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Kobe University Repository : Kernel タイトル Title 著者 Author(s) 掲載誌 巻号 ページ Citation 刊行日 Issue date 資源タイプ Resource Type 版区分 Resource Version 権利 Rights DOI

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Kobe University Repository : Kernel

タイトル

Title

大学生のクロノタイプとエフォートフル・コントロールが精神的健康

に及ぼす影響(The impact of college student's chronotype and effortful

control on mental health.)

著者

Author(s)

呉, 朦珊

掲載誌・巻号・ページ

Citation

神戸大学発達・臨床心理学研究,17:1-7

刊行日

Issue date

2018-03-31

資源タイプ

Resource Type

Departmental Bulletin Paper / 紀要論文

版区分

Resource Version

publisher

権利

Rights

DOI

JaLCDOI

10.24546/81010304

URL

http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81010304

PDF issue: 2019-03-08

(2)

問題と目的 われわれが一般に言う“体内時計”は,生理的機能の概日リズ ム (circadian rhythm) のことである。概日リズムの個人差に関 する研究として,リズムの位相差に注目した,いわゆる朝型‐夜 型 (Morningness-Eveningness) と 呼 ば れ る ク ロ ノ タ イ プ (chronotype) の研究がある(石原・宮下・犬上・福田・山崎・宮 田,1986)。睡眠のタイミング(就床・起床時間)は人それぞれ であり,早朝の時間帯を好むか,夕方や夜の時間帯を好むかに関 しても個人差がある (Randler, Bilger, & Diaz-Morales, 2009)。 クロノタイプとはこういった個人差のこと,個人が一日の中で示 す活動の時間的指向性を指している(Randler et al., 2009;北村・ 肥田・三島,2012)。一般に朝型の人はヒバリに例えられ,朝早 く起床し,夕方より早朝において機敏であり,夜の早い時間帯に 疲労を覚えて早々に就寝するのに対し,逆に夜型の人はフクロウ に例えられ,朝はなかなか起きられず,午前中は調子が上がらな いまま過ごし,夕方から夜間にかけて元気になり,そのまま夜遅 い時間帯まで眠気を感じない(Hur, Bouchard, & Lykken, 1998;北村他,2012)。 Randler et al. (2009) の青年を対象とした研究によると,クロ ノタイプと睡眠パラメータは年齢と有意に相関をもち,思春期か らクロノタイプが夜型に偏り始める。親が就床時間を決めること は年齢が上がるにつれ減少していき,17 歳でほぼなくなり,そし て親の監督がない子どもの就床時間が遅く,クロノタイプが夜型 寄りになっていく。さらに,大学新入生では,高校時代の睡眠な どのリズムと大学入学後の睡眠などのリズムに大きな変化が存在 しており,リズムが変化した者は変化していなかった者の4 倍弱 に上る(谷島,1996)。したがって,大学生ではこれまでのクロ ノタイプが大学進学をきっかけに変化し,夜型に偏る現象がある と考えられる。 クロノタイプは,これまでパーソナリティ研究や精神生理学研 究など,さまざまな分野で扱われてきた。そして,朝型は心身共 に健康的で,夜型生活は不健康であるとされてきた(福井・福井, 2009)。Howell, Digdon, Buro, & Sheptycki (2008) の大学生を 対象とした研究によると,朝型は情緒的・心理的・社会的 well-being とマインドフルネスと正に相関していると考えられる。 Dagys et al. (2012) は,夜型は朝型と比べ,ポジティブ感情や積 極性が低いことを報告しており,夜型は情緒的脆弱性の有用な指 標になると考察している。さらに,夜型はより強い病的状態と睡 眠・気分問題を報告しており,不規則な睡眠/覚醒習慣をもち, より多くのカフェインを摂取している (Taillard, Philip, & Bioulac, 1999; Taillard, Philip, Chastang, Diefenbach, & Bioulac, 2001)。

クロノタイプの夜型化は,現代社会の物質的・社会的条件を考

大学生のクロノタイプとエフォートフル・コントロールが

精神的健康に及ぼす影響

The impact of college students' chronotype and effortful control on mental health

呉 朦珊*

Mengshan WU*

要約:大学生において,進学をきっかけに徐々に夜型のクロノタイプに偏ることが多く,それにより生活や学業に支障をきたす ことも多くみられる。クロノタイプの変化には,Effortful Control (EC) が要因の一つとして考えられる。本研究では,クロノ タイプとEffortful Control との関連,そしてそれらが精神的健康との関係を検討することを目的とした。質問紙調査を行い, 150 名の大学生を分析対象とした結果,①EC が低い人ほど,クロノタイプは夜型に偏る;②EC が高い人ほど,精神的健康が 高い;③夜型は朝型と比べ,精神的健康がより低い水準にあるという3 つの仮説は支持され,EC はクロノタイプを部分的に媒 介して精神的健康に影響を及ぼしていることが示唆された。また,④夜型であっても,EC が高ければ,精神的健康はより高い 水準に保たれる;逆に,朝型であっても,EC が低ければ,精神的健康も低いという仮説は支持されず,EC の調整効果は認め られなかった。EC の高低に関わらず,朝型のクロノタイプは,より良い精神状態や,より良い大学適応をもたらすことが示唆 された。 *神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士課程前期課程 2017 年 12 月 1 日 受付 2018 年 1 月 26 日 受理

(3)

えればある程度は必然的な趨勢であることは否めないだろう。深 夜勤務などでやむを得ず夜遅くに就寝し,十分な睡眠をとるため に翌日の遅くまで寝るような日々が続いたりすると,身体がその ような生活リズムに合わせようとして,夜型のクロノタイプにな ってしまう場合もあると考えられる。しかし,例えば,夜遅くま で就寝せず,特にやることもないにもかかわらずスマートフォン を使用したり,テレビを見たりして過ごすといったこともあるだ ろう。これは,自分の就寝前の行動を制御できず,つい就寝時刻 を遅らせ,徐々に夜型のクロノタイプになっていくパターンであ ると考えられる。大学進学や親の監督がなくなることなどにより, クロノタイプが変化する(夜型に偏る)こと(谷島,1996;Randler et al., 2009)は,これらのことをきっかけに,それまで以上に外 界の力を借りず,自分自身の力で行動を制御することが必要にな ってきたにもかかわらず,その力が足りず,制御に失敗したから であると考えられる。 このように,クロノタイプの夜型化への自己制御の影響が考えら れるが,クロノタイプの在り様がどのようなもので決定されるか についてはこれまで生活環境や生物学的な要因ばかりが取り上げ られ,自己制御のような心理学的な要因については必ずしも検討 がなされていない。しかしながら,人は自らの意思で睡眠時間を 決めるということは,人の実行機能が関係していると言えよう。 そこで,本研究では実行機能の高さを表す重要な心理学的構成概 念として,クロノタイプに影響を及ぼすと考えられるエフォート フル・コントロールを取り上げ,クロノタイプを心理学的側面か ら理解するための貴重な手掛かりを提供していく。 エフォートフル・コントロール(Effortful Control,直訳は「努 力を要する制御」であるが,固定の専門用語としての日本語訳は 未だなく,以下EC とする)とは,実行注意の効率を表すもので あり,劣勢な反応を行うために優勢な反応を抑制したり,誤りを 察知したり,計画したりする能力である (Rothbart & Rueda, 2005; Rothbart, Ellis, & Posner, 2011)。EC は気質的な自己制御 (self-regulatory) 能力であり,自己制御の非常に重要な次元であ る (Eisenberg, Smith, & Spinrad, 2011)。言い換えれば,EC と は自発的に行動や注意を制御する能力である (Oldehinkel, Hartman, Ferdinand, Verhulst, & Ormel, 2007)。たとえば,大 学に入り,とくに一人暮らしを始めた場合,高校までの外界から の制約(毎日一定の登校時間や,親に就寝を急かされるなど)が なくなることにより,それまで以上に自ら行動を制御することで 生活していかなければならない。そこで,EC の低さが生活リズ ムの変化などさまざまな面に表われ,より目立ってくると考えら れる。以上のことから,本研究では大学生のクロノタイプとEC の関係について検討していきたい。 なお,EC,セルフ・コントロール,自己制御 (self-regulation) の3 つの概念間は重なる部分が大きく,お互いある程度代替でき る場合も多いが,区別する必要がある。EC は行動抑制の制御・ 行動始発の制御・注意の制御を含む,自発的な制御である。セル フ・コントロールは,能動的に適切に行動を抑制する能力や,必 要なときに行動を起こせる能力などといった側面を含むところが EC と一致する (Verstraeten, Vasey, Raes, & Bijttebier, 2009) が,非自発的あるいは反動的な (reactive) 制御も含んでいる

(Oldehinkel et al., 2007)。そして自己制御 (self-regulation) はそ の反動性を調節するためのプロセスとして定義されており,EC は自己制御のプロセスに含まれている (Rothbart et al., 2011)。 以上を踏まえ,本研究では自発的という特性を重視しEC を扱う とする。

また,EC はこれまで,精神病理のリスクを測る重要な側面とし て挙げられてきた (De Panfilis, Meehan, Cain & Clarkin, 2013)。 発達早期のEC の個人差は心理的適応の違いと関連していると考 えられ,とくに児童期と青年期のEC の低さはその後の外在化・ 内在化問題のリスクを高めることが明らかにされている (Eisenberg et al., 2001; Eisenberg et al., 2005)。一般青年を対象 とした研究では, EC の低さと精神病理的症状の重さとの相関が 示され (Muris, 2006; De Panfilis et al., 2013),EC の高さが主観 的幸福感の高さや情緒的ストレスの低さと相関することが明らか になっている (Fosco, Caruthers, & Dishion, 2012)。

さらに,EC の調整効果もさまざまなモデルにおいて検討され てきた。Oldehinkel et al. (2007) では,外在化・内在化問題とネ ガティブ情動性(恐怖・欲求不満)の関係に対するEC の調整効 果を検討し,高いEC によって,内在化問題に対する恐怖の効果 と外在化問題に対する欲求不満の効果が弱められることがわかっ た。また,Verstraeten et al. (2009) では,ポジティブ感情の低 さとネガティブ感情の高さはEC が低い場合にのみ,抑うつ症状 と関連することが明らかになり,ネガティブ感情・ポジティブ感 情と抑うつ症状との関係はEC によって有意に調整されることが 示唆された。 したがって,本研究においても,EC がクロノタイプと精神的 健康の関係に調整効果をもつと考えられる。典型的な夜型のなか でも,就寝前の行動を制御できずに夜型になったわけではなく, 自発的に夜に活動するようにしているという場合も考えられる。 さらに,夜型のクロノタイプは精神的健康度が低いとされてきた のは,自己制御がうまくいかないことによるストレスが原因のひ とつとして推測できるため,逆に自己制御ができている状態であ れば,夜型でも精神的健康度は低くならないと考えられる。した がって,夜型であっても,EC が高ければ,精神的健康度も高い と予測できる。 以上のことから本研究では,大学生のクロノタイプとEC の関 係,それらが精神的健康に与える影響,およびクロノタイプと精 神的健康の関係におけるEC の調整効果を検討する。これまで, クロノタイプの変化に関しては,主に生物学的な側面からの検討 が多く,そのほか年齢や親の監督などが要因として検討されてき た。本研究では,自己制御の中核に位置付けており,実行機能の 高さを表す心理学的構成概念であるEC をクロノタイプの研究に 取り入れることによって,心理的側面からもクロノタイプの変化 のメカニズムの解明に役立てると考えられる。また,大学生の精 神的健康との関係を検討することで,クロノタイプとEC の臨床 的な重要性がより明白になり,大学生が健康的な生活リズムを維 持し,心身健康を保つための手がかりになると考えられる。 したがって本研究では,Figure 1 のようなモデルを立て,以下 の3 つの仮説を検討する。 (1) EC が低い人ほど,クロノタイプ は夜型に偏る。(2) EC が高い人ほど,精神的健康度が高い。 (3) 夜

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型は朝型と比べ,精神的健康度がより低い水準にある。 さらに上述のように,EC が高く,自発的に自分の行動をコン トロールした結果として夜型になっている場合も考えられる。し たがって,クロノタイプが精神的健康度に及ぼす影響に対する EC の調整効果を検討するため,(4) 夜型であっても,EC が高け れば,精神的健康度はより高い水準に保たれる;逆に,朝型であ っても,EC が低ければ,精神的健康度も低いという仮説を立て た。 Figure 1. 本研究で仮定されるモデル 方法 調査対象者 東海地方の国立大学で,2 つの心理学の授業において,調査概 要を説明した後,協力に同意した学部生計 169 名(男性 92 名,女 性 62 名,不明 15 名,平均年齢 19.92 歳,SD = 2.30)を調査対象 とした。尺度項目に対する回答漏れがあったもの,および全項目 に対して同じ回答をしたものなど,信頼性が低いと思われるもの を除き,最終的に 150 名(平均年齢 19.92 歳,SD = 1.96)を対象 に分析を行った。うち男性 85 名,女性 59 名,不明 6 名であった。 実施時期および手続き 2015 年 10 月に実施した。授業時間の一部を利用し,質問紙を 配布して一斉回答によって行った。 質問紙 フェイスシート 学部,学年,性別,年齢などの基本情報を尋 ねる項目に加え,今期の大学における講義の受講状況と,早朝あ るいは深夜に長期的に行っているアルバイトや部活などの活動の 有無などを尋ねる項目を設けた。

エフォートフル・コントロールの測定 Rothbart, Ahadi, & Evans (2000) の Adult Temperament Questionnaire のうち,EC 尺度 35 項目 をもとに作成された成人用エフォートフル・コントロール尺度日 本語版(山形・高橋・繁桝・大野・木島,2005)を用いた。この 尺度には,不適切な接近行動を抑制する能力である「行動抑制の 制御 (Inhibitory Control)」,ある行動を回避したい時でもそれを遂 行する能力である「行動始発の制御 (Activation Control)」,そして 必要に応じて集中したり注意を切り替えたりする能力である「注 意の制御 (Attentional Control)」の 3 つの下位尺度がある。山形他 (2005) により,信頼性,構成概念妥当性が支持されている。項目 例としては,「食べたり飲んだりすることへの渇望を我慢すること はたいてい難しい」,「気乗りしない時でも,面倒な課題に取り組 むことができる」,「何かの結果について不安になっている時,課 題に集中し続けるのはとても苦労する」などがある。「1. 全くあ てはまらない」から「7. 非常にあてはまる」の 7 件法で回答を求 める。

クロノタイプの測定 Horne & Ostberg (1976) によって作成さ れた Morningness - Eveningness Questionaire を日本語版にした,朝 型‐夜型測定尺度(Isihara, Saito, Inoue, & Miyata, 1984;石原他, 1986)19 項目を用いる。項目例として,「あなたの体調が最高と 思われる生活リズムだけを考えて下さい。そのうえで,1 日のス ケジュールを本当に思い通りに組むことができるとしたら,あな たは何時に起きますか」,「朝,ある特定の時刻に起きなければな らないとき,どの程度目覚まし時計に頼りますか」,「午後 11 時に 寝るとすれば,あなたは,そのときどの程度疲れていると思いま すか」などがある。得点が高ければ高いほど朝型であり,得点が 70-86 の場合は明らかな朝型 (definitely morning type),59-69 の場 合はほぼ朝型 (moderately morning type),42-58 の場合は中間型 (intermediate type or neither type) , 31-41 の 場 合 はほ ぼ 夜型 (moderately evening type),16-30 の場合は明らかな夜型 (definitely evening type)。

精神的健康の測定 1. WHO-5 精神的健康状態表:世界保健機関 (以下 WHO) が開発した精神的健康の指標であり,短時間で精神 的健康状態の測定ができ,国際的に広く用いられている。日本語 版 WHO-5 は Awata et al. (2007) により,信頼性・妥当性が確認さ れている。質問項目としては,「1.明るく,楽しい気分で過ごし た」,「2.落ち着いた,リラックスした気分で過ごした」,「3.意 欲的で,活動的 ,に過ごした」,「4.ぐっすりと休め,気持ちよ くめざめた」,「5.日常生活の中に,興味のあることがたくさんあ った」の 5 項目から構成されており,それぞれについて最近 2 週 間の状態を 5 点の「いつも」から 0 点の「まったくない」までの 6 件法で回答を求める。25 点満点であり,得点が高いほど精神的 健康状態が良いことを示す。 2. 主観的幸福感尺度:WHO が開発した心の健康自己評価質問 紙 Subjective Well-Being Inventory をもとに,伊藤・相良・池田・ 川浦 (2003) が作成した主観的幸福感尺度 (Subjective Well-Being Scale: SWBS) を用いる。「あなたは人生が面白いと思いますか」, 「今の調子でやっていけば,これから起きることにも対応できる 自信がありますか」,「非常に強い幸福感を感じる瞬間があります か」などといった 15 項目から構成されており,「1. 全くそう思わ ない―4.非常に」,「1. 全く自信はない―非常に」,「1. 全くない ―4. とてもよく」などといった 4 件法で回答を求める。 統計パッケージ 本研究におけるすべての分析に,SPSS 18.0 と R 2.15.3 を用い た。 結果 記述統計量 各尺度得点の記述統計量を Table 1 にまとめた。下位尺度「行動抑 制の制御」のα 係数が .53 と低かったが,その他の尺度および下 位尺度のα 係数は十分な値であったと考えられる。

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男女差および学年差の検討 t 検定により男女差を検討した結果,いずれの尺度においても 有意差は認められなかった (Table 2)。また,1 要因分散分析によ り学年差を検討した結果,こちらもすべての尺度において有意差 がみられなかった (Table 3)。 相関関係 EC とクロノタイプの関連,および EC と精神的健康の関連を検 討するため,各尺度間の相関係数を算出し,Table 4 に示した。EC 尺度の総得点と朝型‐夜型尺度得点との間に弱い正の相関 (r = .20, p < .05) がみられ,WHO-5 尺度得点および主観的幸福感尺 度得点とも正の相関がみられた (r = .26, p < .01; r = .31, p < .01)。ま た,EC 尺度の 3 つの下位尺度別でみると,行動始発の制御得点 Table 1 各尺度および下位尺度得点の記述統計量 (N=150) Table 2 男女別の平均値と SD および t 検定の結果 Table 3 学年別の平均値と SD および F 値 M SD M SD M SD M SD F 値 EC尺度  行動抑制の制御 47.90 7.13 43.00 7.21 49.29 6.31 48.72 5.00 1.05  行動始発の制御 47.69 10.05 38.00 13.53 46.17 11.11 51.06 11.80 1.69  注意の制御 45.53 7.94 38.67 2.52 46.00 9.41 44.17 7.41 .87  総得点 141.12 18.18 119.67 22.19 141.46 20.09 143.94 17.53 1.45 朝型‐夜型尺度 48.95 7.62 43.00 8.54 49.66 7.84 47.83 8.26 .82 WHO-5 14.27 4.14 15.33 1.15 13.78 4.98 12.94 4.19 .58 主観的幸福感尺度 41.14 6.13 41.67 7.64 41.56 6.36 44.17 6.98 1.13 1年 (N = 83) 2年 (N = 3) 3年 (N = 41) 4年 (N = 18) Table 4 各尺度の相関係数 のみが朝型‐夜型尺度得点と低い正の相関 (r = .25, p < .01) を示 し,さらに WHO-5 尺度得点および主観的幸福感尺度得点とも低 い正の相関 (r = .17, p < .05; r = .24, p < .01) を示した。他方,注意 の制御得点も WHO-5 尺度得点および主観的幸福感尺度得点と低 い正の相関 (r = .28, p < .01; r = .30, p < .01)を示した。ただし,行動 抑制の制御得点は朝型‐夜型尺度得点および精神的健康度を測定 する 2 尺度の得点と有意な相関を示さなかった。 構造方程式モデリングによる検討 データと Figure 1 に示した仮説モデルの適合性を検討するため に,構造方程式モデリングを用いて分析を行った。なお,精神的 健康の潜在変数については WHO-5 尺度得点と主観的幸福感尺度 得点を観測変数として位置づけている。 分析の結果を Figure 2 に示した。データとモデルの適合度はあ る程度満足できるレベルにあることが示された (χ2 (1) = 1.56, n.s.; GFI = .99; AGFI = .95; CFI = .99; RMSEA = .06)。また,すべてのパ スが 5%水準で有意なものであった。EC からクロノタイプへの直 接効果は .20,クロノタイプから精神的健康への直接効果は .16, EC から精神的健康への直接効果は .35,EC から精神的健康への 間接効果は .03,総合効果は .38 であった。 Figure 2. モデルの分析結果(標準化解) クロノタイプによる精神的健康の差の検討 朝型‐夜型測定尺度の得点が 16-30 の「明らかな夜型」と 31-41 の「ほぼ夜型」を合わせて夜型とし,42-58 を中間型とし,59-69 の「ほぼ朝型」,70-86 の「明らかな朝型」を合わせて朝型とした。 クロノタイプと精神的健康度の関連を検討するため,クロノタイ プを独立変数,精神的健康度を従属変数とした 1 要因分散分析を 行った (Table 5)。

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Table 5 精神的健康のクロノタイプによる比較 1 要因分散分析の結果,WHO-5 精神的健康状態表および主観的 幸福感尺度の 2 尺度得点ともに有意差が認められた (F (2, 147) = 3.95, p < .05; F (2, 147) = 3.08, p < .05)。Tukey 法による多重比較を行 った結果,中間型の平均値が夜型の平均値より有意に高かったこ とが明らかになった。 しかし,WHO-5 の得点において,朝型の平均値がもっとも高 く,次いで中間型,夜型がもっとも低いということは明らかであ る。朝型と夜型尺度得点の平均値に有意差がなかったことは,サ ンプル数の少なさによる可能性が高いと考えられる。そのため, 統計的手法としては問題があると思われるが,中間型を除き,比 較的サンプル数の差が小さい朝型と夜型のみで t 検定を行った。 その結果,WHO-5 尺度得点においてのみ,朝型と夜型の間に有 意差がみられた (t (45)=-2.04, p < .05)。 EC の調整効果 クロノタイプが精神的健康度に及ぼす影響に対する EC の調整 効果を検討するため,階層的重回帰分析を行った。その結果,ク ロノタイプが WHO-5 精神的健康状態表によって測定される精神 的健康度に及ぼす影響に対する EC の調整効果 (Table 6) と,クロ ノタイプが主観的幸福感尺度によって測定される精神的健康に及 ぼす影響に対する EC の調整効果 (Table 7) と,ともに有意な調整 効果は認められなかった。 Table 6 クロノタイプが精神的健康 (WHO-5) に及ぼす影響 に対する EC の調整効果 Table 7 クロノタイプが精神的健康(主観的幸福感)に及ぼす影響 に対する EC の調整効果 考察 記述統計量および男女差・学年差について 本研究では,大学生のクロノタイプと EC の関係,それらが精 神的健康に与える影響,およびクロノタイプと精神的健康の関係 における EC の調整効果を検討することを目的とした。 仮説について検討する前に,まず各尺度の記述統計量を算出し た。Table1 に示したように EC 尺度全体の α 係数は .81 と内的整 合性が十分であると考えられるが,山形他 (2005) では十分な信 頼性が確認されたにもかかわらず,EC 尺度の下位尺度の 1 つ「行 動抑制の制御」のα 係数が .53 と,内的整合性がやや低いと思わ れる。これは本研究の結果に影響を及ぼしている可能性があると 考えられる。 次に,本研究において男女差および学年差による影響の有無を 確認したところ,男女差および学年差による影響は認められなか った。そのため,仮説の検討の際に男女差と学年差は考慮しない こととした。 相関関係について 行動抑制の制御のみα 係数が低かったため,相関係数に歪みが 生じた可能性があるということを念頭においたうえで相関係数を みてみた。Table 4 に示したように,朝型‐夜型尺度得点と,EC 尺度の総得点および行動始発の制御得点と低い正の相関を示した。 つまり EC,とくに行動始発の制御とクロノタイプとは低い正の 相関を示しており,EC が低いほど夜型に偏るという仮説は相関 関係レベルにおいてある程度支持された。行動始発の制御力が低 い場合,夜は就寝するという,朝は起床するという動作に踏み切 れず,徐々に夜型に偏っていくと解釈できるであろう。 また,行動始発の制御得点,注意の制御得点および EC 尺度総 得点は,WHO-5 尺度得点および主観的幸福感尺度得点と低い正 の相関がみられた。つまり,EC,とくに行動始発の制御,注意の 制御は精神的健康度と低い正の相関を示しており,EC が高いほ ど精神的健康度が高いという仮説も相関関係レベルにおいてある 程度支持された。ストレスフルな状況やネガティブ情緒を経験し ている場合において,注意をほかのことに逸らしたり,状況をよ くするための行動を起こしたりする必要があり,注意の制御と行 動始発の制御が必要になる (Eisenberg et al., 2011)。このように,

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注意の制御と行動始発の制御が精神的健康度と正の相関を示すこ とは理論的に解釈可能であり,EC の高さが主観的幸福感の高さ や情緒的ストレスの低さと相関する(Fosco et al., 2012) などとい った先行知見と合致する結果であると考えられる。 そして,朝型‐夜型尺度得点は WHO-5 によって測定された精 神的健康度と低い正の相関を示しており,クロノタイプが夜型に 偏るほど,精神的健康度が低い可能性があるということを示唆し ている。 しかし,これらの相関関係はいずれも低いものである。さらに, 行動抑制の制御得点はクロノタイプとも精神的健康度とも有意な 相関を示しておらず,これは行動抑制の制御のα 係数が低かった ことも原因の一つとして考えられる。 仮説の検討 構造方程式モデル 上述のように,EC とクロノタイプ, EC と精神的健康度,そしてクロノタイプと精神的健康度の間にある 程度の相関関係がみられた。さらに,構造方程式モデリングによ って EC とクロノタイプと精神的健康度との因果関係を検討し, 仮説 (1) (2) (3) についてさらなる検証を行った。データとモデル の適合度はある程度満足できるレベルにあることが示されたが, EC からクロノタイプへの直接効果は .20,クロノタイプから精神 的健康への直接効果は .16 と,一部パス係数が小さかった。一方, EC から精神的健康への直接効果と総合効果は .30 を上回ってお り,ある程度の説明力はあると考えられる。よって,パスの方向 性は適切であると考えられるが,必ずしも強い因果関係があると は言えず,EC が精神的健康に対して一定程度の説明力をもって いるものであると考えられる。 クロノタイプによる精神的健康の差 さらに,夜型は朝型と比 べ,精神的健康度がより低い水準にあるという仮説を検証するた めに,クロノタイプによる精神的健康度の差を検討した。中間型 と夜型の間にのみ精神的健康度に有意差が認められ,クロノタイ プが中間型の群が夜型の群より精神的健康度が高いということが 示唆された。しかし,結果でも述べたように,朝型と夜型の間に 有意差がなかったことは,サンプル数の少なさなどによる可能性 が高いと考えられるため,中間型を除いて朝型と夜型のみで t 検 定を行った。その結果,WHO-5 においてのみではあるが,朝型 と夜型の間に有意差がみられ,夜型は朝型と比べ,精神的健康度 がより低い水準にあるという仮説は支持されたと考えられる。こ れは,相関関係を検討した際の結果と一致しており,先行研究の 結果 (Howell et al., 2008; Dagys et al., 2012) とも合致するものであ ると考えられる。 EC の調整効果 最後に,仮説 (4) 夜型であっても,EC が高け れば,精神的健康度はより高い水準に保たれる;逆に,朝型であ っても,EC が低ければ,精神的健康度も低いという仮説を検証 するために,EC の調整効果を階層的重回帰分析で検討した。ク ロノタイプが精神的健康に及ぼす影響に対する EC の調整効果は 認められなかった。つまり,自己制御ができているかどうかにか かわらず,夜型は朝型より精神的健康度が低くなる可能性が高い と考えられる。一方で,EC が高い人ほど,精神的健康度が高い という仮説もある程度支持されているが,精神的健康に対するEC の影響はクロノタイプの影響を打ち消すほどのものではなかった, あるいはそもそも EC が高い人は朝型に偏りやすく,EC が高い夜 型の人が少なかったから,などといったことが考えられる。 以上に論じたように,本研究において,(1) EC が低い人ほど, クロノタイプは夜型に偏る;(2) EC が高い人ほど,精神的健康度 が高い;(3) 夜型は朝型と比べ,精神的健康度がより低い水準に あるという 3 つの仮説はある程度支持されたと考えられる。一方, 仮説 (4) は支持されなかった。クロノタイプと EC は精神的健康 とある程度関連しており,健康的な生活リズムを維持することが 重要であると考えられる。 問題点および今後の展望 本研究では,下位尺度のα 係数が低いなどの問題があった。そ の原因としてまず考えられるのは,サンプルの問題である。本研 究は国立大学一校で調査を実施したため,調査参加者の特性に偏 りがあると考えられる。たとえば,課題を律儀にこなす,真面目 で規則正しいなどといった特性が比較的強い可能性があり,本研 究の結果になんらかの影響を与えた可能性があると考えられる。 また,サンプル数を増やすことも重要である。石原他 (1986) に よると,朝型‐夜型質問紙の得点分布は正規型であり,中間型に もっとも分布が集中しており,両端の朝型と夜型の数は少ないた め,朝型と夜型において十分なサンプル数を得るためには,サン プルの総数を大きくする必要がある。本研究ではサンプルが比較 的小さかったため,クロノタイプにおいて朝型と夜型のサンプル 数がとくに少なかった。サンプル数を増やすことでより正確な結 果を得られるだろうと考えられる。加えて,分散分析によりとく に学年差は認められなかったが,本研究の調査参加者においてと くに講義数が多い工学部 1 年生が多く,朝から夕方まで講義を受 けている点に関しては高校時代と特に変わらないと考えられる。 そのため,大学入学前のクロノタイプと大きな違いはなかったと 思われる。 以上を踏まえ,今後は参加者の特性が偏らないよう,属性の異 なる大学,そして平均的に各学年に調査を実施することが望まし いと考えられる。 また,EC 尺度に関しては,計 35 項目の項目数では参加者に対 する負担が大きいと考えられる。それから,山形他 (2005) では 十分な信頼性が確認されたが,本研究の調査参加者から項目内容 の表現などについて複数指摘されており,今後は新たに 19 項目の 英語の短縮版 (Evans & Rothbart, 2007) を日本語版にする試みが 必要と考えられる。

さらに本研究では,クロノタイプを測るために最も多く用いら れている Horne & Ostberg (1976) が作成した尺度の日本語版 (Isihara et al., 1984;石原他,1986)を用いた。しかし,この尺度 では,「あなたの体調が最高と思われる生活リズムだけを考えて下 さい」などといった,起床時の良好な状態を想定させて回答を求 める項目が多く,必ずしも実際の状態のみを反映するものではな い。今後は具体的に実際の就寝時間や起床時間を尋ねることによ って,実際の生活との関連を解明していくことが必要であると考 えられる。それと関連して,実家暮らしか一人暮らしかなどにつ いて尋ね,それらによる影響を統制したうえで検討することが望

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ましいと考えられる。実家暮らしの場合,夜遅い時間に就寝して も,朝早い時間に家族に起こされる可能性がある。その場合,本 来のクロノタイプが測れているとは言い切れず,結果的に中間型 に分類される可能性が高いと考えられる。このように,これらの 点においても尺度の改善が必要であると思われる。 今後は以上に述べた点を改善しつつ,縦断研究を行い,EC の 発達的変化や,それに関連するクロノタイプの変化などを検討す ることも有意義であると考えられる。 引用文献

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