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: 一揆・祭礼の集合心性と地域・国制の秩序』

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: 一揆・祭礼の集合心性と地域・国制の秩序』

著者 塩屋 朋子

出版者 法政大学史学会

雑誌名 法政史学

巻 75

ページ 41‑44

発行年 2011‑03‑24

URL http://hdl.handle.net/10114/10918

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本書は、著骨が昭和五八年(’九八三)三川から平成1九年(二○○七)三月までに発表した論文の中から十一本を選び、加筆・修庄を加えた論文集である。本書が扱っている分野は、日本近世史であるが、著昔の問題関心は、社会史、政治史、経済史など、多岐にわたっており、この内容を見ても、著者の学問を究める際の視野の広さと、様々な研究手法を採り入れる柔軟な姿勢をうかがい知ることができ、大変勉強になる。内容の具体的な紹介に入る前に、本書のタイトルでもあり、本書の中に通底するテーマでもある「自治文化」という語について、少しふれておかねばなるまい。著者は、自治文化を「政治文化という範鴫に含まれる概念」であるとする。江戸時代における狭義の意味での政治文化とは、領主の立場からの公的な統治秩序へと 澤登寛聡箸

『江戸時代自治文化史論

’一摸・祭礼の集合心性と地域・国制の秩序l」 〈書評と紹介〉

書評と紹介 塊屋朋子 集約しようとする政治的・社会的志向性ということができ、それに対して自治文化とは、何らかの自治社会の中で暮らす人々の習俗的・慣習的な信条から形成される政治文化であると定義するのである。したがって、広義の政治文化は国家統治の実現を志向するものと、自主・自律的な秩序を志向する競合・融合によって形成されるとする。本書において著者が強調するのは、制度そのものではなく、制度を支える人々の思想・文化・意識構造に着目する視点である。本書はこの点を常に念頭において読んでいく必要があるのであるo

さて、本書の榊成は次の通りである。第一編江戸幕府の地域社会編成と自治秩序第一章近世初期の国制と「領」域支配l「徳川政権」関八州支配の成立過程を中心に’第二章三川領の成立と地域秩序l奥多摩地域における戦国時代から近世初期の支配をめぐって’第三章割本制と郷村の自治秩序l寛文・元禄期における武蔵国多摩郡三田領吉野家の管轄地域を素材として’第四章家綱政権の織物統制と木綿改判制度の成立l関東および関東近国の商品流通と幕藩関係’第二編一摸の正当性観念と役による秩序

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第一章都市日光の神役と町役人制度l稲荷町の町政運営の変動を中心として’第二章都市日光の曲物職仲間と地域秩序I江戸時代後期における門前町の林業・手工業と地域経済について’第三章一摸の正当性観念と役による秩序l安永七年五月における都市H光の惣町一櫟を中心として’第一一一編祭礼の集合心性と一摸の秩序第一章一摸・騒動と祭礼l近世後期から幕末期の神による机互救済・正当性観念と儀礼・共同体について’第二章祭と一摸l明和八年四Ⅱにおける水戸藩鋳銭座の打ち段しと磯出祭を中心に’第三章一摸・祭礼の集合心性と秩序l百姓一摸絵巻「ゆめのうきはし」を素材として’第四章富士信仰儀礼と江戸幕府の富士講取締令l呪医的宗教儀礼としての江戸市中への勧進と身分制的社会秩序の動揺をめぐってl終章l本書の成果と研究史の中の位置についてでは、各編・各章ごとに内容を示しながら、本書を概観していきたい。 法政史学第七十五号

第一編「江戸幕府の地域社会編成と自治秩序」では、江戸時代初期から江戸幕府の確立期にかけて、後に「自治文化」が育まれていく、いわば土壌になるべき地域社会の成立過程に関するⅢ章で構成されている。第一章「近枇初期の脚制と「領」域支配」では、犬正十八年から大坂夏の陣までの関東における地域の枠組みとしての「領」の基本的性格について考察している。特に「領」と国郡制的支配との関連を重視し、「領」が、その後の人庄屋制、割元(割本)制、惣代制等の管轄地域として機能し、組合村・組合村連合の基盤となったとする。第一章の具体的事例を検討したのが、第二章「三川領の成立と地域秩序」であり、ここでは奥多摩地域の三川微を素材に、戦脚時代の「領」や衆をめぐる秩序が、織豊政権を経て近世初期にどのように変化したのかを考察している。続く第一一一章「割本制と郷村の自治秩序」は、武蔵国多摩郡一一一田領吉野家の管轄地域を素材に、寛文・延宝期から元禄・宝永・正徳期において、「領」という地域的結合の中でのⅡ治について検討している。大庄屋や割本と呼ばれる、従来、政治的中間牌と捉えられてきた者たちは、実は百姓等による村の自治的な秩序を無視できず、地域の中においていわば、中間的自治を代表する立場にあった点を明らかにしている。第四章「家綱政権の織物統制と木綿改判制度の成立」では、家綱政権下における織物統制令とそれにともない関東各地で成立した城下町木綿改判制度について土浦藩を素材として検討し、制度

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成立の背景を、戦国期までの城領の枠組みが継承・再編・拡大された地域的流通構造にみるとしている。第二編ヨ摸の正当性観念と役による秩序」では、自治文化の担い手となる人々の社会的結合とその契機に関して論じた一一一章によって構成されている。第一章「都市Ⅱ光の神役と川役人制度」では、宗教都市Ⅱ光が、江戸時代において、來照滴を中心とする権門寺社の宗教儀礼のための「神役」の負担を義務づけられた都市であったことを指摘し、そのうえで「神役」をめぐる川の社会構造を町方騒動を通して明らかにしている。第二章「都市日光の曲物職仲間と地域秩序」は、日光の曲物職仲間が自らの利益をいかに相互に保証しようとしたのか、また、それが町という地縁的結合といかに関連したかを論じている。第三章。摸の正当性観念と役による秩序」では、安永七年に起きた日光の惣町一摸をとりあげ、。摸はむすぶもの」という観点にたち、|摸を結ぶ契機となる人々のⅨ当性観念を役(用役)に求め、社会的結合の軸は神役負担の義務意識と家業存続への権利意識にあったとしている。一方で、習俗的・慣習宗教的な行事(儀礼)の過程の中において存在する、生的な「役」が社会的結合の根拠になることを指摘している。第三編「祭礼の集合心性と一撲の秩序」では、第二糊で検討した人々の社会的結合がいかなる心性に基づいて形成されたものであったか、その深層にせまる内容となっており、次の四章で構成されている。

書評と紹介 第一章。摸・騒動と祭礼」は、人々が一摸として結集する契機を、慣習的な宗教・信仰儀礼を繰り返すことによって生成される神による相互救済的な平等観念にあるとし、|摸の作法・儀礼には祭のそれと同じ現象がみられることから、一摸と祭は、人々の集合心性の深牌世界において共迦であると位満づけている。人々の集合心性が一摸と祭の中に同時に現れた瓢例を詳細に論じたのが、第二章「祭と會撲」である。ここでは、那珂郡静村の静明神磯出祭の岐中に、太川村鋳銭蛎へ打ち段しがなされる様机が克明に拙き川されており、祭が一挟へと転化する契機を考察している。第三章「|摸・祭礼の集合心性と秩序」では、犬保十一年の一一一力領地棒令の撤回を求めて出羽旧庄内藩において発生した一侯について、百姓一摸絵巻「ゆめのうきはし」を素材として検討している。ここでは、参加した人々の集合心性のメカニズムが、アジアに広汎に存在するミロクの世への救済願望を深層としているとし、さらにそれは産士神信仰と結びつき、それが人々の集合心性の基層となったと指摘している。第Ⅲ章「富士信仰儀礼と江戸蘇府の常士講取締今」は、人々の集合心性と関わる信仰や、それによるⅣ生や救済への願望の問題を富士信仰の問題を通じて検討している。食行身禄の入定が高間傳兵衛騒動を月の当たりにしたことを契機とすることから、富士信仰が身分を問わず江戸に暮らす人々の中に呪医的宗教儀礼として深く浸透し、次第に政治的な運動となる点について考察している。さらに終章では、著者が強く影響を受けてきたフランスを中心

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以上、本書は「自治文化」というテーマに沿って、著者の多様な問題関心を背景にした諸研究が結実したものであるが、評者なりの観点から若干のコメントを述べることにする。初めにも少しふれたが、本書を通底する最も重要な視点は、近世の社会を同制の秩序のみによって捉えるのではなく、凶制の対極に位置する一般の人々の社会的結合、あるいは彼らの習俗などから想起される日治の秩序によって捉えようとする視点であるといえよう。この視点については、従来それほど注Ⅱされてこなかったものであり、本書の妓大の成果ということができる。しかしながら、その一万で同様の視点から生まれる課題も見えてくる。それは、一撲に代表される人々の社会的結合の内部の構造が見えにくいということである。人々が結集するには、必ず何らかの契機があり、それが「神役」に雄づく正野性観念である場合(第二編第三章)や、神による相互救済的な平等観念である場合(第三編第一章)など、人々の集〈Ⅱ心性に兄るという視点の提示は大変意義深いものである。しかしながら、人々の心性は恒常的に一元的であるとは限らず、情況に応じて複雑に変化しているのではなかろうか。また、本書で分析されている人々の社会的結合が皆フラットな関係の上に成り立っているという印象を受けるが、こ とした社会史の潮流と日本の歴史学界、さらに江戸時代史研究の新しい視点を示しつつ、これまでの成果を研究史の中へ位置づけ、本書をしめくくっている。 法政史学第七十五号

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れについても、たとえ理念上は水平的な関係であったとしても、内部の構造にまで踏み込めば、そこには何らかの差異、あるいは階層差が生じているはずである。本譜の成果をふまえたうえで、さらにこの方法論を進展させていくには、そうした差異や階層差を超えた結合、言い換えれば「共同体」の形成のあり方を探る必要があるのではないか。また、社会的結合の内部の水平性が強調されているように見えるもう一つの理由は、こうした人々の結びつきを、国制の対械に位置づけて考えている点にあるようにも考えられる。歴史学として分析する以上、常に幕府権力や藩権力を考慮するのは、当然であることは承知しているが、一方で、人々の社会的結合を分析する際に、権力を常に対極にあるものとしてとらえ、かつそれを念頭に置いてしまうと、権力に対する人々の社会的結合という一つの構川の中に埋没してしまうのではないか、とも思えてならない。この矛盾をいかにして克服するかという課題は、今後、著者だけでなく、多くの研究者が取り組んでいくべきものであるといえよ

》う。以止雑駁ながら本書の内容紹介および評者の所感を述べさせていただいたが、|読者の単なる感想の域を出ないものであることは否めないうえ、誤読や誤解、的外れな指摘はひとえに評者の力不足によるものである。拷者には、ただただご寛恕を願うばかりである。(二○一○年一一一月刊A5判四三二頁五八○○円十税法政大学出版M) 四四

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