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バイオエタノール生産における酵母の培養およびエタノール

発酵のプロセスシミュレーションの検討

Process simulation of yeast cultivation and ethanol fermentation

in bio-ethanol production

柳 田 高 志

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・ 藤 本 真 司

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・ 佐 賀 清 崇

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・ 美 濃 輪 智 朗

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Takashi Yanagida Shinji Fujimoto Kiyotaka Saga Tomoaki Minowa

(原稿受付日 2010 年 4 月 16 日,受理日 2010 年 10 月 29 日) 1.はじめに 近年,地球環境とりわけ温暖化現象が一段と深刻化して きている.温暖化現象の要因は化石資源の消費によるもの と言われているが,今日,エネルギーや様々な日用品には これら化石資源が使われており,問題の解決は容易ではな い.化石資源への依存度を逓減する対策として,バイオマ スによる代替が期待されている.バイオマスは再生可能お よびカーボンニュートラルという特徴を有するので,適切 に利用することができれば,地球温暖化対策の一助となり うる.ただし,バイオマスは種類が豊富であり,目的とす る燃料や材料への変換技術もまた多肢にわたるため,効率 的な利活用技術の研究開発には,実験とシステム評価の組 合せによるアプローチが効果的である.システムの評価指 標は目的に応じて様々であるが,バイオマス利活用技術の 実用化には環境・経済性評価が特に重要となる.これまで に,経済性あるいは環境性の観点からバイオマスのエネル ギー変換プロセスを比較検討した研究がいくつか報告され ている1-4).これらの研究では,評価の基盤となるエネルギ ー収支や物質収支の試算の一部に市販のプロセスシミュレ ータが用いられている.しかしながら,このプロセスシミ ュレータは化学・石油化学向けに作成されているものが多 く,生物学的変換技術のシミュレーションには不向きであ る.エタノール発酵,メタン発酵,乳酸発酵に代表される 生物学的変換技術は微生物の代謝反応を利用しているため に,その微生物に関する物性データが登録されていない一 般的なプロセスシミュレータでは計算できないのがその理 由である.この問題に対して,微生物をモデル化し,組成 データ,熱力学データ,反応式を市販のプロセスシミュレ ータに組み込めば,微生物反応のシミュレーションも可能 であると考えられる.微生物を用いた物質生産はバイオ燃 料製造やバイオリファイナリーの分野では欠かせない技術 となっており,微生物を用いた物質変換プロセスを市販の プロセスシミュレータを用いてシミュレーションすること ができれば評価技術の多様化・高度化に資すると考えられ る.たとえば,実験データをシミュレータに反映させ,そ のアウトプットを実験の現場にフィードバックするサイク ルの形成や,そこから派生する研究重点課題の抽出による 開発の効率化の一助となるであろう. このような背景から,本研究では,微生物反応が絡むバ イオマスの種々の利活用システムの経済性・環境性評価の 高度化に向け,微生物の増殖や代謝に伴う物質収支,エネ ルギー収支の試算をプロセスシミュレータ上で可能とする ことを目的とした.先ず,産業で一般的に用いられている 微生物の代表例として酵母を取り上げ,その物性データの 取得,モデル酵母の組成・熱力学データの決定,反応式の 作成およびそれらのプロセスシミュレータへの組み込みを 行った.さらに,ケーススタディとして,酵母の菌体増殖 This paper presents a simulation technique of yeast cultivation and ethanol fermentation on a commercially available process simulator. In general, the simulation of microorganism cultivation on the process simulator is not possible because a material data of the microorganism is not registered in the simulator. If all of the data required is collected and installed to the simulator, the simulation of the microorganism cultivation will be achieved on it. Yeast which is a widely known in industrial field was chosen as a model microorganism. The data of yeast was collected by analytical measurement and literature survey, followed by a composition of model yeast and reaction formulas were determined. All data associated the yeast was completely installed in to the simulator. Process of the yeast cultivation and ethanol fermentation was demonstrated on the simulator as a case study. The success of the simulation of the case study was confirmed. Estimation of input substrate quantity and prediction of generated heat amount of microbial reaction become possible on the proposed method. This method can provide diversification and advancement of simulation technique for process evaluation associated microbial reaction.

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(独)産業技術総合研究所バイオマス研究センター 〒739-0046 広島県東広島市鏡山 3-11-32

(2)

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 0 20 40 60 80 100 比熱容量 [J/ (g ・ ℃ )] 温度[℃ ] 方法との比較評価をした. 2.方法 2.1 試料および分析 菌体試料として,酵母(Saccharomyces cerevisiae,TypeII, SIGMA)を用いた.CHNS 分析は元素分析装置(MT-6,ヤ ナコ分析工業),水分,灰分測定は熱分析装置(Thermo plus TG8120,リガク),発熱量測定はカロリーメーター(C2000, IKA),真密度測定は空気比較式比重計(東京サイエンス社), 比熱容量測定は示差走査熱量計(DSC Q100,TA instruments) を用いた.真密度と比熱容量の測定は株式会社住化分析セ ンターに依頼した. 2.2 プロセスシミュレーション プロセスシミュレーションは市販の定常状態プロセスシ ュミレーターPRO/II(インベンシス社)5)を用いて行った. プロセスシミュレーションに用いる成分の物性データは, 基本的に PRO/II の内蔵データを用いた.酵母等の PRO/II に登録されていない物質に関するデータは実測(2.1 項)あ るいは文献調査により収集した.収集したデータの一部は 市販の表計算ソフト Microsoft Excel(マイクロソフト株式 会社)を用いて PRO/II に入力できる形に変換した. 3.シミュレーションにおけるモデル酵母の物性データと 反応式の検討 3.1 分析結果とモデル酵母に関するデータの作成 酵母の成分,総発熱量および真密度の分析結果を表 1 に 示す. 表 1 酵母の分析結果 項目 水分 6.81 wt% 灰分 5.74 wt%(dry) 炭素 47.17 wt%(dry) 水素 7.42 wt%(dry) 窒素 6.47 wt%(dry) 硫黄 0.07 wt%(dry) 総発熱量 18914 J/g 真密度 1.44 g/cm3 (1)酵母組成 菌体の元素バランスは炭素(C),水素(H),酸素(O), 窒素(N),硫黄(S),リン(P),マグネシウム(Mg)お よびカリウム(K)の含有量がわかれば求めることができ る 6).そこで,酵母の元素組成を実験値および文献値を基 に決定した.酵母組成の灰分,C,H,N,S の分析値デー タから O の含有量を 33.13 wt%(dry)と試算した.また,酵 母の P,K および Mg の含有量を文献7)から引用し,それぞ

れ 1.40 wt%(dry),1.90 wt%(dry),0.29 wt%(dry)とした.こ こで得られた酵母の組成は,文献 8)と比較して,概ね一致 していることを確認し,平均的な酵母の組成であると判断 した.この組成に基づき酵母の分子量を 1000 と仮定して, シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 用 の モ デ ル 酵 母 の 分 子 式 を C40.14H75.24O21.16N4.72K0.50P0.46Mg0.12S0.02とした.この分子式を 求めるにあたり,各元素の原子量は International Union of Pure and Applied Chemistry (IUPAC)の値9)を採用した. (2)燃焼熱 酵母の燃焼熱は,総発熱量(高位発熱量)の分析値から含 水量分を差し引き,ΔHc = -20.30 MJ/kg(dry)と試算した. (3)標準生成エンタルピー 酵母の標準生成エンタルピーは式(1)に示す燃焼反応式 よりΔHf = -6.50 MJ/kg(dry)と試算した.反応に関係した成 分の標準生成エンタルピー10)を表 2 に示す. C40.14H75.24O21.16N4.72K0.50P0.46Mg0.12S0.02 + (64.45 - 21.16/2)O2 → 40.14CO2 + (75.24/2)H2O + 4.72NO2 + (0.50/2)K2O +

(0.46/2)P2O5 + 0.12MgO + 0.02SO2 + 20.30 MJ/kg(dry) (1)

表 2 標準生成エンタルピー ΔHf at 25°C [kJ/mol] 状態 酸素 0 気体 二酸化炭素 -393.8 気体 水 -282.7 液体 二酸化窒素 33.9 気体 酸化カリウム -363.2 固体 五酸化二リン -1505.1 固体 酸化マグネシウム -601.6 固体 二酸化硫黄 -297.1 気体 (4)比熱容量 比熱容量の測定結果を図 1 に示す.比熱容量の測定値か ら含水量分を差し引き,酵母の温度変化における比熱容量 の推算式(2)を作成した.なお,各温度(圧力は 0.10 MPa) に対する水の比熱は文献値11)を採用した. 図 1 酵母の比熱容量

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y = -1.705×10-6x3 + 5.081×10-4x2 – 1.147×10-2x + 0.8764 (2) y:比熱容量[J/(g•°C)] x:温度[°C] (5)酵母の密度 酵母の密度は測定時に乾燥処理を行っていることから, 真密度の実測値 1.44 g/m3(表 1)をそのまま採用した. 3.2 酵母の菌体増殖(好気発酵)における反応式 細胞内で起こる化学反応は複雑であり,これを網羅して 量論式を設定することは不可能である.しかしながら,細 胞外での基質の消費,代謝物の生成および酵母の成長を考 慮すれば,反応式の作成は可能である 6).酵母の好気発酵 において炭素源や窒素源等の基質は細胞内に取り込まれる とともに炭素源の一部はエネルギーとして消費されており, その結果,細胞の増殖,代謝物の排出,二酸化炭素や水の 生成が起こる.酵母の好気発酵における細胞増殖の炭素源 としてグルコース,窒素源として硫酸アンモニウム,その 他の栄養素としてリン酸二水素カリウム,硫酸マグネシウ ムを設定し,これらの反応を式(3)で表した.この式では, 微生物培養において窒素源に硫酸アンモニウムを用いると アンモニアイオンは菌によって消費され硫酸イオンが残る ので培養液は酸性化する8)という傾向を考慮している.

(a)C6H12O6 + (b)O2 + (c)KH2PO4 + (d)(NH4)2SO4 + (e)MgSO4

+ (f)H2O → (g)C40.14H75.24O21.16N4.72K0.50P0.46Mg0.12S0.02 + (h)CO2 + (i)H2O + (j)H3PO4 + (k)H2SO4 (3) ここで,a,b,c,d,e,f,g,h,i,j および k は量論係 数である. 酵母のグルコースからの菌体収率は 0.51 である12)ので, グルコースの 51 wt%は菌体の細胞に取り込まれ,残りはエ ネルギーとして消費されると仮定した.ここで,菌体収率 は式(4)で定義される. 菌体収率 = 乾燥菌体生成量(g) / グルコース消費量(g) (4) したがって,式(3)の解は,式(5)となった.この式を酵母 の好気発酵の反応式とした. 10.88C6H12O6 + 19.68O2 + 0.50KH2PO4 + 2.36(NH4)2SO4 + 0.12MgSO4 → C40.14H75.24O21.16N4.72K0.50P0.46Mg0.12S0.02 + 25.16CO2 + 35.11H2O + 0.03H3PO4 + 2.46H2SO4 (5) 3.3 酵母のエタノール発酵(嫌気発酵)における反応式 酵母は糖の嫌気的分解によってエネルギーを獲得してい る.グルコース 1 分子からピルビン酸 2 分子が生じる解糖 を経て,ピルビン酸は,エタノールと二酸化炭素に分解さ れる.その反応式は,式(6)となる. C6H12O6→ 2C2H5OH + 2CO2 (6) 実際の酵母の嫌気発酵では,エタノール以外に乳酸,酢 酸,コハク酸,クエン酸等の代謝物も生成13)していること あるいは酵母の菌体内で各種中間生成物が存在しているこ とを考えると,投入グルコースのすべてを式(6)のみでカバ ーすることはできない.しかしながら,すべての代謝物, 中間生成物を網羅することも不可能である.そこで,本検 討では,エタノール発酵以外の反応として,グルコース 1 分子が分解し 2 分子に断片化する式(7)を作成し,中間生成 物あるいは反応副産物の生成に対応できるようにした.す なわち,酵母のエタノール発酵において,式(6)を主反応, 式(7)を副反応と仮定し,それぞれの反応割合は変換効率を 変動係数として入力することとした.式(7)の C3H6O3(代謝 物あるいは中間生成物;以下,エタノール発酵副産物)の 物性データは,PRO/II に内蔵されている乳酸のそれを代用 することとした. C6H12O6→ 2C3H6O3 (7) 4.ケーススタディ 4.1 プロセスの概要と設定条件 3の項で得られた物性データと反応式をプロセスシミュ レータに組み込み,ケーススタディとしてバイオエタノー ル生産の発酵工程における酵母の菌体増殖(好気発酵)と エタノール発酵(嫌気発酵)をシミュレーションした.比 較のために,従来の方法による試算も行った. プロセスの概要を図 2 に示す.(a)は酵母の物性データ並 びに菌体増殖等の反応式を組み込んだ本研究で提案する新 規試算法(以下,新規試算法),(b)は酵母の物性データが 登録されていない従来の試算法(以下,従来試算法)のプ ロセスを示している. 新規試算法のプロセスは,グルコース溶液(10%濃度), 硫酸アンモニウム,リン酸二水素カリウムおよび硫酸マグ ネシウムを基質として,酸素存在下で酵母菌体を増殖させ る酵母培養(好気発酵)と,その酵母を用いて嫌気条件で グルコース溶液(10%濃度)を基質としてエタノールを生 産するエタノール発酵(嫌気発酵)で構成されている. 従来試算法のプロセスは,グルコース溶液(10%濃度) を基質とした嫌気条件下でのエタノール発酵のみをプロセ

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硫酸アンモニウム リン酸二水素カリウム 硫酸マグネシウム S30 S40 酸素 S90 S60 二酸化炭素 S50 グルコース溶液 (10% 濃度) S70 S20 S10 発酵液 S80 菌体増殖 10.88C6H12O6+ 19.68O2+ 0.50KH2PO4+ 2.36(NH4)2SO4+ 0.12MgSO4 → C40.14H75.24O21.16N4.72K0.50P0.46Mg0.12S0.02+ 25.16CO2+ 35.11H2O + 0.03H3PO4+ 2.46H2SO4 C6H12O6→ 2C2H5OH + 2CO2 C6H12O6→ 2C3H6O3 エタノール発酵 酵母培養 S10 S20 グルコース溶液 (10%濃度) 発酵液 酵母 実際は入力していない 二酸化炭素 S30 C6H12O6→ 2C2H5OH + 2CO2 菌体増殖 ※PRO/IIの従来試算法では微生物のデータが登録されていないのでシミュレーション できない.従って,必要培地量(炭素源,窒素源,無機塩)は別途(例えば, Microsoft® Excel )試算している.ただし,熱収支に関する計算は困難. エタノール発酵 (a) 新規試算法のプロセス (b) 従来試算法のプロセス 図 2 プロセスの概要 スシミュレータで試算している.エタノール発酵における 酵母は,それ自体が反応で変化しないと考え,プロセスシ ミュレータ上では酵母の菌体は無視しており,グルコース がエタノールと二酸化炭素に変換される反応式のみを考慮 している.酵母培養に関しては酵母の物性データおよび反 応式が登録されていないので,プロセスシミュレータでは 計算を行うことができない.そのため,必要基質量は,表 計算ソフト(例えば Excel)等で別途計算している. ただ し,熱収支に関する計算は困難であり,考慮していない. 表 3 にケーススタディの設定条件を示す.エタノール発 酵に投入するグルコース量を 1,000 kg,エタノールの変換 効率を 90%(グルコース基準)と設定した.エタノール発 酵における酵母濃度はエタノール発酵溶液の 1 wt%(dry)と 設定し,必要酵母量を酵母培養工程で生産することとした. 酵母培養では,グルコースの利用率を 100%,硫酸アンモ ニウム,リン酸二水素カリウムおよび硫酸マグルネシウ の利用率をそれぞれ 90%と設定した.酵母培養とエタノー ル発酵の反応温度はともに 30°C,投入原料の温度は 25°C と設定した.プロセス中の圧力はすべて 101.3 kPa(常圧) とした.ここでの変換効率とは投入した基質のうち目的物 に変換された基質の割合,利用率とは投入した基質のうち 消費された基質の割合と定義した. 表 3 ケーススタディの設定条件 項目 酵母培養の温度 30°C 酵母の菌体濃度(対エタノール発酵溶液) 1 wt%-dry エタノール発酵の温度 30°C エタノール発酵における投入グルコース量 1,000 kg エタノール変換効率(グルコース基準) 90% 4.2 ケーススタディの試算結果 4.1 の項で設定したプロセスおよび条件でシミュレーシ ョンを行った.新規および従来試算法のフロー組成をそれ ぞれ表 4,5 に示す.表中に示すストリーム No.は図 2 のそ れらに対応している. 表 4 では,S10,S30 および S40 は投入した物質のフロー を,S60,S80 および S90 は生成した物質のフローを表わし ている.S50 は酵母培養における培養液のフロー組成を示 し,酵母が 124.3 kg(菌体濃度 0.01 = 酵母重量/(S50 と S70 の全量))生産されていること,硫酸アンモニウム,リン酸 二水素カリウムおよび硫酸マグネシウムの利用が 90%であ り,10%が未反応物として試算されていること,酵母培養 副産物が生成していること,反応(酵母培養,エタノール 発酵)が 30°C で行われていることより,設定条件(表 3) と合致していることを確認した.ここでの酵母培養副産物 は,式(5)で示される硫酸およびリン酸を合計したものを表 わしている.S80 はエタノール発酵における発酵液のフロ ー組成であり,投入グルコース量とエタノール生成量から エタノール変換が 90%(グルコース基準)の効率で達成さ ストリーム No. S10 S20 S30 S40 S50 S60 S70 S80 S90 温度 °C 25.0 25.0 25.0 25.0 30.0 30.0 25.0 30.0 30.0 圧力 kPa 101.3 101.3 101.3 101.3 101.3 101.3 101.3 101.3 101.3 グルコース kg 1,243.8 243.8 0.0 0.0 0.0 0.0 1,000.0 0.0 0.0 水 kg 11,194.2 2,194.2 0.0 0.0 2,272.8 0.0 9,000.0 11,272.8 0.0 硫酸アンモニウム kg 0.0 0.0 43.1 0.0 4.3 0.0 0.0 4.3 0.0 リン酸二水素カリウム kg 0.0 0.0 9.3 0.0 0.9 0.0 0.0 0.9 0.0 硫酸マグネシウム kg 0.0 0.0 2.0 0.0 0.2 0.0 0.0 0.2 0.0 酸素 kg 0.0 0.0 0.0 78.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 酵母 kg 0.0 0.0 0.0 0.0 124.3 0.0 0.0 124.3 0.0 二酸化炭素 kg 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 137.7 0.0 0.0 439.7 酵母培養副産物 kg 0.0 0.0 0.0 0.0 30.4 0.0 0.0 30.4 0.0 エタノール kg 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 460.3 0.0 エタノール発酵副産物 kg 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 100.0 0.0 合計 kg 12,438.0 2,438.0 54.4 78.3 2,433.0 137.7 10,000.0 11,993.3 439.7 表 4 新規試算法プロセスのフロー組成

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れていること,変換効率の残り 10%分がエタノール発酵副 産物(ここでは,式(7)の C3H6O3と定義される)に変換さ れていることを確認した.なお,新規試算法における全体 の物質収支・熱収支がバランスしていることも確認し,新 規物質(モデル酵母)の導入が正常に行えていると判断し た. 表 5 では,S10 は投入した物質のフローを,S20 および S30 は生成した物質のフローを表わしている.S20 のフロ ー組成はエタノール発酵における発酵液であり,投入グル コース量とエタノール生成量からエタノールの変換効率 90%(グルコース基準)が達成されていることを確認した. ただし,表 4 と異なり,変換効率の残り 10%分はグルコー スの未反応物として試算している. 表 5 従来試算法プロセスのフロー組成 4.3 新規および従来試算法の比較 プロセスシミュレータを用いてエタノール製造プロセス (酵母培養およびエタノール発酵)のシミュレーションを 行った.新規試算法および従来試算法による計算結果の比 較を表 6 に示す. 新規試算法では酵母培養に関する菌体量を設定すること で必要な基質(グルコース,硫酸アンモニウム,リン酸二 水素カリウムおよび硫酸マグネシウム)の量並びに副産物 量が把握できるようになった.さらに,酵母培養における 代謝熱の試算が可能となった.代謝熱は微生物の増殖反応 において避けえない現象であり,また微生物培養はその最 適温度を保って実施する必要があり,代謝熱を除去しつつ 培養を行っている.大型のタンクを用いて培養を行う場合, 除熱のための多大な費用を掛けているのが現状であり,培 養工程の経費を削減するためにも代謝熱量を予測しておく ことは重要である6).本ケーススタディの新規試算法では, 124 kg(エタノール発酵時の菌体濃度 1 wt%)の酵母の生 産において,温度 30°C を保ちながら培養する場合,1,302.8 MJ の代謝熱が発生すると試算された. 従来試算法では酵母の物性データが内蔵されていないた めに,プロセスシミュレータによる酵母培養の物質収支お よび熱収支の試算が行えない.従って,酵母培養に必要な 基質量を求めるには,表計算ソフト(例えば Excel)等で別 途試算している.ここでは,新規試算法と同一の条件とし 表 6 新規および従来試算法によるシミュレーション結果 の比較 工程 項目 単位 試算方法 新規 従来 酵母培養 投入グルコース量 kg 243.8 (196.1) 投入硫酸アンモニウム量 kg 38.8 (33.9) 投入リン酸二水素カリウム量 kg 8.4 (6.8) 投入硫酸マグネシウム量 kg 1.8 (1.6) 酵母菌体量 kg 124.3 (100.0) 酵母培養における副産物量 kg 30.4 - 酵母培養における代謝熱 MJ 1,302.8 - エタノール発酵 投入グルコース量 kg 1,000.0 1,000.0 エタノール生産量 kg 460.3 460.3 エタノール発酵における副産物量 kg 100.0 - エタノール発酵における代謝熱 MJ 178.6 121.9 (): Excel で試算,-:試算が困難 て,酵母濃度をエタノール発酵溶液の 1 wt%(dry),酵母の グルコースからの菌体収率(式(4))を 0.51,硫酸アンモニ ウム,リン酸二水素カリウムおよび硫酸マグネシウムの利 用率を 90%と設定し,酵母の増殖に必要な基質の量を試算 した.その結果,基質投入量はグルコース,硫酸アンモニ ウム,リン酸二水素カリウムおよび硫酸マグネシウムでそ れぞれ 196.1 kg,33.9 kg,6.8 kg,1.6 kg と試算され,この 値は新規試算法のそれと比較して過小評価されている.こ れは,従来試算法において酵母菌体と酵母培養液に含まれ る水や副産物を考慮していないことに起因するものであり, すなわち,エタノール発酵液の総容量が少なく見積もられ, 結果として菌体濃度の設定条件値を満たすための必要基質 量が少なく試算されたためである.また,硫酸アンモニウ ム,リン酸二水素カリウムおよび硫酸マグネシウムの投入 量の試算では,それぞれ,酵母の N,P,Mg の含有率を基 準にしているため,H,O,S,K の物質収支はバランスし ない.さらに,従来試算法では代謝熱の試算は困難である ために考慮していない. エタノール発酵では,1,000 kg のグルコースから 460.3 kg のエタノールが生産される点は両試算法の結果は同様であ る.ただし,代謝熱が新規および従来試算法ではそれぞれ 178.6 MJ,121.9 MJ であり,従来試算法の代謝熱は新規試 算法のそれの約 2/3 と過小に試算されている.これは,エ タノール変換効率 90%の条件設定において,残り 10%を従 来法では未反応と仮定しているために,その分の反応熱が 考慮されていないことが過小に試算されている原因である. 新規試算法では副産物あるいは中間生成物の代謝を考慮し たことによりその反応熱が計上されている. 以上のことより,菌体濃度を変化させた場合の必要基質 量や代謝熱の試算が比較的簡便に行うことができ,シミュ レーション技術の向上ができたと考えられる.また,実用 的観点に立てば,実験による確認を行い,精度の向上を検 ストリーム No. S10 S20 S30 温度 °C 25.0 30.0 30.0 圧力 kPa 101.3 101.3 101.3 グルコース kg 1,000.0 100.0 0.0 水 kg 9,000.0 9,000.0 0.0 エタノール kg 0.0 460.3 0.0 二酸化炭素 kg 0.0 0.0 439.7 合計 kg 10,000.0 9,560.3 439.7

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討していく必要があるが,本報で提案する新規試算法では 微生物を取り扱うことができるため,ラボ実験とプロセス シミュレーションによる組合せによるシステム評価が可能 になった.この微生物が取り扱える点が,従来法に対する 新規法の優位性であり,評価の領域が拡大できたと考えら れる.新規リグノセルロース系バイオマスからのエタノー ル生産において,改良型微生物(例えば,キシロースのエ タノール変換能を有する酵母14, 15))や酵素糖化法の酵素生 産に関するシステム改善(例えば,酵素のオンサイト生産 16))の経済性評価等に応用することができるであろう. 5.まとめ 本論文では,バイオマス利用に関する評価技術の向上を 目指し,市販のプロセスシミュレータ上でこれまで検討さ れていない微生物の菌体増殖およびそれを利用した物質生 産のプロセスシミュレーションを試みた.先ず,モデル微 生物として,工業界で幅広く用いられ,取扱の容易さ並び に物性等の情報が比較的の入手しやすい酵母を選択し,そ の物性データを分析および文献から取得した.得られた物 性データから酵母のモデル化および菌体増殖,エタノール 発酵の反応式を作成し,それらのシミュレータへの組み込 みを行った.ケーススタディを実行し,市販のプロセスシ ミュレータを用いて微生物の菌体増殖および物質生産がシ ミュレーションできることを明らかとした.バイオマスの 生物学的変換技術すなわち微生物反応を用いる物質生産に おいて,本報で提案する手法はプロセス評価の多様化ある いは高度化に資すると考えられる. 謝辞 本研究は、NEDO 加速的先導技術開発「メカノケミカル パルピング前処理によるエタノール生産技術開発」および NEDO セルロース系エタノール革新的生産システム開発事 業「早生樹からのメカノケミカルパルピング前処理による エタノール一貫生産システムの開発」の一環として実施さ れた.また,本研究の推進にあたり産総研バイオマス研究 センターの井上宏之博士,喜多尾千秋博士,松鹿昭則博士, 村上克治博士にご指導・ご助言を,舞田浩一氏にご協力を 頂いた.ここに記して謝意を表する. 参考文献 1) 柳田高志,藤本真司,秀野晃大,井上宏之,塚原建一 郎,澤山茂樹,美濃輪智朗;稲わらからのエタノール 生産における非硫酸前処理法のプロセスエネルギーお よび経済性評価,エネルギー・資源,30-5 (2009), 8-14. 2) 柳田高志,美濃輪智朗,清水嘉久,松村幸彦,野田洋 二; 活性炭触媒再利用を考慮した鶏糞の超臨界水ガス 化によるエネルギー転換システムとその経済性, エネ ルギー・資源,30-6 (2009), 10-16. 3) 佐賀清崇,藤本真司,柳田高志,多田千佳,ベスピャ トコ リュドミラ ユリイブナ,バティスタ エルマー, 美濃輪智朗;前処理・糖化法の違いを考慮したセルロ ース系バイオエタノール製造プロセスの比較評価,エ ネルギー・資源,30-2 (2009), 9-14. 4) 藤本真司,美濃輪智朗,坂西欣也; 経済的なバイオマ ス ト ー タ ル シ ス テ ム の 設 計 , 触 媒 , 49-4 (2007), 254-259. 5) PRO/II; http://www.simsci.jp/home.shtml. ( ア ク セ ス 日 2010.2.25) 6) 永井史郎;微生物培養工学,(1985),1-40,共立出版. 7) 斉藤静男;酵母ミネラル,(2001),特許第 3216035 号. 8) P.F.Stanbury,A. Whitaker 著(石崎文彬 訳);発酵工学 の基礎 実験室から工場まで,(1988),75,78,学会出 版センター.

9) IUPAC Periodic Table of the Elements; http://old.iupac.org/reports/periodic_table/IUPAC_Periodic _Table-22Jun07b.pdf. (アクセス日 2010.2.25)

10) 化学工学便覧改訂 6 版(化学工学会編),(1999),19-21, 丸善.

11) Ulrich Grigull, Johannes Straub, Peter Schiebener; Steam Tables in SI-Units Third, (1990), 26, Springer.

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13) 池上徹,柳下宏,北本大,根岸秀之;発酵エタノール 分離精製システム,(2001),特許第 4048279 号. 14) A. Matsushika, S. Watanabe, T. Kodaki, K. Makino and S.

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表 2  標準生成エンタルピー  ΔH f  at 25°C [kJ/mol]  状態  酸素  0  気体  二酸化炭素  -393.8  気体  水  -282.7  液体  二酸化窒素  33.9  気体  酸化カリウム  -363.2  固体  五酸化二リン  -1505.1  固体  酸化マグネシウム  -601.6  固体  二酸化硫黄  -297.1  気体  (4)比熱容量    比熱容量の測定結果を図 1 に示す.比熱容量の測定値か ら含水量分を差し引き,酵母の温度変化における比熱容量 の

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