講演
1
概 要 ABSTRACT NHK では,スーパーハイビジョン(4K・8K)放送の早期普及 に向けて策定された「ロードマップ」を踏まえ,2016 年の試験 放送開始を目指し,コンテンツ制作から送出・送信装置,受信 装置に至る 8K スーパーハイビジョン(8K)設備の開発・整備 を進めている。4K・8K 放送を実現する高度 BS(Broadcasting Satellite)デジタル放送方式では,大容量映像を効率よく伝 送する新しい 映 像 圧 縮 符 号 化 方 式 HEVC(High Efficiency Video Coding)や,放送と通信が連携した多彩なサービスを可 能とする多重化方式 MMT(MPEG Media Transport)などの 最新技術が採用されている。現在,これらの新しい技術を用い た 8K 送信・送出装置,および受信装置の開発を進めている。 また,制作設備の整備に関しては,8K の特徴を生かした魅力 的なコンテンツを制作できるように,機動性の向上や効率的な 制作環境の構築に重点を置いている。具体的には,3,300 万 画素単板式小型 8K カメラや,高速・大容量メモリーを採用した 小型圧縮録再機を新規に開発した。また,現在,8K 編集室や 音声編集室などの局内設備に加え,最大 10 台のカメラを搭載 できる 8K 中継車や,22.2ch 音響だけでなく,ステレオや 5.1ch 音響の制作にも対応した音声中継車の整備も進めている。本講 演では, 2016 年の試験放送に向けたこれらの取り組みを中心 に,現在の 8K 設備の開発・整備状況を紹介する。Based on the Super Hi-Vision (4K. 8K) “Roadmap”, which the Ministry of Internal Affairs and Communications has been working with relevant parties to draw, NHK is pushing forward with the development and installation of 8K facilities, from content production to transmission, broadcasting and reception. Advanced wide band digital satellite broadcasting system incorporates the latest technologies in order to realize 4K and 8K broadcasting. This includes HEVC (High Efficiency Video Coding), a new compression standard for efficient transmission of high bit-rate video, and MMT (MPEG Media Transport), a multiplexing technology enabling innovative new services that merges broadcast and internet. Using these new technologies, we are developing 8K transmission and broadcasting equipment as well as 8K prototype receivers. From the production side point of view, our focus with the development and installation is on improving agility and constructing an efficient production system so that producers can create fascinating content with the best of 8K features. For example, we have developed a compact, 33 megapixel single-chip 8K color camera and a compact recorder/player with signal compression using high-speed, high-capacity memory system. We are also constructing 8K editing and audio mixing studios, 8K OB-Vans capable of maximum 10 cameras, and 22.2 multi-channel audio OB-Vans that are compatible with conventional stereo and 5.1 surround audio production. This lecture aims to share the latest developments of 8K equipment and facilities, especially in view of the 8K test broadcasting coming up next year.
2016年試験放送に向けた
8Kスーパーハイビジョン設備整備
NHK技術局スーパーハイビジョン開発部 部長
三谷公二
Development and Installation of 8K
Super Hi-Vision Facilities in View of the
Test Broadcasting in 2016
Kohji MITANI
Head of Super Hi-Vision System Design & Development
Division
1.はじめに
NHKでは,放送技術研究所を中心として,1995年からハイビジョンに続く次世代放送 システムの研究開発に着手し,4Kの試作・開発1)を経て,ハイビジョンの16倍の画素数 を持つ8K映像と22.2マルチチャンネル音響(以下,22.2ch音響)を最上位フォーマット(以 下,8K)とした「スーパーハイビジョン」の仕様検討,機器開発,および標準化を推進 してきた。2012年に,8K映像信号の仕様がITU(国際電気通信連合)で国際規格として 承認される2)とともに,ロンドンオリンピックにおいて,日英米3か国で実施した8Kパ ブリックビューイング(PV:Public Viewing)が成功を収めた。 これらの成果を節目として,8Kは研究・開発段階から実用化・普及促進段階に入った と考えている。2012年以降,総務省を中心として4K・8K放送の早期普及に向けたロー ドマップの策定が進められている。2014年9月には,中間報告として,「2016年には放 送衛星を使って4K,8Kの試験放送を開始し,2018年までに可能な限り早期にBS等にお いて4K,8Kの実用放送を実施する」という目標が公表された3)。並行して,放送事業者 や受信機メーカー,通信関連事業者が参加する一般社団法人 次世代放送推進フォーラム (NexTV-F)4)が2013年5月に設立され,オールジャパンによる推進体制が整えられた。 このような周囲状況の中で,NHKでは,2016年の試験放送開始を目指し,コンテンツ 制作から送出・送信,受信装置に至る8K設備の開発・整備を進めている。本講演では, あと1年に迫った2016年の試験放送開始に向けた取り組みを中心に,現在の8K設備の開 発・整備状況を紹介する。2.8K放送のロードマップ
1図に,総務省を中心とした「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合」の 中間報告において報告された4K・8K放送のロードマップ5)を示す。先に述べた2016年の 試験放送,2018年までの実用放送に加え,東京オリンピック・パラリンピックの開催年 である2020年へ向けて4K・8K放送が普及し,多くの視聴者が市販のテレビで4K・8K番 組を楽しんでいる姿を目指すことが示されている。NHKでは,このロードマップを踏ま えて,2016年には8Kの試験放送を開始し,2018年までに実用放送,2020年の東京オリン ピック・パラリンピックの開催年には本格普及を目指すという目標を立てて準備を進めて いる。 1図 4K・8K放送のロードマップ ※1 Communications Satellite ※2 Video on Demand 総務省「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合」第5回資料より 2014年 2015年 2016年 2018年 2020年 ケーブル テレビ 〈目指す姿〉 ・ 東京オリンピック・パラリ ンピックの数多くの中継 が4K・8Kで放送されて いる。 ・ 全国各地におけるパブ リックビューイングによ り,東京オリンピック・パ ラリンピックの感動が会 場のみでなく全国で共有 されている。 ・ 4K・8K放送が普及し, 多くの視聴者が市販の テレビで4K・8K番組を 楽しんでいる。 衛星 CS ※1 4K試験放送 (124/128度CS) 4K試験放送 4K VOD※2 トライアル 8Kに向けた実験的取組 8Kに向けた実験的取組 4K試験放送 4K VOD実用 サービス 4K実用放送 (124/128度CS) 4K実用放送 4K実用放送 4K・8K 試験放送 (衛星セーフティネット 終了後のチャンネル) 4K・8K 実用放送 (可能な限り早期に) BS IPTV等3.8K放送システム
2図に,整備を予定している8K放送設備の全体系統図を示す。まず,8Kの臨場感ある 映像と音声を視聴者のみなさまにお届けするために,高品質なライブ中継やコンテンツ制 作ができる環境を整備していく。具体的には,スポーツや音楽コンサート・ステージなど をイベント会場から生中継できる系統と,ドラマや自然・紀行番組などのロケやスタジオ 収録を行い,ポストプロダクションなどの編集作業を経て,完成した番組を送出する系統 を実現する。 設備整備のスケジュールとしては,試験放送が始まる2016年までに,生中継や収録番 組の放送を可能とする,2図の太枠で囲ったシステムの整備を進める。また,2016年の 試験放送をできるだけ多くの方にご覧いただけるように,受信装置についても試作を進め ている。スタジオ設備や伝送設備に関しては,すでにいろいろな技術テストを開始してい るが,本格的な設備整備は,実用放送段階のサービスイメージに合わせて,2016年以降, 順次進めていく予定である。 3図に,2020年までの設備整備の概要(ロードマップ)を示す。図に示すように,大 きく2つのフェーズに分けて設備整備を進めていく。2016年までは,試験放送の開始に ※1 CS 中継車 ※2 Field Pickup Unitスタジオ設備 アーカイブ 伝送設備 制作設備 FPU※2 CSK※1 ヘリ 映像/音声中継車 カメラ マイク サーバー 保存メディア 編集設備 送出設備 送信設備 リビング・ ホームシアター パブリックビューイング 2016年までに 整備予定 2016年以降, 整備検討 3図 8K設備整備のロードマップ 2図 8K放送設備 年 (H25)2013 (H26)2014 (H27)2015 (H28)2016 (H29)2017 (H30)2018 (H31)2019 (H32)2020 イベント ソチ冬季五輪 サッカーW杯 リオ五輪 サッカーW杯平昌冬季五輪 東京五輪 放送 試験放送 実用放送 整備の考え方 放送設備 試作受信装置 受信装置開発 PV設置 〈実用放送・東京オリンピックに向けた準備〉 ・放送サービスに沿った設備整備 ・機材の低廉化/性能向上 〈試験放送に向けた準備〉 ・機材の小型化 ・8K制作ワークフロー検討 送出・送信設備 映像・音声編集設備 制作設備 小型カメラ・音声ロケ機材 映像,音声中継車 性能向上,小型低廉化,式数増 設備開発(スタジオ設備,伝送設備など) 市販受信機 低廉化・普及 実用放送に向けた補完整備
講演 1 向け,機材の小型化を推進するとともに,映像,音声編集室など8Kコンテンツの制作作 業に欠かせない設備を開発する。2016年以降は,実用放送や2020年の東京オリンピック・ パラリンピックに向けて,設備整備の拡充と,解像度改善や広ダイナミックレンジ対応, 高フレームレート化など,機材の更なる性能向上を図る。
4.設備整備の方針
8Kの設備整備は,以下のような方針に基づいて進めている。 〇2016年の試験放送開始に向けた,送出・送信設備,受信設備の着実な開発・整備 〇多彩な番組制作を可能にする,機動性の高い制作設備の実現 〇制作時間の短縮など,効率的なコンテンツ制作に向けた,設備の機能・性能の向上 〇映像・音声中継車など,局外制作設備の強化 現在,2016年の試験放送開始という間近に迫った目標を実現できるように,送出・送 信設備の開発に注力している。さらに2016年以降も,実用放送や東京オリンピック・パ ラリンピックを見据え,より多機能で安定した放送システムの構築に向け,追加機能や迂う 回 かい 系などの補完整備を計画している。 また,幅広いジャンルの8Kコンテンツ制作を可能にするためには,制作設備の高性能化, 高機能化にも継続して取り組む必要がある。従来,8Kのカメラや収録機器は,高データレー トの映像・音声信号を扱うため,システム規模が大きく機動性に欠けていた。実用化に向 けた制作機器の開発では,多彩な番組制作を可能とするために,機動性の向上に重点を置 き,小型化,低消費電力化を進めている。 ポストプロダクション(撮影終了後に行われる編集のための作業)においては,膨大な 作業時間をかけずに,高品質のコンテンツを制作できる環境を目指して,映像編集室や音 声編集室の整備を進めている。映像編集室では,HD(High Definition)信号に変換した 映像素材を使ったオフライン編集(小規模な編集機材で行う仮編集)の編集データを活用 し,必要な8K素材を効率よく編集機に取り込む工夫を取り入れた。また,音声制作シス テムに関しては,22.2ch音響だけでなく,ステレオや5.1ch音響の制作にも対応できるよ う設計している。 臨場感や没入感などの8Kの特徴を生かせる放送サービスの1つとして,スポーツやコ ンサート,イベント等のライブ中継が挙げられる。このような放送局外でのコンテンツ制 作機能をより充実させるために,最大10台のカメラを搭載できる映像中継車や,車内に 22.2ch音響の制作環境を実現した音声中継車の開発を進めている。 以下では,これらの方針に沿って整備した(または開発中の)主な設備,および機材を 紹介する。5.送出・送信設備,および受信装置
送出・送信設備に関しては,電波産業会(ARIB:Association of Radio Industries and Businesses)で策定された高度広帯域衛星デジタル放送に関連する標準規格や, NexTV-Fで策定作業が進められている運用規定に沿って開発を進めている。8K試験放送 用の送出・送信設備の全体構成図を4図に示す。
この構成は,BS17chを使って8K放送1番組または4K放送2番組のマルチ編成の放送 が可能な構成であり,音声は同時に22.2ch,5.1ch,2ch(したがって最大32ch)の信号
1表 8K放送の情報源符号化方式 映像 項目 仕様 空間解像度 7,680 × 4,320 3,840 × 2,160 アスペクト比 16 : 9 クロマフォーマット 4 : 2 : 0 ビット深度 10 走査方式 順次走査 フレーム周波数(Hz) 60/1.001 表色系 広色域(ITU-R勧告BT.2020) 圧縮方式 HEVC/Main10※ 音声 項目 仕様 音声モード 22.2ch,5.1ch,2ch サンプリングレート 48kHz 量子化ビット数 16ビット,24ビット 圧縮方式 MPEG-4 AAC ※10ビット階調に対応したプロファイル が伝送できる設備仕様である。本線の送出部分を8K設備で構成し,4K信号はアップコン バーター(UC),ダウンコンバーター(DC)を通して入出力することで,映像信号のルー ティング(信号経路の切り替えや素材選択など)を8K信号で統一的に行うことができる。 また,映像や音声サービスのほかに,さまざまなマルチメディアサービスを実施する ための機能も準備している。すでに電子番組ガイド(EPG:Electronic Program Guide) や字幕・文字スーパーの機能の開発に着手した。今後は,データ放送サービスやコピープ ロテクト機能も順次開発整備していく予定である。
8K放送では,大容量かつ高品質の映像・音声情報を効率よく放送するために,情報源 符号化方式としてHEVCやMPEG4(Moving Picture Experts Group-4)AAC(Advanced Audio Coding)などの新しい方式が採用されている(1表)。また,新しく開発された多 重化方式MMTや最新ブラウザー(HTML5:Hyper Text Markup Language)5)などの
技術も導入されている。これらを規定する標準化文書に沿って,放送と通信が連携したデ
FS : Frame Synchronizer UC : Up Converter DC : Down Converter
EPG : Electronic Program Guide RMP : Rights Management and Protection 制御装置 その他 (スーパー発生等) EPG 送出部 字幕・文字スーパー データ放送・RMP 4K符号化装置 4K符号化装置 本線 送出マトリックス 8K符号化装置 FS UC DC DC 監視系 装置 復号化装置 変調器 復調器 多重化装置 ア ッ プ リ ン ク B S 8K再生機 :設備整備検討中 送出制御 編成情報・EPG入力 8K番組 取り込み 4K番組 取り込み 4K再生機 8Kモニター 8K局外回線 8K 4K 4図 8K試験放送用 送出・送信設備の全体構成図 5図 薄型化,小型化が進む8Kモニター (a) 13.3インチ (b) 55インチ (c) 85インチ 側面
講演 1 項目 仕様,または性能 撮像方式 3,300万画素単板カラー撮像方式 レンズマウント PLマウント※1 感度 F5.6※2 @ 2,000 lux S/N (HDへのダウンコンバーター出力)約 60 dB ダイナミックレンジ 200 %※2 以上 限界解像度 4,000 TV本 以上 サイズ (mm) カメラヘッド:W168 x H228 x D395CCU※3:W482 x H222 x D478 重量 (kg) カメラヘッド:8.2CCU:30 以下
消費電力 (VA) (ヘッド,CCU,4K-VF400 ※4,OCP※5を含む)
項目 仕様,または性能 撮像方式 3,300万画素単板カラー撮像方式 レンズマウント PLマウント 感度 F5.6※1 @ 2,000 lux S/N (HDへのダウンコンバーター出力)約 60 dB ダイナミックレンジ 200 %※1 以上 限界解像度 4,000 TV本 以上 サイズ (mm) カメラヘッド: W130 x H220 x D406 (光ケーブル仕様) W130 x H220 x D350 (カムコーダー仕様※2) CCU:W482 x H133 x D400 重量 (kg) カメラヘッド:3,収録ユニット:3,光複合ユニット:3 消費電力 (VA) 550(ヘッド,CCU,4K-VF,OCPを含む) ※1 映画撮影カメラ用に開発されたレンズマウント ※2 F5.6と200%は,暫定的な設定値 ※3 Camera Control Unit ※4 4K Viewfinder ※5 Operation Control Panel
※1 暫定的な設定値 ※2 撮影部と録画部を一体化した仕様 カメラの外観 (a) ハンディカメラ(中継用) カメラの外観(カムコーダー仕様) (b) 小型カメラ(ロケ/特殊撮影用) ジタル時代にふさわしい多彩な放送サービスが可能な設備の構築を目指している。 一方,2016年の試験放送をできるだけ多くの方に楽しんでいただけるように,全国の NHK放送局に設置するパブリックビューイング用受信装置の試作も並行して進めている。 5図に示すように,8Kモニターの薄型化が進むとともに,小型モニターも開発されており, 受信部についても,最新技術を導入してできるだけ小型化を図っていきたい。
6.制作設備
実用化の段階では,機能や性能に加え,制作現場での検証結果や意見を反映した使いや すい機材を実現することが重要である。6図に,今回新しく開発したカメラの外観,およ び仕様を示す。これら2機種の8Kカメラは,現行カメラの改善点や,技研で開発した試 作カメラの制作現場における撮影テストの結果を反映した仕様となっている。 6図(a)はハンディタイプのカメラであり,4Kビューファインダーの搭載や,レンズ の色収差補正*1の自動化などの機能改善を図った。また,劇場中継にも使用できるように, 高感度化と併せて,作動時のファン騒音を1/4以下に低減する工夫をした。 6図(b)は,カメラヘッド部分(重量3kg)とその後部に取り付ける機能拡張ユニッ トから構成されるドッカブルタイプのカメラであり,幅広い撮影スタイルを可能にする。 機能拡張ユニットを変えることでカムコーダー*2や中継用カメラとして使用でき,ヘッ ド部分を分離してクレーンなどの先端に取り付けることも可能である。 録再機(録画・再生機器)に関しても,機動性や運用性を大きく改善した小型機材を開 発した。その外観,および仕様を7図に示す。従来の録再機では,8K映像を16枚のメモリー *1 レンズの屈折率が波長に応じ て異なるために生じる光学像 の色ずれを電気的な信号処理 により補正する方法。 *2 撮影部と録画部が一体化した ビデオカメラ。 6図 新規開発した8K単板カメラ(2機種)カードに記録する必要があったが,圧縮効率の改善と高速メモリーの採用により,4枚の メモリーカードで収録可能となった。その結果,本体を約1/3に小型化することができた。 また,メモリーからテープメディアにバックアップする装置も開発した。従来, メモリー からテープメディアにバックアップする時間は,収録したビデオ時間の約8倍の時間が必 要であったが,新しく開発した装置では,従来設備の半分以下の時間まで短縮することが できる。 その他,先述した開発方針に従って,できるだけ効果的で効率的な制作システムを構築 できるように,8Kと4K/HD間の映像信号が相互に変換できる機材の開発・整備も進めて いる6)。 項目 仕様 映像 入出力信号 フォーマット 入力: 8K映像 3G-SDI※1 x 8 (8Kデュアルグリーン信号) 出力: 8K映像 3G-SDI x 8(8Kデュアルグリーン信号) 出力: 4K映像 3G-SDI x 4 出力: HD映像 HD-SDI 圧縮方式 AVC※2-Intra4K/10bit 収録媒体 8K映像 :メモリーカード x 4HD映像:メモリーカード x 1 音声 入出力信号 SDIエンベデッド/ MADI※3(最大32チャンネル) 収録時間 最大 65分 (256GBカード x 4) 機能 ジョグ操作によるスロー/早送りなど バックアップ方式 専用ツールによりLTO※4テープに保存 サイズ (mm) W424 x H176 x D500 重量 (kg) 18 (本体のみ) 消費電力 (W) 152 項目 仕様 映像中継車1 映像中継車2 車両 全長11.9m,車高3.3m,片側拡幅機能 最大車載機材 カメラ10台,録再機4台,スロー再生機4台 スイッチャー 映像合成ユニット 1式入力数 16 映像合成ユニット 2式入力数 20 ※1 Serial Digital Interface ※2 Advanced Video Coding
※3 Multi-channel Audio Digital Interface ※4 Linear Tape-Open 従来機 開発機 7図 8K小型圧縮録再機 8図 8K映像中継車 サイズ: 約1/3 消費電力: 1/2以下 拡幅部(スロー再生など) 制作室 調整室 ※イメージ
講演 1 項目 仕様 音声卓 入出力チャンネル数:最大640 フェーダー数:50 (最大90) 3次元パンニング装置付 音声モニター 22.2chスピーカー配置 映像モニター 4Kプロジェクター/音響透過型スクリーン 収録装置 64ch MADIレコーダー192ch DAW※ 車両サイズ (m) W2.5 x H3.5 x D11.5 車両総重量(t) 約 20 電源容量 (A) (外部供給) 機器用:150 (100 ~ 240V対応) 空調用・雑用:100 (100/200V対応)
※ Digital Audio Workstation 22.2ch対応音声中継車(SA-1) (a) 外観,および仕様概要 (b) ミキシング室のレイアウト 拡幅部 音声卓 2.1m 音声卓 ミキシング室の様子
7.局外設備の整備
映像中継車は,現在のHDと同様の規模で中継ができるように,最大10台のカメラが搭 載できる中継車を2台開発中である。16入力以上の8Kスイッチャーを採用することで, 車載できるカメラの台数,およびスロー再生装置などの特殊効果装置の台数を増やしてい る。8図に8K映像中継車の外観と仕様を示す。車載機材量が増えるため,全長11.9mの大 型中継車となっている。また,制作室は片側に拡幅できる機能を持ち,スロー再生装置の 操作担当者などのスペースも確保した。現在,2015年秋の運用開始を目指して整備を進 めている。 音声中継車は,中継先でも22.2ch音響にふさわしい制作環境を確保するために,全長 11.5m,幅2.5mの大型車両をベースに,NHKの中継車としては初めての高さとなる車両 高3.5mを採用した(9図(a))。さらに両側拡幅機能により水平方向にも作業空間を広げ, 操作者を中心にして,半径2.1mの球面上の位置にスピーカーを配置した22.2chミキシング ルームを実現した(9図(b))。本中継車は,22.2ch音響だけでなく,5.1ch音響やステレ オ音声の制作も可能な仕様となっており,幅広い音声制作に活用できる。8.今後の設備整備と課題
2016年以降,東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を見据えて,さ らに充実した設備整備を進めていく。今後,8K放送の本格的な普及に向けて,実用放送 以降のロードマップ具現化の議論が総務省を中心にオールジャパンで進むものと予想さ 9図 音声中継車れる。その議論の進展に応じて,設備規模の検討や新たな機器・システムの開発が必要 になると考えている。例えば,マラソンなどのロードレースを中継できる8K衛星中継車 (8K-CSK)や8K無線中継伝送装置(8K-FPU),各会場からの映像を切り替えながら番組 を進行していく8Kスタジオなどが挙げられる。これらの設備整備に際しては,大容量デー タを遅延なく伝送する方式や使用周波数,スタジオ収録におけるカメラポジションや画角 などを踏まえ,8K制作に適した仕様を検討する必要がある。 また,制作システムのさらなる性能改善も大きな課題の1つである。現在のシステムは, 8K映像を色チャンネルごとに4枚(GGRB:緑緑赤青)の4K映像として取り扱うインター フェースを採用している。水平・垂直方向の解像度を確保しつつ,効率的に8K信号を伝 送する方式であるが,斜め方向の解像度が水平・垂直に比べて若干不足する特性を持つ。 2016年以降は,1表に示した放送方式のフォーマットも考慮し,より高画質な8K信号(8K/ YCbCr 4:2:2)*3インターフェースに置き換えていく。さらに広ダイナミックレンジ(HDR:
High Dynamic Range)化など新たな機能の導入も検討しており,できるだけ早い段階で の実用化を図っていきたい。 最後に,8Kの普及に向けて,システムおよび機材の多様化と低価格化が重要になる。 ハイビジョンの実用化では,平成3年の試験放送を機に,数千万円していた受信機が400 万円前後となり7),普及に弾みがついた。8Kにおいても,試験放送開始とともに関連機 材の出荷台数が増え,低価格化が進むものと期待している。これに加えて,常にコストを 意識しながら機器開発を進め,HDや4K,情報通信技術などをうまく活用することによっ てさらなる低価格化を図っていきたい。
9.まとめ
2016年の試験放送に向けた設備を中心に,8Kの設備開発状況を紹介した。多彩な番組 制作を可能にする機材の開発に取り組み,新型カメラや小型圧縮録再機など,小型化と 高性能化を進めてきた。今後は,より多くの制作者が8Kの制作に携わっていけるように, 機材の普及促進を図っていきたい。また,送出・送信設備の開発は,規格や運用規定など 標準化文書の策定と並行して進めている状況である。これから1年間の作業は,これまで に開発してきた個々の機器の結合試験やシステム検証が中心となる。効率的に作業を進め るためにも,確実な工程管理を行い,世界初の8K放送システムを開発していく。そして, 2016年の試験放送開始時には受信装置を全国に設置し,多くのみなさまに8K放送を楽し んでいただける環境を構築する。 さらに,8K放送の普及促進に向け,公共放送として先導的役割を果たし,2020年の東 京オリンピック・パラリンピックでは,最先端技術を使った放送システムで最高水準の放 送サービスを視聴者のみなさまにお届けしたい。 *3 Yは輝度 信号,Cb,Crは色 差信号を表す。色差信号の水 平および垂直の画素数が輝 度信号と等しいものを4: 4: 4,水平方向に半分に間引い たものを4: 2: 2,水平方向 と垂直方向ともに半分に間引 いたものを4: 2: 0と呼ぶ。講演 1
三
み谷
た に公
こ う二
じ 1987年入局。放送技術研究所において,画像処 理,放送用テレビカメラの研究,ハイビジョンカ メラの小型化,スーパーハイビジョンカメラの開発 などに従事。2010年から技術局において,スーパー ハイビジョン実用化システムの開発・整備を担当。 番組施設部副部長,計画部副部長,技術局開発 推進専任部長を経て,現在,スーパーハイビジョ ン開発部部長。博士(工学)。SMPTEフェロー。 参考文献1)K. Mitani et.al. :“A 4K×2K-Pixel Color Image Pickup System,”IEICE Transactions,Vol.82, No.8,pp.1219-1227(1999)
2)Rec. ITU-R BT.2020,“Parameter Values for Ultra-high Definition Television Systems for Production and International Programme Exchange”(2012)
3)総務省:“4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合中間報告(平成26年9月),”http:// www.soumu.go.jp/main_content/000347948.pdf
4)次世代放送推進フォーラムホームページ,http://www.nextv-f.jp/
5)総務省:“4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合(第5回会合)配布資料,”http:// www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/4k8kroadmap/02ryutsu11_03000039.html
6)例えば,Ichikawa et.al.:“Development of Super Hi-Vision (8K) Baseband Processor Unit “BPU- 8000”,”SMPTE Conf. Proc., October 2014(2014)