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2003 年日本自然災害学会学術講演会 予稿集原稿

2003 年「三陸南地震」時の Internet 利用者の情報取得実態

牛山素行・今村文彦(東北大学災害制御研究センター) 1.はじめに 2003 年 5 月 26 日 18:24 頃,宮城県沖を震源とするマグニチュード 7.0 の地震が発生し,最大で震度 6 弱 (大船渡市など)が記録された.この地震による主な被害は,5 月 27 日の総務省消防庁資料によれば,死者・ 行方不明者無し,家屋全壊・半壊無し,家屋一部破損:172 棟などであり,地震規模に対して直接的な被害は 軽微で済んだ.しかし,地震直後の通信回線の混乱や,沿岸部での大きな揺れにもかかわらず,津波からの 避難をした人が少ないなど,災害情報の利用,避難行動などの面で多くの課題を残した.筆者らは現在,こ の地震の被災地域における地震時の住民行動や情報取得実態に関する調査を進めつつある.本報告ではまず, 地震直後に実施した,インターネットを通じてのアンケート調査結果について報告する. 2.調査手法 調査は,NTT-X 社の goo リサーチを利用して行った.goo リサーチは,あらかじめ登録されているモニタ ー(2003 年 7 月現在で約 14 万 5 千人)に対してアンケートの実施を伝えるメールが送信され,それを見たモ ニターが,Web 上のフォームから回答を送信する形式のものである.調査実施手法はいろいろなものがある が,ここでは,モニターの中から,宮城県・岩手県・東京都在住者を対象に案内メールを送信し,回答数が 700 程度に達した時点で終了する方法をとった.案内メールは地震発生 1 ヶ月後の 2003 年 6 月 26 日 17 時 頃に配信し,6 月 27 日夜に目標回答数 (宮城・岩手 546,東京 217)に達した. 回答者の86%は,インターネットを 1 週間当たり5 時間以上利用すると回答 しており,インターネットを日常的に 利用している回答者が中心である.ま た,地震の際にいた場所は,87%が会 社,自宅などインターネットを利用可 能と思われる屋内にいたと回答してい る. 3.調査結果 3.1 災害直後の情報収集手段 まず,地震直後(30 分以内程度.19 時頃まで)に見たり聞いたりした情報 の情報源に関しての回答(宮城・岩手在 住者)は,図 1 のようになった.「利用 し,参考になった」はテレビを挙げる 率が圧倒的に多く,インターネット系 の,tenki.jp(有名な気象情報サイト, 気象協会)や新聞社 HP,携帯のニュー スなどの回答は少ない.筆者らが地震 直後に東北大学からアクセスした際に は,tenki.jp や携帯(au)のニュースペ ージは接続できず,一方大手の新聞社 0% 20% 40% 60% 80% 100% テレビ ラジオ tenki.jp 新聞社HP 携帯電話のニュース 171 家族の話 近所の人や友人の話 そもそも利用しようと思わなかった 利用したかったができなかった 利用し,参考になった その他 図1 地震直後に見聞きした情報源 240 307 64 191 115 144 0% 20% 40% 60% 80% 100% 音声通話(固定) 音声通話(携帯) 音声通話(PHS) 携帯メール 携帯ネットアクセス ADSL 問題なく通 じた やり直した ら通じた 全く通じな かった 覚えていな い・わから ない 図2 電話やインターネットの疎通状況

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2003 年日本自然災害学会学術講演会 予稿集原稿 HP は支障なくつながった.特に携帯のニュースでは「利用したかったができなかった」の回答が多く,そ もそも接続できない状況だったことが伺える. 宮城・岩手在住者を対象に,災害直後に電話やインターネット接続ができたかどうかを尋ねた結果が図 2 である.比率は,当日それぞれの通信手段を利用した回答者に対する割合である.固定電話利用者の 6 割, 携帯電話(音声通話)利用者の 8 割,携帯電話のメール利用者の 6 割が「まったく通じなかった」(不通率)と答 えている.これは,2001 年 3 月芸予地震の際の同様な調査結果(中村,2001)と比べると,固定電話の不通率 は同程度,携帯の音声通話とメールの不通率はそれぞれ2 割程度今回の方が大きくなっている.また,i モ ードなど携帯からのインターネットアクセスの不通率は8 割近くであった.これに対して,ADSL によるイ ンターネット接続はほとんど支障がなかった.回答数は少ないが,FTTH(光ファイバー),CATV 回線経由 などのインターネット接続も支障がなかったようである.ADSL に関しては,電話回線を利用することから, 音声通信の輻輳の影響を受ける可能性が指摘されていたが(中村,2001),今回はそういった影響は受けなか ったと思われた. 3.2 津波発生の想定と行動 今回の地震は,震源が沿岸であり,津波発生の可能 性があったが,18:24 の地震発生後,気象庁が「津波 による被害の心配無し」と発表したのは18:36 であり, 約 12 分間津波に関する情報がない状態が続いた.こ の間に,津波が発生する可能性があると思ったかどう かを尋ねた結果が図3である.東京在住者,宮城・岩 手在住者とも,7 割以上の回答者が,津波発生の可能 性を考えたとし,大きな地震の発生と津波を結びつけ て考えることは一般化していることが確認された. 回答者の多くは,今回の地震時に実際に海岸にいた わけではないので,行動実態は聞くことができない. そこで,もし海岸付近にいるときに今回と同程度の震 度5 強以上の地震が発生し,いくつかの状況に遭遇し たら海岸から離れるかどうかを尋ねた結果が,図4 で ある.東京在住者,宮城・岩手在住者とも8 割以上の 回答者が「海岸から離れる」としている.しかし,筆 者らの地震後の三陸地方での聞き取り調査によれば, 今回の地震後に実際に避難した人はごくわずか(1 割 程度)であったことが示唆されている.「こうすると思 う」という平常時における行動予測と,実際の災害時 の行動とは大きく異なっている可能性がある. また,津波警報がでたら海岸から離れる回答者率は宮城・岩手では96%に達し,地震の揺れや被害の発生 に遭遇したら海岸から離れる回答者率より多くなっており(危険率 5%で有意な比率の差),津波警報に対する 依存心が高いことが示唆された.今回のように,津波に関する情報がでるまで時間がかかる場合もあり,津 波警報に対する過度の依存は,対応の遅れにつながることもありうる.今後更に実態を調べ,改善策を検討 する必要がある.なお現在,三陸地方の沿岸住民を対象としたアンケート調査も実施中であり,当日はこれ らとの比較結果についても報告する予定である. [参考文献]中村功,2001:2001 年芸予地震と通信メディアの問題点,日本災害情報学会第 3 回研究発表大会 予稿集,72-78 0% 20% 40% 60% 80% 100 % 宮城・岩手 東京 津波発生の可能性がある・可能性が高い 津波発生の可能性は低い・可能性はない 津波のことは何も考えなかった 図3 地震直後に津波が発生すると思ったか 0% 20% 40% 60% 80% 100% 震度5強程度の揺れ 建物倒壊・道路の破壊 津波警報 避難勧告 周囲の人の避難 遭遇し た 状 況 「海岸から離れる」回答者率 東京 宮城・岩手 図4 どういう状況に遭遇すれば海岸から離れるか

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