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近接配置2素子小形アンテナの2周波数低結合化手法

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(1)

近接配置

2

素子小形アンテナの

2

周波数低結合化手法

*

佐藤

a)

小柳

芳雄

小川

晃一

††

高橋

応明

†††

A Method of Dual-Frequency Decoupling for Closely Spaced Two Small

Antennas

Hiroshi SATO

†a)

, Yoshio KOYANAGI

, Koichi OGAWA

††

,

and Masaharu TAKAHASHI

†††

あらまし 近年の情報端末では,音楽,映像等の大容量データを安定して通信すべく,通信品質の確保,通信 容量の向上が求められており,対策としてMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術の導入が検討され ている.MIMO では,複数のアンテナが必要になるが,これらを近接配置し,1 箇所に集約できれば,素子配置 に用いる体積減少によるデザイン性向上や,アンテナから無線部へのRF 線路引回し削減による伝搬損低減のメ リットが得られる.しかし,強い素子間結合によるアンテナ効率の減少,高い相関係数によるスループット減少 の懸念がある.本論文では,近接配置したMIMO アンテナの結合除去方法として,所望周波数でのアンテナ素 子のインピーダンスに依存せずに,複数周波数同時に結合を低減する手法を提案した.基礎検討として,2 素子 モノポールアンテナ及び2 素子メアンダアンテナを近接配置したモデルで検討を行い,低結合回路をアンテナ給 電点間に配置することで,所望2 周波数を同時に低結合化可能であることを示した.またこの対策により,アン テナ効率向上,相関係数の低減が得られることを確認した. キーワード MIMO,アンテナ,2 周波数共用低結合回路,アンテナ効率,相関係数

1.

ま え が き

近年の情報端末では,音楽,映像等の大容量デー タを安定して通信すべく,通信容量向上が求められて おり,対策としてMIMO(Input Multiple-Output)技術[1]の導入が検討されている.MIMO技 術を導入した情報端末においては,高スループットの 実現とともに,小形かつ高いデザイン性が同時に要求 される.そこで複数のアンテナを1箇所に近接配置で きれば,素子配置に用いる体積減少によるデザイン性 向上や,アンテナから無線部へのRF線路引回し削減 による伝搬損失低減のメリットが得られる.しかしな パナソニックモバイルコミュニケーションズ株式会社,横浜市

Panasonic Mobile Communications Co., Ltd., 600 Saedo-cho, Tsuzuki-ku, Yokohama-shi, 224–8539 Japan

††富山大学,富山市

Toyama University, 3190 Gofuku, Toyama-shi, 930–8555 Japan

†††千葉大学,千葉市

Chiba University, 1–33 Yayoi-cho, Inage-ku, Chiba-shi, 263–8522 Japan a) E-mail: [email protected] *本論文はアンテナ・伝播研究専門委員会推薦論文である. がらアンテナ素子間結合によるアンテナ効率の減少と, 相関係数の上昇により,スループットの減少が問題と なる[2]. この対策として,アンテナ間GNDにEBGやスリッ トを挿入することで低結合化する方法[3], [4]や,2素 子の逆Fアンテナのショートピン同士を接続するこ とで結合を減少させる方法[5]など,各種結合対策が 提案されている.しかしアンテナ間GNDにEBGや スリットを挿入する方法は,素子間にスペースが必要 であり,近接している素子では挿入が困難であったり GND条件が限定されるなど,小形化に課題がある. 一方,平行近接した2素子のモノポールアンテナ間 を集中定数を介して接続し,低結合化する方法[6], [7] が提案されている.この手法は,小形化に適した低結 合化手法であるが,移相器が必要であるとともにアン テナ素子単体で所望周波数での整合が得られている必 要があるため,1周波数のみで有効な手法である.す なわちこの手法では,実装面積の縮小化,コスト削減 のための移相器の不使用,アンテナ素子のインピーダ ンスに限定されない低結合化実現や,低結合帯域の多 共振化,広帯域化などの課題がある.

(2)

本論文では,近接配置したMIMO用アンテナの結 合除去方法として,移相器を使用せず給電点間に集中 定数で構成する低結合回路を配置する.これにより所 望周波数でのアンテナ素子のインピーダンスに依存せ ずに複数周波数同時に結合を低減する手法を提案する. 本手法では,素子間が強結合である2素子モノポー ルアンテナを近接配置したモデルに対し,インダクタ とキャパシタの並列回路で構成する低結合回路を給電 点間に配置している.このことで,2周波数同時に結 合が低減され,アンテナ効率向上及び相関係数の低減 を実現している. 更に,結合によるアンテナ効率の各種損失要因と各 損失量の分析を行い,更なるアンテナ効率向上方法を 示すとともに,その効果を確認している. 最後に,本手法を,電気的に小形な2素子メアンダ アンテナに対して適用し,2周波数での低結合化が端 末用内蔵アンテナでも適用可能であることを確認して いる.このことは,本結合対策手法が各種のアンテナ 形式にも有効であることを示唆している.

2. 2

素子モノポールアンテナの

2

周波数

での低結合化

2. 1 解析モデル 本論文では,1.5 GHz及び2.5 GHzの2周波数に対 応した2 × 2 MIMO通信を想定している. 図1に示す平行近接した2素子モノポールアンテ ナを,きょう体GND上部中央に配置する.きょう 体GND部は 100 × 50 mm,片面銅で厚さ 0.8 mm のFR-4板で構成し,26 × 1.4 mmのアンテナ2素 子を最近接部分が4.6 mmとなる間隔で平行に配置す る.GND∼アンテナ素子間の2箇所に整合回路を配 置した給電点を設ける.電磁界シミュレータはCST 社MW-studio [8]を使用し解析を行った. 図2にSパラメータのシミュレーション結果及び 実測結果を示す.インダクタ,キャパシタは村田製作 所LQG15,GRM15シリーズを用いた.図2 (a)は 図1の素子2を削除し,素子1と整合回路のみの状 態,図2 (b)は2素子と整合回路のみで低結合対策を 行っていない状態でのSパラメータである.いずれも 2周波数でS11が−10 dB以下であり,整合を確保で きていることが確認できる. 低結合対策を実施していない2素子では,アンテ ナ素子が近接配置しているため,図2 (b)の状態での 結合が1.5 GHzで−1.9 dB,2.5 GHzで−4.4 dBと 図 1 GND板上 2 素子モノポールアンテナ Fig. 1 2-element monopole antenna on the GND

plane. (a) 1素子モノポールアンテナ (b) 2素子モノポールアンテナ(低結合対策なし) 図 2 Sパラメータ Fig. 2 S-parameter. 強い.このため,アンテナ効率は,低結合対策を行っ ていない2素子を1素子と比較すると,1.5 GHzで 6.7 dB,2.5 GHzで5.0 dBの劣化が生じる.アンテナ 効率に関しては 3. 1で詳細に示す.そこで,既に検 討されている単一周波数での低結合化手法[6]を拡張 し,複数周波数同時に低結合化が可能な低結合回路を 導出し,アンテナ効率の改善を図る. 2. 2 単一周波数での低結合化手法 2素子平行近接モノポールアンテナに対し,1周波 数で低結合化を行った文献[6]の,低結合回路の構成

(3)

図 3 低結合回路の構成図 Fig. 3 Decoupling circuit.

図を図3に示す. 振幅α,位相差φで結合しているアンテナ2素子 を観測面1で表す.アンテナ素子後段に位相量 θ を 与える移相器を2箇所に追加し,観測面2で表す.更 に移相器の後段にアンテナ間を接続するサセプタンス jB を配置し,観測面3で表す.ここでは特に,サセ プタンスjBを低結合回路と総称する.最終段2箇所 に整合回路を配置し,観測面4で表す.また簡単化の ため,構造,回路定数は左右対称とし,アンテナ,移 相器は50 Ω整合が得られているとの仮定のもと,低 結合回路jBの導出を行う. 文献[6]では,マイクロストリップ線路で構成される 移相器により,結合の振幅αを変化させずに,所望の 位相量θを得るため,アンテナ素子と移相器を共に特 性インピーダンス50 Ωで設計している.そのため観 測面1で不整合は発生しない.結合による位相量はφ で,移相器1個の位相量はθのため,観測面2での位 相差はφ + 2θとなり,Sパラメータは式(1)となる. [S2] =



S112 S122 S212 S222



=



0 αe−j(φ+2θ) αe−j(φ+2θ) 0



(1) 観測面3での結合は,式(1)と低結合回路jBをそ れぞれY行列に変換し和として表し,式(2)を導出す る.ここでY0 は特性インピーダンスの逆数を表す. Y213 = Y123 = Y0



−2αe−j(φ+2θ) 1−α2e−j2(φ+2θ)



−jB (2) またS12をY行列で表すと式(3)となる. S213 = S123 = −2Y213 Y 0 Y2

0+2Y113 Y0+(Y113 )2−(Y213 )2

(3) 低結合化するには,式(3)をS213 = S123 = 0と すること,つまり分子を0とするためY213 = 0 と なる移相器の位相量 θと低結合回路の定数B を導出 する. 移相器の位相量は θ であるが,式(2)の(φ + 2θ)±π/2となるとき,式(2)の[ ]内は純虚数となり, その虚数を相殺するjBを用いることで式(2)は0と なる.よってS213 = S123 = 0となり結合は除去さ れる.つまり低結合となる移相器θの条件は式(4)と なる. φ + 2θ = ±π/2 ⇒ θ = (±π/2 − φ)/2 (4) 低結合回路の定数 B であるが,式(2)に式(4)を 代入し,低結合となるB の条件は式(5)となる.ま た条件式(5)で導出したB が正の場合はキャパシタ, 負の場合はインダクタを配置する. Y0



−2α × ±j 1 + α2



− jB = 0 ⇒ B = ±2α 1 + α2Y0 (5) 以上の条件で結合を抑制した上で,観測面4では最 終的に整合が得られるよう整合回路を配置する. 2. 3 複数周波数での低結合化手法 本節では,無線システムのマルチバンド化に対応す るため,低結合化手法の帯域拡大を行う. ここでは移相器を複数周波数で任意に調整すること は困難であるとともに,コストと実装面積削減の観点 より,移相器を用いず,素子間に配置するサセプタン スjBのみで低結合化を行う.この場合,低結合化の 条件である式(4)で定める図3の観測面2での結合位 相差φが厳密にπ/2でなくなり,式(2)のY123 の 実部が存在する場合が生じる. この対策として,アンテナ素子のY12の実部がほぼ 0とみなせる帯域を使用することで,移相器を使用せ ずに低結合化が可能となる.またY12の虚部に関して は,所望周波数で同値となるサセプタンスが得られる 低結合回路を導出し,給電点間に配置することで,複 数周波数での低結合化手法とする. 図4に図1のモデルを用いた2素子のみのアドミ タンスY12 を,図5 (a)にSパラメータを示す.アン テナ素子長を調整することで,Y12の共振を所望周波 数1.5 GHzと2.5 GHzの間である1.8 GHz近傍に発 生させ,両所望周波数でY12の実部が0 mSに近い値 である状態を得ることで低結合化を行う.この場合,

(4)

図 4 アドミタンスY12(2 素子のみ) Fig. 4 AdmittanceY12(2-element only).

図5 (a)から素子単体では2 GHzで整合が得られてい るが,1.5 GHz,2.5 GHzでは得られておらず,所望 周波数で50 Ω整合のアンテナを使用する文献[7]の考 え方とは異なるアプローチである. 次に低結合回路の導出を行う.本論文の目的は2周 波数で低結合化が実現できる低結合回路を提案するこ とであるが,まず達成すべき結合量の目標値を明確に する.そのため,最初に1.5 GHz,2.5 GHzの各単一 周波数において低結合特性が得られるインダクタ値, キャパシタ値の導出を行い,それらを用いた場合の低 結合特性を評価した. インダクタLとサセプタンスB,キャパシタCと サセプタンスB の関係は式(6)で表せる.ωは角周 波数である. B = − 1 ωL B = ωC (6) 式(6)をインダクタ及びキャパシタを導出する形に 変形し式(7)となり,単一周波数での低結合回路導出 に用いる. L = − 1 ωB C = B ω (7) 図4より,1.5 GHzのY12虚部は−j 12.10 mSであ り,式(7)よりインダクタ8.8 nHを得た.この理想イ ンダクタを給電点間に配置することで,図5 (b)に示 すS12= −31.3 dBが得られる. 同 様 に2.5 GHz の Y12 虚 部 は +j 7.46 mS で あ り,式 (7)よ り キャパ シ タ0.5 pF を 得 た .こ の 理 想キャパシタを給電点間に配置し,図5 (c)に示す S12= −13.2 dBを得た. 1.5 GHzと2.5 GHzの2周波数対応低結合回路はイ ンダクタとキャパシタの並列回路を給電点間にシリー ズ接続することで実現する. インダクタL,キャパシタC,サセプタンスB の (a) 2素子のみ (b)理想素子 8.8 nH 配置 (c)理想素子 0.5 pF 配置 (d)理想素子 4.1 nH//1.5 pF 村田部品 5.1 nH//1.3 pF 配置 図 5 Sパラメータ Fig. 5 S-parameter. 関係は式(8)で表せる. B = ωC − 1 ωL (8) 所望周波数1と所望周波数2のサセプタンスをB1

(5)

B2,角周波数をω1,ω2 と定義する.この2周波 数でのサセプタンス,角周波数を同時に満たす並列回 路定数インダクタLとキャパシタC は,式(9)とな り2周波数低結合回路導出に用いる. L = 2+ ω1)(ω2− ω1) ω1ω21B2− ω2B1) C = ω2B2− ω1B1 2+ ω1)(ω2− ω1) (9) 式(9)より低結合回路は L = 4.1 nHC = 1.5 pF となる.この理想素子からなる低結合回路を配置した 場合のSパラメータを図5 (d)に示す.S12は1.5 GHz で −32.9 dB,2.5 GHzで−12.4 dBとなり,いずれ も単一周波数と同等性能の低結合化を実現している. 以上より,文献[6]のような移相器を使用せずに,素 子単体として Y12 の実部がほぼ0とみなせる帯域を 所望周波数として選択する.かつ所望周波数でのY12 虚部と同値のサセプタンスが得られる低結合回路を給 電点間に配置することで,複数周波数を同時に低結合 化可能であることを示した.

3. 2

周波対応低結合回路の効果

3. 1 アンテナ効率 理想素子の低結合回路は,4.1 nHと1.5 pFの並列 回路であるが,図5 (d)で表すインダクタ,キャパシ タに村田製作所LQG15,GRM15シリーズを用いた 解析では5.1 nHと1.3 pFにおいて2周波数のS12が 最小となった. 図6には,低結合回路使用,かつ整合回路を介し, 2周波数で整合を得た状態でのSパラメータを示す. また,このときの回路構成を図7に示す.本構成では, 2周波数で整合,結合ともに−10 dB以下の性能が得ら れ,図2 (b)に示す低結合回路なしの場合と比較し,結 合が1.5 GHzで10.6 dB,2.5 GHzで7.1 dB改善した. 図8に,アンテナ効率のシミュレーション結果及び 実測結果を示す.図8では,図2でSパラメータを示 した1素子のみの状態を細い実線で,低結合化対策を 実施していない2素子のみの構成を破線で示す.また, 図7の回路構成に示した2周波数対応低結合回路を使 用して低結合化した場合の効率を太い実線で示す. シミュレーション,実測共に,給電以外のポートは 50 Ω終端としている.図8より,低結合化に伴い,低 結合回路なしの2素子のモデルと比較し1.5 GHzで 4.8 dB,2.5 GHzで3.6 dB効率が改善している.ま た,シミュレーションでも同様な傾向となっており, 2素子モノポールアンテナ(低結合対策あり) 図 6 Sパラメータ Fig. 6 S-parameter. 図 7 回路構成・定数 Fig. 7 Circuit constants.

図 8 アンテナ効率 Fig. 8 Antenna efficiency.

解析結果の妥当性が明らかである. なお,図8では,低結合化しても,1素子のみと比 較して,1.5 GHzで2.0 dB,2.5 GHzで1.4 dB及ば ないため,次節ではこの要因分析と改善策について検 討を行う. 3. 2 アンテナ効率劣化の損失要因検討 低結合化によるアンテナ効率変化の要因分析と低結 合時の更なるアンテナ効率向上対策を行う.そのため,

(6)

図 9 アンテナにおける電力損失の概念図 Fig. 9 Conceptual diagram of power attenuation in

antennas. 図8でアンテナ効率を示した1素子のみ,2素子で低 結合対策なし,2素子で低結合対策ありの3構成に対 し,各種損失電力を電磁界シミュレーションにより導 出し,アンテナ効率への影響を確認した. 図9にアンテナにおける電力損失の概念図を示す. 給電ポートをPort1とし,Port1の有能電力を Pav, アンテナからの放射電力をPr,損失電力の総量をPt とし,アンテナ効率ηを式(10)で定義する[9]. 損失電力の算出方法を式(11)に示す.Pm はイン ピーダンス不整合による損失電力,Pd は結合により Port2の負荷で消費される電力であり,共にSパラ メータより算出する.PΩ は整合回路と低結合回路の 抵抗成分で消費される損失電力であり,全インダクタ, キャパシタ部品ごとに流れる電流値と抵抗成分を等価 回路導出ツール[10]より導出し算出する.Pdie は誘 電体で消費される損失電力であり,全誘電体で電界を 積分し導出する[11].FR-4の媒質定数は1.5 GHzで 比誘電率 εr = 4.4tan δ = 0.00733,2.5 GHzで比 誘電率 εr = 4.4tan δ = 0.01176 とした.Pcon は 導体損により消費される損失電力であり,導体の表 面インピーダンスを算出し,導体全表面の磁界を積 分することで導出する[11].銅の媒質定数は,導電率 σ = 5.8 × 107S/m,透磁率μ = 4π × 10−7H/mで 計算した. η = Pr Pav = Pav− Pt Pav Pt= Pm+ Pd+ PΩ+ Pdie+ Pcon (10)

Pm= |S11|2Pav Pd= |S12|2Pav PΩ= 1 2

R|I|2 Pdie=1 2σ

|E|2 dV = πf tan δ ε0εr

|E|2 dV Pcon=1 2RS

|H|2 dS = 1 2

ωμ

|H|2 dS (11) 表 1 アンテナ効率と各要因での損失 Table 1 Antenna efficiency and loss due to each

factor. (a) 1.5 GHz (b) 2.5 GHz 表1に,片ポートを励振させた場合のアンテナ効率 の実測値,シミュレーションより求めたアンテナ効率 値,シミュレーションを用いて,図9のPort1の有能 電力Pav を1 Wと仮定した場合の各要因による損失 電力を,(a) 1.5 GHz,(b) 2.5 GHzに示す. シミュレーションにより,放射界の全立体角に渡る 積分から求めたアンテナ効率値と,式(10),(11)より 算出したアンテナ効率値の一致を確認している.また アンテナ効率の実測値とシミュレーション値の差分は 微小であることから,実測値における損失要因内訳に 対しても,ほぼ同様の傾向が想定される. いずれのアンテナ構成及び周波数帯においても,S11 が−10 dB以下の整合状態のため,Pmは0.1 W以下 と低く,また整合回路で発生するPΩも0.1 W程度と 低いことが確認できる. 2素子で低結合対策なしでは,アンテナ素子間の強 結合により,Pdが約0.38∼0.64 Wとなり,アンテナ 効率劣化の主因である.一方,2素子で低結合対策あ りは,Pdが0.08 W以下に抑えられているものの,低 結合回路による損失PΩが0.1∼0.18 W程度,誘電体 損Pdie が0.13∼0.16 W程度発生しており,これら二 つの損失が主要な効率劣化要因となっている.そこで 本論文では,アンテナ効率向上のためこれら二つの損 失について考察する. 図10は,低結合回路使用時に基板誘電体FR-4の tan δ を変化させた場合の1.5 GHzと2.5 GHzでの誘

(7)

図 10 tanδ と誘電体損 Pdie Fig. 10 tanδ and dielectric loss Pdie.

(a)低結合対策なし (b)低結合対策あり 図 11 電流分布(1.5 GHz) Fig. 11 Current distribution. (1.5 GHz)

電体損Pdie を示す.また図中のと◆のシンボルは FR-4本来のtan δ でのPΩを示している.本論文で は基板材料としてtan δが約0.01程度の比較的損失が 大きいFR-4を用いた.しかし,tan δ が約0.001程 度のより低損失なフッ素樹脂などの基板材料を用いる ことで,誘電体損の低減が可能であることが図より明 らかである.この検討に基づき以下では,低結合回路 の損失PΩの低減化についてより詳細な考察を加えた. 3. 3 低結合対策時のアンテナ効率改善策 図11に(a) 2素子で低結合対策なしと,(b) 2素子で 低結合対策ありにおいて,それぞれ左ポートに1.5 GHz 正弦波を印加した場合の電流分布を示す.(b)では,低 結合化により右ポートへの電流流入抑圧が確認できる. 一方,低結合回路には大きな電流が流れている.すな わち,特に低結合回路に抵抗分が存在する場合,低結 合回路でのオーム損失が多く発生する.2素子で低結 合対策ありが1素子のみのアンテナ効率に及ばない理 由は,低結合回路のオーム損失が原因である.そこで, 低結合化時の更なるアンテナ効率向上策として,低結 合回路の抵抗値を下げる対策を行う. 表 2 インダクタ・キャパシタの等価回路と電気定数 Table 2 Equivalent circuit and Electric constant.

(a)インダクタ 5.1 nH

(b)キャパシタ 1.3 pF

図 12 インダクタの抵抗値とオーム損失PΩ

Fig. 12 Inductor’s resistance and ohmic lossPΩ.

表2に図8での低結合回路で用いた,インダクタ: 村田製作所製LQG15シリーズ5.1 nH,キャパシタ: 村田製作所製GRM15シリーズ1.3 pFの等価回路, 定数を示す.値は2 GHzのものである. アンテナ効率の改善方法として,低結合回路に用い たインダクタ5.1 nHを,より低抵抗なものに交換す る.図12にインダクタの抵抗値を変化させた場合の 1.5 GHzと2.5 GHzでのインダクタで発生するオー ム損失 PΩ を示す.低抵抗なインダクタの使用によ り,インダクタのオーム損失 PΩ の減少が確認され る.今回,インダクタを村田製作所製LQG15シリー ズから,村田製作所製LQW15シリーズに交換する. 図中の●とのシンボルは両インダクタのオーム損 失PΩを示す.抵抗値が1.09 Ωから0.65 Ωに低減す ることで PΩ も減少し,アンテナ効率は1.5 GHzで 0.3 dB,2.5 GHzで0.2 dB上昇することが確認でき, 低抵抗な低結合回路を採用することのアンテナ効率改 善効果が期待できる.更に図12より2.5 GHzに比べ て1.5 GHzでは抵抗低減の効果が顕著である.例え ば,抵抗値を0.2 Ωに低減することでPΩは0.05 Wと なり,1.5 GHzにおけるアンテナ効率は元のLQG15 シリーズから 0.6 dBの向上が期待できることが分 かった.

(8)

図 13 相 関 係 数 Fig. 13 Correlation coefficient.

3. 4 相 関 係 数 移動環境下では伝搬経路が複雑に変化するので,平 均化の意味で,一様な到来波分布の場合の相関係数で 評価する. アンテナ効率とともにMIMO通信の性能指標とな る相関係数は,アンテナ指向性の類似性を表す指標で あり,一般に全立体角の振幅・位相指向性から算出され る[12]が,Sパラメータからも算出可能である[13]. ρe= |S 11S12+S21∗S22|2 {1−(|S11|2+|S21|2)}{1−(|S22|2+|S12|2)} (12) 低結合回路の有無による相関係数を図13に示す. 図13より低結合回路を付加することで,相関係数 が1.5 GHzで0.24から0.03に,2.5 GHzで0.49か ら0.01に改善し,2周波数において低相関化が確認 できる.これは提案の低結合回路を用いることで,S パラメータは図2 (b)から図6へと整合を得られた状 態で低結合化できる.このため,式(12)でS11,S22, S12,S21 の絶対値が小さいこと,つまり反射かつ結 合が低い状態が得られ,分子に対し分母が大きくなる からである. 2 × 2 MIMO通信を想定した場合,低相関化により 第2固有値が改善し,スループットの向上が見込める. 3. 5 放射指向性 図2 (b)でSパラメータを示した低結合対策なし と,図6の低結合対策ありにおける指向性を,図14 にxy面,図15にyz面を示す.指向性は図1の給電 点1に励振し,図13の相関係数が特に低相関化された 2.5 GHzを示す.モデルは対称構造のため,給電点2 を励振した状態の指向性は,図の左右対称形状となる. 低結合対策により,利得向上が得られるとともに垂 直成分指向性のピークが逆方向を向く,アンテナ間で (a)低結合化対策なし (b)低結合化対策あり 図 14 2.5 GHzxy 面指向性(+5∼−25 dBi)

Fig. 14 Radiation pattern. (xy plane)

(a)低結合化対策なし (b)低結合化対策あり 図 15 2.5 GHzyz 面指向性(+5∼−25 dBi)

Fig. 15 Radiation pattern. (yz plane)

より異なった指向性となり,このことが低結合対策に よる低相関化の要因と考えられる.

4.

低結合化手法の他アンテナ形状への適用

4. 1 2素子メアンダアンテナ 低結合化の効果確認として,図1の2素子モノポー ルアンテナを用いたが,更に本提案の低結合化手法の 適用範囲確認のため,文献[14]の2素子メアンダアン テナへの適用を確認する.このアンテナは電気的に小 形であり,携帯端末への実装上有利である. 図16に ア ン テ ナ 構 成 を 示 す.厚 さ 0.8 mm,幅 50 mm,長さ87 mmの片面銅板FR-4をGNDとし, 幅22 mm,長さ23 mm,素子幅・間隔1 mmのメア ンダ2素子を最近接距離6 mmにて平行かつ対称に配 置する. アンテナ素子単体のSパラメータを図17に,Y12パ ラメータの実測値を図18に示す.本構成では素子単 体で整合が得られ,かつY12 の実部が約0 mS,虚部 が正である670 MHzと,整合は得られていないが,同 じくY12の実部が約0 mS,虚部が負である510 MHz の2周波数で低結合化検討を行う.

(9)

図 16 2素子メアンダアンテナの構成 Fig. 16 2-element meander line antenna.

図 17 Sパラメータ Fig. 17 S parameter. 図 18 Yパラメータ (Y12) Fig. 18 Y parameter. (Y12) 4. 2 2周波数低結合回路,整合回路の設計 図18よ り,ア ン テ ナ 単 体 の Y12 は510 MHz で −0.04 − j 3.31 mS,670 MHzで−3.03 + j 19.52 mS である.低結合回路は,2素子モノポールアンテナ同 様,インダクタとキャパシタの並列回路を給電点間に シリーズ接続することを想定し,式(9)から理想素子 C = 12.4 pFL = 7.2 nHを導出した.更に実測に おいて2周波数でS12 が最小となるよう低結合回路 を選択し,村田製作所GRM15,LQG15シリーズの 12 pFと7.5 nHを配置した. 低 結 合 回 路 後 段 の 両 ポ ー ト に 整 合 回 路 を 配 置 し 図 19 Sパラメータ(低結合回路,整合回路配置) Fig. 19 S parameter with decoupling and matching

circuits. た最終形態の回路構成を図16に,Sパラメータを 図19に示す.これより510 MHzでS11= −10.1 dBS12= −13.2 dB,670 MHzでS11= −10.3 dBS12= −13.3 dBが得られ,低結合,整合を同時に満たすこ とが確認された.また低結合対策を行わず,整合回路 により2周波数でS11,S22ともに−10 dB以下とし 整合を得たものに対し,低結合対策を行った図16の 構成では,アンテナ効率が,510 MHzで−12.2 dBか ら−10.8 dBと1.4 dB上昇,670 MHzで−5.9 dBか ら−4.1 dBと1.8 dB上昇することを確認した. すなわちモノポールアンテナだけでなく,メアンダ アンテナ素子に対しても,低結合回路による2周波数 同時の低結合化が可能であり,提案した低結合化手法 の有効性が確認された.

5.

む す び

本論文では,近接して配置した結合が強いMIMO 用2素子モノポールアンテナに関して,2周波数で動 作する低結合回路の提案を行った. インダクタとキャパシタの並列回路で構成される 2周波数共用低結合回路を給電点間に配置した.これ により,所望2周波数に対して1.5 GHzで10.6 dB, 2.5 GHzで7.1 dB結合が改善され,アンテナ効率が 1.5 GHzで4.8 dB,2.5 GHzで3.6 dB改善されるこ とを確認した.また,相関係数が低下し,1.5 GHzで 0.03,2.5 GHzで0.01の低相関係数を得た. また本低結合化手法を電気的小形な2素子メアンダ アンテナに適用し,2周波数で低結合化可能であるこ とを確認した. 以上より,2周波数共用低結合回路の設計方法とその 妥当性を示した.また低結合回路を用いることで所望 2周波数において,低結合,高アンテナ効率,低相関

(10)

係数を同時に得ることが可能となり,高スループット が得られるMIMO通信用アンテナが実現可能である. 今後の課題として,周波数の更なる多共振化,広帯 域化を図るとともに,伝搬環境における,本低結合手 法を用いたMIMOアンテナの性能評価が必要である. 文 献

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Propag. Lett., vol.8, pp.1430–1433, Jan. 2009. (平成 22 年 12 月 27 日受付,23 年 4 月 14 日再受付) 佐藤 浩 (正員) 平 10 武蔵工大・工・電子通信卒.平 12 同大大学院電気工学専攻修士課程了.現在, パナソニックモバイルコミュニケーション ズ(株)主任技師. 小柳 芳雄 (正員) 平元電通大・電気通信・応用電子卒.同年 松下通信工業(株)入社.以来,ディジタル 携帯電話を中心とした移動無線通信機用小 形アンテナ,端末用 MIMO アンテナ,人 体と電磁波の相互影響の研究に従事.平 15 千葉大大学院博士後期課程了.現在,パナ ソニックモバイルコミュニケーションズ(株)商品開発第一セン ター電気設計第二グループ参事.工博.IEEE 会員. 小川 晃一 (正員) 昭 54 静岡大・工・電気卒.昭 56 同大 大学院修士課程了.同年松下電器産業(株) (現パナソニック(株))入社.以来,研究開 発部門において,マイクロ波・ミリ波機器, 衛星通信無線システム,移動体通信用アン テナ・高周波部品の研究に従事.デンマー ク・オールボー大学客員教授(平 17).千葉大学・非常勤講師 (平 12∼16)及び特任教授(平 15∼平 20).兵庫県立大学・非 常勤講師(平 21).富山大学・工・教授(平 22).工博(東工 大).平 2 オーム技術賞.平 13 テレコムシステム技術賞受賞. 平 19 ISAP2007 Paper Award 受賞.平 21 本会 Best Paper Award受賞.IEEE AP-S Kansai Chapter Chair.IEEE シ ニア会員. 高橋 応明 (正員:シニア会員) 平元東北大・工・電気卒.平 6 東工大大 学院博士課程了.同年武蔵工大・工・電気・ 助手.同年講師を経て,平 12 東京農工大・ 工・電気電子・助教授.平 16 千葉大・フロ ンティアメディカル工学研究開発センター・ 准教授.衛星放送受信用アンテナ,平面ア ンテナ,小型アンテナ,RFID,RLSA,環境電磁工学,人体と 電磁波の相互作用の研究に従事.工博.IEEE シニア会員.

図 3 低結合回路の構成図 Fig. 3 Decoupling circuit.
図 4 アドミタンス Y 12 (2 素子のみ)
図 8 アンテナ効率 Fig. 8 Antenna efficiency.
図 9 アンテナにおける電力損失の概念図 Fig. 9 Conceptual diagram of power attenuation in
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参照

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