• 検索結果がありません。

のは不適切であり、 「ディスコース・ポライトネス」(詳細は、宇佐美

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "のは不適切であり、 「ディスコース・ポライトネス」(詳細は、宇佐美"

Copied!
39
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

第1章はじめに

1.1 研究の背景

 会話の基本的な目的は言語を通しての情報の交換と目標の達成であり、それは参加 者間の相互作用によってなされる。そのため、会話の運用には、円滑なコミュニケー ションを図ることが不可欠であり、円滑なコミュニケーションを図るためには、ポラ イトな言語行動が重要な手段となる。

 我々は、円滑なコミュニケーションを図るために、相手と場面、主題などに応じて 異なる言語使用をしており、また、伝達内容が相手に負担をかける場合は、それに相 応しい適切な補償をしている。

 円滑なコミュニケーションを図るための代表的な言語行動に、敬語がある。日本語 と韓国語は、ともに複雑な敬語体系を持っていることでよく知られている。このよう な敬語を持っている言語においては、 「尊敬語」や「謙譲語」、 「丁寧語」のような 敬語が、円滑なコミュニケーションを図るために対人関係を調節するために重要な機 能を果たしている。

 そのため、様々な言語行動がある中、円滑なコミュニケーションを支える言語形式 として、日韓両言語の敬語及び待遇表現の研究(生田・井出1983、井上1975;1983、三 牧1989等)やその比較・対照研究(梅田1990;1992、荻野他1990;1993、金笑栄1993、千 舎(M。 1996、池田2000、李琴華2001等)が従来盛んに行われてきた。

 しかし、従来の敬語の研究は、日韓両言語において、主に、文レベル、あるいは、

発話行為レベルの言語形式のみに焦点を当て、その場面、相手、状況に応じた使い分 けの記述や使用実態調査、また、それに基づいた敬語使用の原則を打ち立てることに 重点が置かれてきている。つまり、スピーチレベル・シフトのようなスピーチレベル を動的な側面から捉えたものを含め、宇佐美(1993、2001b)が指摘しているように

「態勲無礼」などの言葉にも表されているような、言語形式の丁寧度の高い表現も、

用い方によっては、相手を不愉快にさせる、また、場合によっては、ため口の使用が 相手に親密感を与え、相手を心地よくさせるというような、実際の言語使用における

「対人関係調節効果」という観点から、敬語使用などを体系的に捉えようとした研究 は、ほとんどなされてこなかったのが現状である。言い換えて、宇佐美(2001b)も指 摘しているように、Brown&Levinson(1987)の定義する「円滑な人間関係を保つた めの言語行動」としてのポライトネスの観点からの研究は、日本語と韓国語ともに少

ない。

 ポライトネスとは、Brown&Levinson(1987)によれば、 「円滑な人間関係を保つ ための言語行動」として捉えられる。洋の東西を問わず、ポライトネスの概念の根源

(2)

は、相手のフェイスを脅かす行為に対する補償があり、その補償は主に言語を通して 行われると言えるだろう。つまり、ポライトネスは、円滑な人間関係を保つために、

相手のフェイスの侵害を最低限に抑え、意思の決定権を相手に与えることで心的な負 担を軽減させる話し手の配慮を意味するのであって、 「相手との葛藤や対立をなくし、

円滑な人間関係を保つための言語的なストラテジー」として誰にも適用できる普遍的 な概念と言えよう。ただし、言語は社会・文化的な構造を反映しているため、社会・

文化的な相違によってポライトネスの言語的な表現方式も変わってくるであろう。

 言語的なポライトネスには2つの側面があり、それは宇佐美(2001b)の言う「社会言 語学的規範や慣習に即した言語使用(language use that conforms to sociolinguistic nor ms and conventions)」と「話者個人の方略的な言語使用(strategic language use)」の側

面である1。従来、敬語を有する日本語のような言語においては、言語形式に反映さ れている敬語の使用法が、敬語使用の原則に制約されているため、方略的(strategic)

な言語使用の余地があまりないと主張されてきており(lde1989;Matsumoto1988等、宇 佐美1993から再引用)、Ide(1989)は、敬語を使う文化圏における言語的なポライトネ スは特定の言語形式を選択的に使う「わきまえ方式の言語使用(discernment)」の問題 で、敬語を使わない文化圏における言語的なポライトネスは相手のフェイスを配慮す る「働きかけ方式の言語使川(volition)」の問題であると主張している。これに対して、

宇佐美(2001b)によると「社会言語学的規範や慣習に即した言語使用」とは、すべて の言語社会に存在する、文字通り、規範的、慣習的な言語使用のことで、日本語にお いても特に敬語使用だけに限らず、 「親しい仲間とは常体で話す(ものだ)」というよ うなことも含んでいる。一方、 「話者個人の方略的な言語使用」とは、敬語を有する 言語、そうでない言語にかかわらず、基本的には、Brown&Levinson(1987)の定義 するポジティブ・フェイスとネガティブ・フェイス2に配慮した各個人の自発的な言 語行動を指している。例えば、日本語では、敬体が無標形である会話において、親し みを表すために、時々、常体を用いること(ダウンシフト)や、相手の話に興味を持っ ていることを示すためにあいつちを頻繁に打つなどの言語行動が「方略的な言語使

1「社会言語学的規範や慣習に即した言語使用」は、Ide(1989)のいう「わきまえ方式の 言語使用(discernment)」に、また「話者個人の方略的な言語使用」は、 Ide(1989)のいう

「働きかけ方式の言語使用(volition)」に似ている概念ではあるが、 「わきまえ」という 用語は、ほとんどが「敬語使用の原則に則った言語使用」のことを指しており、個人の方 略的な言語使用と共存し得るものとしての「社会言語学的規範や慣習に即した言語使用」

よりも、狭義のものであり、捉え方が異なるものである(宇佐美2001b)。そのため、本稿 では、宇佐美(2001b)の立場に立ち、 「社会言語学的規範や慣習に即した言語使用」と

「話者個人の方略的な言語使用」の用語を用いて論を進めることとする。

2後述の1.3.1.1節で説明するが、簡単に述べると、 「ポジティブ・フェイス」とは、相手 に好かれたい、認められたい、評価されたいという欲求であり、 「ネガティブ・フェイ ス」とは、人に立ち入られたくない、邪魔されたくないという欲求である。

(3)

用」と捉えられている(宇佐美2001b)。そして、宇佐美(2001b)は、 「社会言語学的規 範や慣習に即した言語使用」と「話者個人の方略的な言語使用」とは、排他的なもの ではなく、どの言語・文化においても共存しているものであると捉えている。宇佐美

(1993)では、研究結果に基づき、日本語では、言語形式の選択の余地が敬語使用の原 則に制約される度合いが高いだけに、かえって、そういう制約を受けない談話レベル の要素、即ち、スピーチレベル・シフトや話題導入の頻度、あいつちの頻度等の方に、

より顕著に個人の方略的な言語使用が反映されていることを指摘し、宇佐美(2001b)

では、ポライトネスは、日本語などの敬語を有する言語においても、英語などの敬語 を有さない言語においても、この「社会言語学的規範や慣習に即した言語使用」と

「話者個人の方略的な言語使用」の2つの側面から、またそれらの「相互作用」とい う観点から、談話レベルで捉える必要があると指摘している。つまり、それらは、お 互い補完関係にあり、大部分は実際の言語使用においてこの連続線上のどこかに現れ

るもので、その結果、この二つの要素が統合され、言語的なポライトネスの普遍性が 現れるのである。

 韓国語の場合を考えてみると、韓国社会では、上下関係が重視され、敬語法3がス ピーチレベル(話階)研究の中心になってきたため、尊敬語を使えば相手に対して礼儀 正しい振る舞いをしていると見なされてきたのは事実である。しかし、Hwang Juck−R yoon(1975)は人間関係の2つの次元、つまり親疎関係と上下関係以外に第3の次元の設 定(ポライトネス)の必要性を適切に指摘している。Hwang Juck−Ryoon(1975)はまた、

尊待はスピーチレベル(話階)や敬語法によって表れ、ポライトネスは抑揚や間接依頼、

ヘッジ(hedge、以下、ヘッジ)などの文法的な装置で表れると指摘している。 Sohn H o−min(1986)も敬語法とポライトネスの区分の必要性を認め、次の文章を挙げている。

(a)却望司召9叫.(わたくし先に行きます。)

(b)刈望対7}旦i烈合月亡}.(わたくし先に行ってみます。)

(b)にはヘッジ装置として 旦 と 烈うが使われ文章の意味を間接的にするため、敬語 法が同じにも関わらず、(b)の方が(a)より目上に対しての適切な表現として見なされ

る。つまり、敬語法だけでは説明しきれない言語現象が韓国語にあることが分かる。

 また、召竜勺(1999)は、韓国語ではいわば宇佐美(2001b)のいう「社会言語学的規 範や慣習に即した言語使用」が支配的ではあるが、 「話者個人の方略的な言語使用」

も確かに存在するとし、次の例文を挙げている。

3敬語法は、尊待法、待遇法などとも呼ばれる(召司習1999:51)。

(4)

(a)司芒]}2U誓司司

 (私の論文、今日返してくれ。)        (no honorifics+no strategy)

(b)ロ1吐む司,喜入1叫芒是τ斗留銀⊇.里皇昔香暑司看午殼L}6}干.

 (すまないけど、もし私の論文読み終わったら今日ちょっと返してもらえるか   なと思って。)       (no honorifics+strategy)

(c)刈芒是2U晋司手ス→1&.

 (私の論文今日返してください。)       (honorifics+no strategy)

(d)司舎曾月叫吐,喜入)刈七是1斗9〕⊇.鎮旦望皇吉毛}吾習手・昌午殼巳但フ}

  6}r19.

 (申し訳ありませんが、もし私の論文読み終わりましたら今日ちょっと返して   いただけないかなと思いまして。)     (honorifics+strategy)

 召司唱(1999)によると、例文は(a)〈(b)〈(c)〈(d)の順に丁寧な表現となる。これは、

韓国語では、 「社会言語学的規範や慣習に即した言語使用」が「話者個人の方略的な 言語使用」よりポライトネスにおいて優先することを示している。召竜〜昌(1999)は、

韓国語のポライトネスは一次的には、 「社会言語学的規範や慣習に即した言語使用」

として尊敬語などの敬語の適切な使用が前提とされなければならず、二次的には相手 に対する配慮とともに発話の力を緩和させる「話者個人の方略的な言語使用」で完成 されると指摘している。この例文で言うと、例文(a)(b)は「司[hay4]体」、例文(c)

(d)は「胡丘[hayyo]体」を使っていながら、例文(b)(d)には「話者個人の方略的な言 語使用」として「ロは民}司(すまないけど)」、 「喜入1(もし)」、 「香(ちょっと)」、

「〜璽午蚊し}斗ヱ(〜できるかなと思って)」などのヘッジが使用されており、相 手に対する配慮を表すことでポライトネスが完成されていると言える。このようなこ

とは日本語にも程度の差はあれ、当てはまると考える。

 以上のことは、 「円滑な人間関係を保つための言語行動」としてのポライトネスが 単に「尊敬語」や「謙譲語」または「丁寧語」のような、敬語の使用という、いわば

「社会言語学的規範や慣習に即した言語使用」だけで実現されるのではなく、 「話者 個人の方略的な言語使用」と共に実現されるものであり、 「社会言語学的規範や慣習 に即した言語使用」と「話者個人の方略的な言語使用」とは、排他的なものではなく、

どの言語・文化においても共存しているものであると捉えている宇佐美(2001b)の指 摘を裏付けている。つまり、敬語は、従来指摘されているように、日本語と韓国語の

4韓国語のローマ字表記はYale式に従う。

(5)

ような東洋圏の言語においては、対人関係の距離を調節する方略として重要な立場を 占めているものの、必ずしも敬語だけがそのような方略として働くとは限らず、他の 要素との相互関係も重要であることが窺える。

 宇佐美(1998)は、Brown and Levinson(1987)の基本的な枠組みを支持した上で、ポ ライトネス理論を個別言語・文化に影響を受けにくい、より普遍的なものにするため には、ポライトネスを文レベル、一発話レベルで扱うのは不適切であり、 「ディスコ ース・ポライトネス」(詳細は、宇佐美2001a;2001b;2002;2003b;Usami1999;2002;2006c;

2006d;2006eと本研究の1.3.1.1節を参照されたい。)という概念を導入する必要がある としている。ディスコース・ポライトネス理論における重要な新しい視点は、ポライ トネスを、 「言語行動におけるいくつかの要素がもたらす機能のダイナミクスの総 体」として捉えるということにある。円滑なコミュニケーションというのは、1つの 要素だけでは成り立たず、様々な要素が総合的に働いてこそ可能なことである。従っ て、実際の言語行動のダイナミズムをより正確に捉えるためには、1つの言語行動を 成す様々な要素を総合的に捉える「ディスコース・ポライトネス」(宇佐美1998;2001 a;2001b;2002;2003b;Usami1999;2002;2006c;2006d;2006e)という観点からの研究が必要 である。

1.2 研究目的

 本研究の関心は、円滑な人間関係を保つための言語行動としてのポライトネスが実 際の談話の中でどのように実現されるのかにある。円滑なコミュニケーションを図る ための言語的なポライトネスには「社会言語学的規範や慣習に即した言語使用」と

「話者個人の方略的な言語使用」の2つの側面があり、それらは、お互い補完関係に ある。そのため、諸言語にこの2つの要素が存在することに注目する必要があると考

えられる。

 言語的なポライトネスは、相手に負担をかける依頼行動などの前置き表現や間接表 現、あいつちや終助詞の使用など、様々な形で現れるであろう。本研究では、その中 でも、日本語と韓国語のような敬語を持っている言語において、ポライトネスに重要 な働きをする言語行動として重要な位置を占めているとされる、文レベルで捉える言 語形式のスピーチレベルとスピーチレベルを談話レベルで動的な側面から捉えたスピ ーチレベル・シフトを取り上げる。さらに、言語行動をより総合的に捉えるために、

敬語などのスピーチレベル以外のものとして、ポライトネスに重要な働きをすると考 えられる、談話レベルで捉えるヘッジを取り上げる。本研究では、スピーチレベルと スピーチレベル・シフト、またヘッジという言語行動の談話の中における機能と、こ れらを生じさせる要因(べ一スの性別、対話相手の年齢・性別)を敬語や語順などの点

(6)

で酷似した言語体系を有する日本語と韓国語における初対面社会人二者間の自然会話 の比較・対照を通じて明らかにすることを試みる。その際、日本語と韓国語における 対人コミュニケーションを円滑に進めるための言語的なポライトネスのあり方を、言 語間の普遍性を主張するポライトネス理論の考え方を発展させた、宇佐美(1998、200 1a、2001b、2002、2003b)、 Usami(1999、2002等)の「ディスコース・ポライトネス」

という観点から、文レベルと談話レベルにおける言語使用を総合的に分析する。さら に、日韓両言語のスピーチレベル、スピーチレベル・シフト、またヘッジという言語 行動の相違点と類似点を明らかにし、その言語行動に見られる日本語と韓国語の特徴 やその背景にある社会・文化的な価値観についても考える。

1.3先行研究

 ここでは、本研究の理論的な背景であるBrown&Levinsonのポライトネス理論と 宇佐美のディスコース・ポライトネス理論構想を概観したのち、それらの理論と本研 究との関連性について述べる。そして、本研究の分析対象である対人配慮行動として のスピーチレベルとスピーチレベル・シフト、またヘッジに関する先行研究を言 語別に分けて概観する。

1.3.1理論的な背景

1.3.1.1Brown&Levinsonのポライトネス理論と宇佐美のディスコース・ポライ トネス理論構想の概観

 Brown&Levinson(1987)の「ポライトネス理論」によると、1.1節でも述べたよう に、ポライトネスは、円滑な人間関係を保つために、相手のフェイスを脅かさず、意 思の決定権を相手に与えることで心的な負担を軽減させる話し手の配慮を意味する。

「相手との葛藤や対立をなくし、円滑な人間関係を保つための言語的なストラテジ ー」として誰にも適用できる普遍的な概念と言えよう。Brown&Levinson(1987)の

「ポライトネス理論」は、Goffman(1967)の「フェイス(Face)」という概念を導入し ながら、人間には「ポジティブ・フェイス(Positive Face)」と「ネガティブ・フェイ ス(Negative Face)」の2つの基本的な欲求があると想定するものである。 「ポジティ ブ・フェイス」とは、相手に好かれたい、認められたい、評価されたいという欲求で あり、その「ポジティブ・フェイス」を満たすためのストラテジーを「ポジティブポ ライトネス・ストラテジー」と言い、冗談を言うなどの15のストラテジーが挙げられ ている。また、 「ネガティブ・フェイス」とは、人に立ち入られたくない、邪魔され たくないという欲求である。 「ネガティブ・フェイス」を満たすためのストラテジー を「ネガティブポライトネス・ストラテジー」と言い、敬意を払うなどの10のストラ

(7)

テジーが提示されている。人間は、お互いがもつそれらの欲求を満たそうとして、

様々なポライトネス・ストラテジーを用いるとしている。Brown and Levinson(1987)

は、相手のフェイスを脅かす行為である「フェイス侵害行為(FTA:Face Threatening A cts)」をせざるを得ないときに、 「相手のフェイス侵害[FT(Face Threat)]度、(以下、

FT度)」を軽減するためにとる言語ストラテジーをポライトネスとして捉えている(宇

佐美2001a)。

 Brown&Levinson(1987)は、具体的に数量化できるわけではないが、そのような 人の基本的な欲求を脅かす行為(Face Threatening Act)の度合いを示すFT度は、3っの 要素によって規定されるとして、図1のように公式化している。

      Wx=D(S,H)十P(H,S)十Rx

Wx:フェイス侵害度(FT度)   S:話し手        H:聞き手   D:話し手と聞き手の社会的な距離(social distance)

  P:聞き手の話し手に対する力(power)

  Rx:特定の文化において、ある行為(x)が聞き手にかける負担の度合い

    (absolute ranking of imposition in the particular culture)

図1FT度の見積もり公式(Brown&Levinson1987)

 Brown and Levinson(1987)によると、 FT度は、図1のように「話し手と聞き手の社 会的な距離(D)」、 「聞き手の話し手に対する力(P)」 「特定の文化において、ある 行為xが聞き手にかける負担の度合い(Rx)」の総和によって見積もられる。

 また、Brown&Levinson(1987)の枠組みでは、ポライトネスは、 「話し手と聞き 手の社会的な距離(D)」、 「聞き手の話し手に対する力(P)」、 「特定の文化におい て、ある行為xが聞き手にかける負担の度合い(Rx)」の総和によって見積もられるF T度に応じて使い分けられる「話者のストラテジー」として捉えられている。そして 以下の5つが主要ストラテジ・一一一一 として挙げられており、FT度に応じて適切なポライト ネス・ストラテジーが選択され、このFT度が高くなればなるほど、よりポライトなス

トラテジーが必要になるとしている。ポライトネス・ストラテジーの選択を決定する 状況を図2に示す。

(8)

Lesser(FT小)

相手のフ   1.without redressive action, baldly(FT軽減行為なし)

      (直接表現)

  on record(明示的)

Do the FTA   with redressive action

4.off record(非明示的)

5.Don t do the FTA  (FTAを行わない)

2.positive politeness

(ポジティブ・ポライトネス)

3.negative politeness

(ネガティブ・ポライトネス)

Greater(FT大)

図2ストラテジーの選択を決定する情況(Br。wn&Levinson・1・987;宇佐美2001aから再引用)

 Brown&Levinson(1987)の「ポライトネス理論」は、ポライトネスに対する様々 な捉え方や研究のアプローチの中で、もっとも包括的な理論として、言語学のみなら ず、文化人類学、社会学、社会心理学など関連諸領域の研究者の興味を喚起し、高い 評価を受けている(宇佐美2002)。宇佐美(2001b)では、このようなBrown&Levinson

(1987)の「ポライトネス理論」について、総合的に判断して、現段階の発話行為レベ ルのポライトネスに関する理論としては、最も包括的であり、有効な理論であると評 価している。しかし、英語などの敬語を有さない言語と日本語などの敬語を有する言 語のポライトネスを、個別言語の特徴に左右されない、真に公平な同一の枠組みで比 較・検討できるものにするためには、以下のような問題点があると指摘している。

(1)発話行為レベル、多くて幾つかの発話行為の連鎖(sequences)レベルの分析に留  まっており、より長い談話におけるポライトネスをうまく説明できない。

(2)方略的言語使用としてのポライトネスに重きを置いているにもかかわらず、基 本的に、ポライトネスを文レベル、発話行為レベルで捉えているために、日本語  などのように語用論的に制約力をもつ複雑な敬語体系を有する言語における「文

(9)

 レベル、発話行為レベルのポライトネス」をうまく説明できないものになってい  る。つまり、逆に言えば、そのことが、敬語を有する言語においては、特に、方  略的言語使用は、文レベル、発話行為レベルには現れにくいという事実を明確に  している。

(3)(1)及び(2)の事実が、文レベル、発話行為レベルでポライトネスを捉えること  の問題点を、露呈している。つまり、文レベル、発話行為レベルでポライトネス  を捉えると、諸言語における文法構造の違いや、敬語を有する言語における敬語

使用の原則の制約などが強く影響するため、諸言語のポライトネスを公平に比  較・検討し、統一的に説明することが困難になる。

(4)英語などの敬語のない言語においても、厳然としてある、 「社会言語学的規  範」(sociolinguistic norms)が「話者の方略的な言語使用(strategic language use)」

 に与える影響が、ほとんど考慮されていない。

(5)ポライトネスを発話行為レベルにおけるフェイス保持のストラテジー(Face−

 saving strategy)として捉えているため、一見、 「フェイス侵害行為」(Face  Threatening Acts:FTA)がないように見うけられる「日常会話」(ordinary  conversation)などにおける「無標ポライトネス」(unmarked politeness)、即ち、

 「ある言語行動があって当たり前で、それが欠如して初めてポライトでないと感  じられる」ようなポライトネスが、うまく説明できない。

(6)(5)で述べた、 「特にポライトでもないが、失礼でもない」言語行動や、 「ポラ  イトでない」言語行動、つまり、 「インポライトネス」を、ポライトネス理論の  中で、どのように位置づけ、扱うのかが提示されていない。

(7)フェイス侵害度(FT度)の見積もりの公式を導入した点は評価できるが、この理  論は、どちらかと言うと、話し手に焦点を当てたものになっている。例えば、フ  ェイス侵害度(FT度)の見積もりに際しても、現実には、話し手の見積もりと、聞  き手の見積もりが異なる場合もままある。そのずれの度合いによっては、話し手  の意図に反して、聞き手が話し手の言語行動を、失礼だと受け取る場合もあるだ  ろう。このような聞き手の側からの観点や話し手と聞き手の相互作用の観点が、

 この理論には充分に組み込まれていない。

       宇佐美(2001b:24−25)より抜粋

 そこで、宇佐美(1998、2001b等)は、 Brown and Levinson(1987)のポライトネス理論 の基本的な枠組みを支持した上で、以上にまとめたようなポライトネス理論の問題点 を解決し、ポライトネス理論を個別言語・文化に影響を受けにくい、より普遍的なも のにするためには、敬語を有する諸言語の、それぞれ異なる敬語使用の原則を越えて

(10)

存在する「円滑なコミュニケーションのための言語行動」の原則を、敬語を有さない 言語のそれも含めて、公平に同じ枠組みで論じられるようにしなければならないと指 摘している。そして、そのためには、ポライトネスを文レベル、一発話レベルで扱う

のは不適切であり、 「ディスコース・ポライトネス」(詳細は、宇佐美

2001a;2001b;2002;2003b;Usami1999;2002等を参照されたい。)という概念を導入する必 要があるとしている。

 宇佐美(2008)によると、ディスコース・ポライトネス理論において、新しく提出さ れた鍵概念の主なものは、①「ディスコース・ポライトネス」、②「基本状態」、③

「有標ポライトネス」と「無標ポライトネス」、④「有標行動」と「無標行動」、⑤

「ポライトネス効果」、⑥「見積もり差(De値)」と、行為の適切性、ポライトネス効 果の関係、⑦「相対的ポライトネス」と「絶対的ポライトネス」の7つがある。以下 では、それぞれについて宇佐美(2008)から簡単に紹介し、本研究の適用についても述

べる。

 ①「ディスコース・ポライトネス(discourse politeness)」

 「ディスコース・ポライトネス」とは、 「一文レベル、一発話行為レベルでは捉え ることのできない、より長い談話レベルにおける要素、及び、文レベルの要素も含め た諸要素が、語用論的ポライトネスに果たす機能のダイナミクスな総体である」(宇 佐美2001a;2001b;2002;2003b;Usami1999;2002等)と定義される。

 本研究では、日韓の社会人の初対面会話における対人配慮が現れる言語行動の対照 を目的としている。円滑なコミュニケーションを行うための対人配慮が現れる言語行 動は1つの要素だけでは成り立たず、様々な要素が総合的に働いてこそ可能なことで あり、ディスコース・ポライトネスの観点からしか捉えられないと考える。

 ②「基本状態(default)」

 「基本状態」には、 「特定の『活動の型』における談話の『失礼のない典型的な状 態』」と「その談話の基本状態を構成する要素としての『特定の言語行動や言語項日 それぞれの典型的な状態』」の2種類がある。つまり、当該談話において「様々な言 語行動が占める構成比率(分布)」や、数多くの「同じ活動の型における失礼のない状 態の談話」における「各々の要素の平均的な生起率」や「談話展開パターンの展開」

などを基本状態として捉える。例えば、社会人の初対面会話においては、スピーチレ ベルの構成が、 「敬体6対常体1対丁寧度を示すマーカーなし3」であるのが基本状態

と捉えられる。

 ディスコース・ポライトネス理論が新たに組み込み、これまでのポライトネス研究 では扱われてこなかった最も重要な観点は、上述の2種類の「基本状態」を『媒介変 数(parameter)』として扱うことによって、ポライトネス効果を相対的に捉えるという

(11)

ことである。

 この観点を適用し、本研究では、日韓の社会人の初対面会話におけるスピーチレベ ルとスピーチレベル・シフト、また、ヘッジの「基本状態」をそれぞれ同定すること によって、そこから離脱した言語行動一スピーチレベル、スピーチレベル・シフト、

ヘッジーがもたらすポライトネスを相対的に捉えることを試みる。

 ③「有標ポライトネス(marked politeness)」と「無標ポライトネス(unmarked

P・1iteness)」

 ディスコース・ポライトネス理論では、ポライトネスを「有標ポライトネス」と

「無標ポライトネス」とに分けて考える。

 Brown and Levinson(1987)のポライトネス理論におけるポライトネスは、依頼行為 などのように、相手のフェイスを脅かす「フェイス侵害行為」を行わざるを得ないと きに、 「相手のフェイス侵害度を少しでも軽減するためにとるストラテジー」として 捉えられている。このような「フェイス侵害度の軽減行為」としてのポライトネスを、

ディスコース・ポライトネス理論では、 「有標ポライトネス」と呼ぶ。

 一方、フェイス侵害度軽減行為とは異なるタイプのポライトネスで、特定の状況で

「あって当たり前で、それが現れないときに初めてそれがないことが意識され、ポラ イトではないと捉えられる」という類のポライトネスを、 「無標ポライトネス」と呼

ぶ。なお、 「ポライトネス」の観点からは、談話の「基本状態」は「無標ポライトネ ス(相手のフェイスを侵害しない状態)」であると捉えられるとしている。

 本研究にこの概念を適用すると、談話レベルから見た、日韓の社会人の初対面会話 におけるスピーチレベルとスピーチレベル・シフト、また、ヘッジという言語行動の

「基本状態」は、それぞれの言語行動の「無標ポライトネス」であると捉えることが

できる。

 ④「有標行動(marked behavior)」と「無標行動(unmarked・behavior)」

 ディスコース・ポライトネス理論において、談話の「基本状態」は、ポライトネス の観点からは、 「無標ポライトネス」である。そして、談話の「基本状態」を構成す る要素としての言語行動を「無標行動」、各々の要素の基本状態から離脱する言語行 動、或いは、基本状態とは異なる一連の行動を、 「有標行動」と呼ぶ。

 本研究では、談話レベルから見た、日韓の社会人の初対面会話におけるスピーチレ ベルとスピーチレベル・シフト、また、ヘッジの「基本状態」を構成する一連の言語 行動がそれぞれの「無標行動」に当たると捉えられる。日韓のスピーチレベル、スピ ーチレベル・シフト、ヘッジの3つの言語行動の「無標行動」が異なった場合、日本 語におけるこれら3つの言語行動の基本状態を基に、韓国語における3つの言語行動の 基本状態を構成する一連の言語行動を捉えると、それが「有標行動」にあたると考え

(12)

ることができる。同様に、韓国語の基本状態を基に、日本語では「無標行動」に当た る3つの言語行動を捉えると、それも「有標行動」とみなすことができる。なお、敬 体が無標ポライトネスである会話において、親しみを表すために、時々、常体を使う

こと、つまり、ダウンシフトすることも「有標行動」と捉えられる。

 ⑤「ポライトネス効果(politeness effect)」

 ディスコース・ポライトネス理論では、「ポライトネス効果」とは、 「話し手の言語 行動に対する話し手と聞き手の『見積もりの差(Discrepancy in estimations:De値)』に よって引き起こされる、聞き手側から見た認知」を表す。また、話し手と聞き手の

「見積もり差」は、①「ある有標行動のフェイス侵害度」についての話し手と聞き手 の見積もり差、②「談話の基本状態」が何であるかについての話し手と聞き手の見積 もり差、③「フェイス侵害度の見積もりに応じて選択されたストラテジー」について の話し手と聞き手の見積もり差、の3つの観点から捉えられる。いずれにしても、

「ポライトネス効果」には、①プラス・ポライトネス効果、②ニュートラル・ポライト ネス効果、③マイナス・ポライトネス効果の3通りがある。それらを言い換えると、

①心地よい、丁寧だと感じる効果、②ニュートラルな効果(強調や話題転換などのよ うに、特に丁寧と感じるわけでも不愉快でもない効果:言語的談話効果等)、③不愉 快、失礼だと感じる効果である。

 本研究に適用すると、日韓の社会人の初対面会話におけるスピーチレベルとスピー チレベル・シフト、また、ヘッジという言語行動の基本状態が二者間で異なっていて それぞれが聞き手にとって有標行動である場合、その有標行動がもたらす効果も、

「プラス・ポライトネス効果」、 「ニュートラル・ポライトネス効果」、 「マイナ ス・ポライトネス効果」の3通りのうちのどれかになる。

 ⑥「見積もり差(Discrepancy in estimations:De値)」と、 「行為の適切性

(appropriateness of behavior)」、 「ポライトネス効果(politeness effect)」の関係

  「(フェイス侵害度の)見積もり差(De値)」とは、 「話し手と聞き手の、話し手の 言語行動のフェイス侵害度についての見積もりの差」を数値化して得られる値である

(宇佐美2006b:19)。

 話し手と聞き手の「見積もり差」が、0か、 「許容できるずれ幅(±α)」の範囲内に 収まる行動は、 「行動の適切性」の観点からは、 「適切行動」とみなされ不快感をも たらさない。つまり、ポライトネス効果の観点からは、プラス・ポライトネス効果か、

ニュートラル・ポライトネス効果を生む。また、話し手の見積もりが聞き手の見積も りよりも、 「許容できるずれ幅(α)」を超えて少ない場合、それは、行動の適切性の 観点からは、 「過少行動」となり、ポライトネス効果の観点からは、マイナス・ポラ イトネス効果(無礼)を生む。逆に、話し手の見積もりが、聞き手の見積もりよりも、

(13)

許容できるずれ幅(α)を超えて多い場合、それは、行動の適切性の観点からは、 「過 剰行動」となり、ポライトネス効果の観点からは、マイナス・ポライトネス効果(態 勲無礼)を生む。本研究においてもこの概念を適用してポライトネス効果を捉える。

 ⑦「相対的ポライトネス(relative politeness)」と「絶対的ポライトネス(absolute

politeneSS)」

 言語形式について言うなら、 「行く」より「いらっしゃる」のほうが丁寧度が高い とか、その他の条件が一定ならば、直接的表現より間接的表現のほうが、より丁寧で あるというような捉え方は、 「絶対的ポライトネス」を扱っていると言える。一方、

「相対的ポライトネス」は、例えば、いつも常体で話す相手(スピーチレベルの「基 本状態」が常体)に「敬語」を使うと、かえって皮肉やいやみになるという「マイナ ス・ポライトネス効果」を生むこともあるように、実質的に「ポライトネスの効果」

を生み出すのは、 「言語形式」それ自体の丁寧度ではなく、ある特定の「談話」の

「基本状態」からの離脱や回帰という言語行動の「動き」や、話し手と聞き手が、特 定の場面においてどのような言語行動が適当であると考えているかという「基本状態 の見積もり」の「差(ずれ)」から生まれるという捉え方である。本研究においてもこ の概念を重視して考察を行う。

 さらに、宇佐美(2008)では、 「ディスコース・ポライトネス」理論について、6つ の新しい視点があるとし、次のように述べられている。

 (1)ポライトネスを、 「言語行動におけるいくつかの要素がもたらす機能のダイナ ミクスの総体」として談話レベルから捉える。そして、そのように総体として捉えた ポライトネスを「ディスコース・ポライトネス」と呼んで、 「文/発話レベル」のみ から見たポライトネスと区別する。

 (2)「基本状態」という概念を導入し、総体としての「ディスコース・ポライトネ ス」を、当該談話の「基本状態」という「媒介変数(parameter)」として捉える。それ

とともに、ディスコース・ポライトネスを構成する各々の要素が「当該談話に占める 構成比率」や同じ活動の型における数多くの『失礼のない状態の談話』における

「各々の要素の平均的な生起率」や「談話展開パターンの典型」などをも、 「それぞ れの言語行動、談話展開パターンの基本状態」として捉える。

 (3)ディスコース・ポライトネス理論では、話し手が見積もる「ポライトネス・ス トラテジー」と、話し手が実際に行った言語行動についての話し手と聞き手の「見積 もり差:De値)」によって引き起こされる聞き手側から見た認知」としての「ポライ

トネス効果」を区別して考える。

 (4)ある特定の有標行動(一発話レベル・談話レベル)の「ポライトネス効果」は、

(14)

当該の談話やそれを構成する要素それぞれの「基本状態」を基にして、そこからの有 標行動の離脱の度合い(有標性)に応じて相対的に生まれてくるものであると捉える。

(5)また、それ以外にも「ポライトネス効果」は、そもそも「談話の基本状態」が何 であるかについての話し手と聞き手の見積もり差、 「フェイス侵害度の見積もりに応 じて選択されたストラテジー」についての話し手と聞き手の見積もり差に応じて、相 対的に引き起こされると考える。

 (6)ディスコース・ポライトネス理論は、この「相対的効果」という捉え方を理論 の核とする。

       宇佐美(2008:17−18)より抜粋

 このように、 「ディスコース・ポライトネス」理論は、ポライトネスを「文/発話 行為レベル」からだけでなく、 「談話レベル」で捉えることによって、言語構造が異 なる言語におけるポライトネスをも共通の枠組みで捉える普遍的な理論である。さら に、宇佐美(2008)でも指摘されているように、円滑な人間関係を確立・維持するため の言語行動としてのポライトネスだけではなく、話し手と聞き手の相互作用を考慮に 入れ、 「態勲無礼」といった行動も、同一の枠組みで捉えており、ポライトネス効果 は、言語表現それ自体の丁寧度ではなく、談話の基本状態からの離脱の度合いに応じ て相対的に生まれてくるという「相対的ポライトネス」を強調した、対人コミュニケ ーションにおけるポライトネスをより広い観点から体系化しようとするものである。

 以上、本研究の理論的な背景であるBrown&Levinson(1987)のポライトネス理論 と宇佐美(1998、2001a、2001b、2002、2003b)、 Usami(1999、2002、2006c、2006d、

2006e)のディスコース・ポライトネス理論構想を概観した。以下では、それらの理論 と本研究との関連性について述べる。

1.3.1.2本研究との関連性

 日本語と韓国語のように複雑な敬語体系を有する言語において、敬語使用の有無は、

話し手の聞き手に対する心的態度を示すストラテジーとして働いていると考えられる。

Brown&Levinson(1987)のポライトネス理論によると、我々が聞き手に対して尊敬 語、謙譲語や敬体等を使うことは、聞き手の「ネガティブ・フェイス」を満たすため の「ネガティブポライトネス・ストラテジー」の働きをしていると解釈でき、反対に 常体を使うことは、聞き手の「ポジティブ・フェイス」を満たすための「ポジティブ ポライトネス・ストラテジー」の働きをしていると解釈できる。宇佐美(1995、1999 b)は、初対面の会話という改まり度の高い場面においては、 「です/ます」のような 敬体が基本のスピーチレベルとして使われていると指摘している。これはBrown&L

(15)

evinson(1987)のポライトネス理論の「FT度」の公式からも予測できる結果である。

その一方で、彼らの公式に従うと、力(Power)のもっとも高い年上に対する会話が「F T度」がもっとも高く、従って、 「敬体」の使用頻度がもっとも高いことが予測され る。しかしながら宇佐美(1995等)、Usami(1999等)は、 「敬体」の使用頻度は同年齢 の聞き手に対してもっとも高く、年の差がある聞き手に対して、 「です/ます」や

「だ/である」などのような、話し手の聞き手に対する待遇態度を示すマーカーがな いものである「丁寧度を示すマーカーのない発話」の使用頻度が高いという結果を示 している。 「FT度」が高い会話において「丁寧度を示すマーカーのない発話」が多用 されていることは、宇佐美(1995)、Usami(1999)の指摘のように、それが1つのポライ

トネス・ストラテジーとして機能していることを示していると考えられる。また、李 恩美(2003、2004)、Lee&Usami(2006)では、日本語と同じ敬語体系を持っている韓国 語においても「丁寧度を示すマーカーのない発話」が、程度の差はあるものの、日本 語のように、ポライトネス・ストラテジーとして働いていることが指摘されている。

このように、 「丁寧度を示すマーカーのない発話」は、それ自体が対話相手に対する

「丁寧度を示すマーカー」のないものであるため、他のスピーチレベルの「敬体」と

「常体」との相互関係の中で、即ち、全体の談話の中でその機能が生まれると考えら れる。つまり、 「丁寧度を示すマーカーのない発話」も含み、スピーチレベルの機能 や全体像をよりダイナミックに捉えるためには、文末だけではなく発話文全体も含め たより広い範囲で見ることが重要であり、談話の中でそれらを総合的に捉える「ディ スコース・ポライトネス」という観点が必要である。

 一方、スピーチレベルとともに本研究のもう1つの研究対象であるヘッジ表現は、B rown and Levinson(1987)によると陳述緩和の機能があるもので、聞き手のネガティ ブ・フェイスに対する脅威を緩和することができ、聞き手の負担を最小限にするネガ ティブ・ポライトネス(non−imposing negative politeness)と関わっている。しかし、

Brown and Levinson(1987)の基本的な分析からすれば、ヘッジ表現は一般的にはネガ ティブ・ポライトネスに当たるが、時にポジティブ・ポライトネスの機能も持つ場合 もある、という極めてあいまいな定義をされている。ヘッジ表現のこのような機能は、

1文レベル・1発話行為レベルでは適切に捉えにくいものであり、談話レベルで捉える

必要がある。

 1.1節でも述べたように、敬語は日本語と韓国語のような敬語を持っている言語に おいては重要な立場を占めており、ポライトネス研究の主な対象となってきたのは事 実である。しかし、 「円滑な人間関係を保つための言語行動」としてのポライトネス が単に「尊敬語」や「謙譲語」または「丁寧語」のような、敬語という「社会言語学 的規範や慣習に即した言語使用」だけで実現されるのではなく、 「話者個人の方略的

(16)

な言語使用」と共に実現されるものであることに注目する必要がある。このことを考 えると、実際の言語行動のダイナミズムをより正確に捉えるためには、1つの言語行 動を成す様々な要素を総合的に捉える「ディスコース・ポライトネス」(宇佐美1998;

2001a;2001b;2002;2003b、 Usami1999;2002等)という観点からの研究は必須である と言えよう。

 円滑なコミュニケーションというのは、1つの要素だけでは成り立たず、様々な要 素が総合的に働いてこそ可能なことである。本研究では、研究目的の節でも提示した ように対話相手への配慮を表わすとされている表現の中で、 「社会言語学的規範や慣 習に即した言語使用」の側面が強いとされる言語形式のものとしてスピーチレベルを、

「話者個人の方略的な言語使用」の側面が強いとされる言語形式以外のものとしてヘ ッジを取り上げ、談話の中でそれぞれの機能を「ディスコース・ポライトネス」とい う観点から調べる。また、これらが円滑な人間関係を保つための言語行動としてどの ように相互作用しているかについても調査する。

 以下では、本研究の分析対象であるスピーチレベル5とヘッジに関する先行研究 を言語別に分けて概観するが、まず、スピーチレベルの先行研究から概観する。

1.3.2スピーチレベルとスピーチレベル・シフトの先行研究

 周知の通り、日本語と韓国語は文法構造が似ている上に、ともに複雑な敬語体系を 持っている点で類似しており、従来、言語行動の中でも日韓両言語の敬語及び待遇表 現の研究やその比較・対照研究は様々な角度から盛んに行われてきた。しかし、これ までの研究は、主に文レベルの言語形式に焦点を当てた、尊敬語、謙譲語、丁寧語の 使用実態調査などがほとんどであり、質問紙調査、小説・シナリオを資料とするもの が多く、実際の日常生活の言語行動を適切に捉えているとは言いがたい。実際の言語 行動のダイナミズムを捉えるためには、実際の自然会話を分析する必要があるが、あ る程度条件統制がなされて収集された自然会話をデータとした語用論的観点からの研 究は、特に韓国語においては、ほとんどなかったと言っても過言ではない。また、従 来の研究では、言語行動の選択の主な要因と言われている上下関係、親疎関係、性差 などの様々な要因を別々に分離して研究したものが多く、それらを総合的に捉えてい るものは、管見の限り見られない。さらにそれらの研究は、いずれも「でございます 体」、 「です/ます体」、 「だ/である体」など、 「丁寧度を示すマーカー」のあるも のの使用に着目したものであり(生田・井出1983、三牧1989、荻野他1990、♀舎噌199

5スピーチレベル(話階)とは、伝統的に等分という言葉で使われてきたが、近来に一般化 されてきている傾向で、文の終結形、またはこれに準ずる形態として表現される、聴者に 対する話者の待遇等級を意味する(金笑栄1993:3)。

(17)

6等)、あえて「『丁寧度を示すマーカー』のない発話」について取り上げている研究 は、宇佐美(2001a)、 Usami(1999;2002)、李恩美(2002、2004)、宇佐美・李恩美(200 3)、Lee&Usami(2006)以外には、ほとんどないのが現状である。

 敬語及び待遇表現やスピーチレベルの機能や全体像をよりダイナミックに捉える ためには、 「敬体」や「常体」などの「丁寧度を示すマーカー」のあるものだけでは なく、 「『丁寧度を示すマーカー』のない発話」も含めて談話レベルで総合的に捉え る必要があると考える。

 以下では、それぞれの言語によるスピーチレベルの研究について簡単にまとめるが、

まず、日本語におけるスピーチレベルの先行研究から概観する。

1.3.2.1日本語におけるスピーチレベルとスピーチレベル・シフトの先行研究  日本語における敬語やスピーチレベルとスピーチレベル・シフトに関する研究とし

て、井上(1972、1979、1983、2000)、水谷(1988)、メイナード(1993)、山本(1989)、

三牧(1989、1993、1996、1997)、岡田(1991)、生駒・志村(1993)、大浜他(1998)、宇 佐美(2001a等)、 Usami(1999、2002)、伊集院(2004)などがある。

 宇佐美(2001a等)、 Usami(1999、2002)、伊集院(2004)、大浜他(1998)などは、ポラ

イトネスという観点からスピーチレベル6とスピーチレベルのシフトを扱っているも のである。宇佐美(2001a)、 Usami(1999、2002)は、敬語使用を、対人関係調節行動と

しての広義の「ポライトネス」の1つの要素として捉え、対話相手の年齢、性を統制

して組み合わせた社会人同士の初対面二者間の72会話のデ・・一一・タに基づいて、 「ディス

コース・ポライトネス」という観点から日本語におけるスピーチレベルとスピーチレ ベルのシフトを分析している。Brown and Levinson(1987)のポライトネス理論の公式 に従うと、社会的距離(D)と負担の度合い(Rx)を一定にした場合、力(P)のもっとも 高い年上に対する会話が「FT度」がもっとも高いことになり、従って、 「敬体」の使 用頻度がもっとも高くなることが予測される。しかしながら、宇佐美(2001a等)の一 連の研究では、初対面の会話における「敬体」は、実際には、同年齢の対話相手に対 してもっとも多く使われるという結果を示している。そして、中途終了型発話文やあ いつち詞などの「丁寧度を示すマーカーのない発話」が総発話文数の約25〜30%を占 めており、そのような発話は、対目上や対目下という話者間の年齢、社会的地位が非 対称的な会話においてより多く使われていることを指摘し、その機能を、上下関係を

6伊集院(2004)では、 「スピーチスタイル」、三牧(1989、1993、1996、1997)では、 「待 遇レベル」と呼んでいる。ただし、 「スピーチスタイル」の「スタイル」という用語は、

話者の個人的な話のスタイルのイメージが強く、 「待遇レベル」の「待遇」は「です/ま す」体などの文体による待遇を示すものだけを指すには意味が広すぎると判断されたため、

本研究では「スピーチレベル」という用語を用いる。

(18)

明示することを避けたいという現代日本人の、平等を重んじる価値観の反映ではない かと解釈している。さらに、年上に対して敬体をより多く使うのではなく、年下に常 体をより多く使うという結果を提示し、現代の日本語の使用において対話相手への待 遇をより明確に表すのは敬体の使用ではなく、常体の使用とダウンシフトであると指 摘している。ただし、宇佐美では、べ一スとなった被験者が女性だけであり、言語使 用の実態をより幅広く捉えるためには、男性の場合との比較研究が必要であると考え られる。伊集院(2004)は、日本語母語話者(大学生)による場面(初対面母語場面と接 触場面)に応じたスピーチスタイルの選択とスピーチスタイルシフトのメカニズムをB rown&Levinson(1987)のポライトネス理論を用いて分析したものである。ここでは 母語場面と接触場面ともにダ体が無標のスピーチスタイルになっており、同じ初対面 会話でも、デス・マス体が無標のスピーチスタイルになっている社会人の初対面会話

(宇佐美2001a、 Usami1999;2002)とは違う傾向を見せている。話し手の属性もスピー チスタイルに影響を与える一要因であることが窺えるところである。三牧(1989、199 3、1996、1997)は、談話における待遇レベル・シフトを扱った一連の研究である。三 牧(1989、1993、1996)では、待遇レベル・シフトの主要な機能として心的距離の調節 と談話の展開標識を挙げており、特に三牧(1997)では、待遇レベル・シフトが、主に その心的距離の調節機能によって親密性や丁寧さを強調し、FTA補償ストラテジーと

しても有効に機能していることを明らかにし、待遇レベル・シフトとFTA補償ストラ

テジ・…一・・との関係を結びつけている。大浜他(1998)は、大学生同士の自由談話に見られ るスピーチレベルシフト現象を考察したもので、自由談話内に見られるスピーチレベ ルシフトは、談話機能によるものではなく、対話者間の心的距離に対応するものであ

ると指摘している。

 井上(1972、1979、1983)は、社会言語学的な観点からの敬語研究である。井上(1972、

1979)は、アンケv−一一・ト調査やビデオテープによる録画を材料とし、現代の若者の敬語 使用を調査したもので、話し相手の地位・年齢・親疎によって敬語の使われる割合が 左右され、特に、第三者への敬語の使用も話し相手に規定されると指摘している。さ らに、井上(1983)によると、東京の共通語において第三者への敬語は対者への敬語 の使用にほぼ連動して現れるとの調査結果を報告しており、敬語が丁寧語化・相対敬 語化していると指摘している。また、井上(2000)では、日本語の敬語は、かつては身 分敬語として、上下関係を敬遠すべき距離として表現する機能を持っていたが、最近

は、社交敬語として、親疎関係による心理的距離を表すことも多いと指摘している。

 次に、メイナード(1993)、山本(1989)、岡田(1991)、生駒・志村(1993)、水谷(198 8)などは、本研究で言う「丁寧度を示すマーカーのない発話」と同じ概念ではないが、

関連があると考えられる概念を扱った研究である。メイナード(1993)は、日本語母語

(19)

話者20組、計60分の日常会話(仲のよい友人同士の会話)に見られる文末表現を分析し ている。その結果として、終助詞、助動詞、 「裸のダ体」の割合が57%で、体言止め、

動詞の「一テ形」、接続詞、副詞句、格助詞、言いよどみの類、 「わけ」、 「もの」

などの形式名詞が43%であると報告している。メイナード(1993)で言及している動詞 の「一テ形」以外の体言止め、接続詞、副詞句、格助詞、言いよどみの類、 「わけ」、

「もの」などの形式名詞などの文末表現が本研究における丁寧度を示すマーカーのな い発話の範疇に入るものであるが、メイナード(1993)の研究から、その使用割合が高 いことが分かる。しかし、メイナード(1993)は、場面を仲のよい友人同士の会話に限 っており、より様々な場面での考察が必要であると考えられる。山本(1989)は、アン ケート調査と会話に見る日本人学生の文体を調べたものである。それによると、目上 に対して話す時、またフォーマルな場面や話題では「丁寧体」を使用すると意識して いるが、実際は、語形式上は「普通形」であるが文末のイントネーションにより丁寧 度を高くした「普通形丁寧体」を多く用いているとする。山本(1989)の「普通形丁寧 体」は、後述するが本研究で言う「丁寧度を示すマーカーのない発話」とも関わって いると考えられる。岡田(1991)、生駒・志村(1993)は言い切らない表現の丁寧度に対 する意識についての研究である。岡田(1991)は、会話のやりとりの形には、大別する

と「対話型」と「共話型」があるとしている。そして、日本語では「世間話」に限ら ず、いろいろな種類の会話が「共話的」姿勢で話されることが多いので、日本人は文 の最後まで聞かなくとも互いに相手の意図が察し合えるような習慣がついていること を指摘している。さらに、文末まで全部言わないのは、単に言わなくても分かるとい

う理由からだけでなく、そのような表現が待遇上の積極的な意味を持っているためで もあると指摘している。生駒・志村(1993)は、アメリカ人日本語学習者の、日本語に よる「断り」という発話行為の中に、英語から日本語へのプラグマティック・トラン スファーがあるかどうかを、談話完成テストを使って調査している。そのうち有害な トランスファーとして、日本語話者は地位が上の相手に対して、顕著に中途終了文を 使っているが、学習者は、話し相手の地位によって中途終了文の使用頻度をあまり変

えることなく、直接な断りを多用していることを指摘している。しかし、彼らが用い た談話完成テストというデータ収集法は、実際の言語行動を捉えるという目的のため には十分なものとは言い難い。この目的のためには、実際の会話データの分析が必要 になると考えられる。また、彼らが焦点を当てたのは対話者の地位のみであるが、そ の他に対話者の性別や年齢などの様々な要因を考慮に入れる必要があると考えられる。

水谷(1988)は、日本人の「話し方の特徴」として、 「finishing up」と「leaving unsai

(20)

d」などを挙げ7、それらは、英語を母語とする日本語学習者には、 「impolite」、 「in decisive」という印象を与えていると指摘している。日本人からすれば、ごく自然に 思われる話し方が、他の言語の話者には、あまり望ましく思われないということは、

まさに言語行動がその言語を使用している社会や文化を反映していることの裏付けに なっていると考えられる。

 以上をまとめると、日本語におけるスピーチレベルの研究は、談話レベルからのも のはあまりなく、資料も自然会話をデータとしたものは少ない。自然会話をデータと した場合でも、宇佐美(2001a)、 Usami(1999;2002)以外は、主に大学生同士の会話に 限定されていることが分かる。スピーチレベルの全体像をより総合的に捉えるために は、文レベルを超えた談話レベルの研究が必要であり、様々な場面を考慮に入れ、あ る程度条件統制がなされて収集された自然会話をデータとした語用論的観点からの研 究が望まれるであろう。

 以上、日本語におけるスピーチレベルの先行研究を概観したが、次に韓国語におけ るスピーチレベルの先行研究を概観する。

1.3.2.2韓国語におけるスピーチレベルとスピーチレベル・シフトの先行研究  韓国語における敬語やスピーチレベルとスピーチレベル・シフトに関する研究には 渡辺(1981)、吾哨碧(1992)、金笑栄(1993)、。1禎暑(1996)、♀舎噌(1996)、曹英南(2 002)、金美貞(2005)、鄭相煕(2005)などがある。

 まず、菩噌碧(1992)、金笑栄(1993)、金美貞(2005)、鄭相煕(2005)などは、文末の スピーチレベルとその選択の要因について調べたものである。菩噌⊇(1992)は、英語

と韓国語における文体とポライトネスを比較したものである。それによると韓国語に おけるスピーチレベルは話し手と聞き手の関係によって決まる文の終結語尾に現れ、

親疎関係よりは上下関係がスピーチレベルの選択に絶対的な影響を与えるため、柔軟 性がほとんどなく、話し手と聞き手、第三者との関係により義務的に一定の言語形式 を使わなければならないと指摘している。それに対して英語では上下関係よりは親疎 関係がスタイルの選択により影響を与えるとしている。金笑栄(1993)は、話者の年齢 に応じた終結語尾の使用の実態調査で、話者の年齢が高くなるほど様々なスピーチレ ベルを使っており、年齢が低くなるほどより簡素化された待遇体系を使っていること を指摘し、今後は具体的で細分化されたスピーチレベルよりは、簡単な体系の待遇表 現が使われるだろうと予想している。金美貞(2005)は韓国のデパートと市場における 店員の接客言語行動を分析したもので、客と店員の会話を収録した談話資料から、店

7水谷(1988)は、それ以外にも、

ndirectを挙げている。

日本人の「話し方の特徴」として、あいつち、hesitant、 i

(21)

員の発話に現れた文末表現形式を調べている。デパートではフォーマルで定型的な接 客パターン(敬意体)を見せるのに対して、市場では方言形や非敬意体など親しみを表 わす言語形式の選択ストラテジーが用いられていると報告している。鄭相煕(2005)は 現代韓国語の文末における対者敬語8形式の構造と機能を考察したもので、対者敬語 の伝統的形式の「格式体」には、聞き手との、年齢や地位の要因で分類される「上下 関係」を明確に表わす機能があり、対者敬語の新しい形式の「非格式体」には、親し いか否かによる関係、即ち、 「親疎関係」のみを表わす機能があると指摘している。

 次に、。1召暑(1996)、♀舎噌(1996)、召司千(2002)などは、聴者待遇法9の文末語 尾の交替(スピーチレベルのシフト)を扱ったものである。。1⊇暑(1996)は、スピーチ

レベル間の交替の幅が話し手と聞き手の間の地位差や文の終結法によって変わるもの であると指摘し、その交替には話し手の心理的要因、社会的関係、叙法的要因が働い ていることを暗示している。また、召司午(2002)は、°1⊇斗(1996)と同じく、聴者待 遇法の文末語尾の交替を左右するのは、形式的許可原理だけではなく、心理的要因、

社会的関係、叙法的要因が複合的に働いていると指摘している。♀舎唱(1996)は、聴 者待遇の文末語尾の交替使用と聴者待遇法の体系について考察したもので放送談話を 資料としている。♀tA CU。(1996)は、聴者待遇法の体系は聞き手の「力(power)」と話

し手と聞き手の間の「結束(solidarity)」の程度においてシーソー(seesaw)関係をなす 力動的な体系であり、聴者待遇法は必ずしも規範的な性格だけを持っ社会規範とは言 えず、規範的な要素と個人の戦略的な要素を含むものと見なさなければならないと指

摘している。

 また、渡辺(1981)と曹英南(2002)などは、本研究で言う「丁寧度を示すマーカーの ない発話」と関係のある知見を示すものである。渡辺(1981)は、日本人特有のもので あり、日本的文化の所産であるとされてきた「言い切らない表現」について、それは

日本語だけの特色ではなく、韓国語にも「言い切らない表現」があり、またその用法 も日本語と類似していると指摘している。しかし、その具体的な使用状況や使用意識 などについては明らかにされていない。曹英南(2002)は、述部まで述べた「言い切り 表現」との比較によるアンケート調査を行い、韓国語母語話者が、述部までの述べな い「言いさし表現」をどのように捉えているかを、対人関係調節機能と談話機能の観 点から分析している。そして、言いさし表現は、遠慮が必要な関係より、遠慮が必要 ではない関係で多く使用される傾向があると指摘している。しかし、アンケート調査

8辻村(1967)によると、敬語は表現素材に関する敬語としての「素材敬語」と、表現受容 者に対する表現主体の謙遜な気持ちを直接表す「対者敬語」に分けられる。

9聴者待遇法は話者が言語を用い、聴者を高めるか低めることで待遇する法である(碧ス}

胡♀唱01せ叫ス}7}但(19Ml⊇ス}暑圭。レ『斗呉〒・ヰv]1)♀6}t唱01叶)(李周行1994:

597、筆者訳)。

参照

関連したドキュメント

そのため本研究では,数理的解析手法の一つである サポートベクタマシン 2) (Support Vector

しい昨今ではある。オコゼの美味には 心ひかれるところであるが,その猛毒には要 注意である。仄聞 そくぶん

 回報に述べた実験成績より,カタラーゼの不 能働化過程は少なくともその一部は可三等であ

 がんは日本人の死因の上位にあり、その対策が急がれ

題護の象徴でありながら︑その人物に関する詳細はことごとく省か

 哺乳類のヘモグロビンはアロステリック蛋白質の典

実際, クラス C の多様体については, ここでは 詳細には述べないが, 代数 reduction をはじめ類似のいくつかの方法を 組み合わせてその構造を組織的に研究することができる

気候変動対策 詳細は P22 知的財産活動 詳細は P32 財務戦略 詳細は P13–14. 基礎研究の強化