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[Phytogeographical Notes on the Pteridophyte Flora of Thailand]

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東 南 ア ジア研 究 13巻2号 1975年9月

タ イ 国 の し だ 植 物 相 と 植 物 地 理

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ThepteridophytefloraofThailandisreviewedfrom thestandpointOfphytoge0 -graphy.Itisevidentthatthe so-Called Iiimalayan elementsare predominantin thenorthernmountainousareaand MalesiaI- PeCiesaremanyinthePeninsular,al -thoughadistinctfalloffloracannott,edetermi nedexceptforthebroadareaoftheCentral plainwherefewspeciesofpteridophytesgrow・Using thedistinctdistributionalpattern ofourmaterials,thephytogeographyofthePteridophytesisbrieflysummarizedwith SpecialreferencetotroplCaldora. SomeexamplesareglVen(、OnCernlngthetaxawhose

vicariantsarcfound in contrasting areas. Severalspeciesare trcatcd,(nnsidering thespe(、iation oftnxa and theirdistril)ution. Detとliled l'nterpretation mustawait furtherstudy. 植物柏 の研究 は対象 とす る地域 内に どのよ うな植物が生育 してい るか とい う調査, いいか え れば植物 目録 の作成 が最初 の課題 とな る。この段階 で は,植 物相 の構成要素 で あ る個 々の種 の正 確 な同定が要求 され るが,それは既 知 の種 との比較鑑定 の域 に止 ま るべ き もので はな く,その種 の分 類学 ヒの位 置づ けを確定す る ことに よ って は じめて可能 にな る性質 の もので あ る。 そのた めには, 当該地域 に生 育 して い る樺 についての正確 ・詳純 な調査 を必要 とす る もので あ るが, また,特定地域 の植物相 の調査 は対 象 とす る地 域 だ けが詳細 に調査 されて事足 れ りとす る もの で はな く, その近 隣地域 の植物相 につ いての調 査研究 が, 同 じ精度 を要求 され る ものではない と して も,相対 的に重要 な意味を もって い る。特 に最近 で は, 国や府県 のよ うに人為的に設定 された区 画を対象 と して,植物相 の研究 が行 なわれ る ことが 多いが, それは個 々の種 の分布域 とは関係 のない地域 で あ る場合 が多 く,植物相 を構成 して い る種 の同定 を正確 にす るためには, その種 の分布域 の延 長線 上 に調査の輪 を拡 げ る ことが必要 にな って くるので ある。 た とえば筆 *京都 大学理学 部植物学教室

(2)

者 らが タイ国の しだ植物 相 の研 究 をす る場合 , その近 隣域 で あ るマ レイ半 島 ・スマ トラ島 ・ネ パ ール と東北 イ ン ド ごそれ ぞれ現地 調査 をす る機会 が あ った し, イ ン ドシナ につ いて は標本 資 料 が相 当量蓄積 されて お りその 多 くを検 討す る ことがで きたた めに, タイ因 にお け る調査研究 の意 味 が よ く生 か され る もの とな った。 この場合 で も, 中国や ビル マにお け る調 査 が可能 で あ れば植物 相 の精 度 は飛躍 的 に高め られた ことだ ろ うが,現 在 の と ころ調査 資 料 の乏 しい この地 域 で研 究 の遅 れて い る ことは残 念 な ことで あ る。 蛇 足か も しれ ないが一 言つ け加 えて お きた い ことは,近 隣地 城 の調 査は, この場合 タイ国の植 物 相か らみ れ ば構成 種 の分 布域 の延 長線 上 に あ る もの とい う理 解 が成 り立 つ が, それぞ れの地域 につ いて は, その地 域 の植 物相 の研 究 の 主 題 で あ り,それ らの地域 か らみ れば逆 に タイ国が 関連地域 とな って い るのだ とい うことで あ る。

3

度 にわた る

2

0

0

余 日に及 ぶ 自分 自身 の現地 調 査 と, 他 の研 究 者に よ って収集 されて い る資 料 の ほ とん どの もの0)研究 に基 づ いて, タイ国植物 誌 の しだ植 物 の 部分 の原 稿 を い ちお う完成 した。しか しこれ は タイ国の しだ植 物相 をわか らせ た とい うもので はな く,それ をわか らせ るた めの資料 とい うべ き段階 の もので あ る。 タイ国 内の 調査 につ いて もまだ完全 とい うに は ほ ど遠 く, 周 辺地 城 に して も上述 の よ うに調査 の輪 の拡 が りは不 完全 な もので あ るo それに もかか わ らず植 物 誌 を ま とめ る とい うの は,一 つ には その地 域 内で の調査 を さ らに進 め るた めに この段 階 で の知識 を整理 す るた めで あ り,他 方 で は この地 域 の知 見を ま とめ る ことに よ って周 辺地域 の植 物相 の研 究 に資す る と ころが あ るのを期す るた めで あ る。 タイt副 詞辺地 域 の しだ植 物 につ いて いえば, マ ラヤの しだ の知識 にや っと追 いつ いた段階 で, これに よ って イ ン ドシナや ビル マの植物 相 の解 明 に寄 与す る ことがで き るはず で あ る。 そ の よ うに して現状 に お け る植物 誌 が編 まれ る と, その資料 を素 材 と して系統 分 類学 的研究 も進 め られ るが, 植物地 理学 的 考察 も行 なわれ る。 それは植物 相 の研 究 の進行 に応 じて, む し ろ相補 的 に進展 す る もので,植物 相 の 記載 が整 えば植 物地 理 は明 らか に されて い くし, 植物地 理 の知識 が進 めば植物 相 につ いて の資 料 も豊 富 に な るとい う性 質 の もので あ る。 現 に タ イ国の しだ植物 の分 布 につ いて は, この植 物 相研究 の ご く初 期 の頃 に も簡 単な紹 介 を試 みて い る (岩 槻

1

9

6

9)

。 その時 の一 般 的 な

解 の仕 方 はその後 の調査研究 で少 しず つ確 か め られて は きて い るが, 一つ一 つ の事実 につ いて は当時 の認 識 が不完全 で あ った ことが分 か って きて い る こと も い くつ か あ る。 その時 記録 されて いた しだ植 物 の種 数 は

5

2

0

種 ほ どで あ った が, 今 で は それに さ らに

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種程 度 の ものが加 え られて お り, そ れぞ れの種 につ いて ももっとよ く知 られ るよ う に な って きたo 植物地 理 の研 究 も, 最初 は偶 々の種 の分布域 の確 認か ら始 め られ る。)そ う して, 種 ・属 ・科 な どの分 類群 に よ って, そ れぞ れの分 布域 の重 な り工合 が どの よ うに一致 して い るか に基 づ い て,植物 区系 が設 定 され るO その よ うに して, 日本 の植 物 相 は 日華 区系 に属す る とか, タイ国 の植 物相 は 東南 ア ジア区系 に属す るが,北 部 の山 岳地 胃 には 日華区系 の要 素が流 れ込 み, 半 島

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東南 ア ジア研究 13巻2号 の南部 はマ レー シア区系 に属す る部分が あ る, とか といえ るよ うにな る。 しか し,植物地理学 の 目的 はそのよ うな区 系区分 を確立す る ことだ けではな く,地 球 卜の植 物相 が どの よ うな史 的 変遷 を遂 げて今 日の よ うにな って きたか を明 らか にす る ことにあ り, そのために現生 の生物 の 分布 の様式 が ど うで あ るのかを知 る ことが区系地理学 の段階 で あるといえ る。 この ことにつ い て も,東南 アジアのよ うにまだ植 物相 が充分調査 されて い るとはいい難 い地域 で は, まず個 々 の種 の正確 な分 布域 が確定 され る ことが肝要 で あ り, さ らに植物相 の構成要素 で ある個 々の種 の類縁 関係 が明確 に されなければ な らない。) 植 物の区 系の標徴 と しては,樺 戸植物 が材料 とされ るのが普通で あ る。 植物 の分 布域 は, そ れぞれの種 が分布域 を拡大 しよ うとす る力 と,様 々な条件 が それを妨 げて い るの との括抗作用 の結果歴 史的 に定 ま った もので あ るので,比較的分布 の拡散の速度が遅 く, また生 活条件 が限 IJi:されて い る ものを指標 と したほ うが区系 の設定 が容 易で あ る とい うことか ら,樺子植物 が材 料 に され る ことが多か ったので あ る。 しか し, 最近 にな って,熱帯地 方 の植物地理 を問題 にす るに際 して,区系地理上 の考察 に限定 されず一一一般 的な樺 の進 化に関連 して しだ植物 を材 料 にす る ことの意 味が改 めて見盾 されて きて い るり これには次 の よ うな理 由が あげ られ るだ ろ う。

1

) A.

良.Smi

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1

9

7

2

)

の試算 によ ると,汎熱帯 に分布 す る属 の割合 は,種 子植 物 では

2%

にす ぎないが, しだ植 物 で は

1

7

% を越 えてい るOまた

1

属 に 含まれ る種 数平均 も

,1

0

0

以 上 の種 を含む属数 もしだ植物 のほ うが は るか に多い ことか ら,熱帯 は しだ植 物 の分化 の中心 とな った ところで あ り, その植 物群 の分 布は系統 的 な類縁 の解析 に とって も重要 な意味を もって い る。 2) 種子植物 では小 胞子 (花粉) が拡 散 して も大胞 子を もって い る胞 子体 (親植 物) のあ る ところで ない と発 芽 がで きず,種 が新 しい生 育場所 に達す るた めには種 子 (若 い胞子体) か無 性芽, あ るいは胞子体 その ものが運 ばれ る必要 が あ る。 それに対 して , しだ植物 の場合 は胞子 が両性 的 な配偶体 を作 り, 自家受精 して胞子体 を作 る ことが多い

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ので,胞子 の拡散 が その まま分布域 の拡大 につ なが る ことにな り, 拡 散その ものを抑止 され る ことが少 ないo そのた め,地 史的 な要素 が分布 の制 限要 因 にな る割合 が低 く,地形 ・地質 や気 候 な ど現 在 の牲 宵環境 の関与す る割合 が高 くな って い る0 3) 種子 は拡散す るのに他 の動物種 に依存す る ことが多 い し, また受粉 の機構 の よ うに動物 が種子植 物 の牡 宵に関与す る割合 が 高い。 さ らに,人為的 な移 動 も, 意識的 ・無意識的に行 な われてお り, いわゆ る史 前帰化植物 の よ うに半 自然的な条件 で分 布域 に人為が加わ って い るこ とが あ る。 しだ植物 の場合,他 の動物, ことに人 間によ って分布域 が影響 を受 けるのは,人間 によ る自然 改造 に伴 う ものを除 けば ほ とん どない とい って よ く, よ り自然 その ものの分布が よ り単純 に追 跡で きる。 4) しだ植物 では染色体数が大 き く,平 均で50を越 え る と試算 されて い る。異質 4倍 体の も のでは, その両親 よ り分 布域 が狭 いか, 両親 の一方 とほぼ同 じで他方 よ り狭 い分布域 を もっこ

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とが知 られて い る (Wagner1965,A.R.Smith1971,ほか)o Lだ植 物 で は アポガ ミ- の生起 率 が 高 く,現生 種 の約1割の もので鯉性 的 に増殖 が行 なわ れて い る らしい。 そ の よ うな細 胞 レ ベル での変 異が しだ植物 の分 布や種 の分 化 とどの よ うな関わ りを もって い るか はまだ研 究 が始 ま った ばか りの ことで あ るが,植 物地 理学 上 も興 味 あ る資料 を提 供す る こ とで あ る。 Ⅰ タイ国 におけ る しだ植 物の分 布 しだ植 物 の分布 論 に関 して,少 な くと も上に述 べ た点 につ いて は常識 と して わ きまえて おか ね ば な らな いが,特 に2)の理 由な どに よ って,種 子植 物 を材料 と して設定 された植 物 区 系が そ のま ま適用 され る もので な い ことは よ く知 られ た 事実 で あ る (Winkler1938, ほか)。 それで も, た とえば タ イ固 の しだ植物 相 をみて み る と,北 に ヒマ ラヤ要素 といわ れ る もの,南 にマ レ ー シア要素 といわれ る もの が侵 入 して きて い る ことはは っき り して い る(Iwatsuki1972,73)0 そ こで,全 体 と して どの よ うな分布 の様式 を示す か を大雑把 に通覧 して みた い0 半 島 タイにお け る しだ植 物 の分 布- 全 体 の傾 向か らいえば上述 の よ うに南 か らマ レー シア 要素 の侵 入 が見 られ るのは事 実で あ るが, さ らに詳 細 に個 々の種 の分 布域 か らいわ ゆ るフ ロ ラ の滝 を求 め よ うと して も, 半島 タイの よ うに地 形 や気候 が漸 次移 り変 わ って い くよ うな と ころ で はは っき り した区系地 理学 上 の境界 線 を設 定す る ことはで きな い()た とえば,半 島 タイ最南

端 の Yala,Narathiwat,Pattaniの3最 は少 し古 い記 録で は ひ っ くるめて Pattaniと呼 ばれて

お り, マ ラヤ と同 じよ うな植物 相 がみ られ る といわ れて きた。 この

3

鬼 に180余種 の しだ植 物

が 記録 されて い るが, その うち,

SelagineZZa∫trigo∫a,M zlcrolepiaridleyi,NephrolePi∫radican∫,Aspleniumm`lidulum,BlechnumJGnZay

-∫onialZum,Elaphoglos∫umpenin∫uZare,LomarioP∫i∫cochinc/n'nenJi∫,Tee/ariame/anocauli∫,T.rumici・

f"h'a,T/ie/ypten'∫jerox,T・laruzefl∫l'LT,T・glanduZosa,T.ex∫culpta,ろ′rro∫iaangu∫tata,LemmaP匂′ZZum

acceden∫,C,,/y∫i∫macrop句ノlla,Cryp∫inu∫∫tem(,phyllu∫,ProsaPtia ley∫ii

の18種 は この地 域 よ り北 に は見つか って い ない。 そ の うち,AsPIem'u

m ni

t

i

'duZum はNarathi

-watまで,PJノrra∫2-aangu∫tafaとCo/.V∫2'∫maCrOP々γ/Zaは NarathiwatとYalaとの 両 県 に産

す るが, それ よ り北 に は生 育 しない。他 の15種 は マ ラヤ にはあ るが, タイ国で はYalaに しか

産 しな い。 同 じよ うに,Songkhla,Satun両県 に まで北 上す るの は,

J,indsaea cultrata,IJ.ParalleZogramma,)-.Z●ntegra,Z・.dZberge71∫,Humata angu∫lata,Ctenittsm●h'S,

Teclaria tenuifohla,D車Iazium ∫ubserratum,)-oxogramme∫√β/ope71drina の9種 で, さ らに Trang,Phatthalungまで達 して い る もの は,

Glc3'tjleniaspecio∫a,Crepz■domEme∫hurziz,',I-indsaea,zapaea,DayaZZodc∫7Ji∫cidu/um,Asplenium ∫guamuZa・

lum,ノ17i'crogoni'tHn/lelerocarPum,CrJJPjllnu∫eneryis,I-oxogramme∫ubcu∫tala

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東 南 ア ジア研 究 13巻2P,A

上 にあげた ものには低地 の植物 が多 く,着生 の もので も密林 中に生 育す るよ うな もので はな

い し,地上生 えの雑草 的 な もの も含 まれて い る(〕 これに対 して,NakhonSiThammarat児 の

KhaoLuangを北 限 とす る ものには,

勾ノCOPodz'um pi∫cz`um,I-・nun/muZariFolia,jl/Farallia ∫ambucz`na,Mecodz●um productum,M mlngtum

acanthoz'de∫,Ml'crotn'cJBoma7ZeLrdな Z'tatum,Gonor♂rmu∫∫iame71∫i∫,MacrogZcnagemmata,ll/).mezfoh'a,

Tapez●nz■dz●umZugonicum,DavalfiacornicuZata,VaginuZariaparadoxa,V.lrzlChoz'dea,AspZem'um baluen∫8,

A.707igZ●∫∫imum,A.perahen∫C,EZap/10gZo∫∫um anguZatum,BoZbz'lz`∫∫Z●nuata,Po/y∫lz●chum prohfca71∫,

/feterogonium aide,rwereZzz'Z',BeZm'∫Z'amucronaza,CryP∫Z'nu∫trz'lobu∫,C.lacim'azus,Grammz'tz'∫jagon-and,

X

ti,hoptm '∫hz'eronymu∫ii,Ctenopten'.rmoZZicoma,C.tcnuz'∫ec/a,Pro∫aplZ■aL7,/ebz●ca,Ca/ymmod07ia∫Z■atz-la

の29種が あ り, その うち16種 は タイ国で はKhaoLuaI唱 だ けに知 られてい る もので ある. こ

こには コケ シノブ類

6

種 と ヒメ ウ ラボ シ類

6

種 が合 まれて お り, それ らの多 くは蘇 苔林 に限定

された生活形 を もって い る。 地形 的にKhaoLuangは標高 1786m と半島 タイで は 最 も山 ら

しい山で あ り,特 に典 型的 な蘇 苔林 が発達 して い る とい う点で は この日」以外 に半 島 タイでは生

育場所 の見 当た らない種 もあ り,ここを北 限 とす る ものの多 い ことの意 味が は っき りして くる。 さ らに タイ国で はKhaoLuangだ けに知 られ る もので,M m 'ngz◆um bontocen∫eは フィ リピン に生 育す る もので あ り,Co/y∫2'szpuz'は「回t<Ilの広東 ・広 西両省 の もので あ る。 またChrz'sten∫(,一 m'aae∫cuhfolz'a は ア ッサ ムか らジ ャヮにか けて点 々 と記録 されて い る 系統 的に も特異 な 種で あ るが, これ もタイ国ではKhaoLuangだ けに知 られて い る。 一般 に このよ うな深 山には多 様 な生 育環境 が含 まれて お り, そのために豊 富 な植物相 が み られ るので, この山に も特殊 な分 布 をす る ものが あ るの は領 ける ことで はあ るが, さ らにKhaoLuangは半島 タイ で はい ろい ろな植物学 者 によ って度 々調査 されて い るところで あ り,筆者 自身 も再 度現地 調査 を して い る とい うの も見逃 がす ことので きない ことで あ ろ う。 半 島 タイで は南半分 - のマ レー シア要素 の侵 入 が よ く話 題 に され る ことで あ るが,個 々の種 の分布北限 を並べて み る と,KhaoLuang以 南で上 記の64種 が北上の頭打 ちにな って い るのに

対 して,Chumphonか らKrabi,Phuket,NakhonSiThammarat(KhaoLuangを除 く) ま

で の

7

県 まで北 ヒして きて, タイ因で はそれ よ り北 には知 られて いない とい うもの は次 の

5

8

で あ り, ほ

ぼ同

じ数で あ ることが分か る。

Psilotum compZanatum,SeZaginel/awaZZichi7,I,GZez●rheniamzlcrop々γ/Za,Dicranopteri∫申Iendida,Lygodz●um lim 'natum,M ecodiumjaVanicum,Mm'ngZum meyem'anum,jl")・AoZochi/um,M ・denticuZazum,Trichoma72

-e∫maxz'mum,CaZ/i∫toPZeri∫apizfo

h

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a,Reedz●ahumz●/e,Crepidomane∫brt7V少e∫,M z'crogom'um bimargz`natum,

Lz●ndsaeabouillodii,I-.dorJtP/iOra,Ll0b/anrどOZata,I-Ipara∫Z◆zila,HumazaPelll-nala,lJ./zeterop々γ/fa,

Nephro/epz`∫ davaZZiotde∫,LSy71gramma ah'∫mzfo

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,Ad

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a7Ztum ∫tenOChZamy∫,Viztan-a ∫coZopendriua,

Pzeri∫/ong少innuZa,A merten∫ioide∫,ノIsPZem'um thunbe7・gZ'i,Cteniti∫man71ii,Tectan'a barberi, T. amph:foZia,T・∫ingaporea7la,T・㌣a∫ta,T・maZ■ngayi,PZeocnemz■a hemiteh'ifolia,T/ie/ypterz'∫V∼■∫√〃∫a,T. cra∫∫lfoh-a,T・um'ta,T・po/ycarpa,T・mcm'∫cz`zlcarpa,Dzj)/azz●um acceden∫,D.cordzfoh'um,D.

,

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ban◆um,

(6)

Penangiana,Myrmecophija cru∫lacea,SeZ/なuea heterocarpa,Grammiti∫ hirtclZa,G. adsPer∫a,

Ctenopzm '∫moullonii,Prosapziaobh'guaza,P.contなua.P.alala,C`Ziymmodon cucuZZazus,Acrosoru∫ trianguZar2'∫. さ らに南か らの要素 は, タイ国に限 っていえば, 東南部や西南部, さ らに 中央の KhaoYai などか ら東北部の山に出て くるもの もわずか なが ら知 られて い る. もちろん,県 単位で種 の分 布北 限を並べて も,個 々の種 の生育条件 の満た されてい る場所がそれぞれの県 について どのよ うに分布 してい るかを示 さな ければ, その分布が限定 されてい る要因が何で あるかを指摘 した ことにはな らない し,漸次的 な変化で あ るといい切 ることもで きない。 ここでは種名を列挙す るに止 めるが,植物誌では生 育場所につ いて もう少 し詳 しく記 録 されてい る。 かつて Pattani だ けがマ ラヤ との関連性 の深 さを指摘 されていた理 由の一つに,しだ植物 についていえば特 に, E.Smith夫人が この地域 を詳細に調査 していた ことが あげ られ よ う0 以 上の事実か ら, タイ半島 部のよ うに比較的変化 の乏 しい地 形で,気 象その他 の環境条件 も 漸次移 り変わ って い くよ うな ところでは, しだ植物 のよ うに拡散す る速度が比較的早 い もので は,植物相の移 り変わ りも漸 進的で あ って,顕著 な フロラの滝 は認 め られない とい うことが確 か め られ る。 気 候 な どに して も,等温線 や雨量を表 わす線 な どで区切 られて いる ところは漸進 的な変化 を数字が移行す るところで区切 った もので, そ こに特別 な条件 の飛 躍が認 め られ るの ではないのであ るが,植物 の分 布に して も特別 の障害要因がなければそれ と同 じよ うに徐 々に 変化 してい くもので ある。 北 タイにおける しだ植物 の分布- 半島 タイでみ られたの と同 じよ うな漸 次的な フロラの変 化 は北 タイにお けるいわゆ る ヒマ ラヤ要素 の種 の南下 について も認 め られ る。 北 タイにはDoi

lnthanonや l)OiPaHom Pokのよ うになだ らかな斜面が山頂 まで続 き,現在 では焼畑 による

損壊 がはなはだ しいに して も,かつては美 しい常緑林が発達 して いたよ うな,標 高2000mを 越 え る山 々とか,DoiChiangDaoのよ うに, 2000m を越 え る石灰岩塊 ともい うべ き岩 山 と か, いろいろな環境が準備 されていて, 山頂付近 にはいわゆ る温帯性 の種 が生育 して い ること は, しだ植物 だ けでな く,種子植物 につ いて もよ く知 られてい ることで あ る(Smitinandg/α/. 1970)。 しだ植物で も, ヒマ ラヤ地域 には ご く普通 にあ って, タイ国ではDoilnthanonの山 頂付近だ けに見 られ る もの として,

PZagiogyriacommunt∫,Denn∫taedtl'a∫Cabra,Ptertsnepalen∫才'S,DryoPterishender∫oni,At々γn'um ∫eZz'

-ferum,PZeopeZti∫con/orta,CryP∫inu∫ebemj)e∫

な どがある。一方,Doi(二hiangDaoの高 い ところの石 炭岩上 に限定 されてい る温帯性 の種 と

して は,

SeZagtnella vaginata,S.tamarz■∫ct'na,Ara2-0∫tegz■ap∫eudocy∫loPteris

,G

ymnopzeri∫zJe∫Zita,Cheilanthe∫ rufa,Asplenium antroph_yoide∫,A.T)arian∫,A・exなuum

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東 南 ア ジア研 究 13巻2号

な どが挙 げ られ る。 その他 の もので,北 部 の千数百 メー トルを越 え る高 さの ところだ けにあ る

もの と して代 表的 な ものを列挙す れば次 のよ うな もので あ るo

SeZagl-neZ/abi∫u/cata,q′a/beachz■n en∫2'∫,C.spz'7Zu/osa,jl,7Z●croZepz'a,#rma,Arazlo∫legiafabm 'ana,0/eandra

waZh'ch'Z●,Com'ogrammepeteZolz-Z',C.Prorgra,C/ieilanzhe∫∫ubrufa,JIntrop々γum .r/enoP/zyZZum,A.oboz′azum,

Vl'tzarz'aforre∫tz■ana,Ptm '∫∫ubguinata,P.aspm 'cauh'∫,BoZbittl∫r♂∫lata,Acrop/iOru∫∫tZj,eZlatu.F,Poケー

∫tz``・hum Zi/ldJlaefotium,P.J.emZ:ferti/C,P.tenggererZ∫C,Arac/im'〝ahla∫∫amica,Dryopzeri∫neoc/zry∫or〝ma,

D.2oro∫a,'(leczariaPhaeocauZi.T,J'zeridry∫cTZCmidaria,1_una/hy

r

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umjapom-rum

,

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z〆agz'um mun■ca/um, PyrroJja.jgoclZ,/lo∫n,P.heterarlz●、F,PZeope/zz●、r∫ud/2'nt,an●∫,P.lAz●72Hz∫Z●∫,(1ryp∫7-nu.どgr

z

# /hi'anu∫,Po鋤 odz'um

mz■Crorhz'b"0〝/a. 北 タイで は季節 風 の影響 を受 けて, 乾季 と雨 季の差 が歴 然 と して お り,特 に11月か ら翌年 4 月 にか けての乾季の半年 間 にお けるChiangMai(標高 313m)の雨量 はわずか 132mm に達 す るのみで, これは年 間降雨遠 の約1割 に相 当す る数字で あ る (世 界気候誌第1巻 『アジアの 気候』 に よる)。 そのた め, 低地 では落葉林が 乾季 にな る と 日本で い う冬枯 れの状態 とな り, それで いて酷 しい 目腰 が あ るために,林床植物 は雨季 に しか縁 とな らない。 とい うことは,乾 季 に なる と落葉す るよ うな特殊 な種 しか生 育 して いない とい うことで,事実北部 の低地 にみ ら れ るのは ほ とん どが生活 力の非常 に強い, いいか えれば分布域 も非常 に広 いよ うな もの とい う ことにな る。 代表的 な もの と して,

Zycopod3'um rgrnuum,SeZag2'neZZat,∫zenfeZdii,S.Pube∫cen∫,El/uzl∫etum debile,Lygodium ZaPonicum,I. ,HexuoJ、um,L・gなanteum,Dicranopteri∫Zi71eari∫,Cibolz●um barome/I,Ceratopteri∫tha/iczroide∫,Cheilanthe∫ tenulfo/ia,C.beZangeri,Adz'anzum caudatum,A・MZZingm',A.Cry/h'ae,Stenoch/aenapaZu∫tn-∫,BZechnum orienza/C,CteJlizl'∫maul/en∫Z●∫,Tectarl●aZ′arZ●olo∫a,T po/y777-Aha,TheljQteri∫torre∫iana,T.para∫Z'/Z'ca,

T.dentata,T.terml■nans,A71i∫ocaml)ium cumz'71gi'a71um,D車Iasz●um e∫ru/entum,j'J" (,∫l'a ad7Za∫EV72∫ , Drynariabonii,D.guerczfoZia,D.γなZ'duZa,Mar∫i'Zeacreuaza

が挙 げ られ る。 北 タイで常緑林が発 達す るのはだ いたい1000m以 l二の

さの ところで あ るo高度 が高 くな れば, 山に霧が巻 くことにな り, た とえ乾季で も降雨量が大 き くな る上,雨量 の測定で は数字 には表 われて こない ことで はあ るが, 空中湿度 が 高 くな って 着生植物 が 多 くなる「) だいたい 1000m前 後 の高度か ら上で は, 乾季で もほ とん ど毎 日の よ うに霧 がかか り, その地域 に常緑 林が発達す る ことにな る。常緑 林で は林床植物 も豊 か にな り, さ らに標高 2000m前後 の とこ ろには蘇 書林 も出現 して着生植物 も多 くな る。 そ うい うところで は,森林 はネパ ールや イ ン ド のダ ー ジ リン近辺 な どの2000m付近 で蘇苔林 の発達す る ところ とよ く似 て お り, ネパ ール な どの2000m付近 に普通 の種 の うちのい くつかが北 タイに まで達 して い る ことも容易 に理解 で き る ことで あ る。 要す るに,生 育条件 が少 しずつ変化 して い るところで は,植物 の種 もわずかず つ置 き代 わ って い くとい うことで あ る。 それに対 して,低地 は上述 の よ うにはなはだ しい乾燥 がみ られ, そ こで はた とえば同 じよ う

(8)

に乾雨季の差 の顕著 なネパ-ルの低地 に もみ られ るよ うな広分布種が生 えて いるだ けで, いわ ゆ る ヒマ ラヤ要素 の種 の生活場所 は与 え られて はいない。 そのために,北 タイの山岳地帯 にま で分布域 を拡 げて い るヒマ ラヤ要素 の種で, それ以 南 まで分布域 を もつ ものは,西南部 の山岳 地帯 に沿 って南下す るもの,東北部 ・中央部 ・東 南部 の干数百 メー トルの山頂付近 を点 々と連 ねて南下す るものな どがあ ってマ レー シアの二千数百 メー トルか ら上で はわずかに ヒマ ラヤ要 素 の種 をみ ることが あ るけれ ども, その数は非常 に少 ない。す なわ ち,生 育条件 が比較的急激 に変化す るために,生育 して いる種 も多 くの ものが比較的突然 に置 き代 わ って いる

山地性 の 植物 に とって,低地 は海 と同 じよ うな分 布の障害 とな ってお り, 多 くの しだ植物 に とっては タ イ国の中央平原 の乾季は分布 の拡 散の中間地霜 にはなれない ものである() 以 上の ことか ら,一般論 と して, しだ植物 の分布境界 は種によ って多かれ少 なかれず れが あ り,全体 と して の区系の境界 として はゆ るやかな変化がみ られ るだ けで,急激 なフロラの滝 は 存在 しない とい うことが分 か る()Tryon(1970)は主 として島峡 における 分布資料か ら, しだ 植物 の分布域 の拡散 は相 当遠距離 まで可能で あると してお り, その ことか ら, しだ植物 の分布 を決定 して いる ものはむ しろ 生育地 の条件 の 差で あ る らしい ことを 示唆 してい る。 しか しま た,個 々の種 について さ らに詳 しい比較 を してみ ると,そ うい う一般論で律す ることので きな い例 も挙 げ る ことがで きるo ここでそのい くつかを比較 してみたいO 地理的分化 のみ られ る しだ植物- タイ国において, [巨央平原 を挟 んで大雑把 にい って北-は ヒマ ラヤ要素 が入 って き,南- って北-はマ レー シア要素 が北上 して きて い る。 その関係 を もっと顕 著 に示 しているのが,地理的 な拡が りに平行 に種分化のみ られ る例で ある。

Hennipman(1970)は- ッカ シダ属の研究 の過程 で,BoZbz't2'∫V2'ren∫に北方型のvar.vZ.re7iS

と南方型のvar・comPactaを識別 した。 これは胞子葉 の特殊化 の程度を類型化 し, 形態 的な中

間型 のない ことも考慮 して, その差 を種分化 の さきぶれ と解釈 し,変種 と して区別 した もので

ある。 var.vi●ren∫は ヒマ ラヤ東部か ら ビル マ北部, それ と北 タイの 山岳地嵩か ら東南部の

KhaoSoiI)ao,西南部のSaiYok(この場所 には山地性 の ものが比較的多 く知 られてい る)に

まで分布 してい るもので,葉 の

2

型が確立 してお り, 胞子葉 の羽片 の良さは幅に比 して

1

5

倍以

上,完全 に acrostichoidの状態 とな るO これに対 して,var.comPaCtaはマ ラヤ とカ ンボジア

に知 られてお り, タイ国で は半島部のPhuket県 とKhaoChongにあ ることが分か ってい る。 この変種では胞子葉 の羽片 の幅が広 くな って,長 さが幅 の3- 7倍で,acrostichoidの状態 を 示すが,胞子の うが脈 と辺縁 に極限 され るような もの もでて くる。 オオ タニ ワタ リの類は指標形質が単純 で ある ことか ら種分 化の過程 や類縁 の追跡の難か しい 群で あるが,Holttum (1974)は この群 の再 検討を行な って 種差 を指標す る形質 などを整理 し た。 その うち,AsPlenZlum AhyZh'lidl'S は これまで ヒマ ラヤ地域か らマ レー シアをニ ューギニ アまで分布す るもの とされて いたが, この種 の うちで北方型 と南方型の胞子 は表面模様 を指標 289

(9)

東 南 ア ジア研究 13巻2弓一

と して 明瞭 に識別 され るので,亜 種 の階級で区別 すべ きで あ る と提 唱 して い る。筆者 も数年前 か らこの問題 に興味 を もち,胞子 の表 面模様 のほか に,外部形態 で もソー ラス と葉脈の関係 な どに差 が み られ る ことを確か めて い る。 そ う して2型 を識別す ると,subsp.Jb々γ/Zz●tz'dz'Sは南 イ

ン ド・東 北 イ ン ド・雲南 ・海南 島, それに北 タイのTakとLampangに分布 して お り,subsp・

ma/esz'cum はマ レー シア地域 に広 く分 布 して いて,商 ビルマ,イ ン ドシナ と,タイ国で は半 島 タイか ら東南部,それに Kha′oYaiまで分布 して い る。 ヒ トソバ属 の Pyrro∫2'az,arz.aとP.nudaは

常 に よ く似て いて, 別種 で あ るか ど うか疑 わ しいよ うな もので あ るO 両者 の差 は,葉 の基部に葉柄が は っき りす るか ど うか, そ こにつ く毛 の密度,Lil肋 に暗褐色 の色がつ くか ど うか, とい ったよ うなは っき り しない もので あるO それ で も, ヒマ ラヤ

域 か ら北 ビル マ

雲南 ・イ ン ドシナに あ る型 と, スマ トラ ・マ ラヤか らマ レー シア地域 をニ ューギニ アまで含 めた上, ポ リネ シアにまで知 られて い る型 と,典型的な も のにつ いて いえば弁別 は不可能 で はない。 タイ因では種差 はやや不鮮 明で あるが,北方型 の も

のがTakに, 南方型 の ものが 半 島 タイか ら西南部 のWangkaと東 部 のPakTlhongChaiに

まで分布 して い る。 同 じ着生植物で も蘇 苔林 に生 育す る もので CtenoPten'S∫ubfaZcataがやは り広 い分布域 を 占 めて い る ことにな って い る。 この種 につ いて も, ヒマ ラヤ地域 か ら南支那 を経 て北 タイの山 岳 地帯 に あ る もの と, セ イ ロン ・マ レー シア西 部 な どにあ って, マ ラヤか らKhaoIJuangにま で分布 して い る もの とは葉質 ・葉 の切 れ込 みや裂片 の形状 な どか らみて, おそ らく種 の階 級で 違 った もの と思 われ る。

その他,Se/agz●nefZahe/ferz●と S.ze)2'ffdenozLJZ'2',LoxogrammecAz'nen∫2'Sと L・∫ubeco∫taza,

The/JPterz'S∫ube/ataとT.∫umazrana,M z'cro

/

e22'aPZatyP々γf/aとM ・hurzz'Z',M ・JPuberuZaと

M .rz'物 ノZ',PoZys12■chum b2'ar2-statum とP.Prolzfcan∫な どは, 上 の場合 の よ うに典型的 な も の とはいえ ないが,対立種 が タイ中央平原 を狭 んで南北 に隔離 されて い る もので あ る。 ただ し, これ らの南 北 の隔離 につ いては形 質の差 に共通性 は認 め られず,個 々の場合 それぞ れ独立 に分 化 した もの と考 え ざるを得 ない。 タイ国にお ける しだ植物 の固有種- 固有種 はその地域 に限定 された もので あ るか ら, その 地 域 内で分 化 した ものか, よ り広 い分布域 を もって いた種 が,他 の ところで は絶滅 して, その 地域 内だ けで保存 されて きたか とい うもので あ る。 タイ国 に固有 の しだ植物 には,

SelagineZZa /indhardtz'i,CrePz'doma71e∫ megZ●∫tO∫tOmum,C/leiZanthe∫auz'catu/a,Adiantum ∫iamen∫e, AntroP々γum winitii,Pteri∫phuZuangen∫i∫,AspZem'um ∫l'ame"∫e,E7aPhogZo∫∫umdumr,,,lgZ■Z●′I-omagr a-mmagro∫∫o∫errata,Po/y∫tz'chum attenuatum,C/eniti∫dumrongz'Z`,Heterogonium he71m'25mam●i,Tectarz■a

gγmno∫ora,The/yPteri∫ ∫imane∫Z-∫,D車Iazz'um ∫iamen∫C,P/eopc/tis oospAaera,CrJ,P∫Z◆nu∫/zir∫uzu∫,

Arthromeri∫phuZuangen∫i∫,Po/ypodium garretzl'i,Xzb/zoPter Z'∫A/zap/uangen∫Z'∫

(10)

があ るが, この うちには極端 な特異型 とい うべ きもの も含 まれて いる し,近似種 との比較研究

を必要 とす る もの もある。 さ らに, 固有種 と同 じに考 え るべ き もの として,ビルマや イ ン ドシ

ナ ・マ ラヤな どの近接 した場所 とだ け分布域 を共有 す る稀 産種があ り, その よ うな例 と して, Selaginella∫trigo∫a,Microgonium parytfoZium,Lindsaeamalayensis,NolholaenaZ′eZutina,Cheilanthe∫ fragili∫,Adiantum erylliae,Aspleniumperahen∫e,A・rockii,BoZbl◆liJ.207lhinen∫i∫,B・loPelandii,Teclaria laolica,T.lenm:Fron∫,T.lernifolia,Dzj)Zaziumpetelotii,Po/yPodium beddomei,LoxogrammeZaTlhohien∫i∫ などが あげ られ る。

タイ

の しだ植物の固有率 を

3%

と算 出す ると,- ワイの

7

1

% , マ ダガスカルや フ ィ リピン

の47%,ニ ュー ジー ラン ドの

3

7

%

な どとい う数字 に比べて遥か に小 さい数字で あるが,陸続 き

で は, カ リフォルニア州 の9.5%か らテキサス州 の1.1%とい うよ うな例 まで あ り,それほど目

立つ数字 とは思 われない。む しろ,個 々の固有種 につ いての特殊化 の後づ けの進 め方が問題で, タイ国の しだ植物 の場合 も,PoIM odu2'm garretl2'i', P・beddomei■,CryPsz'nu∫hirsutusに共通

に出現 して い る腺毛の形質 などについての解析が, この地域 の植物地理 の特性 について何 らか の示唆 を与 えて くれ る ものか もしれない。

ⅠⅠ し だ 植 物 の 分 布 域 と 種 分 化

種分化 の活発 な分類群- 同 じ地理 的分化 のみ られ る もので もThe/yPleri∫vi∫co∫a の場合

は特殊 で あるC,この種 はマ レ- シア地域で蘇苔林 よ り上 に頂 を突 き出 して い る山の頂上近 くの

腐植土 の多い 林床に生育 して いて タイ国では SuratThaniの Kha()Nawngと NakhonSi

Thammaratの KhaoIJuangで知 られてい る

O

他 に,マ ラヤ ・スマ トラ ・ボル ネオ ・フィ リ

ピンで も同 じよ うな場所で採 られて い るが,これが変異の大 きな種で,Holttumはそれぞれの 場 所で種分化 を達成 した もの と見 な して別種の取 り扱 いを しよ うとしてい る (未発表,私信 に よ る)。 この種 の場合, 生 育場所が特異 であ るために, ヒマ ラヤ要素 の南 下の場合 よ りももっ と典型的 に,低地 が分布地域拡散 の障害 とな って い る。 その意味では,山頂部 は島峡 と同 じよ うな意味を もって お り,隔離 された状 態で種分化 が進んでい る もの といえ る。 ヒメシダ属 は熱 帯 で様 々な型- の変異 を現在 も活発 に示 してお り,T.visco∫aのよ うに生育場所が 特殊化 した 場合, それぞれの場所 にお ける分化 は ある程 度進 んで いるとい う判断を下す ほ うが よい と考 え られ る。 なお,Tryonの取 り上 げた島峡 の しだ植物 にはいわゆ る広分布種が多いが,拡散 に関 しては山頂 も島峡 もよ く似 た条件で あるとはいえ,生育場所の特殊 さの程 度が全 く違 って い る ので,変異 の大 きさまで同一視す ることはで きない。 種分化が活発 に進 め られてお り,分 布域 の拡大 が隔離機構 を乱す よ うにはな ってお らず,也 域 的な種 を多 く含む群 として- ゴの例が あげ られ よ うO この属 にはマ レー シアか ら191種が列 挙 されてお り, その多 くの ものが限定 された区域 内に しか分布 していない ことが明 らかにされ 291

(11)

東南 ア ジア研 究 13巻2号

て いる (Holttum 1963)。 その地 域 の広 さは T.vz'sco∫a の場合 の よ うに 極 限 された ものでは な く, ス マ トラ中部やセ レベス西南 部 とい うよ うにあ る程 度 の拡が りを もった もので あ るが, 一般 の しだ植物 の分布域 の大 きさか らみれば,へ ゴ属全体 と して個 々の種 の分布域 は狭 い とい え る。 これは, 多 くの場合 へ ゴは 密林 中に生 育 して い るので胞子 の 拡散 が妨 げ られて お り,

C

yatheacontamz'nansの よ うに森 林 の外 で生 育 して い る種 で は分布域 も広 い とい う説 明が与 え

られ る こと もあ るが,

露程 につ いて い うと, 森林 中に極 限 され る- ゴが相 当広 く分布 して い るのに対 して,森林外 で も樹冠 を展開す る ヒヨケへ ゴは 割 合 狭 い 分 布域 しか もたない (岩槻 1963)ことか ら, この属 の分 布を

述 の よ うに割 り切 って考 え る ことはで きないよ うで あるO ホ ング ウ シダ属 は タイ国で は18種 知 られて い るが, この うちタイ国内では1カ所 で しか見つか って いない ものが5種 , 2カ所 だ け知 られて い るのが 2種 を数 え る。 いず れの場合 も種全体 と して の分布域 が そ う極 限 されて い るとはいえな いが,

地 の条件 に特殊 な ものが あ るよ うで ある。 この属 の ものは一般 に栽培 が難 か しいが,それ も生 育条 件 と関係 のあ る ことで あろ う。 拡散 が容 易で あ る ことと, あ る場 所で生督好適地 に行 きつ くこととは同一 の ことで はな く,気 候帯 のよ うな一般 的な条件 -の適 否 とは別 に, もっと厳密 な生態的条件 へ の適 否が個 々の種 の 属性 にあ り, その表 われ方 に種特異性 の あ る ことを, この事実 は示 して い るよ うで あ る。 種分 化 と地 理 的分布- 近縁 な種群 が形質 の分化 と並行 して どの よ うな地理的分 化 を行 な う か, も し形 質分化 と地 理的分化 の間に何 らか の因果性 が あ る とす ればその解析 は生 物地理学 に とって最 も重要 なテー マの- つ にな るはずで あ る。 チ i7セ ンシダ属 のホ ウ ビシダ群 は, 多型 な広分 布種 で あ るホ ウビシダ の近縁種数種 を含んだ

もので あ る (Iwatsuki1975a)。 ホ ウビシダ は ア フ リカ か らポ リネ シアにか けての 旧世界 の熱

帯 に広 く分布 してお り,あ ちこちで沢 山の名前 がつ け られて いる ことか らも想像 され るよ うに, 形態的に変異 の大 きい多型 な種 で ある。 ホ ウ ビシダ は密林 中の渓側 に多 い種 で あ るが, その変 種 のヤ ク シマホ ウビシダ は もっと水生 的 な生育場所 に生 えてお り, ほ とん ど常 に しぶ きを被 っ てい る。 この型で は葉 の細胞層 は2層 に まで 単純化 し,気 孔 もほ とん どないか非常 に少 な くな って い る。 現在 までの ところ, ヤ ク シマ ホ ウビシダ の型 は ヒマ ラヤ地域 か らベ トナム,中国の 貴州 (報告 は他 の省か らもあ るが, 資料 を確か めて はいない),台湾, フィ リピン, ボル ネオ, ジ ャワ, それに西 南 日本 に知 られて い る。 こうい う特殊 型 はおそ らく同一 の環境条件 の下で地 域 ごとに独立 に平行 的 に分化 して きた もの と推 定 され るが, ホ ウビンダ とよ く似 た種で 中南米 の As2/enz.um obtu∫zjToh'umに も同 じよ うな半水生型変種 var.ag〟αzicumが知 られて い る こと

もその推定 を裏付 ける傍証 とな るだ ろ うO また, ラ- オ シダ もホ ウ ビシダに近縁 の もので, こ

れ は逆 に水 を離 れて林床 に生 じる ことが多 く,分 布範 園 も旧世界 の熱帯 を通 じて ホ ウビシダ と 同 じよ うに広 く, おそ らくは地域 ご とに独立 に分化 して きた もの と推定 で きる。それに対 して

(12)

の与那国島にまで産す ることが最近確か め られた。 これは, ホ ウビシダか ら特定の地域 で分化 して,それが分 布域 を拡大 してい った もので はあるまいか。 この場合,限定 された分布域 だ け で知 られてお り, しか もその分布域 に同 じよ うな拡が りを もつ種が多い とい うことが,上 の推 定の根拠 の一 つ とされ る。 事実, フィ リピンとボル ネオは植物相に似 た点 が ある し, フィ リピ ン北部 に知 られて いる種で紅頭峡か ら南琉球 まで分布域 を拡 げて いるもののあることは よ く知 られた事実で ある。 さ らに, 多型種で い ろいろ名前 もつ け られた ことのあ るホウビシダ の生殖 の型 を調べてみ ると,正常 な胞子生殖 を行 な う型 とアポガ ミ-を行 な って配偶体に有性生殖器 官を作 らない型 とがあ る。 日本のよ うに分布限界 の ものではアポガ ミ-の ものが多いよ うで あ るが,鹿児 島県以 南には正常の もの も混 って お り,熱帯 を中心 とす るこの種 の生殖様式 の変異 は種分化 との関連で興味のあることで ある。 テガ タホ ラゴケは旧世界 の熱帯 に広 く分布す るものであるが, これ も地理 的に分化 のは っき

りした ものであ ることが確か め られた。Tn'chomane∫de宮itatZlmはマ ウ リテ ィウスに知 られ,

T.,GabeZZatumは半島 タイ ・マ ラヤ ・スマ トラ ・ジ ャワ ・ボル ネオ ・フィ リピン ・ニ ューギニ アに知 られ, その-変型 ともい うべ きT.d2'chotomumがスマ トラとジャヮに知 られて い る。 また,T.taeniatumはソロモ ン・サモア ・マ-キサ ス各諸島に,T./yaZhlZ●var.neocaZedom'cum はニ ューカ レ ドニアにそれぞれ知 られてい る。 この種 (群)の場合 な どは形態的に単純 な構造 を もっていて分化 の程度を指標す る形質 が不確かな もので あるので,分化 の過程 までを確実 に 追 ってい くことは難か しいが, しだ植物 の場合で も分布域の拡散が いつで も無際限に行 なわれ てい るのではない とい うことを示す材料 にはな るか もしれない。 同 じコケ シノブ類で も, ウチ ワゴケの場合 は,分 布域 ・形態学的性質 ・生殖 の様式が, ある 程度 の相 関を示 して い るもの といえ る。 ウチワゴケの仲間では種 を識別す る ことが難か しく, 邦産 の ウチワゴケ と旧世界 の 熱帯 にあ るT.Prohferとが同 じ 種 なのか ど うか もは っき りしな い (岩槻 1975)。 特に出芽 して 栄 養 分体で増殖す るとい う形質が, ほ とん どウチワ型 の葉形 を もつ ものにまでみ られ る ことか ら,両者 の識別 はます ます難か しくな って きた。 そ こで, こ の 2型が どのよ うな分化 を遂 げて い るかを整理 してみ ると, (1)形態学的形質では,羽状分岐 をす る葉 と扇状葉 との差が 出芽 の有旗 と関係 して い る, (2)分布域 でい うと,暖帯や熱帯 の山 地 には扇状葉の型がみ られ,熱帯 の低地 では出芽 の頻繁 な ものが多い, (3)そ して生殖 の様式 につ いては,羽状分岐 の ものでアポガ ミ-が,扇状葉で正常 な生殖 の報告 がある。 ウチ ワゴケ の仲間 は多湿 な環境 にある もので,植物体全体が小 さ くて簡単 な構造で あ るだけで な く, 内部 構造 で も維管束 な どに極端 な単純化がみ られ る。 そ うい う様式 の進化を行 な った群で種分 化が み られ る場合 には, 出芽 や アポガ ミ-のよ うな生殖 様式 の特殊化 も,生育場所の拡大 と関連 し て重要 な役割 を果 た してい るよ うで あ る。

(13)

東 南 ア ジア研 究 13巻2号

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参照

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