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伝染病の死亡性比に関する研究

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7 〔原 著〕 〈東京女医大誌 第24巻第1号頁7−21昭和.29年2月)

伝染病の死亡性比に関する研究

緒 東京女子医科大学衛生学教室 (主任 吉岡博人教授) 言

松 田 摩 耶 子

マツ ダ マ ヤ コ (受付 昭和28年11月’10日) 伝染病に託ては男性または女性の一:方が特に多 く犠牲となる場合もあれば,性によって異ならな いごともある。これにはいろいろな原因が謡えら れるが,主なものは第一に体質により規定されて いる実際の抵抗あるいは感受性が存在する鳥合で ある。第二には男女の隼活慣習の相異による感染 の機会の異る場合である。それ故疫学を研究する には当然性別を考慮にいれて分析しなければなら なv・。従来各種伝染病それぞれの疫学的研究に於 て性による差異という点は一応二面されてぎ元 が,性の上から伝染病を観察した研究はほとんど ない。昨年石田が昭和年24,および25年の伝染病 め の罹患について男女の関係を解析しているが,そ れ以前の全国的動向は統計資料の不備のため明ら かにでぎない。幸い死亡については男女別数値が 癸表されているので,三国の伝染病死亡を男性と 女性の関係に於て,年代的に連続一貫して観察す るには極めて好都合である。そこで私は戦前まで の縞織の主なる伝染病死亡を男女の相対的関係か ら,年次的,季飾的に比較老察したいと思う。勿 論,本研究がら男女の差が如何なる原因によって 生じたかを結論づけることはできなv・。しかし現 象的に老察することによって,死亡性比に及ぼす 因子として病原菌の種類,男女の生物学的差異, 社会的諸要素が如何なる程度にその影響をしめす かをみることができると考える。 研究資料及び方法 資料 明治32∼明治38年 日本帝国入口動態統計 明治39∼昭和13年 日本帝国死因統計 昭和14∼昭和16年 日本帝国入口動態統計 明治41年,大正2年 日本帝国入口静態統計 大正9,14年,日召和5ノユ0年目国勢調査幸長告 :方法 男女死亡の相対的関係をみるにぽ死亡実数を用い たのでは,その基礎となる男女人口の差異を無視す ることになるから,女子死亡率を100とした場合の 男子死亡率を求め,∼これを死亡率性比と称すること

・L…即ち死亡轍繊雲舞蚤・・…

ただし季節的変化では,死亡率性比を算出すること は無理なので,死亡数性比を用いることにした。即 ち死亡数断一難厳・…,・z−3es3・区分鵬 静態調査及び国勢調査時に於ける人口十万以上の市 を市部とし,人口十万以下の市,郡を郡部とした。 性比の季節変化は,明治32年∼昭和16年までの間 の死亡の月別総計を男女別に求め,これより月別性 比を算出して,これを全期間にわたる代表的,平均 的性比とした。また,各年次について季節的変化を 観察することは変異がはなはだしいので,これを10 年聞隔(区切り,1900・)1909年(1期),エ910∼191 9年置2期),1920∼1929年(3期),1930∼1939年 (4期)の四期間とし,その間の死亡総計より男女 の比を月別に求め,季節変化の年代酌推移を検討し た。 なお,Pers・nsの連環指数法によって算出した 7) 死亡の季節指数との関係も併せ考察した。 研 究 成 績. 1。年次的変化 伝染病の流行は,歴皮的,地理的に極めて大ぎ、 な差異があり,また疾患の種類によって全く異っ た様相を呈するものである。伝染病の死亡と性と の関係を考察するについて,第一に年次的変化を 選んだのも,社会的,文化的諸事情の進展に伴っ て,男女両性の比率の上にも変化があらわれるで あろうと考えたからである。以下伝染病死亡の男 7 一一

(2)

8 女の割合が,歴史的に如何に変化するかを,都鄙の 区分の明らかな明治39年より昭和13年までの期閤 }ζつV・て,都市と農村とを対比させて検討し差。 1. 腸チフス 第1図及び第1表(年次別数寄ぱ第1表liC L一・括. 掲載した)に明らかな如く,全国の死亡率性比は, 朋治39,40,41年に120台を示し,いちじるしb 男子死亡率の超過が認められる。その後は明治 43年,大正6,11,14,15年を除き110台を昇降し ているが,昭和に入ると同6年の111.5以外は100 台を辿り,男女死亡率の割合は漸次接近して,昭 和9年には100の線を割り,99を示すに至る。

第1図 腸チフ「ス死亡率性比

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年 即ち,女子死亡が男子死亡を凌ぐようになる。 市部は死亡率性比の振幅が極めて大きく,明治 40,41年,大正3,5年の130台,明治42年,大 正7,8,11年の120台と男子死亡率の圧倒的超過が 認められる。.しかしながらその反面・明治43年の 105.8,‘大正6年の106.1,同10年の106.4,14年の 105.3と男女死亡の割合が接近することもある。 このような激しい変動も昭和になると次第に安定 した経過を辿り,110台から100台へと低下し て,男女死亡率の差異が極めて小さくなる。 郡部では男子死亡の超過を示すことに変りはな いが,全圏より下位にあってぽとんど同じ推移を 示す。昭和6年及び8年にわすかに全国より上位 となり,その後短時日であるが三者の推移が一致 して,全国,市部,郡部の順に低くなる。近年いち じるしく都邸の相異が少くなったとはbえ,平均 して都市的地域の男子は,農村的地域の男子より も腸チフス死亡の危険が高V・ことを示している。 さらに最も注目すべき現象として,全国,市 部,郡部ともに死亡率性比が下降傾向にあること 日召和

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が認められる。過去に於ける女子死亡率に対する いちじるしい男子死亡率の超過は,次第に男子死 亡の相対的減少を示し,遂には男女死亡率の逆 転,即ち男子より女子への腸チフス死亡負荷の転 嫁をきたした。この事実は,時代の進歩に伴う環 境諸条件の好転が,男女両性の腸チフス死亡の危 険度を反転させる何等かの要因の存在を意味して いるのではなかろうか。 2.赤 痢 全国に於ける死亡率性比は,明治から大正初期 にかげて2,3の時期を除き男子死亡の超過がう かがわれるが(第2図及第1表参照),大正の中 頃より急激に女子死亡の超過が起り,戦前昭和!3 年まで性比線は90台を昇降して,女子死亡が男予 死亡を凌駕している。 市部に於てば一層女子死亡の負担が大であり, 性比線が100の線を越えて高くなることが一一一度も 2: x,へ。しかも70以下を示す時もあり・女子死亡が 男子死亡に釈して如何に大であるかを物語ってい る。 8 一

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第2図

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赤痢死亡率性比

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・努’一一愛読

明治 大正

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年 農村地域に於ける死亡率性比ぱ,明治,大正時 代は常に全国平均よりも上廻っており,最高は大 正元年の109.9であって100の線を上下しつつあ る。大正9年以後は急速に低くなり女子死亡の割 合が大きくなる。昭和に入ると全国より下位を示 ナようになるとともに,漸く都市的地域の死亡割 合に似た経過を辿り,1都市の性比線とも交わるよ うになって,それまでの郡部,全国,市部の順が ‘乱れてくる。しかしいつれにしても赤痢では全国 銅に女子の犠牲が大きく,就中郡部は最近女子死 亡の相対的割合が大きくなりつつある。 棋は1899年よ「り工934年に至る36年間の赤痢死亡 L,) .

第3図

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次 者の合計は男 50.4%,女49.6駕を示すが,昭和5 年国勢調査による男女性別人臼の割合が男、50.3 %;女49.7%であるから,男女ともに赤痢で死亡 ナる割合は同一であると述べている。しかし本稿 の如く年次的に観察すれぼ明らかに女子に大であ る。 また赤痢死亡率は明治では郡部が市部よIJ)高率 であるが,大正初期より市部が上位となって郡部 はいちじるしく下降しており,死亡率性比に於け る都鄙の関係と正反対である。従って,死亡率の 高い市部は女子の死亡も極めて大きいわけであ る。

ジフテリア死亡率性比

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(4)

10 3。 ジフ.テリア 第3図の如く全国的にみ允ジフテリアの死亡率 性比は大正初期まで110台にある。その後,大正 5年,9年に一時低下して100台になるが,大正 11年にはユ25.7の最高値を示す。以後昭和2,3 年の上昇を除ぎ4.5年まで下降の傾向が認めら れが,再び上昇して昭和13年には115に達する。 全期聞駕通じて凹凸が激しく一一S9の割合を保って いないが,男子死亡の超過が女子死亡に比してい ちじるしいごとは明らかである。 市部に於ける性比線ぱ極めて振幅が大きく100 の線を上下に昇降して最高126.6,最低85.1を示し ている。大正9年,11年,昭和11年には全国,市 部,i郡部の性比が相接してほとんど同率となる が,それ以外は全国よりはるかに低く,即ち男性 死亡の度合が小さくなっている。 郡部では全国より上位の性比を示し,ほぼ同じ 経過を辿る。大正9年及び昭和4,5年以外は常 に110以上にあり,男性死亡が女性死亡を凌駕す ること極めて顕著である。全国に於ける男子死亡 の著明な増高は,農村的地域の影響によるもので あるごとがこれより窺われる0 4.麻 疹 麻疹死亡の性的差異についてぼ久保の発表によ ハ れば,明治32年より昭和13年までの聞僅かに5ヵ 年に於てのみ男子に多く,他は総て女の方が多数 である。即ち麻疹は女に多い疾患であると記して いる。この麻疹死亡の性比を男女入口の差異によ る影響を除いた死亡率性比として,都鄙別に観察 すれば次のことが認められる。 (第4図及第1表参照)

第4図 麻疹死亡率性比

一女子死亡率100対男子死亡率一

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年 全国的にみた死亡率性比は明治39年以来100の 線を越えて上る。1ヲち男子死亡の超過の年は明治 39年と43年の2力年のみで,他の年ぼ常に90台を 示し,最低は96.1であって女子死亡の割合がわす かに高v・。 都市に於ては明治41年及43年に100以上を示す が,この両年は麻疹流行の周期の上よりみると非 流行年に当り,しかも周期性の特に顕著な都市で は冷雨行年に,男女死亡率がいちじるしく低率と なるために起る異例な数値と老える。従ってこの 両年を除けば性比は平均80台にあり,麻疹死亡は 次, 都市の女子に非常に高い割合で犠牲を強要してい ると言えよう。 郡部に於ても性比がユ00以上を示す年ぱ6力年 で,それ以外は依然女子が大である。男子の死亡 超過もその最高が103であり,他の流行病のそれ と比較して高いとは言えない◎しかし郡部の死亡 率性比線は都市的地域よりも高いから,男子死亡 の度合は市部に比して大となる。 5. 百 日 咳』 百日喉が乳児期から一貫して女子に於て死亡率 の高い稀な疾患であることは早くから知られてい

一10一

(5)

11 る。これは休質的原因によるものであると囲えら れてV・るが,このような百日掛と性との関係を理 解する上に,以下の年次的襯察は有力な助けとな り得よう。 第1表及び第5図に示した如く,明治以来戦前 まで全国の死亡率性比が70∼80の間を昇降し,80 以上への上昇は昭和11,12年めわすか2力年であ り,もっとも男子死亡の高い時でも女子、死亡率 100に対し82.4の低率である。死亡率性比が年次 的に著しい変動もなく連続一定した価を示してい る点は,他にその類をみない安定性をもつた伝染 病であると思われる。

第5図 百日咳死亡率性比

一女子死亡率100対男子死亡率一

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(6)

12

第6図

流行性感冒死亡率性比

一女子死亡率100対男子死亡率一

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郡部は全国に似た経過を辿るがそれよりも性比 は高く,100以下,即ち女性死亡が男性死亡を凌 駕ナるのは5力年のみである。近年いちじるしく. 男子死亡の度合が増高し,全国的性比線の上向 は,農村的地域の影響によるものであるごとが認 められる。 ・

藍.撃節的変化

流行病が常に一定せる季節分布を示すことは周 ’知の現象であるが,男女の伝染病による死亡を季 節との関係に於て分析することは,流行季節に於 ける死亡の増高現象が,男女に如何なる度合で犠 牲を強要するかを明らかにでぎる点に大きな意義 を有すると老える。ここで男女両性の比率と季節 との関係を老察するについて,私はさらにこれを 、時代の対比に於ても観察し,文明の進歩が伝染病 死亡性比に季節の上で如何に影響を及ぼしている かを明らかにしたい。 1.揚チフス 第7図(季節別数値は第2表参照。以下同じ) の如く腸チフス死亡の季節変化は4月に最低,9 月に最高を示すことは周知の通りである。これに 対し明32治年から昭16和年までの間に於ける平均 蘭死ど数性比ば2月に最高,7月に最低の値と な1),2カ月のつれをもって最高最低の関係が逆 転している。従って,腸チフス死亡の減少時には 男子死亡の圧倒的超過が認められ,女子死亡100 に対しエ30に達する。しかるに盛夏の候に於てば 女子死亡の相対的増高をきたして,性比は低下し 100以下を示すに至る。しかし死亡の絶頂時9月 半らは再び上向傾向となって男子が女子を凌ぐよ. うになる。かかる季節指数と性比の季節的変化と の関係を,相関係数でみると有意ではないがr・= 一.494と逆相関の傾向が認められる。 このような1年を週期とする死亡二三比の変化 を,歴年的に観察すると近年になるに従V・,性比 の総体的低下の様相が窺われる。即ち,1900∼ 1909年目第1期死亡数性比は,12月に最高,7月 に最低を示すが,100の線を越えて落下すること なく,常に男子死亡が女子死亡を凌駕している。 しかし1910∼1gig年の死亡三障ヒは7,8月にほ ぼ男女死亡の割合が同率となり,第3期,1920年 代では女性死亡の超過が7,8月にあらわれてく る。かくして1930年代になると夏季から初秋にか けて約4ヵ月間女性死亡が男性死亡を凌駕するよ うになる。 これらの成績よりみると,腸チフスの死亡は, その非流行時は男子に犠牲を強要し,流行時でぱ 男子より女子へ死亡負担が転嫁されている。しか もさらに季節を問わす男子は次第に死亡負荷の度 合を減じ,それにかわって女子の犠牲Q.度が漸次 増大しつつあると思われる。

一12一

(7)

第1表

年次別伝染病死亡率性比

女子死亡率100対男子死亡率 年 度 1..腸チフス 全 国 市 部 [一 郡 部 2.赤 痢 全 国 郡 部 市 部 3. ジフテリア 4. 麻 疹 5. 部.全

百 町回 {6.

1 一 .一 一 一 一 凹 N4Pt .一 i m .明 冶39 40 41 42 43 44 45 大 正 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 昭 和..2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 123.5 120.1 123.9 1r1.3 109.5 111.2 113.8 115.6L− 118.9 113.5 115.2 108.0 117.7 116.1 110.2 110.5 105.6r, 113.8 116.2 109.2 113.0 103.9 107.0 107.3 108.7 111.5 109.1 104.41’ 99.3 105.2 102e4 102.7 105.2 123.1 117.6 121.9 110.8 108.3 111.0 113.8」 : 114.6 115.7 112.3 111.9 107.4 114.6 118.0 131.0 130.4 124.9 105.8 115.0 110.7 1142 132.1 115.3 134.7 106.1 123.0 124.5 117.8 106.4 123.2 117.9 117.4 105B 115.9 109.8 114.4 106.1 113,1 103.3 105.8 100.0 100.4 104.7 10 1tg IO2.3 104.7 100.8i 104.41 104,.0 103.9 98.4 98.9 107.3 101.8 106.3 105.5 105.5 101.1 99.2 109.9 97.4 104.1 100.0 99. .8 91.9 98.1 102:9 100.9 97.8 94.7 91.8 93.2 90.9 92.8 92.6 95.7 88.4 88.8 90.s 92.4 91.6 86.4 88.2 9tl.4 85.1 81.7 全 国 洗行田.感冒 114.4 107.7 110.4 100.8 111.0 113.6 108.9 110.2 100.7 103.8 106.4 106.2 112.9 108.9 104.6 96.8 1038 10工e1 101.3 104.0 1 S6[61 i8−glZli gggl

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(8)

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第7図 腸チフス死亡数性比と季節指数

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2.赤 痢 赤痢死亡の季節指数の低V・1月から4月まで は,変異が激しく確定的なことが言えないが,凡 そ次のようなことが認められる。 第8図(死亡の季節指数は振幅が大きV・ので, 性比とともに図に画くことば,性比の変化の明瞭 を欠くごとになるので省いた。)に明らかな如 く,年代の新しくなるにつれて性比線の変動が少 となり,かつ総体的に性比の低下を示している。 1900年代でぱ夏季,6,7,8.月の赤痢流行時に於 て性比が100の線を昇降し,ほぼ男女半ばする度 合が,非流行時では男子死亡のV・ちじるしい女子 死亡超過をきたす。1910年代に入ると4月及び9 月も100以下となって,その期間は永くなり, 1920年代ではさらに一層女子が男子を凌駕するよ うになる。1930年代に於ては1,2,4月のみ男子 の死亡超過が認められるにすぎない。これらの時 代を考慮にV・れない全年度にわたる平均的性比に 一 14

(9)

15

第8図

赤痢死亡数性比

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次 に ついてみると,5∼8月まで90台の性比を示し,そ の後9∼2月まで100以上の性比が認められる。 最高は2月の118.7,最低は8月の92,1である。 季節指数の最高ぱ8月,最:低は2月であるから, 要するに赤痢の死亡は,その流行の最も少い厳冬 の頃では男子の犠牲が多く,春になると女子の死 亡の割合が急増して,盛夏,赤痢の流行時では女 子死亡がはるかに男子死亡を凌いで大となる。そ の上最:近では,流行時,非流行時をとわす女子死 亡の増大がみられるようになった。’

一15一

(10)

16 3. ジフテリア ジフテリアの流行は全国的に冬から春にかけて 流行しs夏はもっとも少いのが定型であ.る。この ・流行の季節分布8.男女の相対的関係とを図につい てみると,他の伝染病とは異る極めて興味深い現 象が認められる。(第9図)。 搾0 160 150

第9図 ジフテリア死亡数性比と季節指数

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一女子死亡数100対男子死亡数一 18『q一・」q41年死亡数牲1比 円OOt・一円oq ’lq lo 一一 lg lg lq20 r一一 1q2q 1930 ・一一」 lg3q

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1月,2月,3月まで119∼118台を持緯してい

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るが,5月になると107.5と低下して最低の値を: 示すようになる。6,7月はやや上向するが・8 ,9月ぱ108台である。換言すれば,流行時に男

一16一

(11)

17 子の死亡が女子をいちじるしく凌駕し,非流行時 には男子死亡の相対的減少がおごる。しかし女子 の死亡が男子を超過するようなことはない。流行 時に女子の死亡の度合が男モより大となり,非流 行時に男予死亡の度合の高くなることが腸チフ ス,赤痢の場合の例であり,さらに後述する麻 疹,百日咳に於てもかかる現象が認められ,相関 関係は常に逆相関の傾向(いすれも有意ではな

第10図

い)を示すが,ジフテリアの死亡数性比は,その 季節指数との間にr=十〇.899,FIo’(0.⑪5)=4.59 Fo>F(0.05)なる有意の順相関である。特に最 ラ 近に於ける性比よりみると,非流行時に性比の低 下をきたし,女子死亡の相対的増高が認められ, しかも100以下に落下する傾向が強くなりつつあ るように思われる0 4.麻 疹

麻疹死亡数性比と季節指数

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(12)

18 吾国に於ける麻疹死亡の季節変化は第10図の如 く5月及び6月を峯とし,9月及び10月を谷とす る曲線を画く。これに対し死亡の性比は11月に 峯を7,8月に谷を画く曲線を示している。それ 故男子死亡の超過,即ち性比が100以上を示す月 は1,2,3月及び10,11月の5ヵ月間で,他の月 は100以下,即ち女子死亡の超過をきたす。従っ て全般的に言えば麻疹の流行時に女子死亡の割合 が大となり,非流行時にはこれが女子から男子へ と転嫁され,男子に死亡の負担が重くなるとhえ るであろう。しかしながら詳細に観察すれば,流 行から非流行時への移行期に性比がもっとも低く なり,反対に非流行時から流行時にかけて性比が 高くなる傾向がうかがわれるのである。かかる現 象を本研究の他の流行病にみられる性比の変化か ら推測すれぼ,性比の月別推移というものは,流 行についての季節分布よりはむしろ季節そのもの の移り変りと直接関係が融るのではなかろうか。 かく老えればジフテリアの例に於ても,本病の揚 合につV・ても,季節指数の変化と閣係すけて考え るよりは理解しやすV・と思うのである0 5.百 日 咳

第11図 百日咳死亡数性比と季節指数

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(13)

19 第11図に示すように本病の季節変化曲線は2月 に低い第1峯,8月に高い第2峯をもつ双峯型を つくっている。即ち夏季にもっとも多く,秋季に もっとも少ない流行病であるが,男女の死亡割合.v は季節的に全く波がなく,75∼80台の常に女子死 亡がはるかに男子のそれを超過する極めて低い性 比を示している。特に採上げれば,1月にその程 度がさらに低く,3月に強いと言えるが,他の流 行病に比較すれば著しい変化とは言えない。従っ て百日咳の男女死亡の相対的関係は,流行の経過 とは無関係に年中一定な割合を保つと老え、られ る。年次的には1900年代の性比が,非流行時にや や高い傾向が認められるが,最近は上述の全年平 均の月別経過とほぼ似た推移を示している。従っ て百日咳の完亡性比は,年次的にも季節的にもぽ とんど変化のない稀な疾患である。 12G .二

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第12図 流行性感冒死亡数性比

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:6,流行性感冒

本病の流行は周知の如く1,2,3月に高く, 7,8,9月に低い季節変化の極めて著明な冬の 疾患である。性比にも季節変化は明らかに認めら れ,(第12図,季節指数は振幅が大91 Viので図に 画くごとは省いた),ユ,2,3月の流行時に於て は101.6,99.6,101.0で男女同率の死亡割合であ るが,3,4,5月の春季では男子の死亡がわすか に増加する。しかるに夏になると女子死亡の相対 的増高に・より性比はに96∼93に低下する。10月に は再び104.4に上昇し,11月には2月と同率に低 ・くなるが,12月にはもっとも高くなる。7,8,9

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10 日 12

月に性比が低下することは,夏に於ける流行の減. 少と相侯って両者の相関にジフテリアと同じく正 の関係(有意とは認められない)がみられる。歴 年的には1900年代の性比が特に夏に低く・’これに 反し1930年代では全体的に上昇して男子死亡が女 子を凌ぎ,7,8月のみ100以下へ落下する。か かる最近に於ける性比の総体的上昇は,他の流行 病にはみられなかった現象である。 総 括 1. 全国的にみた死亡率性比の一般的傾向は, 腸チフス,ジフテリア,流行性感冒に於て男子死 亡が女子死亡を凌駕し,赤痢,麻疹百日咳は女 ’一@19 一

(14)

20

第2表

季節別伝染病死亡数性比

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75.2 79.3 80.8 79.7 79.3 79.7 79.9 78.6 78.0 77.5 76.6 75e6 90.1 89.9. 89.6 90.8 83.5 89.0 84.4 79.4 77.1 87.8 82.4 81e6 76.4 80.3 72.5 73.3 78.1 74.5 80.5 7813 79.3 75.7 76.6 76.7 Iii i・, ギ !’I l,・II llli’ 巳.

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旧年い…6

99.6 101.0 103.8 102.6 101.6 94,5 93.1 96.0 104.4 99.6 109.4 1900N1909 1910N1919 i .lg20Nlg2g 1 101.1 101.2 105.0 103.3 ’ P01.2 96.0 88二4 91.8 91.3 IQ3.7 115.4 102.5 105.8 98B 99.2 99.8 98.3 97.5 98.9 98.9 103.6 103.8 116.9 113.8

107.3 103.4 tOO.8 100.2 101.5・ 100.0 99.2 90.2 96e8 96・8・・ク・3・・8刷i

lg30tvlg3g 1

105.9 108.8 107.4 107.4 115.4 1132 92.6 99.8 104.4 1079 120.1 11L3.7

(15)

21 子死亡が男子死亡を凌いでいる。 2. 年次的にほぼ一定の値を示す疾患は百日咳 及び麻疹で,腸チフス及び赤痢は下降傾向にあ り,近年は男子死亡に対し女子死亡の相対的増高 =が認められる。また流行性感冒は上昇の傾向を有 し,男子死亡の割合が増加レつつある。ジフテリ ’アは全年度にわたって男子死亡が女子死亡を凌駕 しているが,相当に大ぎな変異が認められる。 3.死亡率性比の年次的変化を都鄙の関係から. 考察すると,腸チフスが都市にやや高b傾向のあ るのを除ぎ,他の流行病に於ては都市の死亡率性 銘が,つねに郡部より低率を示し,都市の女子に 死亡の危険の大きいことが認められる。 4.死亡数性比は季節的変化を示し,季節によ 1つて男女の死亡割合に大きな差異がある。腸チフ ス,赤痢,麻疹,流行性感冒は参季に男子の死亡 が多く,夏季には女子の死亡が多㌔へ。ジフテリア 1及び百日咳に於ては前者は常に男子が多く,後者 捻女子に死亡が多V・が,季節的には多少り変化が 認められる。 5. 死亡数性比の季節的変化は,その疾患を問 ・わす夏季に於て,性比が低下する傾向が認められ る。従って,流行の季節変化とは関係なきものと 推察され,概して夏季は女性死亡が増加するので は:ないかと思われる。 6.死亡数性比の季節的変化は年次的に推移 し,特に腸チフス,赤痢,ジフテリアに於ては近 年になるに従い下降傾向を示し,流行性感冒は逆 に上昇傾向が認められる。 摺筆にi当り,御懇篤なる御指導と御校閲を賜った恩 師吉岡博入教授に謹んで感謝の意を表す。 :文 献 1)石田保広:伝染病の性比について,衛生統計,第 5巻,第3号,昭和27年3月,2)棋 弘:赤痢の年 次的変動に関する研究,慶応医学,第19巻,第2号, 昭和14年2月,3)久保秀史=麻疹流行の統計学的研 究,第1編,麻疹の長期的変動,民族衛生,第11巻, 第2,3,号,昭和18年8月,4) 山岸精実=本;邦に 於ける伝染病流行の時系列変化 1.趨勢変化,実験医 学雑誌,第20巻,第10号,昭禾011年10月,5)大久保 正一=流行性感冒の疫学,民族衛生,第16巻第硅号, 昭和24年9月,6)公衆衛生院疫学蔀:流感の疫学 的知識,公衆衛生,1巻,2号,昭和24年3月,7), 森田優三:統計学汎論,日本評論社.昭和23年,8). 増山元三鄭:少数例の纏め方と実験計画の立て方,河 出書房,昭和24年, 一 21 一一

参照

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