氏 名(国籍)
学 位 の 種 類
学 位 記 番 号
学位授与年月
日
学位授与の要件
研究科及び専攻
研究指導を受けた大学
学 位 論 文 題 目
審
査 委 貞
陳
慧
敏(台湾)
博士(獣医)
獣医博甲第283号
平成21年3月13日
学位規則第3条第1項該当
連合獣医学研究科
獣医学専攻
東京農工大学
ConstitutiveIFN-α/β in Tumor Suppression
(がん抑制過程における恒常的に産生されるⅠ型インター
フェロンシグナルの研究)
主査 東京農工大学
副査
帯広畜産大学
副査 岩手大 学
副査 東京農工大学
副査
岐阜大
学
郎
幸
久
実
嗣
利
和
幸
崎
熊
濱
田
尾
岩
猪
首
下
丸
授
授
授
授
授
教
教
教
教
教
論 文 の 内 容 の
要
旨
IFN(Interferon)-α/β はウイルス感染時において感染細胞から発現誘導され,自
然免疫系及び適応免疫系を活性化するなど,多彩な作用を有するサイトカインであり,この
ような免疫賦活化作用に基づいて,感染症や癌の治療などに幅広く応用されている。
IFN-α/βはウイルス感染がない場合においても微量に発現,分泌されることがこれ
までの報告で明らかにされている。この恒常的に発現しているIFN-α/βはIFN-γとIL-6に
よるサイトカイン応答に重要な役割を持つことが示されている。また,ウイルス感染時のIFN-α/β誘導に必須の役割を果たす転写因子IRF7(Interferonregulatoryfact。r7)の発現
レベルを維持することにより,Ⅰ印卜α/βの誘導にも役割を果たしていることが知られている。
このように恒常的なIFN-α/βシグナルはサイトカインに対する応答や抗ウイルス応答にお
いて・重要な役割を果たしている。しかし,抗腫瘍効果における恒常的なIFN-α/βシグナ
ルの役割は明らかにされていない。
本研究では,恒常的なIFN-α/βシグナルの抗腫瘍における役割を明らかにするため
に,IFN-αレセプター1(IFNARl)を欠損させたIFNシグナルを認識しないマウス胚性線維芽細
胞(mouse embryonic fibroblasts;MEF)を長期間培養し,細胞が癌化することを見出して
いる。また,この細胞をヌードマウスに移植すると腫瘍が形成され,活性化型c-Ha-Ras癌遺
伝子を,∫允訂ノナ肥Fに過剰発現させ,ヌードマウスに移植したところ腫瘍形成能力を持つ
ことを発見した。これらの結果から恒常的に産生されるIFNシグナルが細胞の癌化及び腫瘍
形成に大きく関与していることを示唆した。
次に,IFNシグナルに関与する分子の役割が検討され,肋〆 肥Fを用いて長期細胞
培養を行い,IFNARlを欠損した肥F同様に細胞が癌化したことを見出した。一方でこの現象
-198-は,IFNシグナル伝達に必須な分子であるSTATl(signaltransducer and activator of
transcriptionl)及びIRF9を欠損したMEFでは観察されなかった。これらのことから,恒
常的に産生されるIFNシグナルによる癌化抑制は,従来知られていたⅠ型IFNシグナル伝達
経路とは異なったシグナルによって担われていることを示唆した。さらに,恒常的に発現し
ているIFN-α/βがどのような作用で癌化を抑制しているかについて,細胞の増殖,細胞周
期及びアポトーシスの観点から解析を行っている。野生型及びノ允訂ノナ肥Fを用いてチミジ
ンの取り込み量を検討したところ,これらの細胞間で有意差は認められず,細胞増殖率に差
がないことを示した。また,抗生物質性抗癌剤アドリアマイシンの処理による細胞周期の停
止とアポトーシスの誘導について検討したところ,〟施け′肥Fにおいてもこれらは正常で
あったことから,DNA損傷による細胞周期の停止及びアポトーシスの誘導には,IFN-α/βの
寄与は少ないことを明らかにした。
IFN-α/βの抗腫瘍作用における役割について,血アブ和での検討を行っている。発癌
性物質であるDMBA(7,12-dimethylbenzanthracene)の塗布による,皮膚パピローマモデル
を用いて,野生型及びJカ招∫Jナマウスにおける皮膚パピローマ発症率を検討している0その
結果,肋∂rJナマウスでは野生型と比較して,短期間で多数の皮膚パピローマが発症した0
最後に,ヒト胃癌組織を用いて定量的RT-PCRによってIFNARl/2のmRNAの発現レベ
ルを検討した。正常部位と病変部位を比較した結果,57%の検体においてIFNARlの発現量
が減少しており,33%においてIFNAR2の発現量に減弱を認めた0これらの結果から,IFN-α/βシグナルと胃癌との関連性を示唆している。
本研究では恒常的に発現しているIFN-α/βが抗ウイルス応答のみならず・抗腫瘍応
答にも重要であることを明らかにしている。
審 査 結 果 の 要 旨
本論文は今まで知られていなかった恒常的に産生されるインターフェロンα
/βの役割を主に抗腫瘍効果の見地から調べた論文である。
最初に,IFN-αレセプター1(IFNARl)を欠損させたImシグナルを認識し
ないマウス胚性線維芽細胞(mouseembryonicBbroblasts;MEF)を長期間培養す
ると,細胞が癌化し,ヌードマウスに移植すると腫瘍が形成されることを見出し
た。この結果から恒常的に産生されるIFNシグナルが細胞の癌化及び腫瘍形成
に大きく関与していることを示唆した。
次に,Imシグナルに関与する分子の役割について検討している0が姑-/-MEFを用いて長期細胞培養を行ったところ,IFNARlを欠損したMEF同様に細
胞が癌イヒし,この現象は,STATl及びIRF9欠損MEFでは観察されなかった0こ
れらのことから,恒常的に産生されるIFNシグナルによる癌化抑制は,Ⅰ型IFN
シグナル伝達経路とは異なったシグナルによって担われていることを見出した。
さらに,恒常的に発現しているIFN一山βがどのような作用で癌化を抑制している
かについて,細胞の増殖,細胞周期及びアポトーシスの観点から解析を行い,
mA損傷による細胞周期の停止及びアポトーシスの誘導には,IFN一山βの寄与は
少ないことを明らかにした。さらに,Im-α/βの抗腫瘍作用における役割につい
て,DMBA塗布による元yJ閃での検討を行ったところ、脚肝了マウスでは野
-199-生型と比較して,短期間で多数の皮膚パピローマが発症したことを発見した。
最後にヒト胃癌組織を用いて定量的RT-PCRによってIFNARl/2のmRNAの発
現レベルを検討したところ、Im-α/βシグナルと胃癌との関連性を示唆している。
本論文は恒常的に発現しているI和一dβが抗ウイルス応答のみならず,抗
腫瘍応答にも重要であることを明らかにしたものである。
以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究
科の学位論文として十分価値があるものと認めた。
基礎となる学術論文
1)題
目:
AcriticalroleforconstitutivetypeIinterferonsignalinginthe
preventionofcellulartranSformation
著
者
名:
Chen,H.M.,Thnaka,N.,Mitani,Y,Oda,E.,Nozawa,H.,
Chen,J.Z.,Ⅵmai,H.,Negishi,H.,Choi,M.K・,Iwasaki,T,
YimamOtO,H.,Thmiguchi,T.andThkaoka,A.
学術雑誌名:
CanCerScience
巻・号・頁・発行年:発表予定
既発表学術論文
1)題
目
著
者
名
学術雑誌名
Clinicalapplicationofcomputedtomographyforthediagnosis
Offe1inehepaticlipidosis
Nakamura,M.,Chen,H.M.,Momoi,YandIwasaki,T.
TbeJoumalofVttennaryMedicalScience
巻・号・頁・発行年:67(11):1163-1165,2005
2)題
目:RoleofIFNregulatoryfactor5tranSCriptionfactorinantiviral
iⅡ皿umityandtumOrSuPPreSSion
著
者
名:Y瓦nai,H.,Chen,H.M.,huzuka,T.,Kondo,S.,Mak,T.W,
Tbkaoka,A.,Honda,K.and職1iguchiT.
学術雑誌名:ProceedingsoftheNationalAcademyofSciencesoftheUmited
StatesofAmerica
巻・号・頁・発行年:104(9):3402-3407,2007
3)題
目:Acell-tyPe-SPeCi五crequirementforIFNregulatoryfactor5
(IRf5)inFas-inducedapoptosis
著
者
名:Couzinet,A.,Thmura,K.,Chen,H.M.,Nishimura,K.,Ⅵねng,Z.,
lMorishita,Y,Thkeda,K.,Yagita,H.,Ⅵmai,H.,1もniguchi,T.
andThmura,T
学術雑誌名:ProceedingsoftheNationalAcademyofSciencesoftheUnited
StatesofAmerica
巻・号・頁・発行年:105(7):2556-2561,2008