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Ⅰ. 成年後見人の財産流用について < 質問事項 > 1. 基金協会は 債務者 Aと債務者 Bの親子に対してそれぞれ 1,000 万円と 500 万円の求償権残高があり それぞれの債務は連帯債務者で成り合っている 基金協会 1,000 万円 A B 連帯債務 基金協会 500 万円 A B 連帯債務

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今年度も平成 22 年9月 21 日(火)と 22 日(水)にかけ、基金協会等管理担当者職員を集め、コ ープビル会議室において「求償権管理回収等事務研修会」が開催されました。 この研修会は、昭和 51 年から中央3団体(全国農業信用基金協議会・(社)全国農協保証センター・ 信用基金)の主催により毎年実施されており、今年度で 35 回目となりました。 今回は、農業信用基金協会及び県農協保証センターの職員 61 名が参加し、羽田総合法律事務所の 弁護士及び協同セミナーの専任講師の方を講師としてお招きして、実際の回収事例や最近の判例等 について解説していただき、参加者からは、講義内容について概ね満足しているとの評価を得てい ます。 ○ 研修風景 ○ 講義テーマ 1.求償権の管理回収事例研究 (1) 破産(別除権と相殺) (2) 求償権の管理回収事例研究 2.債権の管理回収について 今回の研修会の中で、事例研究として掲げられたいくつかの事項からピックアップして紹介しま す。

求償権の管理回収に関する事例研究

-平成 22 年度求償権管理回収等事務研修会から-

農 業 第 二 部

業務関連情報

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Ⅰ.成年後見人の財産流用について <質問事項> 1.基金協会は、債務者Aと債務者Bの親子に対してそれぞれ 1,000 万円と 500 万円の求償権残 高があり、それぞれの債務は連帯債務者で成り合っている。 万円 1,000 基金協会 A 連帯債務 B 基金協会 A 連帯債務 B 500 万円 2.債務者A(母親)は、数年前に病気で倒れ、意識を失ったままの状態であったため、債務者 B(長男)より近年は回収を行ってきたところ、Bが死亡。Bの保険金受取人はAであった。 3.その後、Aの娘C(Bの妹)がAの成年後見人となり、Bの保険金 3,000 万円を自らの口座 に受領させた。そのうち、700 万円で自らの生命保険に加入。また 1,500 万円で家を購入。さ らに、自らの借金も含め 800 万円を他の債権者へ弁済したことが判明した。 A 保険金 (3,000万円) B C (死亡) (Aの成年後見人) 自宅 購入 借金 返済 生保 加入 4.成年後見人Cの財産流用を理由に、不動産売買契約および保険契約の無効による充当額の返 還等を主張する手段について教えてほしい。 5.また、成年後見人Cに対する請求方法(法的対応等)を教えてほしい。 6.この案件では、成年後見人が自宅を建てているが、その家を処分する方法があれば教えてほ しい。 <解説> 1.成年後見人は,後見事務を善管注意義務をもって行わなければならず(民法 869 条、644 条)、 また、被後見人との利益相反行為を行うことは禁止され(民法 860 条、826 条)、後見人が被後見 人の財産を譲り受けたときは、被後見人はこれを取り消すことができる(民法 866 条)とされて

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第2章 契約 第 10 節 委任 (受任者の注意義務) 第 644 条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義 務を負う。 第4章 親権 第2節 親権の効力 (利益相反行為) 第 826 条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、 その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。 2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相 反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭 裁判所に請求しなければならない。 第5章 後見 第3節 後見の事務 (利益相反行為) 第 860 条 第 826 条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、こ の限りでない。 (被後見人の財産等の譲受けの取消し) 第 866 条 後見人が被後見人の財産又は被後見人に対する第三者の権利を譲り受けたときは、被 後見人は、これを取り消すことができる。この場合においては、第 20 条の規定を準用する。 2 前項の規定は、第 121 条から第 126 条までの規定の適用を妨げない。 (委任及び親権の規定の準用) 第 869 条 第 644 条及び第 830 条の規定は、後見について準用する。 そこで、成年後見人Cが被後見人である債務者Aの財産を流用したときには、不当利得・不法 行為として、或いは債務者Aから贈与を受けたときには、これを取り消すことにより、流用額の 返還を求めることができる。 2.債務者がその財産権を行使しない場合に、債権者がその債権を保全するために債務者に代わっ てその権利を行使して債務者の責任財産の維持・充実を図る制度に債権者代位権がある(民法 423 条)。

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(債権者代位権) 第 423 条 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。 ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。 2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を 行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。 (1) 債権者代位権の要件は、以下のとおりである。 ①債権者が自己の債権を保全する必要があること。 具体的には、債務者の無資力(但し,転用例は別)。 ②債務者がその権利を行使しないこと。 ③債権が原則として弁済期に達していること。 代位債権者の債権は弁済期に達していることが必要。 (2) 代位行使され得る権利 代位の対象となる権利は、財産権であり、強制執行可能な権利であることが必要である。 ①財産権であれば、債権・物権・登記請求権などの請求権であろうと、取消権・解除権・買 戻権などの形成権たるとを問わず、また、代位権の代位も認められている。 これに対して、②債務者の行使上の一身専属権は、代位の対象とはならないとされている。 行使上の一身専属権に当たる例としては、身分法上の権利(親権・夫婦間の契約取消権・離婚 請求権)や財産分与請求権(協議・審判等によって具体的内容が形成される以前は代位行使で きない)、慰謝料請求権などがある。 (3) 債権者代位権の行使方法 債権者は債務者に代位して、債権の取立て、登記の申請、担保権の実行、訴訟の提起、強制 執行などをなすことができる。 (4) 債権者代位権の範囲 代位権の行使は、債権の保全のために認められたものであるから、それに必要な範囲に限定 されることになる。 判例も、金銭債権の代位行使事例において、債権者の被保全債権の範囲内においてのみ、代 位行使を認めている。 (5) 債権者代位権行使の効果 債権者が代位権の行使に着手して、これを債務者に通知すると、債務者はそれ以降これを妨 げるような処分行為をすることができなくなる。 また、代位権行使の効果はすべて債務者に帰属し、第三債務者が目的物を代位債権者に引き 渡したときでも、債務者の債権は消滅し、引き渡された財産は総債権者のための共同担保とな

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銭債権であるときは、債権者は相殺をすることにより、事実上優先弁済を受け得ることになる。 3.本件での検討 (1) 上記のように、債務者Aはその成年後見人であるCに対し、金銭の返還請求権を有し、協会 は債務者Aに対して、求償権残高合計 1500 万円の支払請求権を有することになるので,債務者 Aが無資力である場合には、協会は債務者Aを代位して、成年後見人Cに対し、金銭の返還請 求権を行使して、金銭の引渡しを要求することができるが、その範囲は、求償権残高合計の範 囲に限られることになる。 (2) そして、債務名義を得た後も、成年後見人Cが任意に履行しない場合には、自宅に対する強 制執行や生命保険の解約返戻金の差押えを行うことになる。 (3) 生命保険の解約返戻金を差し押さえた場合、差押債権者は生命保険を解約し、解約返戻金を 受領することができるが(最高裁平成 11 年 9 月 9 日)、生命保険の解約返戻金の差押えのため には、当該保険の種類や保険証書番号を特定する必要がある。 (4) 借金返済に使用した 800 万円については、強制執行などの手段をとることは困難と考える。 4.その他 (1) 本件では、死亡した債務者Bも協会に対して 1500 万円の債務を負担している。 そこで、債務者Bの相続の放棄関係について、家庭裁判所に調査し、Cのみが相続人である 場合には、上記のような代位権行使の方法をとらずに、直接Cに対して、求償権の支払を求め る訴えを提起することも可能となる(但し、Cは、協会からの請求によって、相続放棄の申述 をする可能性がある)。 (2) 民法 863 条 2 項は、「家庭裁判所は、後見監督人、被後見人もしくはその親族その他利害関 係人の請求により又は職権で、被後見人の財産の管理その他後見事務について必要な処分を命 ずることができる。」としているので、協会において、家庭裁判所に対して、後見事務につい て必要な処分を行うよう申し立てることは可能である。 必要な処分は、後見事務に関して監督上必要な一切の措置を意味し、後見人の職務執行停止・ 後見代行者の選任・臨時財産管理人の選任等がある。 (3) 業務上横領による告訴については、刑法 255 条が同法 244 条(親族相盗例)を準用している ことから、後見人Cに対する告訴(告発)の実際上の効果が懸念されるが、最高裁平成 20 年 2 月 18 日判決は、「家庭裁判所から選任された未成年後見人が業務上占有する未成年被後見人所 有の財物を横領した場合、未成年後見人と未成年被後見人との間に刑法 244 条 1 項所定の親族 関係があっても、その後見事務は公的性格を有するものであり、同条項は準用されない」旨判 示している。

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(親族間の犯罪に関する特例) 第 244 条 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第 235 条の罪、第 235 条の2の罪又はこれ らの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。 2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を 提起することができない。 3 前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。 (準用) 第 255 条 第 244 条の規定は、この章の罪について準用する。 そこで、協会において告発を行う場合には、当該警察に対し、上記判例の存在を示して行うこ とが必要となる(警察は、刑法 255 条を理由に告訴を受理しないという対応をとる可能性が高い ため)。

Ⅱ.相続放棄した者が時効完成後に返済した場合の対応について

<質問事項> 1.債務者は平成 11 年 11 月 24 日に死亡し、妻・子供は相続放棄を行い、平成 12 年4月 17 日 に代位弁済を行った。 2.第2順位・第3順位も相続放棄を行うと聞き、相続放棄受理証明書の提出を待ったが提出は なく、相続人調査の上、平成 22 年6月 11 日付で相続人へ支払指示通知書を送付したところ、 平成 22 年6月 18 日に父母から求償権に対する支払いがなされた。 3.その後、債務者の実兄から協会に電話があり、彼は「時効の完成」を主張したが、協会は「支 払いがなされたものであり、援用権を放棄したもの」と主張した。 4.また、実兄は、「10 年前に父母も相続放棄をしたが痴呆のため、相続放棄受理証明書を紛失 してしまった。自分は相続放棄受理証明書を持っている。」と主張した。 5.なお、支払指示通知書で、相続放棄をしている場合は相続放棄受理証明書の提出を求めてい る。 父 母 兄 子(放棄) 債務者 (死亡) 妻(放棄) 6.協会としては、援用権の放棄という主張をしたが、これで良いのか。 7.今後、相続放棄受理証明書の提出があり、相続人でないことを確認した場合、協会としては 返金する必要があるのか。 8.その他、問題点があれば、教えてほしい。

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<解説> 1.債務者が時効の完成を知って放棄することは、「時効利益の放棄」ないし「援用権の放棄」と いわれる。債務者が時効の完成を知らずに弁済した場合については、判例は、消滅時効完成後に 債務の承認をした場合において、そのことだけから、右承認はその時効が完成したことを知って したものであると推定することは許されないとしているので(最判昭和 41 年 4 月 20 日民集 20 巻 4 号 702 頁)、一般に「援用権の喪失」ないし「時効利益の喪失」といわれる。 なお、上記判例においては、債務者が、自己の負担する債務について時効が完成した後に、債 権者に対し債務の承認をした場合、時効完成の事実を知らなかったときでも、完成した消滅時効 の援用をすることは信義則上許されないとしているので、結論として、債務者が時効を援用でき ないことには変わりがない。 2.本件のケースでは、父母は相続放棄をした本人なので、債務を相続していないことは知ってい たものと考えられる。そして、民法上、債務の不存在を知って行った弁済は返還を請求すること ができないので(民法 705 条)、返金しなくても良いようにも思える。 しかし、過失によって知らなかった場合は民法 705 条の適用はなく、不当利得返還請求は認め られるとするのが判例であるので(最判昭和 16 年 4 月 19 日新聞 4707 号 11 頁)、父母が痴呆に より誤って支払ってしまったような場合には、返金しなければならないことになると思われる。 (債務の不存在を知ってした弁済) 第 705 条 債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知ってい たときは、その給付したものの返還を請求することができない。

Ⅲ.再生計画完了または債務整理準備中の債務者からの任意返済の対応ついて

<質問事項> 1.民事再生計画を完了した債務者が任意で振り込んだ回収金について返還する必要があるか。 2.また、代理人弁護士より債務整理の通知書を受領後、長期間経過しても進行がない案件で債 務者名義の振り込みがあった場合は、返還しなければならないのか。 3.いずれも弁護士からの受任通知受理以降は、債務者本人への督促活動は一切行っていない。 4.このような債務整理案件であっても、本人からの弁済が認められるのはどのような場合か、 教えてほしい。 <解説> 1.民事再生法 178 条は、「再生計画認可の決定が確定したときは、再生計画の定め又はこの法律の 規定によって認められた権利を除き、再生債務者は、すべての再生債権について、その責任を免 れる。」と規定していますが、免責された債務については、債務が消滅すると考える見解(=任意 弁済も認められない)、自然債務となる見解(=任意弁済は認められる)に分かれ、現時点では通 説が確立しているとはいえない。

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ただし、破産法においては免責債務は自然債務と解釈されるのが多数説であり、民事再生法に おいても自然債務と考える余地は十分にあると考えられるので、争いの余地はあるが、受領して 差し支えないものと考える。 2.債務整理の受任通知は、通常、「支払停止」を意味するので、それ以降の弁済については、支払 停止後の偏頗弁済(破産法 162 条、民事再生法 127 条の 3)として否認される可能性がある。 ただし、破産法 166 条は、「破産手続開始の申立ての日から1年以上前にした行為(163 条 3 項 に規定する行為を除く。)は、支払の停止があった後にされたものであること又は支払の停止の事 実を知っていたことを理由として否認することができない。」と規定しているので(なお、民事再 生法 131 条にも同様の条項がある。)、弁済受領後も長期間に渡って破産等の申立がなされなけれ ば、否認されないことになる。 いずれにしても、破産等の申立がいつの段階でなされるのか不明確な時点では、直ちに返還し なければならないというものではないであろう。 3.弁済が否認権行使の対象となるかどうかについては、破産法を前提に以下に説明する。 支払の停止があれば否認権行使においても支払不能が推定されるが(破産法 162 条 3 項)、支払 不能を推定させる支払の停止は、破産手続開始の申立て前1年以内のものに限られる(同項かっ こ書)。ただし、この場合にも、支払不能を別途立証して否認することは封じられない。 すなわち、支払の停止は破産手続開始の申立てから1年より前にあったが、支払の停止後の弁 済行為が破産手続開始の申立て前1年以内にされている場合、当該支払の停止は支払不能の推定 としては働かないが、受益者の主観的要件に関しては、当該支払の停止を知っていたことで足り ることになる。したがって、破産管財人は支払不能を別途立証し、受益者が支払の停止を知って いたことを立証して、当該弁済行為を否認することができる。 破産法 166 条とも併せて、以下に図表にして整理する(なお、民事再生の場合でも基本的に同 様)。 1年前 破産申立 (ア) (イ) (ウ) (エ) ① (ア)で支払停止 (イ)で弁済 → 否認の対象とならない(破 166 条) ② (ア)or(イ)で支払停止 (ウ)or(エ)で弁済 → 管財人の立証次第(破 162 条 3 項かっこ書) ③(ウ)で支払停止 (エ)で弁済 → 否認の対象となる(破 162 条 3 項) <破産法> (支払の停止を要件とする否認の制限) 第 166 条 破産手続開始の申立ての日から1年以上前にした行為(第 160 条第 3 項に規定する行 為を除く。)は、支払の停止があった後にされたものであること又は支払の停止の事実を知っ ていたことを理由として否認することができない。

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(特定の債権者に対する担保の供与等の否認) 第 162 条 次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為 に限る。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。 (略) 3 第1項各号の規定の適用については、支払の停止(破産手続開始の申立て前1年以内のもの に限る。)があった後は、支払不能であったものと推定する。

Ⅳ.取得時効の効力について

<質問事項> 1.協会が代弁後に根抵当権の一部譲渡を受けた物件(土地)が、取得時効を主張(債務者の祖 父の代から、隣人が使用していた模様)し、すでに裁判所の判決もあることが判明した。 2.根抵当権は設定していたが、登記上の所有権の変更もなく、債権者として全く承知する余地 がないうえ、担保権も消滅することとなった。 3.判決による職権登記もされておらず、裁判所から利害関係人に対する通知もなく債権者の権 利を剥奪されるこの判決は、協会としては納得できない結果であるが、債権者側から見ると仕 方のないことなのか。 <解説> 1.民法 397 条は、「債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件 を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。」と規定しており、この条文か らすると、債務者又は抵当権設定者(物上保証人)以外の第三者が取得時効を主張した場合は、 常に抵当権は消滅するようにも読める。 そこで、この点について、抵当権の設定時期との関係で場合分けをして検討する。 2.時効完成後に抵当権が設定された場合(本件のケース) 時効完成後に抵当権が設定されているケースについては、抵当権者と時効取得者とは対抗関係 に立つので、抵当権の登記が先に設定されれば、時効取得者に対しても抵当権を対抗できると考 えられる。 したがって、隣人と取得者の関係では隣人が所有権を取得時効している以上、裁判所の判決自 体を否定できないとしても、競売を実行した場合は、協会の根抵当権は当該隣人に対抗できるも のと思われる。 3.時効完成前に抵当権が設定された場合 時効成立前に抵当権が設定されているケースについては、対抗関係に立たないので、抵当不動 産の第三取得者に民法 397 条の適用があるかどうかによって結論が異なることになるが、この点 については学問上争いがある。 判例は、かつて、抵当不動産の買主が抵当権の存在を承認してこれを占有するときは、抵当権 は消滅しないとしているが(大判昭和 13 年 2 月 12 日判決全集 5 輯 6 号 8 頁)、後に、抵当不動産

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の第三取得者が買った当時抵当権の設定を知っていたか否かを問わず取得時効の要件を満たして も抵当権は消滅しないとしている(大判昭和 15 年 8 月 12 日民集 19 巻 1338 頁)。その一方で、民 法 162 条(所有権の取得時効)の適用に関して、第三取得者が抵当権の設定を知り、または不注 意により知らなかった場合でも、善意・無過失の占有者といえるとした判例もあり(最判昭和 43 年 12 月 24 日民集 22 巻 13 号 3366 頁)、これは抵当不動産の第三取得者に民法 397 条の適用があ ることを前提としているようにも解釈できるので、注意を要する。 (所有権の取得時効) 第 162 条 20 年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その 所有権を取得する。 2 10 年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の 開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。 上記大判昭和 15 年の判例を前提とすれば、時効完成前に抵当権が設定された場合についても、抵 当権が消滅していないことを争う余地は十分にあると考える。ただし、その場合でも、所有権承継 人(第三取得者)ではなく純然たる第三者(本件のような隣人による占有等)については、なお民 法 397 条の適用があり、抵当権が消滅するとの議論がある。

参照

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