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野口, 慎平

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

Polyaの壺モデルにおける摂動解析による自己平均性 の破れの研究

野口, 慎平

https://doi.org/10.15017/1931698

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(理学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

(様式3)

氏 名 : 野口 慎平

論 文 名 : Study of non-self-averaging on Polya’s urn model using a perturbation analysis

( Polya の壺モデルにおける摂動解析による自己平均性の破れの研

究)

区 分 : 甲

論 文 内 容 の 要 旨

本学位論文の主題は、『自己平均性の破れ』という現象の理解である。ここで自己平均性は、熱力 学極限が成り立つ程度には多数の要素からなる系において、ある示強的物理量(或いはそれに類す る量)が部分系と全体系で一致する、と定義する。自己平均性の破れは物理分野では乱れた系など で典型的に現れ、それに関する研究も多くなされている。また、その現象は物理にとどまらず社会、

経済等幅広い分野で考察、観察されている。実際、Mandelbrot は米国における綿花取引による収 益率が自己平均性を示さないことを報告した。

一方で、従来の研究では自己平均性の破れは主に空間領域で調べられ、時間、振動数領域におけ る振る舞いについてはそれほど着目されてこなかった。従って本学位論文では特に、自己平均性の 破れが時間、振動数領域でどのように現れるかに焦点を当てて研究した。

そのような目的の為、具体的な確率模型としてPolyaの壺モデルを採用した。このモデルは2つ の種類の玉(白玉と黒玉)をあるルールで時間発展させていく確率モデルである。ここで、このモ デルはそれぞれの玉の増加しやすさを表すいくつかのパラメタを持つ。あるパラメタ領域において は自己平均性を破ることで広く知られており、それに留まらず非常に単純でありながら、広範の現 象を記述できる。例えばこのモデルは元々、接触感染現象のモデルとして導入されたが、社会、経 済、統計学など非物理分野での幅広い応用が展開されている。具体的にはスケールフリーが現れる ようなグラフ理論、意思決定理論、経済成長理論を記述する道具として用いられている。物理分野

では、Polya の壺を用いたエントロピーの概念の拡張が試みられている。故に、このモデルで得ら

れた結果は、多くの現象に応用できることが期待される。

まず、本学位論文を通して、Polya の壺を簡単に扱うため、自由なパラメタをa,b の2つに制限 し、離散的なモデルの連続近似を調べた。ここで、パラメタa(b)は黒玉(白玉)の増加しやすさ を表す。連続近似により、Polya の壺を記述する離散的なマスター方程式を単純な偏微分方程式へ と書き換えられる。ここから、ある種のスケーリング則の存在が分かり、それはMonte Carloシミ ュレーションによって得られた結果とよく一致する。また、連続近似で得られた確率分布を用いた 黒玉の割合(示強変数に当たる)のm乗平均の長時間での振る舞いは、既に知られている厳密解と 同じである。これよりパラメタ領域 a=b で自己平均性が破れることが容易に示されるが、これは

BagchiとPalによって示された一般的な定理の一部の例とみなせる。

ここまで準備した上で、本学位論文では時間、振動数領域での自己平均性の破れの現れを見るた

(3)

め、Polya の壺モデルのパラメタa に対して摂動を加え、それによる応答関数、緩和関数、複素感 受率を計算した。これはMonte Carloシミュレーションによるものと、連続近似を用いた解析的手 法の両方で行い、両者は一致を示した。また自己平均性が成り立つ領域 a≠b と自己平均性が成立 しない領域a=bでは、摂動により得られる諸関数の平均の振る舞いが異なることが分かった。前者 では長時間極限で摂動の影響は緩和するが、後者では摂動の影響が長時間極限でも残り続ける。

さらに本学位論文の後半では、Polyaの壺をより一般化した非線形Polya の壺モデルでの摂動解 析を行った。最初に単純なPolyaの壺モデルの場合と同じく連続近似したマスター方程式を導出し、

非線形壺モデルの基本的な性質を過去の研究とは異なる観点から明らかにした。そのうえで、パラ メタaに摂動を加え、応答関数を数値的に計算した。その応答関数の振る舞いは非線形壺モデルの 基本的性質から理論的に説明でき、単純なPolyaの壺の結果、すなわち『自己平均性が破れていれ ば、応答関数などの量は長時間極限でも緩和しない』、とは異なる結論を得た。この場合、ある特殊 な状況を除けば、自己平均性が破れているかどうかに依存せず、応答関数は長時間極限で緩和を示 す。これは非線形項によってアトラクターが形成され、摂動を加えられた状態がアトラクターに引 き込まれてしまう為である。

したがって、自己平均性の破れ方の強さには二つの種類があることが分かった。一つは自己平均 性が破れているかどうかに関わらず、応答関数が緩和するようなものである。これは自己平均性の 破れ方として弱いと言える。もう一つは、自己平均性の破れと応答関数の緩和が関係をもち、自己 平均性が破れているとき、摂動の影響が緩和しないものである。このような分類をすることで自己 平均性の時間領域の破れ方がより明確になり、さらに将来なんらかの知見をもたらすのではないか、

と予想する。

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