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地域在宅高齢者に対する 作業活動による介護予防介入の試み

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リハビリテーション科学

東北文化学園 リハビリテーション学科 紀要 第 8 巻 第 1 号 2012 年 3 月

地域在宅高齢者に対する 作業活動による介護予防介入の試み

西澤 哲1) 髙橋 千賀子1) 勅使河原 麻衣1) 大黒 一司1) 王 治文1) 髙木 大輔1) 田上 義之1) 渡部 未来1) 太田 千尋1) 及川 澄子2)

1)東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科作業療法学専攻,

2)宮城県村田町役場健康福祉課

要旨

【目的】鬱や閉じこもりの予防として,高齢者の社会参加への意識向上は介護予防事業として必要と思 われる.作業活動による高齢者の社会参加の意識向上の可能性を探るために,本学作業療法学専攻(以 下,専攻)は宮城県 X 町在住の在宅高齢者 12 名(年齢 82.0±5.8 歳.以下,対象者)に対して作業活 動を中心とした介護予防事業を行った.本報告の目的は,①在宅高齢者が作業活動を用いた介護予防事 業に積極的に参加するか否か,②作業活動による介入が在宅高齢者に効果を与えるか,の 2 点を明らか にする事である.【方法】週 1 回 2 時間程度の介入を 6 週にわたって行った.6 種類の作業活動(革細工,

芋煮,七宝焼,かご作り,はり絵,飾り皿作り)による介入を順に行った.それぞれの介入に専攻在籍 の 1 年次学生 7 名 ~9 名が補助員として参加した.介入効果の指標として介入前後における対象者の一 般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)標準化得点を,作業活動への積極的参加の指標として介入直後 のアンケート調査をもちいて解析した.【結果】GSES 標準化得点に有意な効果が認められなかった.ア ンケート調査からは,①対象者が興味を示した作業活動にパターンがある,②30%の回答が作業活動に興 味を示し 50%の回答が事業の継続を望んでいる,の 2 点が明らかになった.【考察】アンケート結果より 作業活動を用いた介護予防事業にはおおむね好意的であり,作業活動を中心とした介護予防活動は成立 可能である事が示唆された.またアンケート結果より対象者の興味を示す作業活動にはパターンがある ことが示唆され,介入に用いた作業活動の種類が GSES 標準化得点に変化が認められない点に影響してい る可能性も考えられた.今後の事業においてさまざまな作業活動から選択可能な形態で提供する工夫が 必要であることが考えられる.

【キーワード】 作業療法,介護予防,在宅高齢者

Ⅰ. 序論 1. はじめに

介護予防施策はモデル事業として 2003 年度 から始まり,その後 2006 年に施策として本格 的に開始された.このときから基本チェックリ ストによる評価がはじまり,高齢者のリスクス クリーニング評価に鬱や閉じこもりに対するリ

スク評価が付け加えられた.

後期高齢者の 20%に閉じこもりが出現する といわれており1),東京都中央区での調査2)は,

閉じこもり予備軍と推定される人が中央区内に 8.2%存在するとしている.したがって高齢者に 対しての鬱・閉じこもりに対する,介護予防に おける予防的な事業が積極的に行われる必要が [報告]

(2)

あると考えられる.

厚生労働省の調査によると,2009年において,

多くの自治体で介護予防の1次予防事業が行わ れており,これらの事業の多くは虚弱や転倒と いう高齢者の身体状況に関する「通所型予防事 業」が中心であると報告されている 3).それに 対し,鬱や閉じこもりに対応している介護予防 事業のすべては訪問型であると同調査は述べて いる3), 4)

この調査結果から,各自治体が行っている鬱 や閉じこもりに対する1次事業は,「予防事業」

というよりも,すでに鬱や閉じこもりの傾向を もつ高齢者に「対応」することによってこれら の傾向の悪化を食い止めることを目的とする 2 次事業の性格を持つことが推測される.介護予 防の根本的な思想は,「元気な高齢者が介護状 態になることを予防する」ことである.しかし 上で述べたように,現状における各自治体の

「鬱・閉じこもり」対応は,「予防」という観点 から不十分であると考えられる.

ところで,作業療法学の精神領域において,

精神的な問題を持つ患者に対するさまざまな介 入効果が検証されている.たとえばアルツハイ マー病が原因で鬱になった患者に対する作業活 動による介入研究から,作業活動の一部に効果 が認められたとの報告もある 5).これらの研究 結果のように作業活動が認知症などを原因とす る鬱や閉じこもりに効果があるならば,スクリ ーニングで鬱や閉じこもりのリスクが認定され た高齢者に対しても作業活動が何らかの予防的 な効果をもたらす可能性が考えられる.しかも 全国自治体に多くの作業療法士が在籍している ため,彼らによる作業活動が各自治体での介護 予防事業として成り立つことが期待される.し かしながら,①基本チェックリストで「鬱・閉 じこもり」リスクが認定されたとはいえ在宅の 高齢者が作業活動を受け入れるか,②リスク認 定を受けただけであり実際には鬱や閉じこもり になっていない高齢者に作業活動が効果をもた

らすか,など検証すべき点がおおく残っている と考えられる.

本学作業療法学専攻(以下,専攻)は,2010 年から2012年度の間,宮城県X町(以下X町)

と連携協力をむすび,虚弱や低栄養分野などに て認定を受けた後に2次予防事業を終えた高齢 者の方々に対して,2 次予防事業に対するフォ ローアップ事業を行っている.専攻はこのフォ ローアップ事業を,事業による効果を事業参加 者に直接還元することはもちろんのこと,事業 効果を作業療法学的に検証しX町の地域支援事 業施策に還元することも目標として行っている.

2011 年度のフォローアップ事業参加者は基 本チェックリストによる鬱や閉じこもりの認定 を受けていないため,鬱や閉じこもりに対する 作業活動の介護予防事業としての効果を検証す る事はできない.しかし介護予防事業における 作業活動の可能性を探る第 1 歩と考え,2011 年度のフォローアップ事業(以下,フォローア ップ教室)において,作業活動を中心とした介 入をとりいれた.本報告は 2011 年度における フォローアップ教室参加者(以下,対象者)に 対する作業活動をとりいれた介入によって得ら れた結果を報告する.

2 本報告の目的

本報告は次の2点を明らかにすることを目的 とする.

1. 鬱や閉じこもり以外で 2次認定を受けた経 験のある在宅高齢者が,事業としての作業 活動に積極的に参加するか

2. 鬱や閉じこもり以外で 2次認定を受けた経 験のある在宅高齢者に対して,作業活動に よる介入はどのような効果をもたらすか

Ⅱ. 方法

1 X町の地勢および対象者

X 町は宮城県南部の盆地に位置する面積約 80㎢の町である.人口は約12,000名でうち高

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西澤哲・髙橋千賀子・勅使河原麻衣・大黒一司・王治文・

髙木大輔・田上義之・渡部未来・太田千尋・及川澄子

齢者の割合は約26 %である.農工業がX町の 産業の主体となっている.X町市民の居住地域 は大きく8つの地区に分散している.これらの 地域のなかで今回の介入が実施されたX町中心 地区から最も遠い地区は直線距離で約5㎞の距 離にあった.

対象者は2009年度に 2次予防認定を受けた 高齢者9名(男性3名,女性6名)および2010 年度に2次予防認定を受けた高齢者4名(男性 1名,女性3名)の13名であった(年齢82.0

±5.8歳).図1の対象者年齢ヒストグラムに示 されるとおり,1 人を除く全員が後期高齢者で あった.対象者の認定時の区分は,運動 4 名,

口腔1名,低栄養1名,運動+低栄養1名,運 動+口腔5名,総合+口腔1名であった.なお,

2009年度に認定を受けた対象者の全員が2010 年度に専攻の行ったフォローアップ事業(4 月 から9月まで月1回の軽運動介入)に参加して いるため,彼らは4)に示す教員スタッフとの 面識を持っていた.

2 介入方法 1) 介入場所

介入場所をX町中心地域にある「ふれあいセ ンター」とした.介入は,ふれあいセンター1 階にある,約10m×5mの柱のないフロアにて 行われた.1 人の対象者はふれあいセンターの 近隣に居住していたため徒歩で介入に参加した.

そのほかの対象者の居住地域はX町中心部でな かったため,これらの対象者は専攻が用意した タクシー,または対象者本人が運転する自家用 車を用いてふれあいセンターに集合した.

2) 介入期間

2011年10月1日から11月5日までの連続 する6回の土曜日の午前10時から2時間前後 を介入期間とした.

3) 介入内容と事業目的

フォローアップ教室における介入内容は軽運 動と作業活動であった.介入期間の毎週,軽運動 と作業活動の両者の介入を行った.フォローアッ プ教室を通じて対象者に還元する目的(以下,事 業目的)は,軽運動介入について「運動機能の維 持」と「運動習慣の継続」,作業活動介入につい て「社会参加(フォローアップ教室参加)に対す る積極性の維持と向上」であった.これらの事業 目的をフォローアップ教室初日に対象者に口頭 で伝えた.以下,介入として行った軽運動と作業 活動の詳細について説明する.

3)-1 軽運動介入

東 京 都 老 人 総 合 研 究 所 の 転 倒 予 防 教 室 に て 開 発 さ れ た 虚 弱 高 齢 者 向 け 転 倒 予 防 軽 運 動 6)を行 った. この転倒予 防軽運動は ,主 に 椅 子 座 位 で 行 わ れ る 上 半 身 の ス ト レ ッ チ 7種目と下肢筋力の増強運動11種目を組み 合 わ せ た 運 動 で あ っ た . 軽 運 動 介 入 は 第 2 週から第 5週の 4回行われた.第 1週と第 6 週 は 事 業 評 価 の た め の 事 前 事 後 評 価 調 査 を行ったため,軽運動介入を行わなかった.

対 象 者 の 運 動 習 慣 を 維 持 す る た め わ れ わ れ が 作 成 し た 自 己 記 録 表 を 対 象 者 に 配 布 し , 対 象 者 に , ① 次 週 ま で で き る だ け 毎 日 運 動 を 行 う こ と , ② 次 週 ま で に 行 っ た 運 動 項 目 と 運 動 時 間 を 自 己 記 録 表 に 記 入 す る こ と , の 2点を対象者に指示した.

3)-2 作業活動介入

作業活動介入として「革細工によるコースタ ー作成(以下,革)」「芋煮会(以下,芋煮)」「七

0 1 2 3 4 5 6 7

60 65 70 75 80 85 90 95 100

年齢[歳]

1.対象者の年齢分布.

ひとりを除く全員が後期高齢者である.

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宝焼によるキーホルダまたはブローチの作成

(以下,七宝)」「エコクラフトによるかご作り

(以下,かご)」「はり絵の作成(以下,はり絵)」

「和紙による模様皿作り(以下,皿)」の 6 作 業活動を選択した.これらの作業活動を選択し た理由をについて,①対象者が興味を持つ可能 性がある作業活動であること,②対象者がフォ ローアップ教室時間内で作業を終了できること,

③X町まで材料等の輸送が可能であること,の 3 点を基準とした.6 週間の介入にてこれらの 作業活動を1週ごと順に行った.2回目の以降 の作業活動について,フォローアップ教室終了 時に翌週行う作業活動の簡単な説明を対象者に 行った.表1に,作業内容の詳細,完成作品の フィードバック,作業時間の詳細を示した.

4) 介入スタッフ

専攻に所属する教員8名(以下,教員スタッ フ)が介入の立案,準備,フォローアップ教室 での軽運動と作業活動の指導を行った.教員ス タッフの中の7名は作業療法士であり,残りの 1名は作業療法士ではないが5年以上の高齢者 に対する軽運動指導経験を有していた.また,

専攻に在籍する1年次学生の全員(以下,学生 スタッフ)が介入補助員としてフォローアップ 教室に参加した.学生スタッフは8 ~9名ずつ の6班にわかれ,毎週異なった班がフォローア ップ教室に参加した.学生スタッフは1年次前 期の基礎作業療法学実習Ⅰで作業活動の実際を 体験しており,またフォローアップ教室参加の 3 日前にその週に行われる軽運動や作業活動の 予習をあらかじめ行った.これらの専攻スタッ フのほか,X町健康福祉課より各回2名のスタ ッフが参加した.

3 介入手順

表1に介入手順の詳細を示す.フォローアッ プ教室において20 ~30分の軽運動介入と1時 間から1時間30分の作業活動介入を行ったが,

介入手順は表1に示すとおり各回異なっていた.

いずれの回もフォローアップ教室開始時に対象

者に対して介入手順の説明を行った.

4 事業評価調査と解析 1) 事業評価

事業評価として,握力,5m 通常歩行時間,

5m 最大歩行時間,EuroQol による健康関連 QOL(以下,EuroQOL),一般性セルフ・エフ ィカシー尺度(以下,GSES)を第 1週の作業 活動介入前と第6週の作業活動介入後に行った.

握力,5m通常歩行時間,5m最大歩行時間の計 測は,事前事後ともに運動計測経験を十分に有 する同一の教員スタッフによって行われた.

また作業活動とフォローアップ教室に対す る感想や意見を無記名アンケート(以下,ア ンケート)として第 6 週の作業活動介入後に 収集した.アンケートの内容は,「作業活動に 対する興味の度合い」をたずねる設問群と,

「フォローアップ事業への参加意欲」をたず ねる設問群の 2 つより構成された.「作業活 動に対する興味の度合い」をたずねる設問群 は,フォローアップ教室で行われた作業活動 で「最も楽しかった作業活動(選択肢より 1 つ選択)」,「2番目に楽しかった作業活動(選 択肢より1つ選択)」,「3番目に楽しかった作 業活動(選択肢より 1 つ選択)」の回答,「こ れから行って欲しい作業活動(13選択肢から 3項目まで選択・自由記載も可)」の4項目で あった.また「フォローアップ事業への参加 意欲」をたずねる設問群は「学生スタッフに 対する感想や意見(自由記載)」「フォローア ップ教室の感想や意見(自由記載)」の2項目 であった.

なお,第6週に1人の男性対象者が欠席した ため,調査・解析の対象は男性3名女性9名の 12名であった.

2) 解析

握力,5m通常歩行時間,5m最大歩行時間,

EuroQOL 得点,GSES 標準化得点の変化を従

属変数,フォローアップ教室前後を被験者内要 因とした対応のあるt検定を用いて検定を行い,

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西澤哲・髙橋千賀子・勅使河原麻衣・大黒一司・王治文・

髙木大輔・田上義之・渡部未来・太田千尋・及川澄子

表1.介入にて行われた作業活動の内容,時間,および実施手順 回作業活動作業活動の内容の詳細と作品のフィードバック作業時間作業活動の介入手順 1 革対象者は,あらかじめ円形に整形された革に金属の型(スタンプ) を木槌でたたきつけ模様を施した後,染色して対象者個々のコース ターを作成した.対象者は作成したコースターを持ち帰った.

1時間事前調査(30分)の後に作業活動介入 (1時間)を行った. 2 芋煮対象者は芋煮の材料の下ごしらえ(材料を包丁で切る)を行った. 教員スタッフが煮炊きを行った後,味付けを対象者の代表2名が行 った.芋煮完成後スタッフを交えて会食を行った.

1時間30分 (含会食)

作業活動介入の一部(30分)の後に軽 運動介入(40分)を行い,その後残り の作業活動介入(1時間)を行った. 3 七宝対象者は,直径3 ~4cmの七宝用の台座に絵の具を盛り付けた 後七宝用の石を配置した.教員スタッフが台座の焼きを行った後, 対象者は台座を専用の枠に接着し,対象者個々の七宝焼キーホルダ またはブローチを作成した.対象者は作成したキーホルダまたはブ ローチを持ち帰った.

1時間作業活動介入の一部(40分)の後に軽 運動介入(30分)を行い,その後残り の作業活動介入(20分)を行った. 4 かご対象者は,エコクラフト用紙を編込み模様付けをして,対象者 個々のかご(直径約10cm高さ約15cm)を作成した.対象者は作 成したかごを持ち帰った

1時間20分作業活動介入(1時間20分)の後に, 軽運動介入(20分)を行った. 5 はり絵対象者は,あらかじめ教員スタッフが作成した下絵にそってはり 絵パーツを分担して作成(画用紙を細かくはさみで切り,葉っぱ, りんごの実,樹木,草,人形などを作成)した後,各パーツを全紙 規格の模造紙に貼り付け,対象者全員で1枚のはり絵を完成させた.

1時間30分軽運動介入(20分)の後に,作業活動 介入(1時間30分)を行った. 6 皿対象者は,パルプ製の無地の皿に和紙を貼り付け,対象者個々の 模様皿を作成した.対象者は作成した模様皿を持ち帰った.1時間作業活動介入(1時間)の後に,事後調 査(30分)を行った.

(6)

2 対象者の事前事後テストの平均値と標準偏差

GRP[kg] N-GRP PWT[s] N-PWT MWT[s] N-MWT EuroQOL GSES 22.4

±6.5 0.83

±1.0 5.1

±1.3 -0.21

±0.6 4.0

±1.0 0.19

±0.9 0.742

±0.15 51.5

±5.1 22.4

±6.8 0.82

±1.2 5.2

±1.4 -0.18

±0.7 4.1

±0.9 0.2.1

±0.8 0.785

±0.17 51.4

±10.3 GRP:握力,M-GRP:基準化握力,PWT 5m通常歩行時間,N-PWT:基準化5m通常歩行時間,MWT5m最大歩行 時間,N-MWT:基準化5m最大歩行時間.握力,5m通常歩行時間,5m最大歩行時間の基準化は男女5歳階層別の平均 値と標準偏差を用いて行われた.

フォローアップ教室前後のこれらの項目の変化 を検定した.また軽運動自己記録表から対象者 の運動日数を読み取った.

「作業活動に対する興味の度合い」に関する アンケート結果に関して,操作的に「最も楽し かった作業活動」を3点,「2番目に楽しかった 作業活動」を2点,「3番目に楽しかった作業活 動」を1点,「選択されなかった作業活動」を0 点と重み付けを行い,無回転法による主成分分 析を行った.またフォローアップ教室で行われ た作業活動とこれから行って欲しい作業活動の 関係を,独立性の検定を用いて検定した.

「フォローアップ事業への参加意欲」につい て,アンケート結果から対象者の作業活動やフ ォローアップ教室に対する感想を主観的に読み 取り,作業活動を含んだ事業への参加に対する 意欲を観察した.

統計解析について,有意水準 0.05 とし米国 SAS 社の StatView-J5.0 および米国 StatSoft 社のSTATISTICA for Windows Release 5.0J を用いて行った.

Ⅲ. 結果

1 フォローアップ教室の事前事後評価結果 握力,5m通常歩行時間,5m最大歩行時間,

EuroQOL 得点,GSES 標準化得点の変化につ

いて表2に示した.握力と5m最大歩行時間の 値は,事前事後ともに握力,最大歩行時間の結 果は同年代の高齢者よりも比較的高めであった が,5m 通常歩行時間の結果は同年代の高齢者

よりも低めの値を示した 7.また事前事後とも

にEuroQOL得点の結果は同年代のアメリカ人

と比較しやや高めの値を示した(アメリカ人平 均値が 0.73 に対して,対象者の事業前平均値 0.742,事業後平均値 0.785)8.対応のある t 検定の結果,握力:t(11)=0.00, p=1.00,5m通 常歩行時間:t(11)=0.535, p=0.60,5m 最大歩 行時間:t(11)=0.44, p=0.67,EuroQOL得点:

t(11)=1.23, p=0.25,GSES 標 準 化 得 点 : t(11)=0.036, p=0.97となり,すべての事前事後 計測項目において有意な変化が認められなかっ た.

図2にGSES標準化得点の個人別の変化を示 した.GSES標準化得点の値は被験者の自己効

30 35 40 45 50 55 60 65 70

事業前 事業後

非常に低い 低い 傾向にある 普通 高い 傾向にある 非常に高い

2GSES標準化得点の個人内変化.

スレッシュホールドを示す直線上の値は下の段階を示す.

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西澤哲・髙橋千賀子・勅使河原麻衣・大黒一司・王治文・

髙木大輔・田上義之・渡部未来・太田千尋・及川澄子

力感を「非常に高い」「高い傾向にある」「普通」

「低い傾向にある」「非常に低い」の 5 段階に 分類することができる9.図2より4名の対象 者は事前事後で同じ段階の中で変化したことが 認められた(図 2 の破線矢印).しかし段階が 下がった対象者が4名認められた(図2の実線 黒矢印:「低い傾向にある」から「非常に低い」

が 1 名,「普通」から「低い傾向にある」が 1 名,「高い傾向にある」から「普通」が 2 名).

逆に段階が上がった対象者が 4 名認められた

(図 2 の実線白矢印:「普通」から「高い傾向 にある」が 2 名,「普通」から「非常に高い」

が1名,「高い傾向にある」から「非常に高い」

が1名).

2 軽運動自己記録表の結果

軽運動自己記録表の回答を 10 名の対象者か

ら得た.図3に対象者が運動を行った日を網掛 けにより示した.軽運動介入は第2週(10月8 日)から開始されたため,ひとりの対象者に対 する解析対象日は10月9日から11月4日まで のフォローアップ教室開催日を除いた 24 日で あった. 24 日×10名=240日ののべ日数にた いして,運動が行われたのべ日数は205日,運 動が行われなかったのべ日数は35日であった.

すなわち運動が行われた日数は85.4%にのぼっ た.

3 アンケートの結果

1) 作業活動に対する興味の度合いに関する結 果

設問「最も楽しかった作業活動」,設問「2番 目に楽しかった作業活動」,設問「3番目に楽し かった作業活動」に対して合計 34 回答を得た

(表3).また設問「これから行って欲しい作業 活動(選択)」からは25回答を(表4),設問「こ れから行って欲しい作業活動(自由意見)」から は3名の対象者からの回答を得た(表5).「最 も楽しかった作業活動」に対する回答は「はり 絵」が最も多かった(12名中4名).また対象 者12名中10名までが順位に関係なく「楽しか った作業活動」として「皿」を回答した.設問

「これから行って欲しい作業活動(13項目中3 項目まで選択)」については園芸が最も多かった.

設問「これから行って欲しい作業活動(自由意 見)」の「花つくり」を園芸として加えると,園 芸の回答は無回答を含めた全体の 1/6をしめた.

表3に示した「楽しかった活動」の回答パタ ーンに対する主成分分析の結果,2 つの主成分 が抽出された.第1主成分の主成分負荷量は「芋 煮」に対して有意な負の値を,「皿」に対して有 意な正の値を示した(表6).第2主成分の主成 分付加量は「七宝」に対して有意な負の値を,

「はり絵」に対して有意な正の値を示した(表 6).横軸に第1主成分得点,縦軸に第2主成分 得点として,各対象者の主成分得点のプロット を図4 に示した.図4より対象者の「楽しかっ

対象者

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

10/ 8 フォローアップ教室開催日

10/ 9 10/10 10/11 10/12 10/13 10/14

10/15 フォローアップ教室開催日

10/16 10/17 10/18 10/19 10/20 10/21

10/22 フォローアップ教室開催日

10/23 10/24 10/25 10/26 10/27 10/28

10/29 フォローアップ教室開催日

10/30 10/31 11/ 1 11/ 2 11/ 3 11/ 4

3.軽運動自己記録表の結果.

網掛け部分が自宅にて運動を行った日を示す.

(8)

た活動」の回答パターンは,「第 1 主成分得点

た活動」の回答パターンは,「第 1 主成分得点 は0からやや正に分布し,第2主成分得点は高 い(以下,興味 1グループ)」,「第 1主成分得 点は負に偏り,第2主成分得点は0に近い(以 下,興味第 2グループ)」,「第 1主成分得点が 正に,第2主成分得点が負に偏る(以下,興味 第 3グループ)」の 3グループに大きく分類さ れた.

表3に示した対象者の「楽しかった活動」と

「これから先やってみたい活動」の回答パター ンの中で,「芋煮」と「園芸」の選択パターンに 傾向が認められた(表7).すなわち,設問「こ れから行って欲しい作業活動」で「園芸」を選 択した5名の対象者のうち4名は設問「楽しか った活動」で「芋煮」を選択し,「園芸」を選択 しなかった対象者で「芋煮」を選択した対象者 3.各対象者の「楽しかった活動」と「これから行って欲しい活動」の回答パターン

楽しかった活動

1 2 3

これから先やってみたい活動

13項目から3項目選択+自由回答)

対象者 1 芋煮 ―― ―― ―― ―― ――

対象者 2 七宝 はり絵 籐細工 陶芸 組みひも

対象者 3 はり絵 芋煮 園芸 組みひも 折り紙

対象者 4 七宝 芋煮 園芸 花作り ――

対象者 5 はり絵 かご 籐細工 ―― ――

対象者 6 七宝 かご 園芸 ―― ――

対象者 7 かご 七宝 芋煮 園芸 織物 ハイキング

対象者 8 はり絵 かご 組みひも 機織 絵手紙

対象者 9 かご 芋煮 園芸 籐細工 組みひも

対象者 10 芋煮 かご 籐細工 陶芸 ――

対象者 11 はり絵 かご 陶芸 折り紙 絵手紙

対象者 12 革細工 七宝 モザイク 絵手紙 ――

――は無回答を示す.

4.対象者のこれからやってみたい作業活動.

作業活動 回答数

園芸 5

組みひも(飾り作り) 4 籐細工によるかご作り 4

陶芸(茶碗作り) 3

絵手紙づくり 3

はた織(飾り作り) 2

折り紙 2

ハイキング 1

タイルを使ったモザイク作成 1

無回答 11

13項目中から最大3項目まで選択して回答.

5.対象者のこれからやってみたい作業活動に対す る自由意見

日常生活に役立つ作業を教えてもらいたい.

いろんな方と会話ミニつどい等がしたいです 時間があれば相手の事をしりたいですね

花つくり

無回答:9

原文のママ

6「楽しかった活動」の回答パターンに対する主 成分分析の結果

作業活動 1主成分 2主成分

0.377 -0.399

芋煮 -0.832* -0.149

七宝 0.355 -0.719*

かご -0.655 0.211

はり絵 0.403 0.900*

0.896* 0.064

寄与率 0.392 0.260

作業活動の数値は各主成分の主成分付加量を示す

*:p < 0.05

(9)

西澤哲・髙橋千賀子・勅使河原麻衣・大黒一司・王治文・

髙木大輔・田上義之・渡部未来・太田千尋・及川澄子

は1名であった.逆に「芋煮」を選択せず「園 芸」を選択した対象者は1名であったのに対し,

「芋煮」「園芸」の両者を選択しなかった対象者 は5名であった(表7).すなわち,「芋煮」と

「園芸」の間に相関傾向が認められた.しかし

Yates の方法で補正した独立性の検定の結果,

χ2(1)=2.396, p=0.12となり,「芋煮」と「園芸」

の間に有意な相関関係が認められなかった.

2) フォローアップ事業への参加意欲に関する 結果

設問「学生スタッフに対する感想や意見(自 由記載)」からは 5 回答を,設問「フォローア ップ教室の感想や意見(自由記載)」からは 8 回答を得た.両設問ともに回答した対象者は 4 名,どちらかの設問だけに回答した対象者は 5 名であり,参加意欲に関する設問群に回答した 対象者は12名中9名であった.表8に両設問

の回答を示した.われわれは両設問の回答のほ とんどが学生スタッフやフォローアップ教室に 対する好意的な回答と判断した.両設問から直 接作業活動について述べられたと判断された回 答は,「我々年寄りにうってつけの作業活動で した」「色々なイベント大変結構でした」「私も 老令で手仕事など出来ないと思っておりました が,皆様のお陰で楽しく過させて頂きました」

「七宝焼きでめづらしい物になって又作くって みたいと思います」の4回答(いずれも原文の ママ; 13回答の30.8%,対象者12名の33.3%) であった(表 8 の波下線ボールド).これらの 回答をいずれも作業活動に好意的な表現と判断 した.また両設問から今後のフォローアップ事 業を望むと判断された回答は,「又出逢があれ ば幸いに思います」,「又おあいしたいです」

「今後とも続けてやってもらいたい」「年に 2 回位あると良いですね」「今後も時々続けてい ただき楽しくやって行き度いと思います」「も っとつづけてほしいです」の6回答(いずれも 原文のママ; 13回答の46.2%,対象者12名の 50%)であった(表8の下線イタリック).これ らの回答はすべて別々の対象者から得られた回 答であった.

Ⅳ. 考察

1 運動能力項目およびEuroQOLについて 握力,5m通常歩行,5m最大歩行,EuroQOL の事前事後評価において,いずれも有意な差が 認められなかった.この結果は週1回×5回の 軽運動の介入という今回のフォローアップ教室 に有意な効果は認められないことを意味する.

介入効果が認められないという結果に対する理

-2 -1.5 -1 -.5 0 .5 1 1.5 2

-2 -1.5 -1 -.5 0 .5 1 1.5 2 第1主成分得点

興味1グループ

興味2グループ

興味3グループ

芋煮 - 皿  +

↑七宝  -  はり絵 +

2

4.対象者の主成分得点分布.

12主成分得点により対象者の作業活動に対して示 された興味のパターンを3グループに分けられる事が できた

7「楽しかった活動」の「芋煮」と「これから先やってみたい作業活動」の「園芸」との関係

これから先やってみたい作業活動

園芸を選択した人数 園芸を非選択した人数

芋煮を選択した人数 4 1

楽しかった

作業活動 芋煮を非選択した人数 1 5

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表8.学生スタッフに対する感想や意見(自由記載)とフォローアップ教室の感想や意見(自由記載)の回答. 学生スタッフに対する感想や意見(自由記載)フォローアップ教室の感想や意見(自由記載) 学生の声が低いので聞きとれない作業療法学を始めて判りました年寄りボケ防止に良かった 我々年寄りにうってつけの作業活動でした今後とも続けてやっ てもらいたい. 東北地方から(X)町に来て我々の筋力トレーニングに賛同なさ れてとてもうれしかったです又出逢があれば幸いに思います.

(**)先生のご指導の元に運動が出来て足の動きも90%と歩ける ようになりました.今後宜しくお願い致します 自宅にて想い出 して実行致します ありがとうございました ありがとうございます 又おあいしたいです.たのしかった.たのしかった. 他人事ではないようにやさしく接していただいてありがとうご ざいました.私は息子がいないのでとても嬉しいでした.

今度の教室は2度目でしたけど楽しいでした.年に2回位あると 良いですね.本当にありがとうございました.皆様もお元気でお くらし下さい. 色々なイベント大変結構でした.今後も時々続けていただき楽し くやって行き度いと思います.宜しく御願いします. 私も老令で手仕事など出来ないと思っておりましたが,皆様のお 陰で楽しく過させて頂きました御礼を申し上げます. 素ば(ら)しい教(おしえ)でもっとつづけてほしいです. 大へん良かったです 七宝焼きでめづらしい物になって又作くってみたいと思います 各行はひとりの対象者の回答を示す.回答のカッコ内は著者による修正.また下線イタリックと波下線ボールドは著者による加筆.残りは 原文のママ.

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西澤哲・髙橋千賀子・勅使河原麻衣・大黒一司・王治文・

髙木大輔・田上義之・渡部未来・太田千尋・及川澄子

由は,①運動負荷の大きさと運動スパンの可能 性,②天井効果の可能性,の2点が考えられる.

第1の可能性として,これまでの介護予防事 業における運動介入に関して効果があった例は,

運動負荷が強い例,運動負荷が弱くとも長いス パンで行われている例,が認められる.今回の フォローアップ教室で用いられた軽運動も,東 京都老人総合研究所転倒予防教室において6ヶ 月のスパンで行われている 6).今回のフォロー アップ教室で行われた軽運動の強度やスパンは 運動能力の維持をもたらすだけの効果しか持っ ていないかもしれない.第2の可能性として対 象者の握力,最大歩行時間やEuroQOLの値が 同年齢の高齢者として高い傾向があることが考 えられる.すなわち対象者の多くは年齢に対し て十分な運動能力や自己健康感をもち,今回の 軽運動介入程度の強度で対象者の運動能力を改 善することは困難であった可能性が考えられる.

しかし今回の介入における自己記録表の結果 から,運動強度は別として,対象者のほとんど がほぼ毎日運動を行ったことが明らかになった.

このことは自己記録表というセルフフィードバ ックが高齢者の運動習慣確立に影響している事 が示唆される.今後,自己記録表などのセルフ フィードバックアイテムや運動の重要性を示唆 するテキストが高齢者の運動能力向上・維持に 重要であると考えられる.

2 GSES標準化得点の変化について

GSES は自分の行動に対する積極性や自信,

すなわち自己効力感を示す指標である.今回の 事前事後評価で GSES 標準化得点を作業介入 による自己効力感の変化を捉える指標として用 いた.検定の結果,GSES標準化得点の平均値 に関してフォローアップ教室前後の有意な平均 値の差が認められず,作業介入による事業効果 が認められなかった.しかし対象者個人別の変 化を追うと自己効力感の段階が下がった対象者 4名,段階が変らなかった対象者4名,段階が 上がった対象者4名が認められた.以上の結果

が得られた理由として,①GSES事後調査を行 った時期が結果に影響を与えた,②介入した作 業活動内容がGSES標準化得点に影響した,の 2つの可能性が考えられる.

第 1 の可能性について,事前調査における GSES調査は第1回目の作業介入前に行われた のに対し,事後調査におけるGSES調査は第6 回目の作業介入直後に行われた.したがって第 6 回における作業活動による作品(皿)の出来 不出来が事後調査の GSES 得点や段階に強く 影響を与えた可能性が考えられる.

第2の可能性について,今回の介入に用いら れた作業活動はあくまでもわれわれ教員スタッ フが選択したものであり,これらの作業活動は 巧緻性の要求度が比較的高い作業活動(革,七 宝,かご,はり絵,皿)が中心であった.した がって手先での細かい作業が得意でない対象者 のGSESの段階が下がり,得意であった対象者 の段階が上がった可能性も考えられる.

3作業活動に対する興味の度合いに関して アンケートの作業活動に対する興味の度合い に対して主成分分析をおこなった結果,第1主 成分負荷量は「芋煮」で有意に負の,「皿」で正 の値を示した.また第2主成分負荷量は「七宝」

で有意に負の,「はり絵」で有意に正の値を示し た.さらに主成分得点から対象者を3つのグル ープに分ける事ができた.以下,これら3グル ープの傾向を考察する.

「七宝」「皿」は手指の巧緻性が要求され,対 象者自身の作業能力が対象者自身の作品に反映 される作業活動であったと考えられる(興味 3 グループ).また「芋煮」は対象者が比較的日常 的に行っている活動と考えられ,対象者全員が 共同でつくる作業であった(興味2グループ).

さらに「はり絵」は,巧緻性は要求されるが対 象者自身の結果は作品の一部であり共同でひと つの作品を作り上げる作業(興味1グループ)

であったと考えられる.

このように考えると,興味3グループは「手

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指の巧緻的な作業を好み,自分自身の結果に満 足する」と考えるグループ,興味2グループは

「手指の巧緻的な能力は関係なく,大勢で行う 作業が楽しい」と考えるグループ,興味1グル ープは「やや手指の巧緻性の求められる作業を 好み,かつ大勢で行う作業が楽しい」と考える グループ と分類できる可能性がある.

この可能性は「楽しかった活動」と「これか ら先やってみたい活動」の回答パターンの中で,

「芋煮」と「園芸」の選択パターンに,有意で はなかったが正の相関傾向が見られたことから も説明できる.対象者が「芋煮」と「園芸」の 両者を「共同で行っていく作業」と認識してい るならば, 「手指の巧緻的な能力は関係なく,

大勢で行う作業が楽しい」と考える第2グルー プは「芋煮」「園芸」の両者を選択するだろうし,

「手指の巧緻的な作業を好み,自分自身の結果 に満足する」と考える第3グループはこれらの 作業活動を選択しないかもしれない.

解析対象者の人数が少なく6項目から選択す るアンケート調査であるため,本報告における 結果が一般性を導く結果であるとは考えにくい.

しかし在宅高齢者の作業活動に対する興味が複 数のパターンに分けられる可能性は十分にあり うると考えられる.

4 フォローアップ事業への参加意欲に関して 自由記載による学生スタッフに対する感想や 意見とフォローアップ教室の感想や意見の回答 を12 人中9名の対象者から得られた.学生ス タッフに対する回答は5件,事業全体に対する 回答は8件であった.いずれの回答からも作業 活動や今回のフォローアップ教室に対する好意 的な意見・感想が得られた.

今回のフォローアップ教室に学生を参加させ たことには,①対象者の事業参加意欲の向上,

②学生の1年次での臨床現場における体験,と いう2つの目的があった.学生スタッフに対す る意見・感想として,学生スタッフの再来を期 待し今後のフォローアップ事業に参加意欲をの

ぞかせた感想が2回答,学生の補助により作業 活動が円滑に行うことが出来たという感想が 1 回答あった.これらの回答は,作業活動が含ま れたフォローアップ事業に対する対象者の参加 意欲に学生の参加が一定の効果を与えた事をう かがわせる.

学生スタッフに対する感想や意見とフォロー アップ教室の感想から,作業活動に対する興味 を示した回答が4回答,今後のフォローアップ 事業の継続を望む意見が6回答えられた.すな わち少なくとも約 33%の対象者が作業活動に 興味を持ち,さらに半数の対象者が事業参加に 意欲をもっていることが示された.このような 意欲は,対象者の作業活動に対する興味と作業 活動を補助した学生参加が有機的に結びついた からかもしれない.いずれにしても,これらの 数値から,作業活動による在宅高齢者に対する 介護予防事業は成立する可能性があると考えら れる.

しかし今回の結果から作業活動と軽運動の関 係が対象者のフォローアップ事業参加意欲にど のように影響しているかについて,明らかにす ることができなかった.運動能力の低下が閉じ こもりにつながる例が知られており 6),軽運動 が対象者のフォローアップ事業参加のモチベー ションのひとつになっているかもしれない.こ の作業活動と軽運動の関係は今後の課題となる.

5 今後のX町において専攻が行う事業について 今回のアンケート調査から,①作業活動に対 する興味は少なくとも 30%の対象者に認めら れること,②対象者が興味を示す作業活動はい くつかのパターンがある可能性があること,③ 少なくとも半数の対象者が今後の事業参加に意 欲を示しこの意欲は学生の参加が関係している 可能性があること,の3点が読み取れた.これ らの結果より1次予防事業としての介護予防事 業として作業活動を取り入れる可能性が十分に あると考えられる.専攻とX町との事業提携は 2012 年度まで続いており,来年度も専攻は X

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西澤哲・髙橋千賀子・勅使河原麻衣・大黒一司・王治文・

髙木大輔・田上義之・渡部未来・太田千尋・及川澄子

町にてフォローアップ教室を行う予定である.

われわれは今後の事業において,対象者の作業 活動への興味や社会参加の意欲をより高めてい きたいと思っている.

今回のフォローアップ教室で反省すべき点は,

提供した作業活動が一律的であったことである.

すなわち対象者は不得意な作業も行わざるを得 なかったかもしれない. 2で考察されたとおり,

GSES標準化得点は提供された作業活動の得手 不得手によって変化するかもしれない.また主 成分分析の結果より在宅高齢者の作業活動に対 する興味はいくつかのパターンがある可能性も ある.「鬱・閉じこもりリスクのある高齢者の社 会参加を増進する」という介護予防事業におい て提供される作業活動のあり方として,このよ うな対象者の特性やニーズを考慮する必要があ ると考えられる.

今回の対象者にとっての作業活動は事業参加,

すなわち社会参加の促進を目的としており,対 象者は,病気や怪我からの回復のために用いら れる作業活動とは異なる動機を持っていたと思 われる.今後専攻が行う X 町の事業において,

対象者の事業参加や作業活動に対する意欲を高 めるために,対象者がさまざまなメニューから 選択可能な形態で作業活動を提供する工夫が必 要であると考えられる.

Ⅴ. まとめ

1. 鬱や閉じこもり以外で2 次認定を受けた経 験のある在宅高齢者が,事業としての作業 活動に積極的に参加するか

2. 鬱や閉じこもり以外で 2 次認定を受けた経 験のある在宅高齢者に対して,作業活動に よる介入はどのような効果をもたらすか の2点を明らかにするために,宮城県X町にお いて作業活動を中心としたフォローアップ事業 を行った.その結果,アンケート調査から回答 を行った対象者の 30%が作業活動に関心を示 し,50%が今後のフォローアップ事業の継続を

望む回答を行った.この結果から作業活動を中 心とした介護予防活動は成立可能である事が示 唆された.しかし自己効力感を示すGSES標準 化得点の事業前後の値に有意な変化が認められ ず,事業効果が認められなかった.アンケート 結果より,対象者の興味を示す作業活動にはパ ターンがあることが示唆され,今後の事業にお いてさまざまな作業活動から選択可能な形で提 供する工夫が必要であることが考えられた.

Ⅵ. 文献

1) 閉じこもり予防・支援マニュアル(改訂版).

「閉じこもり予防・支援マニュアル」分担 研究班.厚生労働省 2009

http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/t p0501-1g.pdf

2) 健康中央21-健康長寿をめざして-.東京 都中央区.2004

http://www.city.chuo.lg.jp/kurasi/kenko/k enkozosinsoudan/kenkoutyuo21/files/016 527.pdf

3) 平成 21 年度 介護予防事業(地域支援事 業)の実施状況に関する調査結果:通所型 介護予防事業.厚生労働省 2009.

http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/10/xls/

tp1029-1e.xls

4) 平成 21 年度 介護予防事業(地域支援事 業)の実施状況に関する調査結果:通所型 介護予防事業.厚生労働省 2009.

http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/10/xls/

tp1029-1i.xls

5) Graff M.J.L., Vernooij-Dassen M. J. M., Thijssen M., Dekker J., Hoefnagels , W.

H. L., OldeRikkert M. G. M. : Effects of community occupational therapy on Quality of Life, mood and health status in dementia patiaents and their caregivers: A randomized controlled trial.

Journal of Gelontology 62A(9): 1002-1009,

(14)

2007

6) 鈴木隆雄,大渕修一監修:介護予防 介護予 防運動指導員要請講座テキスト.第 2版,

東京都老人総合研究所,2006

7) 東京都老人総合研究所未発表データより 8) Xie J., Wu E. Q., Zheng ZJ., Croft J. B.,

Greenlund K. J., Mensah G. A., Labarthe D. R. : Impact of stroke on Health-Related Quality of Life in the noninstitutionalized population in the United States. Stroke 37: 2567-2572, 2006

9) 坂野雄二,東條光彦,福井至,小松智賀:

一般性セルフエフィカシー尺度,こころネ ット株式会社, 2006

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西澤哲・髙橋千賀子・勅使河原麻衣・大黒一司・王治文・

髙木大輔・田上義之・渡部未来・太田千尋・及川澄子

Possibility of the occupational activities as KAIGOYOBOU project for elderly living home

Satoshi Nishizawa1, Chikako Takahashi1, Mai Teshigawara1,Hitoshi Daikoku1,

Chih-Wen Wang1, Daisuke Takagi1, Yoshiyuki Tagami1, Miku Watanabe1,Chihito Ohta1, Sumiko Oikawa2 1) Occupational Therapy CourseDepartment of RehabilitationFaculty of Medical Science and Welfare, Tohoku Bunka Gakuen University. 2) Health and Welfare section, Murata town office

Abstract

[Purpose]: For depression or house-bound prevention, participation in the activity taken

place in local community (community participation) is due to in “Prevention of dependence on Long-term care insurance project” (KAIGOYOBOU project), in which governments aim to prevent elderly from dependency. To investigate effect of occupational therapy activity (occupational activity) on KAIGOYOBOU, we did experimental intervention with six occupational activities (project) for twelve elderly living home (82.0±5.8 years old). In present paper, we focus on “A. Do the subjects participate in the project positively or not.” and “B. Dose the project effect on the subjects’ self- efficacy or not”. [Method]: Six deferent activities were taken place once in a week. Through paired t-test against pre- and post-GESE point of subjects, we assessed the effect of the occupational activity on self-efficacy of the subjects. And, through questionnaires surveyed at the end of the project, we investigated subjects’ interests for the occupational activities and for the project. [Results]: Although we got six affective answers for the project from the questionnaires (50% of the subjects), no significant effect was found in GSES t-test. Through component analysis against the questionnaires, three different patterns were extracted in the subjects’ interests for the occupational activities. [Discussion]: From the questionnaires results, we could manage occupational activity for the KAIGOYOBOU project to prevent depression or house-bound elderly living home, because of affective answers for the project from half of the subjects. However, each subject might have different interest for occupational activities. To apply the occupational activity for them as the KAIGOYOBOU project, the occupational activity providers may decide the occupational therapy activities corresponded to each interest of elderly.

【Key words】 Occupational therapy, Prevention of dependence on Long-term care insurance, Elderly living home

(16)

表 2 . 対象者の事前事後テストの平均値と標準偏差   GRP[kg]  N-GRP  PWT[s]  N-PWT MWT[s] N-MWT EuroQOL  GSES  前 22.4  ± 6.5  0.83 ± 1.0  5.1 ± 1.3  -0.21 ± 0.6  4.0 ± 1.0  0.19 ± 0.9  0.742 ±0.15  51.5 ±5.1  後 22.4  ± 6.8  0.82 ± 1.2  5.2 ± 1.4  -0.18 ± 0.7  4.1 ± 0.9  0.2.1 ± 0

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