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第1第Ⅱ章146 部( 漁港施設 ) 漁港は 漁船の係留や燃油や食料等の補給 漁獲物の陸揚げ 加工 流通等の機能が集積した水産業の基盤施設であることから 被災地の水産業の再生のためには いち早くその機能の回復を図ることが重要です このため 漁港施設の復旧については 全国的な拠点漁港や地域水産業の拠点

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145 第Ⅱ章

(1)水産業・漁村の復興状況

(水産関係施設等の復旧・復興の概況)  東日本大震災により甚大な被害を受けた地域は、全国屈指の豊かな漁場に恵まれ、全国の 水産物供給において大きな役割を果たすとともに、他の地域の漁船への給油や物資の補給等、 他の地域の水産物も支える様々な機能を有しており、我が国水産業において重要な位置付け にあります。  このため、一刻も早い生業の再開に向けて、被災地域で営まれている多様な漁業の特色や 被災状況に応じ、必要な支援を積極的に実施していますが、一部のインフラの整備に関して は、人的資源や建設資材の不足等による遅れが発生しており、現地ではこれらの諸問題を克 服しつつ、水産関係施設等の着実な復旧、復興に努めています(図Ⅱ−5−1)。

第5節

東日本大震災からの復興に向けた動き

(319漁港が被災) 陸揚げ岸壁の機能回 復状況 (約2.9万隻が被災) 復旧目標(27年度末 までに2万隻)に対 する状況 岩手県・宮城県の主 要な養殖品目の漁協 共販数量の被災前年 比(22年漁期) 被災3県で被害があっ た産地市場(34施設) 岩手・宮城・福島各 県の主要な魚市場の 水揚げの被災前年比 (22年3月∼23年2 月合計) (約113kmの岸壁が被災) 被災岸壁の復旧状況 ○ 平成27年2月末現在、被災した319 漁港のうち、305漁港において、陸揚 げが可能(部分的に可能な場合を含 む。)。  岩手県、宮城県、福島県の内訳は次 のとおり。   岩手県:94%(102漁港)   宮城県:96%(136漁港)   福島県:80%( 8漁港) ○ 北海道、青森県、千葉県で被災した 岸壁は、復旧完了済み。 ※ 26年漁期のワカメ養殖、コンブ養 殖は、26年2月の低気圧通過に伴う 脱落等のため、前年より減少した。 ※ カキ養殖は、種付けから出荷までに 2∼3年を要することなどから、24、 25年漁期の生産は低位となっている。 24年度中に、水産基本計画の目標(25 年度末までに1万2千隻)は達成。 更に被災地の要望を踏まえ27年度末ま でに2万隻まで回復を目指す。 26年3月末で養殖業再開希望者の養殖 施設の整備が完了。 岩手県及び宮城県の産地市場は、22施 設全てが再開。 27年度末までに再開希望者全員の施設 を復旧・復興することを目途。 ○ 漁港については、27年度末までに復 旧の目途。 [岩手県] 久慈、宮古、釜石、大船渡 [宮城県] 気仙沼、女川、石巻、塩釜 [福島県] 小名浜(県外で漁獲) 2 港 項目 0 20進捗状況・現況40 60 80 100% 備 考 項目 0 20進捗状況・現況40 60 80 100% 備 考 図Ⅱ−5−1 水産業復旧の進捗状況(平成27(2015)年3月5日現在) 揚 げ 3 船 4 殖 5 工 流 通 施 設 被災3県で再開を希望する水産加工施設 (812施設) がれきの残る一部の漁場について、27 年度も引き続き支援を実施。 6 れ き がれきにより漁業活動 に支障のある定置漁場 1,007か所 (再流入箇所含む) がれきにより漁業活動 平成25年3月末現在 平成26年3月末現在 平成27年2月末現在 岩手:100%(13施設) 宮城:100%( 9施設) 福島:   8%( 1施設) 岩手:87%(171施設) 宮城:84%(388施設) 福島:74%(113施設) ワカメ養殖(22年漁期 (2∼5月) 34,439トン) 岩手 8,787隻 宮城 6,810隻 福島 337隻 岩手 7,768隻 宮城 5,358隻 福島 256隻 岩手 4,217隻 宮城 3,186隻 福島 192隻 平成 年 月末現在 平成 年 月末現在 36%(115漁港) (全延長の陸揚げ機能回復) (部分的に陸揚げ機能回復)47%(149漁港)(潮位によっては陸揚げ可能)15%(48漁港) 平成25年3月末実績 平成26年3月末現在 平成27年2月末実積 岩手: 100%(136か所) 宮城: 97%(844か所) 福島:要望なし 岩手: 94%(127か所) 宮城: 96%(831か所) 福島:要望なし 岩手: 100%(154か所) 宮城: 97%(909か所) 福島: 91%( 10か所) 岩手: 93%(143か所) 宮城: 72%(655か所) 福島: 50%( 3か所) 28% 53% 65% ギンザケ養殖(22年漁期(3∼8月) 14,750トン ) 83%(264漁港) 83%(264漁港) 91%(289漁港) 91%(289漁港) 54%(172漁港) 65%(208漁港) 30%(97漁港) 37%(117漁港) 7% (23漁港) 3% (11漁港) 95%(305漁港) 95%(305漁港) 〈水揚量〉 〈水揚金額〉 39% H23.2∼24.1 (181千t) 47% H23.2∼24.1 (375億円) 62% H24.2∼25.1 (285千t) 70% H24.2∼25.1 (560億円) 70% H25.2∼26.1 (325千t) 81% H25.2∼26.1 (649億円) 79% H26.2∼27.1 (367千トン) 87% H26.2∼27.1 (695億円) 岩手 81%(113.7千トン) 宮城 79%(248.1千トン) 福島 49%( 5.4 千トン) 46% (9,195隻) ※24年3月末時点 23年漁期 3,742トン (11%) 26年漁期 23,100トン (67%) 24年漁期 27,195トン (79%) 25年漁期 30,413トン (88%) 77% (15,308隻) ※25年3月末時点 89% (17,875隻) ※27年1月末時点 65% (22施設が業務再開) ※23年12月末 68% (23施設が業務再開) ※27年2月末 95% (958か所) ※24年3月末 97% (980か所) ※27年1月末 55% (418施設が業務再開) ※24年3月末 74% (608施設が業務再開) ※25年3月末 83% (672施設が業務再開) ※26年12月末 岩手 94%(181.3億円) 宮城 86%(508.1億円) 福島 33%( 5.8億円) ホタテ養殖(22年漁期(4∼3月)14,873トン) ギ ザ 養殖( 年漁期(ザ 漁 )) ト カキ養殖(22年漁期(9∼5月)3,838トン) ホタ 養殖( 年漁期(期 コンブ養殖(22年漁期 (3∼8月) 13,817トン) カキ養殖(22年漁期(9年 )3 838 23年漁期 0トン (0%) 24年漁期 5,633トン (41%) 26年漁期 6,904トン (50%) 25年漁期 7,121トン (52%) 23年漁期 352トン (9%) 24年漁期 677トン (18%) 25年漁期 1,447トン (38%) 23年漁期 56トン (0.4%) 24年漁期 5,130トン (34%) 25年漁期 9,245トン (62%) 23年漁期 0トン (0%) 24年漁期 9,448トン (64%) 25年漁期 11,619トン (79%) 26年漁期 12,200トン (83%)

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第Ⅱ章

(漁港施設)  漁港は、漁船の係留や燃油や食料等の補給、漁獲物の陸揚げ、加工・流通等の機能が集積 した水産業の基盤施設であることから、被災地の水産業の再生のためには、いち早くその機 能の回復を図ることが重要です。このため、漁港施設の復旧については、全国的な拠点漁港 や地域水産業の拠点となる漁港について、優先的に陸揚げ岸壁等の主要な機能を回復するこ ととされています。また、防潮堤等の復旧に当たっては、周辺環境、生態系、景観、利用等 にも配慮することとしています。  平成27(2015)年2月末現在、被災7道県の319漁港のうち、305漁港において、陸揚げが 可能(部分的に陸揚げが可能な場合を含む。)となっています。  また、全国的な拠点漁港や地域水産業の拠点となる漁港については、生産・流通機能の強 化や岸壁の耐震化等、防災・減災のための施策を講ずることとしています。特に水産業の振 興上重要な特定第3種漁港である5漁港(八戸、気仙沼、石巻、塩釜及び銚子)については、 水産物の衛生管理の高度化のための整備を行うなど、新たな水産業の姿を目指した復興に取 り組んでいます。 (漁船)  平成27(2015)年1月末現在で修理及び新船建造を完了した漁船の数は、漁業者が加入し ていた漁船保険による自力復旧も含め17,875隻となっており、目標隻数(2万隻)の89%ま で復旧しました。なお、震災による被害隻数は約2万9千隻に上っていますが、被害を受け た漁船の中には、既に引退した漁業者が所有しているなどにより稼働していなかったもの等 が含まれているため、復旧の対象となる漁船の隻数は被災隻数より少なくなっています。 (養殖施設)  平成26(2014)年漁期の養殖収獲量は、震災前に比べ、ワカメは67%、コンブは50%でし た。  カキ養殖については収獲までに通常2~3年を要すること、ノリ養殖については全自動乾 のり製造機等に多額の設備投資が必要であること、さらに、両者の産地では震災による地盤 沈下が深刻で施設用地をかさ上げする必要があったこと等により、これら養殖業は収獲が遅 れていましたが、平成26(2014)年度冬期にはそれぞれ収獲が本格化し始めており、ノリで (319漁港が被災) 陸揚げ岸壁の機能回 復状況 (約2.9万隻が被災) 復旧目標(27年度末 までに2万隻)に対 する状況 岩手県・宮城県の主 要な養殖品目の漁協 共販数量の被災前年 比(22年漁期) 被災3県で被害があっ た産地市場(34施設) 岩手・宮城・福島各 県の主要な魚市場の 水揚げの被災前年比 (22年3月∼23年2 月合計) (約113kmの岸壁が被災) 被災岸壁の復旧状況 ○ 平成27年2月末現在、被災した319 漁港のうち、305漁港において、陸揚 げが可能(部分的に可能な場合を含 む。)。  岩手県、宮城県、福島県の内訳は次 のとおり。   岩手県:94%(102漁港)   宮城県:96%(136漁港)   福島県:80%( 8漁港) ○ 北海道、青森県、千葉県で被災した 岸壁は、復旧完了済み。 ※ 26年漁期のワカメ養殖、コンブ養 殖は、26年2月の低気圧通過に伴う 脱落等のため、前年より減少した。 ※ カキ養殖は、種付けから出荷までに 2∼3年を要することなどから、24、 25年漁期の生産は低位となっている。 24年度中に、水産基本計画の目標(25 年度末までに1万2千隻)は達成。 更に被災地の要望を踏まえ27年度末ま でに2万隻まで回復を目指す。 26年3月末で養殖業再開希望者の養殖 施設の整備が完了。 岩手県及び宮城県の産地市場は、22施 設全てが再開。 27年度末までに再開希望者全員の施設 を復旧・復興することを目途。 ○ 漁港については、27年度末までに復 旧の目途。 [岩手県] 久慈、宮古、釜石、大船渡 [宮城県] 気仙沼、女川、石巻、塩釜 [福島県] 小名浜(県外で漁獲) 2 港 項目 0 20進捗状況・現況40 60 80 100% 備 考 項目 0 20進捗状況・現況40 60 80 100% 備 考 図Ⅱ−5−1 水産業復旧の進捗状況(平成27(2015)年3月5日現在) 揚 げ 3 船 4 殖 5 工 流 通 施 設 被災3県で再開を希望する水産加工施設 (812施設) がれきの残る一部の漁場について、27 年度も引き続き支援を実施。 6 れ き がれきにより漁業活動 に支障のある定置漁場 1,007か所 (再流入箇所含む) がれきにより漁業活動 に支障のある養殖漁場 1,101か所 (再流入箇所含む) 平成25年3月末現在 平成26年3月末現在 平成27年2月末現在 岩手:100%(13施設) 宮城:100%( 9施設) 福島:   8%( 1施設) 岩手:87%(171施設) 宮城:84%(388施設) 福島:74%(113施設) ワカメ養殖(22年漁期 (2∼5月) 34,439トン) 岩手 8,787隻 宮城 6,810隻 福島 337隻 岩手 7,768隻 宮城 5,358隻 福島 256隻 岩手 4,217隻 宮城 3,186隻 福島 192隻 平成 年 月末現在 平成 年 月末現在 36%(115漁港) (全延長の陸揚げ機能回復) (部分的に陸揚げ機能回復)47%(149漁港)(潮位によっては陸揚げ可能)15%(48漁港) 平成25年3月末実績 平成26年3月末現在 平成27年2月末実積 岩手: 100%(136か所) 宮城: 97%(844か所) 福島:要望なし 岩手: 94%(127か所) 宮城: 96%(831か所) 福島:要望なし 岩手: 100%(154か所) 宮城: 97%(909か所) 福島: 91%( 10か所) 岩手: 93%(143か所) 宮城: 72%(655か所) 福島: 50%( 3か所) 28% 53% 65% ギンザケ養殖(22年漁期(3∼8月) 14,750トン ) 83%(264漁港) 83%(264漁港) 91%(289漁港) 91%(289漁港) 54%(172漁港) 65%(208漁港) 30%(97漁港) 37%(117漁港)(23漁港)7% 3% (11漁港) 95%(305漁港) 95%(305漁港) 〈水揚量〉 〈水揚金額〉 39% H23.2∼24.1 (181千t) 47% H23.2∼24.1 (375億円) 62% H24.2∼25.1 (285千t) 70% H24.2∼25.1 (560億円) 70% H25.2∼26.1 (325千t) 81% H25.2∼26.1 (649億円) 79% H26.2∼27.1 (367千トン) 87% H26.2∼27.1 (695億円) 岩手 81%(113.7千トン) 宮城 79%(248.1千トン) 福島 49%( 5.4 千トン) 46% (9,195隻) ※24年3月末時点 23年漁期 3,742トン (11%) 26年漁期 23,100トン (67%) 24年漁期 27,195トン (79%) 25年漁期 30,413トン (88%) 77% (15,308隻) ※25年3月末時点 89% (17,875隻) ※27年1月末時点 65% (22施設が業務再開) ※23年12月末 68% (23施設が業務再開) ※27年2月末 95% (958か所) ※24年3月末 97% (980か所) ※27年1月末 75% (801か所) ※24年3月末 98% (1,073か所) ※27年1月末 55% (418施設が業務再開) ※24年3月末 74% (608施設が業務再開) ※25年3月末 83% (672施設が業務再開) ※26年12月末 岩手 94%(181.3億円) 宮城 86%(508.1億円) 福島 33%( 5.8億円) ホタテ養殖(22年漁期(4∼3月)14,873トン) ギ ザ 養殖( 年漁期(ザ 漁 )) ト カキ養殖(22年漁期(9∼5月)3,838トン) ホタ 養殖( 年漁期(期 コンブ養殖(22年漁期 (3∼8月) 13,817トン) カキ養殖(22年漁期(9年 )3 838 23年漁期 0トン (0%) 24年漁期 5,633トン (41%) 26年漁期 6,904トン (50%) 25年漁期 7,121トン (52%) 23年漁期 352トン (9%) 24年漁期 677トン (18%) 25年漁期 1,447トン (38%) 23年漁期 56トン (0.4%) 24年漁期 5,130トン (34%) 25年漁期 9,245トン (62%) 23年漁期 0トン (0%) 24年漁期 9,448トン (64%) 25年漁期 11,619トン (79%) 26年漁期 12,200トン (83%)

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147 第Ⅱ章

は、養殖収獲量は震災前に比べ72%*1 まで回復しました。 (加工・流通施設)  岩手県、宮城県及び福島県の水産物産地卸売市場は、34施設全てが被害を受けましたが、 岩手県及び宮城県の22施設については、平成24(2012)年9月現在で全ての市場が営業を再 開しています。しかし、東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「東電福島第一原発」 といいます。)事故の影響を強く受けている福島県においては、平成27(2015)年2月末現 在で12施設中小名浜の1施設のみが営業を再開しています。  一方、全国水産加工業協同組合連合会の調査によると、岩手県、宮城県及び福島県の水産 加工場は、953施設の被害が報告されており、このうち再開を希望している812施設のうち 672施設が操業を再開しています(平成26(2014)年12月末現在)。  平成27(2015)年2月に公表された、水産加工業者における東日本大震災からの復興状況 に関する調査によると、生産能力が8割以上回復した業者は、青森県では90%となっていま すが、岩手県では53%、宮城県では50%、福島県では25%、茨城県では66%にとどまってい ます(図Ⅱ−5−2)。さらに、売上が8割以上回復した業者は、青森県では90%、岩手県 では58%、宮城県では40%、福島県では21%、茨城県では39%と、生産能力の回復と比べ、 宮城県と茨城県で売上の回復が遅れています。復興における問題点としては、風評被害を含 めた販路の確保が最も多く挙げられ、このほか人材不足や原材料の確保も挙げられています。 特に、「販路確保」に対しては、「既存の販売チャンネル以外における販売」、「新商品の開発」 及び「展示会等への参加」等が求められていることが明らかになっています。 *1 3月末までの平成22(2010)年漁期のノリ生産実績(枚数)と、3月末までの平成26(2014)年漁期のノリ生産 実績(枚数)を比較した。 全 体(313件) 青森県( 11件) 岩手県( 29件) 宮城県(137件) 福島県( 71件) 〈復興における問題点〉 2 10 31 19 25 13 10 28 24 21 10 7 7 20 15 19 38 9 14 30 18 26 11 2 36 17 22 12 6 資料:水産庁「水産加工業にお 0 20 40 60 80 100% 全 体(310件) 青森県( 11件) 岩手県( 28件) 宮城県(137件) 福島県( 70件) 茨城県( 64件) 図Ⅱ−5−2 水産加工業の復興状況アンケート結果 全く回復していない 10%未満 10%以上20%未満 20%以上30%未満 30%以上40%未満 40%以上50%未満 50%以上60%未満 60%以上70%未満 70%以上80%未満 80%以上90%未満 90%以上100%未満 100%以上 売上がない 10%未満 10%以上20%未満 20%以上30%未満 30%以上40%未満 40%以上50%未満 50%以上60%未満 60%以上70%未満 70%以上80%未満 80%以上90%未満 90%以上100%未満 100%以上 施設の復旧 人材の確保 原材料の確保 販路の確保・風評被害 運転資金の確保 その他 50% 90% 53% 50% 25% 66% 〈生産能力の復旧状況〉 12 25 13 10 11 7 5 5 2 1 4 6 9 9 36 45 4 1 23 6 31 9 6 9 6 14 9 13 3 19 34 13 8 3 8 9 3 3 4 12 7 4 6 15 9 13 26 11 4 4 21 14 7 25 21 0 20 40 60 80 100% 全 体(313件) 青森県( 11件) 岩手県( 29件) 宮城県(137件) 福島県( 71件) 茨城県( 65件) 40% 90% 58% 40% 21% 39% 〈売上の回復状況〉 13 12 15 10 13 12 7 5 3 2 5 4 9 27 18 45 3 3 3 1 15 13 3 4 10 11 14 8 7 7 7 8 14 17 8 14 11 5 11 3 6 5 313 4 9 13 9 17 16 14 10 3 14 7 7 17 17 24

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第Ⅱ章

(水揚げの復旧状況)  漁船、養殖施設、漁港施設及び加工流通施設の復旧に伴い、被災県の水揚げは回復基調に あります。平成26(2014)年2月~27(2015)年1月の岩手県、宮城県及び福島県の主要な 水産物産地卸売市場への水揚げは、震災前(平成22(2010)年3月~23(2011)年2月)に 比べ、水揚量で79%、水揚金額で87%となっています(図Ⅱ−5−1)。   (震災を機に深まる協業操業の合理性)  被災地では、一刻も早い漁業の再開を目指し、被災を免れた数少ない漁船・漁具を共同で 利用したり、新しい漁船・漁具を共同で利用するものとして整備するなどにより、漁業・養 殖業の協業化が進められました。  当初は、多くの漁業者は、協業操業を復興に向けた足がかりと位置付け、長期的には震災 以前の個別操業に戻る方向でしたが、協業操業を進めるにつれ、大型機器を共同利用するこ とによる生産性の向上を実感するとともに、当初心配された個々の生産者の生産意欲の減退 等がそれほどみられなかったこと等から、当初の予定を変えて協業操業を継続したり、一部 作業は個別操業に移行するものの、大型機器については協業操業を継続することとするなど、 協業操業の合理性に理解が深まってきています。しかし、その一方で、個々の操業に戻る事 *1 処理をしていない原型のままの水産物。  東日本大震災の被災地の水産加工業においては、施設の復旧は進んできたものの、販路の回復が遅れて います。震災前の水準までできるだけ販路を回復するためには、専門家による商品開発等販路回復に向け たアドバイスが必要です。このようなことから、水産庁では、平成26(2014)年6月に、幅広い分野か ら「復興水産販路回復アドバイザー」を12名任命し、ポテンシャルの高い水産加工業者の積極的な掘り 起こしと、当該水産加工業者が実際に商品を開発して販売までつなげていけるよう支援しています。 【アドバイザーによる具体的アドバイス事例】  宮城県の水産加工業者に対し、ホヤを食べる文化が根付いていない西日本地域への販路開拓をアドバイ ス。さらに、関東でもホヤをラウンド*1から処理する方法が分からないため仕入れをしない外食店向けに、 扱いやすいむき身(冷凍)の珍味製品や干物等の販売にチャレンジするための試作品づくりを支援。

「復興水産販路回復アドバイザーグループ」の発足

コラム

0 20 40 60 80 100% 全 体(313件) 青森県( 11件) 岩手県( 29件) 宮城県(137件) 福島県( 71件) 茨城県( 65件) 〈復興における問題点〉 2 10 31 19 25 13 10 28 24 21 10 7 7 20 15 19 38 9 42 10 1 19 18 9 14 30 18 26 11 2 36 17 22 12 6 資料:水産庁「水産加工業にお ける東日本大震災からの 復興状況アンケート(第 2回)結果」 0 20 40 60 80 100% 全 体(310件) 青森県( 11件) 岩手県( 28件) 宮城県(137件) 福島県( 70件) 茨城県( 64件) 図Ⅱ−5−2 水産加工業の復興状況アンケート結果 全く回復していない 10%未満 10%以上20%未満 20%以上30%未満 30%以上40%未満 40%以上50%未満 50%以上60%未満 60%以上70%未満 70%以上80%未満 80%以上90%未満 90%以上100%未満 100%以上 売上がない 10%未満 10%以上20%未満 20%以上30%未満 30%以上40%未満 40%以上50%未満 50%以上60%未満 60%以上70%未満 70%以上80%未満 80%以上90%未満 90%以上100%未満 100%以上 施設の復旧 人材の確保 原材料の確保 販路の確保・風評被害 運転資金の確保 その他 50% 90% 53% 50% 25% 66% 〈生産能力の復旧状況〉 12 25 13 10 11 7 5 5 2 1 4 6 9 9 36 45 4 1 23 6 31 9 6 9 6 14 9 13 3 19 34 13 8 3 8 9 3 3 4 12 7 4 6 15 9 13 26 11 4 4 21 14 7 25 21 0 20 40 60 80 100% 全 体(313件) 青森県( 11件) 岩手県( 29件) 宮城県(137件) 福島県( 71件) 茨城県( 65件) 40% 90% 58% 40% 21% 39% 〈売上の回復状況〉 13 12 15 10 13 12 7 5 3 2 5 4 9 27 18 45 3 3 3 1 15 13 3 4 10 11 14 8 7 7 7 8 14 17 8 14 11 5 11 3 6 5 313 4 9 13 9 17 16 14 10 3 14 7 7 17 17 24

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第Ⅱ章

例も多く、合理性だけではない協業の難しさもうかがわれます。 (被災県の漁業生産構造の変化)  2013年漁業センサスによると、平成25(2013)年における岩手県、宮城県及び福島県の海 面漁業の経営体数は5,690経営体で、平成20(2008)年の経営体数10,062経営体と比べ43%減 少しました。廃業した経営体は2,213経営体、休業している経営体は2,878経営体となってい ます。一方、平成25(2013)年における岩手県、宮城県及び福島県の漁業従事者は13,827人で、 平成20(2008)年の漁業従事者数21,598人と比べ36%の減少にとどまりました。ただし、東 電福島第一原発事故により、主な漁場である福島県沖での本格的な操業が再開されていない 福島県については、操業を再開している漁業経営体は遠洋・沖合漁業を行っている14経営体 に限られ、漁業従事者も409人となっています。  漁業を再開した経営体は、震災前と同じ漁業種類で再開したものばかりではなく、被災の 状況等によって業種を転換した経営体も多くみられます。収獲までに時間がかかるホタテガ イ養殖及びカキ類養殖の経営体が大きく減少した一方で、岩手県では小型定置網等へ、宮城 県では収獲までの時間が比較的短いワカメ養殖等への転換がみられ、これら業種では震災前 に比べ経営体数が増加していますが、復興が進むにつれ震災前の漁業種類に戻る経営体も出 てきています。

(2)原発事故への対応

(東電福島第一原発の状況)  東電福島第一原発事故そのものは、事故収束に向け、「東京電力(株)福島第一原子力発電  東日本大震災により地域の経済力が大きな打撃を受けた被災地の復旧・復興においては、主要産業の一 つである水産業についても、従来より成長力のある産業として復興し、地域経済の回復に際して大きな牽 引力を発揮することが求められています。このため、岩手県及び宮城県の被災地においては、水産試験研 究施設の復旧と併せて、漁業・養殖業・水産加工業の高度化に関する技術の大規模な実証研究が進められ ています。  これらの研究によって得られた成果については、技術の体系化と経営体単位での導入効果の検証を行い、 被災地への普及を図っていくこととしています。

被災地における先端的技術の大規模実証の推進

コラム

三陸特産のワカメの収獲を機械化し、陸上での 共同作業を含む作業体系を高度化 水温、塩分等の情報を遠洋から沿岸部まで一体 的に解析し、沿岸漁業に活用 大規模実証研究の例 資料:(独)水産総合研究センター(平成27(2015)年4月 1日、名称を国立研究開発法人水産総合研究センター に変更)、岩手県水産技術センターほか ワカメ陸上刈り取り機 水温、塩分等の情報提供

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第Ⅱ章

所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(平成23(2011)年12月原子力災 害対策本部決定、平成25(2013)年6月改訂)に基づき、政府が前面に立って廃止措置事業 を実施しています。  原子力発電所の廃止措置事業では、地下水が原子炉建屋に流入し、汚染水が増加し続けて いることが大きな問題となっているため、中長期ロードマップでは、汚染水対策のため、予 防的・重層的な対策を講じることとしており、緊急対策として、①トレンチ(原子炉建屋の 海側にある既設のトンネル)内の高濃度汚染水除去、②水ガラスによる汚染エリアの地盤改 良、雨水の浸透防止のための舗装、地下水ドレンからのくみ上げ、③山側での地下水のくみ 上げ(地下水バイパス)を、また、抜本対策として、④サブドレンによる地下水くみ上げ、 ⑤海側遮水壁の設置、⑥凍土方式による陸側遮水壁の設置、⑦処理効率がより高い汚染水浄 化設備の整備を実施することとしています(図Ⅱ−5−3)。  このうち、地下水バイパスは、関係者の理解が得られたことから、平成26(2014)年5月 から海洋への放出(排水)が開始され、その効果として原子炉建屋に流れ込む地下水の量が 減少してきています。今後も引き続き、汚染水対策を実施すべく、関係者との調整を継続す るとともに、発電所における汚染水対策のための作業が続いていきます。  また、原子力規制委員会では、東電福島第一原発周辺の海水の放射性物質濃度を計画的に 測定したデータを評価・解析し、同委員会のホームページで閲覧できるようにしています。 これによると、東電福島第一原発周辺の海水のセシウム134及び137の濃度は着実に低下して います(図Ⅱ−5−4)。  さらに、福島県水産試験場と福島県原子力センターによる福島県沿岸における海水中の放 射性セシウム濃度に関する調査(「福島県沿岸における海水中の放射性セシウムの推移」)に おいても、平成23(2011)年内に海水中の放射性セシウム濃度は検出限界以下まで下がり、 以後も安定的に推移しています(図Ⅱ−5−5)。 図Ⅱ−5−3 汚染水対策の全体像 1号機㻌 2号機㻌 3号機㻌 4号機㻌 海側遮水壁 凍土方式による 陸側遮水壁 凍土方式による 陸側遮水壁 ④ 排水路 ⑤ ⑥ ② ① ⑩ ⑪ 地盤改良 地盤改良 ⑨ ⑦ ⑧ 㻌㻌㻌 㻌 㻌㻌㻌 資料:原子力災害対策本部廃 炉・汚染水対策チーム 事務局 サブドレン 地下水バイパス 主な予防的・重層的対策 ① 更なる地下水流入抑制対策(フェーシングの検討)○ ② タンク堰のかさ上げ・二重化 ◆ ③ 溶接型タンクの設置加速と信頼性向上 ◆ ④ 排水路の暗渠化、排水路の港湾内へのルート変更 ◆ ⑤ タンクからの微小漏えいの検出 ◆ ⑥ 土壌中のストロンチウム捕集 ● ⑦ 汚染水移送ループの縮小 ◆ ⑧ 建屋の止水(建屋外壁貫通部、建屋間ギャップ、建屋周辺)◆ ⑨ 大規模津波対策(建屋の防水性向上、防潮堤等の対策検討)◆ ⑩ 港湾内の海水の浄化、港湾内の海底土の被覆 ● ⑪ 放射性物質が除去できる汚濁防止膜等の活用 ●     等 汚染水対策の三つの基本方針 1.汚染源を取り除く ● 2.汚染源に水を近づけない ○ 3.汚染水を漏らさない ◆ 緊急対策 1.トレンチ内の高濃度汚染水除 去 ● 2.水ガラスによる汚染エリアの 地盤改良、アスファルト等に よる地表の舗装、地下水のく み上げ ○◆ 3.山側から地下水をくみ上げ (地下水バイパス)○ 抜本対策 4.サブドレンによる地下水くみ 上げ ○ 5.海側遮水壁の設置 ◆ 6.凍土方式による陸側遮水壁の 設置 ○ 7.より処理効率の高い汚染水浄 化設備を整備 ● 等

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第Ⅱ章

資料:原子力規制委員会の資料に基づき 水産庁で作成 図Ⅱ−5−4 福島第一原発周辺の海水の放射性物質濃度分布の推移 Bq/L 平成24年 (2012) 4月 25年 (2013) 4月 26年 (2014) 4月 0.45 0.40 0.35 0.30 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00 セシウム137 セシウム134 〈上層(表層∼2m)〉 20km 10km 5km 37°30′ 福島第一 原子力発電所 37°15′ 141°00′ 141°15′ Bq/L 平成24年 (2012) 4月 25年 (2013) 4月 26年 (2014) 4月 0.09 0.08 0.07 0.06 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 0.00 セシウム137 セシウム134 〈上層(表層∼2m)〉 Bq/L 平成24年 (2012) 4月 25年 (2013) 4月 26年 (2014) 4月 0.45 0.40 0.35 0.30 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00 セシウム137 セシウム134 〈下層(海底より2∼3m上)〉 Bq/L 平成24年 (2012) 4月 25年 (2013) 4月 26年 (2014) 4月 0.09 0.08 0.07 0.06 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 0.00 セシウム137 セシウム134 〈下層(海底より2∼3m上)〉 図Ⅱ−5−5 福島県沿岸の海水の放射性物質濃度の推移 Bq/L 20 15 10 5 0 水深7m 表層 水深7m 下層 〈勿来沖〉 平成23年 (2011) 5月 24年 (2012) 1月 25年 (2013) 1月 7月 Bq/L 20 15 10 5 0 小名浜沖磯根漁場 表層 小名浜漁港内 下層 〈小名浜〉 平成23年 (2011) 5月 24年 (2012) 1月 25年 (2013) 1月 7月 Bq/L 30 25 20 15 10 5 0 久之浜沖磯根漁場 表層 久之浜漁港内 下層 〈久之浜〉 平成23年 (2011) 5月 24年 (2012) 1月 25年 (2013) 1月 7月 Bq/L 20 15 10 5 0 水深7m 表層 水深7m 下層 〈四倉沖〉 平成23年 (2011) 5月 24年 (2012) 1月 25年 (2013) 1月 7月 Bq/L 20 15 10 5 0 水深7m 表層 水深7m 下層 〈江名沖〉 平成23年 (2011) 5月 24年 (2012) 1月 25年 (2013) 1月 7月 Bq/L 20 15 10 5 0 水深7m 表層 水深7m 下層 〈鹿島沖〉 平成23年 (2011) 5月 24年 (2012) 1月 25年 (2013) 1月 7月 Bq/L 20 15 10 5 0 水深7m 表層 水深7m 下層 〈磯部沖〉 平成23年 (2011) 5月 24年 (2012) 1月 25年 (2013) 1月 7月 Bq/L 20 15 10 5 0 水深7m 表層 水深7m 下層 〈新地沖〉 平成23年 (2011) 5月 24年 (2012) 1月 25年 (2013) 1月 7月 1F 資料:福島県水産試験場HP「福島県沿岸の 海水モニタリング結果(福島県)」

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第Ⅱ章

(福島県沖での試験操業の状況)  福島県沖での試験操業は、放射性物質の検査結果に基づき、漁業者、水産加工・流通業者、 研究機関、行政等で構成されている福島県地域漁業復興協議会での協議により、漁獲対象魚 種を決めて実施しています。平成24(2012)年6月の開始当初は、相馬市の沿岸から50㎞以 東でのヤナギダコ、ミズダコ、シライトマキバイの3種を対象に始められ、その後、安全性 が確認された魚種及び海域についても順次試験操業の対象に加えてきました。  試験操業では、漁獲された魚介類のうち試験操業の対象ではない魚介類は、全て海に戻さ れます。その後、水揚げされた魚介類は、放射性物質の検査を受け、放射性物質が基準値を 下回った魚介類のみが出荷されています。基準値を上回った魚介類については、流通経路に 乗らないよう厳しい措置を講じています。例えば、試験操業対象魚種であったユメカサゴは、 平成26(2014)年2月に一部のユメカサゴから基準値を超える放射性セシウムが検出された ことから、当日漁獲された全てのユメカサゴの出荷を停止するとともに、ユメカサゴを試験 操業対象魚種から外し、流通させないようにする措置が講じられました。なお、その後もユ メカサゴの放射性物質検査を続けた結果、基準値を安定的に下回って推移していると判断さ れたことから、平成26(2014)年9月から改めて試験操業の対象種とされました。  平成27(2015)年2月現在、試験操業の対象海域は東電福島第一原発から半径20㎞以内を 除く福島県沿岸域全域に広がり、対象魚種も58魚種まで拡大されました(図Ⅱ−5−6、表 Ⅱ−5−1)。試験操業の参加隻数は当初の6隻から延べ786隻(平成27(2015)年2月現在)、 漁獲量も平成24(2012)年の122トンから平成26(2014)年には740トンに増加するなど、福 島県沖の本格的な漁業再開に向けて一歩ずつ着実な取組が行われているところです。今後と も、漁獲物の安全を確保しながら試験操業を拡大していくことが、本格操業の再開につなが るものと考えられます。

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第Ⅱ章

水深120m 135m 150m いわき市地方卸売市場 小名浜魚市場 久之浜 相馬双葉漁業協同組合 相馬原釜地方卸売市場 20km A B ⑥ ⑦ ① ② ③ ④ ⑤ 図Ⅱ−5−6 福島県沖での試験操業の実施状況(平成27(2015)年2月現在) 資料:福島県漁業協同組合連合会 〈試験操業海域〉 〈試験操業における漁業種類別漁場拡大の経過〉 N37°10_8′ N37°18_9′ ロラン2400 漁 法 魚 種 承認月日 相双地区 いわき地区 備 考 H24. 6 .18 ① ― H24.10.19 ①∼② ― H25. 2 .18 ①∼③ ― 底びき網 ミズダコ等 H25. 5 .24 ①∼④ ― H25. 8 .28 ①∼④ ⑤ H25.12.25 ①∼⑥ 南北漁場の統合 H26. 8 .25 ⑦ H24. 7 .12 ① ― H25. 6 .24 ― 沖合タコカゴ ミズダコ等 H25. 5 .29 ― コウナゴ H25. 3 .27 A ― 船びき網 H26. 2 .25 A B シラス H25. 8 .28 A B 固定式さし網 イシカワシラウオ H26. 2 .25 A B ヒラツメガニ等 H26. 5 .29 ― B 沿岸カゴ ヒラツメガニ等 H26. 5 .29 ― B 潜水 アワビ H26. 4 .25 ― B 貝桁網 ホッキガイ H26. 5 .29 ― B 流し網 マイワシ等 H26. 5 .29 ― ①、②の内 ロラン2400以北 第一原発半径20kmを 除く北緯37度10.8分 以北 ①、⑥の内 北緯37度18.9分以北 平成27(2015)年現在、 試験操業は東電福島第一 原発の半径20km圏内を除 く福島県沖で実施。

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第Ⅱ章

 木戸川(福島県)は、本州における遡そじょう上サケの捕獲数で平成7(1995)年に第1位になるなど、日本 有数のシロザケが回帰する川として知られています。木戸川の水産資源を管理している木戸川漁業協同組 合では、遡そじょう上してきた親魚の捕獲とふ化場での人工ふ化を実施し、毎年約1,200万~1,500万尾のシロ ザケ稚魚を放流して、木戸川のシロザケ資源の維持に努めてきました。  しかし、東日本大震災により人工ふ化施設等は倒壊し、さらに、東電福島第一原発事故の影響で施設が ある楢葉町のほぼ全域が立入りが禁じられる警戒区域に指定されたことから、復旧作業が大きく遅れ、平 成23(2011)年以降、種苗放流ができない状況が続きました。  平成24(2012)年8月に、同地域が日中には立入りができる避難指示解除準備区域に再編されると、 早速関係者によるシロザケの試験捕獲が実施され、放射性物質濃度が検出限界値未満であることが確認さ れました。こうしたことから、平成26(2014)年4月に、いわ き市の漁業協同組合から譲り受けたシロザケ稚魚を用いて、震災 後初めて稚魚の放流を行いました。放流尾数は約1万尾と例年に 比べれば小規模ですが、シロザケ放流の本格再開へ向けた大きな 一歩となりました。また、平成26(2014)年8月には復興交付 金の交付が決まり、国の支援の下で1,000万尾以上のシロザケ稚 魚を生産できるふ化場や、シロザケの漁獲に重要なヤナ場、捕獲 したシロザケを切り身やイクラに加工する施設等の再建等、シロ ザケ放流の本格的な再開に向けた動きが着実に進んでいます。 4年ぶりの木戸川へのシロザケ稚魚の放流(写真提供:楢葉町)

木戸川でのシロザケ放流の再開(福島県 木戸川漁業協同組合)

事例

1 ミズダコ 2 ヤナギダコ 平成24年 6 月 底びき網・カゴ 3 シライトマキバイ 沖合性のツブ貝 4 キチジ 5 ケガニ 底びき網 6 スルメイカ 7 ヤリイカ 平成24年 8 月 8 エゾボラモドキ 底びき網・カゴ 沖合性のツブ貝 9 チヂミエゾボラ    〃 10 ナガバイ 底びき網    〃 11 アオメエソ 地方名メヒカリ 12 ミギガレイ 平成24年11月 底びき網 地方名ニクモチ 13 ズワイガニ 14 コウナゴ 平成25年 3 月 船びき網 イカナゴの稚魚 15 ヤナギムシガレイ 平成25年 4 月 底びき網 地方名ヤナギガレイ 16 ユメカサゴ 地方名ノドグロ 17 キアンコウ 平成25年 8 月 底びき網 18 シラス 船びき網 カタクチイワシの稚魚 19 アカガレイ 20 サメガレイ 21 アカムツ 22 チダイ 23 ヒレグロ 平成25年10月 底びき網 24 マアジ 25 メダイ 26 ケンサキイカ 27 ジンドウイカ 地方名ヒイカ 28 ベニズワイガニ 29 ヒゴロモエビ 平成25年12月 底びき網 地方名ブドウエビ 30 ボタンエビ 31 ホッコクアカエビ 表Ⅱ−5−1 福島県沖での試験操業の対象魚種(平成27(2015)年2月現在) 資料:福島県漁業協同組合連合会 魚種名 計画承認 主な漁法 備  考 魚種名 計画承認 主な漁法 32 イシカワシラウオ 平成26年 2 月 固定式さし網 33 スケトウダラ 底びき網 34 アワビ 平成26年 4 月 潜水 35 ヒラツメガニ 固定式さし網、カゴ 36 ガザミ 37 ホッキガイ 平成26年 5 月 貝桁網 38 マイワシ 39 マサバ 流し網 40 ゴマサバ 41 ウマヅラハギ 42 オオクチイシナギ 43 カガミダイ 44 カナガシラ 45 ソウハチ 46 ホウボウ 平成26年 8 月 底びき網 47 マガレイ 48 マダイ 49 マトウダイ 50 オキナマコ 51 サワラ 52 ブリ 流し網 53 シロザケ 平成26年 9 月 さし網 54 ヒメエゾボラ 55 モスソガイ 平成26年10月 カゴ 56 マダコ 57 サヨリ 平成26年12月 船びき網 58 マダラ 平成27年 1 月 底びき網

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第Ⅱ章

(福島県及び近隣県での水産物の放射性物質調査)  試験操業以外の漁業においては、消費者の手元に届けられる水産物の安全性を確保するた め、国、関係都道県及び関係業界団体が連携しながら、福島県及び近隣県において週1回程 度の水産物サンプリング調査を行い、その結果、1地点のみで基準値を超過した場合は各自 治体の要請による出荷の自粛を、複数の地点で基準値を超過した場合は国による出荷制限措 置を実施することとしています(図Ⅱ−5−7)。さらに、市場や自治体等においても自主 的に検査を行い、検査結果をホームページ等で公表しているところがあります。  水産物の放射性物質モニタリング調査結果によると、基準値を超える放射性物質が検出さ れた水産物の割合は着実に低下しています(図Ⅱ−5−8)。また、国際原子力機関(IAEA) は、「IAEA/FAO合同部門は、食料のモニタリング及び食料の放射能汚染に関する事項への 対応のために採られた措置は適切であり、食料供給網はコントロールされていると理解す る」と評価しています(平成27(2015)年2月27日)。 調査区域 県域を区分 各区域ごとの主 要水揚港で検体 採取 調査対象魚種 主要生産物 50ベクレル/kg 超となったこと のある品目 調査頻度 原則週1回 漁期前の検査 (カツオ、サンマ 等) 自粛 出荷制限指示 1地点のみで基準値 超えとなった場合は 自治体による自粛。 複数の地点で基準値 超えとなった場合は 国による出荷制限。 出荷 基準値に近い値となっ た場合、出荷を自粛す る自治体・漁業団体も ある。 自治体が中心となって調査計画策定 調査強化 近隣県の 調査結果 基準値に近い値 >100ベクレル/kg ≦100ベクレル/kg 調 査 実 施 【出荷制限等の実効性確保】 対象魚種の水揚げは行わない(調査用検体を除く)。 水揚港において市場関係者がこれを確認。 図Ⅱ−5−7 水産物の放射性物質調査の枠組み 平成23 (2011) (2012)24 (2013)25 (2014)26 7∼ 8月 4∼ 6月 10∼12月1∼3月 4∼6月7∼8月10∼12月3月1∼ 6月4∼8月7∼10∼12月1∼3月4∼6月 7∼8月10∼12月1∼3月 27年 (2015) 総検体数: 28,732検体 100ベクレル/kg超の検体数: 2,442検体 100ベクレル/kg以下の検体数: 26,290検体 100ベクレル/kg超 100ベクレル/kg以下 超過率 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 100 50 0 % 検体 図Ⅱ−5−8 水産物の放射性物質モニタリング調査結果(平成27(2015)年4月9日現在) 資料:水産庁調べ 平成23 (2011) (2012)24 (2013)25 (2014)26 7∼ 8月 4∼ 6月 10∼12月1∼3月4∼6月 7∼8月10∼12月3月1∼6月4∼ 8月7∼10∼12月1∼3月4∼6月7∼8月10∼12月1∼3月 27年 (2015) 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 100 50 0 % 検体 〈福島県で採取された水産物〉 総検体数: 41,026検体 100ベクレル/kg超の検体数: 529検体 100ベクレル/kg以下の検体数:40,497検体 100ベクレル/kg超 100ベクレル/kg以下 超過率 〈福島県以外で採取された水産物〉

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第Ⅱ章

(安全な水産物の提供と国内外への情報提供の充実)  基準値を超える放射性セシウムを含む水産物については、国、関係都道県及び関係団体の 連携により流通を防止する措置を講じており、安全な水産物のみが消費者の手元に届けられ る仕組みが整えられています(図Ⅱ−5−9)。その上で、風評による被害を防止するため、 水産物の放射性物質モニタリング調査と当該調査結果のわかりやすい形での広報を引き続き 実施するとともに、東日本太平洋で漁獲された生鮮水産物を中心に、生産水域の区画及び水 域名を明確化した原産地表示を行うことを推奨しています。また、全国各地で開催される様々 な催し物を通じて、水産物を含む福島県産食材の安全性の広報と即売会等による販売促進が 行われています。  国では、「食べて応援しよう!」のキャッチフレーズの下、 被災地等で生産・加工された農林水産物・食品の積極的な 消費を官民で連携して推進しており、これまで被災地産食 品の販売フェアや社員食堂での利用等1,106件の取組が行 われてきたところです(平成27(2015)年3月末現在)。 平成26(2014)年10月、農林水産省においても、福島県産 農林水産物・食品の即売会や福島県産の食材を使用したお 弁当を食べて応援する会を開催しました。  また、我が国の水産物は各国に輸出されていることから、 国内の消費者だけでなく海外の消費者や関係機関等への広 報活動も強化する必要があります。このため、水産物の放 射性物質モニタリング調査結果をホームページを通じて英 語、中国語及び韓国語で公表しているほか、各国政府や報道機関に対し、放射性物質に係る 調査結果や安全確保のために我が国が講じている措置等の説明等を行うとともに、日本産農 林水産物・食品の輸入規制の緩和・撤廃を働きかけています。このような取組の結果、平成 26(2014)年11月までに、11か国が水産物に対する規制措置を撤廃しています(表Ⅱ−5− 2)。また、規制措置を講じている国から求められている放射性物質に係る検査証明書や産 地証明書等について、引き続き都道府県や関係機関の協力を得ながら円滑に発行するよう努 めています。  特に、韓国は、平成25(2013)年9月以降、福島県等計8県の水産物の輸入を全面的に禁 止するなど規制措置を強化したことから、東電福島第一原発の状況と我が国が実施している 措置について特に丁寧な説明を行うとともに、世界貿易機関(WTO)の衛生植物検疫(SPS) 委員会において、再三にわたり日本の水産物が科学的に安全であるとの説明を行っています。 その結果、同国政府は、日本の水産物の安全性に関して民間の有識者等からなる「専門家委 員会」を設置し、平成26(2014)年12月及び平成27(2015)年1月の2回にわたり専門家が 我が国で現地調査を行うなど、規制措置の見直しについての検討を行っています。 福島県産食品の即売会 (平成26(2014)年10月)

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157 第Ⅱ章

注:自主的な出荷自粛の実施・解除については、各自治体・漁業関係団体が独自に決めており、ここでは一般的な例を記した。 調 査 を 強 化 基準値超え (>100ベクレル/kg) 原子力災害対 策本部長によ る出荷制限指 示      各自治体、漁 業関係団体に よる出荷自粛 措置     他の地点で も基準値超 え     各自治体で当 該品目の出荷 制限を関係漁 業団体に要請 複数の場所で 少なくとも1 か月以上(計 3回以上)の 検査結果が全 て基準値を安 定的に下回る 出荷制限指示 の解除要件に 準じて、基準 値を安定的に 下回る    調査を強化し、 動向を把握   他の地点で は基準値超 えがない  図Ⅱ−5−9 水産物の出荷制限又は自主規制措置の実施・解除に至る流れ(海産魚) 表Ⅱ−5−2 海外の輸入規制措置の状況(平成27(2015)年3月3日現在) 対象となる都道府県 対象となる食品(水産品に限る) 主な規制内容 福島 イカナゴ、ヤマメなど48品目の水産品 群馬 ヤマメ、イワナ 栃木 ウグイ、イワナ、ヤマメ 茨城 メバルなど10品目の水産品 輸入停止 宮城 スズキなど9品目の水産品 韓国※ 千葉 ギンフナ 岩手 マダラ、イワナ、ウグイ、スズキ、クロダイ 青森 マダラ 北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、 群馬、千葉、東京、神奈川、愛知、三重、愛媛、 上記県産品目を除く全ての水産品 放射性物質検査証明書を要求 熊本、鹿児島(16都道県) 上記16都道県以外の都道府県 全ての食品 産地証明書を要求 宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、 全ての食品 輸入停止 中国 東京、新潟、長野(10都県) 上記10都県以外の都道府県 水産物 放射性物質検査証明書及び産地証明書を要求 インド 全ての都道府県 加工食品 放射性物質検査報告書を要求 ネシア 水産物 放射性物質検査証明書を要求 タイ 宮城、福島、群馬(3県) 全ての食品 放射性物質検査報告書を要求 上記3県以外の都道府県 産地証明書又は原産地証明書を要求 宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、 放射性物質検査証明書を要求 エジプト 東京、神奈川、山梨、静岡(11都県) 全ての食品 上記11都県以外の都道府県 産地証明書を要求 シンガ 福島 輸入停止 ポール 茨城、栃木、群馬(3県) 福島、茨城、栃木、群馬(4県)以外の都道府県 水産物 放射性物質検査証明書を要求産地証明書を要求 福島、茨城、栃木、群馬、千葉(5県) 水産物 放射性物質検査証明書を要求 香港 加工食品 香港にてサンプル検査 上記5県以外の都道府県 全ての食品 福島、茨城、栃木、群馬、千葉(5県) 全ての食品 輸入停止 台湾 上記5県以外の都道府県 水産物 台湾にて全ロット検査 加工食品 台湾にてサンプル検査 岩手 ウグイ、クロダイ、スズキ、イワナ(養殖を除く) 宮城 アユ(養殖を除く)など6品目の水産品 福島 アユ(養殖を除く)、アイナメなど41品目の水産品 米国 茨城 スズキなど7品目の水産品 輸入停止 栃木 イワナ(養殖を除く) 群馬 ヤマメ(養殖を除く)、イワナ(養殖を除く) 千葉 コイ、ギンブナ、ウナギ 全ての都道府県 輸入停止品目を除く全ての食品 米国にてサンプル検査 ブラジル 福島 全ての食品 放射性物質検査証明書を要求 福島 全ての食品 放射性物質検査証明書を要求 岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉(7県) 水産物(海藻、活きた魚及びホタテを除く) 輸入国にてサンプル検査 EU 上記品目を計50%以上含む加工品・調整品 福島を除く都道府県 上記以外の食品 産地証明書を要求輸入国にてサンプル検査 福島、茨城、栃木、群馬、千葉、東京(6都県) 全ての食品 放射性物質検査証明書を要求 上記6都県以外の道府県 ロシアにてサンプル検査 ロシア 青森、岩手、宮城、山形、福島、茨城、千葉、 輸入停止 新潟(8県)に所在する水産加工会社の施設 水産品・水産加工品 上記の8県以外に所在する施設 ロシアにてサンプル検査 インド 全ての都道府県 全ての食品 インドにてサンプル検査を実施 カ ナ ダ 6月13日 から全ての規制を解除 ミャンマー 6月16日 から全ての規制を解除 セ ル ビ ア 7月 1 日 から全ての規制を解除 チ   リ 9月30日 から全ての規制を解除 ○平成23(2011)年に輸入規制を解除した国(地域) メ キ シ コ 1月 1 日 から全ての規制を解除 ペ ル ー 4月20日 から全ての規制を解除 マレーシア 3月1日 から全ての規制を解除 ベ ト ナ ム 9月1日 から全ての規制を解除 豪州 1月23日 から全ての規制を解除 ○平成24(2012)年に輸入規制を解除した国(地域) ○平成26(2014)年に輸入規制を解除した国(地域) ○平成25(2013)年に輸入規制を解除した国(地域) ※ 福島、宮城、岩手、青森、群馬、栃木、茨城、千葉の8県からの全ての水産物については、全面的に輸入を禁止する措置を導入。

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第Ⅱ章

(漁業者等への賠償)  福島県沖での試験操業は徐々に拡大しているものの、福島県沖の漁業の本格的な再開時期 については依然として不透明な状況です。このため、福島県の多くの漁業者は、依然として 漁業によって生計を立てることができない状況です。また、福島県の一部の加工業者は、他 県産や輸入品を原料とすることにより操業を再開していますが、引き続き風評による取引の 停止や輸出先国における禁輸措置等により損害が生じています。  このため「原子力損害の賠償に関する法律*1」に基づき文部科学省に設置された原子力損 害賠償紛争審査会において、「東京電力株式会社福島第一、福島第二原子力発電所事故によ る原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(平成23(2011)年8月5日)及び「中間 指針第三次追補」(平成25(2013)年1月30日)が策定され、これらに基づいて風評被害を *1 昭和36年(1961)年法律第147号  いわき市(福島県)は、風評被害対策等を目的とした「いわき見える化プロジェクト」を実施しており、 その一環として平成26(2014)年9月に、試験操業の実施状況、魚介類に含まれる放射性物質のモニタ リング調査の最新結果及び試験操業から本格操業への移行に関する展望等を築地市場(東京都)の関係者 に説明しました。さらに、同年12月に東京都内において「復興支援感謝!“いわきの魚祭り”」を開催し、 新名物「いわきの浜のおやじ鍋」やアオメエソ(メヒカリ)の唐揚げの試食、いわき産水産物の即売会の ほか、安全性等に関する取組のパネル展示等により、いわき産水産物の安全性やおいしさを消費者に対し アピールしました。  福島県産水産物に対するいわれのない風評を払拭するためには、流通業者及び消費者に正確な情報を提 供することが重要ですが、水産物流通や消費に強い影響力を持つ組織が実態を正確に理解すれば、正確な 情報がより早く関係者に伝えられていくことが期待されます。特に、築地市場は世界でも有数の水産物取 扱規模を有する市場であり、その商圏は東京都内だけでなく関東一円を含んでいます。また、築地市場で の価格は、他の市場においても価格を形成する上で参考とされています。このため、国内外に強い影響力 を持つ築地市場が福島県産水産物に対して正しい認識を持つことにより、国内だけでなく国際的にも福島 県産水産物に対する正しい認識が広まることが期待されます。

築地市場等で福島県産水産物の安全性を説明(いわき市)

事例

表Ⅱ−5−2 海外の輸入規制措置の状況(平成27(2015)年3月3日現在) 対象となる都道府県 対象となる食品(水産品に限る) 主な規制内容 福島 イカナゴ、ヤマメなど48品目の水産品 群馬 ヤマメ、イワナ 栃木 ウグイ、イワナ、ヤマメ 茨城 メバルなど10品目の水産品 輸入停止 宮城 スズキなど9品目の水産品 韓国※ 千葉 ギンフナ 岩手 マダラ、イワナ、ウグイ、スズキ、クロダイ 青森 マダラ 北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、 群馬、千葉、東京、神奈川、愛知、三重、愛媛、 上記県産品目を除く全ての水産品 放射性物質検査証明書を要求 熊本、鹿児島(16都道県) 上記16都道県以外の都道府県 全ての食品 産地証明書を要求 宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、 全ての食品 輸入停止 中国 東京、新潟、長野(10都県) 上記10都県以外の都道府県 水産物 放射性物質検査証明書及び産地証明書を要求 インド 全ての都道府県 加工食品 放射性物質検査報告書を要求 ネシア 水産物 放射性物質検査証明書を要求 タイ 宮城、福島、群馬(3県) 上記3県以外の都道府県 全ての食品 放射性物質検査報告書を要求産地証明書又は原産地証明書を要求 宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、 放射性物質検査証明書を要求 エジプト 東京、神奈川、山梨、静岡(11都県) 全ての食品 上記11都県以外の都道府県 産地証明書を要求 シンガ 福島 輸入停止 ポール 茨城、栃木、群馬(3県) 水産物 放射性物質検査証明書を要求 福島、茨城、栃木、群馬(4県)以外の都道府県 産地証明書を要求 福島、茨城、栃木、群馬、千葉(5県) 水産物 放射性物質検査証明書を要求 香港 加工食品 香港にてサンプル検査 上記5県以外の都道府県 全ての食品 福島、茨城、栃木、群馬、千葉(5県) 全ての食品 輸入停止 台湾 上記5県以外の都道府県 水産物 台湾にて全ロット検査 加工食品 台湾にてサンプル検査 岩手 ウグイ、クロダイ、スズキ、イワナ(養殖を除く) 宮城 アユ(養殖を除く)など6品目の水産品 福島 アユ(養殖を除く)、アイナメなど41品目の水産品 米国 茨城 スズキなど7品目の水産品 輸入停止 栃木 イワナ(養殖を除く) 群馬 ヤマメ(養殖を除く)、イワナ(養殖を除く) 千葉 コイ、ギンブナ、ウナギ 全ての都道府県 輸入停止品目を除く全ての食品 米国にてサンプル検査 ブラジル 福島 全ての食品 放射性物質検査証明書を要求 福島 全ての食品 放射性物質検査証明書を要求 岩手、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉(7県) 水産物(海藻、活きた魚及びホタテを除く) 輸入国にてサンプル検査 EU 上記品目を計50%以上含む加工品・調整品 福島を除く都道府県 上記以外の食品 産地証明書を要求 輸入国にてサンプル検査 福島、茨城、栃木、群馬、千葉、東京(6都県) 全ての食品 放射性物質検査証明書を要求 上記6都県以外の道府県 ロシアにてサンプル検査 ロシア 青森、岩手、宮城、山形、福島、茨城、千葉、 輸入停止 新潟(8県)に所在する水産加工会社の施設 水産品・水産加工品 上記の8県以外に所在する施設 ロシアにてサンプル検査 インド 全ての都道府県 全ての食品 インドにてサンプル検査を実施 カ ナ ダ 6月13日 から全ての規制を解除 ミャンマー 6月16日 から全ての規制を解除 セ ル ビ ア 7月 1 日 から全ての規制を解除 チ   リ 9月30日 から全ての規制を解除 ○平成23(2011)年に輸入規制を解除した国(地域) メ キ シ コ 1月 1 日 から全ての規制を解除 ペ ル ー 4月20日 から全ての規制を解除 ギ ニ ア 6月22日 から全ての規制を解除 コロンビア 8月23日 から全ての規制を解除 マレーシア 3月1日 から全ての規制を解除 ベ ト ナ ム 9月1日 から全ての規制を解除 豪州 1月23日 から全ての規制を解除 ○平成24(2012)年に輸入規制を解除した国(地域) ○平成26(2014)年に輸入規制を解除した国(地域) ○平成25(2013)年に輸入規制を解除した国(地域) ※マレーシアにおいては、放射性物質検査の結果によっては、今 後も、必要に応じて規制措置が講じられる可能性あり。 ※ 福島、宮城、岩手、青森、群馬、栃木、茨城、千葉の8県からの全ての水産物については、全面的に輸入を禁止する措置を導入。

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第Ⅱ章

含めて被害を受けた漁業者等に対する東京電力(株)からの損害賠償が引き続き実施されて います。  国としては、引き続き被害を受けた漁業関係者の救済に向けて、関係各所への働きかけや 支援を継続していくこととしています。

(16)

第Ⅱ章

水産業・漁村地域の活性化を目指して

─平成26(2014)年度農林水産祭受賞者事例紹介─

 地域の水産業の活性化を目指し、漁業経営の改善や地域資源を活かしたビジネスに取 り組み、広く社会の賞賛に値する優秀な事例について、毎年秋に開催される農林水産祭 において表彰が行われます。平成26(2014)年度受賞者の概要を紹介します。  鹿児島県北部の中心に位置する阿久根市は、東 シナ海で獲れるウルメイワシ等を原料にした干物 が特産品となっています。しかし、同市で干物の 製造・販売を行っている株式会社下園薩男商店は、 干物が消費者に受け入れられなくなっていると感 じました。そこで、日本の伝統食である干物の魅 力を将来に伝えるため、新たな商品開発に着手し、 ウルメイワシの丸干しを洋風調味料で味付けした オイルとともに瓶詰めにした、革新的な新商品を 開発しました。  同社では、開発に当たり、最初に商品コンセプトやターゲットを明確かつ詳細に設定し、その上で デザイナーやフードコーディネーターといった専門家を含む社内外の様々な人たちの意見を取り入 れ、従来の丸干しの持つイメージとは大きく異なる、洗練され、かつ、洒落た商品をつくり上げまし た。また、原料となるウルメイワシも、旬の早朝に漁獲されたもののみを用いることにこだわり、製 造に当たっては衛生・品質管理を徹底するなど、品質向上にも努めています。  マーケティングから始めた今回の商品開発は、丸干しを知らなかった、あるいは興味のなかった購 入層を新たな顧客としてつかむことに成功しました。これら一連の製品開発・販売戦略の手法は、成 功例の一つとして後続企業の手本となっています。

天皇杯受賞(水産部門)

産物(水産加工品) 株式会社下しも園ぞの薩さつ男お商店(代表:下園 満 氏)

内閣総理大臣賞受賞(水産部門)

産物(水産加工品) 株式会社マルト水産(代表:卜うら部べ 悟 氏)  兵庫県相生市は播磨灘に面し、マガキの養殖が盛んです。同市に工場を有する株式会社マルト水産 は、大型で品質がよいとされる播磨灘産のマガキのうち、最も美味しい時期とされる2月以降のマガ キを原料とした「冷凍蒸しかき」を独自の製法により製造・販売し、売上の増大を実現しています。  従来、カキは加熱すると身が縮ちぢんで固くなるものでしたが、同社は、蒸せい籠ろうで蒸したようなふっくら としたカキの風味を再現するための製法を研究し、約20年の歳月を経て低圧蒸気を用いた低温加熱製

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第Ⅱ章

 佐賀県佐賀市にある有明海漁業協同組合広江支所は、我が国の主要な養殖ノリ産地である有明海佐 賀県海域の東部に位置しています。広江支所青年部は、新たなノリ養殖方法の導入に着手し、一定の 成果を得ました。  まず、青年部では、高品質なノリの生産について模索し、効率の良いノリ漁場の利用方法を検討す ることとしました。  その方法として、ノリ網枚数を2割削減して潮 通しを改善するとともに、「チョウチョウ張り」と 呼ばれる網張りの手法を導入し、病害対策や作業 効率の向上を図ることとしました。そして、これ らの取組を行った試験区と従来の方法による対照 区をノリ漁場に設け、3か年にわたって実証試験 に取り組みました。  次に、平成24(2012)年に、佐賀県有明水産振 興センターの協力を得ながら、試験漁場での潮の 流向・流速、病害の発生状況、生産枚数、品質及び作業時間等のデータを分析・評価しました。その 結果、試験区では、対照区と比べて、①潮通しが良くなり、病害の発生が減少すること、②生産枚数 が増加し、品質が向上すること、③作業時間の大幅な短縮が可能であることが明らかになり、この取 組が養殖方法の改善策として有効であることが確認できました。  この結果を踏まえ、広江支所では、網枚数の2割削減を義務付けるなど、支所全体で新たな養殖方 法の導入を進めています。また、海上での作業時間の短縮により陸上作業に従事できる時間が増え、 結果として陸上作業の効率化・労働環境の改善が図られるなど、地域の関係者全体に波及する複合的 な効果をもたらしています。

日本農林漁業振興会会長賞受賞(水産部門)

技術・ほ場(養殖) 佐賀県有明海漁業協同組合広ひろ江え支所青年部(代表:中島 祐介 氏) 法を確立し、加熱品ながらふっくらとした美味し い蒸しカキの製造に成功しました。また、専用工 場は、HACCP認定を取得しており、安全な製品 を製造しています。  このような特色のある「冷凍蒸しかき」は、中 間素材として新しいマーケットの創出への重要な 商品になる可能性が高く、安全・安心の面でも、 これまでの加熱食用生カキに代わる商品として注 目されています。  また、地域のカキ養殖業者にとっては、生カキ の出荷盛期が終わる2月以降でもカキの価格維持が図られるとともに、カキ需要の増大によるカキ剥む き従事者の雇用機会の創出にも寄与するなど、地域社会の活性化にも貢献しています。

参照

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