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(1)

中国における自動車産業の発展を考える : 民族資 本系自動車メーカーの発展について

著者 西川 純平

雑誌名 同志社商学

巻 60

号 5‑6

ページ 120‑142

発行年 2009‑03‑15

権利 同志社大学商学会

ドウシシャ ダイガク ショウガッカイ

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000007402

(2)

中国における自動車産業の発展を考える

──民族資本系自動車メーカーの発展につい

1

て──

西 川 純 平

はじめに

中国自動車産業の現状

民族資本系自動車メーカーによる自動車の開発

民族資本系自動車メーカーの課題 〜組み合わせ的製品開発が抱える課題〜

むすびにかえて 〜課題の克服に向けて〜

本稿は,中国の自動車産業において,その存在感を増しつつある民族資本系自動車メ ーカー(以下,民族系メーカーとする)の現状と課題を明らかにすることを目的として いる。

中国の自動車産業の成長ぶりがめざましいことは周知のとおりであるが,その中でも 近年,中国はもとより海外の自動車業界の関係者,ならびに研究者や報道機関からも注 目を集めているのが上述の民族系メーカーである。ここでいう民族系メーカーとは,第 一汽車や上海汽車や広州汽車などのように外資と合弁提携を結んでいる中国の現地自動 車メーカーを指さない。すなわち,外資と合弁提携などをせずに,自らの資本で自動車 を開発し,生産,販売している自動車メーカーを指している。

さて,多くの中国の民族系メーカーは設立されてからまだ日が浅い。しかしながら,

例えば,民族系メーカーである比亜迪汽車(広東省深セン市)は設立からわずか

5

年程 度でプラグイン・ハイブリッド車を世界で初めて市販するに至ってい

2

る。すなわち,未 だ先進工業国においても市販化されていないプラグイン・ハイブリッド車の開発を可能 にするだけの技術力を中国の民族系メーカーが備えているということになる。また,同 じく民族系メーカーである奇瑞汽車は,2007年にイタリアのアルファロメオやアメリ

────────────

本稿は,20081214日に行われた同志社大学ワールドワイドビジネス研究センター主催の公開セ ミナー『世界の巨大市場圏とワールドワイドビジネス−新興市場圏と地域統合の学際的研究−』におけ る筆者の報告「中国自動車製造企業の現状と課題」を基に加筆・修正したものである。

2 「中国でプラグインハイブリッド車が発売BYD『F 3 DM』」ej.magazine, http : //jafmate.jp/eco/20081225_

725.php(200918日)。なお,比亜迪汽車は1995年に設立された電池メーカー(比亜迪股!有限

公司)の関連企業であり,その電池メーカーの比亜迪が2003年に西安泰川汽車を買収し,比亜迪汽車 とした経緯を持つ。

0(312

(3)

カのクライスラーの

OEM

生産を受託するまでに至ってい

3

る。そして,これらの民族系 メーカーは海外の市場を獲得すべくロシアや東南アジア,そして中東への輸出を進めて おり,さらに東南アジアなどにおいて現地生産を行おうとしている民族系メーカーも存 在してい

4

る。

その一方で,民族系メーカーの多くが先進工業国の自動車メーカーの車種を模倣,言 い換えれば「コピー車」を生産し,販売していることも指摘しなければならない。もち ろん,このコピー車にも程度はあり,一目見るだけでコピーと判断できるものもあれ ば,外観や内装を見ただけではコピー車なのかどうなのか判断がつかないものもある。

と,ここまで述べていくと,中国の民族系メーカーの実態はどのようなものなのかを 理解することが難しくなってこよう。つまり,コピー車を作るといった「発展途上」の 側面がある一方で,プラグイン・ハイブリッドカーを世界に先駆けて開発,市販化し,

そして先進工業国の自動車メーカーの生産を受託するという「先進的」な側面も持って いるのである。

それでは,中国の民族系メーカーの実態はどのようなものであるのか。次章ではまず 中国の自動車産業の現状を明らかにし,その中で民族系メーカーの実態を分析するため のきっかけを探っていきたいと思う。

中国自動車産業の現状

1.急成長する自動車大国

一般的に,モータリゼーションは一人あたりの

GDP

2,000〜3,000

ドルに達したと きに始まると言われているが,第

1

図にあるように,中国における一人あたり

GDP

を 見ると,一人あたり

GDP

2,000

ドルを超えたのはわずか

3

年前の

2006

年である。し かしながら,中国の自動車販売台数は

2006

年に日本の販売台数を抜いて世界第

2

位と なった。中国の自動車市場が急拡大を見せたのは,第

2

図の生産台数,および第

3

図の 販売台数が示しているように生産台数,販売台数ともに

2001

年度比で約

90

万台の増加 を見せた

2002

年からと言ってよいだろう。だが,第

1

図にあるように,2002年の一人

あたり

GDP

1,100

ドル程度であり,本来であればモータリゼーションが起こるよう

────────────

ただし,クライスラーのOEM車を生産する話は,近年の世界的な金融危機の影響を受けたクライスラ ーの経営難によって200812月に頓挫した。「クライスラーと提携解消 金融危機を受けて−奇瑞汽 車」サーチナ,2008129日,http// : www.news.searchina.ne.jp(20081213日)

4 「吉利汽車:ロシアへ高級車20万台を輸出へ」サーチナ,20071226日,http : //news.searchina.ne.jp /disp.cgi?y=2007&d=1226&f=business_1226_014.shtml(20081128日)

「中国の自動車輸出,50万台突破へ 07年」『人民網日本語版』,人民日報社,2007620日,http : //j.peopledaily.com.cn/2007/06/20/jp 20070620_72615.html(200918日)

「奇瑞汽車:マレーシアで合弁企業5000台生産へ」サーチナ,2008424日,http : //news.searchina.

ne.jp/disp.cgi?y=2008&d=0424&f=business_0424_002.shtml&pt=large(20081128日)

中国における自動車産業の発展を考える(西川) 313)1

(4)

817  861  946  1,038  1,132  1,270  1,486 

1,716  2,012 

2,461 

500  1,000  1,500  2,000  2,500  3,000 

1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

な経済レベルではない。このような状況が生まれた背景としては,いわゆる地域と大都 市部での経済格差の存在を指摘することができる。つまり,第

1

図はあくまで中国全体 における一人あたり

GDP

であり,地域レベルで見れば,経済発展が著しい北京や上海 などの大都市や沿海部地域と比べれば,中国東北部や内陸部の経済状況は大きく異なっ ている。例えば,北京市の一人あたりの

GDP(域内総生産)は 1999

年の時点で

2,392

ドルであ

5

り,先ほど述べたモータリゼーションが始まるとされる

2,000

ドルを超えてい る。また,第

1

図を見ると,2007年の中国全体としての一人あたり

GDP

2,461

ドル であるのに対して,先ほどの北京では

7,370

ドルであり,その差は

3

倍にも達してい

6

る。

したがって,こうした大都市部や沿海部を中心とした経済発展により,中国の自動車 市場は急拡大を見せたと言ってよい。では具体的に,これまでの中国の生産台数,なら びに販売台数を見ることで,中国の自動車市場の成長を確認しよう。まず,第

2

図は中 国における生産台数の推移を見たものである。第

2

図には比較のために日本の生産台数 も表されている。生産台数では現在のところ日本はまだ中国に追い抜かれていないもの の,一説には

2010

年には中国に追い抜かれるとも言われてい

7

る。一方で,販売台数

(第

3

図)を見ると,すでに

2006

年には中国の販売台数は

721

万台に達しており,すで に述べたように

584

万台であった日本を追い越して世界第

2

位の地位にある。さらに翌

────────────

5 「北京の政治・経済概況」上海エクスプローラー,http : //www.explore.ne.jp/beijing/kiso/keizai.pdf(2008 128日)

6 「北京,一人当たり平均GDP7千ドル突破」『人民網日本語版』,人民日報社,http : //j.peopledaily.

com.cn/2008/01/22/jp 20080122_82893.html(2008128日)

7 「データ潮流 2010年までに生産・販売台数で日本を追い越す中国の自動車産業」『ニュースレター』

野村総合研究所,Vol.44, 2006420日,http : //www.nri.co.jp/publicity/n_letter/2006/(20081125 日)。また,中国側も「2010年に日米を抜き,世界一の自動車生産大国に−中国」『レコードチャイナ』

中国ニュース通信社,2008210日,http : //www.recordchina.co.jp/group/g 15506.html,(2008年)12 2日)としているが,昨今の金融危機の影響で2008年はその発展に減速が見られるため,生産台数 において2010年にアメリカを追い抜くことができるか微妙な情勢にある。

1 中国における一人あたりGDP(名目)

注:単位はドル。

出所:ジェトロ海外情報ファイル JETRO-FILE を基に作成。

http : //www3.jetro.go.jp/jetro−file/country.do(20081220日) 同志社商学 第60巻 第5・6号(29年3月)

2(314

(5)

0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600

1995 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

日本 中国

日本 中国

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1,000

2000年  2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

2006年に日本を 追い越した。

日:584万台 中:721万台

年の

2007

年の中国の販売台数は

879

万台に達しており,世界第

1

位の販売台数を誇る アメリカの

1,610

万台に迫っている。

2.自動車大国の実態

〜外資の独壇場〜

このように中国では,経済発展と共に自動車市場も急拡大を続けているが,言うまで もなく,この自動車市場の拡大と共に中国の自動車メーカーも数を増やし,規模を拡大

2 日本と中国の自動車生産台数の推移

出所:中国のデータは汽車工業協会,日本のデータは日本自動車工業会。

3 日本と中国の自動車販売台数の推移

出所:第2図に同じ。

中国における自動車産業の発展を考える(西川) 315)1

(6)

118 141

94

56

33

17 0

20 40 60 80 100 120 140 160

日系 民族系 ドイツ系 アメリカ系 韓国系 フランス系

万 台

してきた。現在,中国には

100

社とも

150

社とも言われる自動車メーカーが存在してい るが,これらの自動車メーカーは大きく

2

つに分けることが可能である。まずは外資合 弁系自動車メーカー(以下,外資合弁系メーカー)である。言うまでもなく,こうした 自動車メーカーは中国資本の自動車メーカーをパートナーとし,合弁で生産,販売を行 っている自動車メーカーである。代表的な外資合弁系メーカーとしては,ドイツ系の上 海大衆汽車,一汽−大衆汽車(以上,フォルクスワーゲン),アメリカ系では上海通用 汽車(GM),日系では広州本田汽車,東風本田汽車(以上,本田技研工業),一汽豊田 汽車,広州豊田汽車(以上,トヨタ),東風日産汽車(日産)などがある。なお,日本 と同じ東アジア地域からは韓国の現代自動車が(現地企業名:北京現代汽車)中国に進 出している。

そして,最後は中国資本

100% の自動車メーカー,すなわち民族系メーカーである。

この民族系メーカーは既述の通り,外資との合弁提携を結んでおらず,自らの資本によ って自動車を開発し,生産,販売している企業である。代表的な民族系メーカーとして は,奇瑞汽車,吉利汽車,比亜迪汽車,長城汽車などがある。ところで,ここで確認し ておかなければならないのは,中国の自動車市場において,外資合弁系メーカーと民族 系メーカーのどちらがシェアを持っているかということであろう。

結論から言えば,中国で生産,販売されている自動車の多くは外資合弁系メーカーの 製品(車)で占められている。例えば,2008年

1

月から

11

月までに販売された乗用車 の販売台数(第

4

図)を見ると,まず日系自動車メーカーが

141

万台(占有率

31%)

を販売して第

1

位の座にある。次いで第

2

位は民族系メーカーの

118

万台(占有率

26

%)となってい

8

る。そして,以下,ドイツ系自動車メーカーが

94

万台(占有率

21%)

────────────

占有率は,20081−11月の乗用車の販売台数(459万台)を元に算出している。

4 20081−11月,外資合弁系,民族系それぞれの販売台数(乗用車)

出所:中国汽車工業協会資料より作成。なお,本表にある民族系と分類されている自動車メーカ ーの中には,別会社が外資と提携を結んでいる自動車メーカー,あるいは過去に外資より 資本提携あるいは技術提携を受けていた自動車メーカーも含まれている(例えば,一汽海 馬汽車のように,以前日本のマツダと提携していた自動車メーカーも含まれている)

同志社商学 第60巻 第5・6号(29年3月)

4(316

(7)

一汽-大衆 10.18%

上海大衆 9.41%

上海通用 7.81%

一汽豊田 7.01%

東風日産 6.16%

奇瑞 5.66%

広州本田 5.47%

北京現代 4.96%

吉利 4.38%

長安福徳 4.01%

その他 34.96%

アメリカ系自動車メーカーが

56

万台(占有率

12%)

,韓国系自動車メーカーが

33

万台

(占有率

7%)

,フランス系自動車メーカーが

17

万台(占有率

4%)となっている。これ

らの数字を見ると,確かに民族系メーカーは乗用車の販売台数において第

2

位の座にあ ると言えるが,日系,アメリカ系,ドイツ系,フランス系,韓国系自動車メーカー,す なわち外資合弁系メーカー全体の販売台数を見ると

340

万台を超え,その占有率は

74

%となる。したがって,中国で生産,販売された乗用車のおよそ

7

割が外資合弁系メー カーの製品(車)ということになる。

さらに,第

5

図は先ほどの第

4

図と同じく

2008

1

月から

11

月までの主要な中国の 自動車メーカーごとの販売シェア(乗用車)を見たものである。一汽−大衆汽車の

10.18

%を筆頭に,上海大衆汽車(9.41%),上海通用 汽 車(7.81%),一 汽 豊 田 汽 車(7.01

%),東風日産汽車(6.16%),奇瑞汽車(5.66%),広州本田汽車(5.47%),北京現代

(4.96%),吉利汽車(4.38%),長安福徳汽車(4.01%)となっている。乗用車に限った 話ではあるものの,上位

10

以内に民族系メーカーである奇瑞汽車(第

6

位),吉利汽車

(第

9

位)がランクインしており,健闘していると言えるが,とはいえ,先ほども述べ ように全体としてはやはり外資合弁系メーカーが圧倒的にシェアを持っていることを再 認識することができる。

ところで,こうした状況を一部の中国の報道機関は「中国の自動車産業は

20

世紀初 めに(義和団事件後の)八カ国連合軍によって中国の国土が分割されたのと似た状況に あ

9

る」と論評している。確かに,中国の自動車産業の形成,発展,言い換えれば自立的 な自動車産業の発展という視点から見れば偏りがあると指摘されても仕方がないであろ

────────────

李春利(2006)28ページ。(原出典『新京報』2004513日)

5 20081−11月,主要自動車メーカーごとの販売シェア(乗用車)

出所:第4図に同じ。

中国における自動車産業の発展を考える(西川) 317)1

(8)

う。すなわち,中国が国民経済の発展を目指す中で,自動車産業を基幹産業と位置づけ るのであれば,その経済発展のなかでどれだけ自動車の開発能力や生産に関わる技術が 中国に蓄積されたかが重要な要素となる。したがって,中国自動車産業の発展を考える ためには,外資合弁系メーカーではなく,中国資本の自動車メーカー,つまり民族系メ ーカーの現状,実態を見る必要性があろ

10

う。そこで,次章ではこの民族系メーカーの実 態について考えてみよう。

民族資本系自動車メーカーによる自動車の開発

さて,民族系メーカーといえば,テレビ,新聞などの報道機関やインターネット上の 様々なサイトでも取り上げられているように,日本や欧米の自動車メーカーの車種をベ ースに自動車を開発し,生産,販売していることを思い浮かべるかもしれない。また,

日本や欧米の自動車メーカーが,知的財産権に関する訴訟を民族系メーカーに対して起 こしていることも一般的に知られている。

しかしながら,いわゆる コピー車 といっても,先ほども述べたとおり誰が見ても コピーとわかる程度のものから,ほとんど見分けが付かないものまで様々である。一方 で,民族系メーカーの多くは,自ら生産,販売する車がコピー車ではなく独自開発車で あると主張してい

11

る。だが,外資合弁系メーカーと比較すれば,民族系メーカーには自 動車を開発・生産するために必要な技術や資本などが不足していることは容易に想像で きよう。また,開発や生産に関わる能力(あるいは技術)は一朝一夕にその自動車メー カーに身に付くものではないことは周知の通りである。では,中国の民族系メーカーは その開発能力や重要部品の生産技術を短期間でどのように手に入れたのであろうか。

民族系メーカーの製品開発に関しては,丸川(2007 a)(2007 b)(2008),李春利・陳 晋・藤本隆宏(2005),李春利(2004)(2006),李澤建(2007)などがあげられる。こ れらの研究によると,多くの民族系メーカーはその不足する開発能力や生産技術を補う ために,車体の開発やデザイン,さらにエンジンやトランスミッションの開発を外資

(車体開発請負企業やエンジン開発請負企業など)に委託,あるいは共同開発している ことが明らかとなっている。また,民族系メーカー自身の開発能力や生産技術の向上の ために,アメリカ,ドイツ,日本などの先進工業国の自動車メーカーに勤めていた(あ るいは勤めている)技術者を採用し,自社内での指導にあたらせている。そこで,次に

────────────

0 だからといって,筆者は中国の自動車産業の発展において,日系や欧米系の自動車メーカーには役割が ないと言っているわけではない。これまでの東アジア諸国における自動車産業の発展を見れば,外資の 役割が大きなものであることを十分に理解している。

1 例えば,日本や欧米の車を模倣することに対して吉利汽車は「模倣は発展途上の一形態であり,自動車 先進国も初期段階において同じことをやってきた」と反論している。李春利(2004)291ページ。

同志社商学 第60巻 第5・6号(29年3月)

6(318

(9)

中国の民族系メーカーの中でも代表的な存在である奇瑞汽車(安徽省蕪湖市)を事例と して,民族系メーカーの製品開発,いわば「ものづくり」の実態を見ていくことにしよ う。

1.奇瑞汽車の概要

奇瑞汽車は

1997

年に安徽省政府,ならびに同省にある蕪湖市政府の出資によって設 立され,1999年

12

月に生産を開始し,2001年に正式に自動車販売を始めている。そ して

2007

年には累計生産台数

100

万台を達成している。ところで,この奇瑞汽車は中 国の民族系メーカーの中でも豊富な車種をラインナップしている自動車メーカーであ る。第

1

表にあるように,排気量

800 cc

の小型車「QQ 3」から,排気量

2,000 cc

の中 型セダン「A 5」,さらに

SUV

(Sport Utility Vehicle)の「瑞虎

3」

(排気量

1500 cc〜2000 cc)

,MPV(Multi Purpose Vehicle)の「東方之子

Cross」

,そして商用車までの幅広い車 種を生産,販売している。なお奇瑞汽車はこれらの車種を含め現在

11

車種を生産し,

販売している。

さらに,2008年

4

月に「北京モーターショー」が開催された際に,自動車関連の情

1 奇瑞汽車における生産・販売車種

ボディタイプ 車名 排気量 価格 搭載エンジン

乗用車 QQ 3 800〜1,100 cc 3,08〜5,08万元 SQR 372(800 cc)

SQR 472(1,100 cc)

乗用車 QQ 6 1,100〜1,300 cc 3,98〜4,98万元 SQR 472 FB(1,100 cc)

SQR 473 F(1,300 cc)

乗用車 A 1 1,300 cc 5,38〜5,98万元 SQR 473 F(1,300 cc)

乗用車 旗雲 1,300〜1,600 cc 4,98〜8,18万元 SQR 475 E(1,300 cc)

SQR 480(1,600 cc)

乗用車 A 5 1,600〜2,000 cc 6,98〜9,38万元

SQR 481 F(1,600 cc)

SQR 481 FC(1,800 cc)

SQR 484 F(2,000 cc)

乗用車 A 3 1,600〜1,800 cc 8,18〜9,53万元 SQR 481 F(1,600 cc)

SQR 481 FC(1,800 cc)

乗用車 東方之子 2,000 cc 9,18〜11,88万元 SQR 484 F(2,000 cc)

SUV 瑞虎3 1,600〜2,000 cc 8,48〜11,58万元

SQR 481 F(1,600 cc)

SQR 481 FC(1,800 cc)

SQR 484 F(2,000 cc)

MPV 東方之子Cross 1,800〜2,000 cc 9,98〜11,98万元 SQR 481 FC(1,800 cc)

SQR 484 F(2,000 cc)

商用車 瑞麒2 1,300 cc 4,38〜6,18万元 SQR 473 F(1,300 cc)

商用車 開瑞3 1,600 cc 5,58〜6,08万元 SQR 480(1,600 cc)

出所:奇瑞汽車ウェブサイト(http : //www.chery.cn/),奇瑞発動機公司ウェブサイト(http : //

www.cheryacteco.com/),自動車情報サイト(新浪汽車,http : //auto.sina.com.cn/)を参照し 作成。本表の情報は200812月現在であり,また価格はメーカー希望小売価格である。

なお,防弾ガラスなどの特殊装備をした2車種は除いている。

中国における自動車産業の発展を考える(西川) 319)1

(10)

193,658 181,544

160,600

150,872 150,252 136,602

119,703

117,452109,016107,221

0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000

報サイトである「新浪汽車」がインターネットを利用して行ったアンケートの結果を見 ると,第

6

図にあるように,奇瑞汽車に対する中国の消費者の関心度は高く,奇瑞汽車 は最も中国で知名度が高い民族系メーカーと言ってよいだろう。また,重複するが主要 な自動車メーカーの販売シェアを見た先ほどの第

5

図を振り返って見ても,強豪である 日系メーカーや欧米系メーカーとの市場競争の中で,奇瑞汽車は第

6

位のシェアを持っ ている。また,第

7

図にもあるように,奇瑞汽車の小型車「QQ」は

2008

1

月から

11

月にかけての乗用車の販売台数において第

8

位にランクインしている。

とはいえ,この奇瑞汽車の設立は

1997

年であり,まだ設立後

10

年程度しか経過して いない。にもかかわらず,すでに奇瑞汽車は中東や東南アジアに輸出をしており,さら に東南アジアやロシアでの現地生産も計画してい

12

る。では,先進工業国のどの自動車メ

────────────

2 中国政府は2002年より「走出去(海外進出),すなわち対外投資の促進を唱えており,奇瑞汽車も2001 年よりシリアに輸出を行い,2007年には119,000台を約70の国と地域に輸出した。なお,奇瑞汽車 !

6 中国の消費者にとってもっとも印象深い自主ブランド

出所:新浪汽車(自動車情報サイト)が行ったアンケート「北京モーターショーであな たが関心を持った自主ブランドメーカーはどこですか?」を基にしている。

http : //auto.sina.com.cn/news/2008−05−07/1619373027.shtml(20081231日)

7 20081−11月,乗用車(車種別)の販売台数上位10

出所:第4図に同じ。

同志社商学 第60巻 第5・6号(29年3月)

8(320

(11)

ーカーとも合弁提携を結んでいない奇瑞汽車が,短い時間で輸出企業にまで成長しえた 背景について,奇瑞汽車の製品開発を中心に考察していこう。

2.開発請負企業への委託と共同開発

(1)エンジンの開発について

まず,奇瑞汽車は自動車の開発や生産に必要となる人材や技術などを補うために,外 部,すなわち国内外の自動車メーカーや部品メーカー,さらにエンジンや車体の開発を 請け負う企業などと提携して自社の自動車の開発,生産を行ってい

13

る。では,具体的に 奇瑞汽車がどのように外部の企業からエンジンなどの重要部品の調達を行い,そしてエ ンジンや車体の開発を行ってきたのかを見ていこう。

まずはエンジンの開発について触れよう。奇瑞汽車は比較的最近まで遼寧省瀋陽市に ある瀋陽航天三

14

菱や,ブラジルの

Tritec

15

社からエンジンやトランスミッションの供給を 受けていた。ここで「最近まで」という言葉をつけたのは,現在では奇瑞汽車はこれら の企業からエンジンなどの供給をほとんど受けていないからである。これは李春利

(2006)が民族系メーカーは「基幹部品(エンジンやトランスミッション)の外部調達 から内製化への切り替

16

え」が見られると指摘してい

17

る。奇瑞汽車の生産車種を表した先

────────────

! 2003年,イランに乗用車の現地生産工場を建設し,CKD生産を始めている。また,2004年にはマ レーシアのアラド社での奇瑞ブランドの車種の生産を委託している。そして,2006年にはロシアで現 地生産を開始している。詳しくは岩見(2007)10ページを参照のこと。

3 民族系メーカーと外部企業との共同開発や,人材の獲得などについては李春利(2006),丸川(2007 a)

(2008),李澤建(2007)が詳細に分析している。なお,丸川(2007 a)は,奇瑞汽車などの民族系メー カーが短期間に資源を入手し得た要因について3つの要因をあげている。まず一つ目に民族系メーカー は外部,すなわち国内外の自動車メーカーや部品メーカー,さらに車体開発メーカーなどと提携して自 社の自動車の開発,生産を行っている点。二つ目に自動車の開発,生産に必要な人材も外部から調達し ている点。最後の三つ目は,中国国内の他の自動車メーカーが築いた部品供給ネットワークを利用し て,部品の調達を図った点である。本稿ではこれらのうち二つ目までの要因について考察しているが,

最後の三つ目の部品供給ネットワークの利用に関しては本稿の「むすびにかえて」でも触れているよう に今後の課題としたい。

4 正式名称は「瀋陽航天三菱汽車発動機製造有限公司」であり,この会社は三菱自動車と中国航天汽車工 業総公司,瀋陽建華汽車発動機有限公司,マレーシア中国投資持株有限会社(MCIC HOLDINGS SDN.

BHD.),そして三菱商事株式会社の合弁会社である。19978月に設立され,20004月より本格生

産を始めている。生産品目は,排気量2000 cc及び2400 ccの自動車用ガソリンエンジンとこれに対応 するマニュアルトランスミッションである。生産するエンジンなどはその大半が民族系メーカーに販売 されている。詳しくは三菱自動車のWEBサイト(http : //media.mitsubishi−motors.com/pressrelease/j/corpo- rate/detail 828.html)を参照されたい。

Tritec社は,1997年にアメリカのクライスラーとイギリスのローバー(当時,ドイツのBMWの子会

社)50% ずつ出資して設立された。Tritec社の拠点はブラジルにあり,主な生産品は1,400 cc1,600 ccのエンジン,またトランスミッションであり,ローバーの「mini」をはじめ,中国の奇瑞汽車「旗 雲」,海馬汽車「福美来2」,力帆汽車「力帆520」に搭載されていた。しかし,2007年にBMWが新型 エンジンを開発したことをきっかけにTritec社製のエンジンの必要性が無くなり,BMW保有のTritec 社株がクライスラーに譲渡された。一方のクライスラーも後にTritec社製のエンジンの必要性が薄れ たこともあって,Tritec社が中国の力帆汽車に売却されると憶測されたが,結果的には20083月,

イタリアのFiat社がTritec社を買収することになった。

6 李春利(2006)30ページ。

中国における自動車産業の発展を考える(西川) 321)1

(12)

ほどの第

1

表を再び見てもらうと,第

1

表に記載されている奇瑞汽車の車種に搭載され ているエンジンのほとんどが「SQR○○○」となっている。「SQR」とついているのは 奇瑞汽車が開発したエンジン(奇瑞汽車は「ACTECOエンジン」と呼称している)で あることを示している。とはいえ,これらのエンジンは奇瑞汽車が単独で開発したエン ジンではない。現在,奇瑞汽車によるエンジン,トランスミッションの開発において,

開発のパートナーとしているのがオーストリアの

AVL

社(主にエンジンの設計,開発 を行っている)である。奇瑞汽車が

AVL

社とエンジンの共同開発の提携を結んだのは

2002

9

月のことである。李澤建(2007)によると,その提携内容は直列

3

気筒の

800 cc

から直列

4

気筒の

1,300 cc

までの小排気量ガソリンエンジンと,直列

4

気筒の

1,600 cc

から

V

8

気筒の

4,000 cc

までの中・大排気量エンジン,そして直列

3

気筒

1,300 cc

から

V

6

気筒の

2,900 cc

のディーゼルエンジンのアルミフレーム・エンジンの計

18

基を共同で開発するというものであったとされ

18

る。さて,AVL社との共同開発提携か ら現在ではおおよそ

6

年経過したが,当初は

18

基のエンジンを開発することになって いたが,現在では第

2

表にあるように

29

基まで拡大している。

しかしながら,先の第

1

表にある奇瑞汽車が生産,販売している車種に搭載されてい るエンジンを見ると,800 ccから

2,000 cc

までの直列

4

気筒ガソリンエンジンはすでに 開発され搭載されているが,2,000 ccを超える大排気量エンジンに関しては第

2

表にあ るように,未だに開発中のものが多い。このように,未だ市場に投入されていないエン ジンが存在している背景には,例えば昨今世界的に求められている環境技術の開発が遅 れているからであろう。実際に,例えば

SQR 684 V(V

6

気筒

3,000 cc)エンジンの

ように,性能や燃費を向上させる機構が多く搭載されているものは市場に投入されてい ないものが多い。またディーゼルエンジンに至っては全部で

6

基ある中で

1

基しか市場 に投入されていない。したがってエンジンの開発に関してはまだ発展途上という感は払 拭できないが,一方で,奇瑞汽車はエンジンを自社の車種に搭載するだけではなく,他 の自動車メーカーに対して販売(外販)している。例えば,奇瑞汽車は

2006

11

月 に,イタリアのフィアットに対して

1,600 cc

1,800 cc

のガソリンエンジンを年間で

10

万基供給することで提携してい

19

る。

さて,以上見てきたように,奇瑞汽車はエンジンを外注する立場から内製へとシフト し,さらに他の自動車メーカーに外販する立場にまで成長を遂げている。これまでの流 れを振り返ると,奇瑞汽車はまずエンジンを外部から購入することで自動車の開発を進

────────────

7 例えば,第1表にある「旗雲」には,2007年ごろまでTritec社製の1,600 ccのエンジンを搭載してい た。また,「東方之子Cross」においても2007年まで瀋陽航天三菱製の2,400 ccのエンジンを搭載して いたが,現在はラインナップされていない。

8 李澤建(2007)109ページ。

9 『日経エレクトロニクス』20061218日号,108ページ。

同志社商学 第60巻 第5・6号(29年3月)

0(322

(13)

2 奇瑞汽車において開発された(開発中のものも含む)エンジンのリスト

排気量 型式

800 cc SQR 372 直列3気筒,DOHC, Euro蠱対応

SQR 372 T 直列3気筒,DOHC, TCI(注1),Euro蠱対応

1,100 cc SQR 472 直列4気筒,DOHC, Euro蠱対応

SQR 472 WF 水平対向4気筒,DOHC, Euro蠱対応 1,200 cc SQR 472 FC 直列4気筒,DOHC, Euro蠱対応

1,300 cc

SQR 473 F 直列4気筒,DOHC, Euro蠶対応

SQR 473 H 直列4気筒,DOHC, CBR(注2),Al(注3),Euro蠶対応 SQR 475 E 直列4気筒,SOHC, Euro蠱対応

SQR 477 FB 直列4気筒,SOHC, Euro蠶対応 1,500 cc SQR 477 F 直列4気筒,SOHC, Euro蠶対応

1,600 cc

SQR 480 直列4気筒,SOHC, Euro蠱対応

SQR 481 F 直列4気筒,DOHC, Al,Euro蠶対応 SQR 481 FD 直列4気筒,DOHC, Euro蠶対応

SQR 481 H 直列4気筒,DOHC, VVT(注4),Al,蠶対応

1,800 cc SQR 481 B 直列4気筒,DOHC,スーパーチャージャー,Euro蠶対応

SQR 481 FC 直列4気筒,DOHC, Euro蠶対応

2,000 cc

SQR 484 B 直列4気筒,DOHC, TCI, Al, Euro蠶対応 SQR 484 F 直列4気筒,DOHC, Euro蠶対応

SQR 484 H 直列4気筒,DOHC, CBR,VVT, Al, Euro蠶対応 SQR 484 J 直列4気筒,DOHC, DGI(注5),VVT, TCI, Al, Euro蠶対応 2,300 cc SQR 486 FC 直列4気筒,DOHC, Euro蠶対応

2,400 cc SQR 681 V V6気筒,DOHC, CBR, VVT, Al, Euro蠶対応 3,000 cc SQR 684 V V6気筒,DOHC, CBR, VVT, Al, Euro蠶対応

1,000 cc SQR 372 A 直列3気筒,DOHC, CR(注6),TCI, Euro蠶対応 1,300 cc SQR 381 A 直列3気筒,DOHC, CR, TCI, Al, Euro蠶対応

1,900 cc

SQR 481 A 直列4気筒,DOHC, CR, TCI, Al, Euro蠶対応 SQR 481 D 直列4気筒,DOHC, Al, Euro蠱対応 SQR 481 G 直列4気筒,DOHC, CR, TCI, Al, Euro蠱対応 3,000 cc SQR 496 直列4気筒,SOHC, Euro蠶対応

※印は市場へ未投入のもの

(注1)TCI : Turbo Charger with Inter−cooler(インタークーラー付きターボチャージャー,排気 ガスの力でタービンを回転させ,吸気を圧縮することで爆発力を増す機構)

(注2)CBR : Controlled Burn Rate(エンジン回転数に応じて吸気バルブの開閉を電子制御でコ

ントロールし,吸入空気量を最適化し,大幅な燃焼効率の向上を図る機構)

(注3)Al:アルミニウムダイキャスト製シリンダーブロック

(注4)VVT : Variable Valve Timing(バルブ可変機構,吸気バルブの開閉タイミングを切り替え

ることで給気効率を向上させ,出力と燃費の向上を図る機構)

(注5)DGI : Direct Gasoline Injection(筒内噴射方式,高圧燃料をシリンダー内に直接噴射する ことで出力の向上と燃費の改善を図る機構)

(注6)CR : Common Rail(コモンレール式電子制御噴射ポンプ,高圧化した燃料をオイルレー

ル(コモンレール)に蓄え,電子制御によって各インジェクターへ供給する機構)

出所:奇瑞発動機公司ウェブサイト(http : //www.cheryacteco.com/)より作成。なお本表の情報 2008124日時点のもの。なお,注の部分は日本の自動車メーカーのウェブサイト などを参照して筆者が付け加えたもの。

中国における自動車産業の発展を考える(西川) 323)1

(14)

めていた。現在の奇瑞汽車はともかくとして,中国ではまだ多くの自動車メーカーが外 部のエンジンメーカーからエンジンなどを購入している。こうしたエンジンメーカーの 例をあげれば,奇瑞汽車もかつてはエンジンを購入していた瀋陽航天三菱をはじめ,哈 尓濱東安汽車動力股

!

有限公司(哈飛汽車の関連企業),綿陽新晨動力機械有限公司

(華晨汽車の関連企業),また長安汽車や東風汽車の関連企業がエンジンを中国国内の多 くの自動車メーカーにエンジンを供給している。その結果,2005年時点では,中国で 生産されたエンジン

525

万台のうち

302

万台が外販に回されてい

20

る。すなわち,AVL 社のようなエンジンなどの重要な部品(基幹部品)を外販するメーカーが中国に存在し ていること,そしてもちろん,先ほど述べたエンジンの開発請負企業が海外に存在して いるからこそ,技術も資本も乏しい民族系メーカーが短期間で自動車を開発し,生産が 可能となったと言えよう。

ところで,こうした開発請負企業はエンジンの開発に限った話ではなく,デザインや 車体の開発といった分野にも存在している。そこで,さらに奇瑞汽車と車体の開発を請 け負う企業との関係について見ていこう。

(2)車体の開発について

奇瑞汽車は,車体開発に関しては主にイタリアのピニンファリーナや日本の

SIVAX

に委託している。まず,イタリアのピニンファリーナは世界的に有名な高級スポーツカ ーであるフェラーリの開発に携わっていることで知られているが,イタリアにはこうし た自動車の車体開発を手がける「カロッツェリア」と呼ばれる企業が多く活動してい る。カロッツェリアの中には車体のデザインや設計だけでなく,組立工場を持って受託 生産も行っている企業もあり,ピニンファリーナもこれに当てはまる。さて,奇瑞汽車 の車種に対するピニンファリーナの関与に話を戻すが,ピニンファリーナは「

21

M 14」

「A 3」といった車種のデザイン及び車体の設計を行っている。なお,M 14に関しては 車体のデザインはもとより衝突安全に関する設計,試験まで行われているとい

22

う。

ところで,ピニンファリーナは奇瑞汽車だけでなく,中国における民族系メーカーの 車体設計を数多く手がけている。第

8

図はピニンファリーナの取引先を紹介したもので ある。ピニンファリーナの取引先と取引内容を見ると,世界中の多くの自動車メーカー がデザインに関する依頼をしていることがわかる。特に車のデザインの分野では先ほど のフェラーリをはじめとして,マセラッティ,ベントレーやロールスロイスなどの高級

────────────

0 丸川(2007 b)を参照。

2005年の上海モーターショーに出品されたクーペ(コンセプトカー)であるが,20091月現在でま だ販売されていない。

2 「上海モーターショー05ピニンファリーナデザインの奇瑞汽車」レスポンス,2005426日,http : //response.jp/issue/2005/0426/article 70204_1.html(200914日)

同志社商学 第60巻 第5・6号(29年3月)

2(324

(15)

デザイン

エンジニアリング

マニュファクチュアリング

フェラーリ、マセラッティ、フォード、ランチア、アルファロメオ、

プジョー、シトロエン、ベントレー、ロールスロイス、

大宇自動車、本田技研工業、現代自動車、GM、華晨汽車

フェラーリ、哈飛汽車、奇瑞汽車、

江准汽車、マセラッティ

アルファロメオ、フォード、

三菱自動車、プジョー

フォード、アルファロメオ、

ボルボ ルノー、ジャガー、

プジョー、シトロエン

三菱自動車

車を製造する自動車メーカーが多い。そして,さらにこのデザインの分野では日本の本 田技研工業や韓国の大宇自動車,アメリカの

GM,そして中国の華晨汽

23

車も見ることが できる。エンジニアリング(車体設計)としてはルノーやジャガーやシトロエンなどの 自動車の設計に関わっていることがわかる。なお,さらにピニンファリーナはマニュフ ァクチュアリング,つまり受託生産業務として三菱自動車の「コルト」の生産を行って おり,さらにアルファロメオ,フォード,三菱自動車,プジョーに関してはデザインや 車体設計を担いつつ,同時に受託生産を行っている。ところで,中国の民族系メーカー とピニンファリーナとの関わりをさらに見ていくと,先ほどの華晨汽車だけでなく,哈 飛汽車,江准汽車,そして本章で取り上げている奇瑞汽車がピニンファリーナと関わり がある。しかし,ここで興味深いのは,これら

3

社は先の華晨汽車のケースと異なり,

デザインと車体設計の両方をピニンファリーナに依存している点である。第

8

図のデザ インとエンジニアリング(車体設計)が重なっている箇所を見ると,フェラーリやマセ ラッティといった高級車メーカーも存在しているが,一方で,哈飛汽

24

車,江准汽

25

車,奇

────────────

3 華晨汽車(瀋陽市)は1991年に設立された自動車メーカーであるが,「金杯汽車」「中華汽車」などの 独自の自主ブランドの自動車を生産,販売しながら,2003年からはドイツのBMWと合弁でBMW ランドの乗用車の生産も手がけている。

4 哈飛汽車(黒竜江省哈尓濱市)は航空機メーカーである哈尓濱飛機製造公司の子会社である。1980 代に日本の鈴木自動車から軽自動車の技術を導入し,主に小型の商用車の生産を始めた。現在では乗用 車や商用車を40余りの国や地域に輸出するまでに成長している。

5 江准汽車(安徽省合肥市)は1964年に設立された合肥江准汽車製造を前進とする自動車メーカーであ る。当初は軽自動車(乗用車,商用車)を生産していたが,2007年普通より乗用車の生産を始めた。

なお,この江准汽車は日本に開発センター(株式会社日本JAC日本設計センター)を2006年に設立し ている。

8 ピニンファリーナの分野ごとの取引先(自動車メーカー)

出所:ピニンファリーナウェブサイト,http : //www.pininfarina.com/

index/servizi/clienti/clientiAuto(200913日)

中国における自動車産業の発展を考える(西川) 325)1

(16)

瑞汽車といった民族系メーカーも存在している。このような状況になっているのは,ま ず高級車メーカーはピニンファリーナがおよそ

80

年の歴史を持ち,しかも,周知の通 りその歴史の中では共にデザインや開発の面で両者の関わりは深い。つまり,高級車メ ーカーはピニンファリーナが数多くの名車を生み出しているカロッツェリアであるとい うことを重視してデザインや車体設計を依頼しているものと思われる。他方の中国の民 族系メーカーはこうした高級車メーカーとピニンファリーナの関係によって構築された デザインセンス,開発力,技術力を利用すると共に,歴史的なブランド力をも利用しよ うとしているのではないかと考えられ

26

る。

ところで,奇瑞汽車の車体設計には日本の企業である

SIVAX

も関与している。この

SIVAX

が奇瑞汽車の車体設計を担当しており,現在すでに販売されている「東方之子

Cross」は SIVAX

が車体設計を担当した車種である。SIVAXは

1964

年に設立され,横 浜市に本社を置いている。また,開発センターは日本国内(横浜,栃木,愛知,三重)

だけでなく,フランス(パリ),タイ(バンコク)にも置かれており,中国の上海には 事務所が設置されている。この

SIVAX

の業務内容としては,先ほどから述べているよ うに自動車の車体の開発や各種部品の開発を行っているが,さらにオリジナル・コンセ プトカーの開発も手がけてい

27

る。

さて,これまで見てきたように,奇瑞汽車はデザイン,車体の設計に関しても,エン ジンの場合と同じように,開発請負企業に委託している。また車体の開発に関しては,

ピニンファリーナ

1

社だけではなく,上述の

SIVAX

も加わっており,結果として複数 の車体開発請負企業が奇瑞汽車の製品開発に関与している。したがって先のエンジンの 開発,そしてこの車体の開発の事例を踏まえ,奇瑞汽車の製品開発を見ると,厳密に言 えば本来の意味での「自主開発」とは異なると言えよう。

ところで,重複することになるが,エンジンに関して言えば,奇瑞汽車は外注から内 製化を進めているが,他の民族系メーカーは未だにエンジン,トランスミッション,そ のほかの部品に関して,その多くを外部企業からの調達に依存してい

28

る。

────────────

6 なお,ピニンファリーナは,近年経営難に陥っており,目下経営再建中である。こうした中で,2008 1231日に,創業者の一族であるピニンファリーナ家は,保有するピニンファリーナ全株式の50.6

%を手放すことでピニンファリーナの再建を支える銀行団と合意に達している。また2011年をもって 現在の受託生産事業から撤退することも明らかにしている。「イタリアからカロッツェリアが消える!

…ピニンファリーナ,生産から撤退」レスポンス,200911日,http : //response.jp/issue/2009/0101/

article 118458_1.html(200913日)

SIVAXは自動車以外にも航空機,船舶,スポーツ用品,電化製品等の工業製品のデザインや設計を行

っている。詳しくはSIVAXのウェブサイト(http : //www.sivax.co.jp/)を参照。

8 例えば,比亜迪汽車(広東省深セン市)は,設立時期が1995年と奇瑞汽車よりも早い時期に設立され ているが,元々は充電池メーカーであり,自動車産業に進出したのは2003年と比較的最近である。そ の比亜迪汽車の場合,エンジンや変速機は一部自社開発とされるものも存在するが,多くは本稿で紹介 した瀋陽航天三菱から購入している。また車体の開発に関しては日系や欧米系の自動車メーカーが生産 する車種をベースにしたものが多い(例えばF 3という車種はトヨタのカローラがベースとなってい る)

同志社商学 第60巻 第5・6号(29年3月)

4(326

(17)

しかしながら,そもそも自動車は「擦り合わせ型」の製品とも言われ,「特別に最適 設計された部品を微妙に相互調整しないとトータルなシステムとしての性能が発揮され ない」製品であると言われてい

29

る。では,「擦り合わせ」が必要となる自動車の開発に おいて,「組み合わせ」を主流とする民族系メーカーの製品開発に課題はないのであろ うか。さらに,民族系メーカーには製品開発の面だけでなく,他の面においても課題は 存在していないのであろうか。そこで,こうした課題について章を改めて検討していこ う。

民族資本系自動車メーカーの課題

〜組み合わせ的製品開発が抱える課題〜

先の章で述べたように,自動車の開発に必要な経営資源が不足している奇瑞汽車は,

エンジンや車体の開発を外部の企業に委託(あるいは共同開発)している。このような 中国の民族系メーカーの製品開発に関して,李春利(2006)は,民族系メーカーにおい ては「外注と内製を巧みに使い分けて,新旧部品をうまく結合して全体の製品を構成し ようとする『結合型製品開発』方式が主流となってい

30

る」と指摘している。だが,先進 工業国の自動車産業を見ると,車体開発の外部委託は存在しているが,エンジンや変速 機などを外部から購入して組み合わせるといったケースはほとんど存在しな

31

い。という のも,先進工業国の自動車メーカーでは,自動車の「開発・設計は部品を新規に最適設 計する『統合型製品開発』方式が主流になってい

32

る」からである。すなわち,先進工業 国の自動車メーカーは製品開発において「擦り合わせ」を重視しているのに対して,中 国の民族系メーカーは部品ごとの「組み合わせ」を重視した開発を行っているのであ る。その場合,走行安定性や安全性,品質などに問題が生じることはないのであろう か。

そこで,こうした問題を考える上で,次の第

3

表を見てもらいたい。第

3

表は

2005

年から

2008

1

月〜6月までの中国における自動車輸出の輸出先上位

20

カ国を見たも のである。第

3

表を見ると,その輸出先の多くは発展途上国であることが理解できよ う。一方で,第

3

表にはアメリカ,イギリス,そしてドイツなどの先進工業国も輸出先 として

20

位以内に位置していることも伺える。ただし,これら先進工業国に対して自

────────────

9 藤本(2004)17ページ。

0 李春利(2006)42ページ。

1 ただし,欧州では現地の日系自動車メーカーがディーゼルエンジンなどを欧州の自動車メーカーから調 達しているケースがある。また,日本国内においても変速機を他の自動車メーカーに外販しているケー スもある。

2 李春利(2006)42ページ。

中国における自動車産業の発展を考える(西川) 327)1

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「系統情報の公開」に関する留意事項

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014. 貨物船以外 特殊船

年度 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008. 件数 35 40 45 48 37

石石法石o0 000  一川一こ第石川石こ律第石川石田耳溢剖痔│浬剖満剖b 

本稿筆頭著者の市川が前年度に引き続き JATIS2014-15の担当教員となったのは、前年度日本

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006