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ICTに関する研究開発のこれまでとこれから
Research on ICT in the past and in the future
新森 昭宏
SHINMORI Akihiro1. はじめに
5. おわりに
2. ICTに関する研究開発のこれまで
特集2
インテックグループにおける研究開発
概要
インテックシステム研究所(略称:ISI)は、2008年4月から新社名・新体制のもとでスタートした。ISIの前身は、
1989年にインテックの研究子会社として設立された「インテック・システム研究所」(略称:ISL )である。ISLは、
2000年に「インテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフォマティクス」
(略称:W&G)に社名変更した。ISL時代は、パソ
コンLANとインターネットが普及する時代背景の中で、主に通信に関係したサービス開発や商品開発に注力してきた。
W&G時代は、ブロードバンドが普及する時代背景の中で、テレフォニーやセキュリティに特化した商品開発や社外
との連携活動に注力してきた。
新生ISIでは、ICT研究部にソフトウエア工学・ウェブマイニング・画像システム・ネットワークプラットフォーム・社
会システムの5つの研究グループを設置し、それぞれの技術を融合(fusion)させながら研究開発を行う。研究開発
テーマは、
「実用化までの時間」と「現在の事業にとっての距離」の2軸を用いたポートフォリオ管理を行って、設定・
管理する。
特
集
2
特
集
2
インテックシステム研究所(略称:ISI)は、情報通信分野 およびバイオインフォマティクスの研究開発を行う会社として、 2008年4月から新社名・新体制のもとでスタートした。部門 としては、ICT研究部とバイオ事業部から構成される(図1)。 言うまでもなく、ICTとは、Information & Communica-tion Technologyの略であり、情報通信技術を意味する。 ISI の前身は、1989年にインテック100%出資の研究子会社 として設立された「インテック・システム研究所」(略称: ISL)である。ISLは、2000年に当時インテックの一部門であっ たゲノム・インフォマティクス・センターを統合し、社名を 「インテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフォマティクス」 (略称:W&G)に変更した上で、東証マザーズ上場企業となっ た。W&Gは2006年に上場廃止し、2008年4月に現在の社名 と体制となった。 本稿では、ISL、W&G、ISI への変遷を通して、ICTに関す る研究開発の歩みを振り返り、新生 ISI における ICT研究開発 の今後の方向性について述べる。 SHINMORI Akihiro新森 昭宏
● 株式会社インテックシステム研究所 ICT研究部長 ● 博士(工学)。技術士(情報工学部門) ● 情報処理学会、言語処理学会、人工知能学会、ソフトウエア 技術者協会、日本知財学会、ACM各会員 ICTに関する研究開発のこれまでを振り返り、新生 ISI にお ける ICT研究開発の今後の方向性について述べた。新生 ISI で は、ICTに基づくイノベーションを起こし、事業に貢献するこ とを目標として努力していきたい。 参考文献[1] 鈴木富男:インテック40年の技術散歩, INTEC Technical Journal, 40周年記念創刊号, (2003)
[2] 鈴木良之:コンピュータ・ユーティリティ社会実現への挑戦, INTEC Technical Journal, 40周年記念第2号, (2003) [3] 総務省編:平成20年度版 情報通信白書, p.84, (2008)
3. 新生 ISI での研究開発体制
新生 ISI の組織図を図1に示す。図1に示されているように、 ICT研究部には現在、ソフトウエア工学・ネットワークプラッ トフォーム・ウェブマイニング・画像システム・社会システム の5つの研究グループを設置している。各研究グループは他の 研究グループやバイオ事業部と連携しながら、成果の融合 (Fusion)を行うことを目指している(図2)。以下では各 研究グループの研究開発内容について説明する。 ソフトウエア工学研究グループは、SOA(サービス指向アー キテクチャ)、システム最適化、分散型ソフトウエア開発、高 信頼性ソフトウエア開発等に関する手法と自動化ツールに関す る研究開発を進める。ソフトウエア工学の最新の研究成果や理 論を踏まえるとともに、お客様の要求やソフトウエア開発現場 の課題を踏まえた実践的な成果を目指す。 ウェブマイニング研究グループは、利用者の意図を考慮した 情報検索技術とコンテンツ解析技術を主な要素技術として、従 来の検索システムでは発見できない情報を探索する技術の研究 開発を進める。具体的には、マーケティング活動支援のための ブログ解析システム、蓄積情報の関連付けシステムの実用化に 取り組む。 画像システム研究グループは、画像からの物体抽出、情報 抽出技術の応用、画像合成処理、色情報を用いた画像処理、ネッ トワーク経由での画像処理、遠隔地の機器制御に関する研究 開発を進める。 ネットワークプラットフォーム研究グループは、ネットワー ク経路制御、ハイビジョン映像配信、IPv6に関する技術蓄積 を基に、次世代ネットワークの基本要素となる IPv6マルチプ レフィックス、高品質画像配信プラットフォーム、仮想化技 術に関する研究開発を進める。 社会システム研究室は、新時代における生活、経済、産業 等の姿を捉えて、新たに生まれる多様な価値観とそれらを実 現するあるべき社会システムを探求する。ICTに関する先端の 研究開発成果を組み合わせて、新時代において社会が求める 情報通信システムの実現を目指す。 なお、本号の特集論文では、ソフトウエア工学・ウェブマ イニング・画像システム・ネットワークプラットフォームの それぞれに関係した技術論文を掲載している。 インテックや ISL/W&G/ISI がこれまで社外向けに発行して き た 広 報 資 料 ・ プ レ ス リ リ ー ス ・ 技 術 論 文 誌 等 か ら 、 ISL/W&G/ISI での研究開発に関連したトピックを抽出したも のを表1に示す。 表1から、ISL時代は、パソコンLANとインターネットが普 及する時代背景の中で、主に通信に関係したサービス開発や商 品開発に注力してきた歴史を読み取ることができる。W&G時 代は、ブロードバンドが普及する時代背景の中で、テレフォニー やセキュリティに特化した商品開発や社外との連携活動に注力 してきた歴史が見える。また、表1には記載していないが、 W&G時代には省庁等の公募研究の採択を受けた研究開発も数 多く実施してきた。なお、ISL時代とW&G時代の歴史につい ては、文献[1]と文献[2]にも一部記述されている。 図1 新生 ISIの組織図4. ICTに関する研究開発の今後の方向性と
テーマのポートフォリオ管理
4.1 ICTに関する研究開発の今後の方向性
ITまたは ICTが「コモディティ化」(標準製品化)したと言 われるようになって久しい。確かに、オフィスの机や家庭に インターネット接続されたパソコンが設置され、だれもが容 易にOAソフトを使ったり、各種のインターネットサービスを 利用したりすることができるようになった。また、高度化し た情報システムが社会のあちこちで利用されるようになって いる。 しかし、医療・環境・農業など、ICTの利活用が遅れている と思われる分野は多い。また、行政や教育においても ICTの利 活用は不十分である。整備はされたがとても使いにくい電子 申請システムや、eラーニングは取り入れられているが履修登 録はいまだに紙ベースである教育機関が、そのことを端的に 示している。ブロードバンドが普及し、携帯電話のサービス も高度化しているネットワークの世界においても、信頼性・ コスト・サービスの広がりなどの面での課題は山積みである。 一方、情報化投資額の約46%を占めるまで重要度の増したソ フトウエア[3]については、生産性と信頼性の向上が永遠の課 題となっている。 こうした状況を踏まえて、今後の研究開発の方向性としては 以下の3つが考えられる。 ձICT利活用の拡大 ղネットワーク経由でサービスを提供するためのプラットフォーム ճソフトウエア開発の生産性向上と信頼性向上 ࠉձに対する取り組みとして、画像システム研究グループでは 「遠隔病理診断支援(テレパソロジー)システム」を突破口とし て遠隔医療についての検討を進めている。また、環境分野への 取り組みとして、「アスベスト自動計測システム」の開発にも 取り組んでいる。ウェブマイニング研究グループでは、情報は 膨大にあるがその利活用が不十分なウェブ上の各種データを対 象とした分析システムの研究開発を進めている。また、知財分 野への取り組みとして、特許データを解析・分析するシステム についても取り組んでいる。 ղに関しては、前述の通り、ネットワークプラットフォーム 研究グループが取り組んでいるほか、ソフトウエア工学研究グ ループがSOA(サービス指向アーキテクチャ)に関する研究開 発に取り組んでいる。 ճに関しては、従来からソフトウエア生産技術の課題に取り 組んできたインテック技術本部との調整を行いながら、研究所 としての立場で今後本格的に取り組む予定である。4.2 テーマのポートフォリオ管理
研究開発テーマは、会社の置かれている状況、技術の成熟度、 研究所の技術蓄積(研究員の強み)などを総合的に考慮して設 定する必要がある。限られた資源を有効に活用するためにはテー マの「選択と集中」が必要である。その一方、成功確率や将来 性を考えた場合にはある程度のばらつきも必要となる。これら を考慮し、新生 ISI における研究開発テーマは、図3に示すよ うなポートフォリオで設定・管理する。 図3は、縦軸に「実用化までの時間」の遠さと近さを表し、 横軸に「現在の事業にとっての距離」の近さと遠さを表してい る。左上から右下にかけての楕円が、想定される研究テーマが プロットされる領域であり、左上から順に「領域 a 」、「領域 b 」、 「領域c」に分割する。「領域a」は、実用化までの時間が遠く、 かつ現在の事業にとって遠いものであるため、研究所が主管と なって実施することになる。一方、「領域 c」は、実用化まで の時間が近く、かつ現在の事業にとって近いものであるため、 事業部門が主管となって実施することになる。「領域 a」で開始 したテーマが、研究開発の成果によって技術の実用化度が高 まり、事業部門との連携活動や各種のマーケティング活動に よって、「現在の事業にとっての距離」が近くなっていくこ とが望ましい方向性である。図3をより具体的にイメージ化 するために、例としていくつかの技術項目をプロットしたもの を図4に示す。 図3 研究開発テーマのポートフォリオ(枠組み) 図4 研究開発テーマのポートフォリオ(具体的な技術項目をプロットした例) 株主総会 取締役会 監査役 社 長 ICT研究部 バイオ事業部 総 務 部 (東京) (富山研究所) (東京) ソ フ ト ウ エ ア 工 学 研 究 グ ル ー プ ネ ッ ト ワ ー ク プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 研 究 グ ル ー プ ウ ェ ブ マ イ ニ ン グ 研 究 グ ル ー プ 画 像 シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 社 会 シ ス テ ム 研 究 室 富 山 バ イ オ グ ル ー プ バ イ オ 技 術 グ ル ー プ 年 区分 研究開発に関連したトピック 業界の動き 1989年 (平成元年) 1990年 (平成2年) 1991年 (平成3年) 1992年 (平成4年) ISL 時代 ・ インテック・システム研究所(ISL)設立 ・ 加・ノーザンテレコム社と代理店契約締結 ・ ファクシミリ蓄積交換サービス「Ace FAX」開始 ・ 米・スプリントインターナショナル社とFHS(ファク シミリ蓄積交換サービス)の販売代理店契約締結 (技術供与) ・ ISDNサービス開始、企業内広域電話サービス「Ace Aitel」開始 ・ AI金利予測システムを発売 ・ 「FHS」が、通商産業省(現、経済産業省)等によ る情報化月間の優秀情報処理システム賞受賞 ・ 通信カラオケ「JOYSOUND」ブラザー工業と共 同で発売 ・ 「射出成形スケジューリングシステム」が「とやま テクノ大賞」を受賞 (パソコンLANが普及) (ダウンサイジングが進 行) 米国「情報スーパー ハイウェイ構想」発表 Windows3.1日本語 版発売 1994年 (平成6年) 1995年 (平成7年) 1996年 (平成8年) ・ 電子メールソフト「ダビンチ・イーメール」発売 (Windows版、Mac版、PC98版) ・ 景観シミュレーションシステムを発売 Yahoo!設立 Windows95日本語版 発売 (インターネットが広く 知られるようになる) ・ 情報化月間で「AceMessenger400」が優秀情報 処理システム賞受賞 PHSサービス開始Java言語公開 1997年 (平成9年) 1998年 (平成10年) 1999年 (平成11年) ・ デジタルコンテンツ販売会社(株)メタマート設立 ・ 通産省電子商取引実証実験プロジェクト「ジャパ ンネット」に参加 ・ EDI統合パッケージ「EDIServ」発売 ・ WWWサーバ検索システムW3RSを無償公開 ・ 富山地域IX研究会設立 ・ ゲノム・インフォマティクス・センター設立 霞ヶ関 W A Nの運用 開始 楽天設立 Google設立 iモードサービス開始 2000年 (平成12年) 2001年 (平成13年) 2002年 (平成14年) ・ インテック・システム研究所(ISL)を、インテック・ ウェブ・アンド・ゲノム・インフォマティクス(W&G) に社名変更し、ゲノム・インフォマティクス・センター を統合。 ・ W&Gが東京証券取引所マザーズへ株式上場 NTT東西地域会社 がADSLの本サービ スを開始 W&G 時代 ・ W&GがVoIPのProxy サーバソフト 「H323ProxyServer」発売 ・ 富山地域IX研究会が総務省北陸総合通信局長 賞を受賞 ・ F3 for ASA(エージェント版セグメントアナライザ) 発売。→ 同システムに関する論文がIBM協業 SE論文最優秀賞受賞 e-Japan戦略 Yahoo BBサービス開始 Bフレッツサービス開始 ・ 富山インターネット市民塾が「内閣総理大臣賞」 を受賞 ・ インテック・ネットコア設立 ・ インテック、W&G、RSAセキュリティ社の3社が業 務提携 HPとCompaqが合併 (ブロードバンドが普及) 2003年 (平成15年) ・ W&GがNECインフロンティア社と中小規模コー ルセンタープラットフォームの販売で協業 ・ W&Gが無線LAN認証システム「WG-AegisWind」 を共同開発・発売 ・ 凸版印刷、RSAセキュリティ社、W&Gが認証局 (プライベートCA)のアウトソーシング・サービス で業務提携 e-Japan戦略II 2004年 (平成16年) u-Japan政策 2005年 (平成17年) ・ W&Gが総務省「IPv6 移行実証実験」に参加 2006年 (平成18年) 2007年 (平成19年) 2008年 (平成20年) ・ W&Gが東京証券取引所マザーズへの上場廃止、 株式会社インテックホールディングスの完全子会 社となる ・ W&Gが遠隔病理診断支援(テレパソロジー)シス テムを初納入 ・ W&Gの先端IT事業とEXpath事業をインテックに 移管し、社名を「インテックシステム研究所」(ISI) に変更 総務省と厚生労働省 が遠隔医療推進懇談 会開始 NGN商用サービス開始 ISIへ 図2 ICT研究部の研究グループ 表1 ICTに関する研究開発に関連したトピックス(1989年以降) ソフトウエア 工学 画像 システム マイニングウェブ ネットワーク プラットフォーム バイオ 事業部 社会 システム 連携 (Interlink) 融合 (Fusion)融合 (Fusion) (Interlink)連携 実 用 化 ま で の 時 間 遠 い ↑ ↓ 近 い 現在の事業にとっての距離 遠い ← 研究所主管 望ましい方向性 領域 a 領域 b 領域 c 事業部門主管 Autonomic Computing 次世代モバイル 端末 遠隔医療システム ウェブマイニング グリーンIT ソフトウエア プロダクトライン IPv6対応 サービス Grid SOA 特定業種向け SaaS 次世代検索 エンジン NGN対応 サービス 仮想化技術(応用) 仮想化技術 (サーバ統合) Ajax 動画DRM → 近い 実 用 化 ま で の 時 間 遠 い ↑ ↓ 近 い 現在の事業にとっての距離 遠い ← → 近い36 37
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ICTに関する研究開発のこれまでとこれから
Research on ICT in the past and in the future
新森 昭宏
SHINMORI Akihiro1. はじめに
5. おわりに
2. ICTに関する研究開発のこれまで
特集2
インテックグループにおける研究開発
概要
インテックシステム研究所(略称:ISI)は、2008年4月から新社名・新体制のもとでスタートした。ISIの前身は、
1989年にインテックの研究子会社として設立された「インテック・システム研究所」(略称:ISL )である。ISLは、
2000年に「インテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフォマティクス」
(略称:W&G)に社名変更した。ISL時代は、パソ
コンLANとインターネットが普及する時代背景の中で、主に通信に関係したサービス開発や商品開発に注力してきた。
W&G時代は、ブロードバンドが普及する時代背景の中で、テレフォニーやセキュリティに特化した商品開発や社外
との連携活動に注力してきた。
新生ISIでは、ICT研究部にソフトウエア工学・ウェブマイニング・画像システム・ネットワークプラットフォーム・社
会システムの5つの研究グループを設置し、それぞれの技術を融合(fusion)させながら研究開発を行う。研究開発
テーマは、
「実用化までの時間」と「現在の事業にとっての距離」の2軸を用いたポートフォリオ管理を行って、設定・
管理する。
特
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インテックシステム研究所(略称:ISI)は、情報通信分野 およびバイオインフォマティクスの研究開発を行う会社として、 2008年4月から新社名・新体制のもとでスタートした。部門 としては、ICT研究部とバイオ事業部から構成される(図1)。 言うまでもなく、ICTとは、Information & Communica-tion Technologyの略であり、情報通信技術を意味する。 ISI の前身は、1989年にインテック100%出資の研究子会社 として設立された「インテック・システム研究所」(略称: ISL)である。ISLは、2000年に当時インテックの一部門であっ たゲノム・インフォマティクス・センターを統合し、社名を 「インテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフォマティクス」 (略称:W&G)に変更した上で、東証マザーズ上場企業となっ た。W&Gは2006年に上場廃止し、2008年4月に現在の社名 と体制となった。 本稿では、ISL、W&G、ISI への変遷を通して、ICTに関す る研究開発の歩みを振り返り、新生 ISI における ICT研究開発 の今後の方向性について述べる。 SHINMORI Akihiro新森 昭宏
● 株式会社インテックシステム研究所 ICT研究部長 ● 博士(工学)。技術士(情報工学部門) ● 情報処理学会、言語処理学会、人工知能学会、ソフトウエア 技術者協会、日本知財学会、ACM各会員 ICTに関する研究開発のこれまでを振り返り、新生 ISI にお ける ICT研究開発の今後の方向性について述べた。新生 ISI で は、ICTに基づくイノベーションを起こし、事業に貢献するこ とを目標として努力していきたい。 参考文献[1] 鈴木富男:インテック40年の技術散歩, INTEC Technical Journal, 40周年記念創刊号, (2003)
[2] 鈴木良之:コンピュータ・ユーティリティ社会実現への挑戦, INTEC Technical Journal, 40周年記念第2号, (2003) [3] 総務省編:平成20年度版 情報通信白書, p.84, (2008)
3. 新生 ISI での研究開発体制
新生 ISI の組織図を図1に示す。図1に示されているように、 ICT研究部には現在、ソフトウエア工学・ネットワークプラッ トフォーム・ウェブマイニング・画像システム・社会システム の5つの研究グループを設置している。各研究グループは他の 研究グループやバイオ事業部と連携しながら、成果の融合 (Fusion)を行うことを目指している(図2)。以下では各 研究グループの研究開発内容について説明する。 ソフトウエア工学研究グループは、SOA(サービス指向アー キテクチャ)、システム最適化、分散型ソフトウエア開発、高 信頼性ソフトウエア開発等に関する手法と自動化ツールに関す る研究開発を進める。ソフトウエア工学の最新の研究成果や理 論を踏まえるとともに、お客様の要求やソフトウエア開発現場 の課題を踏まえた実践的な成果を目指す。 ウェブマイニング研究グループは、利用者の意図を考慮した 情報検索技術とコンテンツ解析技術を主な要素技術として、従 来の検索システムでは発見できない情報を探索する技術の研究 開発を進める。具体的には、マーケティング活動支援のための ブログ解析システム、蓄積情報の関連付けシステムの実用化に 取り組む。 画像システム研究グループは、画像からの物体抽出、情報 抽出技術の応用、画像合成処理、色情報を用いた画像処理、ネッ トワーク経由での画像処理、遠隔地の機器制御に関する研究 開発を進める。 ネットワークプラットフォーム研究グループは、ネットワー ク経路制御、ハイビジョン映像配信、IPv6に関する技術蓄積 を基に、次世代ネットワークの基本要素となる IPv6マルチプ レフィックス、高品質画像配信プラットフォーム、仮想化技 術に関する研究開発を進める。 社会システム研究室は、新時代における生活、経済、産業 等の姿を捉えて、新たに生まれる多様な価値観とそれらを実 現するあるべき社会システムを探求する。ICTに関する先端の 研究開発成果を組み合わせて、新時代において社会が求める 情報通信システムの実現を目指す。 なお、本号の特集論文では、ソフトウエア工学・ウェブマ イニング・画像システム・ネットワークプラットフォームの それぞれに関係した技術論文を掲載している。 インテックや ISL/W&G/ISI がこれまで社外向けに発行して き た 広 報 資 料 ・ プ レ ス リ リ ー ス ・ 技 術 論 文 誌 等 か ら 、 ISL/W&G/ISI での研究開発に関連したトピックを抽出したも のを表1に示す。 表1から、ISL時代は、パソコンLANとインターネットが普 及する時代背景の中で、主に通信に関係したサービス開発や商 品開発に注力してきた歴史を読み取ることができる。W&G時 代は、ブロードバンドが普及する時代背景の中で、テレフォニー やセキュリティに特化した商品開発や社外との連携活動に注力 してきた歴史が見える。また、表1には記載していないが、 W&G時代には省庁等の公募研究の採択を受けた研究開発も数 多く実施してきた。なお、ISL時代とW&G時代の歴史につい ては、文献[1]と文献[2]にも一部記述されている。 図1 新生 ISIの組織図4. ICTに関する研究開発の今後の方向性と
テーマのポートフォリオ管理
4.1 ICTに関する研究開発の今後の方向性
ITまたは ICTが「コモディティ化」(標準製品化)したと言 われるようになって久しい。確かに、オフィスの机や家庭に インターネット接続されたパソコンが設置され、だれもが容 易にOAソフトを使ったり、各種のインターネットサービスを 利用したりすることができるようになった。また、高度化し た情報システムが社会のあちこちで利用されるようになって いる。 しかし、医療・環境・農業など、ICTの利活用が遅れている と思われる分野は多い。また、行政や教育においても ICTの利 活用は不十分である。整備はされたがとても使いにくい電子 申請システムや、eラーニングは取り入れられているが履修登 録はいまだに紙ベースである教育機関が、そのことを端的に 示している。ブロードバンドが普及し、携帯電話のサービス も高度化しているネットワークの世界においても、信頼性・ コスト・サービスの広がりなどの面での課題は山積みである。 一方、情報化投資額の約46%を占めるまで重要度の増したソ フトウエア[3]については、生産性と信頼性の向上が永遠の課 題となっている。 こうした状況を踏まえて、今後の研究開発の方向性としては 以下の3つが考えられる。 ձICT利活用の拡大 ղネットワーク経由でサービスを提供するためのプラットフォーム ճソフトウエア開発の生産性向上と信頼性向上 ࠉձに対する取り組みとして、画像システム研究グループでは 「遠隔病理診断支援(テレパソロジー)システム」を突破口とし て遠隔医療についての検討を進めている。また、環境分野への 取り組みとして、「アスベスト自動計測システム」の開発にも 取り組んでいる。ウェブマイニング研究グループでは、情報は 膨大にあるがその利活用が不十分なウェブ上の各種データを対 象とした分析システムの研究開発を進めている。また、知財分 野への取り組みとして、特許データを解析・分析するシステム についても取り組んでいる。 ղに関しては、前述の通り、ネットワークプラットフォーム 研究グループが取り組んでいるほか、ソフトウエア工学研究グ ループがSOA(サービス指向アーキテクチャ)に関する研究開 発に取り組んでいる。 ճに関しては、従来からソフトウエア生産技術の課題に取り 組んできたインテック技術本部との調整を行いながら、研究所 としての立場で今後本格的に取り組む予定である。4.2 テーマのポートフォリオ管理
研究開発テーマは、会社の置かれている状況、技術の成熟度、 研究所の技術蓄積(研究員の強み)などを総合的に考慮して設 定する必要がある。限られた資源を有効に活用するためにはテー マの「選択と集中」が必要である。その一方、成功確率や将来 性を考えた場合にはある程度のばらつきも必要となる。これら を考慮し、新生 ISI における研究開発テーマは、図3に示すよ うなポートフォリオで設定・管理する。 図3は、縦軸に「実用化までの時間」の遠さと近さを表し、 横軸に「現在の事業にとっての距離」の近さと遠さを表してい る。左上から右下にかけての楕円が、想定される研究テーマが プロットされる領域であり、左上から順に「領域 a 」、「領域 b 」、 「領域c」に分割する。「領域a」は、実用化までの時間が遠く、 かつ現在の事業にとって遠いものであるため、研究所が主管と なって実施することになる。一方、「領域 c」は、実用化まで の時間が近く、かつ現在の事業にとって近いものであるため、 事業部門が主管となって実施することになる。「領域 a」で開始 したテーマが、研究開発の成果によって技術の実用化度が高 まり、事業部門との連携活動や各種のマーケティング活動に よって、「現在の事業にとっての距離」が近くなっていくこ とが望ましい方向性である。図3をより具体的にイメージ化 するために、例としていくつかの技術項目をプロットしたもの を図4に示す。 図3 研究開発テーマのポートフォリオ(枠組み) 図4 研究開発テーマのポートフォリオ(具体的な技術項目をプロットした例) 株主総会 取締役会 監査役 社 長 ICT研究部 バイオ事業部 総 務 部 (東京) (富山研究所) (東京) ソ フ ト ウ エ ア 工 学 研 究 グ ル ー プ ネ ッ ト ワ ー ク プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 研 究 グ ル ー プ ウ ェ ブ マ イ ニ ン グ 研 究 グ ル ー プ 画 像 シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 社 会 シ ス テ ム 研 究 室 富 山 バ イ オ グ ル ー プ バ イ オ 技 術 グ ル ー プ 年 区分 研究開発に関連したトピック 業界の動き 1989年 (平成元年) 1990年 (平成2年) 1991年 (平成3年) 1992年 (平成4年) ISL 時代 ・ インテック・システム研究所(ISL)設立 ・ 加・ノーザンテレコム社と代理店契約締結 ・ ファクシミリ蓄積交換サービス「Ace FAX」開始 ・ 米・スプリントインターナショナル社とFHS(ファク シミリ蓄積交換サービス)の販売代理店契約締結 (技術供与) ・ ISDNサービス開始、企業内広域電話サービス「Ace Aitel」開始 ・ AI金利予測システムを発売 ・ 「FHS」が、通商産業省(現、経済産業省)等によ る情報化月間の優秀情報処理システム賞受賞 ・ 通信カラオケ「JOYSOUND」ブラザー工業と共 同で発売 ・ 「射出成形スケジューリングシステム」が「とやま テクノ大賞」を受賞 (パソコンLANが普及) (ダウンサイジングが進 行) 米国「情報スーパー ハイウェイ構想」発表 Windows3.1日本語 版発売 1994年 (平成6年) 1995年 (平成7年) 1996年 (平成8年) ・ 電子メールソフト「ダビンチ・イーメール」発売 (Windows版、Mac版、PC98版) ・ 景観シミュレーションシステムを発売 Yahoo!設立 Windows95日本語版 発売 (インターネットが広く 知られるようになる) ・ 情報化月間で「AceMessenger400」が優秀情報 処理システム賞受賞 PHSサービス開始Java言語公開 1997年 (平成9年) 1998年 (平成10年) 1999年 (平成11年) ・ デジタルコンテンツ販売会社(株)メタマート設立 ・ 通産省電子商取引実証実験プロジェクト「ジャパ ンネット」に参加 ・ EDI統合パッケージ「EDIServ」発売 ・ WWWサーバ検索システムW3RSを無償公開 ・ 富山地域IX研究会設立 ・ ゲノム・インフォマティクス・センター設立 霞ヶ関 W A Nの運用 開始 楽天設立 Google設立 iモードサービス開始 2000年 (平成12年) 2001年 (平成13年) 2002年 (平成14年) ・ インテック・システム研究所(ISL)を、インテック・ ウェブ・アンド・ゲノム・インフォマティクス(W&G) に社名変更し、ゲノム・インフォマティクス・センター を統合。 ・ W&Gが東京証券取引所マザーズへ株式上場 NTT東西地域会社 がADSLの本サービ スを開始 W&G 時代 ・ W&GがVoIPのProxy サーバソフト 「H323ProxyServer」発売 ・ 富山地域IX研究会が総務省北陸総合通信局長 賞を受賞 ・ F3 for ASA(エージェント版セグメントアナライザ) 発売。→ 同システムに関する論文がIBM協業 SE論文最優秀賞受賞 e-Japan戦略 Yahoo BBサービス開始 Bフレッツサービス開始 ・ 富山インターネット市民塾が「内閣総理大臣賞」 を受賞 ・ インテック・ネットコア設立 ・ インテック、W&G、RSAセキュリティ社の3社が業 務提携 HPとCompaqが合併 (ブロードバンドが普及) 2003年 (平成15年) ・ W&GがNECインフロンティア社と中小規模コー ルセンタープラットフォームの販売で協業 ・ W&Gが無線LAN認証システム「WG-AegisWind」 を共同開発・発売 ・ 凸版印刷、RSAセキュリティ社、W&Gが認証局 (プライベートCA)のアウトソーシング・サービス で業務提携 e-Japan戦略II 2004年 (平成16年) u-Japan政策 2005年 (平成17年) ・ W&Gが総務省「IPv6 移行実証実験」に参加 2006年 (平成18年) 2007年 (平成19年) 2008年 (平成20年) ・ W&Gが東京証券取引所マザーズへの上場廃止、 株式会社インテックホールディングスの完全子会 社となる ・ W&Gが遠隔病理診断支援(テレパソロジー)シス テムを初納入 ・ W&Gの先端IT事業とEXpath事業をインテックに 移管し、社名を「インテックシステム研究所」(ISI) に変更 総務省と厚生労働省 が遠隔医療推進懇談 会開始 NGN商用サービス開始 ISIへ 図2 ICT研究部の研究グループ 表1 ICTに関する研究開発に関連したトピックス(1989年以降) ソフトウエア 工学 画像 システム マイニングウェブ ネットワーク プラットフォーム バイオ 事業部 社会 システム 連携 (Interlink) 融合 (Fusion)融合 (Fusion) (Interlink)連携 実 用 化 ま で の 時 間 遠 い ↑ ↓ 近 い 現在の事業にとっての距離 遠い ← 研究所主管 望ましい方向性 領域 a 領域 b 領域 c 事業部門主管 Autonomic Computing 次世代モバイル 端末 遠隔医療システム ウェブマイニング グリーンIT ソフトウエア プロダクトライン IPv6対応 サービス Grid SOA 特定業種向け SaaS 次世代検索 エンジン NGN対応 サービス 仮想化技術(応用) 仮想化技術 (サーバ統合) Ajax 動画DRM → 近い 実 用 化 ま で の 時 間 遠 い ↑ ↓ 近 い 現在の事業にとっての距離 遠い ← → 近い36 37
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ICTに関する研究開発のこれまでとこれから
Research on ICT in the past and in the future
新森 昭宏
SHINMORI Akihiro1. はじめに
5. おわりに
2. ICTに関する研究開発のこれまで
特集2
インテックグループにおける研究開発
概要
インテックシステム研究所(略称:ISI)は、2008年4月から新社名・新体制のもとでスタートした。ISIの前身は、
1989年にインテックの研究子会社として設立された「インテック・システム研究所」(略称:ISL )である。ISLは、
2000年に「インテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフォマティクス」
(略称:W&G)に社名変更した。ISL時代は、パソ
コンLANとインターネットが普及する時代背景の中で、主に通信に関係したサービス開発や商品開発に注力してきた。
W&G時代は、ブロードバンドが普及する時代背景の中で、テレフォニーやセキュリティに特化した商品開発や社外
との連携活動に注力してきた。
新生ISIでは、ICT研究部にソフトウエア工学・ウェブマイニング・画像システム・ネットワークプラットフォーム・社
会システムの5つの研究グループを設置し、それぞれの技術を融合(fusion)させながら研究開発を行う。研究開発
テーマは、
「実用化までの時間」と「現在の事業にとっての距離」の2軸を用いたポートフォリオ管理を行って、設定・
管理する。
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インテックシステム研究所(略称:ISI)は、情報通信分野 およびバイオインフォマティクスの研究開発を行う会社として、 2008年4月から新社名・新体制のもとでスタートした。部門 としては、ICT研究部とバイオ事業部から構成される(図1)。 言うまでもなく、ICTとは、Information & Communica-tion Technologyの略であり、情報通信技術を意味する。 ISI の前身は、1989年にインテック100%出資の研究子会社 として設立された「インテック・システム研究所」(略称: ISL)である。ISLは、2000年に当時インテックの一部門であっ たゲノム・インフォマティクス・センターを統合し、社名を 「インテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフォマティクス」 (略称:W&G)に変更した上で、東証マザーズ上場企業となっ た。W&Gは2006年に上場廃止し、2008年4月に現在の社名 と体制となった。 本稿では、ISL、W&G、ISI への変遷を通して、ICTに関す る研究開発の歩みを振り返り、新生 ISI における ICT研究開発 の今後の方向性について述べる。 SHINMORI Akihiro新森 昭宏
● 株式会社インテックシステム研究所 ICT研究部長 ● 博士(工学)。技術士(情報工学部門) ● 情報処理学会、言語処理学会、人工知能学会、ソフトウエア 技術者協会、日本知財学会、ACM各会員 ICTに関する研究開発のこれまでを振り返り、新生 ISI にお ける ICT研究開発の今後の方向性について述べた。新生 ISI で は、ICTに基づくイノベーションを起こし、事業に貢献するこ とを目標として努力していきたい。 参考文献[1] 鈴木富男:インテック40年の技術散歩, INTEC Technical Journal, 40周年記念創刊号, (2003)
[2] 鈴木良之:コンピュータ・ユーティリティ社会実現への挑戦, INTEC Technical Journal, 40周年記念第2号, (2003) [3] 総務省編:平成20年度版 情報通信白書, p.84, (2008)
3. 新生 ISI での研究開発体制
新生 ISI の組織図を図1に示す。図1に示されているように、 ICT研究部には現在、ソフトウエア工学・ネットワークプラッ トフォーム・ウェブマイニング・画像システム・社会システム の5つの研究グループを設置している。各研究グループは他の 研究グループやバイオ事業部と連携しながら、成果の融合 (Fusion)を行うことを目指している(図2)。以下では各 研究グループの研究開発内容について説明する。 ソフトウエア工学研究グループは、SOA(サービス指向アー キテクチャ)、システム最適化、分散型ソフトウエア開発、高 信頼性ソフトウエア開発等に関する手法と自動化ツールに関す る研究開発を進める。ソフトウエア工学の最新の研究成果や理 論を踏まえるとともに、お客様の要求やソフトウエア開発現場 の課題を踏まえた実践的な成果を目指す。 ウェブマイニング研究グループは、利用者の意図を考慮した 情報検索技術とコンテンツ解析技術を主な要素技術として、従 来の検索システムでは発見できない情報を探索する技術の研究 開発を進める。具体的には、マーケティング活動支援のための ブログ解析システム、蓄積情報の関連付けシステムの実用化に 取り組む。 画像システム研究グループは、画像からの物体抽出、情報 抽出技術の応用、画像合成処理、色情報を用いた画像処理、ネッ トワーク経由での画像処理、遠隔地の機器制御に関する研究 開発を進める。 ネットワークプラットフォーム研究グループは、ネットワー ク経路制御、ハイビジョン映像配信、IPv6に関する技術蓄積 を基に、次世代ネットワークの基本要素となる IPv6マルチプ レフィックス、高品質画像配信プラットフォーム、仮想化技 術に関する研究開発を進める。 社会システム研究室は、新時代における生活、経済、産業 等の姿を捉えて、新たに生まれる多様な価値観とそれらを実 現するあるべき社会システムを探求する。ICTに関する先端の 研究開発成果を組み合わせて、新時代において社会が求める 情報通信システムの実現を目指す。 なお、本号の特集論文では、ソフトウエア工学・ウェブマ イニング・画像システム・ネットワークプラットフォームの それぞれに関係した技術論文を掲載している。 インテックや ISL/W&G/ISI がこれまで社外向けに発行して き た 広 報 資 料 ・ プ レ ス リ リ ー ス ・ 技 術 論 文 誌 等 か ら 、 ISL/W&G/ISI での研究開発に関連したトピックを抽出したも のを表1に示す。 表1から、ISL時代は、パソコンLANとインターネットが普 及する時代背景の中で、主に通信に関係したサービス開発や商 品開発に注力してきた歴史を読み取ることができる。W&G時 代は、ブロードバンドが普及する時代背景の中で、テレフォニー やセキュリティに特化した商品開発や社外との連携活動に注力 してきた歴史が見える。また、表1には記載していないが、 W&G時代には省庁等の公募研究の採択を受けた研究開発も数 多く実施してきた。なお、ISL時代とW&G時代の歴史につい ては、文献[1]と文献[2]にも一部記述されている。 図1 新生 ISIの組織図4. ICTに関する研究開発の今後の方向性と
テーマのポートフォリオ管理
4.1 ICTに関する研究開発の今後の方向性
ITまたは ICTが「コモディティ化」(標準製品化)したと言 われるようになって久しい。確かに、オフィスの机や家庭に インターネット接続されたパソコンが設置され、だれもが容 易にOAソフトを使ったり、各種のインターネットサービスを 利用したりすることができるようになった。また、高度化し た情報システムが社会のあちこちで利用されるようになって いる。 しかし、医療・環境・農業など、ICTの利活用が遅れている と思われる分野は多い。また、行政や教育においても ICTの利 活用は不十分である。整備はされたがとても使いにくい電子 申請システムや、eラーニングは取り入れられているが履修登 録はいまだに紙ベースである教育機関が、そのことを端的に 示している。ブロードバンドが普及し、携帯電話のサービス も高度化しているネットワークの世界においても、信頼性・ コスト・サービスの広がりなどの面での課題は山積みである。 一方、情報化投資額の約46%を占めるまで重要度の増したソ フトウエア[3]については、生産性と信頼性の向上が永遠の課 題となっている。 こうした状況を踏まえて、今後の研究開発の方向性としては 以下の3つが考えられる。 ձICT利活用の拡大 ղネットワーク経由でサービスを提供するためのプラットフォーム ճソフトウエア開発の生産性向上と信頼性向上 ࠉձに対する取り組みとして、画像システム研究グループでは 「遠隔病理診断支援(テレパソロジー)システム」を突破口とし て遠隔医療についての検討を進めている。また、環境分野への 取り組みとして、「アスベスト自動計測システム」の開発にも 取り組んでいる。ウェブマイニング研究グループでは、情報は 膨大にあるがその利活用が不十分なウェブ上の各種データを対 象とした分析システムの研究開発を進めている。また、知財分 野への取り組みとして、特許データを解析・分析するシステム についても取り組んでいる。 ղに関しては、前述の通り、ネットワークプラットフォーム 研究グループが取り組んでいるほか、ソフトウエア工学研究グ ループがSOA(サービス指向アーキテクチャ)に関する研究開 発に取り組んでいる。 ճに関しては、従来からソフトウエア生産技術の課題に取り 組んできたインテック技術本部との調整を行いながら、研究所 としての立場で今後本格的に取り組む予定である。4.2 テーマのポートフォリオ管理
研究開発テーマは、会社の置かれている状況、技術の成熟度、 研究所の技術蓄積(研究員の強み)などを総合的に考慮して設 定する必要がある。限られた資源を有効に活用するためにはテー マの「選択と集中」が必要である。その一方、成功確率や将来 性を考えた場合にはある程度のばらつきも必要となる。これら を考慮し、新生 ISI における研究開発テーマは、図3に示すよ うなポートフォリオで設定・管理する。 図3は、縦軸に「実用化までの時間」の遠さと近さを表し、 横軸に「現在の事業にとっての距離」の近さと遠さを表してい る。左上から右下にかけての楕円が、想定される研究テーマが プロットされる領域であり、左上から順に「領域 a 」、「領域 b 」、 「領域c」に分割する。「領域a」は、実用化までの時間が遠く、 かつ現在の事業にとって遠いものであるため、研究所が主管と なって実施することになる。一方、「領域 c」は、実用化まで の時間が近く、かつ現在の事業にとって近いものであるため、 事業部門が主管となって実施することになる。「領域 a」で開始 したテーマが、研究開発の成果によって技術の実用化度が高 まり、事業部門との連携活動や各種のマーケティング活動に よって、「現在の事業にとっての距離」が近くなっていくこ とが望ましい方向性である。図3をより具体的にイメージ化 するために、例としていくつかの技術項目をプロットしたもの を図4に示す。 図3 研究開発テーマのポートフォリオ(枠組み) 図4 研究開発テーマのポートフォリオ(具体的な技術項目をプロットした例) 株主総会 取締役会 監査役 社 長 ICT研究部 バイオ事業部 総 務 部 (東京) (富山研究所) (東京) ソ フ ト ウ エ ア 工 学 研 究 グ ル ー プ ネ ッ ト ワ ー ク プ ラ ッ ト フ ォ ー ム 研 究 グ ル ー プ ウ ェ ブ マ イ ニ ン グ 研 究 グ ル ー プ 画 像 シ ス テ ム 研 究 グ ル ー プ 社 会 シ ス テ ム 研 究 室 富 山 バ イ オ グ ル ー プ バ イ オ 技 術 グ ル ー プ 年 区分 研究開発に関連したトピック 業界の動き 1989年 (平成元年) 1990年 (平成2年) 1991年 (平成3年) 1992年 (平成4年) ISL 時代 ・ インテック・システム研究所(ISL)設立 ・ 加・ノーザンテレコム社と代理店契約締結 ・ ファクシミリ蓄積交換サービス「Ace FAX」開始 ・ 米・スプリントインターナショナル社とFHS(ファク シミリ蓄積交換サービス)の販売代理店契約締結 (技術供与) ・ ISDNサービス開始、企業内広域電話サービス「Ace Aitel」開始 ・ AI金利予測システムを発売 ・ 「FHS」が、通商産業省(現、経済産業省)等によ る情報化月間の優秀情報処理システム賞受賞 ・ 通信カラオケ「JOYSOUND」ブラザー工業と共 同で発売 ・ 「射出成形スケジューリングシステム」が「とやま テクノ大賞」を受賞 (パソコンLANが普及) (ダウンサイジングが進 行) 米国「情報スーパー ハイウェイ構想」発表 Windows3.1日本語 版発売 1994年 (平成6年) 1995年 (平成7年) 1996年 (平成8年) ・ 電子メールソフト「ダビンチ・イーメール」発売 (Windows版、Mac版、PC98版) ・ 景観シミュレーションシステムを発売 Yahoo!設立 Windows95日本語版 発売 (インターネットが広く 知られるようになる) ・ 情報化月間で「AceMessenger400」が優秀情報 処理システム賞受賞 PHSサービス開始Java言語公開 1997年 (平成9年) 1998年 (平成10年) 1999年 (平成11年) ・ デジタルコンテンツ販売会社(株)メタマート設立 ・ 通産省電子商取引実証実験プロジェクト「ジャパ ンネット」に参加 ・ EDI統合パッケージ「EDIServ」発売 ・ WWWサーバ検索システムW3RSを無償公開 ・ 富山地域IX研究会設立 ・ ゲノム・インフォマティクス・センター設立 霞ヶ関 W A Nの運用 開始 楽天設立 Google設立 iモードサービス開始 2000年 (平成12年) 2001年 (平成13年) 2002年 (平成14年) ・ インテック・システム研究所(ISL)を、インテック・ ウェブ・アンド・ゲノム・インフォマティクス(W&G) に社名変更し、ゲノム・インフォマティクス・センター を統合。 ・ W&Gが東京証券取引所マザーズへ株式上場 NTT東西地域会社 がADSLの本サービ スを開始 W&G 時代 ・ W&GがVoIPのProxy サーバソフト 「H323ProxyServer」発売 ・ 富山地域IX研究会が総務省北陸総合通信局長 賞を受賞 ・ F3 for ASA(エージェント版セグメントアナライザ) 発売。→ 同システムに関する論文がIBM協業 SE論文最優秀賞受賞 e-Japan戦略 Yahoo BBサービス開始 Bフレッツサービス開始 ・ 富山インターネット市民塾が「内閣総理大臣賞」 を受賞 ・ インテック・ネットコア設立 ・ インテック、W&G、RSAセキュリティ社の3社が業 務提携 HPとCompaqが合併 (ブロードバンドが普及) 2003年 (平成15年) ・ W&GがNECインフロンティア社と中小規模コー ルセンタープラットフォームの販売で協業 ・ W&Gが無線LAN認証システム「WG-AegisWind」 を共同開発・発売 ・ 凸版印刷、RSAセキュリティ社、W&Gが認証局 (プライベートCA)のアウトソーシング・サービス で業務提携 e-Japan戦略II 2004年 (平成16年) u-Japan政策 2005年 (平成17年) ・ W&Gが総務省「IPv6 移行実証実験」に参加 2006年 (平成18年) 2007年 (平成19年) 2008年 (平成20年) ・ W&Gが東京証券取引所マザーズへの上場廃止、 株式会社インテックホールディングスの完全子会 社となる ・ W&Gが遠隔病理診断支援(テレパソロジー)シス テムを初納入 ・ W&Gの先端IT事業とEXpath事業をインテックに 移管し、社名を「インテックシステム研究所」(ISI) に変更 総務省と厚生労働省 が遠隔医療推進懇談 会開始 NGN商用サービス開始 ISIへ 図2 ICT研究部の研究グループ 表1 ICTに関する研究開発に関連したトピックス(1989年以降) ソフトウエア 工学 画像 システム マイニングウェブ ネットワーク プラットフォーム バイオ 事業部 システム社会 連携 (Interlink) 融合 (Fusion)融合 (Fusion) (Interlink)連携 実 用 化 ま で の 時 間 遠 い ↑ ↓ 近 い 現在の事業にとっての距離 遠い ← 研究所主管 望ましい方向性 領域 a 領域 b 領域 c 事業部門主管 Autonomic Computing 次世代モバイル 端末 遠隔医療システム ウェブマイニング グリーンIT ソフトウエア プロダクトライン IPv6対応 サービス Grid SOA 特定業種向け SaaS 次世代検索 エンジン NGN対応 サービス 仮想化技術(応用) 仮想化技術 (サーバ統合) Ajax 動画DRM → 近い 実 用 化 ま で の 時 間 遠 い ↑ ↓ 近 い 現在の事業にとっての距離 遠い ← → 近い36 37
38 39
ICTに関する研究開発のこれまでとこれから
Research on ICT in the past and in the future
新森 昭宏
SHINMORI Akihiro1. はじめに
5. おわりに
2. ICTに関する研究開発のこれまで
特集2
インテックグループにおける研究開発
概要
インテックシステム研究所(略称:ISI)は、2008年4月から新社名・新体制のもとでスタートした。ISIの前身は、
1989年にインテックの研究子会社として設立された「インテック・システム研究所」(略称:ISL )である。ISLは、
2000年に「インテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフォマティクス」
(略称:W&G)に社名変更した。ISL時代は、パソ
コンLANとインターネットが普及する時代背景の中で、主に通信に関係したサービス開発や商品開発に注力してきた。
W&G時代は、ブロードバンドが普及する時代背景の中で、テレフォニーやセキュリティに特化した商品開発や社外
との連携活動に注力してきた。
新生ISIでは、ICT研究部にソフトウエア工学・ウェブマイニング・画像システム・ネットワークプラットフォーム・社
会システムの5つの研究グループを設置し、それぞれの技術を融合(fusion)させながら研究開発を行う。研究開発
テーマは、
「実用化までの時間」と「現在の事業にとっての距離」の2軸を用いたポートフォリオ管理を行って、設定・
管理する。
特
集
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インテックシステム研究所(略称:ISI)は、情報通信分野 およびバイオインフォマティクスの研究開発を行う会社として、 2008年4月から新社名・新体制のもとでスタートした。部門 としては、ICT研究部とバイオ事業部から構成される(図1)。 言うまでもなく、ICTとは、Information & Communica-tion Technologyの略であり、情報通信技術を意味する。 ISI の前身は、1989年にインテック100%出資の研究子会社 として設立された「インテック・システム研究所」(略称: ISL)である。ISLは、2000年に当時インテックの一部門であっ たゲノム・インフォマティクス・センターを統合し、社名を 「インテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフォマティクス」 (略称:W&G)に変更した上で、東証マザーズ上場企業となっ た。W&Gは2006年に上場廃止し、2008年4月に現在の社名 と体制となった。 本稿では、ISL、W&G、ISI への変遷を通して、ICTに関す る研究開発の歩みを振り返り、新生 ISI における ICT研究開発 の今後の方向性について述べる。 SHINMORI Akihiro新森 昭宏
● 株式会社インテックシステム研究所 ICT研究部長 ● 博士(工学)。技術士(情報工学部門) ● 情報処理学会、言語処理学会、人工知能学会、ソフトウエア 技術者協会、日本知財学会、ACM各会員 ICTに関する研究開発のこれまでを振り返り、新生 ISI にお ける ICT研究開発の今後の方向性について述べた。新生 ISI で は、ICTに基づくイノベーションを起こし、事業に貢献するこ とを目標として努力していきたい。 参考文献[1] 鈴木富男:インテック40年の技術散歩, INTEC Technical Journal, 40周年記念創刊号, (2003)
[2] 鈴木良之:コンピュータ・ユーティリティ社会実現への挑戦, INTEC Technical Journal, 40周年記念第2号, (2003) [3] 総務省編:平成20年度版 情報通信白書, p.84, (2008)