スポーツにおける個人・社会志向性と競技者アイデンティティーの関連を
基軸としたスポーツ・コミットメントモデルの検討
†萩 原 悟 一
*磯 貝 浩 久
**Examining the Sports Commitment Model Based on Relationships
between the Sport Individual, Social Orientation,
and Athletic Identity
†Goichi HAGIWARA
*and Hirohisa ISOGAI
** AbstractThe purpose of this study was to examine the formation model of sports commitment that influences sports participation and persistency by investigating the dynamics of relationships between the sports individual and social orientations, athletic identity, and sports commitment. The participants were 803 student athletes (487 collegiate athletes and 316 high school student athletes) and they completed questionnaires (Sports Individual and Social Orientation Scale, Athletic Identity Measurement Scale, Sport Commitment Scale). In the results of Structural Equation Model (SEM), the hypothesized model demonstrated goodness of fit and validity of the original formation model of sports commitment. In addition, the results indicated that there was significant relationship only between sport social orientation, athletic identity, and sports commitment. In other words, social orientation formatted identity as an athlete, and athletic identity affected sports commitment. Therefore, this study concluded that it might be important to foster student athletes’ sports social orientation (for example by gaining the trust of coaches and teammates) by their coach or manager for competitive sports participation and persistency.
Key words:Sports Commitment, Athletic Identity, Sports Individual and Social Orientations,
Students Athletes 1.緒 言 わが国では週1回以上,運動もしくは,ス ポーツを実施している人々の数は増加傾向にあ るが,競技スポーツへの参加人口は減少傾向に あることが指摘されている1).青年期の競技ス ポーツ活動の経験が,生涯スポーツの実施・継 続を促進する可能性が示されている2)3)ことか ら,将来的な運動・スポーツ実施率の維持及び 増加には,青年期における競技スポーツ実施・ 継続に関する検討が必要であろう. スポーツ行動へ影響を与えている要因の一つ †原稿受付 2013年9月5日 原稿受諾 2014年1月16日 *九州工業大学大学院生命体工学研究科 〒808-0196 福岡県北九州市若松区ひびきの2-4 **九州工業大学情報工学研究院 〒820-8502 福岡県飯塚市川津680-4
*Graduate School of Life Science and Systems Engineering, Kyushu Institute of Technology, 2-4, Hibikino, Wakamatsu-ku,
Kitakyushu, Fukuoka, Japan (808-0196)
**Faculty of Computer Science and Engineering, Kyushu Institute of Technology, 680-4, Kawazu, Iizuka, Fukuoka,
ンティティーを形成する要因について検討する 必要性が指摘されている13).青年期のアイデン ティティー形成プロセスは,多様な視点から検 討する必要性が示されており14),他者との関係 性などの社会的要因15)や個人の感情や志向性な どの個人内の心理的要因16)等の視点から検討す る必要があるといえる.また,青年期のスポー ツ競技者は,他の青年期の者たちと生活世界が 異なっていることから,彼ら特有のアイデン ティティー形成を検討する必要性が指摘され ている17).以上のことを踏まえ,萩原・磯貝13) は,社会的要因の一つであるソーシャルサポー トの認知に着目し,競技者アイデンティティー 形成との関連を検討した結果,他者からのソー シャルサポートが競技者としてのアイデンティ ティーを高めていることを明らかにしている. すなわち,スポーツ場面における他者との関係 性などの社会的要因がアイデンティティー形成 に影響している可能性を示している. 一方,スポーツ競技者の個人内の心理的要因 に着目した競技者アイデンティティー形成の検 討も進められている.近年,スポーツにおける 特定の目標を達成しようとする個人の傾向であ る目標志向性と競技者アイデンティティー形成 の関連が指摘されている18)-21).目標志向性理 論とは,人々がスポーツや学習をする場面では 様々な事由やその達成目標が存在し,それに対 する個人の志向性が,認知,感情,行動といっ た動機づけのプロセスに影響を与えているとい う視点である22)23).すなわち,目標志向性とは 特定の行動における達成目標に対する個人が抱 く志向性のことである. アイデンティティー理論の先駆者である Erikson24)は,アイデンティティー形成は青年 期において行われ,社会のなかで個人が何かを 達成しようとしたときに抱く目標を追従すると き,確立されるものであるとしている.このよ うに,目標に対する個人の志向である目標志向 性と,何らかの目標を追従する際に確立される アイデンティティーは,目標という共通の要因 に基づく理論体系である20)ことから,この理論 として,スポーツ・コミットメントが注目さ れ,スポーツ実施および継続との関連が検討さ れている4).スポーツ・コミットメントは,「特 定のスポーツプログラムへの参加,または継続 に対する願望や決意を表す心理的な状態5)」と 定義され,スポーツへのコミットメントが強い 者ほど,スポーツを継続していることが示され ている.また,スポーツ・コミットメントを形 成する要因の一つとして,競技者としての役割 に対する同一性の程度を示す,競技者アイデン ティティー6)が影響していることが明らかにさ れている7)-9).競技者アイデンティティーと は「特定のスポーツ競技を実施する際に競技者 の役割として認知している自己10)」として定義 されている,スポーツ競技者特有の自己を形成 する概念である.競技者アイデンティティーは 競技スポーツの実施・継続意思を評価するため に重要な要素の一つであること9)11)が指摘され ており,スポーツ・コミットメントとの関連が 検討されている.HortonandMack12)はランニ ングを定期的に行っている一般人を対象に調査 を実施し,競技者アイデンティティーが高い人 はスポーツに対するコミットメントも高いとい う関連性を明らかにした.また,Chenetal.9) は大学生競技者を対象に競技者アイデンティ ティーとスポーツ・コミットメントの関係を検 討した結果,スポーツ・コミットメントと競技 者アイデンティティーには正の相関関係が認め られることを明らかにした.わが国でも,萩原・ 磯貝13)が,大学生競技者を対象に競技者アイデ ンティティーとスポーツ・コミットメントの関 連を検討し,競技者アイデンティティーがス ポーツ・コミットメント形成に影響を与えてい ることを回帰分析から示している.以上のよう に,競技者アイデンティティーがスポーツ・コ ミットメント形成に影響を与えていることが先 行研究により示されており,スポーツへの傾倒 を促進する心理的な側面に焦点を当てた検討が 行われている. さらに,より包括的なスポーツ・コミットメ ント形成モデルを構築するため,競技者アイデ スポーツ・コミットメントモデルの検討 8
して,他者との関係や社会からの評価などに焦 点を置く,社会的目標への配慮の必要性が指摘 されている27).中山28)は学習場面での目標志向性 について,社会志向性という観点から学習への 動機づけとの関連を検討した結果,対人関係や 他者からの評価に対し,適応しようと志向する ことが,学習への動機づけに影響を与えている ことを示している.すなわち,社会的責任目標 を達成しようと志向することが,学習行動へ影 響を与えている可能性が示唆されている29)30).ス ポーツ場面においても,社会的目標を重視する 社会志向性31)という概念が示されている.磯貝 他31)は,スポーツ場面においての外的適応(他 者との良好な関係の維持,規範・規則の遵守, 集団での役割遂行などの外的な適応)を志向す る傾向を「スポーツにおける社会志向性」,そ れと対比した内的適応(個性・能力の発揮,自 己目標の達成などの個人内基準への適応)を志 向する傾向を「スポーツにおける個人志向性」 とし,スポーツ場面での志向性を2次元で捉え る視点を定義している.また,青年期の人格形 成には,他者や社会の規範に沿った行動をする ための志向性である社会志向性,自己の個性を 活かした行動をするための志向性である個人志 向性が相互補完的な役割を果たすことが明らか にされていること32)から,個人・社会志向性と いう社会的目標を配慮した理論からアプローチ することは,競技者アイデンティティーとの関 連を検討する際,有用な手段となりうるであろ う. 以上のことから,本研究では競技者アイデン ティティーの形成要因として,個人の心理的側 をスポーツという特定の場面における競技者ア イデンティティーに援用し,スポーツにおける 目標志向性との関連が先行研究により検討が行 われている.Ryska18)は高校生競技者を対象に 競技者アイデンティティーと自我・課題の二つ の目標志向性との関連を検討した結果,課題志 向性を有する者は競技者アイデンティティーが 高いことを示し,さらに社会性などを有してい ることを明らかにした.Danielsetal.21)は中高 生競技者を対象にスポーツにおける志向性と競 技者アイデンティティーの関連を検討した結 果,目標志向性が競技者としてのアイデンティ ティー形成の程度に影響を与えているという因 果関係を明らかにしている.Proious20)は青年 期の競技者を対象として検討を行い,競技者ア イデンティティー形成要因として,課題・自我 両方の目標志向性が影響を与えていることを明 らかにしている.すなわち,先行研究によって, 個人がスポーツにおける目標志向性を有するこ とが,競技者としてのアイデンティティーを形 成している可能性が示されている. ところで,従来のスポーツにおける目標志向 性に関する研究では,競技者が新しいスキルの 獲得や練習過程などを重視する課題志向性と, 他者との比較から自分の能力などを重視する自 我志向性を中心に検討が行われてきているが, スポーツ場面においては競技者が抱く目標は 様々であり,多様な視点から目標に対する志向 性を捉える必要性が指摘されている25)26).これま での目標志向性理論では,特定の目標を達成し ようとする個人の傾向を重視する志向性が注目 されてきたが,目標志向性理論の新たな展開と 9 図1 個人・社会志向性を基軸とした競技者アイデンティティーおよび スポーツ・コミットメント形成モデル 1 図1 個人・社会志向性を基軸とした競技者アイデンティティーおよびスポーツ・コミットメント形成モデル
2.2 調査内容(測定指標) 2. 2. 1 スポーツにおける個人・社会志向性尺度 スポーツにおける個人・社会志向性の測定は 磯貝他31)によって開発された,個人・社会志向 性の2因子構造を有する,計18項目のスポーツ における個人・社会志向性尺度を使用した.尺 度の信頼性はクロンバックのα係数(社会志向 性で.78,個人志向性で.60)および,スピアマ ン-ブラウンの信頼性係数(社会志向性で.78, 個人志向性で.63)で確認が行われ,妥当性に ついては,探索的因子分析によって因子的妥当 性,自意識尺度33)および,個人志向性・社会志 向性尺度32)との相関係数から,構成概念妥当性 が示されている31).「スポーツをするときは自 分らしさを大切にしている」,「他人の批判を気 にせずに決断している」などの個人志向性項目 と,「クラブでの自分の役割をきちんと果たし ている」,「指導者やチームメートから信頼され る人になりたい」などの社会志向性項目の2因 子で構成されている.尺度は「ぜんぜんそう思 わない ⑴」から「とてもそう思う⑸」までの 5段階評定尺度である.本尺度はスポーツ競技 者を対象に作られた尺度であること,また,ス ポーツにおける信念や主張を貫くなど個人の内 的基準への志向を個人志向性,選手間の良好な 関係の維持など,スポーツ集団への適応に関す る志向である社会志向性とし,人間の特性を個 人・社会という非常にわかりやすい概念で捉え ていることから,本尺度を採用した. 2. 2. 2 競技者アイデンティティー尺度 競技者アイデンティティーの測定はBrewer etal.10)によって作成されたAthleticIdentity MeasurementScale(AIMS)を,磯貝他34)が 日本語版に翻訳した1因子7項目のAIMS-Jを 使用した.尺度の信頼性はクロンバックのα 係数(.80)で示され,妥当性は探索的因子分 析および,検証的因子分析(GFI=.999,AGFI =.992,CFI=1.00,RMSEA=.011)で因子的妥 当性が示されている35).「私は自分のことを競 技者だと思う」,「私には,スポーツに関する目 標がいくつもある」,「スポーツは,私の生活の 面であるスポーツにおける個人・社会志向性に 着目し,競技者アイデンティティー形成との関 連を基軸としたスポーツ・コミットメント形成 モデル(図1)を構築し,競技スポーツ実施・ 継続に関する青年期の競技者の特性を検討する ことを目的とした. 青年期のスポーツ競技者を対象にスポーツに おける個人・社会志向性を評価することで,競 技実施者のスポーツ・コミットメント形成プロ セスを明らかにすることは,競技スポーツ実施・ 継続を促進するうえで重要な心理要因である競 技者アイデンティティーの形成のためには具体 的にどのような志向性を養う必要があるのかな ど,指導者やコーチなどにとって有益な情報と なり得ると考えられる. 2.研 究 方 法 2.1 調査対象者 調査対象は関東地区,関西地区および,九州 地区に所在する大学および高校の体育会系部 活動所属の大学生487名(男性:343名,女性: 144名),高校生316名(男性:280名,女性36名) の計803名であった.平均年齢は全体で19.02歳 (SD=±7.18), 大 学 生20.56歳(SD=±8.85), 高校生16.63歳(SD=±0.76)であった.競技 種目は陸上競技122名,野球118名,サッカー 99名,バスケットボール87名,バレーボール61 名,ハンドボール36名,テニス34名,水泳32名, ラグビー 31名,剣道29名,柔道24名,体操20 名,アメリカンフットボール16名,バドミント ン15名,空手10名,ソフトボール8名,卓球7 名,ライフセイビング4名,ラクロス3名,レ スリング3名,スキー,アルティメットスポー ツ,ボクシング,ウェイトリフティングが各2 名,相撲,フェンシング,スカッシュラケット, ゴルフ,トライアスロン,なぎなた,弓道,フィ ギュアスケートが各1名(競技種目無回答及び 欠損26名)であった.また,本研究におけるス ポーツの位置づけを「高校・大学の運動部活動 で行っている競技スポーツ」とし,現在,運動 部に加入している者のみを調査対象者とした. スポーツ・コミットメントモデルの検討 10
2.4 倫理的配慮 調査用紙配布前に,本研究の意図を説明し, 調査内容については統計的処理により,個人を 特定できないようにして,研究成果を公表する ことを口頭および書面にて説明し,承諾できる 場合のみ調査を実施した. 3.結 果 3.1 尺度の信頼性・妥当性 すべての尺度の有用性について確認するた め,先行研究13)38)39)の方法に準拠して尺度の信 頼性・妥当性について検討を行った.信頼性の 検証方法として,クロンバックのα係数を算出 し,尺度項目の内的一貫性を確認した結果,ス ポーツにおける個人志向性尺度が.65,社会志 向性尺度が.82,競技者アイデンティティー尺 度は.82,スポーツ・コミットメント尺度は.65 となった.また,大学生競技者24名(男性:12 名,女性:12名;平均年齢20.83歳,SD±0.57) を対象に,3週間の間隔をあけた再検査法を実 施した結果,スポーツにおける個人志向性尺度 がr=.70(p<.01),社会志向性尺度がr=.71 (p<.01),競技者アイデンティティー尺度は r=.53(p<.05),スポーツ・コミットメント 尺度はr=.62(p<.01)となった. 次に,尺度の妥当性を検討するため,検証 的因子分析を行った.適合度指標はGoodness ofFitIndex(GFI),AdjustedGoodnessofFit Index(AGFI),ComparativeFitIndex(CFI), Root Mean Square Error of Approximation (RMSEA) を 使 用 し た.GFI,AGFI,CFIは モデルが適合するためには,1に値が近いほど モデルの説明力があるとされ,一般的に0.9以 上が当てはまりの良いモデルの判断基準とされ ている40).また,RMSEAは0に近いほど良い とされ,0.08以下であればモデルの適合が好ま しく,0.10以上で当てはまりが悪いとされる41). 検証的因子分析の結果,スポーツにおける 社会・個人志向性尺度では,GFI=.973,AGFI =.948,CFI=.966,RMSEA=.041,競技者アイ デンティティー尺度はGFI=.998,AGFI=.986, 中で最も大切なものである」などの項目で構成 される.尺度は「全く違う⑴」から「全くその 通り⑺」までの7段階評定尺度である.7項 目という少ない項目で,競技者アイデンティ ティーの程度を容易にかつ,正確に評価できる ことから,本尺度を適用した. 2. 2. 3 スポーツ・コミットメント尺度 スポーツ・コミットメントの測定は金崎36) によって作成された1因子4項目のスポーツ・ コミットメント尺度を使用した.尺度の信頼性 はクロンバックのα係数(.85)で示され,妥 当性はスポーツ・コミットメントの程度とス ポーツ実施程度や参加頻度との関連から構成概 念妥当性が示されている37).「あなたは,何日 も運動やスポーツ活動をしないとしたら,スト レスを感じるほうですか」,「あなたは,忙しい ときでも運動やスポーツ活動をするための時間 をつくるほうですか」などの項目で構成される. 尺度はそれぞれの質問項目に合わせ設定され, 例えば,上記の「あなたは,何日も運動やスポー ツ活動をしないとしたら,ストレスを感じるほ うですか」の回答は「非常に感じるほう⑴」か ら「ほとんど感じないほう⑷」の4段階で評価 した.4項目と少ない項目でかつ,中学生から 社会人まで幅広い層を対象として作られた尺度 であることから,本尺度を援用した. 2.3 分析方法 使用したすべての尺度の信頼性は,クロン バックのα係数を算出することによる内的一貫 性,および再検査法による再現性を検討し,妥 当性については,検証的因子分析による因子的 妥当性を検討した.また,スポーツにおける目 標志向性に基づいた競技者アイデンティティー 形成および,スポーツ・コミットメント形成 の関連を想定した仮説モデル(図1)を対象 に共分散構造分析を実施し,モデルの妥当性 を検討した.統計解析パッケージはIBMSPSS Statistics20.0およびAMOS20.0を使用した.
<.001). 4.考 察 本研究では競技者アイデンティティーの形成 要因として,個人の心理的側面であるスポーツ における志向性に着目し,個人・社会志向性と 競技者アイデンティティー形成の関連を基軸と したスポーツ・コミットメント形成モデルを構 築し,競技スポーツ実施・継続に関する青年期 の競技者の特性を検討することを目的としてい た. 本研究で使用したすべての尺度の信頼性につ いて確認するため,クロンバックのα係数を算 出し,尺度項目の内的一貫性を確認した結果, スポーツにおける個人志向性尺度および,ス ポーツ・コミットメント尺度のα係数がやや低 いものの,α係数が.60以上の場合,測定要因 の信頼性に問題はないこと42),および,尺度と して棄却されるほどの数値43)ではないことが指 摘されていることから,使用できるものと判断 した.また,同一被験者を対象に3週間の間隔 をあけた再検査法を実施した結果,スポーツに おける個人志向性尺度がr=.70(p<.01),社 会志向性尺度がr=.71(p<.01),競技者アイ デンティティー尺度はr=.53(p<.05),スポー ツ・コミットメント尺度はr=.62(p<.01) となり,使用したすべての尺度の再現性が示さ れたと考えられる.また,尺度の妥当性を検討 するため,検証的因子分析を行った結果,適合 度が十分な数値を示し,因子的妥当性について 確認できたことから,調査項目のワーディン CFI=.999,RMSEA=.022,そして,スポーツ・ コミットメント尺度はGFI=.995,AGFI=.973, CFI=.988,RMSEA=.063となった. 3.2 共分散構造分析を用いたモデルの検討 スポーツにおける個人・社会志向性と競技者 アイデンティティーの関連および,競技者アイ デンティティーとスポーツ・コミットメントの 関連を体系的に説明するモデル(図1)の検 討を実施するため,共分散構造分析を用いて 適合度を確認した.適合度指標はGFI,AGFI, CFI,RMSEAを使用した. 本研究で仮定したモデルに対して適合度を検 討した結果,GFI=.994,AGFI=.969,CFI=.990, RMSEA=.070となった(図2). 3.3 スポーツにおける個人・社会志向性か ら競技者アイデンティティーへのパスの検討 スポーツにおける個人・社会志向性から競技 者アイデンティティーへのパスを検討したとこ ろ,社会志向性から競技者アイデンティティー へのパスが有意であると示され(.48,t=12.83, p<.001),個人志向性から競技者アイデンティ ティーへのパスは有意ではないことが示された (.04,t=1.17,n.s.). 3.4 競技者アイデンティティーからスポー ツ・コミットメントへのパスの検討 競技者アイデンティティーからスポーツ・コ ミットメントへのパスを検討したところ,パス が有意であることが示された(.51,t=16.81,p スポーツ・コミットメントモデルの検討 12 図2 共分散構造分析の結果 2 図2 共分散構造分析の結果
ンティティー形成に繋がらないことを示した. 本研究の結果は,個人・社会志向性という新た な枠組みでスポーツ場面での志向性を捉え,ス ポーツにおける社会志向性が青年期の競技者ア イデンティティーの形成に強く影響するという 新たな視点を明らかにした.競技実施に際し て,わが国の青年期におけるスポーツ競技者は 「スポーツをするときは自分らしさを大切にし ている」,「他人の批判を気にせずに決断してい る」などの個人志向性を有することは競技者と してのアイデンティティー形成に繋がらず,「ク ラブでの自分の役割をきちんと果たしている」, 「指導者やチームメートから信頼される人にな りたい」などの社会志向性を有することが,競 技者アイデンティティーをより形成し,そし て,スポーツへ傾倒することを示していること から,競技スポーツ実施および,継続に際して, 指導者や組織管理者が競技者の社会志向性を育 てることが重要であることが推察される.ス ポーツという社会の中で,他者との良好な関係 の維持,規範・規則の遵守,集団での役割遂行 などの外的な適応を志向させることが,競技実 施・継続に繋がるであろう. 最後に,本研究の限界点および,今後の課題 について述べる.本研究では,横断的に競技実 施および継続に関わりのある要因をモデル化 し体系的に示すことができたが,人々の行動は 常に変容していくものであり,本研究で示した モデルの因果関係を厳密に言及することは難し い.今後は,縦断的な検討を含めた包括的な調 査を実施することで,より深い知見を得る必要 があるといえる. 5.結 論 スポーツにおける個人・社会志向性と競技者 アイデンティティー形成の関連および,競技者 アイデンティティーとスポーツ・コミットメン ト形成の関連を体系的に説明するモデルの検討 をした結果,十分な適合度を得ることができ, 妥当性が示された.先行研究では,スポーツに おける目標志向性が競技者としてのアイデン グに問題がないと考えられ,本研究で採用した 尺度の有用性について確認ができたと考えられ る.しかしながら,スポーツにおける個人志向 性および,スポーツ・コミットメント尺度につ いてはα係数の値が低かったことが挙げられる ことから,今後の研究において,内的一貫性を 高めるための項目の検討などを行うことが必要 であると考えられる. スポーツにおける個人・社会志向性と競技者 アイデンティティー形成の関連および,競技者 アイデンティティーとスポーツ・コミットメン ト形成の関連を体系的に説明するモデルの検討 をした結果,モデルの妥当性が示された.先行 研究では,スポーツにおける目標志向性が競技 者としてのアイデンティティー形成に関連があ ることが明らかにされている20)21)が,本研究で も,それらの結果を支持するような知見を得る ことができたと考えられる.また,競技者アイ デンティティーがスポーツ・コミットメント形 成に影響を与えているとした先行研究9)12)を支 持するような結果が本研究でも得られたことか ら,競技者アイデンティティーがスポーツ・コ ミットメント形成を説明できることが示され, わが国のスポーツ実施・継続研究へ新たな知見 を付加できる可能性が示唆できる.特に,個 人・社会志向性を基軸とし,競技者アイデン ティティーを媒介するスポーツ・コミットメン ト形成モデルの妥当性を示すことができたこと から,今後,競技者のスポーツ実施・継続行動 を一連のパターンとして検討できる可能性が示 唆できる. スポーツにおける個人・社会志向性から競技 者アイデンティティーへのパスを検討したとこ ろ,社会志向性から競技者アイデンティティー へのパスが有意であると示され,個人志向性か ら競技者アイデンティティーへのパスは有意で はないことが示された.すなわち,競技実施に 際して,青年期のスポーツ競技者は社会志向性 を有することが,競技者としての役割をより形 成しているということが明らかになった.ま た,個人志向性を高めることは,競技者アイデ
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スポーツ・コミットメントモデルの検討 14
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