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チーム医療としての栄養管理における理学療法士の役割

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 677 ~ 678 チーム医療としての栄養管理における理学療法士の役割 頁(2015 年). 677. 合同シンポジウム 5(日本静脈経腸栄養学会). チーム医療としての栄養管理における理学療法士の役割* 高 橋 浩 平**. はじめに. ・社会生活環境(飢餓). - 慢性的な飢餓 - 神経性食思不振症 - 絶食や不適切な栄養管理,など. 2010(平成 22)年に日本静脈経腸栄養学会が認定する NST (Nutritional Support Team)専門療法士の資格対象に理学療 法士等が新たに加わった。栄養管理において理学療法士もチー. エネルギー 消費量. ム医療としてかかわることが求められている。. エネルギー 摂取量. リハビリテーション(以下,リハ)を実施している高齢の入 院患者は低栄養を合併していることが多く,その割合は 49 ~ 1) 67%であったとの報告がある 。低栄養の場合,機能回復が不. 良となり,QOL が低下,再入院率,死亡率が増加する 2)。そ のことから,近年リハと栄養管理を併用したリハ栄養の有用性. ・急性疾患・損傷(侵襲). - 外傷,手術,敗血症,発熱,など. ・慢性疾患(悪液質). - がん,関節リウマチ,慢性心不全・ 慢性呼吸不全,慢性腎不全,など. が報告されている 3)。リハ栄養により高齢者や障害者の身体機. 低栄養 (体重減少,サルコぺニア). 能,ADL,QOL がより向上することが期待される。リハ栄養 管理は多職種が連携したチーム医療として進めることが重要で. 図 低栄養の原因. ある。そのために理学療法士は基本的な栄養の知識が必要とな る。特に低栄養の有無や原因を評価することと,その際の代謝 変動を理解しておくことは,理学療法のリスク管理としても大. 反応が発生し,損傷を受けた組織の修復および免疫系を活性化. 切である。. させるために,より多くのエネルギーが産生される。この際に. 低栄養の原因と代謝変動. も筋蛋白がアミノ酸に分解され,これを基質とした糖新生によ り供給される。侵襲が大きいほど筋蛋白の喪失も大きくなる。. 低栄養は生体に必要な栄養素が不足することで生じる。成人. 疾患の治療が奏功すると,炎症や代謝亢進も改善し,同化期に. の低栄養の原因として,急性疾患・損傷(侵襲),慢性疾患(悪. 至る。. 液質),社会生活環境(飢餓)の 3 つに分類されている 4)。つ. がんや関節リウマチ,慢性心不全,慢性腎不全,慢性呼吸不. まり単純に食べないからだけでなく,疾患によってエネルギー. 全などの慢性疾患による複雑な代謝変動で生じた低栄養を悪液. 消費量が亢進することで低栄養が生じることがある(図)。ま. 質と呼ぶ。慢性疾患は炎症性サイトカインが活性化した全身性. た,運動はエネルギー消費を増大させる因子であるため,運動. 疾患であり,持続的かつ慢性的な炎症により,食欲不振,筋蛋. 療法を提供する我々は,特に栄養状態やエネルギー代謝に注意. 白分解の亢進および合成能の低下,インスリン抵抗性,性腺機. を向けていく必要がある。. 能低下,貧血などが生じ,栄養状態や身体機能が低下していく. 飢餓時は肝臓,筋肉内に貯蔵されたグリコーゲンは枯渇する. 5) と考えられている 。. ため,脂肪や筋蛋白を分解して糖新生を行うことで,エネル ギーが産生される。このような状態での過度な運動は筋蛋白分. 低栄養の評価. 解を助長してしまう可能性がある。. 低栄養の評価では,主観的包括的評価(Subjective Global. 急性疾患・損傷など身体に侵襲が加わると,傷害期,異化期,. Assessment:SGA)や簡易栄養状態評価法(Mini Nutritional. 同化期といった代謝変動の経過をたどる。異化期では強い炎症. Assessment-Short Form:MNA®-SF)がスクリーニングとして 有用である。食事摂取量低下と体重減少が伴えば低栄養の可能. *. The Role of Physical Therapists in Nutritional Management as a Team Approached Medicine ** 田村外科病院リハビリテーション科 (〒 212–0005 神奈川県川崎市幸区戸手 1–9–13) Kohei Takahashi, PT: Tamura Surgical Hospital, Department of Rehabilitation キーワード:リハビリテーション栄養,理学療法,低栄養. 性が高いため,理学療法実施時には最低限確認する必要がある。 生化学的検査も有用である。アルブミンは栄養指標として用 いられることが多いが,炎症や脱水,肝機能障害などで変動す るので注意を要する。その他の指標と合わせて評価する必要が ある。CRP(C-reactive protein)は炎症の指標であるが,低.

(2) 678. 理学療法学 第 42 巻第 8 号 10). 栄養の原因を判断するうえで参考になる。飢餓のみであれば. 以上行っている場合には 1.5 ~ 2.0 とされている. CRP は上昇しないが,侵襲異化期では高値になる。仮説であ. 進や不随運動を認める場合には,活動係数を 0.1 ~ 0.2 高く設. るが,CRP が 3  mg/dL 以下であれば同化期に移行したと考え. 定する。ただし,これらは推定であるため,前述の栄養評価を. る。悪液質の診断基準ではアルブミン 3.2  g/dL 以下,ヘモグ. 用いてモニタリングすることが重要である。. ロビン 12 g/dL 以下,CRP0.5 mg/dL 以上が検査値異常として. 3.食支援. 挙げられている 5)。. 要支援・要介護高齢者では食事の満足度に食事の内容や質,. また近年,栄養評価として身体機能評価が重要視されてきて. 環境以外にも食事動作や疲労感,姿勢,嚥下能力などがかか. おり,理学療法士が協働することが望まれている 6)。具体的に. わっていたことが報告されている 11)。よい姿勢で楽に食べら. は,上腕周囲長や下腿周囲長などの四肢周径,握力や徒手筋力. れることが,食事満足度に影響する因子と考えられる 11)。座. テスト,ハンドヘルドダイナモメーターでの筋力評価,歩行速. 位訓練や姿勢調整は頸部,体幹の安定性が向上し,食べやすさ. 度や Timed Up & Go テスト,6 分間歩行距離の身体機能評価,. や嚥下機能の改善が期待される。呼吸リハによる呼吸の安定化. ADL 評価が栄養評価指標として挙げられている 6)。我々が日. は誤嚥を予防する可能性がある。「食べること」への支援は,. 常的に行っている評価がそのまま栄養評価として有用となる。. 社会参加,生活機能の向上,コミュニケーションの回復,食欲. 栄養管理における理学療法士の役割. 。筋緊張亢. の回復や規則的な便通といった生体リズムの保持へとつなが り,楽しみや生きがいのうえから重要である 12)。QOL 向上を. 理学療法士は常に栄養管理のアウトカムを診ているという自. めざし,食支援にも理学療法士は積極的にかかわって行くこと. 覚をもち,NST などで身体機能や ADL 評価を報告することが重. が望まれる。. 要な役割のひとつである。その他にも理学療法士の役割として, 1.栄養状態に合わせた運動療法. おわりに. 2.エネルギー必要量の算出,活動量の報告. チーム医療として栄養管理を進めていくうえで,理学療法士. 3.食支援,などがある。. が貢献できること,専門性を活かせることは多い。栄養管理に. 1.栄養状態に合わせた適切な運動療法. 理学療法士がかかわらなければ,評価や介入が不十分になりか. 代謝変動を考慮した運動療法を実施することで,栄養状態の. ねない。積極的に参画する理学療法士が増えることが望まれ. 悪化を防いだり,栄養改善が可能となる。飢餓や侵襲の異化期. る。NST 専門療法士の資格取得は臨床栄養のよい学習機会と. のように筋蛋白異化が進んでいる時期は筋力増強訓練や持久力. なるため,ぜひ多くの理学療法士にめざしてほしい。. 増強訓練は禁忌である。一方,飢餓状態で安静臥床させること は廃用性筋萎縮を助長させることが示唆されている 7)。また安 静臥床により食欲が低下する可能性もある 8)。したがって,飢 餓や侵襲の異化期でも不要な安静は避け,離床や低負荷のリハ はすすめていく必要がある。具体的には,コンディショニング, 関節可動域訓練,日常生活動作訓練,立位・歩行訓練など 2 ~ 3 メッツ以下の機能維持目的の運動を短時間実施する。適度な 運動を行うことで食欲が改善する可能性もある。また,ICU 入 室患者や長期臥床患者,高齢者では腸管運動が低下し,消化・ 吸収機能の低下や腹部膨満感,便秘による食欲不振が生じるこ とがある。他動的下肢・体幹運動により,腸管運動が活性化さ れる報告があるため 9),腸管運動に問題があれば実施していく。 侵襲の同化期では筋蛋白合成が期待できるため,充分な栄養管 理とともに 2 ~ 3 メッツ以上の積極的なリハを行っていく。 悪液質は飢餓と異なり,炎症が要因の代謝変動が生じている ため,栄養療法のみでは栄養状態の改善を図ることが困難なこ とが多い。疾患の治療,薬物療法,運動を組み合わせた複合的 なアプローチが必要となる。レジスタンストレーニングや有酸 素運動には抗炎症作用があるとされている。悪液質の場合,運 動を実施することで食欲や栄養状態を改善できる可能性がある。 2.エネルギー必要量の算出,活動量の報告 エネルギー消費量(必要量)は基礎代謝×ストレス係数×活 動係数で算出する。リハ内容を報告し,活動係数を多職種で考 えていく。活動係数の目安としてベッドサイドの理学療法は 1.2,リハ室で 2 ~ 3 メッツ程度の機能訓練を 20 分行っている 場合には 1.3 ~ 1.4,1 時間行っている場合は 1.4 ~ 1.7,2 時間. 文 献 1) Strakowski MM, Strakowski JA, et al.: Malnutrition in rehabilitation. Am J Phys Med Rehabil. 2002; 81: 77–78. 2) Marshall S, Bauer J, et al.: The consequences of malnutrition following discharge from rehabilitation to the community: a systematic review of current evidence in older adults. J Hum Nutr Diet. 2014; 27(2): 133–141. 3) Wakabayashi H, Sakuma K: Rehabilitation nutrition for sarcopenia with disability: a combination of both rehabilitation and nutrition care management. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2014; 5(4): 269–. 277. 4) White JV, Guenter P, et al.: Characteristics Recommended for the Identification and Documentation of Adult Malnutrition (Undernutrition). JSPEN. 2012; 36: 275–283. 5) Evance WJ, Morly JE, et al.: Cachexia: a new definition. Clin Nutri. 2008; 27(6): 793–799. 6) Russell MK: Functional assessment of nutrition status. Nutr Clin Pract. 2015; 30(2): 211–218. 7) Biolo G, Ciocchi B, et al.: Calorie restriction accelerates the catabolism of lean body mass during 2 wk of bed rest. Am J Clin Nutr. 2007; 86(2): 366–372. 8) Bergouignan A, Momken I, et al.: Regulation of energy balance during long-term physical inactivity induced by bed rest with and without exercise training. J Clin Endocrinol Metab. 2010; 95(3): 1045–1053. 9) Morisawa T, Takahashi T, et al.: The effect of a physiotherapy intervention on intestinal motility. J Phys Ther Sci. 2015; 27(1): 165–168. 10) 若林秀隆:PT・OT・ST のためのリハビリテーション栄養─栄 養ケアがリハを変える(第 2 版).医歯薬出版,東京,2015,pp. 36–46. 11) 馬場裕美,隆島研吾:「食する」満足度を高める理学療法アプロー チ.PT ジャーナル.2013; 47: 1097–1102. 12) 厚生労働省「介護予防マニュアル」分担研究班:栄養改善マニュ アル,改訂版,2009..

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