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風俗案内所規制条例と憲法二二条一項 : 京都地裁 判決を中心に

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風俗案内所規制条例と憲法二二条一項 : 京都地裁 判決を中心に

著者 太田 裕之

雑誌名 同志社法學

巻 66

号 5

ページ 1369‑1390

発行年 2015‑01‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000015219

(2)

    同志社法学 六六巻五号八一一三六九

――京都地裁判決を中心に――

           

                        

(3)

    同志社法学 六六巻五号八二一三七〇      

      

はじめに

  二〇一四年二月に、京都地裁は、京都府風俗案内所の規制に関する条例 1

(以下﹁本件条例﹂とする)中、学校等の保護対象施設からの風俗案内所の距離規制が憲法二二条一項に違反する旨の一部違憲判決(以下﹁本判決﹂とする)を下した 2

。風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下﹁風営法﹂とする 3

)により各種風俗営業の広告・宣伝規制などの様々な規制が行われる中で、風俗案内所は風営法の規制対象とはなっておらず、いわば脱法的に各種風俗営業のあっせんを行う営業として捉えられてきた。京都府はこの風俗案内所に対して、他のいくつかの都府県と同様に規制をかけることで、風俗案内所が違法に性的役務を提供する接待飲食等営業をあっせんすることなどを防止しようとした。しかし京都地裁判決は、薬事法判決 4

を引用し、かつそれに依拠しつつ厳格な合理性の基準を適用し、立法事実を厳しく吟味することで本件条例による距離規制が憲法二二条一項に違反するという判断を下した。

  本稿は、この京都地裁判決を素材にして、憲法二二条一項の職業選択の自由に関する論点である規制目的二分論についての議論を整理するとともに、京都地裁判決を分析、検討することで、本判決が営業の自由法理にとって持ちうる意義を明らかにすることを目的とする。第一章で風営法の規制及び本件条例による風俗案内所の規制を概観し、第二章で

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    同志社法学 六六巻五号八三一三七一 は本件判決の事実及び判旨を紹介する。そして第三章で憲法二二条一項について、特に審査基準論を中心に概観し、最後に第四章で本件判決を分析・検討する。

第一章  風営法と風俗案内所そして本件条例 第一節  風営法と風俗案内所   風営法は、一九四八年に成立した 5

。日本においては明治以降、﹁公娼﹂制度の存在を前提とした風俗関係営業取締の歴史があり、風俗に関する営業の取締は、戦前では警察庁令および府県令によって行われていた 6

。風営法による規制の目的は、戦前においては公安、風俗上のみならず衛生上の見地から規制が行われていたが、一九四八年に当時の風営法が制定された時点では目的規定はおかれていなかった。当時は風俗犯罪の予防が主たる目的であると考えられたが、その後風俗環境の保全等も目的であると考えられるようになり 7

、一九八四年の改正において目的規定が初めておかれるに至った。それによれば、規制目的は善良の風俗と清浄な風俗環境の保持、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止である(風営法一条)。

  規制対象と規制の態様:風営法の規制対象は、﹁接待飲食等営業﹂やまーじゃん屋、ぱちんこ屋などの﹁風俗営業﹂及び﹁店舗型性風俗特殊営業﹂、﹁無店舗型性風俗特殊営業﹂等の﹁性風俗関連特殊営業﹂である(風営法二条一項、四項、五項参照)。風俗営業については都道府県公安委員会による許可制が採られ(風営法三条一項)、性風俗特殊営業には都道府県公安委員会への届出制が採られている(風営法二七条一項)。風俗営業については許可の際の基準として、

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    同志社法学 六六巻五号八四一三七二

営業者、地域、構造設備などについての基準がある(風営法四条)。これらのうち地域基準については、営業所が﹁政令で定める基準に従い都道府県の条例で定める地域内にあるとき﹂は、公安委員会は許可をしてはならないこととされ、条例による地域規制が行われている(風営法四条二項二号)。これに対して、店舗型性風俗関連特殊営業の営業禁止区域は、風営法自身により﹁一団地の官公庁施設﹂、﹁学校﹂、﹁図書館﹂、﹁児童福祉施設﹂又は﹁その他の施設でその周辺における善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する必要のあるものとして都道府県の条例で定める﹂施設の周囲二〇〇mの区域内(風営法二八条一項)で営業が禁止され、さらに他に都道府県は地域を定めて条例により地域規制ができることとされている(風営法二八条二項)。

  この条例による地域規制に関して、京都府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(以下﹁施行条例﹂とする

)8

)は、府下における規制地域を三つに分け、住居専用地域、商業地域などの第一・二種地域とは別に、京都市内の木屋町・祇園地域という伝統的な歓楽街を第三種地域として指定する(施行条例一条別表)。そして第三種地域において、学校、児童福祉施設、病院・診療所、図書館から七〇mの距離を風営法四条二項二号の規定する地域としている(施行条例三条一項二号)。したがって、第三種地域においては、施行条例の定める学校等の保護対象施設から七〇m以内において風俗営業を営むことができないこととなっている。なお店舗型性風俗関連営業の風営法二八条一項に基づく地域的制限として、施行条例は病院及び診療所、保健所、博物館、都市公園を挙げている(施行条例一〇条)。したがって、店舗型性風俗関連特殊営業の場合は、風営法に基づいて、保護対象施設から二〇〇mの距離制限があるのに対し、風俗営業については、条例に基づき、京都府では第三種地域の保護対象施設から七〇mの距離制限が設けられているということになる。

  次に、風俗営業等の広告・宣伝規制について概観する。風俗営業者に対して、風営法は﹁その営業につき、営業所周

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    同志社法学 六六巻五号八五一三七三 辺における清浄な風俗環境を害するおそれのある方法で広告又は宣伝をしてはならない﹂(風営法一六条)と規定し、他にも例えば客引き、つきまとい、立ちふさがりなどの行為を禁止している(風営法二二条)。禁止行為については刑罰によりその有効性が担保されている(風営法五二条)。風営法は、風俗営業所、とりわけ性風俗特殊営業につき、広告・宣伝の規制など大幅な規制をかけている。これは二〇〇五年の風営法改正によるもので、例えば性風俗関連特殊営業について違法な無届業者による広告・宣伝が氾濫していたことに対し、届出書を提出していない業者が店舗型性風俗関連特殊営業を営む目的で、広告・宣伝をすることを禁止し(風営法二七条の二、三一条の二の二)、また﹁撒き屋﹂とよばれる、チラシやビラの配布を専門とする業者による住居等へのビラ配布が行われていたことに対処するため、ビラの配布行為自体を禁止し刑罰で担保するようになった(風営法二八条五項、三一条の三  一項等 9

)。風営法は風俗営業、とりわけ性風俗関連特殊営業の広告・宣伝に対する規制を厳格に行っているといえる。

  以上のように風営法、施行規則による風俗営業、性風俗特殊営業の広告・宣伝に対する厳格な規制が存在する中で、近年各地で増加してきたのが風俗案内所である。

  風俗案内所とは﹁ビルの一室等に店舗類似の施設を設け、そこに来た者⋮に対し、接待風俗営業⋮や性風俗特殊営業⋮の客となるべくあっせんを行う﹂ものであり ₁₀

、また風俗営業、性風俗特殊営業という﹁二つの業態の店舗(営業所・事業所)のチラシや割引券などを置くなどして情報を提供する施設のことで、案内・紹介・あっせん等を行うものもある ₁₁

﹂とされる。

  そして例えば営業禁止地域で営まれている店舗型性風俗特殊営業や無許可の接待風俗営業に関する風俗案内が頻繁に行われ、風俗案内所は違法営業を助長しているだけでなく、風俗案内所の存在自体が、派手な外観、過剰な客寄せ行為等によって、地域の風俗環境に多大な悪影響を及ぼすことが指摘されている ₁₂

。ところが風俗案内所は風営法の規制対象

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    同志社法学 六六巻五号八六一三七四

になっていないため、上記の問題に対処するため、条例により風俗案内所を規制する動きが広がっている。大阪、東京、広島、千葉などにおいて風俗案内所を規制するための条例が二〇〇五年以降制定されている。京都府も二〇一〇年に本件条例を制定した。

第二節  風俗案内所と本件条例   憲法二二条一項違反の主張との関係で問題になった、本件条例による風俗案内所の規制の概要は以下のとおりである。   本件条例は、その一条において条例の目的として﹁風俗案内所に起因する府民に著しく不安を覚えさせ、又は不快の念を起こさせる行為、犯罪を助長する行為等に対し必要な規制を行うことにより、青少年の健全な育成を図るとともに、府民の安全で安心な生活環境を確保すること﹂を提示する。そして二条において用語の定義規定をおき、三条一項で風俗案内所の営業禁止区域を設定する。本件条例三条一項は学校、児童福祉施設、図書館、博物館、病院及び(無床の診療所を含む)診療所、保健所、都市公園の保護対象施設の敷地から﹁二〇〇メートル﹂以内での風俗案内所の営業を禁止するものである。さらに、三条一項違反に対しては、一六条一項一号において、﹁六月以下の懲役又は三〇万円以下の罰金﹂という刑事罰を科す規定をおいている。

  したがって、施行条例の定める京都市内の歓楽街である木屋町・祇園地区である第三種地域においては、接待飲食等営業については保護対象施設から七〇mの距離規制がかかっているのに対し、風俗案内所については本件条例により、保護対象施設から二〇〇m以内での営業が禁止されることとなり、禁止違反に対して刑罰が科されうることとなったものである。

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    同志社法学 六六巻五号八七一三七五 第二章  京都地裁判決 第一節  事実の概要   かつて第三種地域において風俗案内所を経営していたが、本件条例施行後本件条例三条一項違反で逮捕され(その後起訴猶予)、また第三種地域で接待飲食等営業の風俗店を経営していたXは、本件条例の施行により、風俗案内所の経営を禁止された。そこで本件条例二条四号ないし六号、三条一項、七条二号、一二条一項、一三条一項、一六条一項一号及び同項三号(以下﹁本件各規定﹂とする ₁₃

)が、憲法三一条の明確性の原則に違反し、営業の自由を不当に制限することで憲法二二条一項に違反し、さらに営利的表現の自由を不当に制限し憲法二一条一項、二二条一項に違反するなどと主張し、主位的に、Xが第三種地域において、利用者の求めに応じて接待飲食等営業に関しサービス内容、営業の名称、所在地、連絡先などについての情報を提供する方法により、風俗案内所を営む法的地位を有することの確認等を求め、予備的に、Xが風営法施行条例の定める第三種地域内の保護対象施設の敷地から、七〇mの範囲に含まれない場所において、上記主位的請求と同様の方法により風俗案内所を営む法的地位を有することの確認等をそれぞれ求めて提訴した。

  本判決について、本案前の争点として①本件訴えが﹁公法上の法律関係に関する確認の訴え﹂に該当するか、②確認の利益の有無があり、本案の争点として③本件各規定が風営法に抵触するものであるか、④本件条例二条四号ないし六号、三条一項、一六条一項一号が明確性の原則に違反するか、⑤本件各規定が営業の自由を不当に制限するものであるか、⑥本件各規定が営利的表現の自由を不当に制限するものであるか、があげられる ₁₄

。本判決は、本案については争点⑤以外の原告の主張をすべて退けている。そこで本稿では本件条例による営業の自由規制の合憲性が問題になった争点

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    同志社法学 六六巻五号八八一三七六

⑤を中心に判旨を紹介する。

第二節  判旨(争点⑤に関する部分)⑴ にとわりと﹂。るあでからはこ、﹁るあでのもなちがきつけ明自価ら内案俗風いなし受収を所対俗行う風が案内につき 享醸を気囲雰的楽歓、的込、にめたむ出び呼を者用利し楽す的結と舗店るす供提を務役びもに法違、とこるあでの性 れ認めら京る事例は、きが務つび結のと店るす供提を都舗内府いに、が所内案俗﹁﹂。た風て全限しず、ら国的に発生 る地種三第(所内案俗風のいてれさ業営ていおに府都域は:風的性に法違と所内案俗役、﹁四者注)二筆店舗であり   定条例制府前に京都本件要︱的目び及性必の制規⑵察警策本れ京、ばれよに査部態実た調わ対行活安全生によって課 決〇廷法和日四三月年〇五判大・五民。頁二七)﹂号巻九二集四 と等性質に内容照ら方法の、象対、的目て制規な的体しの、けこ昭裁高最いならなばれ(なべれわを決すきものとい か性ずのお上質いの事、はてつに広ら判狭て範具、は所裁、っがあでのる得りあ囲の。上量るしかし、記の合理的裁 囲裁量の範どにとまる理的府合のそが断判のり法立、は限法、判あでのもきべす重立を断尊ののそ策上政問題として のその上以るれらめ認と、もるす致合に祉福の共公めた性のの規いつに理合と性要必てそ具び制置の措体的内容及 にを的次一第、はのるすよ量考と討検うの記上、合立はな法所府的目の制規、はてしとが判責裁権限との務あり、で しを検討こ較、れら程を度容の限制び及内、質性の由自比慎考な場のこ。いななばれけられでさたうえし重に決定量 具ていつに置措制規な的律、ずきでがとこるず論に規、体制にの業職るれさ限制てっよのれ要こ的、必目性、内容、 項の祉福の共公ういにた憲一条二二法が置措制規るにめさ要か対一をれこ、はかうどる求れ認是てしとのもるれさす   ﹁に、なし反に祉福の共公も限人何、は項一条二二法いり由と自記上。るいてし定規る、す有を由自の択選業職憲

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    同志社法学 六六巻五号八九一三七七 おいては、通行人等にとって、そこに立ち入ることについての心理的抵抗が少なく、不特定多数の利用者が訪れることが容易に推察され﹂、﹁上記心理的抵抗の少なさは、青少年にとっても同様であると解される﹂。

   ﹁ これらのことからすれば、本件条例が﹃風俗案内所に起因する府民に著しく不安を覚えさせ、又は不快の念を起こさせる行為、犯罪を助長する行為等に対し必要な規制を行うことにより、青少年の健全な育成を図るとともに、府民の安全で安心な生活環境を確保すること﹄(一条)を目的として掲げ、これを達成するため、各種の規制を施すことは、重要な公共の福祉に合致するものとしてその必要性の存在を認めることができる﹂。⑶  規制の内容及び制限の程度︱本件条例三条一項は、﹁第三種地域のうち本件条例に係る保護対象施設の敷地から一定の距離内を営業禁止区域として設定した上で、当該営業禁止区域における風俗案内所によるあらゆる風俗案内という営業を全面的に禁止するものであり、これに違反した者は、本件条例一六条一項一号により直ちに刑事罰の対象となることが予定されている﹂。そして、本件条例の﹁目的を達成するために、本件条例三条一項のように、学校等の施設が所在する第三種区域のうち一定の区域を営業禁止区域として設定した上で、そこでの風俗案内所の営業の全部又は一部を禁止し、これを刑事罰で担保するという手段を採用することは、それ自体合理的なものであるということができ﹂、﹁学校等の施設を保護対象施設とした上で、その敷地から一定の距離内を風俗案内所の営業禁止区域として設定することは、合理性を有する規制手段であるといえる﹂。

   ﹁

もっとも、上記規制手段は、特定の区域における風俗案内所の営業を、刑罰をもって全面的に禁止するものであるから、営業が禁止される区域の設定方法及び禁止される営業内容の特定に当たっては、国民の営業の自由に配慮することが求められるものであって、当該区域が過度に広範にわたって設定され、あるいは禁止される営業内容の特定が規制の必要性を超えるものであるような場合には、規制目的との関係で合理的な関連性がないものとして、立法府

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    同志社法学 六六巻五号九〇一三七八

の裁量を逸脱したものと評価される場合がある﹂。

   ところで、施行条例三条一項二号による風俗営業所の第三種地域における営業禁止区域は、﹁保護対象施設の敷地から最大で七〇m以内の地域に限られるところ、本件条例三条一項による第三種地域における営業禁止区域は﹂、﹁保護対象施設の敷地から二〇〇m以内とされている。また、風俗営業所等における営業内容には、接待飲食等営業や性風俗関連特殊営業等があり﹂、風営法及び施行条例は、﹁いずれもこれらの風俗営業が周辺地域にもたらす弊害の程度に応じて、その規制態様を異にしているところ、本件条例三条一項は、営業禁止区域を設定するに当たり、風俗案内所における情報提供について、接待飲食等営業の情報提供と性風俗関連特殊営業の情報提供との間で区別を設けておらず、当該営業禁止区域における風俗案内所の営業を全面的に禁止している﹂。

 

 

そして﹁第三種地域における保護対象施設との関係で、風俗案内所における接待飲食等営業に関する情報を提供する方法での営業が公共の福祉に対してもたらす弊害が、風俗営業所における接待飲食等営業がもたらす弊害よりも大きなものであることについては、本件の全証拠によっても明確な根拠を認め難い﹂。﹁これに伴い、第三種地域における風俗案内所による営業の禁止区域を設定するに当たり、接待飲食等営業に係る情報提供と性風俗関連特殊営業に係る情報提供とを区別せず、両者についての営業を、一定の区域内では全面的に禁止することとした上で、その区域について、風俗営業所に対する保護対象施設の敷地からの距離制限(最大七〇m)よりも大きな距離制限(二〇〇m)を採用することについても、明確な根拠を認めがたい﹂。⑷  本件条例三条一項、一六条一項一号の合憲性︱以上によれば、﹁本件条例の目的は、風俗案内所がもたらす弊害及びこれを規制する必要性に鑑みると、公共の福祉に適うものとして合理的であるものの﹂、当該規制目的を達成するために、第三種地域のうち、保護対象施設の敷地から﹁少なくとも七〇mを超える区域において接待飲食等営業の情

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    同志社法学 六六巻五号九一一三七九 報提供を行う風俗案内所の営業を全面的に禁止し、これを刑事罰で担保するという手段を採用することは、規制目的と規制手段の間に合理的な関連性を認めることができず、本件条例三条一項、一六条一項一号のうち、当該規制に係る部分は、府民の営業の自由を立法府の合理的裁量の範囲を超えて制限するものとして、憲法二二条一項に違反し、無効であるというべきである﹂。

   他方、本件条例三条一項、一六条一項一号は、前記の部分に限って無効であるから、前記各条項の有効な部分によって風俗案内所の営業が禁止されている区域において、公安委員会が必要な指示(本件条例一二条一項)を行い、事業の全部または一部の停止を命じることができるとすること(本件条例一三条一項)は、﹁規制目的との関係で、規制の範囲及び手段の双方について合理的な関連を有するもの﹂といえ、憲法二二条一項に違反するものとは認められない。

第三章  営業の自由と憲法二二条一項 第一節  憲法二二条一項と規制目的二分論   憲法二二条一項は、職業選択の自由を保障する。薬事法判決が指摘するように、職業選択の自由は人格的価値と結び付くものであり、この自由の制約については二重の基準論を前提としても、その制約の目的・趣旨に照らし、合憲性の判断にあたって慎重な配慮が必要であると考えられる ₁₅

。職業選択の自由には選択した職業を遂行する自由、つまり営業の自由も含まれると解される ₁₆

。職業選択の自由について憲法二二条一項は﹁公共の福祉﹂による制約を明言していることから、この自由は他人の生命・健康に対する侵害を防止するなどの消極的・警察的目的を達成するための内在的制約

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    同志社法学 六六巻五号九二一三八〇

と、社会政策及び経済政策上の積極的な目的を達成するための政策的目的に服しうると考えられている ₁₇

  営業の自由規制に対する合憲性審査基準として、一九七二年の小売市場判決 ₁₈

及び一九七五年の薬事法判決によって、﹁規制目的二分論﹂が最高裁によって採られていると考えられた。まず小売市場判決において積極目的規制に対する審査基準が示された。この判決では﹁いわゆる社会国家的見地から、経済の円満な発展をはかり、社会公共の便宜を促進する等のためになされる職業選択の自由に対する経済政策的規制 ₁₉

﹂、あるいは﹁福祉国家の理念の下に、弱者保護のため、あるいは、社会経済の均衡のとれた調和的発展のために行われる ₂₀

規制﹂である積極目的規制の場合、規制の合理性についてはその性質上政治部門の政策的・専門技術的判断に委ねられるところが大きいことから、当該規制立法に強度の合憲性推定を与え、立法府の判断を最大限尊重するために、規制の必要性と合理性について、立法府がその裁量権を逸脱し、当該規制立法が著しく不合理であることの明白である場合に限り違憲とする、﹁明白性の原則﹂が妥当するとするものである ₂₁

  それに対し薬事法判決では消極目的規制に対する審査基準が示された。消極目的の規制とは、﹁いわゆる自由国家的な見地から、国民の生命および健康に対する危険を防止するために、職業の選択とその遂行に対して加えられる規制 ₂₂

﹂、また﹁自由にすれば国民の健康や安全に危険が生ずるという場合に、その弊害を除去・防止するための規制﹂である ₂₃

。この規制については警察比例の原則が妥当するものとされる。そして薬事法判決は、本判決判旨⑴が引用する一般的判断枠組みを提示した後で、消極目的で許可制が採られる場合には﹁一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課すもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し﹂、そのためには﹁許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に

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    同志社法学 六六巻五号九三一三八一 対する規制によっては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要する﹂と述べて、消極目的規制での許可制に対しては、立法事実を精査してLRAの存在の有無を問う、厳格な合理性の基準が適用されることを明らかにした。以上の二判決により、職業選択の自由(営業の自由)規制に対する審査基準として、最高裁は規制目的により審査基準をシフトし、それが積極目的の規制である場合には明白性の原則を、消極目的のものである場合には、厳格な合理性の基準を適用するのだと考えられた。

第二節  営業の自由規制に対する審査基準   しかしながら、規制目的二分論の考え方は憲法二九条の保障する財産権の規制についても妥当するのでは、と考えられていたにもかかわらず、一九八七年の森林法違憲判決 ₂₄

において最高裁は積極目的に近い規制目的をあげながらも厳格に審査し、二分論に言及することなく違憲判断を下し、その際に薬事法判決を引用して本判決判示⑴に近い判断基準を示し、立法事実を精査した。また公衆浴場の距離制限について、かつて最高裁はこれを消極目的であると解しつつも合憲判断を下していたが ₂₅

、一九八九年の判決では、距離制限の目的は﹁国民保健及び環境衛生の確保にあるとともに﹂、﹁既存公衆浴場業者の経営の安定を図ることにより、自家風呂を持たない国民にとって必要不可欠な厚生施設である公衆浴場自体を確保﹂することもその目的であるとし、目的が消極・積極両方であることを示唆したうえで合憲判断を下した ₂₆

。そしてまた酒税法による酒類販売免許制の合憲性が争われた事件においても、免許制という参入規制であってもそれが酒税確保という財政目的の規制であるときには、免許制の必要性と合理性についての立法府の判断が、立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、憲法二二条一項に違反しないとして合憲判断を下している ₂₇

。このように、最高裁は薬事法判決以降明示的に規制目的二分論に依拠した判断を下さなくなった。

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    同志社法学 六六巻五号九四一三八二

  さらに規制目的二分論には、学説からも疑問点が出された。疑問点としては例えば①規制目的を積極・消極目的に常に二分できるのか疑問であること、②積極目的の場合、なぜ緩やかな審査になるのか、理由が明らかでないこと、③規制目的の区別は、規制される権利の性質、規制によって得られる利益の性質とも直接に関係せず、規制目的の区別が審査基準の厳格度を決めることに必然性があるのか疑問である、などというものである ₂₈

  そこで現在では、規制目的のみに依拠して審査基準が自動的に決まると考えることは必ずしも適切なことではないことを前提として、裁判所の審査能力ないしは機能的な観点から審査基準を把握すべきであるという考え方が有力である ₂₉

。それによれば、消極目的での規制の場合、裁判所は立法事実を把握することが比較的容易であり、人格的価値と密接な関係を有する職業選択の自由(営業の自由)に対する必要最小限度の規制であるかを判断することが比較的容易であるが、積極目的での規制である場合には、国としてどのような視点に立っていかなる産業をどのように保護・規制するのかという判断について、裁判所が必要最小限度性を測ることが困難であり、立法事実を精査することに限界があることになるとされる。さらに、審査にあたっては、規制目的以外に、規制により達成される利益は何か、職業選択に対する規制(参入規制)か、それとも職業の遂行についての規制(職業活動の内容・態様規制)かを区別し、前者である場合にはより厳格に審査し、さらに規制方法についてもそれが許可制、届出制、登録制、特許制なのか等に着目して、個別具体的に総合的に判断されるべきものと考えられる ₃₀

  また規制目的二分論に対しては、最高裁は本判決⑴の薬事法の判断枠組みを二二条一項が保障する自由の規制が問題になるときに一様に適用しているだけで、そもそも﹁規制二分論﹂のアプローチを判例で確立したわけではないという指摘もある ₃₁

。とまれ最高裁は、規制目的についての判断のみに基づいて審査基準を決定するという画一的な審査方法を採っておらず、薬事法判決のいう﹁事の性質﹂に応じた審査を行っており、その際﹁事の性質﹂の判断に当たり、重要

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    同志社法学 六六巻五号九五一三八三 な要素として規制目的、規制態様、方法などの具体的な内容を考慮している、ということになるのであろう。 第四章  判決の検討

第一節  本判決の分析   本判決は、まず薬事法判決を引用し、そこで示された﹁具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定﹂すると宣言した。そして上記の検討と考量は、第一次的には立法府の判断に委ねられ、その判断が合理的な裁量の範囲にとどまる限り、裁判所はその判断を尊重するが、この合理的裁量の範囲については﹁事の性質上﹂おのずから広狭があり、裁判所は具体的規制の目的、対象、方法等の﹁性質と内容﹂に照らし決すると述べた。

  その上で本判決は、まず規制の目的及び必要性について、風俗案内所が違法に性的役務を提供する風俗営業などと結びつく問題が発生していることから、本件条例一条の掲げる目的を達成するために規制を行うことは、﹁重要な﹂公共の福祉に合致するとして、規制の必要性を肯定している。

  次に規制の内容及び制限の程度についての判断において、本件条例の目的を達成するために、第三種地域のうち一定の区域を営業禁止区域とした上で、そこでの風俗案内所の営業を禁止し、刑事罰で担保するという手段を採用することには合理性がある。しかし営業禁止区域の設定方法及び禁止される営業内容の特定にあたっては、営業の自由に配慮することが求められ、当該区域が過度に広範にわたって設定され、あるいは禁止される営業内容の特定が規制の必要性を超える場合には、規制目的との合理的関連性が認められないこともあると指摘し、立法事実の精査に進む。

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    同志社法学 六六巻五号九六一三八四

  風俗案内所が提供する情報には、接待飲食等営業と性風俗関連特殊営業についてのものがあり、風営法および施行条例は、これらの風俗営業が周辺地域にもたらす弊害の程度に応じて規制態様を変えている ₃₂

。ところが本件条例は営業禁止区域設定に当たり、風俗案内所の情報提供について接待飲食等営業と性風俗関連特殊営業の間で区別をしていないことが指摘される。そして次に接待飲食等営業に関する情報を提供する方法での風俗案内所のもたらす弊害が、風俗営業所において接待飲食等営業がもたらす弊害よりも大きなものであることには﹁明確な根拠を認め難い﹂と判断した ₃₃

。その結果、接待飲食等営業についての情報提供と性風俗関連特殊営業についての情報提供を区別せず、風俗営業所に対する七〇mの距離制限よりも大きな距離制限(二〇〇m)を両者についての営業に課すことには﹁明確な根拠を認め難﹂く、規制目的と規制手段との間に合理的関連性を認めることができず、当該規制に係る部分は、立法府の合理的裁量の範囲を超えて営業の自由を制限するものとして憲法二二条一項に違反するという結論に至ったものである。

第二節  検討   本判決の特徴として、まず挙げられることは、基本的に薬事法判決の判断枠組みを採用して、立法事実を精査したうえで、本件条例が憲法二二条一項に違反するとの結論に至っていることであろう。本判決が指摘する、二〇〇m規制には立法事実が存在せず、風俗案内所に対する距離規制は接待飲食等風俗営業に対する規制と同じ七〇m規制で足る、という点は、七〇mというLRAの存在についての指摘であると捉えることも可能であろう。そうすると本判決は、いわゆる厳格な合理性の基準を、実質的に適用したものと考えることができるだろう。

  二番目に、本判決は、薬事法判決が示した、消極目的での許可制に対する審査基準である厳格な合理性の基準に明示的には言及していない。その主たる理由は、本件条例が許可制、あるいは届出制を採用していないことが考えられる ₃₄

(18)

    同志社法学 六六巻五号九七一三八五 薬事法判決以降の最高裁判決のように、規制目的に言及することなく、﹁事の性質﹂に応じて、立法府の合理的裁量の範囲について判断したものであるといえよう。そして本件における﹁事の性質﹂とは、風俗案内所規制につき、本件条例は許可制や届出制をとっていないが、接待飲食等営業に対する七〇mの距離規制よりも広範な営業禁止区域を定め、かつ禁止違反に対し刑罰を課すという強力な制限であること、本件条例が規制する風俗案内所が情報提供の対象とする営業は、風営法という消極目的規制の下で職業参入規制である許可制の下におかれている接待飲食等営業、そして届出制であっても実際には許可制の下にある風俗営業よりも厳しい制限の下に置かれている性風俗関連特殊営業であること、本判決も指摘するように、本件条例が接待飲食等営業のもたらす弊害と、性風俗関連特殊営業のもたらす弊害を区別しなかったことなどの点を指摘することができる。

  三番目に本判決は、性風俗関連特殊営業、接待飲食等営業、そして風俗案内所が周辺地域にもたらす弊害の程度に比例した規制が必要である点を指摘している。弊害の大きさは、各種風俗営業についての情報を提供する営業であるにすぎない風俗案内所が一番小さく、接待飲食等営業、性風俗特殊営業の順に大きなものであり、[性風俗関連特殊営業

接待飲酒等営業

mし〇〇二[れぞれそは制規離距、対俗にのるあで序順ういと]所内案 > 風

m〇 > 七

。は対に所内案俗風、害二弊すらたもの所内るす〇いるあでけわうい〇、とな化当正を制規しm 、らずて風俗案おれ俗よ風、は制規離距るに案例条件本。るいてっさ内の所てし例比にさき大害定弊るうしらたもの設 m〇〇]とな > 二

  四番目に、本判決は風俗案所が行う接待飲食等営業についての﹁情報提供﹂による営業がもたらす弊害と、接待飲食等営業そのものがもたらす弊害とを明確に区別している。そして前者が後者よりも大きなものであることに明確な根拠がないことを指摘し、このことが二〇〇m規制は憲法二二条一項に違反するという結論の根拠の一つとなっているように読める。情報提供とは表現行為であり、憲法二一条で保障される行為である。このことも、本判決が﹁事の性質﹂の

(19)

    同志社法学 六六巻五号九八一三八六

判断に当たり、憲法二一条で保障される情報提供行為により価値を認め、それを憲法二二条一項についての審査に反映させたものだといえるかもしれない ₃₅

。もしそうであれば、営業の自由の﹁営業﹂の中身が、憲法二一条にかかわるものであるとき、裁判所はそのことを考慮に入れた考量をすべきことを示唆するといえよう。もっとも本判決は、本件各規定がXの営利的表現の自由を不当に制限するという主張に対し、﹁仮に、営利的表現の自由なるものが憲法上保護されており、かつ、原告が風俗案内所を営むという行為が、営利的表現行為に当たるとしても、営利的表現の自由についても、公共の福祉による必要かつ合理的な制限は許されるべき﹂であるとし、第三種地域で保護対象施設から七〇m以内の区域を風俗案内所の営業禁止区域とする規制は、必要かつ合理的な制限であるとしている。このことは、本件各規定が憲法二一条の保障対象である営利的表現の規制としては許容されるが、憲法二二条一項の規制の許容性の判断にあたって、憲法二一条で保護される情報提供行為が規制されていることを考慮に入れることを排除するものではないことを示すのであろう。

むすびにかえて

  以上に検討したように、本判決が従来の﹁規制目的二分論﹂に依拠しているかどうかという点については、それについての明示的な言及がない以上、不分明である。しかしながら本判決は薬事法判決の判断枠組みについての判示部分を引用しつつ、その枠組みの下で、立法事実を精査しつつ、風俗案内所に対する第三種地域での二〇〇mの距離規制が憲法二二条一項に違反し、接待飲食等風俗営業に対する規制と同じ七〇mの距離制限で規制目的は達せられると判断したものである。薬事法判決が明示した消極目的規制やLRAについての言及こそなかったものの、本判決は薬事法判決が

(20)

    同志社法学 六六巻五号九九一三八七 示した厳格な合理性の基準を実質的に適用したものであると評価できる。さらに薬事法判決で示された﹁事の性質に応じた﹂審査を行う中で、憲法二一条で保護される権利が規制される場合には、憲法二二条一項で保障される権利の侵害が争われる場合に、それなりの配慮が必要なことを示したものといえる。このことは、今後の風俗案内所に関する規制、また風営法による各種風俗営業に対する規制についての裁判所の判断にも影響を与えるものであるといえよう。

  なお報道によれば、本件条例の施行に伴い、第三種地域で営業を行っていたすべての風俗案内所は閉店した ₃₆

。両当事者が控訴した控訴審が以上の点につきどう判断するのかを興味深く見守りたい。

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L98624425B/DXE2稿) 

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