- 4 - 滋賀大学 理事(情報・社会連携担当) 力石 伸夫 100年に1度の経済危機に見舞われています。 今回の経済危機は世界各地で同時にバブルが崩壊したことによるものです。アメリカでは不動産バブル、ヨーロッ パでは不動産バブルとユーロバブル、資源国には資源バブル、日本には円安バブルがあり、これらが連鎖的に崩壊 し、危機を生み出したわけです。そのメカニズムは、バブルの崩壊→株価の下落→信用システムの動揺→信用収縮 →景気の悪化というものです。現在の景気の状況は、輸出の落ち込み、生産の落ち込み、企業業績の落ち込み、消 費の落ち込みが過去最悪を記録しており、「ハーフエコノミー」(製造業が半分に縮む経済)とか、「L字型景気」(景気 が急激に落ち込み、底入れしたとしても底ばいが続く)と言われています。更に懸念されるのは、豚インフルエンザか ら変異した新型インフルエンザの二次感染が広がり始めており、状況次第では経済活動への制約が予想されること です。地方の景況も大幅に悪化し厳しさが増していると、日銀の地域経済報告や財務省の管内経済情勢報告に報じ られているところですが、地域の皆様はすでに実感されていることと思います。各国の政策当局は大規模な金融経 済政策対応を打ち出しており、財政出動によってその分だけ雇用と所得が支えられ一定の役割を果たすことになり ましょうが、問題はそれが民間部門の自律的回復につながるかどうかです。特に、人口減少が始まっているわが国 は、これに伴う需要減少圧力が停滞を長引かせる可能性が高いと思われます。 このような環境における経営のあり方を考えてみたい。まず、長期戦で対応することです。景気には循環的変動が ありますから、多少の回復はあっても停滞局面が長引くと考えて、体制を整えることが肝要です。そのためには、手 元の資金を手厚く準備しておくことです。企業は使えるキャッシュがなくなったときに破綻するのですから、それを避 けるためにも、また、今後の人材や設備の投資に備えるためにも、資金を出来るだけ用意しておくことです。 次に、これまでにも危機は幾度もありこれを乗り超えてきましたが、従来と同じモノで乗り超えた企業は少ないとい うことです。多くの企業は、従来と同じモノでも機能やデザインの高度化、新たな用途の開拓などがあったはずですし、 更にこれまでに取組んできた新技術による新製品を思い切って打ち出し危機を克服してきました。例えば、日東電工 は「三新活動」と名づけた「製品、用途、需要」の3つの面でのイノベーションを徹底しています。不況を克服する「強 みの遺伝子」を目覚めさせて、危機に克ってほしい。産業面では、グリーンニューディール関連産業に自社を関わら せることでしょう。 更に、人口減少社会に入ったわが国で、企業はどう対応するかです。人口は減少しますが、世帯数はまだ増えると 予測されていることに着眼することでしょう。世帯数が増えれば、住宅関連需要は伸びることが予想されます。但し、 増加する世帯は「単独世帯」と「ひとり親と子の世帯」ですから、そうした世帯の豊かな生活に対応する製品やサービ スが提供できることが条件となります。 最後に地域について。滋賀は、数少ない人口増加県であり、過去10年の県内総生産の年平均成長率は全国第3 位の高成長率です。しかし、人口増加はいずれピークアウトするでしょう。そのときどうやって地域に活力を呼び込む かです。それは、人が来る地域にすることです。人が来てくれて、人と情報が交流する賑わいを作り出すことです。観 光を振興する、地域ブランドを創出する、地域全体をエコミュージアムにする等考えられることは多数あります。それ ぞれの企業が意識を変え、意欲を持って地道に徹底的に取組むことから道は拓けるものと思います。 春の来ない冬はありません。経済は循環していますから、その意味での春は来るかもしれませんが、今日の状況 ではむしろイノベーションによって春を呼び込む努力が不可欠だと思います。滋賀大学の産学連携の取り組みは本 センター報に詳細を記載しておりますので、皆様方の積極的なご活用をお願い申し上げます。
2. 産業共同研究センターによせて「経済危機に克つ」
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