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環境感染誌 Vol. 23 no. 5, 2008 原著 MRSA 院内感染に関する裁判事例の解析 藤田次郎 1,2) 比嘉太 1,2) 健山正男 1,2) 仲松美幸 2,3) 大湾知子 2,4) Evaluation of Precedents for Nosocomial MRSA Infect

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全文

(1)

1)

琉球大学医学部感染病態制御学講座(第一内科), 琉球大学医 学部附属病院

2)

感染対策室,

3)

看護部,

4)

琉球大学医学部保健 学科成人看護学

〈原 著〉

MRSA 院内感染に関する裁判事例の解析

藤田 次郎

1,2)

・比嘉 太

1,2)

・健山 正男

1,2)

・仲松 美幸

2,3)

・大湾 知子

2,4)

Evaluation of Precedents for Nosocomial MRSA Infection

Jiro FUJITA1,2), Futoshi HIGA1,2), Masao TATEYAMA1,2), Miyuki NAKAMATSU2,3)and Tomoko OWAN2,4)

1)Department of Medicine and Therapeutics, Control and Prevention of Infectious Diseases

(1stDepartment of Internal Medicine), Faculty of Medicine, University of the Ryukyus,

2)Infection Control Room,3)Nursing Department, University of the Ryukyus Hospital,

4)Department of Adult Nursing I, Faculty of Medicine, University of the Ryukyus

要 旨

近年,院内感染によって医師の法的責任が認められ多額の損害賠償責任を命ぜられる裁判例が増 加している.今回我々は

methicillin-resistantStaphylococcus aureus(以下,MRSA

と略す)の院内 感染症を対象とした判例を解析した.過去

12

年間の裁判例をコンピューターの判例検索システム を用いて検索し,MRSA の院内感染による病院側の責任が直接の争点となったものを抽出した.

検討しえた

23

件の判例のうち,22 事例を解析したところ,うち

13

件においては,医療従事者の 過失が一部認容されており,残りの

9

件においては請求が棄却されている.また

13

件の一部認容 と判定された事例のうち,10 件においては

MRSA

感染症関連のものであった.MRSA 院内感染 事例においては,MRSA 院内感染そのものが医療従事者の責任であると判断されるケースはほと んどなかった.医療従事者の過失があると判決が下された例においては,そのほとんどが

MRSA

感染症の早期診断,または早期治療を適切に行わなかったことに関連するものであった.

Key wordsMRSA,院内感染,判例

はじめに

近年,院内感染によって医師の法的責任が認められ多 額の損害賠償責任を命ぜられる裁判例が増加している.

我々医療従事者は,これらの裁判の詳細な内容,および 最終的な結論について触れる機会が少なく,実際に院内 感染が法的にどのように解釈されているのか不明な部分 が多い.このような背景の下,今回我々は

methicillin- resistantStaphylococcus aureus(以下,MRSA

と略す)の 院内感染症を対象とした判例を解析したので,その結果 を以下に紹介する.

材料と方法

MRSA

院内感染症に関する過去の裁判の事例を集積 した.その手法として,過去

12

年間の裁判例をコンピ

ューターの判例検索システムを用いて検索し,MRSA の院内感染による病院側の責任が直接の争点となったも のを抽出した.裁判例の抽出には,株式会社

TKC

TKC

法律情報データベース「LEX/DB インターネット」

(http://www.tkclex.ne.jp/)と,裁判所のホームページ

から 閲覧 可能 な「 判例 検索 シス テム 」(http:

//www.

courts.go.jp/search/jhsp0010?action_id

ˆrst&hanrei SrchKbn=01)を用いた.

結 果

院内感染による病院側の責任が直接の争点となった判 例をまとめたものが表である.もちろん現在,係争中 のものもあり全てが確定したものではないが,年代の若 い も の か ら 順 に 並 べ て い る . 調 べ え た 範 囲 で は ,

MRSA

の関連する訴訟として,合計

23

件の裁判例を解 析することが可能であった.

この

23

件の判例のうち,事例

2

については,高等裁

(2)

 名古屋地方裁判 所/平 成年

(ワ)第号

H.. 生 体 肝 移 植 手 術 を 受 け たBが 死亡したことから,原告らが,

Bが 被 告 病 院 入 院 中 にMRSA を保菌・感染したのは,同病院 の管理体制の不備が原因である などと主張して,損害賠償を請 求した事案

バンコマイシンの適切な投与によって,

発熱 などの 症状やCRP値な どの検査 数 値が実際ほど急激には悪化していなかっ た可能性は十分あり,請求を一部認容し た事例

被告病院入院中にMRSAを保菌・感染したの は,同病院の管理体制の不備に原因がある

仮に被告病院内でしたとは言えないのであれ ば,被告病院の医師はMRSAに対する術前術後 の培養検査義務を怠った過失

死亡した子のMRSA保菌が判明した後,感染 徴候が見られたにも関わらず,適時に細菌培養 検査をし,適切な量,および期間で抗菌薬を投 与することを怠った過失

→◯,◯の義務違反・不備・過失は認められな い.

→◯の過失を認める.

■下級裁判所判決 一部認容

■賠償額 約万円余

 東京高等裁判所 /平成年(ネ)

第号

H.. 脳梗塞の発作で被告病院に入院 し て い たAMRSAに 感 染 す る な ど し て 死 亡 し た こ と に 関 し,第世代セフェム系のエポ セリン等を投与すべきでなかっ たのにこれを投与したことによ りMRSA感 染 症 を 発 症 さ せ た 過 失 ,AにMRSA感 染 症 が 発 症した時点で抗菌薬バンコマイ シンを投与しなかったことによ りAMRSAの 消 失 を 遅 延 さ せた過失等によるものとした事 案

資料に記載なし ◯広域の細菌に対して抗菌力を有する抗菌薬で ある第世代セフェム系抗菌薬を投与すべきで な か っ た の に , こ れ を 投 与 し た こ と に よ り , MRSA感染症を発症させた過失

早期に抗菌薬バイコマイシンを投与すべきで あったのに,これを投与しなかったことにより,

MRSAの消失を遅らせた過失

多 種 類の 抗 菌 薬 を 投 与 す べ き で な か っ た の に,これをしたことなどにより,MRSA感染症 や多臓器不全を発症させた過失

→◯~◯否定

■下級裁判所判決 資料に記載なし

■高等裁判所判決 請 求棄 却( ◯

共に過失を認 定できない)

最高裁判所第

小 法 廷判 決/平 成年( 受 )第

号

H..

(原審差し 戻し)

入 院患 者がMRSAに 感 染 し た後 死 亡 し た場合について担当医師に抗菌薬投与の 過失がないと判断した原審の判断に経験 則,または採証法則違反があるとされた 事例

→◯~◯ともに,担当医師の過失を否定した原 審の判断には,証拠の評価を誤り,経験則に反 して,当該行為をしたこと(あるいはしなかった こと)が,当時の医療水準にかなうものであると の事実認定をした違法があるとして,原判決を 破棄し,本件を原審に差し戻した.

■最高裁判所判決 原判決を破棄.

原審差し戻し.

※註釈

長野地方裁判所 /平成年(ワ)

第号

H..経口的内視鏡下乳頭切開術によ る総胆管結石除去手術を受けた 後 ,膵 炎とMRSA感 染 症 を 発 症し,最終的に敗血症を経て死 亡したのは,医師らの過失によ るものであるとして損害賠償を 求めた事案

医師の手術ミス,手術後の経過治療に関 する注意義務違反,院内感染防止義務違 反,説明義務違反の各過失を主張して,

債務不履行,または不法行為に基づく,

損害賠償を求めた事案につき,請求を棄 却した事例

膵炎発症回避注意義務違反(経口的内視鏡下乳 頭切開術手術において被告病院の医師に手術ミ スがあった)

経口的内視鏡下乳頭切開術手術後の経過治療 に関する注意義務違反

MRSA感染防止注意義務違反

説明義務違反

~◯否定

■下級裁判所判決 請求棄却

札幌地方裁判所 /平成年(ワ)

第号

H.. クモ膜下出血を発症し,手術を 受けた原告について,被告病院 医師が適切な医療措置を怠った た め , 脳 にMRSA感 染 症 を 発 症させ,これにより原告に痴呆 等 の精 神 障害 を負わ せ た と し て,損害賠償等の支払を求めた 事案

被告の責任原因のうちクリッピング術の 過誤については原告の主張を採用するこ と が で き な い と し た が ,MRSA感 染 症 への対応の過誤については担当医師の注 意義務違反が認められるとし,原告の請 求の一部を認容した事例

担当医師のクリッピング術の過誤

MRSA感染症への対応の過誤

→◯は否定

→◯は認定

「・・・〇月〇日にはMRSA感染症としての腹膜 炎が発症しており,同日の時点で,バンコマイ シンを投与するのみならず,脳室内への感染を 防ぐため,MRSAにより汚染されたと容易に認 識し得るシャントチューブを全部抜去し,脳室 外髄液ドレナージ等の措置を執るべき注意義務 があった.」

■下級裁判所判決 一部認容

■賠償額 約万円余

 東京地方裁判所 判 決/平 成年

(ワ)第号

H..

(控訴)

H..

現在係属中

原 告Aが ,帝 王切開手 術 を 受 けて双子を出産したところ,手 術後に心停止となり,それによ る低酸素脳症により後遺症が遺 った医療事故について,損害賠 償を請求した事案

 帝 王切開手 術 を 受 け た妊 婦が , MRSA感 染 症 に よ り重 篤な 後遺 障害 を 負った事案につき,感染症治療上の過失 があるとして,被告病院の不法行為責任 が認められた事例

 将来の介護費用について,定期金賠 償の方法による支払が認められた事例

(MRSAを原因菌とする)敗血症に対して,適切 な時期に,適切な抗菌薬を投与すべき義務,お よび院内感染を防止するための適切な処置をと るべき義務を怠った過失

→肯認

XMRSAを原因菌とする敗血症に陥っている にとどまり敗血症ショックには至っていなかっ たから,上記段階で抗菌薬バンコマイシンを投 与していれば,心停止を回避することができた 蓋然性が認められる.

■下級裁判所判決 一部認容

■賠償額 約億万円 余

福岡地方裁判所 小 倉 支部 判 決/

平成年(ワ)第

号

H..

(確定)

プロラクチン産生腺腫に罹患し た患者が,被告病院において開 頭手術を受けたところ,脳梗塞 を発症し,脳圧亢進による呼吸 不全,および循環不全により死 亡した事案

被告医師には,本件腺腫の確定診断を遅 らせ,病状の未確定のまま治療方針を立 てた上,患者,および原告らに対して,

必要な説明を行い,同意を得なかった等 の治療方法の選択,決定段階における過 失,および術後の脳梗塞の発見,治療上 の注意義務を怠った過失があり,損害賠 償責任を認めた事例

亡患者の疾患を頭蓋咽頭腫と誤診し(ア),ま たはプロラクチン産生腺腫であるのと確定診断 をしないまま,開頭手術を選択した(イ)過失

亡患者に対する開頭手術の適応を誤って本件 開頭手術を行った過失

説明義務違反

本件開頭手術の手術操作上の過失

本件開頭手術後の経過観察義務違反[気管内 チューブの管理上の注意義務違反(ア),MRSA 感染に関する注意義務違反(イ),気管内チュー ブ交換時の注意義務違反(ウ),術後脳梗塞の発 見・治療上の注意義務違反(エ)]

→◯(ア),◯,◯,◯(ア)(イ)(ウ)否定

→◯(イ),◯,◯(エ)肯認

■下級裁判所判決 一部認容

■賠償額 約万円余

(3)

表

MRSA

に関する訴訟のまとめ(つづき)

例 事件番号 判決日付 事案の概要 判示事項 訴えの内容(争点) 判決と賠償額

鹿児島地方裁判 所判決/平成

年(ワ)第号

H..食 道がんと診 断さ れ た 亡Dが 被 告 の開 設す るE大 学医学部 附属病 院 に 入 院 し て い た 際 , MRSA感 染 症 に罹 患し , 損 害 を被ったとして損害賠償を求め た事案

Dの食道がんは早期に外科的根治術を行 う事が望ましい状態にあり,本件手術の 適応にあるとして手術を行ったことに過 失 は無く,DのMRSA感 染 症 の 発 症 と 被告の注意義務違反に相当因果関係があ るとは言えないとして原告らの請求をい ずれも棄却した事例

■下級裁判所判決 請求棄却

青森地方裁判所 /平成年(ワ)

第号

H.. 被告が設置経営する病院に入院 し て い たAが ,MRSAに よ る 敗血症が原因で死亡したのは,

被告病院の医療従事者の過失に よるものであるとし,損害の賠 償を求めた事案

被告病院の医療従事者に注意義務違反が あ っ た と は い え ず ,また ,MRSAの 感 染,および敗血症の発熱がみられた両日 はもちろん,発熱までの間に抗菌薬は投 与されておらず,抗菌薬の投与を過失と する主張は前提を欠くとして,請求を棄 却した事例

術後創感染防止を怠った過失

感染の早期発見,および早期治療を怠った過 失

IVHカテーテル挿入留置の際の感染予防を怠 った過失

→◯~◯否定

■下級裁判所判決 請求棄却

大阪地方裁判所 堺支部 判 決/平 成年( ワ )第

号

H..

(確定)

原告が,腰椎間板ヘルニア摘出 術のため被告の設置する病院に 入 院 中 ,MRSAに 感 染 し て硬 膜外膿瘍を発症し,第ないし 第腰椎の椎弓切除術,ヘルニ ア摘出術,および持続洗浄術を 受けざるを得なくなったなどと して,損害賠償を請求した事案

持続硬膜外ブロック治療を受けた患者が,

MRSAに 感 染 し ,重 篤な 後遺 障害 が残 った場合,担当医師らに過失があったと して,病院側の損害賠償責任が認められ た事例

経過観察・治療義務違反,持続注入器の用法違 反などの過失

→肯認

薬液 注入 時 のカ テーテ ル内腔か ら の汚染 が MRSAの侵入経路であると推認するのが相当で あるとし,Xに対する持続硬膜下ブロック療法 に際し,使い捨て用の器具であるバクスター・

イ ン フュ ーザーを繰り返し使用し た こ と に よ り,薬液内にMRSAが混入したと認められる.

バクスター・インフューザーの使用方法は,バ クスター・インフューザーの取扱説明書の「警 告」の記載に明らかに反するものである.

■下級裁判所判決 一部認容

■賠償額 約万円余

 東京地方裁判所 判 決/平 成年

(ワ)第号

H..

(控訴⇒後 和解)

原告が,被告病院において右大 腿骨骨折についてキュンチャー 髄内釘による内固定術を受けた ところ,後にMRSAに感染し, 右大腿骨の骨髄炎に罹患して後 遺障害を負ったことに関して,

被告に対し,損害賠償を求めた 事案

大腿骨の骨髄内にキュンチャー髄内釘を 挿入 す る 内固定術 を 受 け た患 者が , MRSAに 感 染 し て骨髄 炎に罹 患し た場 合に,医師に過失があったとして病院側 の損害賠償責任が認められた事例

手術すべき時期の判断を誤った過失

採るべき固定方法の判断を誤った過失

手術手技の判断を誤った過失

→肯認

病院の規模・診療内容・人的構成,本件交通事 故当日の経緯,本件手術に至る経緯,本件手術 の実施状況,本件手術後の経緯などについて認 定したうえ,医師は,この時期に,MRSA等の 細菌に感染する危険性がより高い固定法,手術 手技に よ り ,MRSAに 感 染 し た と し , 原 告 が MRSA等の細菌に感染し,骨髄炎に罹患するこ とを未然に防止すべき注意義務に反する.

■下級裁判所判決 一部認容

■賠償額 約万円余

大阪地方裁判所 判決/平成年

(ワ)第号

H..

(確定)

Aの父 母で あ る 原 告 ら が , 被告経営の被告病院には,Aの 脳腫瘍を長期間発見できず,脳 腫瘍の摘出手 術 後 もAを髄 膜 炎(MRSA)に感染させた等の過 失があり,その結果,Aを死亡 させたとして,損害賠償を求め た事案

 脳腫瘍の手術を受けた患者が死亡し た場合において,病院に脳腫瘍の摘出手 術後,患者を髄膜炎(MRSA)に感染させ た過失があり,これにより化学療法の開 始が遅れ死亡に至ったとして,病院は債 務不履行責任,および不法行為責任を負 うとされた事例

 脳腫瘍 摘出手 術 後 に患 者が髄 膜 炎

(MRSA)に罹患した事故について,手術 創部から髄液漏があった際に,患部を露 出させたまま一時放置していた過失があ るとされた事例

脳腫瘍の発見が遅れた過失

体力低下・副作用に対する処置が遅れた過失 等

脳腫瘍摘出手術後,髄膜炎(MRSA)に感染さ せた過失

説明義務違反

→◯,◯,◯は否定

→◯については,脳腫瘍摘出手術後の合併症と して髄膜炎があり,縫合部では髄液漏を起こし やすく,Aは実際に髄液漏を起こしたが,被告 病院は,患部を十分に消毒し,ガーゼ等で患部 を十分に被覆し,ガーゼを固定すること等によ り,医療関係者が患部や患部から漏出した髄液 等に接触して発症するMRSA感染を防止するた め の 適 切 な処 置を講ず る 義 務 を 怠 り ,Aは MRSAによる化膿性髄膜炎に罹患したと認定し た.

■下級裁判所判決 一部認容

■賠償額 約万円余

長野地方裁判所 松本 支部 判 決/

平成年(ワ)第

号

H.. 被告病院にて手術を受け,その 後MRSAに よ る敗 血症 を 原 因 と し て 死 亡 し たGの相 続 人で ある原告らが担当医師である被 告EGに 対 す る 術 後 の診 療 に過失があるとして,損害賠償 を求めた事案

敗 血症 の原 因 はMRSAのみに限ら ず様 々な細菌が考えられる事などから,被告 EMRSAの 感 染 を疑わ な か っ た と し て も やむを得ず ,MRSAと確信で き な い段階で抗菌薬を投与する事はかえって 耐性菌を出現させる可能性がある以上,

過失があったとは言えないとして原告ら の請求を棄却した事例

■下級裁判所判決 請求棄却

 前橋地方裁判所 高崎支部 判 決/

平成年(ワ)第

号

H..

(控訴棄却

→確定)

被告の執刀により心臓手術を受 け た 後 ,MRSA感 染 症 を 発 症 し,これを原因とする低心拍出 量症候群で死亡したのは,被告 のMRSA感 染防 止対策や 同 感 染症発症後の治療に問題があっ たからだとして,損害賠償を求 めた事案

当該患者の入院していた病院には名の MRSA保 菌患 者が 入 院 し て お り ,当 該 患 者の心のうに お けるMRSAを含 む感 染 症 発 症 が 明確にな っ た に も か か わ ら ず,その後週間もバンコマイシンを投 与しなかった担当医には過失があるとさ れた事例

MRSA感染防止対策,および◯感染症発症後 の治療について,医師に過失がある.

→◯を肯認(その余の点について判断するまでも なく,被告は亡患者の死亡について,責任を負 う)

感染症発症が明確になった場合,速やかな起炎 菌同定と早期の適切な化学療法(治療薬投与)が 必要であるところ,菌培養検査,バンコマイシ ンの投与ともに遅れている.

■下級裁判所判決 一部認容

■賠償額 約万円余

(4)

静岡地方裁判所 判 決/平 成年

(ワ)第号

H..

(確定)

MRSAを起炎菌 と す る 化膿性 股関節炎に罹患し,整形外科医 師により手術を受けることにな っ た が , 化膿性股関節炎に よ り,右大腿骨骨端の成長が阻害 され,一定の障害が残ったこと で,損害賠償等を求めた事案

頻回の嘔吐,および著しい体重減少によ っ て 入 院し て い た乳児がMRSAに起因 する化膿性股関節炎に罹患し,股関節部 の異常がみられた時期に,小児科医は整 形外科医の診断を求めるべきであり,医 師の注意義務違反があったとされ,損害 賠償が命じられた事例

MRSAを起炎菌とする化膿性股関節炎の早期発 見,および結果回避のための注意義務違反

→肯認

乳児の股間接部の異常がみられた時期に,担当 小児科医は整形外科医の診断を求めるべきであ り,これを行っておれば当該結果を回避する可 能性があった.

■下級裁判所判決 一部認容

■賠償額 約万円余

横浜地方裁判所 小田原支部判決 /平成年(ワ)

第号

H..

(控訴⇒後 和解)

僧帽弁亀裂修復,弁形成等の手 術 を 受 け た患 者が ,MRSAに 感染して死亡したのは,手術前 後における患者の体調の管理に つき 万全を 期 し ,MRSAな ど の院内感染症に罹患しないよう に十分な管理をすべき注意義務 を怠ったためだと主張し,病院 側に損害賠償を請求した事案

 出生時から心臓動脈弁の欠損症があ り , 手 術を 受 け た患者がMRSA感 染 症 に罹患し,死亡した事故について,手術 前 にMRSA感 染 の有無の 検 査を す べ き 注意義務があったとはいえないとされた 事例

 上記事故について,手術後,患者を 個室に収容して隔離するかどうかは,医 師の裁量の問題であり,個室に収容・隔 離しなかったことをもって注意義務違反 とはいえないとされた事例

 病院の感染予防対策は当時の大学病 院の水準を上回るほどのものであり,ま た抗菌薬投与の内容は医療水準に照らし て適切なものであり,病院の注意義務違 反が否定された事例

手術前にMRSA感染の有無につき検査しなか ったことの注意義務違反

手術後,個室隔離しなかったことの注意義務 違反

MRSA感染防止の注意義務違反

→◯~◯否定

当該被告病院のMRSA感染症防止対策は水準以 上であり,患者に対する感染症予防の措置も有 効適切なものである.(院内感染対策委員会,小 児病棟感染検討委員会の設置,廃棄物適正委員 会の設置と計画的廃棄処理,ベッドセンター,

リ ネ ン セ ンターに衛生基 準, 高度の清 潔 度 維 持,専 門 業者に よ る清 掃,環境 測定 基 準の設 定,一行為一手洗いの原則,サーベイランス)

■下級裁判所判決 請求棄却

山口地方裁判所 判 決/平 成年

(ワ)第号

H..

(控訴)

入 院 中 の重症新生児がMRSA に感染して重篤な後遺傷害が発 生したのは,担当医師に適切な 治療を怠った過失があったため だと主張して,被告病院に賠償 請求した事案

低出生体重児,および重症仮死と診断さ れた新生児の診療において,新生児細菌 感染症の初期症状とみられる臨床症状が 現れ ,CRPが.と いう陽性 を表す 数 値 と な った 時 点 でMRSA感 染に 対 し て バンコマイシンの投与を行わなかったこ とは,適切な治療を行うべき注意義務を 怠った過失がある.

原告がMRSAに感染したことに対する被告病 院医師らの過失

原告がMRSAに感染したことにつき,被告病 院の医師らにそれを予見し,かつ,適切な治療 をなすべきであるのに,これらを怠ったという 過失

→◯は否定

→◯は認定

患者がMRSAに感染したことについて過失は無 いが,抗MRSA薬剤の投与が遅れたことと,薬 剤感受性検査に従って抗菌薬を選択することを 怠ったことに過失あり.

■下級裁判所判決 一部認容

■賠償額 約万円余

大阪地方裁判所 判 決/平 成年

(ワ)第号

H..

(控訴)

Aの相 続 人で あ る 被控訴人 らが,Aが控訴人の設置する大 学病院において心臓外科手術を 受けた後,容態を急変させて死 亡するに至ったのは,術前に感 染 し て い たMRSAに よ る 術 後 感染症を引き起こしたためであ ると主張して控訴人に対し損害 賠償を請求した事案

国立大学付属病院において,冠状動脈バ イパス手術,および左心室瘤除去手術を 受 け た ,い わゆるMRSA感 染症「 易感 染 性患 者 」が ,MRSAに 感 染 し , 死 亡 した事故について,担当医師には,患者 にMRSA感 染 症 によ る も の と思わ れ る 上気道炎の臨床所見がみられたにもかか わ ら ず ,MRSA感 染 を確認 す る た め の 検査をまたずに緊急性のない本件手術に 踏み切ったこと,また,術後,検査によ っ てMRSA感 染 が確認 さ れ たに も か か わらず,抗菌薬を早期に投与しなかった ことに関して,過失があるとされた事例.

担当医師が,MRSA感染症を発症していた患 者に対し,適切な処置を行わずに本件手術を行 ったことの過失

担当医師が本件手術後に行った患者に対する 術後管理の過失

担当医師の説明義務違反

→◯は言及せず,◯,◯は肯認

被告病院では,感染症の所見があれば緊急等の 場合を除いてMRSA感染の有無を確認し,感染 が判明すればこれを治療したうえでないと侵襲 の大きな手術を行わないとの原則が確立してい た.本件は,緊急性を要するものではなかった うえ,MRSA感染症を疑うべき症状が発現して いた.よって,担当医師には喀痰検査の結果を 確認して,MRSA感染が判明した場合にはこれ を治療したうえ本件手術を実施し,かつ手術後 のMRSA感染や増悪を予見し,感受性を有する 抗菌薬の速やかな投与をなすべき注意義務があ ったのにこれを怠った過失がある.

■下級裁判所判決 一部認容

■賠償額 約億万 円余

大阪高等裁判所 判決/平成年

(ネ)第号・

平成年(ネ)

第号

【控訴審】

H..

(上告受理 申立→後上 告棄却,上 告不受理)

MRSA感 染 症 に よ る敗 血症 が 原 因 であるとは認められず,突発的に起きた 既往症の脳梗塞ないし心筋梗塞によって 死亡したと認められた事例

 医 師 ら がMRSA保 菌 の 有無を調べ なかったとしても,うがいの励行をして いたことなどから,手術の実施に過失が あったとはいえないとされた事例

 上記事故について,術後管理に不適 切な点があったとはいえないとされた事 例

 上記事故について,担当医は本件手 術についての説明義務を尽くしていたと された事例

→担当医師に過失なし

当審では,そもそも,患者がMRSA感染症によ る敗血症により死亡したといえるのかという点 が主たる争点となった.

→原判決とは異なり,患者がMRSA感染症によ る敗血症を発症しているとはいえないと判断

■高等裁判所判決 原判決を取消=

請求棄却

(5)

表

MRSA

に関する訴訟のまとめ(つづき)

例 事件番号 判決日付 事案の概要 判示事項 訴えの内容(争点) 判決と賠償額

大阪地方裁判所 判 決/平 成年

(ワ)第号

H..

(控訴)

精神病院に入院した患者が同室 者の暴行を受けて日後,発熱 し,それからさらに日後,

肺炎によるチアノーゼを来し,

内科を専門とする他院に救急搬 送さ れ た が ,MRSA感 染 に よ る大葉性肺炎により死亡した事 案

 右死 亡 の 原 因 は暴行に よ る肋 骨 骨 折,胸膜挫傷をきっかけとする黄色ブド ウ球菌への感染から生じた肺炎にあると された事例

 上記事故について,搬入先の病院が MRSAに 対 し て バ ン コ マ イ シ ン を 投 与 しなかったことは,患者の全身状態から して不適切と判断したためであって,右 因果関係を否定する理由とはならないと された事例

被告病院において,暴行を未然に防止すべき 注意義務を怠った過失

被告病院において,暴行後適切な治療・救命 措置を怠った過失

→◯,◯認定

亡患者の死因は,「暴行を受けて,肋骨骨折,胸 膜挫傷を生じ,これがきっかけとなって黄色ブ ドウ球菌に感染し,さらに,外傷が血液循環の 悪化と抵抗力の低下をもたらし,肺全体に炎症 が及ぶ大葉性肺炎,および肺膿瘍を生じさせ,

死亡したものと認めるのが相当である」と認定 している.

→肺炎の増悪は被告病院において適切な診察,

および処置が行われなかったことが原因である と認められるし,バンコマイシンは腎障害の副 作用があり,亡患者の全身状態が悪化していた ためバンコマイシンの効果が期待できないとし てこれを投与しなかった病院の判断に過失を認 めることはできない.

■下級裁判所判決 一部認容

■賠償額 約万円余

 東京地方裁判所 判 決/平 成年

(ワ)第号 H..

(確定)

胃全摘術 を 受 け ,MRSA腸炎 に罹患し,術後日目に死亡し たことについて医療過誤による 損害賠償請求がなされた事案

MRSAの 院 内 感 染防 止対策と し て,院内感染防止対策委員会を設置し,

サーベイランスシステム に よ るMRSA 月報も出しているなど,他の病院と同程 度の感染対策を講じていることから担当 医の過失が否定された事例

 胃がん摘出術を受けた患者に,術後 に第世代セフェム系抗菌薬を投与して いた担当医に,抗菌薬の選択を誤った過 失はないとされた事例

MRSA腸炎 罹 患を診 断で き な か っ たことについて,担当医の過失を認める ことはできないとされた事例

MRSA腸炎に罹 患す る右患 者に 対 して,バンコマイシンを経口投与せず,

経静脈投与をしたことにつき,担当医の 過失が否定された事例

 上記患者の術後管理について,注意 義務違反があったとはいえないとされた 事例

MRSAの院内感染防止対策を怠った過失

術後に投与する抗菌薬の選択を誤った過失

速やかにMRSA腸炎と診断し,適切な処置を すべきであったのにこれを怠った過失

術後管理を誤った過失

胃の手術に当たり,MRSA腸炎の併発の危険 性に関する説明を怠った過失

→◯~◯否定

■下級裁判所判決 請求棄却

 広島地方裁判所 判 決/平 成年

(ワ)第号

H..

(確定)

胃がんのため胃亜全摘術を受け たXが ,縫合不全,腹腔内膿 瘍,MRSA感 染 を起こ し , こ れを治癒する間に穿孔が生じ,

それが原因となって腹腔内出血 を引き起こ し て 死 亡 し た場 合 に , 亡Xの相 続 人ら が 損 害 賠 償を求めた事案

縫合不全の発生を疑わせる所見があるに も か か わ ら ず ,経口摂取を継続し た こ と,および縫合不全に起因する左横隔膜 下膿瘍についてドレナージを行ったが,

なお膿瘍が存在していることが判明した にもかかわらず,ドレーンの追加留置を 直ちに行わなかったことは,術後管理に 過失があったといわざるをえないとされ た事例

縫合不全の発生原因は被告病院の医師の吻合 手技上の過失にある

シスプラチンの腹腔内投与の過失

被告病院の感染対策が不十分であった過失

縫合不全,および腹腔内膿瘍に対する被告病 院の対策が不適切であった

→◯~◯は否定

→◯の過失を認めた

■下級裁判所判決 一部認容

■賠償額 約万円余

 東京地方裁判所 判 決/平 成年

(ワ)第号

H..

(控訴)

心室中隔欠損症等の先天性疾患 の治療を目的とする右心室流出 路拡大術等の手術を受けた幼児 がMRSA感 染 症 に よ る敗 血症 のため死亡した事案

感染源,および感染経路が確定できず,

したがって,被告病院の過失も確定でき ないとして,その債務不履行責任が否定 された事例

緊急性のない本件手術を何ら有効な予防措置 も実施しないまま実施し,MRSAの術後感染の 危険性の高い状態にあったICUに収容した過失

術後管理における注意義務違反(隔離の不徹底)

ICU内の感染防止措置の不徹底の過失

有効なMRSA感染防止対策の不実施の過失

→◯~◯否定

■下級裁判所判決 請求棄却

東京高等裁判所 判 決/平 成年

(ネ)第号

【控訴審】

H./

判決

→控訴棄却

(確定)

MRSA感 染 の 事 実 か ら直ちに 病 院 に無 菌状態を維持すべき注意義務を怠った過 失を認めることはできず,本件被告病院 の消毒体制が当時の同種医療機関のそれ と同程度であることに鑑みるならば,被 告病院,および担当医に過失を認めるこ とはできない.

上記◯~◯に追加

当該患者のMRSA感染は,ICU内で挿入され ていたカテーテルを介して菌が体内に入り,心 臓内への異物に感染して生じたものである

→◯否定

まず,ICU内の感染については,これを認める に足りる証拠はなく,問題となるのは手術室内 での感染である.手術室内の処置,および消毒 について判断すると,被告病院での消毒体制は 医療機関に通常求められる程度のものに達して いたし,担当医が手術室内でのMRSA感染の具 体的危険性の予見が可能であったということを 認める証拠はない.

■高等裁判所判決 請求棄却

(6)

 東京地方裁判所 判 決/平 成年

(ワ)第号

H..

(確定)

胃がんの手術を受けた後,入院 中 にMRSA感 染 症 に罹 患し 死 亡したことについて,損害賠償 を請求した事案

院内感染したものと断定することはでき ず,また当時治療方法が確立していなか ったなどとして,担当医師の過失が否定 された事例

MRSAの院内感染防止対策懈怠の過失

MRSA感染症の発症を見落とし,早期の適切 な治療を怠った過失

→◯,◯否定

■下級裁判所判決 請求棄却

 東京地方裁判所 判 決/平 成年

(ワ)第号 H..

(控訴)

膀胱がん,S状結腸がんで,膀 胱,S状結腸の切除手術を受け た患 者が 手 術 後 にMRSAに 感 染して死亡したことについて,

損害賠償を請求した事案

病 院 のMRSAの 院内 感 染防 止対策, 手 術後の予後観察,感染発見後の抗菌薬投 与,IVHカテーテルの挿入時,および挿 入後の感染防止対策等は当時の医療水準 を満たすものであったとし,その債務不 履行責任が否定された事例

院内感染防止義務(院内清潔保持義務)違反

MRSA感染症の早期発見・適切措置義務違反

MRSA感染症罹患後の適切措置義務違反

IVHカテーテルを感染経路とするMRSA感染 予防義務違反

病状管理義務違反

MRSA感染原因,感染経路の説明義務違反

→◯~◯否定

■下級裁判所判決 請求棄却

図

MRSA

院内感染に関する判例のまとめ

23

事例のうち,係争中の

1

件を除いて解析したところ,

13

事例で医療従事者の過失が一部認容されており,うち

10

事例が

MRSA

院内感染に関連するものであった.9 事 例においては請求が棄却されている.

判所判決にて請求棄却という判断がなされているもの の,最高裁判所が原判決を破棄し,原審差し戻しの状態 となっている.この事例

2

を除いた

22

事例を解析した ところ,うち

13

件においては,医療従事者の過失が一 部認容されており,残りの

9

件においては請求が棄却 されている.また

13

件の一部認容と判定された事例の うち,10 件においては

MRSA

感染症関連のものである が,残り

3

件に関しては

MRSA

非関連である(図

).

この表の中で医療従事者にとって特に重要なのは,

請求が一部認容された事例であるので,これに該当する 事例について,以下に若干解説を加えたい.ただし係争 中のものも含まれているので,全てが確定したものでな いことを付記しておく.

事例

1

の重要なポイントとして,MRSA を保菌・感 染したこと,および術前術後の培養検査の未実施に関し ては責任を問うていないものの,「感染徴候が見られた にも関わらず,適時に細菌培養検査をし,適切な量,お よび期間で抗菌薬を投与することを怠った過失」が認容 されている.

事例

2

については,まだ係争中であるものの,)広 域の細菌に対して抗菌力を有する抗菌薬である第

3

代セフェム系抗菌薬を投与すべきでなかったのに,これ を投与したことにより,MRSA 感染症を発症させた過 失,)早期に抗菌薬バイコマイシンを投与すべきであ ったのに,これを投与しなかったことにより,MRSA の消失を遅らせた過失,)多種類の抗菌薬を投与すべ き で な か っ た の に , こ れ を し た こ と な ど に よ り ,

MRSA

感染症や多臓器不全を発症させた過失,が問わ れている.

事例

4

については,MRSA 感染症への対応の過誤が あ っ た と 判 断 さ れ て い る . 具 体 的 に は 「 明 ら か に

MRSA

感染症としての腹膜炎が発症しており,かつ,

担当医師もこの発症を知ったのであるから,同日の時点 で,バンコマイシンを投与するのみならず,脳室内への 感染を防ぐため,MRSA により汚染されたと容易に認 識し得るシャントチューブを全部抜去し,一時的脳室外 髄液ドレナージ等の措置を執るべき注意義務があったと いうべきである.しかるに,担当医師は,1 ヶ月半以上 にわたって,MRSA に汚染されていることが明らかな シャントチューブを,原告の脳室側に装着し続けた.そ して,同日存在が判明した原告の大 脳右半球の脳膿瘍 は,チューブの先に当たる位置にあり,その発生は,担 当医師が

6

3

日にシャントチューブを全部抜去しな かったことにより,同日以降,MRSA がチューブを伝 って脳内に侵入,感染したためであると認められる」と の判断がなされている.

事例

5

については,「MRSA を原因菌とする敗血症に 対して,適切な時期に,適切な抗菌薬を投与すべき義務 を怠った過失」が認容されている.

事例

6

については,MRSA 感染症に関する注意義務 違反は棄却されているものの,脳腫瘍の治療過誤に関し て認容されている(MRSA 非関連).

事例

9

については,本来ディス ポーザブルであるべ

きバクスター・インヒューザーを繰り返し使用したこと

による

MRSA

感染の可能性を指摘されている.これは

医療器具の使用方法の誤りが認容の 根拠になっている

(本例は医療器具の使用方法の過誤が争点になっている

(7)

ので図においては,MRSA 非関連に分類した).

事例

10

については,手術手技の判断を誤った過失が 認容されている.具体的には,「原告患者は,本件手術 により

MRSA

に感染し,右大腿部の骨髄炎に罹患した とし,原告は,本件手術時において,これを施行するに 相当な状態にはなかったというべきであるにも関わら ず,医師は,この時期に,MRSA 等の細菌に感染する 危険性がより高い固定法,手術手技により,本件手術を 施行し,その結果,原告は,MRSA に感染したとし,

原告が

MRSA

等の細菌に感染し,骨髄炎に罹患するこ とを未然に防止すべき注意義務に反する過失が認められ る」との判断がなされている.

事例

16

については,「原告が

MRSA

に感染したこと につき,被告病院の医師らにそれを予見し,かつ,適切 な治療をなすべきであるのに,これらを怠ったという過 失」が認容されている.すなわち「患者が

MRSA

に感 染したことについて過失は無いが,抗

MRSA

薬剤の投 与が遅れたことと,薬剤感受性検査に従って抗菌薬を選 択することを怠ったことに過失あり(MRSA 感染後の治 療責任)」との判断がなされている.

事例

17

は,地方裁判所での判決結果はマスコミ報道 もなされ,センセーショナルに取り上げられた事例であ る.しかしながら,控訴審では,MRSA 感染症による 死亡そのものが疑問視され,結果的に医療従事者には責 任がないとの判断がなされている.

事例

18

については,MRSA 感染症とは関連のない,

病院内での暴行を未然に防止すべき注意義務を怠った過 失が認容されている(MRSA 非関連).

事例

20

については,「縫合不全,および腹腔内膿瘍 に対する対策が不適切であった」との判断がなされてい る.

考 察

MRSA

に関する裁判の結論について概観すると患者 側勝訴(一部認容を含む)

13

件,医療側勝訴

9

件となっ ていた.ただし一部認容

13

件のうち,MRSA 院内感染 症に関連するものは,10 件であるので,患者側勝訴と 医療側勝訴の割合は均衡していることが理解できた.

これまでに同様の手法で解析された論文として,弁護 士によるものが報告されている

1)

.この報告は

MRSA

に限定したものではないものの,病院の院内感染対策の 重要性が指摘されている点で貴重な論 文であると考え る

1)

今回,判例集を詳細に解析することにより,いくつか の事実が明らかになってきた.まず一番大きなポイント は,MRSA 院内感染事例においては,MRSA 院内感染 そのものが医療従事者の責任であると判断されるケース は ほと んど ない こと であ る. 裁判で 争 われ るよう な

MRSA

院内感染症の事例においては,感染経路が不明 である場合が多い.感染経路を明らかにしえない際に は,患者の死亡や後遺症の原因が,院内感染によるもの かどうかが不明確であることが多く,したがって医療側 のミスや不十分な院内感染防止策と患者側の損傷との因 果関係がはっきりしないことから医療側の責任を問いに くいことを示していると考えられる.

また医療側訴訟の判例の事例では,事例

15

の判例の ように院内感染予防策が充実していることが,医療側の 責任を否定する大きな要素であることがわかる.15 の 事例では,「当該被告病院の

MRSA

感染症防止対策は 水準以上であり,患者に対する感染症予防の措置も有効 適切なものである」と判断されている.その根拠とし て,「院内感染対策委員会の設置,小児病棟感染検討委 員会の設置,廃棄物適正委員会の 設置と計画的廃棄処 理,ベッドセンターの設置,リネンセンターに衛生基準 を設けていること,高度の清潔度 が維持されているこ と,専門業者による清掃が適切に行われていること,環 境測定基準の設定がなされていること,一行為一手洗い の原則が守られていること,サーベイランスがなされて いること」が言及されている.

今回の検討で特に重要な点は,医療従事者の過失があ ると 判決 が下 され た例 にお いて は, その ほと んど が

MRSA

感染症の早期診断,または早期治療を適切に行 わなかったことに関連するものである.

最後に,過去

12

年間の裁判例の分析を通じて,医療 現場において院内感染による係争をなくすために必要な こととして,以下のようにまとめてみたい.事例の解析 を通して明らかになったことは,MRSA の院内伝播そ のものが責任を問われることはないとしても,MRSA 感染症の診断,および医師の過失として認容されている ことを考慮すると,MRSA の院内感染防止対策が重要 であることはいうまでもない.院内感染を防止するに は,病院全体で組織的な院内感染防止対策が必要であ る.院内感染防止のための委員会,院内感染防止マニュ アル策定,実行,定期的なサーベイランス,入院前の検 査,感染者の隔離,手洗,消毒, 滅菌の励行,ディス ポーザブル製品の活用,廃棄物の適正処理,院内清掃と 空気の清浄化など,これまで提唱されている組織的予防 策の実行が重要である

1)

.さらに大切なことは医療に携 わるすべての医療関係者が院内感染防止の重要性を認識 し,感染防止担当者任せにせず自らの責任で院内感染を 防止するという強い意識をもつことも重要である

1)

これらの院内感染対策以上に重要なことは,患者の治

療を実際に担当している主治医が,感染症が疑われる場

合には速やかな起炎菌の同定を積極的に行い,その感染

症に対する予防措置をとることである.また感染症を診

断した際には適正な抗菌薬の選択,および投与等によっ

(8)

謝 辞判例の収集,および表

1

の作成に多大なご協力をいた だいた,琉球大学医学部附属病院感染対策室,仲宗根庸子さん に感謝いたします.

最近の 裁判例の分析から―四国医誌

2004; 60(56):

14854.

〔連絡先〒903

0215

沖縄県中頭郡字上原

207

琉球大学医学部感染病態制御学講座(第一内科) 藤田 次郎

E-mail: fujita@med.u-ryukyu.ac.jp〕

Evaluation of Precedents for Nosocomial MRSA Infection

Jiro FUJITA1,2), Futoshi HIGA1,2), Masao TATEYAMA1,2), Miyuki NAKAMATSU2,3)and Tomoko OWAN2,4)

1)Department of Medicine and Therapeutics, Control and Prevention of Infectious Diseases

(1stDepartment of Internal Medicine), Faculty of Medicine, University of the Ryukyus,

2)Infection Control Room,3)Nursing Department, University of the Ryukyus Hospital,

4)Department of Adult Nursing I, Faculty of Medicine, University of the Ryukyus

Abstract

In recent years, the number of legal trials involving the legal responsibility of a hospital for the occurrence of nosocomial infection has been increasing, and hospitals have been required to pay large amounts of compensation. Precedents concerning the nosocomial infection of methicillin- resistantStaphylococcus aureus(MRSA)were analyzed during the past 12 years with a computer precedent search system, to identify only trials in which the nosocomial infection of the MRSA became a direct issue of the responsibility. Among the 23 precedents, 22 trials could be evaluated.

Fault of a medical worker was involved in 13 cases, and the remaining nine cases were dismissed.

MRSA infectious disease were closely related in ten of the 13 cases. MRSA nosocomial infection was considered to be the responsibility of the medical worker in a few cases, most related to the responsibility of early diagnosis and early adequate treatment of MRSA infections.

Key wordsMRSA, nosocomial infection, legal precedent

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また、当会の理事である近畿大学の山口健太郎先生より「新型コロナウイルスに対する感染防止 対策に関する実態調査」 を全国のホームホスピスへ 6 月に実施、 正会員

2 次元 FEM 解析モデルを添図 2-1 に示す。なお,2 次元 FEM 解析モデルには,地震 観測時点の建屋の質量状態を反映させる。.

西山層支持の施設 1.耐震重要施設 2.重大事故等対処施設 1-1.原子炉建屋(主排気筒含む) 2-1.廃棄物処理建屋.

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