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不妊治療を受けている女性の抱えている悩みと取り組み

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Academic year: 2021

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J. Jpn. Acad. Mid., Vol. 14, No.2, pp.18-27, 2001.2

不妊治 療 を受 けて い る女 性 の抱 えて い る

悩 み と取 り組 み

Aspects

of Suffering

and

the

Coping

Mechanisms

Used

by Women

Undergoing

Infertility

Treatment

長 岡 由 紀 子(Yukiko NAGAOKA)* 要 約 本 研 究 の 目的 は,不 妊 治療 中 の女 性 の抱 え て い る悩 み と取 り組 み を明 らか に し,自 尊 感 情 との関 連 を 探 る こ とで あ る。 不妊 治療 を受 け て い る既 婚 女 性 に研 究 者 作 成 に よ る 自 記 式 質 問 紙 調 査 を依 頼 し,604 名 か ら回 答 を得 た 。 結果 は以 下 の とお りで あ る。 1)因 子 分 析 の 結 果,不 妊 治 療 中 の悩 み は5因 子 が 抽 出 され,「 第1因 子:不 妊 で あ るが ゆ え の傷 つ き や す さ」 「第2因 子:妊 娠 に関 す る不 確 か さ」 が 不 妊 女 性 に とっ て特 徴 的 な悩 みで あ っ た。 2)悩 み に対 す る取 り組 み も5因 子 が抽 出 され,「 第I因 子:不 妊 の経 験 か ら新 しい 価 値 を見 い だ す 」 「第IV因 子:気 楽 に構 え る」 な どの前 向 き な取 り組 み が 特 徴 的 で あ った 。 3)自 尊感 情 得 点 は平 均 的 で あ った が,低 得 点 の女 性 も16.22%認 め られ た 。 重 回帰 分 析 の結 果,自 尊 感情 に最 も影 響 す る取 り組 み は 「内 向 的 ・感 情 的 に対 処 す る」 で あ っ た。 不妊 女性 は さ ま ざ ま な悩 み を抱 えつ つ も自分 な りの や り方 で取 り組 み,時 に は不 妊 を肯 定 的 な体 験 に 変 えて い く とい う側 面 を も って い た。 さ らに,個 々 の対 象 が どの よ うな悩 み を抱 え,ど の よ うに取 り組 ん で い る か を把 握 す る こ との重 要性 が示 唆 され た。 キ ー ワ ー ド 不 妊,悩 み,取 り組 み Abstract

The purpose of this study was to identify aspects of suffering and the coping mechanisms used by women undergoing infertility treatment and to explore the relationships of these aspects and mechanisms to the woman's self-esteem.

The subjects who agreed to participate in the study included 604 married

, infertile women. Data were collected by a self-reported questionnaire developed by the author .

Results :

1. Factor analysis yielded five aspects of suffering among infertile women . A "sense of

vul-*東 京 都 立 保 健 科 学 大 学(Tokyo Metr

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不 妊 治療 を受 けて い る女性 の抱 えて いる悩 み と取 り組 み

nerability related to infertility" and an "uncertainty related to pregnancy" were the most characteristic aspects of suffering identified.

2. Factor analysis also yielded five coping mechanisms found among infertile women. Posi-tive coping mechanisms, such as "finding new values through the experienceof infertility" and "taking things easy" were described as characteristic coping mechanisms.

3. The self-esteem scores were average, but 16.22% of the women belonged to the low score group. The strongest parameter in the self-esteem score was "introversive/emotional

cop-ing behavior".

Infertile women listed many serious forms of suffering. They tried to cope with this suffer-ing in their own way and they described the capability to change the experience of infertility into a positive experience. These findings suggest that it is important to understand the aspects of suffering and the coping mechanisms used by women undergoing infertility treat-ment.

Key Words Infertility, Suffering, Coping mechanisms,

I研 究 の 背 景 と 目 的 子 ど も を欲 しい と切 実 に願 う女 性 や 夫婦 に とっ て,不 妊 は ライ フク ラ イ シス で あ る。 そん な人 び とに とっ て,近 年 の 生 殖 補 助 技 術 の 発 展 は 「福 音 」 とされ る一 方 で,新 た な 問題 を もた ら して い る。 不 妊 治 療 は,そ の特 殊 性 か ら心 身 の苦 痛 が伴 い や す く,焦 燥感 や不 確 か さ,喪 失 感 を抱 く女性 も 少 な くな い1),2)。また,夫 婦 や 家 族 関 係 に さ ま ざ まな影 響 を及 ぼ す こ と も知 られ て い る3)∼6)。これ らの こ とか ら,不 妊 治 療 を受 けて い る女性 は さ ま ざ まな 悩 み を抱 え て い る と考 え られ る。 本 研 究 は,不 妊 治 療 中 の 女性 が どの よ うな悩 み を抱 え,そ れ に対 して ど う取 り組 ん で い るの か を 明 らか に し,自 尊 感 情 との 関連 を探 る こ とを 目的 とした 。 II概 念 枠 組 み 不 妊 治療 中 の生 活 に は,さ まざ まな悩 み が生 じ て い る こ とを前 提 とした。 本 枠 組 みで は,女 性 た ち は そ れ らの 「悩 み」 に対 し,何 らか の 方 法 で 「取 り組 み 」,そ の 結 果 と して の 自分 を 「評 価 」 し て い る と考 えた 。 その評 価 を本 研 究 で は 「自尊 感 情 」 と した 。本 研 究 は 「不 妊 治 療 中 の悩 み」「取 り組 み 」 と,そ れ に 関連 す る 「自尊 感情」 とい う 一連 の プ ロ セ ス を,こ の概 念 枠 組 み を用 い て見 よ う とす る もので あ る。 な お 「不 妊 治 療 中 の 悩 み」 とは,「 不 妊 や 治 療 に関 連 す る 気 が か り,心 配 事 な ど」 と し,「取 り 組 み」 は 「悩 み に対 す る反 応 で あ り,認 知 ・感 情 ・行 動 な どの 対 処 方 法 全般 」 と した。 III研 究 方 法 1.研 究対 象 不妊 治療 中の 既婚 女性798名 を対 象 と した。 2.測 定 用 具 測 定 項 目 は,「 不 妊 治 療 中 の 悩 み」,「取 り組 み 」,自 尊 感情 で あ る。 「不 妊 治 療 中 の悩 み」 ① 質 問紙 作 成 過 程 と概 要 不妊 に 関 す る既 存 の 研 究 か ら,〈 傷 つ く〉 〈不 確 か さ〉 〈孤 独 感 〉 〈夫 婦 の つ な が り〉 〈生 活 上 の 困 難 さ〉 〈医 療 者 との 関係 〉 〈治 療 や 治療 環 境 に 関 す る気 が か り〉 とい う7つ の 構 成概 念 を抽 出 した。 各 構 成概 念 は4∼8の 質 問 項 目か ら構 成 し,計43 項 目 と した。 測 定 尺 度 は 「全 く悩 ん で い な い 」 を1点,「 非 常 に悩 ん で い る」 を5点 とした5段 階 の リッ カー ト尺 度 を用 い,悩 みが 深 い ほ ど得 点 が 高 くな る よ う に作 成 した。 ② 本 研 究 で の妥 当性 と信 頼 性

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不妊 治 療 を受 け てい る女性 の抱 え て いる悩 み と取 り組 み 内容 妥 当性 に つ いて は,修 士 の 学 位 を有 す る母 性 看 護 の教 員 お よ び臨 床 経 験 の あ る修 士 課 程 の 学 生 数 名 と共 に検 討 した 。 構 成 概 念 妥 当性 は因 子 分 析 の結 果 を確 認 した 。7つ の構 成概 念 の うち,5 つ は再 分 類 され る こ とな く因 子 を構 成 した こ とか ら,構 成 概 念 妥 当性 はほ ぼ 支持 され た。 内 的一 貫 性 を示 すCronbach'sα は質 問紙 全 体 で.93,各 因 子 は.78∼.91で あ り,内 的 一 貫 性 は 保 たれ た 。 悩 み への 「取 り組 み」 ① 質 問 紙 作 成過 程 と概 要 既 存 の 文献 よ り7つ の構 成 概 念 〈知 識 情 報 の 獲 得 〉 〈他 者 か らの支 援 を受 け る〉 〈悩 み に立 ち 向 か う〉 〈不 妊 とかか わ る〉 〈不 妊 の 価 値 を見 い だ す 〉 〈外 志 向 的 な感 情 の コ ン トロー ル〉 〈内 志 向 的 な感 情 の コ ン トロー ル〉 を抽 出 した 。 各構 成 概 念 は4 ∼8の 質 問項 目 か ら構 成 し,計35項 目 と した。 測 定 尺 度 は 「全 く しな い 」 を1点,「 非 常 に よ くす る」 を5点 とした5段 階 の リッカ ー ト尺 度 を 用 い,取 り組 ん でい る ほ ど得 点 が 高 くな る よ うに 作 成 した。 ② 本 研 究 で の妥 当 性 と信頼 性 内容 妥 当 性 は母 性 看護 の教 員,修 士 の学 生 数 名 と検 討 した。 構 成概 念 妥 当性 は因 子 分 析 の 結 果 を 確 認 した が,7概 念 の うち6つ は,2∼4項 目ず つ再 分 類 され,4因 子 に吸 収 され た こ とか ら若 干 の問 題 が 残 され た。 Cronbach'sα は 質 問 紙 全 体 で.85,各 因 子 は .70∼.84で あ り,内 的 一 貫 性 は保 た れ た 。 自尊 感情(Self-Esteem) Rosenberg,M.の 日 本 語 版Self-Esteem尺 度 を用 い た。 自尊 感 情 は,自 己 に対 す る肯 定 的 また は否 定 的 な態 度 で あ り,自 尊 感 情 が高 い こ とは 自 分 自 身 を こ れ で よ い(good enough)と 感 ず る こ とを意 味 す る7)と され て い る。 質 問 項 目 は10項 目か ら成 り,4段 階 の リ ッカ ー ト尺 度 を用 い て い るた め,得 点 の範 囲 は10∼40点 を とる。20点 以 下 は低 得 点,30点 以 上 は高 得 点 と され て い る8)。 な お,信 頼 性 ・妥 当 性 は す で に検 証 さ れ て い る。本 研 究 で のCronbach'sα は.85で あ った 。 3.調 査 期 間 本 調 査 は1998年8月7日 ∼10月30日 で あ った 。 4.調 査 手 順 と方 法 1)予 備 調 査 不 妊 治療 中 の 女 性7名 を対 象 に プ レテ ス トを実 施 し,文 章 表 現 お よび 尺 度 構 成 を修 正 した。 2)デ ー タ収 集 の 方 法 研 究 対 象 施 設 は,偶 発 的標 本 抽 出 法 を用 い,不 妊 外 来 の あ る関 東 地 方 の4医 療 機 関 と,不 妊 女 性 の 自助 グル ー プ1団 体 を抽 出 した。 対 象者 へ の質 問 紙 の 配 布 は研 究 者 が 行 い,郵 送 法 で 回収 した。 5.分 析 方 法

分 析 に は統 計 パ ッケ ー ジHALBAU for Win-dows Ver5.22を 用 い,基 本 統 計 量 の 算 出,因 子 分 析,一 元 配 置 分 散 分 析,重 回 帰 分 析 等 を行 っ た。 有 意 水 準 の 表 記 に つ い て は,p値 が.0001よ り小 さ い場 合 に はp<.0001と した。 6.倫 理 上 の 配 慮 研 究 協 力 に よ る心 理 的 侵 襲 が生 じな い よ うに, 以 下 の 点 に配 慮 した 。 1)調 査 協 力 の 依 頼 は,文 書 あ る い は 口 頭 で 行 い,承 諾 が 得 られ た 時 点 で質 問 紙 を配 布 し,郵 送 法 で 回収 した 。 2)調 査 中 に何 か 問題 が 生 じた 場 合 の対 処 方 法 に つ い て,サ ポ ー ト体 制 を整 え て お いた 。 3)匿 名 性 を厳 守 した 。 な お,本 研 究 の研 究 計 画 書 と質 問 紙 は聖 路加 看 護 大 学 研 究 倫 理 審 査 委 員 会 で承 認 され た 。 IV結 果 質 問 紙 は798部 配 布 し,有 効 回 答 は604部 (75.70%)得 られ た。 1.対 象 の 特 性 対 象 の 平 均 年 齢 は,32.79±4.07歳 で あ り, 31∼35歳 が 全 体 の45.20%を 占め た 。 不 妊 治 療 期 間 は,平 均3.20±2.91年 で あ り,5 年 以 下 が83.93%を 占 め た 。 不 妊 の 原 因 は,女 性 因 子 が235名(38.91%)と

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不 妊 治療 を受 けてい る女性 の抱 えて い る悩 み と取 り組 み 多 く,全 体 の4割 を 占 めた 。 また,男 女 双 方 の 原 因 は127名(21.03%),原 因 不 明 は108名(17.89 %)男 性 因 子 は77名(12.75%)で あ った 。 治 療 の 種 類 は,一 般 不 妊 治 療 が376名(62.25 %),高 度 生 殖 医 療 が217名(35.93%)で あ った。 2.不 妊 治 療 中 の悩 み 1)不 妊 治 療 中の悩 みの 構 成 概 念 因 子 分 析(varimax法)の 結 果,35項 目5因 子 が抽 出 され た(表1)。 第1∼ 第5因 子 まで の 累 積 寄 与 率 は56.90%で あ り,各 因子 の寄 与 率 は第1因 子 が 約16%と 大 き な割 合 を 占 め る結 果 とな っ た。 2)各 因子 の 概 要 第1因 子 は,子 ど もの有 無 を話 題 に され た り他 者 か ら干 渉 さ れ,不 妊 を想 起 させ られ る こ とに よ る傷 つ きや す さ とい う悩 み で あ り 「不妊 で あ るが ゆ えの 傷 つ きや す さ」(以 下,傷 つ きや す さ)に 関連 す る悩 み で あ った。 第2因 子 は,本 当 に妊 娠 す るの か,自 分 の 人 生 は ど うな る のか,自 分 は妊 娠 す る人 と ど こが 違 う の か な ど,「妊 娠 に関 す る不 確 か さ」(以 下,不 確 か さ)に 関 連 す る悩 み で あ った 。 第3因 子 は,医 師,看 護 婦 の 態度 や コ ミュニ ケ ー シ ョ ンに関 す る悩 み と,治 療 方 針 や プ ラ イバ シ ー な ど 「医 療 者 や 治療 環 境 との か か わ り」(以 下 , 医療 者 ・環 境)に 関連 す る悩 み で あ っ た。 第4因 子 は,不 妊 に関 し て話 した り相 談 で き る 理 解 者 が い な い と い う 「不 妊 で あ るが ゆ え の 孤 独 」(以 下,孤 独)に 関 連 す る悩 みで あ った。 第5因 子 は,治 療 に関 す る夫 の 思 いや 協 力 の 程 度,夫 婦 関係 の変 化 等 の 「治療 を続 けて い くうえ で の夫 婦 関 係 」(以 下,夫 婦 関係)に 関連 す る悩 み で あ った。 3.悩 み への 取 り組 み 1)取 り組 み の構 成 概 念 因 子 分 析(Varimax法)の 結 果,28項 目5因 子 が 抽 出 され た(表2)。 第I∼ 第V因 子 まで の累 積 寄 与 率 は50.75%で, 各 因 子 は約8∼12%と 同程 度 の 寄 与 率 で あ っ た。 2)各 因子 の概 要 第I因 子 は,不 妊 に な った こ と に よる気 づ きや 学 び か ら,不 妊 を と らえ直 し,不 妊 の別 の価 値 を 見 い だ す とい う 「不 妊 の経 験 か ら新 し い価 値 を見 い だ す 」(以 下,価 値 を見 い だ す)と い う取 り組 み で あ っ た。 第II因 子 は,不 妊 の悩 み と 向 き合 っ た り,解 決 ・軽 減 す るた め に,不 妊 の 仲 間 や 良 き理 解 者 を 必 要 とす る 「誰 か を必 要 と しな が ら不 妊 と向 き合 う」(以 下,不 妊 と向 き合 う)取 り組 み で あ った 。 第III因子 は,落 ち 込 む,泣 く,怒 る,自 分 を責 め る等 の 「内 向 的 ・感 情 的 に対 処 す る」(以 下, 内 向 的 ・感 情 的 対処)と い う取 り組 み で あ った 。 第IV因 子 は,悩 み はあ っ て も気 分 転 換 した り, 深 刻 に考 えな い よ うに す る,自 分 な りに原 因 につ い て考 え る な ど 「気 楽 に構 え る」 とい う取 り組 み で あ った 。 第V因 子 は,悩 み に 関 して医 師 や 看 護 婦 に支 援 を 求 め る 「医 療 者 に 支 援 を求 め る」(以 下,医 療 者 の支 援)と い う取 り組 みで あ った 。 4.悩 み 因 子 と取 り組 み 因 子 との 関 係 不 妊 治 療 中 の 悩 み と取 り組 み の 各 因 子 の 関 係 を,ピ ア ソ ンの積 率 相 関 係 数 の算 出 を もと に検 討 した(表3)。 その 結 果,悩 み の5因 子 す べ て と取 り組 み の第 III因子 「内 向 的 ・感 情 的 対 処 」 との 間 に は有 意 な 弱 ∼ 中 程 度 の 正 の 相 関(r=.23∼.56,p <.0001)が 認 め られ た。 この こ とか ら,こ れ ら の 悩み は 「内 向的 ・感 情 的 」 な方 法 に よっ て対 処 され る傾 向 に あ る とい う結 果 を得 た 。 5.自 尊 感情 自 尊 感 情 得 点(以 下,SE得 点)の 平 均 は 25.72±5.49点 で,先 行 研 究9)と 類 似 す る結 果 で あ っ た 。 し か し,98名(16.22%)は20点 以 下 の 低 得 点群(以 下,低SE群)に 属 した。 次 に,SE得 点 別 の グ ル ー プ を水 準 と して,取 り組 み の各 因 子 ご とに一 元 配 置 分 散 分 析 お よび 多 重 比 較(Scheffe法)を 行 っ た(表4)。 そ の 結 果,自 尊 感 情 が 高 い グル ー プの 女 性 た ち は低 い グ ル ー プの人 た ち よ り も第I,第IV,第V因 子 の 取 り組 み を よ り多 く用 い る傾 向 に あ った 。 そ の一 方 で,第III因 子 の 「内向 的 ・感 情 的 対 処 」 の 得 点 は 自尊 感 情 の低 い グル ー プ に有 意 に高 か った(F=

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不 妊 治療 を受 け て い る女 性 の抱 え てい る悩 み と取 り組 み 表1「 不 妊治療中 の悩 み」の因子分 析 直 交 回 転(Varimax法):因 子 負 荷 量 ・共 通 性 因 子 負 荷 量 の2乗 和5.661 4.279 4.116 2.950 2.911 因 子 の 寄 与 率(%)16.173 12.226 11.760 8.427 8 .317 累 積 寄 与 率(%)16.173 28.399 40.159 48.586 56.903

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不妊 治療 を受 けて い る女性 の抱 え てい る悩 み と取 り組 み 表2「 取 り組み」 の因子分析 直 交 回 転(Varimax法):因 子 負 荷 量 ・共 通 性 因 子 負 荷 量 の2乗 和3.224 3.222 2.978 2.553 2.232 因 子 の 寄 与 率(%)11.515 11.506 10.636 9.119 7.970 累 積 寄 与 率(%)11.515 23.021 33.657 42.776 50.746 39.80,p<.0001)こ と か ら,「 内 向 的 ・感 情 的 対 処 」 を 多 く用 い て い る場 合 に は,自 尊 感 情 は よ り低 い グ ル ー プ に 属 す る と い う 結 果 を 得 た 。 6.悩 み と取 り組 み,自 尊 感 情 との 関 係 1)自 尊 感情 に 影 響 して い る取 り組 み 自尊感 情 を基 準 変 数,取 り組 み の第I∼ 第V因 子 を説 明 変 数 と し,変 数 減 増 法 に よ る重 回 帰 分 析 日本 助 産学 会誌 第14巻 第2号(2001.2) 23

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不妊 治 療 を受 けて い る女性 の抱 えて い る悩 み と取 り組 み 表3不 妊 治療 中 の 「悩 み/取 り組 み」 の各 因子 間 の相 関関係 表4自 尊感 情得点 別 にみ る 「取 り組 み」因子 との比 較 図1自 尊感 情 に影響 す る取 り組 み因 子(N=604) を行 っ た(図1)。 そ の 結 果,第III因 子 「内 向 的 ・感 情 的対 処 」,第IV因 子 「気楽 に構 え る」,第 V因 子 「医療 者 の 支援 」 が 自尊 感 情 に影 響 す る変 数 と して選 択 され,全 体 の28%を 説 明 す る こ とが わ か っ た。 中 で も 「内 向 的 ・感 情 的 対 処 」 は 自尊 感 情 を予 測 す る変 数 と して 最 も影 響 が 強 い とい う 結 果 を得 た。 2)「 内 向 的 ・感 情 的 対 処 」 に 影響 して い る悩 み さ ら に 「内 向 的 ・感 情 的対 処 」 を予 測 す る悩 み 図2「 内 向的 ・感情 的 に対処 す る」 に影響 す る悩 み因子 を探 るた め に,変 数 減 増 法 に よ る重 回 帰 分 析 を行 った(図2)。 そ の 結 果,第1因 子 「傷 つ き や す さ」 と第2因 子 「不 確 か さ」 とい う悩 み に よ り, 38%説 明 で きる こ とが わ か っ た。 特 に 「傷 つ きや す さ」 が 最 も影響 の 強 い変 数 で あ った 。 V考 察 本 研 究 の対 象者 の,年 齢,不 妊 治 療 期 間,不 妊 24 日本助 産 学会 誌 第14巻 第2号(2001.2)

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不妊 治療 を受 けて いる女 性の 抱 えて い る悩 み と取 り組 み 原 因 等 の 特 性 は,厚 生 省 の大 規 模 な 調 査10)と 類 似 した結 果 で あ った 。 した が っ て,本 研 究 の対 象 者 は わが 国 の一 般 的 な不 妊 治 療 中 の女 性 の母 集 団 と大 差 は な い と考 え る。 1.不 妊 女性 に特 徴 的 な 「傷 つ きや す さ」 と 「不 確 か さ」 とい う悩 み 「傷 つ きや す さ」 と は,子 ど もが い な い こ とを 話 題 に され た り他 者 に干 渉 され る こ とで,自 分 が 不 妊 で あ る こ と を想 起 させ られ るた め に生 じ る悩 み で あ る。 「傷 つ きや す さ」 が 不 妊 女 性 の 特 徴 で あ る こ とは,岸 田11)の 研 究 と同 様 の 結 果 で あ っ た。 また,大 日 向12)が,不 妊 女 性 た ち の苦 悩 の 多 くは子 ど もの い な い こ とに関 す る周 囲 の 心 な い 対 応 に よ っ てか き立 て られ て い る と述 べ て い る こ とや,Callan13)が 不 妊 女 性 の80%は 他 者 か らネ ガ テ ィブ な コ メ ン トを受 け て い る と して い る の は,本 研 究 と同 様 の視 点 で あ った。 日本 で は 「結 婚 して3年,子 な き嫁 は去 る」 と 言 わ れ て い た時 代 が あ り,現 在 で も家 や跡 継 ぎの 存 在 が 重 ん じ られ て い る。Downey14)が,文 化 ・ 宗 教 的 に子 ど もを もつ こ とに高 い価 値 を置 いて い る所 で は(不 妊)カ ップ ル の失 望 感 や罪 悪 感 は強 い として い る こ とか ら,子 ど もの 存在 に対 す る 日 本 の 文 化 ・社 会 的 な背景 も不 妊 女性 の傷 つ きや す さ を助 長 し,悩 み を引 き起 こす と推察 され る。 「不 確 か さ」 も不 妊 女 性 に と って 深 刻 な悩 み の 一 つ で あ り,Sandelowski15)の 不 妊 治 療 の 効 果 や 副 作 用 に対 す る不 確 か さ」,遠 藤16)の 「治 療 に関 す る不 確 か さ」 「結 果 や経 過 に関 す る不 確 か さ」,と 類 似 の結 果 で あ った 。 科 学 が 発 展 した 現 代 で もな お妊 娠 の メカ ニ ズ ム につ いて は不 明 な部 分 が 多 く,治 療 が 成 功 す る とい う100%の 保 証 は な い。 た とえ妊 娠 す る と して も,い つ にな る のか 誰 に もわ か らな い。 この よ うな背 景 や不 妊 治 療 の 特 殊 性 も不 確 か さの悩 み を引 き起 こす一 因 と考 え られ る。 ま た,Mishel17)は,人 は 不 確 か な状 況 に あ る ときや その 結 果 を正 確 に予 測 で きな い と き,物 事 に確 実 な価 値 を置 くこ とは難 しい と して い る。 つ ま り不 確 か さの 渦 中 に い る とき に は,受 け て い る 治 療 や 医 師 の診 断,治 療 継 続 とい う選 択,妊 娠 し な い 自分 の身 体 等 に確 実 な価 値 が 置 け な くな る。 その た め,治 療 中 に は不 確 か さ の悩 み が深 刻 化 し て い くと推 察 され る。 しか し,そ の一 方 で 「次 こ そ妊 娠 す るか も」 とい うよ うな,不 確 かで あ るが ゆ え の 希 望 も生 じ て い る と考 え ら れ る。 そ の た め,個 々 の対 象 が不 確 か さ の悩 み を どの よ うに と らえ てい るの か探 っ て い く必 要 が あ る。 2.不 妊 女性 の 前 向 き な取 り組 み 「価 値 を見 い だ す 」 は不 妊 とい う経 験 を 自分 に とっ て意 味 あ る もの と考 え,価 値 を転 換 させ て い く とい う取 り組 み で あ っ た。 この よ うな取 り組 み は森18)の 研 究 で も報 告 さ れ て い る が,こ れ ま で 行 っ て きた海 外 文 献 の検 討 で は この よ うな 記述 は 見 あた らな か っ た。 この こ とか ら,不 妊 とい う危 機 的 な状 況 の 中 で も肯 定 的 な意 味付 け を し,新 し い価 値 を見 い だ す とい う取 り組 み は 日本 の 不妊 女 性 の特 徴 とい え る か も しれ な い。 また 「気楽 に構 え る」 は,悩 み を もち つ つ も, 深 刻 に考 え込 まな い よう に,気 分 転換 をは か り上 手 につ き あ って い く取 り組 みで あ った 。 不妊 や不 妊 治 療 に伴 って生 じて くる悩 み に は,す ぐに解 決 で き ない もの,自 分 の努 力 だ けで は ど うに もな ら な い もの が 多 い。 今 回 の対 象 者 の 平 均 治療 期 間 は 3年 を超 えて い る こ とな どか ら も,気 分転 換 を し つ つ,悩 み と適 当 な距 離 を保 ち,不 妊 とつ きあ っ て い く とい う構 えが 必 要 と考 え られ る。 そ の た め,こ の よ うな取 り組 みが 用 い られ て いた と推 察 され る。 先 行 研 究 の 多 くは,不 妊 や 治 療 に伴 う心 理 的 影 響 に焦 点 が 向 け られ て い た た め,不 妊 女 性 は ス ト レス や不 安,鬱 が 強 く,神 経 症 に近 い傾 向 が あ る とい う よ う な と ら え 方 を され て き た。 本 研 究 で も,「 内 向 的 ・感 情 的 対 処 」 は悩 み の5因 子 す べ て と相 関 が 認 め られ た こ とか ら,さ まざ まな悩 み に対 して用 い られ る取 り組 み で あ る こ とが 明 らか に な っ た。 しか しそ の一 方 で,前 述 の 「価 値 を見 い だ す」 や 「気 楽 に構 える 」 とい う前 向 きな取 り 組 み も用 い られ て いた こ とか ら,不 妊 女 性 は不 妊 とい う危 機 的 な状 況 の 中 で さ ま ざ まな悩 み を抱 え つ つ も,自 分 な りの や り方 で取 り組 み,時 に は不 妊 を肯 定 的 な体 験 に変 えて い くと い う側 面 を も っ た 女性 で あ る こ とが 明 らか に な った 。 この 点 は先 行 研 究 に は な い新 た な知 見 で あ った 。 日本 助 産 学 会 誌 第14巻 第2号(2001.2) 25

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不 妊 治療 を受 けて い る女性 の抱 えて い る悩 み と取 り組 み 3.不 妊 女性 の 自尊 感 情 本研 究 の対 象者 のSE得 点 は平 均 的 で あ っ た こ とか ら,多 くの女 性 た ち は,不 妊 で あ っ て も自分 自身 の価 値 に変 わ りは な い と,あ るが ま まの 自分 を受 け入 れ る こ とがで きて い る ので は な いか と推 察 され た。 不 妊 看 護 に お い て,自 尊 感 情 を適 切 に保 つ た め の 援 助 は重 要 と され て い る19).20)。そ の た め,重 回帰 分 析 の結 果 が 示 す よ う に,悩 み に対 して は, 泣 い た り自分 を責 め る な どの 「内 向 的 ・感情 的対 処 」 よ り も 「気 楽 に構 え る」 とい った取 り組 み が 用 い られ る よ う な援 助 が 必 要 と考 え られ る。 さ らに 「内 向 的 ・感 情 的対 処 」 に影 響 す る悩 み は 「傷 つ きや す さ」 と 「不確 か さ」 で あ っ た こ と か ら,こ れ らの 悩 み が 深 い場 合 に は 自尊 感 情 が低 下 して い る可 能 性 が あ る。以 上 の こ とか ら悩 み や 取 り組 み,自 尊 感情 は相 互 に 関連 し合 っ て い る こ とを念 頭 にお き,対 象 の理 解 を深 め,援 助 し て い く必 要 が あ る。 VI結 論 1.不 妊 治療 中 の悩 み は 「不 妊 で あ るが ゆ えの 傷 つ きや す さ」 「妊 娠 に関 す る不 確 か さ」 「医 療 者 や 治 療 環 境 との か か わ り」 「不 妊 で あ るが ゆ え の孤 独 」 「治 療 を続 けて い く上 で の 夫 婦 関 係 」 の5つ に大 別 され た。 2.悩 み に対 す る取 り組 み は 「不妊 の経 験 か ら新 しい価 値 を見 いだ す 」 「誰 か を必 要 と しな が ら 悩 み に 立 ち 向 か う」 「内 向 的 ・感 情 的 に対 処 す る」 「気楽 に構 え る」 「医療 者 に 支援 を求 め る」 の5つ に大 別 され た 。 3.自 尊 感 情 得 点 は25.72点 と平 均 的 で あ った が, 低 得 点(20点 以 下)と さ れ る女 性 も16.22%認 め られ た 。 自尊 感 情 に最 も影 響 す る の は 「内 向 的 ・感 情 的 に対 処 す る」 とい う取 り組 み で あ り,さ らに これ に は 「不 妊 で あ るが ゆ えの 傷 つ きや す さ」,「妊 娠 に関 す る不 確 か さ」 とい う悩 み が影 響 して い た。 謝 辞 本研 究 に快 くご協 力 いた だ いた対 象 者 の皆 様,医 療 機 関,自 助 グル ー プの皆 様 方 に心 か ら感謝 いた し ます。 また,研 究 の ご指 導 を くだ さい ま した聖 路加 看 護 大 学の堀 内成子 先生 に心 よ り感謝 申 し上 げ ます。 本 研 究 は1998年 度 聖路 加 看護 大 学 大学 院 博 士課 程 前 期(修 士)課 程 の修士 論 文 と して 提 出 した もの の 一部 であ る。 引用 文 献

1 ) Olshansky, E. F. : Responses to High Technology Infertility Treatment, IMAGE : Journal of Nurs-ing Scholarship, 20 (3), pp. 128-131, 1988. 2) Sandelowski, M. et al. : Women's Experiences of

Infertility, IMAGE : Journal of Nursing Scholar-ship, 18 (4), pp. 140-144, 1986.

3) Menning, B. E. : The Psychosocial Impact of In-fertility, Nursing Clinics of North America, 17

(1), pp.155-163, 1982.

4) Draya, M. A. et al. : Coping with Infertility in Couples ; Gender Differences, Health Care for Women International, 9, pp. 163-175, 1988. 5) Lalos, A. et al. : Depression, Guilt and Isolation

among Infertile Women and their Partners, J. of Psychosomatic Obstertics and Gynecology, 5, pp. 197-206, 1986.

6) Klein, R. D. ed., 1989, Infertility-Women's Speak

out, Pergmon Press, レ ナ ー テ ク ラ イ ン 編, フ ィ ン レ ー ジ の 会 訳, 『不 妊 ― 今 何 が お こ な わ れ て い る の か 』, 晶 文 社, 1994. 7) 遠 藤 辰 雄, 他 編: セ ル フ エ ス テ ィ ー ム の 心 理 学 ∼ 自 己 価 値 の 探 求 ∼, pp.26-27, ナ カ ニ シ ャ 出 版, 1992. 8) 菅 佐 和 子: SE(Self-Esteem)に つ い て, 看 護 研 究, 17(2), pp.117-123, 1984. 9) 野 澤 美 江 子: 不 妊 治 療 を受 け て い る 女 性 の 自尊 感 情 に 関 す る 研 究, 山 梨 県 立 看 護 短 期 大 学 紀 要, 3(1), pp. 11-26,1997. 10) 矢 内 原 巧, 他: 不 妊 治 療 の 実 態 な ら び に 不 妊 治 療 技 術 の 適 用 に 関 す る研 究, 平 成9年 度 厚 生 省 心 身 障 害 研 究 「不 妊 治 療 の あ り 方 に 関 す る研 究 」 分 担 報 告 書, pp . 13-16, 1997. 11) 岸 田 佐 智: 体 外 受 精 適 応 と な っ た 不 妊 女 性 の 対 処 行 動, 聖 路 加 看 護 大 学 大 学 院 修 士 論 文, 1987. 12) 大 日 向 雅 美:母 性 は 女 の 勲 章 で す か? , 扶 桑 社, 1992.

13) Callan, V. J. et al. : Strategies for Coping with In-fertility, British Journal of Medical Psychology, 62, pp.343-354, 1989.

14) Downey, J. et al. : Infertility and the New Repro-ductive Technologies ; Psychological Aspects fo Women's Health Care, American Psychiatric Press Inc, pp.193-206, 1993.

15) 2) pp.140-144, 1986 .

16) 遠 藤 恵 子, 他: 体 外 受 精 を 受 け る 女 性 の 不 確 か さ に 関 す る研 究, 母 性 衛 生, 37(4), pp.473-480, 1996.

(10)

不 妊治 療 を受 けて い る女 性 の抱 えて い る悩 み と取 り組 み

17) Mishel, M. H.: Perceived Uncertainly and Stress in Illness, Research in Nursing and Health, 7, pp.163-171, 1984. 18) 森 明 子, 他: 不 妊 治 療 を受 け て い る女 性 の治 療 ・ 生 活 ・ 家族 に関 す る認識 を構 成す る因 子 の分析 (分担研 究: 不 妊 治療 の実 態及 び不 妊治療 技術 の適 応 に関 す る 研 究) , 平 成9年 度厚 生省 心 身 障害 研 究 「不妊 治療 の あ り方 に関 す る研 究 」分 担 研 究 報 告 書, pp.17-20, 1987.

19) Johnson, C. L.: Regaining self-esteem; Strategies and Intervention for the Infertile Woman, Jour-nal of Gynecology Neonatal Nursing, May, 25 (5), pp. 291-295, 1996.

20) Nancy, F. W. et al.: Infertility; Women's Experi-ences, Health Care for Women International, 12

参照

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