革にまで踏み込むべ き」と語った。構造改革の手法としてM&Aやアライアンスなどを挙げるとともに、差別化に向けたエンジニアリング強化 なども挙げ、出身の三菱重工業が長崎造船所の商船を分社したことについて「エンジニアリングを船から分離し、マー

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ケットを社内外に広く求める方針に合致した施策」と話した。佃会長の発言要旨は次のとおり。<2年を振り返り>△行き 過ぎた円高の修正が進み、経済環境は好転した。だが「2014年問題」は先送りと認識すべき。造船能力過剰の根本問題 が解決されていない。厳しい状況ではあるが、日本は海洋立国で、ものづくりの国でもあり、海運造船は日本経済を支 える基盤産業。大変だからといって腰を引く事業ではない。新技術による差別化と、新マーケットへの進出、体力強化を 喫緊の課題として取り組む必要がある。<造船業の課題>Δ何にも増して体力強化が重要。経営者が自ら強い意志で 決意すればできる。痛みを伴う分業と協業をどれほど腹を決めてできるかが大事。各社とも体力強化に向けて努力し ているが、2年の経験をもとに、事業構造改革まで踏み込まなければいけないと強く感じる。△体力強化には、M&Aや 機能分社化、他社との協業などさまざまな方法がある。各社が最も適当と思う方法でやるべきで、いまそれぞれの分 野で前に進めている。三菱重工の例では、長崎造船所の商船を分社したことは、エンジニアリングを船から独立して広 く社内外にマーケット求める方針に合致した施策と考える。<エンジニアリングの分離>△これまで船殻設計が造船の命 だと考えてきたものづくりの方法をエンジニアリングと分け、エンジニアリングのマーケットを広げる構造改革もあるの ではないか。△船の付加価値を考えると、以前は海上を効率良く安全に速く走る立派な船殻を造ればそれが競争力に なったが、そういう価値では徐々に差別化できなくなっている。付加価値とは、価値ある設備を、船殻の上にどれだけ 効率良く設置できるかではないか。顧客が快適に過ごせる大量の客室をいかに効率良く乗せられるか。掘削装置をど のように搭載するか。揮発量の少ないLNGタンクをいかに同じ寸法の船殻にたくさん乗せるか。それが船としての付加 価値の勝負ではないか。それには膨大なエンジニアリングカとリソースが必要。船の事業だけでそれだけのリソースを 持ち続けることは難しい。体力強化策として、船に特化した事業からエンジニアリングを切り離し、他のプラントなども 手掛ける部門として独立させ、エンジニアリングのマーケットを船殻以外にも広げて技術力を高めることが、結果的に 船の価値も高めることにつながるのではないか。<事業多角化の必要性>△事業多角化は入念な準備をしなければ、 エンジニアリングカがついて行かず失敗するケースが多い。韓国造船業の赤字や三菱重工の客船などもそうだ。海洋 分野も、これまで皆が何度も挑戦して失敗した。このため、多角化していない会社が良いようにみえるが、それを継続 できるかどうか。設計を変えず同じ船種を大量に建造する事業モデルが続き得るかは疑問だ。韓国や中国の追い上げ を振り切るには、新たな船種にチャレンジしなければいけないときがくる。<ブラジル造船業の混乱>△ペトロブラス問 題と油価低迷で、ブラジルでの造船事業は厳しい状況だが、いっまでも続くわけではない。各社事情が異なるだろう が、私の理解では減損処理をしても手を引くとはなっていない。いずれ必ず復活する時期を見込み、仕込みをしておく べき。 ◆造工の次期会長に川重の村山社長 ≪6月に就任、現役社長の就任はIHI釜氏以来≫日本造船工業会の次期会長に 川崎重工業の村山滋社長が内定した。6月に開催される定時総会で正式決定する予定。現役社長が造工会長に就任す るのは、前会長の釜和明氏がIHI社長時代の2011年に就任して以来。村山社長は第35代の造工会長となる。川重出身の 造工会長は、2007-09年に会長を務めた田崎雅元氏以来。【むらやま・しげる】1974年京都大学航空工学科修士課程修 了、川崎重工入社。2005年執行役員航空宇宙カンパニーバイスプレジデント、2008年常務執行役員、航空宇宙カンパニ ーバイスプレジデント、2010年代表取締役常務、航空宇宙カンパニープレジデントを経て、13年に現職。1950年(昭和25 年)生まれ。大阪府出身。 ◆海外船主の納期延期要請が増加 ドライバルク市況の低迷を背景に、一部の海外船主が造船所に対して用船先の 決まっていない発注船の納期変更を要請している。期近納期の建造船を契約の範囲内で最大限引き渡しを遅らせてほ しいという要望に加え、1年程度の大幅な納期先送り要請も出てきている。日本の造船所は、契約の範囲内であれば工 程を調整したり、建造船を引き渡せる状態で岸壁に係留するなどの対応をとっているようだ。2013年来の発注船は用 船先を確保していないものも多く、ドライ市況の深刻化により、納期延期の要望が今後増えてくる可能性もありそうだ。 造船所と船主の新造契約は、契約当初は納期に数カ月の幅を持たせており、引き渡しの時期が近づくにつれ、徐々に 引き渡す日を絞り込んで確定していく契約形態が多い。このため、ドライ市況の低迷を受けて、海外船主から引き渡しを 契約の範囲内でギリギリまで先送りにしてほしいという要請が増えており、「引き渡しは契約の範囲内で最も遅い時期 で調整している」(国内造船所関係者)という造船所もある。引き渡し日が迫った段階での延期要請に対しては、工程の 調整をせずに造船所の建造計画どおりに建造し、引き渡しまでの期間は岸壁に建造船を係留したままにすることも多 いという。造船所にとっては契約納期のズレは工場の建造工程や人員配置などにも深刻な影響が生じる。1つの船の納 期を遅らせれば、その後の竣工予定船の建造に混乱を招くことになる。後続の建造船に航海契約などで納期の調整が 困難な案件が控えており、納期よりも早めの建造計画を立てているケースもある。岸壁に係留するとしても、岸壁のキ ャパシティにもそれほどの余裕はない。その一方で、人手不足の問題などもあり、納期の延期を進めてきた造船所も一 部あるようだ。「人手不足の問題が顕在化し始めた昨年から契約の範囲内で線表を先に延ばしている造船所もあった」 (造船現場関係者)。工程に遅れが生じている造船所にとっては、工程の調整を図るため、納期を後ろ倒しにすることで 船主と交渉を進めていたようだ。ドライ市況の低迷により、船主の希望ともマッチしていた。こうした契約納期の範囲内 での引き渡し延期に加え、ドライ市況に回復の兆しが見られないことから「契約の範囲を超えた引き渡し延期の要請も 出始めている」(国内造船所関係者)。発注船の一部の引き渡しを半年~1年程度延期してほしいという内容で、海外造 船所の建造船も含めると、既に表面化した納期延期もある。ギリシャ系バルカー船社スターバルクキャリアーズが今年 竣工予定の新造船の一部の納期を来年第2~3四l半期に延期したことを明らかにしているほか、米国上場のギリシャ船 主セーフバルカーズも1年程度の引き渡し延期を発注船の一部で造船所と交渉している。納期を大幅に延期すること は、造船所としては建造船の順序を入れ替える必要なども出てくる。1本のドックで建造している造船所にとって対応が 難しいのはもちろんのこと、複数の建造工場を持つ造船所でも、連続建造体制が崩れるため簡単には対応できない。

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船価の底値感を背景に2013年以降、海外船主を中心にバルカーの新造発注が相次いだ。船価の底値感を背景とした先 行発注が大部分で、用船契約や航海契約のめどが付いていないものも多い。競争力のある船とはいえ、足元の市況下 でスポット運航すれば、赤字運航は避けられない。このため、用船先の確定していないものは竣工を先送りにできれば、 赤字幅を縮小できる。こうした納期延期の動きはリーマン・ショック直後にも数多くあり、造船所は対応に追われた。201 3年来の発注ブームで発注された新造船が竣工を迎える中、用船市況に回復の兆しがなかなか見えておらず、こうし た納期延期の要請は今後も出てくることが予想される。ドライ市況低迷の影響が新規商談だけでなく、受注船にも影 響を及ぼし始めている。 ◆造船鋼材/国内需要が一転増加へ 《14年度は5%増、15年度は2%増の343万㌧へ》国内造船所の造船用鋼材使用 量が増加に転じている。リーマン・ショック以降は減少を続けていたが、日本造船工業会(造工)加盟会社の2014年度の 購入量は、前の期に比べて5%増の337万㌧となったようだ。今期はさらに2%増の343万㌧を見込む。造船所が操業を 戻しつつあるため、鋼材需要も底を打ったといえる。造工が会員各社の状況を取りまとめた。2014年度の鋼材購入量 (見込み)のうち、最も使用量が多い厚中板は、前の期に比べて5%増の294万㌧となったようだ 事前に予定していた 購入量よりも増えて、前年を上回った。また、形鋼は前の期から19%増の27万㌧と大きく増えた。今期は厚中板の購入 量が300万㌧規模にまで増える見通しだ。国内造船所の鋼材消費量はピーク時の2008年度に463万㌧を記録したが、 その後は造船所が操業をスローダウンして建造量を減らしたため、下落傾向が続いていた。 ◆造船この1カ月〈上〉造船淘汰が再び始まるか 《バルカーと海洋低迷が深刻化、海外は再編加速も》造船業界では、 バルカーの新造需要の低迷と、海洋案件の凍結で、事業環境の先行きが不安視されるようになってきている。納期延 期や船種変更などリーマンショック直後と同じ情勢が発生しているが、造船所の受注残など、状況は当時より悪いとも 言える。この低迷状況が続けば、造船所の淘汰が再び始まるとの見方も出てきている。低迷を背景に、海外では造船再 編が急ピッチで進む可能性もある。《リーマン直後との違い》司会 造船業界には先行きの不安感が徐々に広がっている ようだ。ドライバルク市況の低迷がじわりと効いてきているのだろうか。― これほど海運市況が低迷しているからね。 造船所への新造船の引き合いもばったり止まっている。バルカーの船種変更や納期延期の要請も造船所には寄せられ ているし、今後はオペレーターの信用問題も心配だ。気になる話はいろいろと聞くよ。一 新造船マーケットに関する 話題は後ほど改めて詳しく話すが、1つ言えるのは、納期延期や船種変更は、リーマンショック前後にもかなりあったと いうことだ。いまは当時と状況が似ているような気がする。― うん。でも、違いもある。日本造船業にとっては、リー マンショック後と違って、為替は円安だ。これは日本にはアドバンテージじやないかな。採算面でも受注面でも、日本は 救われているところがあると思う。それに、ファイナンス環境は当時ほど悪くない。― 確かにそうかもね。でも一方で は、当時は何といっても、海運造船ブームの貯金が皆にあった。オペレーターや船主は体力があったし、造船所は手持 ち工事が採算的に良い案件ばかりだった。今回はその点が大きく違う。造船所もここ最近は不採算案件の建造が続い ているし、手持ち工事も船価がそれほどは良くない。オペにも、当時ほどの余力はないのではないか。― 大きな違い として、新造船発注残の「確実性」という点も挙げられる。リーマンショック後は、新興ヤードがまだたくさんいた。経験 が薄く、財務的にも危うい中国や韓国の造船所が、大量の受注残を抱えていた。結局、ほとんどの造船所が淘汰され て、彼らの受注残も竣工に至らなかった。でも今は、歴史と実績のある造船所が中心だ。― そうすると、何か違うのか な。― 例えば、今回は造船所側の事情で新造船が竣工しない、という可能性が低いのではないかな。当時は、新興ヤ ードなどが建造経験がないせいで納期を大幅に過ぎても船を竣工できなかったり、建造資金に詰まったり、リファンドギ ャランテイ(前受金返還保証)を得られずに契約が未発効に終わったりということがあった。一 要するに、いまのバル カーの受注残はほぼ予定通り竣工してくると考えた方が良い、ということかな。― それもあるし、船主にキャンセル を主張する正当な理由がない。造船所とは契約をめぐる交渉が出てくるだろうが、マーケットクレームのような事態も 心配している。― 日本の造船所も、初取引の船主の案件や、海外向けの仕事が受注残に多いという点が、リーマンシ ョック後とは違うね。《淘汰戦の対象は》司会 この新造市況の低迷が続くと、造船所の経営は厳しいのではないか。― 「淘汰戦の第二幕が始まった」という人もいる。前回、リーマンショック後の淘汰は、主に新興勢が中心だった。だが今 回は、皆が採算悪化で苦しんでいる中に需要低迷も重なっているから、より広い範囲での淘汰になるかもしれない。― やはり、バルカー低迷の影響が大きいのだろうね。世界全体の建造需要のうち、ドライバルクがかなりのボリューム を占めているわけだから。― 中国は、民営造船所で厳しい状況の造船所が出てきている。南通明徳重工や東方重工 といった中堅ヤードが法的手続きなどを申請し始めている。中堅とはいえ、建造量が年間30万総㌧くらいの造船所だ から、それなりに規模が大きい。巨大民営造船所でも、熔盛重工も再建の行方が不確かになり、STX大連は破産に至っ た。― ただ中国の場合は、そのまま設備が廃棄されて淘汰されるか、というとわからない。― 韓国は、造船所の再 建や復帰がやはり困難になってきているようだ。跡地設備の競売が成立しなかったり、スポンサー探しが難航したりと いう情報も聞こえてきている。― 韓国の新興ヤードは、一時期、プロダクト船の需要回復などで息を吹き返したと思 ったが…。― 当時も結局、リファンドギャランティがつかなかったりで正式には受注ができていなかった。いまは大手 向けのブロック製作などでしのいでいる造船所もあるというが、今後も事業を続けられるかどうか。大手も今は余裕が ないからね。― 「今度こそ造船所の淘汰が進めば、産業には良いことだ」という意見も聞いた。確かに、世界的な需 給ギャップの大きさを考えれば、やはりもう一段の淘汰は必要なのだろう。海運サイドとしても、特定の船種で新造発注 が一気に積み上がって、すぐ船腹過剰に陥ると言う今の悪循環は、カネ余りだけでなく造船所のキャパシティが大きす ぎる点にも原因があるという見方は強い。― それはあるかもしれない。ただ、淘汰の対象が海外造船所だけという ことにはならない。― 日本はいまは落ち着いているように見えるが、このままバルカー低迷が続いたら、いろいろと 揺らぎ始めるかもしれない。《海外で再編加速か》司会 経営再建や事業再編といったテーマのニュースが多いのも、 やはり、厳しい環境を反映したものだろうか。― 海外で大型再編の話しが出てきているが、やはり無縁ではないだろ う。― 中国では、国有2大造船グループの中国船舶工業集団(CSSC)と中国船舶重工集団(CSIC)の合併の噂が流れ ているようだ。これは実現したら大転換になる。― 中国は造船に限らず、国営改革で他産業でも大合併構想が進ん

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でいる。造船でもその検討があるのは不思議ではない。そもそも昔は1つのグループだったわけだしね。― もし本当 に合併したら、年間200隻以上を建造する世界最大の造船グループになるわけだが・‥。― 実現性はまったくわから ない。一部分の組織統合になるのではとか、いろいろな話がある。― ただ、中国は現状のCSSCとCSICの中での再編 は着実に進んでいるね。― うん。それによって彼らの競争力がどの程度高くなるのかはまだ見えないが、少なくとも 規模は維持されることになりそうだ。― 韓国ではSTX造船と成東造船海洋の合併話がある。昨年いったん浮上して 立ち消えになったが、またこの話が出てきた。― 両社とも経営再建の一環で政府系銀行が筆頭株主になっている。 だから、金融主導で進むのだろう。― 韓国の中堅ヤードはいまほとんどが韓国産業銀行か韓国輸出入銀行の管理下 だ。大宇造船海洋もいまだに産業銀行が筆頭株主だから、銀行系ではないのは、現代重工、サムスン重工、韓進重工く らいしかない。― その分、金融主導による造船再編が進みやすいのだろう。基本的には「規模の大型化で生き残る」 という方向性は持っているようだから、何らかの形で再編は進むはずだ。― いまの低迷を考えると、海外の造船再編 は急ピッチで進む可能性が高そうだ。 ◆造船この1カ月〈下〉、バルカーの納期延期要請増加 ≪新造船市場、商談もタンカー・コンテナへ≫ドライバルク市況低 迷の影響で、一部の海外船主が造船所に対して発注船の納期延期を要請している。契約納期の範囲内で最大限引き渡 しを遅らせてほしいという要望に加え、1年程度の大幅な納期の先送り要請も出てきている。納期の延期に加え、船種 変更なども増加しており、新造船市場では不況対応が本格化してきた。また、バルカーの低迷を受けて、商談の中心は タンカーやコンテナ船へと移っており、アフラマックス・タンカーの営業を再開した国内造船所も出てきたようだ。≪1年 の延期要請も≫司会 ドライバルク市況の低迷を受けて、一部の海外船主から船種変更や納期延期の要請が造船所に 寄せられているな。― 納期の延期といっても大きく分けて2種類ある。1つは期近納期の建造船を契約の範囲内でギ リギリまで引き渡しを遅らせてほしいというもの。もう1つは半年-1年といった大幅な納期先送りの要請だ。― 前者は 契約の範囲内というけれど、造船所と船主の契約は一般的にどうなっているのか。― 造船所と船主の新造契約はこ 契約当初は納期に数カ月の幅を持たせており、引き渡しの時期が近づくにつれ、徐々に引き渡す日を絞り込んで確定し ていくことが多い。それで船主は契約の範囲内で最も遅い納期で引き渡すように要望しているようだ。― 契約の範 囲内だから問題ないような感じもするが、造船所は1つの船の納期を建造計画よりも数カ月単位で遅らせれば、その後 の竣工予定船の建造にも当然影響が出てくる。後続の建造船にフェリーや航海契約に投入予定の新造船などで納期の 調整が困難な案件が控えている場合には、納期よりも早めの建造計画を立てているケースもある。― そうしたケー スでは、造船所は建造計画どおりに建造し、引き渡しまでの期間は岸壁に係留しておくのが一般的のようだ。ただ、岸壁 に係留するとしても、岸壁のキャパシティにもそれほどの余裕はない。― その一方で、納期の延期が逆に助かったと いう造船所もある。― というと?― 昨年からの人手不足の深刻化で、工程に遅れが生じている造船所は、工程の 調整を図るため、納期を後ろ倒しにるすることで船主と交渉を進めていたからだ。納期が順守できない懸念があった 造船所にとっては、納期の延期はむしろ救われた。契約の範囲内で線表を先に延ばす動きは人手不足が顕在化し始め た昨年からあったようだ。ドライ市況の低迷により、船主のニーズともマッチしていた。― 日本の造船所は契約の範囲 内のものについては、比較的柔軟に応じているようだ。― ただ、こうした契約内の延期だけでなく、半年-1年程度の 大幅な延期要請も表面化している。― 既にスターバルクやセーフバルカーズなどギリシャ系船主が大幅な納期延期 を決めたり、延期を交渉していることを明らかにしている。両者とも日本の造船所への発注残もある。― 両者とも決 して評判の悪い船主というわけではないようだ。日本の造船所での建造実績が多いごく普通の海外オーナーでもこ うした動きが広がってきているようだ。― 2013年以降の海外船主を中心としたバルカーの発注ブームは、大部分が 船価の底値感を背景とした先行発注で、用船契約や航海契約のめどが付いていないものも多い。競争力のある船とは いえ、足元の市況下でスポット運航すれば、赤字運航は避けられない。船主としてみれば用船先の確定していないもの は竣工を先送りにできれば、赤字幅を縮小できる。― 造船所にとっては、こうした動きが常態化すれば、それこそ建 造計画や工程にも深刻な影響が出てくる。契約内ならともかく、大幅な延期については造船所によって対応が分かれ るだろう。― 用船先が確定していない発注残を対象に、船種変更の動きも活発化している。ケープサイズ・バルカー を中心にパナマックスやハンディマックスでもタンカーやプロダクト船に変更する動きが続出している。― バルカーの ほかには、韓国造船所に発注されているLNG船をVLCC2隻に変更したケースもある。リグなどの海洋関連でも船種変更 が表面化しており、船種変更の動きは今後もまだまだ出てきそうだ。― このほか懸念されているのがマーケットクレ ームだ。造船所の建造船に対して仕様と違うといったクレームを付けて船の引き渡しを拒んだり、それこそ引き渡しま での時間稼ぎに使ったりするものだ。日本の造船所でもかつてマーケットクレームの対応に追われた。― ほとんどの ケースが取るに足らないものか、全く問題のないもので、単に引き渡しを拒む目的のものがほとんどのようだ。― 今 後このような状況が出てくれば、造船所だけではやはり対応が難しい面もある。造船所も極力リスクの少ない客先と 取引をしているが、今回の発注ブームでは、初取引や商社が間に入っていない案件もある。営業担当者からすれば、新 規の商談はなかなかない上に、こうした案件への対応などで悩みの種は尽きない。≪アフラ型で営業活発化≫司会 バルカーの新造商談が停止する一方、タンカーは引き合いも多いようだが。― 確かに、今年1-3月に表面化した成約 を船種別にみても、隻数ベースでタンカーがバルカーを上回り圧倒的に多かった。タンカーの成約がバルカーを圧倒的 に上回るのは極めて異例のことだろう。また、2万TEU型のメガコンテナ船の商談も引き続き盛り上がっている。― タ ンカーも“好調”と呼べるほどではないと思うが、パルカーがこのような状況なので、アフラマックスのデザインを持つ 造船所はタンカーの営業を積極的に展開している。国内で昨年から今年にかけて受注しているのが住友重機械と名村 造船所。さらに常石造船がアフラマックスの営業を再開したようだ。― 常石は近年はほとんどがバルカーだけど、か つてはアフラマックスの建造実績も多かったからね。ただ、アフラマックスをメーンで連続建造していたのは今治造船に 売却した多度津工場だった。― 沼隈の本社でも建造実績はあるから、おそらく今回は本社での建造を視野に入れて いるのだろう。― 3社以外の日本の造船所の動きはどうなのだろう。アフラマックスといえば、かつては多くの造船所 が建造していた船種だから、他の造船所が営業を再開してもおかしくはない。― 名村グループの佐世保重工業は、

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統合前からアフラの新しいデザインを持っていたし、ここ最近は中型船型を中心に建造していたから、建造する可能性 もあると思う。ただ、それ以外の造船所は今のところ話を聞かない。ジャパンマリンユナイテッド(JMU)も、内航2次輸送 向けのアフラマックスの建造実績はここ数年でもあるけど、12万重量㌧超のやや特殊な船型・仕様で、コンベンショナル な船型の受注はない。― ただ、JMUの三島社長は年頭会見の際、「VLCC以外のタンカーも含めて、常にマーケテイン グは行っている」と発言しており、今後参入する動きがないとは言えない。今治造船や三井造船、サノヤス造船にも建 造実績はある。― とはいえ、アフラマックスの営業を再開するとなると、デザインの見直しも必要になる。― 住重は もちろん名村も着々と船型の開発を進めていた。それぞれ船型に違いもある。住重は新船型の11万2,000重量㌧型、名 村は11万5,000重量㌧型、常石は10万5,000重量㌧型だ。住重の新船型は寸法を抑えながら、11万超の載貨重量㌧を確 保した船型で、汎用性が高く、船主の評判も良いと聞く。― アフラマックスの新造需要はもはや2000年代前半以前の ようなボリュームゾーンではなく、顧客もほとんどが海外向け。引き合いは活発だが、そう簡単に営業再開というわけ にもいかないだろう。司会 VLCCの商談はどうか。― バルカ一に比べれば引き合いはあるものの、年初に比べれば 商談もスローダウンしてしまったようだ。― 国内造船所のメーンターゲットとなる邦船社向けのリプレース案件もある が、商談はそれほど急ピッチでは進んでいない。― となると、新共通構造規則(調和化船体構造規則、H-CSR)に対応 した船型が商談の対象になるのだろうか。― そうなるだろう。国内でも既に規制対応型の開発にめどをつけている 造船所もあるが、商談に参加できる造船所は限定的だ。― 日本の造船所はやはりバルカー主体で、バルカーが盛り 上がってこなければ新造船市場は活性化しないね。 ◆新造商談/海外向けアフラ引き合い続く、国内はVLCC焦点 海外からのアフラマックスタンカーの新造引き合いが 続いている。タンカー市況が底堅く、投資環境が整っているため、燃費・環境性能に優れたエコシップにリプレース(代 替)している模様。日本国内関連の原油船の新造引き合いは、VLCC(大型原油タンカー)が引き続き軸となっている。2 万TEUの超大型コンテナ船の新造発注が加速しそうなムードとなり、韓国と日本の造船所を中心に船台確定が進みそ うな中、タンカーの新造発注がどこまで盛り上がるのか新造船市場関係者は注目している。マーケット筋によると、海 外船主によるアフラマックスタンカーの新造引き合いは引き続き堅調。近く具体的な成約も出る見通し。アフラマックス の足元の新造船価レベルは5,350万㌦。バルカーの新造発注が世界的にほぼ止まっている影響により、新造船価相場 はタンカーも全般的に弱含み横ばい基調。ただし、為替の円安傾向により、日本の建造ヤードにとっては韓国勢に比べ 受注に踏み切りやすい環境となっている。昨年来、アフラマックスの新造船受注が表面化しているのは、住友重機械工 業と名村造船所。これに建造実績のあるジャパンマリンユナイテッド(JMU)、今治造船、常石造船がどう絡んでくるのか 注目される。一方、日本国内の原油船新造商談は、日本のオイル・ロードの中心船型であるVLCCの引き合いが水面下で 行われている模様。最近表面化した国内のVLCC新造発注は、明治海運がJMUに発注した2隻(日本郵船用船、2017年8 月、18年後半竣工予定)。足元の新造船マーケットは、原油タンカーに加え、超大型コンテナ船の新造発注も活発。最近 では香港の00CLが2万1,100TEU型6隻プラス・オプション6隻を韓国のサムスン重工業に発注したのに加え、6日には仏C MA-CGMが韓国の韓進重工業に2万600TEU型3隻を発注したことも表面化し、韓国勢が急速に船台を埋めている。 ◆国内造船にも船種変更の要請/バルカーからタンカー、一部合意も ドライバルク市況の低迷長期化を受けて、日本の 造船所にも船主から契約済みのバルカーの新造船を他の船種に変更したいとの要請が寄せられている。工程に混乱が 生じない先物納期の受注船を対象に、友好船主の要望に柔軟に応じる造船所もおり、複数の造船所がバルカーからタ ンカーなどへの変更で交渉を進めていたり、既に船種変更を決めた案件もある。ただ、資機材の発注が済んでいる期 近納期の案件には対応できないほか、船主と造船所が合意に至つても、ファイナンサーの了承を得られず断念するケ ースもあるもようで、成立の条件は限られているようだ。今年に入り、海外の造船所では海外船主による船種変更が数 多く表面化しているが、国内の造船所でも先物納期のバルカーを対象に船種変更の交渉を進めていた。関係筋による と、国内でも複数の造船所が海外船主と船種変更の協議を進めており、既に船種変更をまとめた造船所もある。対象 となったのは、ハンディマックスやパナマックスなどの中型バルカーで、船主と造船所はバルカ一に比べて発注が積み 上がっていないタンカーなどへの船種変更を進めている。国内の造船所も工程に支障が出ず、資機材の発注が済んで いない先物の納期の新造船については、友好船主との関係を重視し、船種変更に協力する姿勢がある。変更に際して は「採算が合うことが大前提」(国内造船所関係者)で、船価面での調整も必要になるが、変更に伴うコストや船価の増 額分は船主が原則負担しており、必ずしもデメリットばかりではないようだ。ただ、既に資機材の発注が済んでいたり、 起工しているケースでは契約変更には物理的に応じることができない。交渉の結果、納期などがネックで合意に至らな かつたものもある。船種変更はファイナンサーとの了承も必要になる。船主と造船所が合意に至っても、金融機関の了 承が得られず、断念するケースもあるという。外銀で一般的なアセット・ファイナンスは船の資産価値に着目して融資す る。金融機関のスタンスや船主の信用力などにもよるが、資産そのものが変更になれば、ファイナンスの前提が根底か ら変わってしまうことになり、金融機関が難色を示すこともあるようだ。さらに船種変更に伴って船価が高くなる場合 には、追加融資の必要もあり、より一層ハードルが高くなる。また、造船所としても、友好船主からの要請に柔軟に対応 する方針とはいえ、資機材の発注が済んでおらず、工程に支障がでない先物に限定すると対応できる案件は多くな い。線表を先まで延ばしていることが大前提になる。加えて船種の変更先となる船種のデザインを造船所が持ってお り、さらにバルカーとの船価がある程度見合う船種となると、「条件を満たせる案件は限定的だろう」(国内造船関係 者)という。市況低迷を背景に海外船主が契約済みの新造船を船種変更する動きが今年に入ってから活発になってお り、海外造船所では用船先の確定していないケープサイズ・バルカーをタンカーやプロダクト船に変更したことが数多 く表面化している。ただ、造船所はキャンセルに比べて引き受ける余地があるとはいえ、納期面などを考慮すると国内 造船所での船種変更の動きは今後限定的との見方もある。 ◆救難艦は三井/救難艇は川重が受注 ≪防衛省の14年度艦艇発注≫防衛省が2014年度予算で新造整備する艦艇 の発注先が出そろった。新たに整備する潜水艦救難艦(ASR)は、三井造船が受注。また、同艦に搭載する深海救難艇(D SRV)は川崎重工業が受注した。三井造船が受注したのは、潜水艦の事故時に乗員救出を行う5,600㌧型潜水艦救難

参照

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