電気新聞フォーラム
「変革する電気事業~ポストFIT・DXの時代の新たな姿を探る」
DeNAのデータ活用事例と エネルギー事業の展望
令和2年5月25日
株式会社ディー・エヌ・エー
エネルギー事業推進部 石坂 弘紀
1. DeNAの事業概要
2. 電力・インフラ分野におけるAI・DS活用事例 3. 今後の取り組み・展望
1
DeNAは主力のゲーム事業の外、スポーツ(横浜DeNAベイスターズなど)、ヘルスケア分野などに進出。
オートモーティブ事業では子会社・関連会社にてタクシー配車アプリのMOVや個人間カーシェアアプリのAnyca を展開しているほか、自動運転のプロジェクトを行っている。
2019年4月にエネルギー事業推進室を設立し、デジタル技術を活用した新たな電力ビジネスの展開を目指してい る。事業ポートフォリオ
+他社IP利用のタイトル多数
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DeNAには、世界最大のデータサイエンティストや機械学習エンジニアプラットフォーム、Kaggle(カグル)で優 秀な成績を収めたエンジニアが複数在籍しており、その他多くのITエンジニアが在籍している。
DeNAの強みはAI・データサイエンスを活用したITサービス開発力であり、Kaggle称号保持者向けの人事制度も 構築している。DeNAの強み(AI・データサイエンス)
3
メダルがたまると、称号が与えられる。
称号には複数のランクが存在する。
Kaggleの仕組み
•
Kaggleは、Googleが運営する機械学習モデルを構築するコン ペティションのプラットフォームである。スポンサーが、問題とCSVデータを提供
参加者はデータを分析して予測結果を提出
※コンペ期間中、何度も予測結果を提出できる
コンピュータによる自動採点 順位により賞金とメダルを授与 コン
ペ期 間中
…Grand Master1
…Master
…Expert
…Contributor
…Novice 1 … 2019年10月現在、世界163名、日本10名程度がGrand Masterの称号を有する。
コン ペ終 了後
称号保有者
24名
Grand Master 2名
Master 15名 Expert
4名
Novice 3名
弊社在籍のKaggle称号保有者
(2020年4月7日現在)
多種多様な事業分野においてAI・データサイエンスを活用しており、パートナー企業と連携してサービスを開 発している。AI・データサイエンスを活用したサービス事例
新領域
新領域 ゲーム
スポーツ オートモーティブ
オートモーティブ
1. DeNAの事業概要
2. 電力・インフラ分野におけるAI・DS活用事例 3. 今後の取り組み・展望
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弊社は関西電力さまと共同で、関西電力舞鶴発電所においてAIによる燃料運用の最適化を行っている。
これにより、従来よりも複雑で細かなスケジュールを作成でき、様々な運用条件でのスケジュールを短時間で比 較検討できる。
複数の設備、燃料の種類による取り扱いなど、多様な条件に対してコスト低減や運用のしやすさなど、複数の目 的に対して最適解を出す必要があり、極めて複雑な運用を半自動化できた。石炭火力発電所における燃料運用最適化
プロジェクト概要
バースに着船
・荷揚げ
サイロ・貯炭場 に保管
ボイラ投入 輸送船による
燃料輸送
発電
燃料運用のプロセスとプロジェクト概要
熟練技術者による 計画作成
これまで プロジェクト後
AIによる 計画自動作成
課 題
・業務継承困難
・属人化
・パフォーマンス評価困難
・改善余地が不透明
・業務の半自動化
・業務の単純化・短縮化
・パフォーマンスの定量化
・最適化プロセスの高度化 効
果
各種制約条件を勘案して 燃料運用計画を作成
※囲碁やチェスにおけるAI対人間の対戦において、AIは人間では考えられないような一手を出して くることがある。AIを活用することで、最適化レベルの向上や省力化といった導入目的を超える成果 を得られる可能性があるともいえる。
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デジタル化プロジェクトの成果を最大限享受するためには、当該対象設備のみならずバリューチェーン全体の業務改善、最適化が必要となるため、経営陣のコミットメントが重要である。
また特定のソリューションありきでなく、フラットに課題を特定し、課題に最適なソリューションを用いる必要がある。
係る観点からも、ユーザーと開発陣の円滑なコミュニケーションが極めて重要である。石炭火力発電所における燃料運用最適化
デジタル化プロジェクトにおいて重要だと考えられるポイント
7
課題の特定と、最適な ソリューションの選定
ユーザーと開発陣の 信頼関係醸成
経営層の コミットメント
•
設備運用の考え方が一部変化することから、経営層の理解やコミュニケーションが大変重要である。•
可視化・最適化を行いデータを収集することで周辺プロセス・業務の改善や最適化へ繋げることができ、バリューチェーン全体で効率化を推し進めるドライバとなる可能性がある。
•
係る観点から、部署横断でプロジェクトにコミットメントができるよう、経営層のコミットメントが必 要になる。•
デジタル化プロジェクトにおいて頻繁に見受けられる失敗事例として、「ソリューションありき」の考 え方が挙げられる。•
本来課題を特定し、課題にあったソリューションを柔軟に比較検討すべきであるが、「『経営層から『AIを活用せよ』といった指示が出された。何かAIを活用できる取り組みはないか」といった手段 と目的が逆転しているケースが多く、このようなプロジェクトは大抵失敗する。
•
プロジェクトチームによる課題特定、課題にあったソリューション検討を行う必要がある。•
業務プロセスの改善・デジタル化プロジェクトは、ユーザーの現行業務やエッセンスをしっかり把握し た上で開発を行う必要があり、ユーザーと開発陣の信頼関係醸成が重要になる。• 現場の情報を吸い上げた上で、エンジニア・データサイエンティストに橋渡しができるプロジェクトマ ネージャーの存在が重要。
•
電子メールの場合は格式張ってしまい、やり取りできる情報量に限界があること、スピード感が喪われ るといったデメリットがあり、可能であればチャットツールの活用が好ましい。石炭火力発電所における燃料運用最適化
実際の画面イメージ
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弊社では多目的ダムにおける利水運用の効率化のための研究を行い、画像解析技術を活用することで降雨量およ び流入水量の予測精度向上・予測の迅速化を実現した。AI画像解析技術を活用した多目的ダムにおける流入水量の予測精度向上 1
9
これまで
2プロジェクト後
課 題
効 果
•
レーダー雨量は広範囲の降雨量が観測可能だが、局地的な 降雨量の測定には不向き。一方で、地上雨量(アメダスな ど)は高頻度で正確な降雨量を計測できるが観測範囲が狭 い。•
このため、レーダー雨量の1時間積算値と、地上雨量の1時 間雨量を合成して解析雨量を算出し、ダム流入水量を予測 している。• 解析雨量は、30分おきに過去1時間の雨量から算出され るため、ダム流入水量に誤差が出ることがある。
1 本事業は日本工営、国立大学法人長岡技術科学大学、独立行政法人国立高等専門学校機構 長岡工業高等専門学校と共に、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機 構(NEDO)の委託を受け、「IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業」において実施したものである。
2 画像の出典:気象庁ホームページ( https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/kaiseki.html )
•
解析雨量を正確な値と見立て、レーダー雨量データを画像 解析技術で補正した。• 雨量の算出速度・頻度の向上(従来30分→プロジェクト後5 分)
• ダム流入水量の予測精度向上
※画像解析技術で補正したレーダー雨量データの正確度は解析
雨量と同程度を維持。
1. DeNAの事業概要
2. 電力・インフラ分野におけるAI・DS活用事例
3. 今後の取り組み・展望
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再生可能エネルギーの市場統合における課題
2030年のエネルギーミックスに向けて、更なる再生可能エネルギー設備の導入拡大が求められる。
今後導入される再エネ電源の多くはFITインバランス特例制度①に頼ることができないため、導入拡大にあたっ て自家消費電源が主体となるか、逆潮流が発生する再エネの場合には、市場統合の手段が問われると認識。11
風力 太陽光
ミックス
(2030年度)
FIT導入量・移行量
(2019年12月時点)
ミックス
(2030年度)
6,400万kW 5,327万kW
(目標の83.2%)
1,000万kW 388万kW
(目標の38.8%)
エネルギーミックスの再エネ導入目標と導入状況
資源エネルギー庁Webサイト「なっとく!再生可能エネルギー」および総合資源エネルギー調査 会基本政策分科会再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会資料よりDeNA作成
FIT導入量・移行量
(2019年12月時点)
・2032年以降、卒FIT事業用太陽光発電設備が 出現する。
・卒FIT太陽光発電設備は当然ながらインバラン ス特例制度が適用されず、市場リスクを負う。
・また、発電事業者は設備の維持・運営費用を 稼ぐ必要があり、一義的には市場参加が必要に なる。
・卒FITを迎えた発電事業者の全員が自ら市場参 加することは難しいと考えられ、アグリゲータ が必要になる。
再エネ電源における課題
・今後導入される太陽光発電設備・風力発電設 備の多くはFIP制度を活用することになると考え られるが、FIP電源は発電開始当初からインバラ ンスリスクを有する。
・FIP電源へ投資した主体が適切なインバランス 等のリスクのヘッジ策が必要になると考えられ、
FIP電源への投資が進むよう、アグリゲータが必 要になる。
FIP電源
FIT電源
(事業用)
再生可能エネルギーの市場統合にあたっては、前述の通りインバランスリスク等のヘッジ策が必要になるため、DRを含めたFlexibilityの重要性が高まると考えられる。
国際エネルギー機関(IEA)では、「電力システムが、予想されるかどうかにかかわらず、変動に応じて電力の 生産または消費を変更できる範囲」をFlexibilityと定義している1。再エネの市場統合にあたって重要となるFlexibility
IEAの定義によるFlexibilityリソース Dispatchable
power plants
(制御可能な電源)
Demand side management and response
(デマンドマネジメント・DR)
Energy storage Facilities
(電力貯蔵装置)
Interconnection with adjacent Markets
(隣接市場との連系線)
Power market
(電力市場)
Flexibility取引を行う電力システムの要素
System operation
(電力システム運用)
Grid hardware
(電力設備)
1 International Energy Agency (IEA) 2011 “Harnessing variable renewables”
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欧州では再生可能エネルギーの導入拡大に伴う系統混雑の発生、電化等による電力需要の増加に伴う系統設備容 量不足の懸念が生じており、これに伴いFlexibilityの新たなユースケースが生まれつつある。参考:Flexibilityのニーズ
Flexibilityの買い手
系統運用者1
再エネ供給余剰時の出力抑制回避
ピーク時の供給力確保
事故発生時の緊急用供給力確保(電源脱落時、系統事故発生時)
周波数調整力の確保
送電・配電事業者 系統混雑や設備容量不足が見込まれる場合の設備投資回避
Flexibilityのニーズ
小売・発電事業者
(BMU2/BRP3) インバランス回避、ポジション改善
❶
❷
❸
❹
❺
❻
13 1 英国では、系統運用者(National Grid ESO)と送電事業者(National Grid Electricity Transmission Plc, Scottish Power Transmission Limited, Scottish Hydro Electric
Transmission Plcが分離しているため、系統運用者と送電事業者は異なる表記とした。
2 Balancing Mechanism Unit、英国におけるインバランス精算の単位
3 Balance Responsible Party、需給調整責任者。独・蘭などにおけるインバランス精算の単位
再エネ大量導入時代には、電力取引市場は再エネ電源の影響によりボラティリティが高まり、従来考えられてき たポジション管理では対応できなくなると考えられる。
再エネ市場統合にあたっては、需要側Flexibility(DR)開発や、再エネ電源の需給管理・市場取引が重要になる と考えられるが、多くのFlexibilityや再エネ電源の運用、複雑化する市場取引にあたってはデジタル技術の活用 が重要であると認識。再エネ大量導入時代の電力取引市場
電力取引市場
(先物/先渡・前日・
当日・バランシング)
大規模 再エネ電源 火力・水力等
大規模電源
小売電気 事業者 長期PPA・
OTC取引
系統運用者 (送配電事業者) 燃料市場
(ガス・石炭)
燃料調達
市場取引
市場取引
需要側 Flexibility
中小規模 再エネ電源
アグリ ゲーター
DR創出 市場
取引
市場取引 市場取引
電力取引市場
(先物/先渡・
前日・当日)
火力・水力等 大規模電源
小売電気 事業者 長期PPA・
相対卸取引
燃料市場
(ガス・石炭)
燃料調達
市場取引
市場取引
再エネ電源
(FIT小売買取)
これまでの市場の考え方
※ここではFIT一般送配電事業者買取分は反映していない
再エネ市場統合を実現した電力市場
需給管理 委託・売電 売電 調整力公募
※オンサイトの太陽光PPAについては電力取引市場との統合が不要であると考 えられるため、省略した。
系統運用者 (送配電事業者)
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これまで「小売事業者は、基本的には前日市場やその他相対取引等で電力を調達し、当日市場は前日予測からの 誤差が発生した際に活用する」前提で市場制度が設計されており、前日市場の価格はエリアの需給バランスを反 映するものとされてきた。
一方で、需要予測やVREの出力予測は、実需給に近付けば近づくほど予測精度が高まる。
BMUやBRPは、需要や再エネの予測誤差を当日市場で解消する行動を取るようになっている。また、アグリゲー タもFlexibilityを運用する電力の調達・DRを当日市場で取引するようになっており、当日市場の取引量が増大し ている。参考:当日市場活性化の必要性
15 出典:Nord Pool Webサイト
0 2,000,000 4,000,000 6,000,000 8,000,000 10,000,000 12,000,000
2017年 2018年 2019年 2020年 売り入札量 買い入札量
先物市場
先渡市場
OTC取引
長期PPA
前日市場
(Day Ahead Market) 当日市場 (Intraday Market)
バランシング 市場
周波数 調整市場 前日
8:00
前日 12:00
前日 13:00
前日 14:00
実需給1時間前
~15分前 実需給
1 2
3 4
入札開始
入札締切
開札
入札開始 開札(随時)
Flexibilityの運用(EVや蓄 電池の充電等)を前提とし ない電力調達計画を作成 し、売買入札を行う。
①Flexibility運用者
メリットオーダーに基づ き開札した結果を元に、
各電源に対して系統制約 を加味して翌日の運転指 令を出す。
前日市場の落札価格から エリア需給バランスで供 給余剰の時間帯を特定。
Flexibilityの運用計画を 立案し、当日市場で電力 調達。
前日に各電源へ指令した 運転計画では対処できな い量の電力が当日市場で 調達されるため、各電源 の運転計画再調整(Re- Dispatch)を実施する。
②系統運用者 ③Flexibility運用者 ④系統運用者
Nord Poolにおける当日市場の取引量
単位:MWh
(4月までの数値)
当日市場におけるFlexibility取引のイメージ
2032年には卒FIT事業用太陽光が出現する見込み。本格的な再エネの市場統合まで10年間の期間がある。
電力自由化のスケジュールにおいても、日本卸電力取引所が創設されてから電力全面自由化まで11年間の期間が あり、卸取引の活性化に向けた様々な試行錯誤を経て全面自由化に至った経緯がある。今後発生する事象と時間軸
2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029 2030 2031 2032
★
卒FIT太陽光 (住宅用)出現★
発送電分離★容量市場入札開始
★BL電源市場受渡開始
★非化石価値取引市場非FIT非化石電源取引開始
★
三次調整力②開始★
卒FIT太陽光(事業用)出現
★容量市場受渡開始
10年間
制度変更のスケジュール
参考:電力自由化のスケジュール
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
★IPP自由化
★特定電気事業者制度創設
★電力部分自由化(特別高圧) ★特定規模需要対象範囲拡大(高圧500kW以上)
★特定規模需要対象範囲拡大(高圧500kW以下)
★
日本卸電力取引所取引開始★部分供給指針策定
★電力システム改革専門委員会報告書公表
★
電力全面自由化 11年間
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弊社エネルギー事業推進部では、電力事業に対してソリューション提供を主体とする事業と、弊社自ら市場や顧 客にサービスを提供していく2つのアプローチを取っており、様々な事業者と連携して事業展開を図りたいと考 えている。
弊社が有する①AI・データサイエンスをはじめとしたデジタル技術、②的確な業界理解に基づいた事業推進力 の融合により、テクノロジーの力で持続可能な社会を実現する。電力事業に対するアプローチ
17
電力業界・市場・需要家 ソリューション提供を
主体とする事業 自らプレイヤーとして
サービスを提供する事業
•
石炭火力発電所における燃 料運用最適化•
その他、AI・データサイ エンスを活用した最適化等 のソリューション提供•
小売電気事業者と連携した Flexibility開発•
FIP制度導入後のFIP再エ ネ買取・販売を行うアグリ ゲータ株式会社ディー・エヌ・エー エネルギー事業推進部
東京都渋谷区渋谷2-21-1渋谷ヒカリエ
【本資料に関するお問合せ先】
株式会社ディー・エヌ・エー エネルギー事業推進部 松尾
電話番号:03-4485-4265
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