ハロッド『経済動学』の体系に関する・一考察
篠 崎 敏 雄序
ハロッドの経済動学的研究は,“TheExpansionofCreditinan Advancing
Community’’1)(1984)に.おいて始めて現われ,パAn Essayin Dynamic
Tbeo工■y’’2)(1939)において始めて一体系化された。第二次大戦直後には,戦後に おける世界の経済成長理論の研究の出発点ともなった,“Towardsa Dynamic Economics’’(1948)が出版された。ハロッドほ当時,戦後の先進資本主義 国の経済,とく紅母国のイギリス経済の将来に.強い関心を持っていた。彼は戦 後の過渡期が過ぎれば,ケインズがとく紅問題とした慢性的不況,すなわち停 滞の問題がふたたびやって来るであろうと考え,とくにこの問題と,あわせて 景気変動の,解明と対策のために・,戦争中やむを得ず中断していた経済動学の 研究を,さらに発展せようとしたのである。 その後25年間,世界の経済動学はハロッドのこの書物を基礎として大い紅発 展したが,ノ、ロッド自身の研究も着実に.進歩した。戦後に.ほ,ハロッドなどの 予想と異なり,停滞の傾向ほしばらく現われず,むしろインフレーション濫悩 まされるよう紅なった。比較的最近紅ほ;とくに「賃金=物価の悪循環」に.基づ き,不況下に‥おいても生ずるところの新しい塾のインフレ−ションが現われて 来た。また,南北問題,公害等の新しい問題も現われ,停滞の傾向も新しく出 現して釆た。このような時点紅おいて,ハロッドの‘‘Economic Dynamics” (1973)が出版されたのである。これは,戦後の新しい問題の解明を含んでい
1)R・F・Harrod;The Expansion of Creditin an Advancing Cりmmunity.”
Economica,Au臥,1934.
2)R・F・Harrod;AnEssayinDynamicTheory,EconomicJournal,March,
香川大学経済学部 研究報告18 嶋・64− J9アβ ると共に,彼の経済動学の集大成とも言うべきものである。 本稿に.おいては,この書物の全体系に.ついて,私なりの研究の概要を述べて みたいと思う。とくに,この書物の各章毎に,順次,その骨組を説明し論評を 加え,“TowaIds.”の内容との比較を行ってみたいと思う。3) Ⅰ『経済動学』(1973)における体系の骨組 ノ\ロッドほ,前紅も述べたように,第2次大戦後間もなく1948年紅,糾Towa− rds a Dynamic EcorlOmics”『動学的経済学序説』を出版した。そして,その 後25年はどの蘭に,次々といくつもの論文等を発表して来た。他方彼は,『動 学的経済学序鋭』(以下では簡単に『序説』と表わす)の再版の機会に.,かな りの修正と追加をしようとした。しかし,結局は,番物を完全に書き直すこと 紅なり,このよう紅してパEcpnomic Dynamics,,『経済動学』を書き上げたの である。 この寄物で取扱われている主要な問題ほ,次の三つである。第一・は保証成長 率、G紺′と自然成長率G柁との不均等の問題である。第二は,現実成長率Gと 保証成長率G紺との不均等の問題である。貨三は,贋金一物価の悪循環wage− price spirallingの問題である。 第一偲,長期成長均衡に.関連する問題である。(G叩とGタ諺との不均等は,貯 蓄過剰の状態(G紗〉G邦)の場合と,貯蓄不足の状態(G紗〈G〝)の場合に分け て論じられている。『序説』(1948)においては,G紺〉G〝の場合に重点をお い■て論じている。それは,両大戦間において,イギリス経済では貯蓄過剰の状 態が支配しており,またその書物を書いた時点においては,第二次大戦後もそ のような状態紅適えると,彼が予想したためであった。ところが『経済動学』 に.おいては,G紺〉GタヱとG紺くノG搾の双方の場合が取扱われており,しかも貯蓄 不足状態である後者に重点が置かれている。それは,一つには,第二次大戦後 の実際の経験が示すところでは,允進諸国とくにイギリス紅おいて,必ずしも 3)永稿は,「篠崎敏雄;ノ\ロッドの経済動学の体系の発展に.ついて(そのニ),(愛媛 法学会雑誌,寛4巻第1号,1977年6月)」の算Ⅲ節の内容を,拡充発展させたもので ある。
ハロッド『経済動学』の体系紅関する−・考察 −65㌧⊥ 貯蓄過剰の状態でほな・かった4)ことが考.え.られる。また第こに..『序説』では もっぱら先進諸国経済の諸問題を取扱ったが,『経済動学』でほ,貯蓄不足型 である発展途上諸国の経済問題もかなり取扱ってレ、る5)からであろう。 『経済動学』で取扱った主要な策二の問題ほ,GとG細の不均等であるが, これほ前著と同じく「不安定性原理」の問題として:取扱われている。そして, この「不安定性鹿理」を通じて,呆気循環とディマンド=プル・インフレTlン ヨンという,二つの具体的経済問題が取扱われている。『序説』ととくに異な る点ほ,インフレーションとの関連が新たに.取上げられたことである〕 さら紅,『経済動学』で取扱った主要な第三の問題は,「賃金−・物価の悪循環」 の問題である。これは,『序説』匿.おいてほ全く取扱われなかった。『経済動 学』の内容が,『序説』のそれともっとも異なっている点の一つは,インフレ −ション軋ついて一つの費をもうけ,大きく取扱ったことである。そして『経 済動学』でほ,インフレ−ションも,とくにコスト=プッ〆ユ塾のもの,すな わち「凰金一物価の悪循環」の問題に重点をおいて論じている。と.れほ『序説』 の執筆当時の予想と大きく異なり,第二次大戦後の過渡期を過ぎても,先進諸 国とくにイギリスにおいて−,インフレ−㌢ヨンが重要な問題となったためであ ろう。そして,イギリス経済の長い歴史の中で始めて現われたこ・のようなイン フレーションは,従来のディマンド=プル型のものとほ異なる,新しい塾の もの,すなわちコスト=プッシュ型の「賃金=物価の悪循環」によるものと 考えている。 ところで,『序説』においてほ大きく取扱われ,『経済動学』においてほ全 く取扱われていない問題もある。それは経済体制に.関する事柄である。『序説』 においてほ,その発五講義「利子は時代おくれか?」の後半で,「利子生活者 の安楽死」の問題を経済体制に関連する一つの問題として取扱っている。そし てこれを通じで,資本主義経済体制そのものの,存続の可能性についてふれてい る。しかし,『経済動学』でほ,これが全く取扱われていない。このことは,
4) Roy Harrod;Economic Dynamics,1973,pp.108−10.(宮崎義−・訳,経済 学,丸蕃株式会社,170−3ぺ一汐)
香川大学経済学部 研究報告18 ヱ97β
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算二次大戦後の経験から,資本主義体制の安定ということに自信を持ったため と思われる。
書物の全体ほ,次のよう紅,序文と10の諸費から成っている。
動学的経済学の必要性 TheNeed for a Dynamic Economics
1 2 8 4 5 基本方程式 FnndamentalEquations 不安定性原理 hlStability Principle 資本産出比率 Capita10utput Ratio 利 子Interest 1
し封鎖モデル
6 インフレノーション′ 山浦ation7 諸問題と諸矛盾 Problems and Conflicts 8 外国貿易 Foreign T工ade 9 国際資本移動Inte工nationalCapitalMovements 10 総 括 GeneralSurvey 開放モデル 上で示したように.,2−7章ほ封鎖経済体系の考察である。8と9葦ほ,開 放経済体系の考察である。 1章の「動学的経済学の必要性」ほ.,動学的経済動学すなわち経済動学紅関 連した,方法論に.ついて述べている。これは,全体の中で,云わば序論的部分 と考えられる。 2章の「基本方程式」ほ.,ハロッドの経済動学での基本的な分析武器であ る,三種類の基本方程式について述べ.ている。これは,この書物の本論的な部 分の基礎紅成ってこいる。 8∼5章は.,これら三種の基本方程式紅関連して,経済動学に.おける重要 な,若干の個別的諸問題について論じでいる。 6章は,『序説』でほ取上げなかったインフレ−ションの問題を取扱うので あり,とくに.「賃金一物価の悪循環」の問題を中心にして論じている。この問 題は,三種の基本方程式とは直接の結びつきのないような形で取扱われてい る。そして,ハロッドの定義する経済動学の範囲を超えており,より広範囲の 学問分野である「成長経済学」‘‘g工OWtbeconomics”において,始めて取扱わ れるよぅな間喝として,襲っていろと思われる9
ノ\ロッド『経済動学』の体系紅関する−・考察 −67− 7章の「諸問題と諸矛盾」ほ,2∼6章に.おける分析を総合し,とくに.,完 全雇用の達成,インフレ−ションやデフレーションの問題,および長期成長均 衡達成に対する,拡張主義的政策(またはデフレ−ション政策)の効果,など の分析を行なっている。この章は,この書物全体紅おける分析の中心と考える ことが出来る。6) 8茸と9章は,ともに.解放経済モデルで論じて)、る。8章は経常収支につい て論じ,9章ほ資本収支を問題に.していると考えることが出来る。 10葦ほ,全体の要約と結論であり,財政。金融政策および国際経済の問題に 重点を置いて論じている。 書物全体の体系で,『経済動学』が『動学的経済学序説』と著しく異なって いる点は,二つあると考えられる。一つは,上記のことからも分るように, 『序説』が,分析的部分と政策的部分とを,章別ではっきり分けていたの紅対 し,『経済動学』では,各章において\その両者が結合された形で述べられてい る点である。 もう−・つほ,もつと実質的な違いである。すなわち,『序説』では,書物全 体が,基本方程式を基礎とする動学的分析と政策の提言であった。言い換えれ ば,全体が彼の定義する経済動学または動学的経済学であった。ところが, 『経済動学』紅おいては異なっている。後に詳しく説明するように,経済動学 よりも範囲の広い成長経済学g工OWth economicsが定義され,こ.れに.は含まれ るが経済動学の範囲軋ほ含まれない,問題が扱われているのである。それは 「賃金一物価の悪循環」の問題である。これほ.,三種の基本方程式とは無関係 に論じられており,また,従来の経済動学の体系の範囲外に.ある,新しい問題 なのである。7) 6)ポーモルもその書評紅おいて,「ロイ郷のもっとも顕著な員献は疑もなく彼の7章 に.ある」と言っている。W。J.Baumol;Economic Dynamics,by Roy Harrod,
Economica,May,1973,P.218.
7)ノ\ロッドの‘‘Economic Dyamics”についての沓評は,上記のポーモルのもの以
外紅,次のようなものがある。J.A。KIegel;Economic Dynamics,by Roy
Harrod,EconomicJo11rnal,Sept。,1973,pp。905−7.H.Winkel;Harrod,Roy
:Economic Dynamics。Kyklos.Vol.XXVI−1973−FaLSC.4,SS.888−・9.
足立英之;Roy Harrod,Economic Dynamics,国民経済学雑誌,欝129巻第2号,
香川大学経済学部 研究報曽18 ユタ7∂ −6β− ⅠI「動学的経済学の必要性」仙経済動学の概念 『経済動学』における第1童は「数学的経済学の必要性」であり,こ.れほ 『序説』の場合と同名である。しかし,内容は大いに異なって∴おり,とくに取 扱っている範囲が,経済学の諸部門の分類に関することに限られてル、る。要す るに,経済動学に1執する方法論であるが,全体は大よ.そ次の五つの部分から成 っていると考えられる。(1)静学と動学との二分法(pp.ト3),(2)ミクロ静学 (pp.3−7)(3)マク由静学(pp.才一11)(4)ミクロ動学とマクロ動学(pp.1ト 12)(5)旧古典学派に.おける動学(pp.12蠣5)である。 (1)静学と動学との二分法 ハロッドはまず,静学と動学との二分法を,力学からとり入れることが適当 であるとしてし、るが,静学の場合と異なり,動学の基本的な公理が,未だ確立 されていないことについて述べている。また,こ.の動学的経済学は,より範囲 の広い「成長経済学」“growth economics”とも区別されている。すrなわち, 「成長経済学軋 社会学的原理が重要な役割を果す研究分野をあらわすのに適 しているかもしれない」8)のである。また;たとえば国民総生産の範囲外に・お かれてJいる福祉の諸要素等をも取扱うのである。こ.の「成長経済学」の概念ほ 『動学的経済学序説』には無いが, すで紅『動学理論に.おける第二論文』 “Second Essayin Dynamic Thedry”(1960)紅おいてほ「成長理論」‘‘growtb theorこy”とか「経済成長の理論」りthe theory of economic growth’’とか,
きら紅は「成長経済学」パgrowth ec6nomics”の呼名で現われている。9〉 ところで,こ.の静学と動学の両分野とも,ミ.クロ経済学とマクロ経済学紅分 割可能であるとする。このように.して,経済学は,ミクロ静学とマクロ静学, およぴミクロ動学とマクロ動学の四つの分野紅分割され,それぞれ紅ついて以 下論じるので串寧。 8)Harrod;Economic Dynamics,P.1.(邦訳,2ぺ−ジ)
9)1R.LF.Harrod:▲Second EssayinDytlamic Theory,EconomicJourhal,June,
ハロッド『経済動学』の体系に関する一考察 −69− (2)ミクロ静学 次に・ミ.クロ静学については,まず静学の本質について,「静学は,本質的紅 は静止状態を取扱う」として小る。そしてミクロ静学は「すべての利用可儲な 生産資源を所与とし,技術の状態を所与とし,そして一つの経済内における各 個人の欲望と噂好を所与とした場合,資源ほどのように.選択的用途の間に配分 されるのか,それらの資源紅対する価格はどのように.決定されるのか,そして それら紅よって生産される財およびサ−ビスの価格ほどのように.決るか」10)と いうようなことを取扱うのである。また,ミクロ静学の範囲内に.,噂好や利用 可能な資源鼠の血回かぎりの変化や,それに基づく旧い均衡から新しい均衡へ の移行過程の取扱いを含めている。この静学の定義は『序説』の場合と本質的 な違いほ.ない。ただ,ミクロ静学紅おける,均衡と最適の区別紅ついて触れて いることは新しいことである。 ハロッドほまた,伝統的なミ.クロ経済学が,康子論的な仮定,すなわち完全 競争の仮定をしていたという欠陥を除くため,不完全競争理論が出現したこと についても論じている。をれは,不完全競争で,費用逓減,すなわち右下りの 長期平均費用曲線のもとでの均衡が成立している場合紅は,需要を増大させる こと紅よって−,かえって二物価を下落させるということを主張したかづたから である。これは,後出のインフレーションに関する理論の,伏線のようなもの であると考えられる。 (3)マクロ静学 「マクロ静学」については,ケインズがすべての点で最も重要な師として仰 がれているのもこの分野である,としている。ここでは,まずケインズの言 う古典学派体系の経済学上の貢献と欠陥紅ついで述べ,それに.対して,マクロ 静学の基礎を築いたケインズの新しい貢献紅ついて,かなり詳しく論じてい る。そしてここのことと関連して,完全軍用達成のための貨幣政策と財政政策が 論じられる。 10)Economic Dynamics,p.3.(邦訳,4、ぺ1−−ジ)
香川大学経済宇部 研究報告18 J97∂ −70− このように.,マクロ静学の代表的な学説としてのケインズ学説紅ついて:ほ, 詳しく論じている。しかし,マクロ静学の概念そのもの紅ついてほ何も述べて いない。これほ,ミ.クロ静学の定義から,当然マクロ静学の定義が類推に・よっ て解されるものと考え.たためであろう。 (4)ミ.クロ動学とマクロ動学 むしろ肝心である筈の「ミクロ動学」と「マクロ動学」についてほ,ごく簡 単な説明しかしていない。そして,動学そのものの定義紅ついても,『序説』で 詳しく論じたためか,ここでははとんど説明していない。また,『経済動学』 でも,静学については詳しい定義をしたから,経済学のうちで静学でない部分 である動学の定義も,白から理解されると考えたからかも知れない。いずれ把 せよ,「ミクロ動学」に.ついては,「個々の財の需要の増加(減少)率を左右す る諸力,またほ,特定の企業や特定の産業の先行き見通しの変化率を左右する 諸カを取り扱うのはミクロ動学の仕事である」11)としている。そしてこれにつ いては,価直のある研究がなされつつあると言っている。 「マクロ動学」の概念に.ついては,次のよう紅簡潔紅述べる。「この番で取 扱うマクロ動学ほ,需要の主要な範疇一資本需要,輸出需要など−の増加 率の決定要因紅関連している。」12)『序説』での詳しい説明からも分るように・, 動学は継続的変化を取扱うのであり,取扱う数億は,ある水準ではなくて,変 イヒ率もしくは増加率なのである。 「ミクロ静学」の定義や,今掲げたノ、ロッドの説明か ら,動学の定義を推論 すると,次のようになると思われる。すなわち「すべての利用可能な生産資 源,技術の状態,そして一つの経済内における各個人の欲望と嗜好などが継続 的に.変化している場合の,需要の増加率の決定要因に・ついて取扱う」というこ とになろう。 (5)旧古典学派に.おける動学 次に.,動学(とくに.マクロ動学)の簡単な歴史が述べられている。しかし, 11),12)β♪,Cブ′.p.11.(邦訳,16ぺ」−ジ)
ハロッド『経済動学』の体系に.関する一考察 −7J− こ.の部分は『序説』における内容とはぼ同じである。古い形の経済動学ほ,す で紅旧古典学派経済学において:,その重要な部分として一存:在していた。ところ が近代経済学に.なってから,その要素が失なわれたのである。その顕著な例 は,マー・シヤルであるとしている。13)旧古典学派の動学の例としてほ,とくに リカアドオの動学を取上げその骨子と学説史上に‥おける意義を述べている。さ らに・J.S.ミルの学説に.ついて:も論じている。この重要な経済動学が,19世 紀の終り頃姿を消した原因としては,おそらく限界効用および限界生産力理論 に・よってひき起された,知的興奮に.よるものであろうとしている。 以上のような『経済動学』第1章「動学的経済学の必要性」の内容で,『序 説』の場合と著しく異なってル、る点は,次の四つであると考えられる。(1.)動 学と成長経済学の区別,(2)静学と動学との二分法に,ミクロ経済学とマクロ 経済学との二分法を結びつけ,経済学を四つの部門紅区分したこと。(3)物価 問題との関連で,不完全競争理論紅つV、て述べたこと。(4)新古典派経済学と ケインズ経済学との比較について述べたこと。 Ⅲ 「基本方程式」について 第2章の「基本方程式」は,ハロッドの経済動学に.おける分析の基本的武器 として−の,三種類の基本方程式について詳しく説明している。これら基本方程 式の説明を,本論の最初に・持って来ているので,『序説』の場合と異なり,書 物全体の体系が,すっきりした形になっている。また,基本方程式そのものの 内容も,『序説』の場合と比べ,大いに改善されている。 第2章全体は,次の四つの部分から成っていると考えられる。(1)現実の成 長率Gを含む基本方程式(pp.16−7)。(2)保証成長率G紺を含む基本方程式 (pp・17−21)。(3)社会的に最適な成長率(自然成長率)G乃の値の二つの決定 要因(pp21−7)。(4)自然成長率Gnを含む基本方程式(p.p.27−31)。 (1)現実成長率Gを含む基本方程式 ハロッドはまず,彼の基本方程式が特定の時点紅関係し,「時のおくれ」を 13)近年紅なり,マ・−レヤルの動学理論を内容とする文献が発見された。
香川大学経済宇部 研究報告18 ー72− ヱ.97β 含んでいないこLとを正当化しようとする。すなわち,増加率には屈曲inflec− tionsや不連続があり,このような場合にほ.,時のおくれに関する理論を持つ こ.とが必要であるとしながらも,次のように自己の研究方法の立場の妥当性 を主張する。「しかし,恒常的で継続的な増加率(または加速度等々)が存在 する時作用している諸カの分析は,論理的優先権を持ち,最初に.着手さるぺき である。しかる後に,われわれほ,屈曲と時のおくれに.進む,十分な状態に あるのである。」王4)そこ・でハワットは,基本方程式においてもー・定の成長率を 考え,また時のおくれを考慮していないのである。 ところで,Gを含む基本方程式ほ次のとぉりである。 G= (1)
Gは単位時間あたりの現実の成長率である。ぶほ所得のうら貯蓄される割
合,すなわち現実の貯蓄率である。Cほ同じ単位時間あたりの資本増加分を, その時間に.おいて生産された財の増分で割ったものであり,現実の資本係数で ある。式の表現ほ,『動学理論における−・論』(1939)や『序説』の場合と若干 異なっていても,内容に本質的な違いはなく,極めて簡単にしか説明されてい ない。 (2)保証成長率G紺を含む基本方程式 G紗を含む基本方程式ほ次の通りである。 仙ニ・ . (2) G紺ほ.保証成長率(または適正成長率)であり,それは式の示すとおり,希望される貯蓄率(または望ましい貯蓄率)thedesiredsavingratio15)sd
と,、必要資本産出比率the requiredcapitaloutput工atio16)Crとによって
決定される。また,G紗の性格も,ぶdとCrの性格に・よって決定される。 ところで,「Sdほ所得のうち,各主体people17)がその時点で行なおうと希 14),叩.Cよf,p.16.(邦訳,25ぺ・一汐参照) 15)0タ.¢よ−f.p.30.(邦訳,46ぺ−ジ) 16)¢♪.¢∠f“♪.30.(邦訳,47ぺ−ジ) 17)peopieを各主体とするのは意訳■である。宮崎氏訳紅.従った。ノ、ロッド『経済動学』の体系紅関する一考察 −7tクー 望する貯蓄の割合である。」18)ここで各主体というのは,個人personsと法人 企業19)companies から成るとしている。ハロッドは,政府の行なう貯蓄を.=. つの部分に.分け,一つは,政府が自分自身のため紅なすのがふさわしく適切で あると考える貯蓄であり,もう一つほ,単に.財政政策として経済の制禦のため に.行なう貯蓄である。この場合,前者のみが希望される貯蓄に含まれる。 必要資本産出比率Cデについては,まずCの概念の説明をし,それとの比較 でCク′の概念を説明している。CもCタ・も分数となっている。Cの分子は,単位 期間の期首から期末にかけての,あらゆる種類の財の存在藍の増加分であり,分 母は,その期間中の諸財の生産の増加分である。このCは,各主体が,手持ち の固定ならび紅流動資本財の鼠をちょうど好都合な盟であると考えるような, そのような分子と分母め値をとるとき,Cク■となるとされる。要するに,その 期間に.増加した資本財も含めて,生産との関連で資本財の愚に.過不足のない状 態が維持される時のCが,Crなのである。表現は多少変っても,C,′の概念は 『序説.』や『動学理論払おける叫・論』の場合と,とくに.変ってはいない。 このよう紅して,もし希望される貯蓄率∫♂が実現され,また必要資本産出比 率Cγノも実現されれほ,貯蓄と,固定ならびに流動資本財について,各主体紅 とっての二重の満足が得られることになる。 次にノ\ロッドは,保証成長率の定義をし,その概念に含まれている問題点把 ついて述べる。まず彼ほ「われわれは,G紺を,ぶdに.等しいざおよびCγに.等 しいCに.ちょうど見合うGの値として定義する」20)のである。ところが『序 説』やそれ以前の『動学理論における−・論』においてほ,これを均衡成長率と して扱った。とこ.ろカ㍉ アレクザンダー教授から,ハロッドのG卯ほ特殊な場 合にのみ当て−はまる特殊均衡成長率ではあっても,一・般的な均衡成長率ではな いという批判がなされ,21)ハロッドはそのことを承認している。22)彼によれ 18)吋.c∠≠.p.17.(邦訳,27ぺ−ジ) 19)個人も法人企業も,前後の関係からの意訳である。宮崎氏訳紅従った。 20)♂♪.で∠′.p.19.(邦訳,29ぺ−・ジ)
21)S.S.Alexandr;MI・.Harrod/s Dynamic Model,EconomicJournal,Decり
香川大学経済学部 研究報告18 ー7・メー J97β ば,「均衡ほ,諸過程に対するいろいろな利害関係者が進行していることに.満 足し,同じ仕方で処理しCaI・f・y On続けることを意味する。」23)ハロッドは, (ぶが鋸:に.等しいということを前提にして)もしG==G紺でCがCタ′に.等し ければ利害関係者である企芽家が満足し,G紺に.等しい同じGの値を維持す ることであろうから,このG紺に.等しいGは均衡成長率であると考えたのであ る。アレクザンダー教授は,この「同じ仕方で処理し続ける」ということの定 義を問題とする。これにはたとえば次のような可能性がある。(1)以前の成長 率を継続させる。(2)同じ絶対水準の注文0工de王Sを出し続ける。(3)増加率 を増す。24)ハロッドほ(1)の場合に限って定義しているので,その均衡成長率 概念に.は一腰性がないというのである。そこで,その経済の代表的企業家が, G=G紺の時,(1)のような行動をとるようなものである場合にのみ,G紺は均 衡成長率なの■である。25)こ.のような制限はあるに.して−も,ノ\ロッドは,以後 G紺を一応均衡成長率として取扱っている。 次に,この保証成長率が最適概念であるかどうかということに・ついて論じ, G紺の決定要因の一つであるぶdが最適概念でほないから,Gぴも最適概念では ないとしている。この点は,均衡が同時紅最適であるとする,古典学派静学と 異なるのである。(なおノ、ロッドは,最適は,完全雇用と完全競争および公正 な分配の状態の時,適せられると考えている。)26) (3)社会的に最適な成長率(自然成長率)G〝の値の二つの決定要因 次に.,社会的に最適な成長率(自然成長率)Gタ多の値の,ニつの決定要因につ 22)ハロッドの,この間題に対する見解は,次のところを参照。R.F。HaIrOd;Notes On TIadeCycleTheory,EconomicJournal,June,1951,pp.27ト5;Supplement On Dynamic Theory(in Economic Essays,by Harrod,1952)pp.281p6;Are Monetary and FiscalPolicies Enough?,EconomicJournal,Dec.,1964,pP・ 903−−5;Whatisa Model?(in Value,Capitaland Growth,(ed小)byJ.N.
Wolfe,1968)pp.186−7. 23)EconomicI)ynamics,p.19.(邦訳,30ぺ−ジ参照) 24)同じ加速度を持続することと解されろ。 25)cf.∂♪.cメタ,p.31.(邦訳,47ぺ」−の 26)cf.R.F.Harrod;Comment,QuartehyJournalof Economics,Nov・,1953 p.554.
ハロッド『経済動学』の体系紅関する劇考察 −7J− いて詳しく論じている。その−・つほ労働人口の増加率であり,もう鵬つほ技術 進歩率である。 最適成長率を決定する【一つの要因としての労働人口増加率は,厳密に・言え ば,供給可能な労働盛の増加率が問題な・のである。したがって,単なる労働人 口増加率のみならず,各労働者の最適労働時間が問題となる。そこで,ハロッ ドほ次のように言う。「最適成長率の二つの決定要因の第一・のものを描写す る瞭,労働年令人口の増加率(または減少率)が外生的に.与えられると仮定さ れていた。そして一人当りの最適労働時間の決定要因は,労働,財,および余 暇の間の個人の選好曲線から出て−くるものと仮定された。」27)また,人口増加 率を内生変数と考える,古典学派の人口原理を論評した後,結局,労働人口の 増加率ほ外生変数として取扱う。 最適成長率のもう一・つの決定要因である技術進歩率についても,それ自身の いくつかの決定要因に.ついて論じている。G邦全体の決定要因の考え方は, 『序説』の場合紅比べて,かなりニュアンスの違いほあるが,基本的なとこ.ろ においてははば同じである。 (4)自然成長率G搾を含む基本方程式 自然成長率G紹を含む基本方程式は,『序説』以前に.ほなかったものであ り,『序説』に‥おけるG紹Cタ・=0γ≠ぶを整備したものである。この籍三の基本 方程式は次の形をしている。28) G循= (3) S。ほ最適貯蓄率Optimum rateof saving29)であり,この基本方程式払お いて,Gク多とCrとによって決定される未知数である。 G乃は,前紅その決定要因について説明した最適成長率であり,ここでは自 27)Economic Dynamics,pp.23−4.(邦訳,36−7ぺ−i7) 28)これと実質的紅内容の等しい次の式が,すで紅.,パSecond Es5ay.”紅現われてい る。 ざタ・=Cタ・G,Z
こt:lでSrは,So に当る。Cf・Harrod;Second Essayin Dynamic Theory, EconomicJournal,June,1960,p.285.
・−76− 香川大学経済学部 研究報告18 J97β 然成長率と呼ばれている。「これは経済の潜在的成長能力紅対する成長率と考 えてもよく,また労働と余暇の間のバランスに関して上述したことのすべてを 考慮した上で最大可能な成長率と考えてもよい」30)のである。そしてこの場合 の成長率を国内総生産GDPの成長率で測れば,余暇の増大に.伴なう福祉の増 大や,政府に.よって供給される財に.よる福祉の増大は,含まれないか過少評価 されるとしている。このような考慮ほ『序説』まで紅ほなかったことである。 つづいて,最適貯蓄率ぶ。の考察のために,方程式を次のように書きかえる。 ざ。=G紹Cタ・ (3a) こうすると,左辺が被決定要因,右辺が二つの決定要因となる。G紗を含む 基本方程式では貯蓄率は決定要因であったが,ここでほ被決定要因となってい る。すなわち,(労働)人口増加率と技術進歩率に.よって決定されるG形と, 他方Cγとが与えられたものとして,その結果どのような貯蓄率が必要とされ るかを,規定して:いるのであるd G紺を含む基本方程式に.おいて,ざdとCタ′ほ, 各主体の二つの満足を表わすものであるから,ノ、ロッドは,自由放任的資本主 義制度に‥おける成長の決定諸要因を規定する方程式であり,したがって,(ケ インズの言う)古典学派経済学の線に.沿ったものとみなしている。これに対 し,G〝を含む基本方程式における最適貯蓄率は,財政政策や金融政策に.よっ て達成されると考えている。したがって,こ.の基本方程式ほ.,混合経済的資本 主義制度における貯蓄の決定要因を規定した方程式であり,ケインズ経済学の 線に.沿ったものと言うことが出来よう。そしてこの最適貯蓄率ほ.,長期と短期 の政策のうち,とくに長期政策の達成目標なのである。 このととろの最後の部分で,ノ、ロヅドほ,保証成長率G紺の二つの決定要因 であるぶ。とCγが変化し,G加が変化する場合,G紺とG〝おまびGとの間の関 係を変え,経済紅種々の問題をひき起すこと紅ついて触れている。 この第2章「基本方程式」で『序説』の場合と著しく異っている点は,次の 四つであると思われる。(1)G紺な含む基本方程式の内容の変化,すなわちG紺 の概念と貯蓄率の概念の変化。(2)G紹を含む基本方程式の成立。(3)最適概念の 導入(最適成長率)。(4)G狸の決定要因を詳しく論じていること。 30)〃♪.cよf,pp,27−・8・(邦訳42ぺ一一汐)
ノ\ロッド『経済動学』の体系に関する−・考察 −77− Ⅳ 「不安定性原理」と景気変動 第8章の「不安定性原理」は,ハロッドに.よって,『動学理論に∴おける一 論』81)(1939)以来主張されて来たこの原理を,新しい形で説明し,さらに.こ.れ に基づく,彼固有の景気循環論を展開したものである。この黄金体は,次の五 つの部分から成っていると考えられる。 (1)「ハロッドのナ・イフの刃.」という表現に対する批判(pp.32−3)。.(2)Gの上 昇と完全雇用の天井(pp.33p5)。(3)Gの下降と不況の底(pp.35−41)。(4)新し い景気循環論の着想についての回想と評価(pp.4ト2)。(5)新古典学派の安定 均衡論への批判(pp.42−5)。 (1)「ハロッドのナイフの匁」という表現に.対する批判 ノ、ロッドの不安定性原理は,他の経済学者達の著作の中で,「ハロッドのナ イフの匁」という表現で表されることが多い。このことは,保証成長率で考え られている動学的均衡が,極端な不安定性を持っていることを示すものであ る。ところが,これほハロッドの学説の真意を表わすものではないとして,批 判するのである。彼はナイフの刃.の表現にかえて,ふせた(食器の)ポ−ルの 上把あるはじき玉maェもIeの例をあげるが,これもあまり適切でほないとし, もっとよい例として草の多い斜面にあるポー・ル(球)をあげている。要するに ハロッドは,かなりゆっくりとした反応時間を持つ,ゆるやかな不安定性を考 えているのである。32) (2)Gの上昇と完全雇用の天井 まず,GがG紺から上方に.垂離し,その結果不安定性原理紅基づいて,完全 雇用の天井までGが上昇を続ける場合の説明がなされる。ある期間の闇,現実 の成長率Gが保証成長率G甜に等しく,その後GがG紺から上方に帝離したと する。このような上下への帝艶ほ起りやすい。しかし,ノ\ロッドが「ナイフの 刃」という表現を批判したように,この乗離があまり大きくなければ,不安
31)R.F.Harrod;An Essayin Dynamic Theory,EconomicIournal,March,
1939
・−7β− 香川大学経済学部 研究報告18 J97β 性原理ほ.働かない。いまこ.の帝離の結果G〉G紺 となると,このことほ前掲の (1),(2)の両式からぶ〉ぶdか,C〈Cγか,を・の双方が同時に.生じているかする。 ∫〉ぶd ということほ各主体が貯蓄を必要以上に.したということであり,個人部 門では消費を促進するこ.とに.なる。法人企業部門でほ,株主への配当を増やし たり,投資を促したりする。これらのことは,需要の促進を通じてGをさらに 高め,G加との帝離を大きぐする。(GくG紺の場合にほ.,逆向きの作用が生ず る。)C〈Cγの場合紅ほ.,投資不足を意味し,企業の投資を促進し,やほり G をさらに.高める。(C〉Cタ■の場合に.は,逆向きの作用が生ずる。) ところで,G紺より上の領域紅おいて,Gが次第に上昇すると結局完全雇用 の天井にぶつかる。第Ⅰ図ほそのこ.とを示している。yで現実の国内総生産を 表わし,㌢/■で完全雇用時の国内総生産を表わすものとする。横軸に時間をは かり,縦軸にyとyノ■の自然対数をはかる。この半対数表において,J〃gyノ の一経一路は完全雇用経路であり,これを表わす曲線の勾配は,連続形式で表わし た自然成長率Gタ多である。83)
算 Ⅰ 図
33)G乃==・一
ノ、ロッド『経済動学』の体系に.関する一一考察 “7.9− この図では,Gタ多の値はある−・定の値となっている。Jogyの経路は曲線を描 いており,その接線の勾配ほ,現実の成長率Gの値を表わす。錮)今A点から出 発するとし,不安定性原理によってG(わg y曲線の勾配)が次第に上昇する が,C点において完全雇用状態を表わすわgyノ直線にぶっかるものとする。 ところがこの天井ほスポンジのよ.うに弾力的で,図のCD間の曲線(点線)の ように・へこむのである。これは,−・時的に.は,就業率が正常水準を上回り得る からである。ところが,地域間,産業間でかなりの成長率格差がある時,労働 の地域間移動および産業間移動が困難なため,完全雇用の天井に膚する前に., Gの鈍化が始まるとともある。 (3)Gの下降と不況の底 次に,GがG紺から下方に.帝離し,不安定性原理にしたがって現実成長率が 下降する時,その底を決定するものほ何かということが考察される。そのため に,保証成長率そのものが好況や不況の影響で変化するという仮定をし,その 結果二種類の保証成長率を区別する。すなわち,恒常的発展(一・定成長率での 成長)紅固有な初期的保証成長率を「正常保証成長率」と呼び,好況・不況の影 響によって変化するものを「特殊保証成長率」と呼ぶ。不況下で所得が減少する 場合,個人も法人企業も釦を小さくする。また,政府当局が税収減少のため増 税をするとすれば,そ・れは個人と法人企業のぶdをさらにノJ\さくする。このこ とに・よって,不況下でほ特殊保証成長率が小さくなるのである。このG紺の低 下のため,それがG以下になると,不安定性原理が逆に働いて,景気回復の方 向に伺うのである。 次紅,不況の底の説明のために,基本方程式に含まれている諸鼠紅ついての 正。負の符号が問題とされる。現実成長率Gがマイナスの侶をとれば,現実の 資本産出比率Cの分母もマイナスとなり,Gと等しい∫/Cはマイナスとなる。 不況が極度に深刻に.なると,現実の貯蓄率∫さえもマイナスとなり,その場合 にはCの分子もマイナ・スとなるので,Cはプラスとなる。(;妙についても同様
34)G=空電㌍=÷,
ユタ7β 香川大学経済学部 研究報告18 ー∂クー なことが言え,G紗がマイナスとなれば,ざd/CrのうちまずCγがマイナスと なる。もし景気後退の率(Gのマイナスの値)が血走であれば,年毎に不要と なる現存設備の割合もー・定である。ところが景気後退率の減少(Gの絶対魔の 減少)が生ずると,更新される必要のある現存設備の割合ほ上昇する。これは Cγの代数値を高め,G紺の代数値を下落させる効果を持つ。こ・のことは,特殊保 証成長率を低下させ,低下しているGに追いつかせることの出来る第二の要因 である。この間の経過は,第Ⅱ図で表わすことが出来る。最初G=0の状態か 算 Ⅱ 図
ら出発し,Gほさらに.低下するとする。特殊保証成長率G紺は,ぶdの下落によ
って低下している。GはB点において反転し,上昇しはじめると,それがC′
の代数値の上昇を通じて,矢印の方向紅G紺を押し下げるカを働かせる。
景気後退の底(Gの値の底)においては,G=G打となっているが,この状
態は通常の均衡ではない。ところが,籍Ⅲ図の①の場合のように・,G=G紺と
なった瞬間にG曲線が水平となり,G紺曲線と重なる可能性もある。こ・れは−
種の均衡であり,しかも不安定な均衡である9そこで,舞Ⅲ図の⑧または◎の
ノ、ロッド『経済動学』の体系紅関する−・考察 −βJ一 算 Ⅲ 図 状態に移行する。しかし第Ⅲ図のような場合は,ほとんど起りそうにないこと であるとしている。 (4)新しい景気循環理論の着想に.ついての回想と評価 ノ、ロッドは,「J.M.タラ−クの加速度因子とカ−ンの「乗数」との相互作 用」に基礎をおく新しい景気循環論を,『景気循環論』〃Trade Cycle:an Essay’’(1936)で発表した事情や,その後(経済動学の)基本方程式を発見し た時のこ.とについて述べている。他方彼は,景気循環に.関する伝統的諸理論の 中で,交互に・生ずるところの,事業紅関する心理的な楽観と悲観に.よる理論の みが,妥当性を持つと考える。そして,上のように.して築かれた「不安定性原 理」ほ,その理論を補強するものと評価している。 (5)新古典学派の安定的均衡論への批判 この章の最後において,新古典学派の安定均衡の主張が批判される。ノ、ロッ ドによれば,新古典学派経済学者は,もし均衡成長からの帝離があるならば, 均衡を回復させるところのある価格機構が存在するにちがいないということ
香川大学経済宇部 研究報告18 J.97g ーβ2− を,示そうと努めて来たのである。これほ,ミクロ静学の分野における諸過程 からの類推であるが,成長に含まれている諸過程ほミクロ静学のものと全く異 なるとして,この類推の妥当性を否定している。ところで,均衡回復のための この価格としてほ,利子率が考え.られるが,この利子率の調節作用に.よる,均 衡成長率(保証成長率)の安定性を否定するのである。保証成長率からの現実 成長率の上方帝離の異積過程に.おいては,比較的短期間を取扱っているのであ る。そのような短かい期間にいおける利子率による貯蓄と投資の調節作用に強V、 疑問を示す。またCがG紺から上方へ帝離したことから生じる利子率上昇が, 生産に.おける資本と労働の結合比率を引き下げるという考え方も,その利子率 上昇がかなり短期の現象だからという理由で否定する。さらに.,利子ほ費用の 申で,それはど十分に.重要な要因でほないとも言ってル、る。このように・して, 新古典学派の主張を否定し,自由放任的資本主義に.おける,「保証」均衡成長 率が不安定であるという理論が確固としており,それが景気循環の基本的な説 明であると堅く信じているのである。 こ.の章紅ついて,『序説』の場合と異なっているのは次の諸点である。(1) 「ノ、ロッドのナイフの刃.」という表現に.批判をしたこと。(2)不安定性原理を CとCデとの関係のみならずざとぶdとの関係でも説明したこ.と。(3)新古典学派 の安定的均衡論へ批判をしたこと。 V l ̄資本産出比率」について ノ、ロッドの『経済動学』の第4章ほ,「資本産出比率」である。ここではとく に必要贋本産出比率Cク′の問題を取扱う。このCγほ.,第2章で取扱われた三種 類の基本方程式のうち,G紗を含む基本方程式と,G〝 を含む基本方程式の, 双方に含まれている。また,舞3章で論じられている「不安定性原理」に・おい ても重要な役割を演じている。そこで第4章では,とくに.このCタ′の問題を取 上げて詳しく論じようとするのである。この章の全体ほ,次の三つの部分から 構成されていると考えられる。(1)資本集約度の二つの測定方法(pp.46−9)。 (2)資本産出比率の測定(pp.49−51)。(3)技術進歩の性格と資本産出比率 (pp.引−7)。
ハロッド『経済動学』の体系に.関する・−・考察 −β3・− (1)資本集約度の二つの測定方法 ハロッドは,資本産出比率Capital−Output ratioの考察のため,まず同種概 念であるところの資本労働比率Capital−1abour ratioの考察から始めて:,それ に.接近しようとする。さらに.は,生産過程の資本集約度というより−・般的な概 念を考察することによって,この資本労働比率という概念に.接近しようとす る。そして,資本集約度の測定方法として,主要なものが二つあり,一つはオ ー・ストリヤ学派のものと,もう一つほマルクス学派のものなのである。 オ−ストリヤ学派の方法軋よれば「比率」というものは存在しない。「資本 集約度を測るために.は,さまざまな生産資源の投入とそれから生産される享■う 計画された産出との間の平均生産期間が用いられる。」35)この期間が長いは ど,その生産方法ほより資本集約的であるとされる。そして,もし固定資本が 用いられるならば,そ・の資本を生産するため紅必要とされる投入は,平均生産 期間の計算常.含めなければならない。このようにして,ある与えられたものを 生産するために,方法Aにおいて用いられた固定資本の患が方法Bにおけるも のよりも大きければ,平均生産期間ほ長そうであるとするのである。 資本集約度の測定のもう−・つの方法について−,ノ、ロッドは次のように言う。 「私がマルクスの接近と呼んだものにおいてほ,われわれは資本集約度を,一 つの比率,すなわち生きている労働に対する体化された労働embodiedlabour の比率によってほかる。もちろんわれわれほ,「労働」をそのもつとも広い意 味において,すなわちあらゆる投入を含むよう,用いなければならない。」86) こ.の労働が体化されたものほ.,固定資本と流動資本を含む実物資本であるが, この価値は,償却されたwritten−down価値を与えなければならない。他方 「生きている労働」を測定するためには.,ある任意の期間(たとえば1年)を 選ばなければならない。「生きている労働」の中に.ほ,新資本の創出や摩滅資 本の更新紅当て−られたものも含まれ,さらには,土地用役の投入も含まれる。 このようないろいろな種類の生きた投入のこの総鼠を得るためには,相互間の 35)EconomicI)ynamics,p.46.(邦訳,71−2ぺ・−iy) 36)β♪.c∠f′.p.47.(邦訳,73ぺ−ジ参照)
香川大学経済学部 研究報砦18 J97β −・・∂4−− 相対価値が確定されなければれならない。このように.して,資本/労働比率は 次のように.定義される。 償却済みの体化された投入の価値 1年当りの生きている投入(土地の使用を含む)の価値 (2)資本産出比率の測定 次に,この章の本題である「資本産出比率」の議論に入る。ここでは新しい 問題に.立ち至る。この比率の分子は投入からなっているが,分母はそれとほ全 くちがった種類のもの,すなわち財貨とサービスから成っている。そこで,諸 投入と諸産出の相対価値をはかる,共通の尺度を見出さなければならない。そ こで『序説』の場合と同じく,37)価値尺度として,「財尺度」goodsmeasure, 「労働尺度」1abour measureおよび「ハイエク的尺度」の三つが比較される。 価値を財の鼠でほかる「財尺度」把おいてごは,生産された財貨およ.びサ−ビ スの与えられた経済紅‥おける総価値は,その財貨とサ−ビスの盛に比例し,物 価は不変である。また,いろいろな生産要素(またほ諸投入)の貨幣報酬率と 実質報酬率ほ.,生産性の平均的な全体の増加に.比例して上昇する。価値を労働 の鼠ではかる「労働尺度」においては,財貨とサービスの総価値は労働恩(し たがって人口)に.比例して増加し,物価は投入の生産性の平均的増加に正確に 比例して下落する。このことほ.また,生産要素の貨幣報酬率ほ時を通じて不変 にとどまり,実質報酬率は生産性の上昇に比例して増大することを意味する。 またハイエク的尺度は,与・えられた経済の生産された財貨とサービスの総価値 を・二一・定紅維持するような価値尺度である。したがって物価は,その経済の総産 出高の増大紅反比例して下落する。と.のことは,生産要素の貨幣報酬が,(労働 藍の増加,したがって人口の増加に反比例して)下落することを意味する。(ま た実質報酬率は生産性の上昇紅比例して増大すること紅なる。)これら三つの尺 度のうちで,ハロッドほ.安定物価という目標の見地から,『ト序説』の場合と同
37)山Towards a Dynamic Economics”(1948)に.おい{:て,それぞれ次のよう紅表
現された。gOOds standard(p.31),1abour standard(p.31),Hayek standard
(p.32)。なお、この部分に∴⊃いては,次のところを参照されたい。篠崎敏雄;ハロ ッドの動学的経済学の研究,1973,38−50ぺ・−ジ
ハロッド『経済動学』の体系に.関する−・考察 叫β5− じく,財尺度を選び安定物価の制度に.よって議論を進めようとする。38) ところで,利潤を含めての報酬の実質価値の総額は,財貨とサ−ビスの産出 高と同じ割合で増加し,安定物価の制度においでは,報酬の貨幣価値の総額も この割合で増加する。とこ.ろがこの利潤については困難な問題がある。その一一 つの取扱いの方法ほ,利潤が支払われるそのサ−ビス(ハロッドほこれを企業 enterprise と呼ぶ)を,生きて:いる投入とみなすのである。しかし,産出のう ちに.含まれる全利潤のうちに.ほ,このように取扱えない部分があり,この部分 をノ\ロッドは残余利潤residualpr・Ofit と呼ぶ。このようにして,資本産出比 率ほ次のよう紅定義される。 償却済みの体化された投入の価値 生きている投入の価値十「残余」利潤一更新部分の価値 前述の資本/労働比率とこの資本産出比率とは,残余利潤が他の諸項の値と 異なる率で増加するのでなければ,一緒紅動くと考え.ている。 (3)技術進歩の性格と資本産出比率 次に.,技術進歩の性格(または発明の性格)と,資本産出比率の関係が論ぜ られるが,この部分ほ大部分『序説』の第・一講義の・一部39)を引用したもので ある。こ.の引用文中紅はないが,ノ、ロッドほ『序説』紅おいて,中立的技術進 歩の定義を次のように行なった。「私は中立的進歩を,一定の利子率のもとに. おいて,資本係数4Q)の価値をかき乱さないものとして定義する。それは生産 過程の長さを変更しない。」41)彼はこの中立的技術進歩の定義と,上述の資本 集約度の二つの測定方法との関係に.ついて,次のよう紅述べる。「私がこれら の諸頁で資本労働比率と呼んだものをかき乱さず,また生産過程の長さを不変 に留めるものとして,そ・れを定義した。」42) 次紅ノ\ロッドは,この自己の中立的技術進歩の定義をヒックスのものと比較 38)こ・このところほ,分りやすく説明するため,説明の順序を少し変えた。
39)R.Fu Harrod;Towards a Dynamic Economics,1948,pp.241−8..
40)『経済動学』紅おける資本産出比率。 41)Towar・ds.,pn23.
香川大学経済学部 研究報告18 ー∂β− J97β し,自己の定義がより勝れていることを以下のよう紅主張する。(1)まず,ヒッ クスの定義ほ.発明の中立性をいろいろな弾力性に依存せしめているが,ハロッ ドの定義ほ.問題を発明それ自身との関連紅よって決定するので,取扱いやすい。 (2)ヒックスは,要素の供給について何が仮定されるぺきかという問題を未解決 のままに.残して−おり,その見解ほ不満足である。また,全体の分析法が・一回限 りの発明(静学的分析)に.関連して適切なのであり,資本の成長に直面する新 発明の流れの考察(動学的分析)に.は適切でほない。(3)ノ、ロッドは,時間を通 じて要素が不変であるという仮定を捨てる。また,利子率ほ一・定と仮定する。 (4レ\ロッドの定義ほ計責経済学的堅実さに‥溶いて勝れている。(5)ヒックスの定 義とハロッドの定義のどちらが,現実の諸発明を労働節約的発明の箱により多 く入れるであろうかということを言うととほ出来ない。というのは,ヒックス の定義は−・部,外部の事情に依存しているが,ハロッドのほ,発明の固有の性 格のみに.依存しているからである。 次に,ノ、ロッドは,人口が一・定率で増加し,中立的で一L定率の技術進歩が生 じて:いる時,どのような貯蓄率が必要とされるかについて論じている。 この章の議論軋は,『序説』からの引用が多い。しかし,資本集約度の二つ の測定法や,資本産出比率の測定においてニ,『序説』よりもはるかに詳細で進 んだ議論が展開されている。 Ⅵ 「利 子」論 『経済動学』の策5章ほ「利子」である。この利子論は,次のように三つの 段階に.分けて論じられている。(1枯典学派利子論。(pp.58−62)(2)ケインズ利 子論(pp.62−8)(3)ハロッドの動学的利子論(pp.68−80)。当然のことながら, 最後の部分紅もっとも多く紙数をさいてル、る。 (1)古典学派利子論 まず,(ケインズの定義に.よる)古典学派の利子論が考察される。ノ、ロッド に.よれば,「古典派の利子理論ほ,利子とは資本の供給とその需要を均等化さ せる価格であるというものである。」4さ) 43)〃♪けC∠−≠.p.58。(邦訳,91ぺ一汐)
ハロッド『経済動学』の体系に関する一考察 −・β7− 彼はまた,より正確に.議論を進めるために.,この「資本」という言葉にかえ.て 「自由資本」‘‘capitaldisposal”44)という言葉を用いるぺきであるとする。こ れは処分の自由な資本ということであり,具体的に.は貸付資金とでも解すぺき ものである。これに.射し「資本」という言葉ほ,前章で取り扱ったような,諸 投入が体化されて.いる物的なものを表わすのである。 「自由資本」に対する需要ほ,生産者からと消費者からのものがある。これ に対する「自由資本」の供給者が,利子を要求するのほ,彼が時間選好を持っ ているからである。ここに」は,利子は,現在の節欲(すなわち節約)に.対する 報酬であるという考え方がある。こ.の時間選好の一つの側面ほ.,ピグーの言う 「望遠能力の欠如」45)であり,もう・−−・つは,ア−ビング・フィツシヤ一紅よっ て説かれた「所得の効用逓減」ということである。前者は,手元にある間髪の 価値も,将来のものより現在のものを選好サーるということである。後者は,現 在所得の−・部を手放して,将来その返済を受ける場合,減少した現在所得の限 界効用より,返済に.より増大する将来所得の限界効用が低いということを意味 する。このよ.うに.して利子が要求されるこ.とになる。 この古典学派利子論に.対して,とくに.批判めいたことは述べていない。 (2)ケインズ利子論 つづいて,ケインズ利子論の説明に.移る。まず,彼の『貨幣論』紅海ける利 子論について論じる。ノ\ロッドは,古典学派利子論と『貨幣論』紅おけるケイ ンズ利子論との関係を次のように表わす。「古典派理論は均衡と両立する利子 率の決定要因について詳述し,他方ケインズの理論は,各時点に.おける現実の 市場利子率の決定要因について詳述した。」48)市場利子率は必ずしも均衡利子 率に.−・致せず,異なるそれぞれの利子率の決定要因を取り扱った。古典学派理 44)capitaldisposalは,直訳すれば「資本処分の自由」ということに.なるが,その意 味は自由に処分可儲な資本ということだと思われるので,その意味で宮崎氏訳に.従っ た。
45)cfLA.C.Pigou;EconomicsOf Welfare,4th ed.,p.25.(永田清監修,気賀
健三他訳,ピグー厚生経済学Ⅰ,30ぺ−ジ参照)
香川大学経済学部 研究報告18 ヱ.97∂ −・・∂β− 論とケインズ理論に.は明確な違いがあるのである。 次に.,古典学派利子論と,ケインズの『雇用。利子および貨幣の一・般痙論』 に‖おける利子・論の関係について述べる。まず,ハロッドほ.,『一・般理論』におけ るケインズの態度を次のように.評価している。「『−・般理論』に・おいて,ケイン ズほ古典派の立場からさらに.遠ざかり,また同時に古典派経済学を多少不必要 に.強く論難することに没頭している。」47)このような考え方ほ,少くとも利子 論に.おいて−ほ,『序説』の場合と比べて大きく変化した点である。ところで 『貨幣論』に.おいてほ,均衡点は上山つしかないと考えられた。ところが『−・般 理論』において.は,ケインズほ,失業の諸水準に対応して,多くの均衡点の存 在が可能であると主張している。したがって均衡利子率であるところの,ケイ ンズの言う自然利子率も,それだけ多く存在することになる。そ・して,計れら の自然利子率の中で完全雇用と両立するものを中立的利子率と呼んだ。この中 立的利子率ほ,古典学派の均衡利子率に.当る。このことからハロッドは,「中 立的」利子率は,ケインズの体系を伝統的な政治経済学の図式の中に組み入れ る」48)として,ケインズと古典学派の利子論が,それはどかけ離れていない こ.とを強調している。しかし他方,こ.の分野におけるケインズの偉大な貢献と して,市場利子率を支配する諸カの分析をあげてごいる。 とこ.ろで,『−・般理論』に.おけるケインズの利子論,すなわち,いわゆる流 動性選好説に対しては,有力な諸学着から批判がなされた。こ.の批判に対し て,ハロッドが『序説』紅おいてなしたケインズ利子論の弁護の部分が,次に. 長々と引用される。こ.こ/では,とくに.ロバ−・トソンとヒックスの批判が問題と される。二人の批判の共通するところは,ケインズの利子論は盾環論法である ということである。利子率が変化すると予想されるから利子がある。さら紅は 利子があると予想されるから利子がある,ということに・なるのである。これに・ 対し,ハロッドは,この批判は誇張であり,ケインズほ決して,流動性選好の みが利子存在の唯一・の理由であるとは言わなかったと力説する。 しかしハロッドは,この『序説』におけるケインズ利子論に対する弁遜を,若 47)再㌧df.p.6飢(邦訳,99−100ぺ一汐) 48)0♪.cよ≠.p.65.(邦訳,102ぺ一汐)
ハロッド『経済動学』の体系に関する山考察 −β9一 千反省していることについて述べている。結局,ケインズ利子論は古典学派の ものと比べ,最初思ったほどかけ離れて:いないと考えるよう紅なり,むしろ両 者の正しい関係を示し,調和をはかるという態度に変っている。 (3)ハロッドの動学的利子論 ハロッドは,ケインズ経済学の体系そのものの動学化をほかるととも紅,そ の利子論紅ついて:も動学化をしようとしたと考え.られる。このハロッドの動学 的利子論は,三つの部分から成っている。一つは,利子率のぶdとCγへの影響 を通じてのG紺への影響の問題と,G紗と結びついた保証利子率の問題である。 算こほインフレの予想と利子率との関係である。第三は,最適貯蓄率と関連し た,最適利子率の問題である。 ハロッドほまず,利子率の希望される貯蓄率ざdに対する影響は,はっきりし ないunceItain と言っている。高い利子率は必ずしもざdを大きくしないので ある。他方,利子率のCγ紅対する影響は明白で,低い利子率はC′を大きくす る。しかし,その影響のカそのものほ.,極めて低く評価している。いずれに.せ よ,と・のように・利子率と保証成長率との間に関係が認められると,(正常) 保証成長率と結びついた利子率すなわち保証利子率 Wafraエユted rate ofinte・ Ⅰ−eStの問題を考えるぺきである。しかしハロッドは,この保証利子率について 満足な概念を形づくることが出来ていないと言っている。しかし長期において
ほ,こ.のことはあまり重要でほないであろうと言う。理由は,はとんどの国に
おいて,保証成長率の概念が関係する自由放任的資本主義の理想から,離れて 行っているからである。すなわち,政策目標としての保証成長率の達成,した がってその手段として:の保証利子率の達成ほ,現在でほ相対的に重要さを失い つつあると主張するのである。それ紅替って−,完全雇用の達成や,自然成長率 の達成がより重要な問題となって来,それに.伴って−,これらを達成するのに必 要な利子率が重要となって来る。ハロッドは次のよう紅言う。「そこ.で,全く 惑要となるのは,どのような利子率が自然成長と結合されるかを決定すること である。私ほ.,これを最適利子率optimum rate ofinterestと名づける。」49)香川大学経済学部 研究報告18 −90− J97β しかし,彼ほ保証利子率についての,一つの考え方を示している。「保証利子 についての概念を求めるにあたって,私に.生じた一つの考えは,それほもし貨 幣当局が,国民所得が成長している同じ率で貨幣供給を増大させるならば生ず るであろうものであるべきだ,ということであった。」50)しかし彼は,この定 義の試みに・完全に.は満足していず,保証利子率概念の決定には,問題を残して いる。 次にノ、ロッドは,脱線的な議論として−,インフレの予想と利子率との関係に ついて一群しく述べる。それほまず,最近非常に広く支持され,また尊敬すべき 起源をも持っている一つの見解に対し,異議を唱えることである。「その考え 方というのほ,もしも将来インフレ−ションが起るという強い確信があるなら ば,その価格上昇の期待が,現行の利子率紅反映されているという内容のもの である。」51)これはマーシャルや,フィツシヤ一によって主張され,ケインズ ほ受け入れなかったものである。ノ\ロッドはこ.の考え方を,基本的に」は次のよ うな論拠から否定する。「いわば,利子率は,貨幣と証券の交換比率なのであ
る。これら資産の双方ともインフレーション紅対する財産保全紅役立たない以
上,確実なインフレーション予測が生じたからといって,両者が相互に交換さ れる比率まで変更させることができるというのは非論理的であろう。」52)ハロ ッドは,こ・れと異なり,インフレ−ションの将来過程の不確実性の増大は,投 資者の流動性選好表を上昇させるという理由から,利子率を上昇させるであろ うと主張する。 最後に,ハロッドほ,最適利子率の問題の考察紅入る。彼ほ.,いやしくも利 子が存在するための基本的な理由である時間選好には,二つの要素があると考 えている。それらほ.前に述べた,「望遠能力の欠如」と,「所得の限界効用逓 減」ということである。ところが,これらのうち前のものは,最適ということ を考察している時に・は無視しなければならないとする。それほ,『序説』に.も 述べて1、るように・,「貪欲,および激情紅よる理性の征服に.対する上品な表 50)〃♪・・C査f.p.70.(邦訳,109ぺ一汐参照) 51)〃♪.cよf.p.70.(邦訳,110ぺ−ジ) 52)〃♪・df.p.て1.(邦訳,111ぺ一汐)ハロッド『凝済動学』の体系に関する・一・考察 −9J−