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給餌に集まるユリカモメの年齢構成―餌タイプによる比較:人工餌と魚

平田和彦

*

・長谷川美奈子

**

The age structure of Black-headed Gulls attracted to artificial feedings –

a comparison between different food types: artificial food and fish

Kazuhiko H

IRATA*

and Minako H

ASEGAWA**

Abstract: Artificial feedings for Black-headed Gulls Larus ridibundus were observed in order to show

the age of individuals attracted and the possible mechanisms involved. This study was conducted in Kamo River and Kowata Pond in Kyoto during the 2005-2007 winter seasons. In both study areas, a high percentage of juvenile gulls were attracted to artificial feedings of artificial foods. However, adult gulls were attracted to artificial feedings of fish. When gulls captured fish in natural conditions, foraging efficiency of young gulls were lower than that of adults. These results suggest that adults did not have to depend on the artificial feeding of low quality artificial foods such as breads because they were able to forage sufficiently for themselves. In contrast, juveniles were attracted to artificial feeding to make up for shortfalls in their daily diet. It is possible that the winter mortality of the Black-headed Gull population is suppressed due to artificial feeding in wintering areas.

抄録:給餌に集まるユリカモメLarus ridibundusの年齢構成と,そのメカニズムを明らかに するために,2005年度から2007年度の越冬期に,京都市鴨川と宇治市木幡池で行われた給餌 を観察した.両調査地において,パンなどの人工餌の給餌に集まった群では,非給餌群や比 較群よりも幼鳥の割合が高かった.一方,鴨川での魚の給餌に集まった群では,幼鳥の割合 に比較群との有意な差がなかった.また,天然の食物である川魚の採食効率は,若齢個体は 成鳥よりも低い傾向にあった.以上の結果から,成鳥のように自力で天然の食物を十分に採 食できる個体は,パンなどの質の悪い人工餌の給餌に集まる必要がないことが示唆された. 一方,幼鳥などの天然の食物の採食効率が低い個体は,不足する採食量を給餌により補って いることが示唆された.越冬地での給餌により,ユリカモメ個体群の越冬期の死亡率が抑え られる可能性がある.

Key Words: artificial feeding; foraging strategy; Kamo River; Larus ridibundus; wintering season.

カモメ類は学習による経験の蓄積に伴って採食能力が向上し,成鳥は幼鳥よりも魚類や昆虫類な どの天然の食物の採食能力が高い(e.g. Harris, 1964; Buckley and Buckley, 1974; Greig et al., 1983; Nur, 1984).また,セグロカモメLarus argentatus(Monaghan, 1980; Greig et al., 1985)やユリカモメ L. ridibundus(Kallander and Rosenkvist 2000)などで知られているように,幼鳥が攻撃性や採食能力が より高い成鳥との競争を避けるため,齢によって索餌域や採食物,採食行動が異なる例は多い.

カモメ類は天然の食物のほか,人間が排出した残飯や漁港の投棄魚などのゴミ類(Horton et al.

大阪市立自然史博物館業績第431号(2012年2月25日受理) *北海道大学大学院水産科学院 〒041-8611 函館市港町3-1-1

Graduate School of Fisheries Sciences, Hokkaido University,3-1-1 Minato-cho, Hakodate 041-8611, Japan E-mail: [email protected]

**日本野鳥の会京都 〒616-8211 京都市右京区常磐御池町21-4

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1983,中村・中村 1995),そして給餌にもよく集まる(Andersson et al., 1981; 須川, 1985).給餌はし ばしば対象動物の死亡率や生存率を変化させ,個体群動態に影響を与えうる.例えば,カモ類やツ ル類などの個体数減少の抑制(山本ほか , 1999; BirdLife International, 2000)や個体数の回復(日本野 鳥の会ツル保護特別委員会事務局,1986; Osako, 1987, Masatomi, 1991)において一定の効果が認め られており,希少種の保護や保全の手段として利用されている.近年,クロワカモメ L. delawarensis (Brousseau et al., 1996)やセグロカモメ (Hebert et al., 2002)などの多くのカモメ類において,個体数

増加や繁殖成績向上に関する報告があるが,その重要な要因として給餌などに基づく安定的な人工 餌資源の存在が挙げられている(Horton et al., 1983; 須川 , 1984, 1985).一方で,ゴミ捨て場や給餌 場には自然状態に比べて多くの個体が密集するため,糞や食べこぼしの摂食や鳥体への付着,鳥体 どうしの接触などにより感染症が蔓延しやすいことが,サルモネラやコクシジウム,マイコプラズ マ,カンピロバクターなどの様々な病原菌,鳴禽類や渉禽類などの様々な鳥類種で指摘されている (e.g. Kapperud and Rosef, 1983; Carpenter et al., 1984; Dhondt et al., 1998; Hochachka and Dhondt, 2000).

また,給餌で与えられる餌は多くの場合,パンやスナック菓子,残飯などの人工餌に限られるが, 特定の餌に依存すると栄養が偏り,それに伴うボディコンディションの個体差が生じる可能性があ る(Auman et al., 2008; Grémillet et al., 2008).

もし給餌における採餌効率が年齢によって異なったり,給餌に特定の年齢群がよく集まったりす ると,給餌を受けやすい年齢群の生存率や死亡率が変化することにより,対象となる個体群の年齢 構成,場合によっては個体群動態にも影響が及ぶ可能性がある.ユリカモメ (Vande Weghe, 1971; Kallander and Rosenkvist, 2000)やオオセグロカモメL. schistisagus,ウミネコL. crassirostris(綿貫, 1987)において,調査者や観光客によるパンやスナック菓子,漁師による投棄魚などの給餌におけ る採餌効率に年齢差が認められている.しかし,カモメ類において給餌に集まる個体の年齢構成に 関する知見は乏しい. 本研究では,ユリカモメを対象とした給餌について,集まった個体の年齢に注目して観察を行っ た.まず,給餌に集まる個体の年齢構成を明らかにするため,群を構成する個体に占める幼鳥の割 合(以下,幼鳥率)を,給餌に集まった群と調査域内で休息していた群とで比較した.また,給餌 で与えられる餌によって,年齢ごとに及ぼす誘引効果が異なる可能性を検証するため,人工餌の給 餌と天然の食物でもある魚類の給餌とで集まった群の幼鳥率を比較した.さらに,給餌が個体群動 態に及ぼす影響について考察した.本論文では,給餌において人が与えた食べ物を「餌」とし,そ れを食べる場合に「採餌」,給餌を受けていないときに食べた物を「食物」とし,それを食べる場 合に「採食」とした. 方  法 1.調査対象種 ユリカモメはユーラシア大陸の中緯度地方と周辺の島々で繁殖し,ユーラシア大陸の低緯度地方 からアフリカ大陸北部におよぶ広範囲で越冬する,体長約40cm の小型のカモメ類である(Harrison 1985).日本には北海道に主に旅鳥として(藤巻, 2010),本州以南に主に冬鳥として沿岸部や内陸 部の河川,湖沼にごく普通に飛来する(中村・中村 , 1995; 高野 , 2007).主に巣立ち後第1回目(幼 鳥時)の越冬期に定着した越冬地と,巣立った繁殖地とを翌年以降も往復するという渡りのパター ンをとる(須川 , 1984).水生昆虫やミミズ,魚類などの動物質を主な食物とするほか,果実などの 植物質やパンなどの人工餌も食べる(須川 , 1985; 中村・中村 , 1995).

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2.調査地 ねぐらである京都府宇治市の木幡池南池と,日中の行動圏である京都市の鴨川とを調査地とした. 木幡池は鴨川の四条大橋から南微東約9km に位置する(Fig. 1).日中を鴨川で過ごすユリカモメは 琵琶湖を主なねぐらとして利用しているが(須川 , 1984, 1985),標識個体の確認記録から,少なく とも一部の個体は木幡池をねぐらとすることがわかっている(平田和彦 , 個人観察). 木幡池は京都府宇治市における市下最大の池である.木幡池は実際には池ではなく,宇治川の支 流である堂の川に遊水機能を持たせた河川の一部である.北池,中池,南池の3区画に分かれてお り,南池では2001年からユリカモメのねぐらが確認されている(平田 , 2007).木幡池南池(34° 55’ 33’’ N,135° 47’ 34’’ E)(以下,木幡池)は開水面積が約5a,就塒個体数が平均約200羽である点で, 国内における他の既知のねぐらに比べてきわめて小規模である(平田 , 2007).そのため,ねぐら全 体を観察することが可能である.木幡池にはアヒル Anas platyrhynchos domestica が数羽放されてお り,そのアヒルに対して毎夕17時から18時までの間に近隣住民による給餌が行われていた.すべて の調査日において,その日就塒したすべてのユリ カモメが16時30分には木幡池に到着していた.す なわち,就塒個体がすべてそろった状況で給餌が 行われた. 京都市内を南北に流れる鴨川は,1974年1月から 近畿地方におけるユリカモメの代表的な越冬地と なっている(須川 , 1985, 1991).鴨川で越冬するユ リカモメは,標識調査によりカムチャツカ半島で 繁殖する個体群であることが知られている(須川 , 1984, 2005).鴨川では近隣住民,会社員,観光客 などの多くの通行人により,ユリカモメへのパン などの給餌がレクリエーションとして盛んに行わ れている(須川 , 1985, 1987, 1991).本研究では, 鴨川の中でも特にユリカモメの越冬個体数が多い 賀茂大橋(35° 01’ 23’’ N,135° 46’ 50’’ E)から四 条大橋(35° 00’ 14’’ N,135° 46’ 18’’ E)までの約 2.8kmの流域(以下,鴨川)を調査区域とした. 3.人工餌の給餌への誘引効果 両調査地において,給餌に集まったユリカモメ(以下,人工餌給餌群)の個体数を成鳥(以下, 特に断りがない限り第2回冬羽を含む)と幼鳥とを区別して数え,幼鳥率を求めた.木幡池では夕 方のアヒルへの給餌に集まる個体数を数えた.鴨川では調査区域内の河川敷を日中の任意の時間に 任意の場所を歩き回り,人工餌給餌群を見つけ次第,逐次個体数を数えた.そのため,給餌の行わ れた時間や距離の間隔は,本研究では考慮されていない.ただし,給餌者の周辺に飛翔する個体が いる間,すなわち,すべての個体が給餌者から離れたり,落ち着いて周辺に着地したりする前に数 えた.給餌で与えられた餌は,鴨川ではパンやスナック菓子類,残飯など,木幡池ではパンやうど ん,雑穀類の粉末など,いずれも人工餌であった. 非給餌群として,木幡池ではそこで就塒するすべての個体数を数え,そこから人工餌給餌群の個 体数を引いた個体数を求めた.鴨川では給餌に集まらない個体を数えることができなかったので,

Fig. 1. Study area. Kamo River and Kowata Pond are

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それに代わるデータとして,2006年度は調査域の一部である賀茂大橋と丸太町橋(35° 00’ 59’’ N, 135° 45’ 42’’ E)との間の約1.3kmの流域にいたすべての個体数を,2007年度は賀茂大橋と四条大橋 との間にいたユリカモメの群を無作為に抽出して個体数を数え,これを比較群とした.なお,2007 年度の比較群は,ある区間の全数を数えたわけではなく,任意に気に留めたユリカモメを成鳥か幼 鳥かを区別して数えたものである.また,その抽出に際しては,周辺の流域や前後の時間帯におけ る給餌の有無は考慮していない. 木幡池における調査は,2005年度は2005年12月30日から2006年1月7日までの計7日,2006年度は 2006年12月29日から2007年 1月7日までの計7日の夕方に行った.鴨川における調査は,人工餌給餌 群については,2006年度は2006年12月27日から2007年 1月3日までの計5日,2007年度は2007年12月 25日から2008年1月11日までの計9日の日中に行った.比較群については,2006年度は2007年1月4日 から同15日の計11日,2007年度は2007年12月25日から2008年1月11日の計3日に行った.なお,12月 から1月は鴨川におけるユリカモメの幼鳥率が安定している時期である(和田 , 1993). 4.イカナゴの給餌実験 ユリカモメはイカナゴ Ammodytes personatus の仔稚魚をよく食べる(須川 , 1984).鴨川でユリカ モメの群れを見つけ次第,逐次イカナゴを餌とした給餌実験を行った.なお,実験の時間や距離の 間隔はランダムであったが,周辺で別の給餌が行われていた場合には実験を行わなかった.1回の 給餌実験につき,片手で一掴みしたイカナゴを3∼5回ほど投げて与えた.イカナゴは冷凍保存され た体長約10∼20cm の成魚を解凍して用いた.この試行を行った後,人工餌給餌群の調査と同様に, イカナゴの給餌実験に集まったユリカモメ(以下,魚給餌群)の個体数を成鳥と幼鳥とを区別して 数え,幼鳥率を求めた.この調査は,2007年12月28日から2008年1月11日までの計6日の日中に行っ た. 5.天然餌の採食効率 橋の下には日陰ができる.また,河川流路内に橋桁が立っている場合は,その周辺における水流 の逆流や腕流により流れが緩やかな箇所が形成される(水野・御勢 , 1993; 後藤 晃 , 私信).このよ うな環境を好む魚類は橋の下によく群れることが知られている(片野 , 1999; 後藤 晃 , 私信).鴨川 の調査区域の南端にあたる四条大橋では,カワムツ Zacco temminckii やオイカワ Z. platypus,タモロ コ Gnathopogon elongatus elongatus などのユリカモメの食物となる川魚が高い密度で群れ,それらの 天然の食物を採食するユリカモメがよく観察される(平田和彦 , 個人観察).ユリカモメは多様な方 法で採食するが(たとえば,桑原ほか , 1988; 中村・中村 , 1995; 高木 , 2000),高木(2000)の採食 行動パターンの区分に従うと,ホバリングして狙いをつけ,水中に飛び込んで主に魚類を捕る「飛 翔飛び込み Hovering and plunge」と,水面から1,2度羽ばたいて飛び上がり,頭から飛び込んで少 し先にいる魚類を捕る「水面飛びつき Jump and plunge」,もしくはそれらを組み合わせて繰り返す ような採食方法をとる個体が四条大橋周辺では多い(平田和彦 , 個人観察).そこで,四条大橋で採 食中の個体を無作為に抽出して1分間追跡し,「飛翔飛び込み」や「水面飛びつき」で水中に飛び込 んで採食を試みた回数(以下,飛び込み回数)と,そのうち採食に成功した回数(以下,採食成功 回数)を調べた.その際,可能な限り同一個体を2度以上観察することがないよう努めた.観察個体 の齢は幼鳥,第2回冬羽,成鳥(第2回冬羽を除く)の3段階で区別した.なお,第2回冬羽の判断基 準は氏原・氏原(2000)に従った.この調査は,2007年12月25日から2008年1月11日までの計9日の 日中に行った.

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6.統計解析 木幡池ではすべての個体について給餌に参加したか否かを把握できているので,人工餌給餌群と 非給餌群のそれぞれにおける成鳥と幼鳥の個体数を,調査日ごとに Fisher の正確確率検定で比較し た.また,越冬期を通しての傾向を検討するために,年度ごとに各調査日のデータをプールして, Wilcoxon検定を行った.鴨川では給餌に参加した個体としていない個体とを区別できていないの で,同じ調査日に記録されたデータを群ごとにプールして,それぞれの群における幼鳥率を Mann-WhitneyのU検定で比較した.すべての統計解析には,R language software(2. 14. 1,R development core team)を用いた. 結  果 1.木幡池における人工餌給餌群の幼鳥率 2005年度は126∼317羽,2006年度は53∼220羽のユリカモメが木幡池をねぐらとした.このうち 給餌には,2005年度は17∼37羽,2006年度は19∼80羽が集まった.2005年度は7調査日のうち6調査 日において(Fig. 2a),2006年度は7調査日のうち5調査日において(Fig. 2b),調査日ごとの人工餌 給餌群の幼鳥率(2005年度は33.3∼88.2%,2006年度は19.6∼41.8%)は非給餌群(2005年度は3.7∼ 21.3%,2006年度は1.5∼13.1%)より有意に高かった. また,年度ごとにすべての調査日のデータを プールして行った wilcoxon 検定でも,2005年度, 2006年度ともに人工餌給餌群の幼鳥率は非給餌群 より有意に高かった(2005年度,2006年度ともに P<0.001). 2.鴨川における人工餌給餌群の幼鳥率 2006年度は36回,2007年度は35回人工餌給餌 群を観察した.それぞれの給餌には2006年度は9 ∼114羽,2007年度は12∼132羽のユリカモメが集 まった.比較群は1日当たり2006年度は85∼384羽, 2007年度は164∼788羽を数えた.2007年度は調査 日数が少ないため算出しなかったが,2006年度の 11日間に記録された比較群の平均幼鳥率とその標 準偏差は,6.19%±2.66%であった.2006年度は各 調査日に観察されたすべての人工餌給餌群におけ る平均幼鳥率(10.1∼23.0%)は,比較群の幼鳥 率(2.1∼13.0%)より有意に高かった(P<0.001; Mann-WhiteneyのU検定)(Fig. 3a).2007年度に おいても,各調査日に観察されたすべての人工 餌給餌群における平均幼鳥率は(12.7∼27.7%), 比較群のそれ(7.1∼11.6%)より有意に高かった (P<0.01;Kruscal-Wallis 検定の結果(P<0.005)を 踏まえた多重比較)(Fig. 3b).

Fig. 2. The percentage of juvenile Black-headed Gulls

attracted to artificial feedings in Kowata Pond during the winter seasons of a) 2005 and b) 2006. Each point represents the value per day. The points which were recorded on the same day are connected. Solid, fine broken, and coarse broken lines show significant (P < 0.01), significant (P < 0.05), and non-significant differences, respectively.

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3.魚給餌群の幼鳥率 イカナゴの給餌は,のべ28群に対して行った.そ れぞれの給餌には3∼107羽のユリカモメが集まっ た.各調査日に観察されたすべての魚給餌群の幼 鳥率(7.0∼26.4%)は,同年度の比較群のそれ(7.1 ∼11.6%)と有意な差がなかった(n. s.;Kruscal-Wallis検定の結果(P<0.005)を踏まえた多重比較) (Fig. 3b). 4.天然餌の採食効率 成鳥(第2回冬羽を除く)26羽,第2回冬羽2羽, 幼鳥6羽の採食行動を観察した.飛び込み回数は成 鳥が1∼13回,第2回冬羽が3回と7回,幼鳥が1∼4 回であった(Table 1).採食成功回数は成鳥が0∼ 2回で,第2回冬羽と幼鳥は一度も採食に成功しな かった(Table 1).幼鳥の採食効率と,第2回冬羽 と成鳥とをプールしたそれとを比較した結果,有 意な差はなかった(P=0.177; Fisher の正確確率検 定).幼鳥と第2回冬羽とをプールした採食効率と, 成鳥のそれとを比較した結果,成鳥の採食効率が 高い傾向があった(P=0.065; Fisher の正確確率検 定). 論  議 本研究では,給餌が行われた時間や場所,それらの間隔,給餌量などの条件が統一されておらず, 調査日数や観察群数も十分とは言えない.また,特に鴨川では,給餌方法や個体数を数える対象と する群の抽出方法もいささか非体系的であった.しかし,給餌を受け得るすべてのユリカモメの個 体数が把握され,給餌に集まった個体と集まらなかった個体とを明確に区別できた木幡池での結果 は信頼できるものであり,鴨川でも木幡池と同様の傾向が見られたことは,偶然ではないだろう. また,2006年度の鴨川における比較群の幼鳥率は,低い水準で大きなばらつきを伴わずに推移して おり,これは和田(1993)を支持する傾向であった.人工餌給餌群の幼鳥率は,このばらつきの程 度からは説明できない高さであることからも,人工餌給餌群で幼鳥率が高かったという結果には, 何らかの意味があると考えられる.したがって,本研究は給餌に集まる個体の大まかな年齢構成や, そのメカニズムを捉えることができたと言えるだろう. 同一の餌をめぐる競争は,幼鳥に比べて攻撃性の高い成鳥のほうが有利であり(Monaghan, 1980; Greig et al., 1985),ユリカモメに対する給餌においても成鳥は幼鳥より高い採餌効率を示す(Vande Weghe, 1971; Kallander and Rosenkvist, 2000).さらに,給餌を受ける群中の成鳥の割合が高まるにつ れ,幼鳥の採餌効率が低まるという Kallander and Rosenkvist(2000)の報告は,成鳥は優先的に給餌 を受けられることを示唆している.それにもかかわらず,ねぐらと日中の行動圏の両方において, 人工餌の給餌には幼鳥がよく集まった.一方,魚の給餌には成鳥もよく集まった.

Fig. 3. The percentage of juvenile Black-headed Gulls

attracted to artificial feedings in Kamo River during the winter seasons of a) 2006 and b) 2007. Each point represents the mean value per day. The data were analyzed statistically using a Mann-Whitney U-test. *Some “Unfed” individuals may have eaten small amounts of artificial food.

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本研究で観察された主な給餌物であるパンの湿重量当たりエネルギー価(10.66kJ/g; 科学技術庁資 源調査会 , 2005)はイカナゴ(8.88kJ/g; Niizuma and Yamamura, 2004)の約1.23倍であるが,1g 当た りのパンの体積(約5.81cm3/g; 平田による測定)はイカナゴ(約0.94cm3/g; 平田による測定)の約 6.18倍である.そのため,同じエネルギー量の餌を呑み込むには,パンの方がイカナゴより効率が 悪いのかもしれない.また,1g 当たりのタンパク質重量もイカナゴ(0.18g,Niizuma and Yamamura 2004)はパン(0.09g,科学技術庁資源調査会 2005)の約2倍である.魚類などの天然の食物を採食 する場合,幼鳥は成鳥よりもついばみ当たりの餌獲得頻度などの採食効率が低いことが,セグロカ モメ (Davis, 1975; Greig et al., 1983)やワライカモメ L. atricilla(Burger and Gochfeld, 1983)などのカ モメ類で報告されている.本研究でも若齢である幼鳥や第2回冬羽に比べて成鳥の採食効率が高い傾 向にあった.なお,本研究で採食効率に年齢間で有意な差が認められなかったのは,観察例数が少 ないためだと思われる.成鳥はわざわざ質の悪い人工餌を得るために,感染症などのリスクを負っ てまで給餌に集まる必要がないのだろう.一方,幼鳥は自力では天然の食物を十分に得られないの で,パンなどの人工餌を給餌から得ることでエネルギーや栄養を補っていると考えられる. しかしながら,エネルギー価や栄養価のバランスだけでは評価できない餌の質や給餌者に対する 警戒心の程度など,幼鳥が給餌によく集まったことには互いに排他的ではない様々な要因が関係し ているかもしれない.例えばウミネコでは,観光客によるスナック菓子の給餌において,幼鳥は成 鳥より警戒心が弱く,給餌者までの距離が近かった(綿貫 1987). 越冬期ではないが,繁殖期前の食物の質が繁殖成績を決めるために重要であることが,ニシセグ ロカモメ L. fuscus(Bolton et al., 1993)やアメリカウミスズメ Ptychoramphus aleuticus(Sorensen et al., 2009),ウトウCerorhinca monocerata(Sorensen et al., 2010; 鈴木優也, 未発表)などの海鳥類で知ら れている.栄養学的な餌の質や給餌量の多寡は,給餌によく依存する個体にとって生存に大きく影 響すると思われるが,鴨川で越冬するユリカモメの巣立ち後第1回目の越冬期以降の死亡率は約15% 以下と低いことが,パンの給餌に集まったところを捕獲された標識個体を用いたジョリー法により 推定されている(須川 , 1984).日本のユリカモメは標識個体の記録から,野生条件下で20年以上生 存する個体が確認されている(須川 恒 , 私信).他の海鳥類と同様に(Schreiber and Burger, 2002; ギ ル , 2009; 綿貫 , 2010)長命なユリカモメにとって,これから繁殖に参加する年齢群である幼鳥を含 む被給餌個体の死亡率が低いことは,その後の中長期的な繁殖個体数,ひいては個体群サイズの増 加につながるだろう.1970年代に確認されたユリカモメの個体数急増に,都市部での給餌が寄与し ていた可能性(須川 , 1984, 1985, 2005)は十分に考えられる. これらから,現行の給餌はそれによく依存する個体に対して,少なくとも死亡率を高めるなどの 大きな悪影響を及ぼしてはいないと考えられる.1980年代後半より鴨川での越冬個体数は減少傾向 にあるが,この原因も給餌の影響による可能性は示されていない(須川 , 1985, 2005).しかし,栄 養学的な餌の質や給餌量によっては栄養障害や感染症の蔓延などを引き起こす可能性は常に潜在す る.特に若齢個体は免疫力が低いため感染症にかかりやすく,重篤な症状に発展しやすいこと,大 量死のリスクが高いことが知られている(Carpenter et al., 1984; Friend and Franson, 1999; Altizer et al.,

Table 1. The numbers of natural fish foraging success and failure of      Black-headed Gulls in three age classes.

  juvenile 2nd winter adult

  (n=6) (n=2) (n=26)

No. of success 0 0 14

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2004).もし給餌に高密度で集中した幼鳥が感染すれば,甚大な悪影響をもたらす可能性がある. 謝 辞 2006年度は京都大学野生動物研究会(当時)の奥村啓史,岸岡智也,中島健一の各氏に,2007年 度は岐阜大学農学部(当時)の辻 愛子氏に,それぞれ調査の一部をお手伝いいただきました.阿 寒国際ツルセンターの渡辺ユキ研究員には,感染症に関する知見をご教示いただき,文献収集にお いても労をいただきました. 北海道大学大学院水産科学研究院の綿貫 豊准教授には,調査および 草稿に際して有益なご助言をいただき,文献収集においても労をいただきました.同じく後藤 晃 教授(現北海道教育大学函館校特任教授)には,河川性魚類の生態に関する知見をご教示いただき ました.同志社高等学校理科(当時)の故玉村弘之教諭には,実験に用いたイカナゴの冷凍保管場 所をお貸しいただきました.龍谷大学深草学舎の須川 恒講師には,文献収集において労をいただ きました.大阪市立自然史博物館の和田 岳学芸員には,原稿に対して有益なご指摘をいただきま した.オタゴ大学動物学部の Rachel T. Buxton 氏には,英文校閲においてお世話になりました.以上 の方々のご厚意に,心よりの謝意を表します. 引用文献

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Fig. 2. The percentage of juvenile Black-headed Gulls
Fig. 3. The percentage of juvenile Black-headed Gulls
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