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解説論文 Trend on Wireless Personal Area Networks Shiro Sakata Summary m 2002 IEEE802 ISO PAN Key words PAN IEEE UNS Ubiquitous Network So

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(1)

 無線による通信距離が最大約10〜20 mのパーソナル エリアネットワークは,ユビキタスネットワーク社会に おいて極めて重要な役割を果たし,人々の様々な生活局 面において,的確できめ細かなサービスを提供すること が期待される.筆者は,本論文において,2002年以降 IEEE802委員会,ISOを中心に急速に標準化が進められ 現在も技術開発が続けられている無線PAN,短距離無線 を含む広義のパーソナルエリアネットワークについて,

その位置付け,応用,技術動向を解説する.

PAN,ユビキタスネットワーク,IEEE802,センサネッ トワーク,アドホックネットワーク

1.ま え が き   

 2005年の総務省によるユビキタスネットワーク社会

(UNS:Ubiquitous Network Society),u-Japan

(ubiquitous-Japan)の提唱を受け,2006年に発表された e-Japan IIでは,2010年ごろを目標に人々の生活を支援 する知的情報基盤を形成するユビキタスネットワークの 実現を掲げている. ユビキタス は,1988年に当時 XeroxのPARC(Palo Alto Research Center)の研究者 であった故Mark Weiser(1952〜1999年)が,21世紀 のコンピュータ環境を‘Ubiquitous Computing’と表現 したことが端緒とされている[1].[1]では,‘Ubiquitous Computing’は,多くのコンピュータ群が互いに協調し

ながら,人々に見えないあるいは意識しないところで,

様々な生活局面でその状況に合わせて的確かつきめ細か なサービス,情報を提供する,としている.このコン ピュータ群の協調を効果的に実現するのが無線通信によ るユビキタスネットワークであり,人間一人が自分の直 接的な行動を示す範囲とされる10〜20 mまでを通信 距離としてカバーするパーソナルエリアネットワーク

(Wireless Personal Area Networkあ る い はPersonal Area Network)は,ユビキタスネットワークの中でも中 核的な役割を果たす[2],[3].

  本 論 文 で は,IEEE802委 員 会(IEEE:Institute of Electrical and Electronics Engineers)やISO(Interna- tional Organization for Standardization)を中心に標準化 が進められている広義のパーソナルエリアネットワーク についてその位置付け,応用例,技術動向,更に今後の 展望と課題について述べる.本論文の位置付け,主目的 は,ユビキタスネットワーク技術の進展の中で,密接に 関連する従来のパーソナルエリアネットワークの仕様概 要も含めて,それらが登場してきた考え方,応用などの 差異を明確にする点にある.

 本特集号で仕様の詳細を解説するIEEE802委員会で は,現在Bluetooth[4], UWB[5], センサネットワーク

[6],ミリ波通信[7]を無線PANの対象としているが

[8],ここでは最大通信距離は無線PANよりも短いが,

類似する機能を提供するISOで扱われる短距離(近距 離,近接,近傍などとも記される)無線も含めて解説する.

2.パーソナルエリアネットワークとその位置付け  無線ネットワークは,使用周波数帯や,通信距離,通 信速度,送信電力,変調方式など様々な分類が可能であ るが,IEEE802委員会をはじめとして通信距離で分類 されることが多い.通信距離による無線ネットワークの

パーソナルエリアネットワークとその動向

Trend on Wireless Personal Area Networks 解説論文

阪田史郎

Shiro Sakata

千葉大学大学院融合科学研究科,千葉市

Graduate School of Advanced Integration Science, Chiba University, Chiba-shi, 263-8522 Japan

Summary

Key words

パーソナルエリアネットワークとその動向

小特集❶

パーソナルエリアネットワークの無線技術と最新トレンド

(2)

解説論文

小特集❶

IEEE802.15.4 IEEE802.11b IEEE802.11g

Bluetooth IEEE802.11n

IEEE802.11a

IEEE802.16-2004 IEEE802.16e

UWB

DSRC

通信速度bit/s

10 k 100 k 1 M 10 M 100 M

10 M 100 M 1 G 10 G 100 G

周波数[Hz NFC

RF-ID

図2 各無線ネットワークにおける周波数と通信速度の関係 分類を図1,表1に示す.また,以下で解説する各無線

ネットワークにおける周波数と通信速度の関係を図2に 示す.

 通信距離による分類では,無線ネットワークは,携帯

電 話 網 に 相 当 す る 広 域 網(無 線WAN:Wide Area Network),携帯電話網と同様基地局を通して端末間で の通信を行うが一つの基地局で半径数kmをカバーする 無線MAN(Metropolitan Area Network),従来有線で

1020 m 100 m

km

基地局を介してグローバルな 通信が可能(携帯電話網)

基地局を介してグローバルな 通信が可能(携帯電話網)

無線

無線無線無線

短距離無線

図1 通信距離から見た無線ネットワーク

表1 通信距離から見た現在の無線ネットワーク

ネットワーク 標準化機関 備 考

短距離無線

・通信方式ごとに個別 (主にISO)

・RFID     ・DSRC

・NFC     ・赤外線    

・特定小電力無線,微弱無線

・11通信が主

無線PAN

・IEEE802.15 ・IEEE802.15.1(Bluetooth)

・IEEE802.15.3a(UWB)

・IEEE802.15.4

・業界団体

Bluetooth SIG, WiMedia Alliance, UWB Forum, ZigBee Alliance 無線LAN ・IEEE802.11 ・IEEE802.11b/a/g

・IEEE802.11n(次世代高速版) ・業界団体 Wi-Fi Alliance

無線MAN

・IEEE802.16 (BWA)

・IEEE802.20 (MBWA, 高速移動体対応)

・IEEE802.16-2004(固定WiMAX)

・IEEE802.16e(モバイルWiMAX)

・MBTDD-W,MBFDD

・iBurst拡張(625k-MCモード)

・業界団体 WiMAX Forum

無線WAN

・3GPP,3GPP2 ・第2世代(PDC,GSM等)

・第3世代(W-CDMA, cdma2000)

・第3.5世代(HSDPA, EVDO)

・現在は第2世代と第3世代が利 用されている

・2013年ごろ以降に第4世代へ

(3)

はEthernet(IEEE802.3)に 代 表 さ れ るLAN(Local Area Network)や構内網と呼ばれてきた無線LAN,通 信距離が最大約10〜20 mの無線PAN,更にそれ以下 の短距離無線に分けられる[9].

 また,現在はまだ研究中で実用化のめどが明確になっ ていないがパーソナルエリアネットワークの範疇に入る 通信技術として,人体とその周辺部が比較的良好な導体 であることに着目し,人体を通信経路とする人体通信技 術(Near-field Intrabody CommunicationまたはProxi- mity Communication)を ベ ー ス と す るBAN(Body Access NetworkまたはBody Area Network. IEEE802.5 Study Group MBAN(MはMedical)において検討開始)

がある[10],[11].BANは,腕時計やヘッドマウントディ スプレイなどのウェアラブル端末同士の通信や,ウェア ラブル端末と将来身の回りの環境に埋め込まれる微小コ ンピュータ群との通信に用いられることが想定され,最 大10 Mbit/s程度の通信速度,医療やヘルスケアなどへ の応用が目標とされている.

 アドホックネットワーク,センサネットワークなどの 無線ネットワークや,今後無線が主流となる一般家庭を 対象とした情報家電ネットワーク(ホームネットワーク)

などは,ユビキタスシステム(本論文では,ユビキタス コンピューティングとユビキタスネットワークの融合形 態をユビキタスシステムと呼ぶ)環境において重要な役 割を果たす.これらのネットワークは,通信距離による 分類されたものではないが,通信距離との対応では,短 距離無線〜無線LANに位置づけられる[9],[12].

 パーソナルエリアネットワークは,ユビキタスシステ ム環境においては,今後様々な形で,故Mark Weiser が記した,「人々に見えないあるいは意識しないところ で,様々な生活局面でその状況に合わせて的確かつきめ

細かなサービス,情報を提供する」ネットワークとして 重要な役割を果たしていく.

3.パーソナルエリアネットワークの動向と仕様概要  無線ネットワークの全体的な動向とその中でのパーソ ナ ル エ リ ア ネ ッ ト ワ ー ク の 位 置 付 け を 述 べ た 後,

IEEE802.15を除く各パーソナルエリアネットワークの 仕様概要を解説する.

3.1  無線ネットワークの動向とパーソナルエリアネット ワーク

 パーソナルエリアネットワークを含む無線ネットワー クの全体的な現在及び将来の動向としては大きく,ブ ロードバンド化,ユビキタス化,ネットワーク間連携が 挙げられる.ユビキタス化の内容としては,センサの収 容,マルチホップ通信,端末の移動への対応,省電力化 などを挙げることができる.図3にこれらの動向を,標 準化におけるIEEE委員会のTG(Task Group)も含め た形でまとめて示す.

 パーソナルエリアネットワークから見ると,ブロード バンド化,ユビキタス化,ネットワーク間連携の三つの動 向については,ユビキタス化との関連が最も強い.ブロー ドバンド化ではUWBの製品開発とミリ波帯を用いた ネットワークの研究開発が活発化し,ネットワーク連携 については技術開発が緒についたばかりという状況であ り,3.23.5では主にユビキタス化の視点から述べる.

(1) ブロードバンド化

 パーソナルエリアネットワークにおけるブロードバン ド化については,UWBとミリ波帯を用いたネットワー クが挙げられる.100 Mbit/sオーダの通信速度をねらい と し3.1〜10.6 GHzの マ イ ク ロ 波 帯 を 用 い たUWB

802.16m

802.11f/r

      

短距離

無線 無線

PAN

無線 LAN

無線 MAN

無線 WAN

センサ  メッシュ移動制御

802.15.3a 802.11n 802.16-2004

UWB 802.15.3c

(ミリ波)

IETF MANET NEMO, MobileIP

802.11u シームレス連携

802.21 MIH ブロードバンド化

ユビキタス化

802.15.4, 802.15.4d 802.15.4aUWB ----

--------802.15.5 802.11s

802.16e 802.16j 802.20

4G 3.5GHSDPA, EV-DO

図3 無線ネットワークの全体動向(802の前のIEEEは省略)

(4)

解説論文

小特集❶

(Ultra-Wideband,IEEE802.15.3aで標準化が進められ てきたが,方式を一本化できず2006年に解散)の実用化,

IEEE802.15.3cにおけるGbit/sオーダの通信速度をね らいとしミリ波帯を用いたネットワークの標準化が進展 しつつある.

(2) ユビキタス化

 センサは,ユビキタスシステムにおける状況認識の要 素機能を提供し,センサの収容はパーソナルエリアネッ トワークを特徴づけるものであり,省電力化の視点から も重要である.接続されたセンサ群を統一的に制御する センサネットワークの動向については,3.4で述べる.

マルチホップ通信,端末の移動への対応については,ア ドホックネットワークのもつ特徴的な機能であり,3.5 でその動向を述べる[13]〜[15].IEEE802委員会では,

無線PAN,無線LAN,無線MANに関し,それぞれ

IEEE802.15.5,IEEE802.11s,IEEE802.16jの各TGに おいて,メッシュネットワークと呼ぶ,マルチホップ通 信の制御方式の標準化を進めている.メッシュネット ワークでは,近未来の実用化の観点から当面端末の移動 までは想定せず,基地局あるいはアクセスポイントの間 を無線のみでマルチホップさせる[13],[14].

(3) ネットワーク間連携

 パーソナルエリアネットワークのもつ局所性,及びパー ソナルエリアネットワーク内では必ずしもIP(Internet Protocol)を使用しないことから,例えばIEEE802.21で 検討されたMIH(Media Independent Handover)と呼ば れるネットワーク間連携では,その対象は無線WAN,無 線MAN,無線LAN,有線のEthernetまでであり,無 線PANは陽には扱われていない.

 パーソナルエリアネットワークとしては,後述するよ うに,現状ではまだ多くのネットワークが単独としても 研究開発途上にあり,ネットワーク間の連携についての 技術は今後の開発に負うところが多い.例えば,今後セ ンサネットワークやアドホックネットワークにおいて は,本格的な実用化の段階では,バックエンドのIP

(Internet Protocol)ネットワークとのシームレス連携機 能が重要となる.

3.2 短距離無線

短距離無線には,古くからトランシーバやリモコン,

無線マイク,業務用のバーコード読取り用,商品タグの 管理用などに使われてきたものから,近年非接触ICカー ド,非接触センサ,あるいは車の走行と連動して利用さ れるものまで,多様な形態が出現している.古くから使 われてきたものとしては,特定小電力無線,微弱無線,

赤外線がある.近年利用され始めたものとしては,

RFID(Radio Frequency Identification,無線移動識別),

JR東日本のSuicaやJR西日本のICOCA更に携帯電話 で も 用 い ら れ て い るNFC(Near Field Communica-

tion),ITS(Intelligent Transport System,高度道路交 通システム)における自動料金徴収用のETC(Electronic Toll Collection system,ノンストップ自動料金支払いシ ス テ ム)で 用 い ら れ て い るDSRC(Dedicated Short Range Communication,専用狭域通信)が代表的である.

 ISOでは,RFID,NFCの各技術はそれぞれ非接触セ ンサ,非接触ICカードに分類され,将来はともにセン サネットワーク(例えばZigBee)のエンドデバイスとし て動作させることも考えられる.

(1) 特定小電力無線と微弱無線

 特定小電力無線は,1992年の旧微弱無線の規格の廃 止に伴って登場し,同時通信(複信)も可能である.表 2に特定小電力無線と旧微弱無線の主要な諸元,応用分 野の比較を示す[16].

(2) 赤外線

 赤外線を用いた無線通信については,無線LANの標 準化を進めるIEEE802.11において1990年代初頭に検 討された後,1993年に業界団体として発足したIrDA

(Infrared Data Association)が標準化を進めてきた.

IrDAは,波長850〜900 nmの赤外線による無線イン タフェースの業界標準化を目指すコンソーシアムとして 設立された.IrDAによって標準化された方式が,当初 のIEEE 802.11のPHY(物理層)規格の一つになった.

 IrDA方 式 に は,1 m以 上 の 通 信 距 離 で,最 大16

Mbit/sの伝送速度を目標とし,部品コストが安いとい

うメリットがある.しかし,光の伝送の特徴である強い 直進性(遮へい物があるとシャドーイングにより通信で きない),送信側と受信側の軸調整が必要,などの課題 がある.このため,赤外線を用いた無線通信は,直進性 の問題が大きな障害とならない,例えば家電のリモコン 制御のような限定された場面での利用にとどまっている

[9],[17].

表2 特定小電力無線と微弱無線の主要な諸元と用途

方 式 特定小電力無線 微弱無線

規格 独自 独自

伝送速度 2.4 kbit/s 2 kbit/s

利用周波数帯域 429 MHz 307.74 MHz 316.74 MHz

伝送距離 30300 m 30 m

消費電力

(通信待機)

59 mW/0.3 mW 66 mW/3.3 mW

これまでの主な 用途

音声アシスト用無線電話,

無線呼出し,リモコン,ワ イヤレスマイク,補聴援助 用ワイヤレスマイク,構内 ページャ,インターホン,テ レメータ医療用テレメータ 移動体識別,移動体検知 センサ,レーダ,画像伝送,

プリンタバッファ等

微弱型コードレス電 話,ワイヤレスマイク 非 常 警 報 送 信 機,

自動ドア送信機,リ モコン等

(5)

(3) RFID

 電子化された一方の情報をもう一方が正確に電子デー タで引き出したり,引き渡したりする手段で,ICタグ や無線タグ,電子タグなどとも呼ばれる.第2次世界大 戦中に米国で敵と味方の戦闘機の識別用に開発された レーダ技術の応用といわれ,その後1970年代に民間に 開放され,1980年代以降国内においても工場内での部 品管理の自動化ツールとして活用されてきた[14].現在 のRFIDは,2001年以降,インタフェースの標準化,

機器の小型軽量化,低価格化に伴い,ユビキタスネット ワークのキーデバイスとして急速に注目を集め,ユビキ タスネットワーク技術の象徴として実用化が進展しつつ ある.以下では,既に利用例が多い,読取り装置から電 波を発信しタグ側がIDを送り出すパッシブRFIDにつ いて述べる.RFIDタグの特徴を表3に示す[16].

 RFIDを用いたシステムは,RFIDタグ,RFIDリー ダライタ,リーダライタを制御するコンピュータ,タ グのIDや読取り情報,センサ情報を管理するデータ

ベースから構成される.図4に,RFIDタグの部分の認 識における動作原理を示す.周波数の分類による各特性 を表4に示す.世界的には,通信距離が長いUHF帯の 実用化(大きい貨物の単位での読取り・書換えが可能)へ の期待が高く,5 m強の通信距離に加え高い読取り精度 を実現するための技術開発が進められている[16].

コンピュータ,

データベース

コントローラ

送受信部

アンテナ

メモリ

送受信部

④リーダは受信し アンテナ 受信した情報を 処理

RFIDタグはその電力を 利用しメモリに記録して いる情報をリーダのアン テナに送信

①リーダ(読取り装置)

から電波を発射

②誘導電圧を発生し,

更に電力を発生

タグ リーダ/ライタ

図4 RFIDの構成と動作

表3 RFIDの特徴 非接触 通信距離は平均で1100 cm

被覆可能 遮へい物(金属を除く)が入っても認識できる 小型・薄型 貼付け可能な商品や製品の幅が広がる ユニークID チップ単体に個別の識別子があるため,モノ

を個別に管理可能

環境・耐久性 汚れ,振動に強く経年変化が少ないため,長 期間にも耐えられる

書換え可能 いったん書き込んだ情報に新たな情報を加え たり,書換えができる

読み書きの自由度 移動していても読み書きが可能 複数同時読取り 複数のタグを一度に認識することが可能

表4 RFIDの周波数別の特性

135 kHz未満 13.56 MHz UHF

(900 MHz付近の帯域) 2.45 GHz

アンテナの大きさ やや大 やや大 やや小 やや小

送電方式 電磁誘導 電磁誘導 電波 電波

通信距離 1 m 1 m 7 m 2 m

指向性 広い(弱い) 広い(弱い) シャープ(やや強い) シャープ(強い)

オンメタル ×

対電磁ノイズ ×

対無線LAN ×

対水分 ×

日本 (2005年)

米国

欧州

 日本では,100 m以上でも読み書き可能な433 MHzをコンテナ輸出入管理用に認可(20069月)

(6)

解説論文

小特集❶

 RFIDには,UID(Unique Item identification)と呼ば れるタグを一意に識別するための読取り専用のIDと,

利用者が書換え可能なユーザ領域(最大8 kByte程度)が ある.このUIDに関する国際標準がEPC(Electronic Product Code)である.EPCの標準化は,EPCグロー

バル(旧Auto-IDセンタ)によって推進されている.

Auto-IDセンタは,1999年に自動認識技術のプロジェ ク ト と し て 米 国 のMIT(Massachusetts Institute of Technology)に設立された.その後Auto-IDセンタは,

2003年に発展的解消を遂げて,ビジネスへの導入と研 究開発の二つの役割に分かれることになった.前者のビ ジネスへの導入とそれに関連する標準化の活動を行う非 営利組織(NPO:Non-Profit Organization)として,バー コードの管理団体があるUCC/EAN(Uniform Code Council/European Article Number)の活動を引き継ぐ 形で2003年にEPCグローバルが設立された.EPCグ ローバルによるRFIDのシステムはEPCネットワーク と呼ばれるが,その構成と動作を図5に示す.

 表5に想定されているRFIDの主な応用を示す.当面 は物流,資産管理が主体であるが,繰返しの読込みと書 込みが可能で,悪条件での耐久性をもつため,商品を追 跡する技術(トレーサビリティ)が注目されている.ト レーサビリティは,商品の生産地から流通機構を通して 消費者に届き実際に消費されるまでのライフサイクルを 管理することを可能にし,盗難発見や食品衛生,医療支 援,環境リサイクルなど,人々の生活にも多くの利便性 を提供する.

  な お,国 内 で はEPCグ ロ ー バ ル の ほ か に,YRP

(Yokosuka Research Park)ユビキタスネットワーキン グ研究所のユビキタスIDセンタにおいて提唱されてい る,商品に限らずあらゆるものを対象としたucodeがあ る.ucodeはRFID以外に,アクティブチップ,IDチッ プ,バーコード,ICカードなども対象としている.表6 にEPCグローバルとユビキタスIDの比較を示す[14].

(4) NFC

 NFCは,ソニーとフィリップスが開発し2002年に発

表5 RFIDの想定応用

物流管理 食物や薬などのトレーサビリティ,SCM,郵便物の追跡,航空貨物の管理,家電リサイクル等 の廃棄物管理

資産管理 商品の盗難防止,図書館等における本の管理,工場の部品在庫管理

人や動物の動きの管理 入退室管理,構内敷地・空港等における車両管理,交通量管理,スポーツにおける時間の管理,

学生証・社員証,電子パスポート,高齢者・障害者・小学生,ペット,家畜の監視

防犯・防災,偽造防止 イモビライザ,ホームセキュリティ,防災・消防,薬や有価証券,ブランド商品等の偽造防止 マーケティング RF-IDポスター等による広告・販促

情報提供 博物館等での展示品解説・案内

支払い・チケット 道路料金の自動徴収,駐車場の自動化,公共交通機関の定期券,イベントの入場券,食堂の清算,

電子財布,スキーリフト券

家庭での利用 RFIDタグに反応する電子レンジ,洗濯機,冷蔵庫等 ウェアラブル端末 RFIDタグやリーダを身体に装着

 物流管理,資産管理用にRFIDが適用される主な商品: 食品,衣料,薬品,家具,文具,玩具,書籍等 図5 EPCネットワークの構成と動作

Savant RFID

EPC

PMLで記述された モノの情報

PMLで記述された モノの情報

PMLサーバの IPアドレス インターネット

EPC EPC

EPC

EPC

EPC リーダ

サーバPML サーバONS

アプリケー ション

PMLPhysical Markup Language

ONSObject Name System

Savant 分散環境で動作する通信ソフトウェア.EPC をもとに ONS サーバ,PML サーバと通信を行う.複数の質問に対し ID のチェック,データのスムージング,タスク管理を行う.

ONS インターネットにおける DNS と同様の手順で EPC を IP ア ドレスに変換する.Savant サーバからの問合せに対して,

PML ファイルの格納されているアドレスを通知する.

PML インターネットにおける XML に準拠した言語フォーマット で,モノの識別情報を記述する.

(7)

表した非接触ICカードの近距離通信技術である.2002 年にECMA International(European Computer Manufac- turers Association,欧州コンピュータ工業会)に提案さ れ,ECMA-340として認められた後,2003年にISO/

IEC IS 18092として国際標準化された.NFCチップが 搭載された機器を双方が特定できる距離に近づけること で,相互に認識し合い情報交換ができる. 

 NFCには,ソニーのFeliCaとフィリップスのMifare の通信方式が含まれており,両者との通信互換性が保証 されている.NFCの通信規格と主な応用を表7に示す.

(5) DSRC

 1990年代半ば以降標準化が進展した双方向無線通信 技術で,国内ではARIB STD-T75として標準化され,

2001年にITSにおけるETCのための通信手段として 利用が開始されている.表8に日本のDSRCの主要な 諸元と応用を示す.

 例えばガソリンスタンドにおける応用では,自動車が ガソリンスタンドに入ると同時に,ガソリンの残量,タ

イヤの空気圧,エンジンオイルの状態などの情報を,ガ ソリンスタンドのDSRC無線機に無線で伝えることが 可能となる.DSRCは通信速度が速いため,給油中にカー 表6 EPCグローバルとユビキタスIDの比較

EPCグローバル ユビキタスID(ucode)

設立時期 米国拠点は1999 日本拠点は20031

20033(国内)

設立母体 米国MIT T-Engineフォーラム

IDの長さ 96ビット(128ビットも検討) フォーマットなしの128ビット(128ビット単位で拡張可 能)

国内で使用する周波数帯 13.56 MHz,UHF帯,2.45 GHz(候補) 13.56 MHz,2.45 GHzほか 無線通信の仕様 ISOに提案・準拠

(UHF帯ではISO18000-6)

ISO14443,同15693等非接触ICカードの既存の無線通 信仕様を利用.ITUSG13(ネットワーク型ID)で検討 当初想定するアプリケーション例 流通システムでの商品追跡,万引き防止,

ブランド品の海賊版防止等

モバイル機器,情報家電等生活空間での各種用途

リーダライタのハードウェア,OS Philips, Motorola, TIによる共通仕様 T-EngineeTRON

インターネットの利用 利用を想定 選択肢の一つ

ネットワーク上のシステム データ収集用ソフトSavant,名前解決用 サーバONS

開発中

セキュリティ 利用者が無線通信機能をオフにできる Killコマンド等

eTRONによるリアルタイムPKI  eTRON: entity and economy TRON

表7 NFCの主要な諸元と応用 周波数帯 13.56 MHz

通信距離 10 cm(双方向通信可能)

通信速度 106424 kbit/s,

または212 kbit/s

変調方式 ASK 10%

符号化方式 マンチェスター

主な応用

・乗車券/定期券の非接触読取り

・携帯電話と連携させた電子マネー (決済の承認)

・公共交通機関でのプリペイドカード

・社員証・学生証

・建物・部屋の入退管理

・ディジタルカメラやオーディオ機器の制御

表8 DSRC(日本)の主要な諸元と応用

周波数 5.8 GHz

通信方式 アクティブ

路側機:全二重  車載機:半二重 データ伝送速度 上り下りともに1 Mbit/s,4 Mbit/s 通信距離 m〜数十m

変調方式 ASK,QPSK

プロトコル 同期式

応用例

・ETCによる自動料金徴収

・ AHS(Advanced cruise-assist Highway Systems:走行支援システム)

・インターネット接続

・音楽や動画のダウンロード

・IP電話

・駐車場の入出庫管理

・ガソリンスタンドやコンビニでの代金支払い

・物流管理

表9 IEEE802.11pの主要な諸元

通信速度 3, 4, 5, 6, 9, 12, 18, 24, 27 Mbit/s (3, 6, 12 Mbit/sは必須)

変調方式

BPSK OFDM, QPSK OFDM,

16-QAM OFDM, 64-QAM OFDM (IEEE802.11aと同じ)

誤り訂正符号 K=7 (64 states) 畳込み符号 符号化率 1/2, 2/3, 3/4

サブキャリヤ数 52 OFDMシンボル数 8.0 ms ガードインタバル 1.6 ms 占有帯域幅 8.3 MHz

(8)

解説論文

小特集❶

オーディオに音楽をダウンロードしたり,料金決済も自 動的に済ませたりすることができるようになる. 

 なお,欧米におけるDSRC用の通信については,日本 と 異 な りIEEE802.11p(無 線LANのIEEE802.11aの ハーフレートで最大27 Mbit/s,米国では5.9 GHz帯を 使用)を採用する方向である.日本においても,次世代の DSRCについては,欧米の仕様の採用に関する検討も進 められている.表9にIEEE802.11pの主要な諸元を示す.

3.3 無線PAN

 IEEE802委 員 会 に お け る 標 準 化 の 活 動 と し て は,

IEEE802.15.1aにおけるBluetooth,IEEE802.15.4にお ける低速センサネットワーク(ZigBeeで採用)の標準化 がほぼ終了した一方で,2006年にGbit/sオーダの通信 速度を実現する60 GHz帯のミリ波を用いた超高速通信 のIEEE802.15.3cが発足している[7].詳細は本特集号 の「パーソナルエリアネットワークを進化させるミリ波 技術と標準化活動」を参照されたい. 

3.4 センサネットワーク

 センサネットワークの研究の起源は,センシング機能 を備えたデバイスが開発され始めた1980年代初頭とさ れ,1990年代末ごろから徐々に実用化が始まった.こ れまでのセンサネットワークは,工場やビル,車両など における計測,監視制御などの業務用途が主体であった.

しかし今後は,防犯・防災や,高齢者などに装着された バイオセンサ(体温,脈拍,血圧,血糖値,心電,筋電 などを計測)による医療・健康を目的として,一般家庭な どコンシューマへの浸透が期待される.RFIDとの共通 点も多いが,図6に総務省において検討され2003年に

公表されたセンサネットワークの主な応用を示す.

 従来センサネットワークとしては,センサ数個の小規 模なものとして特定小電力無線,微弱無線を利用したも の,主に大学等における研究用としてMICA/MOTEな どがある[18].IEEE802.15.4において物理層とMAC

(Media Access Control)層が2003年に標準化され,業 界団体であるZigBee Allianceにおいて上位層が標準化 中のZigBeeの実用化への期待が高まっている[6],[18],

[19].更に,2005年以降,IEEE802.15.4aにおいては,

伝送媒体にUWBを用い,ZigBeeと同程度の消費電力で 数Mbit/sの通信速度,数十cmの測位精度(ZigBeeに は測位機能はない)を目指した高速センサネットワーク の標準化が,2007年中の規約化を目標に進められている.

3.5 アドホックネットワーク

 アドホックネットワーク研究は,1970年代初頭の米 軍における無線パケット通信方式の研究が起源とされ る.戦場のような苛酷な通信環境においても,その場限 りのネットワークを一時的に構築し兵士や戦車間での通 信を可能にすることを目的とし,1990年代末からルー チングアルゴリズムを中心に研究,標準化が活発化して いる.端末の移動も想定したモバイルアドホックネット ワークに関しては,現在も実用化に向けた研究が続けら れている.

アドホックネットワークを定義づける特徴として,

 ・固定的なネットワークインフラが存在しない   ・集中管理機構がない

 ・ ネットワークトポロジーが変化 (端末の移動,電池 切れなど)

図6 ユビキタスセンサネットワーク技術の将来の利用イメージ(総務省「ユビキタスセン サネットワーク技術に関する調査研究会」2004年度の資料より)

セキュリティ・

安全・快適性向上

マンション等ビル管理

都市,自然災害の監視

劣化監視構造物

物品の流通管理 プラント,設備

異常監視

・多数で多様なセンサ等が分散配置

・センサ同士がアドホックネットワークを形成

・ネットワークを通じて様々な状況や環境の情報が連携  →高度システム,多彩なアプリケーションが実現

・配線不要による設置コスト等の低減化が可能

(9)

 ・マルチホップで通信

が挙げられる[11],[12].インターネットも携帯電話も 固定的なインフラをもつため,アドホックネットワーク ではない.

 想定される応用を表10に示す.通信環境に関して戦 場との類似性がある災害時の利用(携帯電話網の基地局 のダウンやトラヒック集中による通話制限を想定)につ いては,既に多くの実証実験が国内外において実施され ている.

 アドホックネットワークは,近未来の実用化を想定し て移動端末をその制御対象とせず基地局アクセスポイ ントのみでネットワークを構成するメッシュネットワー クと,移動端末も含めノードの移動を前提とするモバイ ルアドホックネットワークに分けられる.表11に両者

の比較を示す.

 メッシュネットワークについては,無線LANを物理 網とした独自のインタフェースによるシステムが既に数 多く製品化されている.この無線LANを物理網とする メッシュネットワーク実現のための方式の標準化は,

IEEE802.11sにおいて進められている.IEEE802.11s では,アドホックネットワークの機能をMAC層で実現 するための従来のMAC機能の拡張,ルーチング制御,

QoS制御(輻輳制御,レート制御),周波数チャネル選択,

セキュリティ,他のネットワークとの相互接続,省電力 化の方式等についての詳細な検討がなされている.2008 年の早い時期には標準化が終了する予定である.

 モバイルアドホックネットワークが実用化される時点 では,表10に示すようにパーソナルエリアネットワー クとしての機能を駆使した各種のアプリケーションに活 用されることが期待される.更に,DSRCとの関係も含 めた,VANET(Vehicular Ad hoc NETwork)と呼ば れるITSへの応用も今後の課題である.

4. パーソナルエリアネットワークの今後の展望と 課題

 2005年以降,特に有線ネットワークにおいては次世 代ネットワークNGN(Next Generation Network)の議 論 が 活 発 に な っ て い る.ITU-T(International Tele- communications Union-Telecommunications Sector)

より,既にY.2001(NGNの定義)とY.2011(NGNの 参照モデル)の二つの勧告が発行され,アーキテクチャ や機能構成についても具体的に検討が進められている.

NGNは,移動体通信のオールIP化に関する検討の中 で 仕 様 化 さ れ たIMS(IP based Multimedia Subsys- tem,IMSは3GPP呼称で,3GPP2ではMMD(Multi- Media Domain)に対応)をサービス基盤として図7に示 表10 アドホックネットワークの主な応用

分 類 概 要

軍事利用 戦場における兵士,戦車,戦艦,戦闘機間 の通信

災害時の利用 地震,津波,洪水,台風,竜巻が発生した ときの警察や消防による捜索,救出,緊急 通報,避難誘導,被害情報の収集・連絡,

復旧活動支援.被災者同士の安否確認  パーソナルエリア

ネットワークによ るサービス

商品倉庫管理,建設工事現場,農場などに おける各種管理

ショッピングモール,テーマパーク,イベ ント会場,スタジアム等におけるP2P 報配信(広告配信・ナビゲーション等)

情報家電ネットワークにおける各種機器の 制御

端末(携帯電話,PDA,ノートPC,ウェ アラブル端末)間通信   

ITS

(テレマティクス)

車車間通信による事故発生や工事などにお ける混雑状況や迂回路情報のリアルタイム 通知,カーナビへの反映

路車間通信によるサービスエリアのサービ ス情報配信

表11 モバイルアドホックネットワークとメッシュネットワーク モバイルアドホック

ネットワーク

メッシュネットワーク

利用 当面: 戦場,災害時などの一時的な利用 将来: 平常時の利用

(実用ネットワークはほとんどない)

定常的に利用

(非標準のネットワークは多く製品化されている)

ネットワークトポロジー 動的に変化 当面は変化を前提としない

(基地局/アクセスポイントのみでメッシュを構成)

独自仕様の製品は多い

物理ネットワーク 問わない 無線LANを対象として各種方式の標準化が進展

(IEEE802.11s),

無 線MAN(WiMAX)に お い て も 議 論 開 始

(IEEE802.16j)

標準化機関 IETF (MANET WG,

AUTOCONFIG WG等)

IEEE802

実現レイヤ レイヤ3(ネットワーク層) レイヤ2(MAC層)

(10)

解説論文

小特集❶

すような進展が予想されている.すなわち2010年以降 は,NGNの主要なサービスとして,ユビキタスシステ ムが挙げられている.

また,今後のユビキタスシステムの進展については,

総務省などによる調査では,ネットワークに接続される 端末・デバイス(PCや携帯電話からRFIDタグ,セン サ,情報家電,車載端末,自律走行ロボット,ウェアラ ブル端末など)の数は,2005年,2010年,2015年にお いてそれぞれ世界で約108,1010,1012すなわち5年ごと に約100倍の割合で増加する,という報告がある[14].

これらの調査では,一人当り1端末・デバイスという オーダが2010年,その後2015年には一人当り100端末・ デバイスということになり,NGNがユビキタスシステ ムへ対応する時期にほぼ合致する.

 更にその後は,おびただしい数の端末・デバイスがネッ トワークに接続され,バックボーンのIPネットワーク と連携して,人々により幅広くきめ細かな利便性を提供 するものと期待される.しかし,このようなユビキタス ネットワーク社会が進化していくための課題について,

筆者の考えとして以下が挙げられる.

(1) 柔軟なネットワークアーキテクチャ

 RFIDや簡易なセンサは,ロボットやウェアラブル端 末に実装されるものも含め,今後小型軽量化,低価格化,

低消費電力化が進展する.RFIDタグは2010年で1個1 円程度を目標としており,これらの末端のエンドデバイ スとの通信ではIPを使用しないのが一般的となる.この ユビキタス化の傾向はますます進展し,非IPで接続され るパーソナルエリアネットワーク(時には低価格化の追求 や劣悪な無線通信環境のために低信頼で高遅延のネット ワークになることもあり得る)が著しく増大する.非IP ネットワークとバックエンドのIPネットワークとの連携 による,エンドデバイスに関する様々な属性情報の検索 や,エンドデバイスからの読取り情報の解析,そのフィー ドバックなどが重要であり,疎に密に,IPネットワーク

と非IPネットワークの間の柔軟な連携を可能にするネッ トワークアーキテクチャが必要となる[20],[21].

(2) いっそうのセキュリティ強化

 パーソナルエリアネットワークは,一般には通信距離 が短い分情報漏えいの抑制には効果的であるが,それ以 上にエンドデバイスの数が急速なペースで増加すること により漏えいや傍受の危険性がかえって大きくなる

[22],[23].プ ラ イ バ シ ー 保 護,DDoS(Distributed Denial of Service),情報の改ざん防止を含めたセキュ リティ機能(暗号強度,スケーラビリティなど)の強化が 求 め ら れ る.更 に,無 線LANに お い て い く つ か の EAP(Extensible Authentication Protocol)が新たに提 案され標準化されたように,無線システムにおいては有 線システムと比較して認証機能がより重要になる.夥し い数のノードが想定されるユビキタスシステム環境で は,EAPを 利 用 す る 現 在 のWPA(Wi-fi Protected Access)のような認証システムではスケールしない

[17],[24].そのため,新しい認証技術が求められる.

 また,モバイルアドホックネットワークでは,他人の 携帯端末を無断で中継ノードとして利用する場合が考え られる.中継時には,何らかの形で端末の通信部分の制 御を行うため,悪意がある場合は端末内に不正アクセス を試みることも考えられる.更に端末の電力も消費する.

インターネット上で既に多くの実用サービスが提供され ているP2P(Peer-to-Peer)通信の問題と共通するが,

モバイルアドホックネットワークにおいても,セキュリ ティ確保の上で更に,他人の通信のために自分の携帯端 末が中継用に使われる,ということへの社会的認知が必 要になる.

(3) 高ノード密度環境にける高信頼通信

 多くのセンサ群を接続した大規模センサネットワーク や,災害時などに携帯電話をもった多くの被災者が避難 場所に殺到するようなモバイルアドホックネットワー ク,更に利用者が多くのウェアラブル端末を装着した場

FMBC + ユビキタス 移動

移動+固定

移動+固定 放送

オールIP

FMC

FMCFixed Mobile Convergence FMBCFixed Mobile Broadcast Convergence

2005 2010 2015

IMS LTE, SAE Beyond 3G

UMAOnePhone BT Fusion

ワンセグ  NGN@Home IPTVホームゲートウェイ

通信放送融合

センサ/ アドホックネットワーク

フェムトセル

図7 NGNのロードマップ

(11)

合などにおいては,ノードの密度が高く短距離間の通信 が同時に多数発生する.一定以上のノード密度,通信発 生頻度になると干渉などによりパケット損失率が著しく 増大し,正常な通信がほとんどできなくなるという報告 もある[14].このような環境でも,コグニティブ無線

[25],[26]などの技術も駆使し干渉などを抑制し,パケッ ト到達率を高めるような通信制御方式が重要となる.

(4) 小型軽量大容量電池と低消費電力デバイス,効率 的なスリープ制御,低消費電力プロトコルの開発  小型軽量大容量電池と低消費電力デバイス,効率的な スリープ制御に対する要請は,パーソナルエリアネット ワークに限らず,組込みシステムをはじめ多くのシステ ムにおいて共通の課題である.しかし,ユビキタスシス テムが,「人々に見えないあるいは意識しないところでき め細かなサービス,情報を提供する」ためには,これらの 低消費電力化に向けたいっそうの技術開発が求められる.

 また,アドホックネットワークでは,エンド・エンド の経路を発見するために制御パケットをフラッディング

(制御パケットを受信したノードが次々に隣接するノー ド群にブロードキャスト)する必要があり,最大5ホッ プ程度の小規模なネットワークでも,一つのエンド・エ ンドの経路を発見するのに数百オーダの制御パケットが 通信される[14].更に,端末の移動が激しい場合は,経 路の切断が頻繁に発生するため再経路構築のためのフ ラッディングの頻度が高くなり,各端末の電力が大量に 消費される.消費電力を極力抑えたフラッディングベー スのルーチングプロトコルやMACプロトコルなどの開 発が重要となる.

文  献

1 M. Weiser, The computer for the 21st century,Scientific American, pp.6675, Sept. 1991.

2阪田史郎, ユビキタスシステムの中核となる無線ネット ワークの最新技術と将来動向, ITUジャーナル, pp.44 50, Nov. 2005.

3阪田史郎, ワイヤレスネットワークの最新技術と将来展望

IEEE無線規格の全貌,アイティメディア,Oct. 2005

July 2006. http://www.atmarkit.co.jp/fnetwork/rensai/

ieee01/01.html http://www.atmarkit.co.jp/fnetwork/

rensai/ieee10/01 html

4酒井五雄, パーソナルエリアネットワークを実現する技術

Bluetooth 信 学 通 誌,vol.1, no.2, pp.5561, Sept.

2007.

5阪田史郎(編著),UWB/ワイヤレスUSB教科書,インプレ ス,2006.

6福永 茂, パーソナルエリアネットワークを実現する技術

ZigBee®信学通誌,vol.1, no.2, pp.6273, Sept. 2007.

7荘司洋三,原田博司,加藤修三,豊田一彦,高橋和晃,川 崎研一,池田秀人,大石泰之,丸橋建一,中瀬博之,安藤 パーソナルエリアネットワークを進化させるミリ波技 術 と 標 準 化 活 動, 信 学 通 誌,vol.1, no.2, pp.92102, Sept. 2007.

8原 晋介,標準化動向─IEEE802.15 を中心として,信学 通誌, vol.1, no.2, pp.103107, Sept. 2007.

9阪田史郎,嶋本 薫(編著),無線通信技術大全,リックテ レコム,2007.

10 T. G. Zimmerman, Personal area networks: Near-field

intrabody communication,IBM Systems J., vol.35, no.

3/4, pp.609617, Oct. 1996.

11 M. Shinagawa, M. Fukumoto, K. Ochiai, and H. Kyuraji, A near-field-sensing transceiver for intra-body communica- tion based-on the electro-optical effect,IMTC 2003, pp.296301, 2003.

12服部 武,藤岡雅宣(編著),ワイヤレス・ブロードバンド

高速IPワイヤレス編,インプレス,2006.

13阪田史郎,青木秀憲,間瀬憲一, アドホックネットワーク と 無 線LANメ ッ シ ュ ネ ッ ト ワ ー ク,信 学 論(B), vol.

J89-B, no.6, pp.811823, June 2006.

14間瀬憲一,阪田史郎,アドホック・メッシュネットワーク

─ユビキタスネットワーク社会の実現に向けて,コロナ社,

2007.

15 C. S. R. Murthy and B. S. Manoj, Ad hoc Wireless Networks,Prentice-Hall, 2004.

16根日屋英之,小川真紀, ワイヤレスブロードバンド技術─

IEEE8024Gの展開,OFDMMIMOの技術,東京電 機大学出版局,2006.

17阪田史郎(編著),ユビキタス技術 無線LAN,オーム社,

2005.

18阪田史郎(編著),ユビキタス技術 センサネットワーク,

オーム社,2006.

19安藤 繁,戸辺義人,南 正輝,田村陽介,センサネット ワーク技術,東京電機大学出版局,2006.

20阪田史郎,高田広章(編著),組込みシステム,情報処理学 (編),オーム社,2006.

21阪田史郎,Webの新潮流─Web2.0とネットワーク技術動 向,信学通誌, vol.1, no.1, pp.5066, June 2007.

22阪田史郎, ユビキタスネットワークにおけるモバイルセ キ ュ リ テ ィ, 信 学 誌,vol. 87, no.5, pp.424432, May 2004.

23阪田史郎(監修),オンライン詐欺に関するユーザー調査,

ブロードバンド推進協議会,2006.

24 J. Edney and W. A. Arbaugh, Real 80211 Security: Wi-fi Protected Access and 802.11i, Addison-Wesley Professional, 2004.(加藤聰彦(監訳)無線LANセキュリ ティ─IEEE802.11iWPAの実際,共立出版,2006.

25 J. Mitola and G. Q. Maguire, Cognitive radio: Making software radios more personal,IEEE Pers. Wirel.

Commun., vol. 6, no. 4, pp.1318, Aug. 1999.

26原田博司, コグニティブ無線─NiCTにおける研究開発成 果より, ITUジャーナル,vol.37, no.2, pp.3337, Feb.

2007.

(平成1942日受付,57日再受付)

阪田 史郎(正員)

▶昭47 早大・理工・電子通信卒.昭49 同大大学院修士課程了.同年NEC(日本 電気)入社.以来,同社中央研究所にてイ ンターネット,マルチメディア通信,モバ イルコンピューティング,ユビキタスシス テム等の研究に従事.工博.平9同社パー ソナルC&C研究所所長,平11 同社イン ターネットステム研究所所長.平911 奈良先端科学技術大学院大学客員教授,平911情報処理学会 理事.平13情報処理学会フェロー.平1517本会企画理事.

1618 情報処理学会監事.平19より本会評議員,平16 り千葉大学大学院教授.「マルチメディアシステム」(昭晃堂),「モ バイルコンピューティング」(アスキー出版),「インターネットと QoS制御」(裳華房),「インターネット・プロトコル」,「ユビキタス 技術 LAN」,「組込みシステム」(オーム社),「ワイヤレス・

ユビキタス」,「情報家電プロトコル」,「ZigBeeセンサネットワー ク」(秀和システム),「無線通信技術大全」(リックテレコム),「アド ホックネットワークとメッシュネットワーク」(コロナ社)ほか著 書・共著書30余.

表 7 NFC の主要な諸元と応用 周波数帯 13.56 MHz 通信距離 約 10 cm(双方向通信可能) 通信速度 106 〜 424 kbit/s, または 212 kbit/s 変調方式 ASK 10% 符号化方式 マンチェスター 主な応用 ・乗車券 / 定期券の非接触読取り ・携帯電話と連携させた電子マネー  (決済の承認)・公共交通機関でのプリペイドカード ・社員証・学生証 ・建物・部屋の入退管理 ・ディジタルカメラやオーディオ機器の制御 表 8 DSRC(日本) の主要な諸元と応用周波数5.8

参照

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