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(1)

康 : ライフステージ間の比較

著者 武田 祐佳

雑誌名 同志社社会学研究

号 23

ページ 15‑24

発行年 2019‑03‑31

権利 同志社社会学研究学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2019.0000000490

(2)

1

はじめに

子育てにたずさわる女性を対象にした精神的健 康やその裏返しである不安や抑うつと、これら心 理的状態に影響を与えるサポート・ネットワーク にかんする研究では、乳幼児をもつ女性に焦点が あてられることが多い(牧野1982;前田2003、

2004 a、2004 b;松田2001、2002、2008;星2012 など)。そのわけは、育児の遂行や責任の多くを 母親が引き受けがちな社会において、母親が感じ る育児不安や負担感などを軽減することが母親自 身の精神的健康にとって大切であるのはもちろ ん、なによりも子どもの健やかな心身の発達にと って重要であるために、社会的に取り組むべき課 題としてみなされてきたからだろう。

だが、子どもが乳幼児期を過ぎたからといっ て、母親の負担感や抑うつが必ずしも減るわけで はない。

第1回全国家族調査(NFRJ 98)のデータを分 析した西村純子によれば、育児期(末子6歳以 下)と比較してポスト育児期(末子7歳以上19 歳以下)は、家事や子育てにかかる手間が相対的 に小さくなっていると思われるにもかかわらず、

ポスト育児期女性の家族内での負担感や抑うつ傾 向は、育児期女性よりも低いわけではないという

(西村2009)。つまり、小学生以上の子どもをも

つ女性も、乳幼児をもつ女性と変わらない負担感 やストレスを経験しているということである。

そして西村は、日本では多くの女性が結婚・出

産で仕事を辞め、子どもが幼い間は家事・育児に 専念し、子どもが成長すると再び仕事に就くとい うライフコースを歩むことから、「有配偶女性が 職業生活とのかかわりを深め、それゆえ家族生活 ストレーンを経験しやすいのは、むしろ育児を終 えたあとのステージである」(西村2005 : 26)と 述べ、子どもがある程度成長したステージの女性 が日常生活のなかで経験する負担感やストレスに 目を向けることの必要性を指摘している。

しかし、こうした指摘にもかかわらず、子ども がある程度成長したライフステージも視野に入れ て女性の精神的健康について論じた研究は、必ず しも多いとはいえない1)。一口に子育て期といっ ても、乳幼児期とそれ以降とでは、母親が感じる 負担感やその要因も異なるだろうし、母親が求め るサポートの内容や、サポートが母親の心理状態 に与える影響も異なると思われる。こうした点を 明らかにすることは、子どもの年齢にかかわら ず、子育てをおもに担っている母親の精神的健康 の実現をはかるうえで重要である。

そこで本稿では、子育て期女性の精神的健康、

具体的には家庭生活における負担感とサポート・

ネットワークの関連について、ライフステージの 違いに注目しながら検討していく。

2 3

つのライフステージ

分析に用いるのは、2012年3月に実施された

「子育て期女性のサポート・ネットワークに関す る調査」で得られたデータである。この調査は、

子育て期女性のサポート・ネットワークと精神的健康

──ライフステージ間の比較──

武田 祐佳

TAKEDA Yuka 同志社社会学研究 NO. 23, 2019

【研究論文】

(3)

2011年10月1日時点において奈良県下の7市町

(奈良市・橿原市・五條市・生駒市・葛城市・宇 陀市・高取町)の住民基本台帳に記載されてい る、末子年齢が0歳から12歳未満の子どもと同 じ世帯に居住する女性3300人を層化2段抽出に より選び、郵送法でおこなわれた2)。有効回収数 1008票、有効回収率30.6% である。

夫を含む周囲の人から得られるサポートと妻の 家庭内での負担感との関連を検討する本稿の目的 から、仕事をもつ配偶者と同居している女性(出 産・育児などの理由で休職中のケースを除く)の うち、分析に使用するすべての変数に欠損値がな い687ケースを対象とする。

ライフステージは、末子年齢により、0〜2歳、

3〜6歳、7〜12歳 の3つ の ス テ ー ジ を 設 定 し た3)。西村のように、小学校入学の前後で分ける やり方もあるが、始終子どものそばにいて世話を しなければならない乳児期と、幼稚園に入り、子 ども同士で遊べるようになる幼児期とでは母親の 負担の程度は異なると予想されるため、未就学期 を0〜2歳と3〜6歳で区分することにした。その 結果、各ステージのケース数は、末子0〜2歳が 197ケース、末子3〜6歳が232ケース、末子7〜

12歳が258ケースとなった。

分析に先立ち、対象者の属性を確認しておこ う。

表1は、3つのライフステージごとに、対象者 のおもな属性をまとめたものである。

年齢の平均は、末子0〜2歳が33.8歳、末子3

〜6歳が37.7歳、末子7〜12歳が41.8歳である。

末子0〜2歳では子ども数が1人の割合がやや高 いが、総じて対象者の多くは2人以上の子どもを もっている。また、末子3〜6歳と比較すると、

末子0〜2歳と7〜12歳には、家族のなかに要介 護者がいる人の割合が高い。

就業状態に注目すると、末子0〜2歳では70%

以上が無職だが、末子が小学校に入る7〜12歳で はおよそ7割の母親が就業しており、その多くが 非正規である。有意ではないが、末子7〜12歳で

「販売・事務」、本人収入「100万未満」が多いの は、非正規が就業者の多くを占めるためだろう。

非正規の割合はライフステージが上がるほど増え る傾向にあるが、正規の割合は末子3〜6歳と7

〜12歳であまり変わらない。正規で働こうとい う人は、末子が比較的幼い段階で働きはじめるよ うである。

1 ライフステージ別にみた対象者の属性 末子

02

(N=197)

末子 36

(N=232)

末子 712

(N=258)

年齢 33.8 37.7 41.8歳***

学歴 高校以下 短大 大学以上

35.0%

34.5 30.5

33.6%

33.2 33.2

32.2%

38.8 29.1 就業

状態 自営 正規 非正規 無職

5.1 9.6%

14.7%

70.6

6.9 13.8%

26.3%

53.0

10.5***

15.5%

40.3%

33.7 職業 専門・管理

販売・事務 労務・農林

40.4 50.9%

8.8%

37.5 49.0%

13.5%

26.1 60.0%

13.9%

本人 収入

100万未満 100300万未満 300万以上

47.4%

35.1 17.5

48.6%

26.2 25.2

54.1%

21.8 24.1 夫収

500万未満 500〜700万未満 700万以上

61.9 21.3%

16.8%

51.7 23.7%

24.6%

33.7***

37.6%

28.7%

子ど も数

1 2

3人以上

34.5%

42.1 23.4

18.5%

54.7 26.7

18.6%***

58.5 22.9 親同

同居 別居

29.9 70.1%

30.2 69.8%

31.0 69.0%

要介 護者

いる いない

18.3%

81.7%

9.9%

90.1%

15.1%*

84.9%

***p<.001 **p<.01 *p<.05

(注1)値は列パーセント。

(注2)要介護者の質問文は、「同居・別居のご家族のなかに、

現在、介護や看護を必要とする方がいますか」。

(4)

ところで、「第15回出生動向基本調査」(2015 年)によれば、末子年齢が0〜2歳の子どもをも つ母親の就業率は47.3%、6〜8歳では69.3%、9 歳以上では77.8% が仕事に就いていると報告が なされている4)(国立社会保障・人口問題研究所

2017)。それと比較すると、本データの末子0〜2

歳の無職の割合は高いものの、それ以外のステー ジにかんしてはおおむね同じであるといえる。

3

家事・育児負担感とサポート・ネット ワーク

3.1 家事・育児負担感

ライフステージの違いにより、家庭生活で感じ る負担感はどのように異なるのだろうか。

家庭生活で感じる負担感の指標には、「この1 ヶ月ほどの間に、家事・育児・介護などでの負担 が大きすぎると感じたこと」に対する回答の「た びたびあった」「たまにあった」「ほとんどなかっ た」「まったくなかった」に、頻度が高いほど得 点が高くなるように1〜4点を与えたものを用い る。以下、これを「家事・育児負担感」と呼ぶこ とにしよう。

表2には、家事・育児負担感について、ライフ ステージごとの平均値が示されている。

負担感は末子0〜2歳でもっとも高く、末子年 齢が上がるしたがい低くなることから、子どもに 手がかからなくなるほど、家事や育児の負担感は 低くなるという関係が読みとれる5)

3.2 サポート・ネットワーク

従来、負担感や幸福感など個人が経験する心理 的状態に影響を与えるものとして、サポート・ネ ットワークが注目されてきた。

子育て期女性については、おもに乳幼児をもつ 母親を対象にした調査を通して、夫、親族(なか でも自分の親)、友人や隣人などの親しい非親族 が情緒的サポートを提供していることや、これら の人たちからのサポートが母親の精神的健康を高 める効果をもつことなどが明らかにされている

(牧 野1982;落 合1989;久 保2001;星2012な ど)。さらに、サポート・ネットワークの規模や 密度、親族と非親族のバランスといったネットワ ークの構造的特徴もまた、母親の精神的健康に影 響 を 与 え る こ と が 示 さ れ て い る(松 田2001、

2002、2008;前田2003、2004 a、2004 bなど)6)。 このように、子育て期女性の精神的健康とサポ ート・ネットワークにかんしては、さまざまな角 度からの数多くの研究があるが、ここではもっと も基本的な、夫、親族、非親族からの手段的・情 緒的サポートと家事・育児負担感との関係につい てみていくことにしたい。

分析に用いるサポート変数は、次のとおりであ る。

夫の手段的サポートは、夫が家事や子どもの世 話を妻と分担している割合(0〜100%)7)である。

夫の情緒的サポートは、「(夫が)私の心配ごとや 悩みごとを聞いてくれる」「私の能力や努力を高 く評価してくれる」「私に助言やアドバイスをし てくれる」の各項目について、「あてはまる」に 4点、「どちらかといえばあて は ま る」に3点、

「どちらかといえばあてはまらない」に2点、「あ てはまらない」に1点を与え、合計得点(3〜12 点)を算出したものである(α=0.862)。

親族サポートについて調査票では、「子育てに ついて悩みやグチを聞いてくれる」「子育てにつ 表2 ライフステージ別にみた家事・育児負担感

平均 標準偏差 F値 末子0〜2歳

末子3〜6歳 末子7〜12歳

2.57 2.41 2.31

0.921 0.994 0.996

4.221*

合計 2.42 0.979

*p<.05

武田:子育て期女性のサポート・ネットワークと精神的健康

(5)

いて心配なことが起きた時に、助言やアドバイス をくれる」「夫婦関係や親族関係についての悩み ごとやグチを聞いてくれる」「あなたのこれから の生き方について助言やアドバイスをしてくれ る」「急な用事ができた時に、気軽に子どもの世 話を頼める」「忙しい時に、家事などを手伝って く れ る」の6つ の 項 目 に 対 し、11種 類 の 親 族

(父、母、義父、義母、自分の祖父母、夫の祖父 母、自分のきょうだい、夫のきょうだい、自分の きょうだいの妻、夫のきょうだいの妻、それ以外 の親族)の中からサポートを期待できる親族すべ てに○をするよう、回答者に求めている8)。たと えば、「子育てについて悩みやグチを聞いてくれ る」というサポートを父、母、自分のきょうだい に期待できるならば、○の数は3となる。このよ うに、1つの項目の○の数は、最小0から最大11 までの範囲をとる。

これら6つの項目のうち、「子どもの世話」「家 事」を手段的サポート、「子育て悩み」「子育て助 言」「夫婦・親族悩み」「生き方助言」を情緒的サ ポートとみなして、それぞれの○の合計、すなわ ち選択された親族数を「親族手段的サポート」

「親族情緒的サポート」の指標とする。「親族手段 的サポート」は「子どもの世話」「家事」の2項 目を合計したものなので、得点は0〜22点、「親 族情緒的サポートは」は4項目を合計しているの で0〜44点までの値をとることになる。

非親族サポートは次のように測定している。

まず、家族や親戚以外に、普段よく話をした り、何かと助けになってくれる人の数をたずねた あとで、「その方々のうち思い浮かんだ順に4人 まで」具体的な人物を挙げてもらう。そして最大 4人の非親族について、「子どもの世話」「家事」

「子育て悩み」「子育て助言」「夫婦・親族悩み」

「生き方助言」の6項目のサポートを期待できる かどうかを回答してもらうようになっている9)

たとえば、A〜Dさんのうち、AさんとBさん に「子どもの世話」を期待できるならば、「子ど もの世話」を期待できる非親族数は2人となる。

1つの項目がとる値は、最小0人、最大4人であ る。

非親族サポートについても親族サポートと同様 に、「子どもの世話」「家事」を期待できる非親族 の合計を「非親族手段的サ ポ ー ト」(0〜8点)、

「子育て悩み」「子育て助言」「夫婦・親族悩み」

「生き方助言」を期待できる非親族の合計を「非 親族情緒的サポート」(0〜16点)とする。もし、

「子どもの世話」を期待できる非親族が2人、「家 事」を期待できる非親族が4人ならば、「非親族 手段的サポート」の得点は6点となるわけであ る。

以上のように、夫サポートが実際にサポートを 受けている経験に基づくのに対し、親族・非親族 サポートはいざというときに頼りにできる期待に 基づくものである。

このような手続きで作成した夫・親族・非親族 サポートとライフステージとの関連をみたものが 表3である。

表から、夫・親族サポートと非親族サポートと では、ライフステージにおける特徴が異なること が読みとれる。

夫手段的サポートと親族手段的サポートについ てはライフステージ間で違いがみられないが、夫 情緒的サポートと非親族情緒的サポートはともに 末子0〜2歳でもっとも高く、末子3〜6歳、末子 7〜12歳とライフステージが上がるほど値は低く なる。それに対して非親族手段的サポートは、ラ イフステージが上がるほど値は高くなっている。

情緒的サポートも有意とはいえないけれども、同 じような傾向を示している。

夫や親族の情緒的サポートの平均値が末子0〜

2歳で高い理由は、表2でみたように、乳児をも

(6)

つ母親は家事や育児への負担を多く感じているこ とから、夫や親族にサポートを多く求め、夫や親 族もまた、そうした母親の期待に応えているから であろう。

また、このライフステージでは働いている場合 は別として、母親が家の外で社会関係を築く機会 は多いといえない。しかし、子どもが幼稚園に入 る前後になると、子どもを通して母親同士のネッ トワークが広がっていく。お互いの子どもを預か ったり子育ての悩みを共有しあう、いわゆる「マ マ友」との関係を考えると、末子0〜2歳より上

のステージで非親族サポートが高くなることも納 得できる。

4

家事・育児負担感に対するサポート・

ネットワークの効果

4.1 家事・育児負担感とサポート・ネットワー クとの関係

さて、サポート・ネットワークと家事・育児負 担感の検討に移ろう。

表4は、3つのステージごとに、6つのサポー トと家事・育児負担感の相関、ならびに各サポー ト間の相関を示したものである。それぞれのステ ージについて、サポートと家事・育児負担感の関 係(最左列)をみていこう。

末子0〜2歳では、夫の手段的サポート、情緒 的サポートが多いほど家事・育児負担感は低くな るという関係が読みとれる。しかし、親族サポー トと非親族サポートは、家事・育児負担感に関係 しているとはいえない。

続く末子3〜6歳では、夫サポートのうち、情 緒的サポートは家事・育児負担感に関係している が、夫手段的サポートにはそうした関係がみられ ない。親族サポートも、家事・育児負担感との関 係はみられない。しかし、非親族サポートについ ては、手段的サポートが多いほど家事・育児負担 感が低くなる関係がみられる。

末子7〜12歳における夫サポート、親族サポー トと家事・育児負担感との関係は、末子3〜6歳 と同じである。夫情緒的サポートが多いほど家事

・育児負担感は低くなるが、夫手段的サポートや 親族サポートは家事・育児負担感に関係している とはいえない。

一方、非親族サポートは、手段的サポート、情 緒的サポートがともに家事・育児負担感にかかわ っており、非親族手段的サポート、非親族情緒的 サポートが多いほど、家事・育児負担感は低くな 表3 ライフステージ別にみた夫・親族・非親族サポ

ート

平均 標準偏差 F値

夫 手 段 的

末子0〜2歳 末子3〜6歳 末子7〜12歳

19.70 19.12 18.08

13.687 13.740 14.107

0.802

合計 18.89 13.860

情 緒 的

末子0〜2歳 末子3〜6歳 末子7〜12歳

9.48 8.98 8.85

2.099 2.524 2.577

3.979*

合計 9.07 2.442

親 族

手 段 的

末子0〜2歳 末子3〜6歳 末子7〜12歳

2.78 2.53 2.41

2.196 2.107 1.963

1.845

合計 2.55 2.083

情 緒 的

末子0〜2歳 末子3〜6歳 末子7〜12歳

8.83 7.74 7.39

5.516 5.401 5.400

4.147*

合計 7.92 5.459

非 親 族

手 段 的

末子0〜2歳 末子3〜6歳 末子7〜12歳

1.68 2.46 2.57

2.101 2.430 2.393

9.312***

合計 2.28 2.354

情 緒 的

末子0〜2歳 末子3〜6歳 末子7〜12歳

9.06 9.63 10.05

4.313 4.487 4.365

2.835

合計 9.62 4.403

***p<.001 *p<.05

武田:子育て期女性のサポート・ネットワークと精神的健康

(7)

ることがみてとれる。

これらの結果から、以下のようなことがいえそ うである。

まず、3つのライフステージのいずれにおいて も、夫情緒的サポートは妻の家事・育児負担感に 影響しているが、夫手段的サポートの家事・育児 負担感への影響は、末子0〜2歳だけと限定的で あること。親族サポートは、家事・育児負担感に あまり関係していないこと。末子0〜2歳より上 のステージでは、非親族サポートが家事・育児負 担感に関係していること、である。

4.2 サポート・ネットワークの効果の検討 だが、上で得られたサポートと家事・育児負担 感との関係は、他の変数をコントロールすれば違

ったものになるかもしれない。

このことを検討するために、家事・育児負担感 を従属変数にして重回帰分析をおこなった結果が 表5である10)。分析には、これまでみてきた6つ のサポート変数に加え、年齢、学歴、就業状態、

夫収入、子ども数、要介護者の有無、居住地11)の 7つの変数が独立変数に用いられている。

結果を順にみていこう。まずは、末子0〜2歳 について。

表から、夫手段的サポートが家事・育児負担感 を軽減していることが確認できる。しかし、相関 の検討(表4)において夫手段的サポートととも に家事・育児負担感に影響していた夫情緒的サポ ートの効果は、ここではみられない。

一方、自営であることが家事・育児負担感を高 表4 家事・育児負担感とサポート・ネットワークとの相関

家事・

育児負担感

夫 親族 非親族

手段的 情緒的 手段的 情緒的 手段的

末 子 0

〜 2 歳

夫 手段的 情緒的

−0.241**

−0.227** 0.310***

親族 手段的 情緒的

−0.124

−0.102

0.232**

0.142*

0.165*

0.341*** 0.632***

非親族 手段的 情緒的

0.077

−0.018

−0.077 0.042

0.006 0.214**

0.188**

0.306***

0.181*

0.427*** 0.416***

末 子 3

〜 6 歳

夫 手段的 情緒的

−0.123

−0.322*** 0.274***

親族 手段的 情緒的

−0.103

−0.083

0.079 0.009

0.112

0.180** 0.560***

非親族 手段的 情緒的

−0.181**

−0.043

−0.036 0.025

0.166*

0.046

0.245***

0.254***

0.307***

0.337*** 0.560***

末 子 7

〜 12 歳

夫 手段的 情緒的

−0.088

−0.256*** 0.294***

親族 手段的 情緒的

−0.122

−0.061

0.098 0.036

0.170**

0.229*** 0.466***

非親族 手段的 情緒的

−0.143*

−0.135*

−0.119

−0.045

0.068 0.130*

0.243***

0.296***

0.266***

0.396*** 0.496***

***p<.001 **p<.01 *p<.05

(8)

めることも確認できる。自営よりむしろ正規のほ うが家事・育児負担感を高めるように思われる が、正規の効果は有意ではない。これについて は、常雇やフルタイム就労の女性のストレスがと くに高くないのは、周囲からのサポートが得にく い女性がフルタイムで働くことを断念するためだ とする稲葉(1999 a)による解釈も可能だろう。

雇用に比べて自営の場合には、家庭生活と仕事と を切り離すことが容易でないため、妻の負担感が 増すのかもしれない。

末子3〜6歳をみると、家事・育児負担感に影 響を与えているサポート変数は、夫情緒的サポー トだけである。また、正規であることが家事・育 児負担感を高めている。

末子7〜12歳でも、家事・育児負担感に影響を

与えているサポート変数は、夫情緒的サポートだ けである。表4で有意だった非親族の手段的サポ ートと情緒的サポートは、他のサポートや属性を コントロールすると、家事・育児負担感に対する 影響力は消失している。

興味深いのは、前の2つのライフステージでみ られた就業状態の効果がなくなり、代わって要介 護者がいることが家事・育児負担感を高めている ことである。その前のライフステージで要介護者 の有無が家事・育児負担感に影響していないの は、おそらく幼い子どもをもつ母親に対しては、

要介護者の世話が免除されているためであろう。

5

おわりに

本稿では、子育て期女性の家事・育児負担感と 表5 家事・育児負担感の重回帰分析

末子0〜2 末子3〜6 末子7〜12

B 標準誤差 β B 標準誤差 β B 標準誤差 β

(定数)

年齢

2.981 0.011

0.718 0.016

***

0.056

3.058

−0.002

0.764 0.016

***

−0.008

3.162

−0.015

0.737 0.016

***

−0.061 学歴(基準=大卒以上)

高校以下 短大

−0.113

−0.142

0.175 0.160

−0.059

−0.074

−0.068 0.049

0.163 0.156

−0.032 0.023

0.294

−0.116

0.158 0.145

0.138

−0.057 就業状態(基準=無職)

自営 正規 非正規

0.600 0.434 0.058

0.299 0.221 0.186

0.143*

0.139 0.022

0.269 0.750 0.175

0.253 0.210 0.153

0.069 0.261***

0.078

0.406 0.187 0.163

0.213 0.197 0.143

0.125 0.068 0.080 夫収入(基準=700万以上)

500万未満 500〜700万未満

0.133

−0.154

0.196 0.218

0.070

−0.069

0.000

−0.102

0.169 0.183

0.000

−0.044

−0.087 0.252

0.168 0.157

−0.041 0.123 居住地(基準=都市地域以外)

子ども数

要介護者(基準=なし)

−0.257 0.124 0.070

0.174 0.079 0.171

−0.110 0.125 0.029

0.160 0.147 0.105

0.156 0.087 0.211

0.065 0.112 0.032

0.222 0.058 0.535

0.153 0.082 0.168

0.092 0.045 0.193**

手段的 情緒的

−0.011

−0.068

0.005 0.035

−0.165*

−0.156

−0.009

−0.107

0.005 0.027

−0.128

−0.272***

−0.005

−0.052

0.005 0.026

−0.067

−0.134*

親族 手段的 情緒的

−0.061 0.003

0.040 0.016

−0.144 0.016

−0.051 0.013

0.037 0.015

−0.107 0.073

−0.038 0.014

0.036 0.013

−0.074 0.078 非親族 手段的

情緒的

0.009 0.013

0.036 0.018

0.021 0.061

−0.057 0.015

0.033 0.017

−0.139 0.067

−0.044

−0.020

0.030 0.017

−0.106

−0.089

調整済みR2 0.101** 0.129*** 0.126***

***p<.001 **p<.01 *p<.05

武田:子育て期女性のサポート・ネットワークと精神的健康

(9)

サポート・ネットワークの関連について、ライフ ステージ間の違いに焦点をあてながら検討してき た。これまでの分析を通して明らかになった点を 最後にまとめておこう。

まず、家事・育児負担感については、もっとも 子どもに手のかかる末子0〜2歳での負担感が一 番高く、末子7〜12歳で一番低い。

サポート量のライフステージ間の違いについて は、夫サポートと親族サポートは、手段的・情緒 的いずれにおいても、末子年齢が上がるほどサポ ート量が少なくなるが、非親族サポートは、末子 年齢が上がるほど、サポート量が多くなる。ここ から、夫サポート、親族サポートをもっとも多く 得ている、あるいは期待できるのは末子0〜2歳 の女性であり、非親族サポートをもっとも多く期 待できるのは、末子7〜12歳の女性であるという ことがわかる。

次に、サポートと家事・育児負担感の関係につ いて。

親族サポートはいずれのライフステージにおい ても、家事・育児負担感にあまり関係していな い。非親族サポートは、末子3〜6歳以降のステ ージで家事・育児負担感との間に負の関連がみら れるが、夫サポートに比べるとその影響力は小さ いといえる。

一方、夫サポートは、3つのライフステージを 通じて家事・育児負担感を軽減する。ただし、末 子0〜2歳において家事・育児負担感を低めてい るのは、夫サポートのうちの手段的サポートであ る。

乳児を抱えた母親は、昼夜関係なく子どもに向 き合わなければならず、体力的な負担感は大き い。そうした妻の悩みやグチを夫が聞いたり、育 児のたいへんさを理解することはもちろん大切で はあるが、実際に夫が家事や育児を分担して物理 的な負担を少なくすることが母親の負担感の軽減

につながることを、分析結果は示しているといえ よう。

しかし末子3〜6歳以上になると、夫のサポー トは、手段的なものよりもむしろ情緒的なものの ほうが家事・育児負担感をやわらげる効果をも つ。

このように、子育て期といってもライフステー ジによって、周囲から得られる、あるいは期待で きるサポートのあり方や、サポートが母親の精神 的健康に与える影響も異なるのである。

ところで、今回対象となったのは、末子年齢が 12歳までの子どもをもつ女性であった。しかし、

子どもが高校を卒業するまでを「子育て期」とと らえるならば、本稿では子育て期の前半しか扱っ ていないことになる。西村のいう「ポスト育児 期」も、その対象は末子7歳以上から19歳以下 の子どもをもつ女性であった。とすれば、「子育 て期女性」という本稿のタイトルからすると、今 回の分析は片手落ちである。より広いライフステ ージを含めての検討が必要だが、それは今後の課 題としたい。

〔註〕

1)乳幼児をもつ母親に限定せずに子育て期にある女 性のストレスや負担感を論じたものとして、西村

(2009)の ほ か、稲 葉(1999 a、1999 b、1999 c)、

松岡(1999 a、1999 b)などがある。

2)奈良県内の39市町村を通勤圏と合併の有無により 6層に分類したうえで7市町を選び、7市町の県全 体に対する女親有世帯数の比率に応じて,標本総 数 を7市 町 に 割 り 当 て た。詳 し く は 水 垣・武 田

(2015)を参照のこと。

3)先述のとおり、対象者は末子年齢が0歳から12歳 未満の子どもをもつ女性であるが、標本抽出時点 と実査との間に末子が12歳の誕生日を迎えたと考 えられるケースも分析に含まれている。

4)数値は、子どもが1人以上いる初婚同士の夫婦の うち、子どもの追加予定がない夫婦について集計 したものである。

5)西村の分析において、「末子6歳以下」「末子7〜

(10)

12歳」「末子13〜19歳」で有意な差がみられなか ったのは、負担感の指標の違い(「(この1カ月ほ どの間に)家族内での自分の負担が大きすぎると 感じたことがある」)や6歳以下を1つのライフス テージとして扱っていることによるものと思われ る。

6)たとえば、育児ネットワークの密度と母親の育児 不安にかんして松田茂樹は、密度が中程度の場合 に育児不安がもっとも低くなるという「密度のU カーブ効果仮説」を提示している。

7)「あなたと配偶者の方は、日ごろ、家事や子どもの 世話をどれくらい分担しあっていますか。全体を 100% とした場合、あなたと配偶者の方の分担の 割合をパーセントでお答えください」という質問 に対する夫の分担率である。

8)選択肢には「子ども」の選択肢もあったが、子育 て期女性のサポート・ネットワークを分析する目 的上、分析から除外した。

9)調査票にはこのほか、「親子で集まったり出かけた

りする」「一緒に趣味を楽しむことができる」とい う項目も設けられている。

10)表4で示したように、各サポート間にはある程度 高い相関があるため、多重共線性が生じている可 能性が問題となる。このため6つのサポート変数 についてVIFを確認したところ、最大でも2.2を 超えることはなかった。確定的な判断をするため にはより詳細な検討が必要だが、多重共線性が生 じている可能性は低いと判断して議論を進めてい くことにする。

11)居住地については、回答者の居住する地域(小学 校区)が農林業センサスにおける「平地農業地域」

「中間農業地域」以外のものを「都市地域」として いる。

〔付記〕

本稿は、JSPS科研費21530524による研究成果の一 部である。

〔参考文献〕

星敦士,2012,「育児期女性のサポート・ネットワークがwell-beingに与える影響:NFRJ 08の分析から」『季刊社会保 障研究』48(3): 279-289.

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────,1999 b,「なぜ常雇女性のストレーンが高くないのか?−大都市近郊」石原邦雄編『妻たちの生活ストレス とサポート関係−家族・職業・ネットワーク』東京都立大学都市研究所:53-85.

────,1999 c,「有配偶女性のディストレスの構造−大都市近郊」石原邦雄編『妻たちの生活ストレスとサポート 関係−家族・職業・ネットワーク』東京都立大学都市研究所:87-119.

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────,2017,『現代日本の結婚と出産−第15回出生動向基本調査(独身調査ならびに夫婦調査)報告書』.

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松岡英子,1999 a,「妻たちが抱える生活ストレッサー−地方都市の分析」石原邦雄編『妻たちの生活ストレスとサポ ート関係−家族・職業・ネットワーク』東京都立大学都市研究所:121-150.

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(11)

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参照

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