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経験的なサイト特性および震源特性を用いた高精度強震動予測手法の開発

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Academic year: 2021

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愛知工業大学研究報告 第43号 平成20年

博士学位論文

内容の要旨及び論文審査の結果の要旨) Kurahashi Susumu 氏名 倉橋 奨 学位の種類 博士 (工学) 学位記番号 博 甲 第 25 号 学位授与 平成20年2月28日 学位授与条件 学位規程第3条第3項該当 論文題目 経験的なサイト特性および震源特性を用いた高精度強震動予測手法の開発 (Development of method for predicting high accuracy strong ground motions

using empirical site and source characteristics) 論文審査委員 (主査) 教授 正木和明1 教授 入倉孝次郎2

教授 青木徹彦1 教授 四俵正俊1

論文内容の要旨

経験的なサイト特性および震源特性を用いた高精度 強震動予測手法の開発

(Development of method for predicting high

accu-racy strong ground motions using empirical site and

source characteristics)

本研究は,大地震による被害の軽減を目的として, 経験的なサイト特性および震源特性を用いた高精度 地震動予測手法を開発したものである.地震被害を軽 減させるためには,対象地点における揺れを高精度に 予測することが重要である.特に,構造物の耐震性の 評価に用いられる時刻歴応答は,入力地震動により異 なることから,対象地点において想定される入力地震 動の時刻歴波形の作成が不可欠となる.一方で,地震 動の特性は,震源特性・伝播経路特性・サイト特性に より表現されることから,この3つの特性の予測精度 を上げることにより高精度な強震動の予測が可能と なる. 本研究では,伝播経路特性とサイト特性に関して は,両特性を含む経験的サイト特性を用いた.従来, サイト特性は振幅特性のみに注目されていたが,本研 究では,位相特性も含むサイト特性の評価手法を提案 した.震源特性に関しては,断層運動を取り入れた手 法を用いた.能登半島地震と新潟県中越沖地震でこの 手法の検討を行い,その有効性を確認した.最後に, ここで開発した手法を用いて,産業集積地域である東 海地方において地震被害が危惧される東南海地震と 猿投-高浜断層帯の地震の強震動評価を行った. 本論文は6章からなり,以下に各章ごとの概要を述 べる. 第1章では,研究の背景と目的,既往の研究につい て述べている. 第2章では,フーリエ変換による振幅・位相特性の 経験的なサイト特性の評価手法の提案と検証を行っ た.本研究で提案する手法の特徴は,観測された地震 動から推定されるサイト特性には,地震動に共通なも のと共通しないノイズが含まれると仮定し,いくつか の地震動から推定されるサイト特性を足し合わせる ことで、観測された地震動に共通する位相特性を含ん だサイト特性を抽出することにある.ここでは,この 手法の有効性を検証するためにテスト解析を行い,位 相特性を保存するためには,観測されたサイト特性を 複素数平面上で算術平均しなければならないことを 明らかにした. 次に,実記録においてその適用性の検証を行った. 2003年十勝沖地震が観測された地点でこの手法を適 用した結果,観測点ごとに振幅や継続時間,パルスが 異なったサイト特性を評価でき,この手法が適用でき ることを示した.さらに,推定されたサイト特性を含 んだ小地震を作成し,2003年十勝沖地震の震源特性に 基づいた本震の強震動予測を試みた.その結果,計算 波形は観測波の振幅やパルスの特徴などが再現され ており,この手法の有効性を示した. 第3章では,断層運動を取り入れた手法の有効性を 検証した.地震における断層のすべり量は,断層面に 一様ではなく,不均質であることが知られている.ま た,すべり量の大きい場所(アスペリティ)と強震動 が生成される場所(強震動生成域)とは近似すること も示されている.ここでは,2007年能登半島地震でも 上記の関係性が適用可能であるかを検証するため,経 験的グリーン関数法を用いて0.2~10Hzの広帯域にお ける強震動生成域を推定した.本研究では,グリーン 1 愛知工業大学 工学部 都市環境学科 (豊田市) 2 愛知工業大学 地域防災研究センター (豊田市)

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-愛知工業大学研究報告 第43号 平成20年, Vol. 43, Mar. 2008 関数として採用できる小地震を観測地点ごとに評 価・選択することで,高精度な計算波形の評価を試み ている.その結果,観測波形の振幅やパルスなどを再 現された計算波形が評価された.また,本震の強震動 生成域は,震源インバージョンで評価されているすべ り量分布の位置と整合していることを明らかにした。 これは,アスペリティと強震動生成域が同じであるこ とを示唆しており、既往の研究結果と調和的であるこ と示した。 第4章では,第3章と同様に経験的グリーン関数法に より,2007年新潟県中越沖地震の強震動生成域を推定 し,断層運動を取り入れた手法の有効性を検証した. この地震は,広域で得られた最大加速度は経験的な距 離減衰式と整合しており,同規模の地震の中でも平均 的なものであることが知られている.しかしながら, 震 源 近 傍 で あ る 柏 崎 刈 羽 原 子 力 発 電 所 内 の 最 大 加 速 度は,距離減衰式より推定される最大加速度より大き いことが注目された.その原因として,震源特性,伝 播経路特性,サイト特性それぞれにおける特性の影響 が考えられる.本研究では,用いた経験的グリーン関 数法は,使用される余震と本震の伝播経路特性とサイ ト特性が同様と仮定されることから,震源特性による 影響が評価される.その結果,本震の強震動生成域は 3つ存在し,この強震動生成域のひとつは柏崎刈羽原 子力発電所の近くに存在することを明らかにした.ま た,この強震動生成域から柏崎刈羽へのS波放射特性 か ら 評 価 さ れ た 振 幅 の 関 係 と 観 測 記 録 の 振 幅 の 関 係 は調和的であり,本研究で構築した強震動生成域の妥 当性を示した.ここで評価した強震動生成域の大きさ は,既往の研究で示されている地震モーメントとアス ペリティの面積との関係と調和的であり,本震が過去 の 地 震 と 比 較 し て 平 均 的 な も の で あ っ た こ と を 示 し た. 第5章では,以上の検討を踏まえて,強震動予測の 対象とした愛知県内の地震観測点において,位相特性 を含めた経験的なサイト特性を考慮し,断層運動を取 り入れた震源モデルを用いて,東南海地震および猿投 ―高浜断層帯地震の強震動予測を行った.ただし,東 南海地震については,中央防災会議の震源モデルを, 猿 投 高 浜 断 層 帯 地 震 は 強 震 動 予 測 レ シ ピ に よ り 構 築 したものを用いた.本研究で開発した手法により,各 対象地点において高精度な時刻歴波形を予測し,この 地域の強震動特性を明らかにした. 第6章は以上の結論である. 論文審査結果の要旨 倉橋奨氏提出の論文「経験的なサイト特性および震 源特性を用いた高精度強震動予測手法の開発」は,地 震 被 害 の 軽 減 を 目 的 と し て 経 験 的 な サ イ ト 特 性 お よ び 震 源 特 性 を 用 い た 高 精 度 地 震 動 予 測 手 法 を 開 発 し たものである.地震被害を軽減させるためには,対象 地 点 に お け る 揺 れ を 高 精 度 に 予 測 す る こ と が 重 要 で あるが,特に,構造物の耐震性の評価に用いる時刻歴 応答は,入力地震動により異なることから,対象地点 に お い て 想 定 さ れ る 入 力 地 震 動 の 時 刻 歴 波 形 の 作 成 が不可欠となる.一方で,地震動の特性は震源特性・ 伝播経路特性・サイト特性により表現されることから, この3つの特性の予測精度を上げることにより高精度 な強震動の予測が可能となる. 本論文は,伝播経路特性とサイト特性に関しては, 両特性を含む経験的サイト特性を用いている.従来, サイト特性は振幅特性のみに注目されていたが,本論 文では,位相特性も含むサイト特性の評価手法を提案 している点に特徴がある.震源特性に関しては断層運 動を取り入れた手法を用いている.能登半島地震と新 潟県中越沖地震でこの手法の有効性を確認している. 最後に,本論文で開発した手法を用いて産業集積地域 で あ る 東 海 地 方 に お い て 地 震 被 害 が 危 惧 さ れ る 東 南 海 地 震 と 猿 投 - 高 浜 断 層 帯 の 地 震 の 強 震 動 評 価 を 行 っている. 本論文は6章からなり,以下に各章ごとの概要を述 べている. 第1章では,研究の背景と目的,既往の研究につい て述べている. 第2章では,フーリエ変換による振幅・位相特性の 経 験 的 な サ イ ト 特 性 の 評 価 手 法 の 提 案 と 検 証 を 行 っ ている.観測された地震動から推定されるサイト特性 に は 地 震 動 に 共 通 な も の と 共 通 し な い ノ イ ズ が 含 ま れると仮定し,いくつかの地震動から推定されるサイ ト 特 性 を 足 し 合 わ せ る こ と で 観 測 さ れ た 地 震 動 に 共 通 す る 位 相 特 性 を 含 ん だ サ イ ト 特 性 を 抽 出 で き る こ とを明らかにしている.さらに,この手法の有効性を 検証するためにテスト解析を行い,位相特性を保存す るためには,観測されたサイト特性を複素数平面上で 算術平均しなければならないことを証明している. 次に,2003年十勝沖地震の実記録を用いて、観測点 ごとに振幅や継続時間,パルスが異なったサイト特性 を評価できることを確認している.さらに,推定され たサイト特性を含んだ小地震を作成し,震源特性に基 づいた本震の強震動予測を行い,この手法の有効性を 明らかにしている. 第3章では,断層運動を取り入れた手法の有効性を 検証している.経験的グリーン関数法を用いて0.2~ 10Hzの 広 帯 域 に お け る 2007年 能 登 半 島 地 震 の 強 震 動 生成域を推定している.本論文ではグリーン関数とし て採用できる小地震を観測点ごとに評価・選択するこ とにより高精度な予測が可能であることを,観測波形 の振幅やパルスなどを再現して証明している.また, 本 震 の 強 震 動 生 成 域 は 震 源 イ ン バ ー ジ ョ ン で 求 め ら れたすべり量分布の位置と整合していることから,ア ス ペ リ テ ィ と 強 震 動 生 成 域 が 同 じ で あ る こ と を 示 し ている。 第4章では,第3章と同様に経験的グリーン関数法に より,2007年新潟県中越沖地震の強震動生成域を推定 し,断層運動を取り入れた手法の有効性を検証してい る.この地震は同規模の地震の中でも平均的なもので あることが知られている.しかしながら,震源近傍で ある柏崎刈羽原子力発電所内の最大加速度は,距離減 衰式より推定される最大加速度より大きく,その原因 として,震源特性,伝播経路特性,サイト特性それぞ れにおける特性の影響が考えられる.本論文では,用 い た 経 験 的 グ リ ー ン 関 数 法 は 使 用 さ れ る 余 震 と 本 震 の伝播経路特性とサイト特性が同様と仮定し,震源特 性による影響を評価している.その結果,本震の強震 動生成域は3つ存在し,そのひとつは柏崎刈羽原子力

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-経験的なサイト特性および震源特性を用いた高精度強震動 発電所の近くに存在することを明らかにしている.ま た,S波放射特性から算定される柏崎刈羽における地 震動振幅と観測記録振幅との関係は調和的であり,本 研 究 で 構 築 し た 強 震 動 生 成 域 の 妥 当 性 を 確 認 し て い る.評価した強震動生成域の大きさは,既往の研究で 示 さ れ て い る 地 震 モ ー メ ン ト と ア ス ペ リ テ ィ の 面 積 との関係と調和的であり,本震が過去の地震と比較し て平均的なものであったことを明らかにしている. 第5章では,以上の検討を踏まえて,強震動予測の 対象とした愛知県内の地震観測点において,位相特性 を含めた経験的なサイト特性を考慮し,断層運動を取 り入れた震源モデルを用いて,東南海地震および猿投 ―高浜断層帯地震の強震動予測を行っている.ただし, 東南海地震については,中央防災会議の震源モデルを, 猿 投 高 浜 断 層 帯 地 震 は 強 震 動 予 測 レ シ ピ に よ り 構 築 したものを用いている. 本研究で開発した手法により,各対象地点において 高精度な時刻歴波形を予測し,この地域の強震動特性 を明らかにしている. 第6章は以上の結論を述べている. 以 上 の よ う に 本 論 文 は 経 験 的 な サ イ ト 特 性 お よ び 震 源 特 性 を 用 い た 高 精 度 強 震 動 予 測 手 法 を 開 発 し た も のであり,強震動予測に関する研究として工学的に有 用である。今後、地震災害軽減対策に活用され社会的 にも貢献することが期待される。よって,博士(工学) の学位論文として価値あるものと認める。 (平成20年3月19日受理)

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