斜面地住環境整備事業によるモビリティ環境の改善効果と評価に関する研究-北九州市丸山・大谷地区におけるケーススタディ- [ PDF
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(2) これを受け、北九州市は当地区の住環境改善を目的. 以上に鑑みて、本研究の具体的内容を以下に示す。. として平成 9 年度より整備計画策定を進め、平成 12. ①当事業で整備が行われた EV4 基と新設道路 2 路線に. 年度より部分改善型の整備に着手した。その内容は、. より、交通基点から住宅までの「歩行負担量」がいか. 重点整備区域ではコミュニティ住宅の建設と斜面移動. に軽減したか事業前後の変化量から捉える。さらに、. 支援システム(垂直エレベーター 4 基とそれらを繋ぐ. 負担量が軽減される住宅分布を示し「整備施設の想定. 連絡通路、以下 EV と表記)、新設道路の整備、存置. 利用圏域」として表す(3 章)。. 区域では生活道路の補修や転回広場の設置などを行う. ②対象地区におけるモビリティ環境の実態を把握する. もので、平成 24 年度に事業の完了を迎えた ( 図 1)。. ため、EV 利用世帯の居住圏域と日常生活の移動経路. 2-2. 研究の位置づけ. に関してヒアリング調査を実施する(4 章)。. 斜面地の歩行負担を捉えるためには、出発地点から. ③整備施設の想定利用圏域と、実態調査から得られた. 目的地までの水平方向と垂直方向の移動を考慮しなけ. 結果を照合し検証を行う。最後に、歩行負担量による. ればならない。これに対し佐藤ら参 1)は地域施設配置. 住環境評価指標の有効性と課題を示した上で、今後の. 計画の視点から、歩行経路上の傾斜角や階段道による. 斜面地住環境整備事業のあり方を考察する(5 章)。. 身体的負荷と年齢による歩行能力の差異を勘案した. 3. 交通手段別にみる移動負担の軽減と効果が及ぶ圏域 交通手段別に基点を設け、事業前後(平成 12-24 年). 「代謝的換算距離」の指標を開発している。 参 5). 丸山・大谷地区を対象とした既往研究. における歩行負担量の推移を捉える。解析に用いた. において. は、この「代謝的換算距離」の指標を用いて整備事業. GIS データベースの構成を図に示す(図 3)。. の前後における宅地から生活利便施設までの最短経路. 3-1. 公共交通機関までの徒歩移動を想定したケース. を算出し、その経路の重複を「利用頻度」とみなして. 住宅から主要な公共交通機関までの徒歩移動を想定. 整備を行う路線の優先度を明らかにした。. し、平地に位置するバス停(1 箇所)に基点を設けて. しかしながら、階段道で生じる身体的負荷に一定. 歩行負担量の算出と経路解析を行った(表 1)。. の数値を与える従来の代謝的換算距離の算定式では、. 平成 12 年時点における平均歩行負担量は、地区全体. 斜面地に多くみられる勾配が大小異なる階段道の歩行. で 751m、山手線下側で 584m、上側で 1062m 相当となる. 負担を捉えることができないという課題が残された。. 結果が得られた。歩行負担量が最大となる箇所は 6 町. そこで本研究では、従来の代謝的換算距離を基本とし、. 会で 1800m に及び、移動距離と時間から地域施設利用. 階段勾配に応じ相対的補正値を掛ける「歩行負担量」. 圏域の目安とされる上限の 800m 圏域参 4)を上回る。. の指標を新たに提案し、整備事業によるモビリティ. これに対し、平成 24 年時点における歩行負担の平. 環境の改善効果を検証する評価軸と据えた(図 2)。. 均軽減量は地区全体で 47m、山手線下側で 20m、上側で. ① 代謝的換算距離の定義式(佐藤らによる). M=P×. GISデータベースの構成. ri+1.2 S × S0 r0+1.2. 代謝エネルギー. P. θ. 【H12年】. l. 本研究においては地区内平均年齢の 歩行速度を用いるため、1 となる. 【H24年】. ri = 3.113e4.614i. ② 階段道の勾配変化によって「代謝的換算距離」に掛ける相対的補正値 既往研究では勾配 25% を超える傾斜はすべて階段道であるとみなし、歩行によるエネルギー消費率を 表す RMR 値に定数 (=10) を与え代謝的換算距離の算出を行っている。しかし、本研究の対象地区である 丸山・大谷地区は道路平均勾配 13%( 約 7 度 )、階段道は平均 25%( 約 14 度 )、最大傾斜は 60%( 約 31 度 ) を超える斜面地であり、勾配が大小異なる全ての階段道に RMR 値として定数を与える算定式は適さない。 そこで本研究では、従来の算定式によって得られる階段道の代謝的換算距離の数値に対し、地区内階段道 の平均勾配 25%を基準値として、平坦道の歩行で勾配の変化によって生じる RMR 値の比を乗じることで、 階段道の歩行により発生する身体的負担を連続的な量として捉えることにした。. ③ 本研究における階段道の「歩行負担量」. B=P×. RMR値 勾配i%で生じるRMR値 ri = 3.113e4.6416i 60. 10+1.2 ri × r0+1.2 r25. 従来の算出式. 848戸分. RMR 値 ( 代謝エネルギー率 ) の算定式. M : 代謝的換算距離 ri: 勾配 i% での RMR 値 S0: 基準歩行速度 (4m/s) P : 経路距離 r0: 勾配 0% での RMR 値 S : 各年齢層ごとの歩行速度. 階段道に与えられる RMR 値 ( 定数 ). 以下のように GIS データベースを構築した上で、 経路解析ソフト Network AnaLyst によって交通 結節点~住宅間の最小歩行負担量と経路を算出。. バス停と駐車場を 交通基点として設定した. 【H12年】 【H24年】. 【H12年】. 935戸. 40. 792戸 (520棟). 負担量の算出を 行う階段道の勾配. 10. 階段道の平均勾配25% 平均勾配の RMR 値に 0 対する勾配 i% の RMR 値 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 勾配. 例えば、勾配 30%の階段道では従来の代謝的換算距離と比較して 1.26 倍、60%では 5.03 倍、逆に平均 勾配を下回る勾配 15%の階段道では 0.63 倍の補正値が掛かることになる。 以上によって得られる数値を「歩行負担量」と定義し、歩行による移動負担を捉える評価軸とする。. 図 2 代謝的換算距離をもとにした「歩行負担量」の算定式. 属性テーブル No. 平面距離 標高差 1 ○○m ○m 2 □□m □m 3 △△m △m. 勾配 ○% □% △%. 1455路線 道路中心線レイヤ. 50. 20. 負担量 ●●m ■■m ▲▲m. 辻ごとにセグメントを設定 して、両端に標高を入力. (684棟) 【H24年】. 30. No. 換算距離 補正値 1 ○○m ○% 2 □□m □% 3 △△m △%. 704戸分 経路解析レイヤ. 1580路線 前面道路 取りつき. 属性テーブル. 属性テーブル No. エリア 1 ○○町会 2 □□町会 3 △△町会. 空家 在住 在住 不在. 建て方 共同建て 戸建て 長屋建て. 建物レイヤ. 道路形状、地形. 標高点. 画地(宅地、駐車場、菜園など) 町会の境界線(全12町会) ※本研究ではマンション1棟(88戸)から 構成される丸山2-3町会は対象外とした. ベースマップレイヤ 図 3 本研究で用いた GIS データベースの構成. 41-2.
(3) 99m 相当となり、特に重点整備区域に位置する丸山. 表 1 公共交通機関利用ケースの歩行負担量の推移と想定利用圏域 歩行負担量 (m). 5 町会では新設道路 4 号線と EV1-4 号基の整備効果に. エリア 1-1. よって最大 319m 相当の負担量軽減がみられた。 山手線下側. 次に、新設道路 2 路線と EV4 基の利用によって事業 の前後で歩行負担量が軽減した住戸数をみると、地区 全体の 792 戸に対し 38% の 268 戸で整備効果が現れて いる。特に EV4 号基から 2 号基まで乗り継ぐことで 整備施設の想定利用圏域が最も広範囲に及ぶ。 一方、新設道路 2 号線によって歩行負担量が軽減. 山手線上側. 歩行負担量が軽減する住戸数は 91 戸(11.5%)となり、. 事業前 事業後 軽減量 730.7. 719.8. 0.0. -21.0 744.0 (-133.7) -63.5 787.7 (-137.2). 1-2. 768.4. 1-3. 823.3. 2-1. 570.6. 539.0. 2-2. 374.4. 341.7. 3-1. 515.4. 3-2. 439.3. 430.4. -8.4. 小計. 584.0. 553.1. -19.9. 4. 1003.5. 5 6. の面ではあまり大きな効果が得られていない。また、. コミュ住. した住戸数は 12 戸(1.5%)であり、歩行負担量軽減 存置区域に位置する丸山 1-1 と大谷 2 町会は整備施設. -7.7 (-113.7) -88.5 442.4 (-247.1) 12 2.8%. 894.6 -107.9. -250.6 731.8 (-318.8) 1183.9 1044.0 -139.8 (1801.6) 908.1. 1062.1 1005.0. 1棟 2棟 3棟 4棟 小計. 地区全体. の想定利用圏域外となり改善効果は現れていない。. 5 9.6% 7 15.6%. -8.4. 大谷 2 1251.0 1254.3 小計. 整備施設の想定利用圏域 ( 整備効果の及ぶ住宅 ) 4 号線 EV1-4 EV2-4 EV3-4 EV4 影響なし EV1-4 74 100.0% 12 35 23.1% 67.3% 27 11 60.0% 24.4% 4 54 6.9% 93.1% 3 7 77 1 3.4% 8.0% 1.1% 87.5% 8 2 6 14 26.7% 6.7% 46.7% 20.0% 3 70 9 3.7% 11.0% 85.4% 0 0 57 9 24 327 0.0% 0.0% 13.3% 2.1% 5.6% 76.2% 38 13 37 43.2% 14.8% 42.0% 18 7 9 52.9% 20.6% 26.5% 1 26 3.7% 96.3% 72 100.0% 57 33 22 0 109 0 25.8% 14.9% 10.0% 0.0% 0.0% 49.3% 18. 2 号線. 0.0 -98.6. -. 475.1. -. -. 422.5. -. -. 398.4. -. -. 239.0. -. -. 393.9. -. 750.6. 705.5. -46.7. 0 0.0%. 12 12. 12 12. 12 1.7%. 18 51 7.2%. 57 8.1%. 12. 12 12 12 54 91 21 36 436 704 12.9% 3.0% 5.1% 61.9% 100.0% ※上段:住戸数 ( 戸 )/ 下段:構成比 (%). 表 2 自家用車利用ケースの歩行負担量の推移と想定利用圏域 歩行負担量 (m). エリア. 自家用車の利用を想定し、宅地から最も近い駐車場. 1-1. (平成 12 年 :36 箇所、平成 24 年 :50 箇所)に基点を 山手線下側. 設けた。なお、このケースでは自宅敷地内に駐車可能 な住戸の歩行負担量は 0m と設定した(表 2)。 事業の前後で宅地利用の更新やコミュニティ住宅の 整備によって駐車場が増加したこともあり、歩行負担 上側で 30m 相当となり、特に丸山 5 町会では新設道路 1 号線と付随する駐車場の整備効果によって最大 242m 線が整備された丸山 1-2、1-3 町会では、道路に近接 する空宅地が駐車場となった相乗効果により 130 ~ 148m 相当の負担量軽減が生じた箇所もある。 ↑上方の 5 戸まで 新設道路 4 号線 と EV を利用. 整備施設の想定利用圏域 ( 整備効果の及ぶ住宅 ). 事業前 事業後 軽減量 34.8. 33.6. 128.5. 1-3. 167.0. 2-1. 111.8. 108.7. 2-2. 77.6. 62.6. EV 各基. 3 5.8% 10 22.2%. -1.4 7 8.0% 2 6.7%. -8.0 (-48.6) -4.5 30.6 (-50.4). 3-1. 61.1. 3-2. 137.1. 126.3. -11.3. 小計. 99.4. 85.3. -12.3. 4. 152.1. 137.5. -13.9. 5. 181.2. 106.3. -69.5 (-242.3). 6. 4 号線. -4.7. -24.6 100.9 (-130.6) -39.1 128.2 (-147.6). 1-2. 2 号線. 386.4 379.0 (1007.2). 13 3.0%. 0 0.0% 4 4.5% 15 44.1%. 9 2.1%. -7.2. 宅地更新 13 17.6% 14 29.6% 26 57.8% 1 1.7% 22 25.0% 1 3.3% 17 20.7% 94 21.9% 26 29.5% 23 85.2% 29 40.3% 78 35.3%. 影響なし 61 82.4% 74 67.3% 9 20.0% 57 98.3% 59 67.0% 27 90.0% 65 79.3% 313 73.0% 58 65.9% 19 55.9% 4 14.8% 43 59.7% 124 56.1%. 74 100.0% 52 100.0% 45 100.0% 58 100.0% 88 100.0% 30 100.0% 82 100.0% 429 100.0% 88 100.0% 34 100.0% 27 100.0% 72 100.0% 221 100.0% 18. 179.1. 136.3. -38.6. 小計. 191.8. 161.8. -29.8. 1棟 2棟 3棟 4棟 小計. -. 136.1. -. 0 0.0% 18. -. 111.9. -. 12. -. 87.9. -. 12. 12. -. 62.7. -. 12. 12. -. 103.7. -. 113.9. 85.3. -18.3. 地区全体. 0 0.0%. 19 8.6%. 13 1.8%. 19 2.7%. ※数値はエリア平均値、( ) 内は最大値. 12. 54 54 63 172 437 704 8.9% 24.4% 62.1% 100.0% ※上段:住戸数 ( 戸 )/ 下段:構成比 (%). ↑上方の 14 戸まで EV4-2 号基を利用. 1 号基. 2 号基. 新設道路 2 号線. 3 号基. バス停からの最小歩行負担経路と 整備施設の想定利用圏域図(H24) 0. 4 号基. 交通基点 (バス停). 図 4 バス停を基点とした最小歩行負担経路と整備施設の想定利用圏域図. 41-3. 計. 大谷 2. コミュ住. 相当の負担量軽減がみられた。また、新設道路 2 号. 山手線上側. の平均軽減量は地区全体で 18m、山手線下側で 12m、. 新設道路 4 号線. 74 100.0% 52 100.0% 45 100.0% 58 100.0% 88 100.0% 30 100.0% 82 100.0% 429 100.0% 88 100.0% 34 100.0% 27 100.0% 72 100.0% 221 100.0% 18. 12. ※数値はエリア平均値、( ) 内は最大値. 3-2. 自家用車の利用を想定したケース. 計. 20. 50. 100m. 新設道路 2 号線を利用 新設道路 4 号線と EV 全基利用 EV1-4 号基を全基利用 EV2-4 号基を利用 EV3-4 号基を利用 EV4 号基のみ利用 整備施設を利用する移動経路. UP.
(4) 表 3 EV 利用登録の状況. 表 4 EV 利用者の歩行負担量推計結果と実際の歩行経路上で生じる負担量の比較. 想定利用. 利用登録. 圏域戸数. 世帯数. 1-2. 12. 1(1). A. 1-3. 27. 1(1). 2-1. 4. 2-2. 3. 3-1. エリア. No. エリア. 想定. EV の主な利用者 想定経路との一致. 利用施設. 年齢. 性別. 整備前. 整備後. 1-2. EV 2-4. 69. 女性. 一致. 一致. B. 2-1. EV 2-4. 72. 男性. 一致. 復路一致. 1(1). C. 2-2. EV 2-4. 66. 男性. 一致. 復路一致. 4(3). D. 3-1. EV 3-4. 73. 女性. 一致. 一致. 24. 7(6). E. 3-1. EV 2-4. 76. 女性. 一致. 一致. 3-2. 12. 8(4). F. 3-2. 圏外. 71. 女性. 一致. 不一致. 4. 51. 12(12). G. 4. 道 4・EV. 11. 女性. 5. 34. 18(18). H. 5. 道 4・EV. 69. 女性. 一致. 一致. 6. 27. 2(2). I. 5. 道 4・EV. 65. 女性. 不一致. 一致. 1棟. 18. 18(18). J. 6. EV 2-4. 87. 女性. 不一致. 一致. 2棟. 12. 12(12). K. 1棟. EV 1-4. 71. 女性. 一致. 一致. 3棟. 12. 12(12). 想定経路と一致しなかった箇所の主な要因. 4棟. 12. 12(12). 整備前:G…登校ルート I・J…道空間の歩きやすさを優先. 地区全体. 248. 108(102). 整備後:B・C・G…復路のみ EV を利用 F…想定利用圏域外. (m). EVを利用 しない場合. EV 利用者の歩行負担量推移 (H12-24). 1,600. I G. EV 整備前の推計値 〃 実態値 . 山手線下側 山手線上側 コミュ住. ※( ) 内は想定利用圏域内の世帯数. 不一致 復路一致. 1,400. EV 整備後の推計値 〃 実態値 . 整備前後の推移 一致しない経路. 1,200. EVを利用 しない場合. 1,000. H A. 歩行時の安 全面に配慮. 見通し良い 経路を優先. J B 800 E K D. 想定利用 圏域外. 縦軸:EV 整備後の . C. 600. ※想定利用施設:EV…エレベーター 道 4…新設道路 4 号線. 登校ルート 上での誤差. EVを利用 しない場合. 歩行負担量 (m) 横軸:EV 整備前の. F 400 400. 歩行負担量 (m) 600. 800. 1,000. 1,200. 1,400. 1,600 (m). 4. 対象地区におけるモビリティ環境の実態. 5. まとめ. 4-1. 斜面移動支援システムの利用圏域. 5-1. 歩行負担量による住環境評価指標の有効性と課題. 当事業により整備が行われたコミュニティ住宅(八幡. 本研究では、歩行負担量による評価指標を用いる. まるやま団地)に附設された斜面移動支援システムは、. ことで斜面地住環境整備事業によるモビリティ環境. 利用登録をすることで団地以外の地域住民にも開放し. の改善効果とその影響が及ぶ圏域を推計した。さら. ており、平成 25 年 1 月時点で団地 54 世帯と地域 54. に、その結果を住民の日常的な移動に関する実態と. 世帯、整備地区外の 3 世帯と 8 団体が登録済みである。. 照合してみると、整備施設の想定利用圏域に対する. 前章で示した EV の想定利用圏域と実際の利用登録. 利用者の居住範囲と移動経路は概ね一致した。. 世帯の分布は概ね一致しており、地区内で利用登録. この歩行負担量による評価指標に加え、歩行空間の. 済みの 108 世帯のうち 102 世帯は想定利用圏域内に. 安全性や快適性など歩きやすさについて合わせて検討. 在住している(表 3)。歩行負担量による評価指標は、. することで、モビリティ環境の改善に結びつく斜面地. 移動負担の軽減を目的とした地域施設の配置計画にお. 住環境整備計画の指針として、整備効果の検証を行う. いて改善効果の及ぶ圏域を予測できる可能性を持つ。. 上での評価軸として、有効な指標になると考えられる。. 4-2. エレベーター利用者の移動に関する実態. 5-2. 斜面住宅地におけるモビリティ環境改善手法. 以上を踏まえ、EV 利用者の日常生活における移動. 歩行者が移動負担の少ない経路を利用しない場合、. の実態を捉えるため、各エリアから想定利用施設の. 一方で登下校をする子どもや身体機能の低下した高齢. 異なる 11 世帯を抽出してヒアリング調査を実施した. 者に目を向けると、道路幅や見通し、路面状態などが. (平成 25 年 1 月)。調査方法としては、予め各世帯の. 良好な経路を優先して負担が増すことがある。. 最小歩行負担経路を算出した上で、EV 利用者が日常. 今後の斜面住宅地におけるモビリティ環境改善手法. 的に移動する経路と比較を行い、経路が一致しない. としては、歩行上の負担が少ない道空間を見出し十分. 箇所については経路選択の理由を尋ねた(表 4)。. に活用した上で、そこに不足する要素を補うような. EV 整備前は 11 世帯中 8 世帯が、整備後は 7 世帯が. 改善を行うことにより、整備上の制約が多い斜面地で. 行先や駐車場位置などに左右されるが予め想定した. 効果的な住環境の向上に繋げることができるだろう。. 負担量の少ない経路を移動していた。なかには EV の. ( 謝辞 ) 本研究にあたり、丸山・大谷地区住民の皆様、EV 管理運営委員、開発 事務所には多大なご協力を頂きました。ここに記して深謝いたします。 ( 参考文献 ) 1)「地形による負荷と年齢による身体能力の変化を勘案した歩行換算 距離の検討 - 地形条件と高齢化を勘案した地域施設配置モデル -」 佐藤 栄治ほか 日本建築学会計画系論文集 第 610 号 2)「人間工学基準数値式便覧」 佐藤 方彦 技報堂 1992 3)「住環境 - 評価方法と理論 -」 浅見 泰司編 東京大学出版会 4)「斜面住宅地における定住環境形成に関する研究」 志賀 勉ほか 日本建築学会大会学術講演梗概集 1999 5)「画地利便性からみた斜面地住環境整備事業の評価に関する研究」 上野 秀之 平成 23 年度九州大学修士論文 6)「丸山・大谷地区斜面地住環境整備事業 報告書」 (株)醇建築まちづくり研究所 1997 ~ 2011. 待ち時間を嫌い時間帯に応じて隣接する階段道と使い 分けをしたり、復路でタクシーに乗る世帯もみられた。 想定した移動経路と一致しなかった箇所の主な要因 としては、道路幅や見通しが良く歩きやすい経路を 優先するケース、路面の状態や階段道の段差、防犯灯 の有無など道空間の安全性に配慮するケース、想定 利用圏域外の世帯でも近隣に住む親族や友人宅を訪ね たり、地域の集会や回覧の配布など地区内で移動回数 を重ねる往来の際に EV を利用するケースがあった。 41-4.
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