衛星画像とデジタル地図を用いた交通情報解析
著者 新村 文郷
発行年 2013‑06
出版者 静岡大学
URL http://doi.org/10.14945/00007934
(課程博士・様式9)
審 査 要 旨
交通情報を広域において一括収集するために、上空から撮影された画像を用いる ことは極めて有効である。特に、交通情報収集用のセンサが地上に存在しない場合 や、センサそのものが大規模災害等で機能しない場合でも情報収集が可能であり、
地上の影響を受けずに正確な交通情報を収集できる手法として期待できるものであ る。これを踏まえ、本論文は、衛星画像とデジタル地図を用い、道路区間ごとの車両 台数密度を算出することで道路上の車両混雑状況を把握することを目的としている。
具体的には、衛星画像とデジタル地図を統合した後、道路領域に対して様々な画 像処理手法を適用することで、各道路区間の車両台数を自動算出するものである。
特に本研究では、三次元デジタル地図や道路地図を用いることにより、建物の倒れ 込みや影の影響、および道路上の様々な標示の影響を低減した上で、車両台数の 正確な自動算出を実現している。ここでの提案手法は、次の順で構成されている。
まず、衛星画像からエッジを検出する。このとき、日向領域と日影領域を、3次元デ ジタル地図情報を用いて区別し、それぞれ異なる方法でエッジを検出する。ここで、
日向領域は、一般的なエッジ検出手法を組み合わせて活用し処理する。日影領域 は、明るさの大幅な低下に対応するため、医療分野において活用されているフィルタ を応用して処理する。次に車両エッジを抽出する。本研究では、車両の前後面に相 当するエッジを、車両エッジと定義している。デジタル地図から得られた道路領域をも とに道路方向を算出し、その方向と垂直なエッジを抽出することで、車両エッジの候 補を求める。そして、車両エッジ候補から様々なノイズを除去し、残ったエッジの中か ら、車両の前後面に相当する対のエッジを抽出し、車両エッジの抽出を実現する。最 後に、道路区間ごとの混雑状況の判定を行う。そのために、抽出した対の車両エッジ をもとに、道路上の車両台数を計測する。そして、道路区間ごとの車両台数の密度を 算出し、その値を道路区間の混雑状況を測る指標として用いることで、混雑状況の判 定を行う。なお、この判定結果は、道路地図上に画像化して出力表示する。
本論文では、都市部において撮影された衛星画像とその地域のデジタル地図に対 して提案手法を実際に適用し、実験と検証を行っている。その結果、提案手法による 車両抽出において、86.1%の抽出率と 18.5%の誤抽出率を実現するなど、都市部 において様々なノイズが存在する道路環境下でありながら、高い性能を維持してお り、さらに、道路区間ごとの誤差の評価も合わせて、手法の有効性が示されている。
本研究は、衛星画像やデジタル地図等の複数情報を統合利用し、様々な画像処 理手法を適用することで、広域交通情報を一括収集するものであり、これまで の地上センサを主体とした交通情報収集とはまったく異なる視点から、独創的 な考え方を提案するものである。また、大規模災害時での交通情報収集をはじ め、実用上極めて有効なものであり、今後の社会への影響も大きなものである。
以上のことから、博士(情報学)の学位授与にふさわしい論文であると認められる。
(1,000字程度)