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わが国の麻疹排除に向けた取り組み

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590 (590一一594) 小児保健研究

わが国の麻疹排除に向けた取り組み

多屋 馨子,加藤 達夫,岡田 賢司,庵原 俊昭 宇目江 進,古賀 伸子,住友眞佐美,馬場 宏一 三田村敬子(日本小児保健協会予防接種・感染症委員会)

 2001年に経験したわが国の麻疹流行は推定患 者数約28万人の全国的な大流行であった。感染 症流行予測調査事業によると,当時の麻疹ワク チン接種率は,1歳児で約50%と極めて低く(図1),

1歳児の麻疹ゼラチン粒子凝集(PA)抗体保 有率(1:128以上)は約40%に留まっていた

(図2)。この状況で流行を経験したため,患者 の多くが乳幼児で,その後成人に感染が拡大す るという流行形態となった。

 これを受けて,2002年から「1歳になったら すぐの麻疹ワクチン接種」が全国的に強化され た。この対策は,乳幼児の麻疹患者減少には極 めて有効であり,2006年は小児科定点からの報 告数が2001年の33,812人から約60分の1の516

人となり,過去20年間で最も少ない年となった。

しかし,思春期~若年成人に残存していた感受 性者対策が不十分であった。

 麻疹および風疹対策のさらなる強化を目的 に,2006年度から麻疹および風疹ワクチンの2 回接種制度が定期接種に導入されたが,同年春 に茨城県南部・千葉県で始まった麻疹の地域流 行は,危惧していた思春期~若年成人の患者が 目立つ流行となり,翌年には,全国流行となっ

た。

 当時日本では,麻疹は“患者が一人発生した らすぐに対策をとるべき疾患”であるという考 えがなかなか受け入れられなかったことが対策 を困難なものにした。「たかが,はしか」とい

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図1 2001年度感染症流行予測調査事業より得られた年齢別麻疹およびMMRワクチン接種率

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  ~2008年度感染症流行予測調査より2008年7~9月調査(暫定値)~

[抗体価測定:ゼラチン粒子凝集法(PA法)/抗体価≧1:128の抗体保有率で比較]

う言葉に代表されるように,麻疹の重症度は実 際より軽く考えられてきたのがその要因の1つ であると考える。

 2007年の流行は,2006年に引き続き思春期~

若年成人が患者の大半を占め,大学や高校は相 次いで休校になった。麻疹含有ワクチンや麻疹 抗体を測定するための検査試薬の不足が発生す るなど社会問題にも発展したのは記憶に新しい ところである。

 これを受けて,わが国は2012年度までに国内 から麻疹を排除し,その状態を維持することを 目標に定め,2007年12月28日に「麻疹に関する 特定感染症予防指針」を策定し,厚生労働大臣

により告示された。

 麻疹排除を宣言するためには,人口100万人 あたり輸入例を除いた麻疹患者数が1人未満に なること,全年齢コホートで95%以上の抗体保 有率になること(これは,血液検査が求められ ているのではなく,2回の予防接種率がそれぞ れ95%以上になることが求められている),た とえ輸入例が入ってきても,大規模な流行に繋 がらないことなどが求められている。すでに南 北アメリカ大陸と大韓民国では麻疹排除elimi一

nationを宣言している。日本を含めたWHO西 太平洋地域事務局(WPRO)は,2012年を麻 疹排除の目標年としており,それに向けて各国 が努力を続けている。しかし,表に示すとおり,

日本の麻疹患者数は,WPRO領域の中でも多 い方に属し,2007年はラオスに次いで第2位の 人口100万人あたり140.7人,2008年はカンボジ ア,中国に次いで第3位の人口100万人あたり 85.5人,2009年は5月現在,2008年と比較する

と患者数は激減しているとはいえ,ベトナム,

ニュージーランド,オーストラリア,カンボジ ア,ブイジー島,マレーシアに次いで第7位の 人口100万人あたり5.7人である。

 現在,麻疹対策の柱になっているのは,麻疹 の全数報告制度麻疹含有ワクチン(原則とし て使用するワクチンは麻疹風疹混合ワクチン)

の2回接種の徹底,5年間の時限措置として実 施する中学1年生,高校3年生相当年齢を対象 とした2回目の麻疹含有ワクチン接種機会の付 与等であるが,これらを迅速に把握し対策に繋 げるために,国には麻疹対策推進会議を,全国 の都道府県には麻疹対策会議を設置することに なった。患者数や予防接種状況を定期的に集計

(3)

小児保健研究

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(5)

594 小児保健研究

して分析し,麻疹排除に向けて国民一人一人が 努力することが求められている。

 全数報告初年の2008年も2007年に引き続い て,麻疹の全国流行が発生した。全国から 11,007人の麻疹患者が報告され,その44.6%は ワクチン未接種年齢は2007年と同様に10~20 代が中心であった。なお,表に示したWPRO 発表の2008年日本の確定麻疹患者報告数は 10,944人になっているが,WPROは発症日で 集計しているのに対し,日本の感染症発生動向 調査(全数報告)は診断日で集計しているため,

若干数字に違いがある注)。

 また,感染症流行予測調査事業による,麻疹 含有ワクチンの接種率は,1歳児で約80%と 図1の2001年に比較すると30ポイントの増加で あったが(図3),1歳児の麻疹ゼラチン粒子 凝集(PA)抗体保有率(1:128以上)が2004 年を最高として徐々に減少してきているのは心 配である(図2>。また,2001年と異なり,9 歳以上に多数の感受性者の蓄積が認められる。

 1歳児(第1期),小学校入学前1年間の幼

児(第2期),中学1年生(第3期),高校3年 生相当年齢(第4期)の接種率をそれぞれ95%

以上にするためには,教育,医療,行政,研究 機関が連携強化し,2012年の国内麻疹排除に向 けて国民が一丸となった一層の努力が必要であ

る。

 新型インフルエンザの流行が危惧される中,

今年度の第2,3,4期対象者は夏休み中に接種 を完了させて欲しい。また,1歳児は1歳になっ たらすぐの接種を忘れないで欲しい。

        文   献

ユ)国立感染症研究所感染症情報センター.2012年  麻疹排除(elimination)にむけて,2009年7月  現在URL:http://idsc.nih.go.jp/disease/mea-

 sles/index . htm1

2) WHO/UNICEF joint statement-global plan for  reducing measles mortality 2006-2010.2009年  7月現在URL:http://www.who.int/imlnuni-

 zation/docurnents/WHO IVB 05.11/en/index.

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[MR+MR]

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 [n=237]

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       #12009年4月時点の集計値(暫定値)であり,今後変わる可能性があります。

図3 2008年度感染症流行予測調査事業より得られた年齢別麻疹含有ワクチン接種率

参照

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