国立国語研究所学術情報リポジトリ
〈全文〉 米国議会図書館蔵『源氏物語』翻字本文 匂宮〜夢浮橋 : 平成24年度 人間文化研究連携共同 推進事業「海外に移出した仮名写本の緊急調査(第 2期)」報告書
ページ 1‑303
発行年 2013‑03‑25
URL http://doi.org/10.15084/00002606
平成24年度人間文化研究連携共同推進事業
「海外に移出した仮名写本の緊急調査(第2期)」報告書
米国議会図書館蔵『源氏物語』翻字本文
匂宮〜夢浮橋
高田智和 斎藤達哉 小木曽智信 伊藤鉄也 豊島秀範 編
平成25年3月
人間文化研究機構 国立国語研究所
O
は
しがき
本 報 告 書は︑米国議会図書館アジア部日本課︵巨庁冨昌亀O︒コσqress︐
J
ap
ane se Rare Book Collection︶が所蔵する﹃源氏物語﹄ ︵以下︑
議会図書館本﹃源氏物語﹄︶の﹁匂宮﹂から﹁夢浮橋﹂までの十三
巻 の 翻 字 本
文を提供するものである︒二〇=年三月に﹁桐壼﹂か
ら﹁藤裏葉﹂までの三十三巻︵いわゆる﹁第一部﹂︶︑二〇一二年
三月に﹁若菜上﹂から﹁幻﹂までの八巻︵いわゆる﹁第二部﹂︶の
翻 字 本
文を刊行し︑本報告書はその続きとして最後の﹁第三部﹂を
公 表 するものである︒
議 会図書館本﹃源氏物語﹄ ︵↑○否oコ葺o戸Zo°2oo8427768︶は︑二
o o
九 年 に米国議会図書館の所蔵となるまで知られていなかった学 界 未 紹 介 の
新出資料である︒後装の濃青色表紙︑料紙鳥の子︑列帖
装立ての全五十四冊揃いの書写本である︒古筆了仲による正徳元年
(
1
七=年︶の極めがあり︑それによれば︑五辻諸仲︵一四八七
年〜一五四〇年︶の書写とされる︒本文の系統などについての詳細
な検討は︑今後の研究を侯たねばならないが︑まずは︑議会図書館
本
『源
氏
物語﹄の翻字本文と書誌調査報告を公表する次第である︒
議 会 図 書
館本﹃源氏物語﹄の原本調査は︑二〇一二年八月までに︑
予 備 調査一回︑詳細調xulil回の計四回実施した︒
〔予 備
調査︺ 1101O年一月二五日〜二七日
〔詳 細 調査︺ 一回目二〇=年一月二四日〜二五日
二 回目 二〇一1I年I l月 1日〜三日
三回目 二〇一二年八月二七日〜二九日
三 回にわたる詳細調査は︑新出資料である議会図書館本﹃源氏物
語﹄の基礎調査の意義とその必要性により採択された人間文化研究
機 構
の
人間文化研究連携共同推進事業︵平成二十二年度﹁海外に移
出した仮名写本の緊急調査﹂︑平成二十三−二十四年度﹁海外に移出
した仮名写本の緊急調査︵第二期︶﹂︑いずれも代表者・高田智和︶
の 一部として実現した︒
本 報 告 書 に 公 表 する翻字本文は︑主としてl 10 11 l年八月の詳細 調 査 の結果をふまえたものである︒この調査には︑高田智和︵国立
国語研究所︶︑斎藤達哉︵専修大学︶︑神田久義︵國學院大學︶の
三名が参加した︒
また︑議会図書館本﹃源氏物語﹄の翻字本文は︑国立国語研究所
ホームペー・N. ︵http://ww.ninjal.ac.jp/LCg°コご\︶において︑オ ンライン公開も行う︒この翻字本文が︑源氏物語本文研究や仮名表 記 研 究 の 資
料として︑一助となれば幸いである︒
議
会図書館本﹃源氏物語﹄の原本調査にあたっては︑米国議会図
書 館 ア ジ ア部日本課の伊東英一氏︑中原まり氏︑PIPHER・Y清
代 氏 に
格 別 の
御高配を賜った︒ここに記して謝意を表す︒
平 成 二 十 五 年 三月
高田智和︵国立国語研究所︶
.
[[
次 u
米 国 議
会図書館蔵﹃源氏物語﹄
米国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄翻字本文
手蜻浮東宿早総椎橋竹紅匂 習蛉舟屋木蕨角本姫河梅宮
夢 浮 橋 米国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄擦消一覧
米国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄書入一覧
に つ い て
︵高田智和・斎藤達哉︶⁝:⁝⁝⁝⁝⁝・⁝⁝⁝⁝⁝⁝
︵匂宮〜夢浮橋︶ ︵神田久義・斎藤達哉︶⁝⁝⁝⁝⁝
︵附﹁薄雲﹂巻末注記︶
︵神田久義・斎藤達哉・小木曽智信・高田智和︶⁝⁝
247 23921619617214911610877 61 45 28 22 15 11 1
287
H I
米国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄について
高田智和・斎藤達哉
米国議会図書館アジア部日本課︵巨汀胃ぺ︒市○呂σqress︐ Japanese
R
a reBook Co!lection︶が所蔵する﹃源氏物語﹄写本︵﹇OO︒コ言︒戸
No. 2008427768︑以下﹁議会図書館本﹂︶は︑二〇〇人年に米国議会
図書館の所蔵となるまで知られていなかった学界未紹介の新出資料゜
で ある︒桐壼から夢浮橋まで全五十四巻揃︵五十四冊︶の完本である︒
議
会図書館本には︑古筆別家第三代の了仲︵︸六五六〜一七三六︶
による正徳元年︵一七一一年︶の折紙が添えられている︒極書の全文 は 次 のとおりである︒
源 氏 物 語 四 半 本 全 五 辻 殿 諸仲卿真筆 外 題 三 条 西 殿 実 隆 公
御一筆無疑者也
正 徳 元 年
五月下旬 古筆了仲
録「
宮斎﹂印︵陽刻︶
これによると︑議会図書館本の書写者は五辻諸仲︵一四八七〜l五
四o︶︑外題は三条西実隆︵一四五五〜一五三七︶の手になるものと
される︒米国議会図書館の蔵書目録では︑書写年代を三条西実隆没年
l
の五 三 七 年 以 前 に 比 定している︒
尊卑分脈などによれば︑五辻諸仲は︑宇多源氏の流れをくむ五辻家
に
生まれ︑晩年の天文七年︵一五三八年︶に従三位に叙せられ︑五辻
家を堂上家に加えた人物である︒神田久義﹁米国議会図書館本﹃源氏
物語﹄の書写形態に関する一試論﹂︵豊島秀範編﹃源氏物語本文の研
究﹄︑國學院大學文学部日本文学科︑二〇=年︶では︑﹃実隆公記﹄
の 記 述
から︑五辻諸仲と三条西実隆との交流を明らかにし︑伝五辻諸
仲筆短冊の筆跡を検討している︒参照されたい︒
議会図書館本は塗箱に納められ伝来した︵議会図書館では︑現在︑
塗 箱
から本を出して別々に保存している︶︒塗箱のはめ込み式の前蓋
には︑折紙と同じ内容が記されている︒
源 氏 全 部 五 十 五 冊 五 辻 殿 諸仲御筆 外 題 三 条 西 殿 実隆御筆
塗箱の写真を図1︑寸法を図2に示す︒ v
図1 塗箱
轍
み・ヨ透 図2 塗箱の寸法
天板
70
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前 面
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側面︵断面図︶
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2
なお︑議会図書館本には︑
手 掛 かりは残されていない︒
蔵書印や識語など︑旧蔵者や伝来を示す
さて︑議会図書館本の書誌について述.へる︒
装丁は列帖装である︒無地の濃青色表紙の中央に柿渋色の題命を付
す︒料紙は鳥の子である︒寸法は各巻によって違いがあるが︑縦二五
o
〜二五ニミリメ−トル︑横︑六八〜一ヒ○ミリメートルである︒表 紙 左 端 には︑全巻にわたって押八双︵左端から四ミリメートル付 近 に 縦 に 上
から下まで引かれた直線のへこみ︶がある︒袋綴装の場合︑
押 八 双 は 十 七 世 紀 末 に は
見られなぐなっていくとされるから︵橋口侯
之 介
『和 本
入門−千年生きる書物の世界1﹄平凡社︑二〇〇五年︑堀
川貴司﹃書誌学入門−古典籍を見る・知る・読むー﹄勉誠出版︑二〇
l o
年など︶︑現在の表紙は十七世紀までのものとなろうか︒
表 紙 見 返 の 右 端
には︑全巻にわたって︑糊の跡と剥がされた和紙の
一部が残っていて︑表紙の付け替えがあったものと見られる︒また︑
見 返 紙 の裏上端中央︵表紙と見返紙の間︶には︑全巻にわたって付箋
が貼られ︑巻名が記されている︒表紙の付け替え時の仮題愈であると
考えられる︒図3は夢浮橋の付箋である︑﹁ゆめのうきはし﹂の﹁ゆ﹂
の 字
画が一部欠けており︑これは化粧裁によるものである︒議会図書
館
本は一度乃至二度の改装を経ている︒
内題︑尾題はなく︑巻名を記すのは外題と仮題命のみである︒巻名
に つ い て
は後述する︒ 図3 夢浮橋の仮題愈
;購
1茎ジ..
次 の表1に︑各巻の寸法︵縦Cm×横Cm︶︑墨付丁数︑遊紙の丁
数︑括の数︑括内の丁数︵見返︑裏見返もI丁とした︶︑半丁の行数︑
本 文
の総行数︑特殊表記和歌︵後述︶の数をまとめて示す︒
3
表1 議会図書館本の書誌概略
巻名 寸法(cm) 墨付丁数 遊紙丁数 括数 括内丁数 丁行数 総行数 特 表記和歌数
1桐壼 25.0×17.0 25 前1 3
8128 89
4292∋木 25.2×17.0 41 前1 4
12121010 8910
7253空 25.2×16.8 9 前1 2
66
9 1474夕顔 25.2×16.8 37 前1 3
141214
9 6735若紫 25.2×16.8 29 後1 4
8888
10 5736末摘花 25.2×16.8 ・25 後1 3
1288
9 4417紅葉賀 25.2×17.0 19 後1 2 1012 10 379
8花宴 25.2×17.0 8 2
64
10 1529 25.2×17.0 32 3
121012
10 63510賢木 25.2×17.0 36 3
121214
10 70111花散里 25.2×16.9 4 前1後1 2
44
10 6612須磨 25.2×17.0 30 3
121010
10 593 813明石 25.2×16.9 28 3
101010
10 558 814濡標 25.2×17.0 24 3
8108
10 472 815蓬生 25.2×17.0 16 2 108 10 317
16関屋 25。2×16.9 6 2
44
9 9917絵合 25.2×16.9 14 2
88
10 26918松風 25.2×16.9 16 2 810 10 312
19薄雲 25.2×16.8 22 3
888
10 43420朝顔 25.2×17.0 14 2
88
10 278 321少女 25.2×16.9 38 4
10101010
10 74822玉多 25,2×16.9 30 3
101210
1011 596 323初音 25.2×17.0 10 2
66
10 19624古 25.2×17.0 16 2 810 10 307 3
25蛍 25.2×16.9 14 2
88
1011 281 526常夏 25.2×16.8 16 2 108 1011 308
27舞火 25.1×16.9 5 後1 2
44 89
8328野△ 25.1×16.9 14 2
88
10 269 329行 25.1×16.9 20 3
868
10 392 13確≦袴 25.1×16.9 12 2
68
10 23631真木柱 25.1×16.9 28 3
101010
10 55932 25.1×16.9 14 2
88
10 27133藤一 25.2×16.9 20 2 1012 10 386
34若古上 25.2×16.9 77 後1 4
20202020
9 137635若菜下 25.2×16.9 72 4
20161820 89
128236 25.2×16.9 30 3
101210
1011 60337横笛 25.1×16.9 12 2
68 101112
24438鈴虫 25.1×16.9 14 2
88
910 25439ター 25.1×16.9 46 3
161220
10 90340 こ 25.1×16.9 14 2
88
910 27541幻 25.2×17.0 16 2 108 810 302
42匂宮 25.1×16.9 10 2
66
10 19643 、 25.1×16.9 10 2
66
10 18944ケ河 25.2×16.9 32 4
81088
910 623 645.タ 25.2×16.9 28 3
101010
10 55546 25.2×16.9 28 4
10668
10 553 447総角 25.2×16.9 63 後1 3
182424
9 112948 蕨 25.2×16.9 14 2
88
910 27249宿木 25.2×16.8 60 4
16161614
9 106450東屋 25.2×16.8 42 4
10121210 91011
83351浮舟 25.2×16.8 44 4
10121212
10 874 852蜻△ 25.1×16.9 36 3
121214
1011 727 253手羽 25.2×16.9 42 4
14101010 91011
81454夢浮. 25.2×16.9 12 2
86
910 2294
議
会図書館本は︑半丁あたりの書写行数が一定していないという特
徴 がある︵墨付最終丁pa除V︶i九行乃至十行が基本のようであるが︑
表1に示すように︑行数が一定していない巻は︑桐壼︑帯木︑玉量︑
蛍︑常夏︑篶火︑若菜下︑柏木︑横笛︑鈴虫︑御法︑幻︑竹河︑早蕨︑
東屋︑蜻蛉︑手習︑夢浮橋の十八巻と︑全体の三分の一に及ぶ︒特に
後 半 の 巻 に
傾向が顕著である︒
書 写
行数が一定しないと言っても︑ランダムに行数が変わるわけで
はなく︑行数の変わり方は大きく二種類に分けられる︒桐壼のように︑
冒頭から四丁表までは八行︑四丁裏からは九行と︑巻の途中で行数を
変える場合と︑玉髪のように︑二十四丁裏のみが十l行で︑ほかは一
定して十行となる場合である︒後者は︑例外的に行数の異なる丁があ
るだけで︑巻を通しての基本の行数は決まっていると見るべきである︒
帯木︑玉震︑常夏︑若菜下︑幻の五巻がこれにあたる︒
一方︑途中から書写行数を変えるものは︑残りの書写量を勘案しな
がら︑行数調整を行ったものとみられる︒その巻の書写のために用意
した紙数︵括︶に収まるように︑あるいは︑白丁をつくらないように
書写をした結果︑巻内の半丁ごとの行数に変動が生じたのであろう︒
しかし︑調整しながら書写をしても︑見開き左右両丁の行数にばらつ
きが出ないようにしている考えられる︒巻末となる墨付最終丁を除い
て︑見開き左右両丁の行数が異なる箇所は︑蛍の十1丁裏〜十二丁表︑
舞火の十1I丁裏〜十三丁表︑横笛の十丁裏〜十1丁表︑同+1丁裏〜
十 二
丁表︑手習の八丁裏〜九丁表のわずかに五例のみである︒議会図
書 館 本 の 書 写 に お い
ては︑見開き左右両丁がひとつの単位として意識
されていたと想定される︒
議
会図書館本の表記の特徴として︑特殊表記和歌が挙げられる︒一
行 で 続けて書かずに︑割注のような二行書を交えた表記方法を用いて
いる︒ここでは便宜的に特殊表記和歌と呼称する︒
蜻蛉 十一ウ
きみもしのひねや なくらん
か ひもなき
し てたのさを
に
うかよ は
表1から︑特殊表記和歌が見られる巻は︑須磨︑明石︑濡標︑朝顔︑
玉婁︑胡蝶︑蛍︑野分︑行幸︑竹河︑椎本︑浮舟︑蜻蛉の十三巻で︑
和 歌 の 数 は 六 十 二 首
である︒特殊表記和歌の全用例の写真と翻字は︑
神田久義・豊島秀範﹁米国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄特殊表記による 和歌一覧﹂︵斎藤達哉ほか編﹃米国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄翻字本
文ー若菜上〜幻1﹄︑国立国語研究所︑二〇一二年︶に収録されてい
る︒また︑特殊表記和歌に関する考察には︑豊島秀範﹁アメリカ議会
図書館本の和歌表記の特徴−和歌の一行散らし書きを中心にー﹂︵﹃國
學 院 大 學 大
学院平安文学研究﹄第二号︑二〇一〇年︶︑神田久義﹁米
国議会図書館本﹃源氏物語﹄の書写形態に関する一試論﹂︵豊島秀範
編
源『
氏 物 語 本 文 の
研究﹄︑國學院大學文学部日本文学科︑二〇=
年︶がある︒
5
議
会図書館本には︑全巻にわたって︑多数の擦消箇所を確認できる︒
紙を削って文字を消し︑改めて文字を書き直している︒擦消が書写時
のものとすれば︑親本の本文を精密に写し取ろうとする書写態度がう か がえる︒原本調査によって確認した擦消箇所は︑斎藤達哉・神田久
義・豊島秀範・菅原郁子﹁米国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄擦消一覧︵桐
壷〜藤裏葉︶﹂︵斎藤達哉・高田智和編﹃米国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄
翻刻−桐壼〜藤裏葉1﹄︑国立国語研究所︑二〇1 1 ur︶︑神田久義・
斎 藤 達哉﹁米国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄擦消一覧︵若菜上〜幻︶﹂︵斎 藤 達 哉 ほ
か編﹃米国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄翻刻ー若菜上〜幻1﹄︑
国立国語研究所︑二〇一1lur︶︑神田久義・斎藤達哉﹁米国議会図書
館 蔵
源『
氏
物語﹄擦消一覧︵匂宮〜夢浮橋︶﹂︵本報告書に収録︶に一
覧されている︒今後の分析が待たれる︒
次に︑議会図書館本の書入について述べる︒議会図書館本には︑墨
筆︑朱筆︑鉛筆による書入がある︑
鉛筆による書入は近代以降のもので︑賢木︑蓬生︑少女︑玉璽の四
巻 にそれぞれ一例ずつである︒いずれも鉤記号を用いて︑何らかの区
切りを示している︒
少 女 十一ウ
ぴロ めび
つ「とへたり﹂と﹁風のちかう﹂の間に鉤記号
朱筆による書入は桐壼に二例だけ見られる︒
注している︒
二
例とも和歌の詠者を
桐壼 五ウ
鷺.メ雀きパ︐パ遵
か「きりとてわかるAみちのかなしきにいかまほしきはい
のちなりけり﹂に﹁更衣﹂
桐壼 九ウ
.
ぶ竺︑
芸
み「
や 木
のs露ふきむすふ風のをとにこはきかもとをお
もひこそやれ﹂に﹁きりつほのみかとJ
6
墨筆による書入が最も多く︑帝木︵十二例︶︑空蝉︵四例︶︑夕顔︵五
例︶︑若紫︵三例︶︑末摘花︵二例︶︑紅葉賀︵二例︶︑須磨︵十1例︶︑
明石︵二例︶︑濡WH ︵1例︶︑薄雲︵一例︶︑朝顔︵一例︶︑少女︵一例︶︑
玉 髪
(三例︶︑初音二例︶︑藤袴︵一例︶︑若菜上︵二十八例︶︑若菜
下
(五例︶︑柏木︵四例︶︑鈴虫︵三例︶︑夕霧︵三例︶︑御法︵三例︶︑
幻
(一例︶︑紅梅︵一例︶︑竹河︵六例︶︑椎本︵三例︶︑総角︵八例︶︑
宿 木
(八例︶︑東屋︵二例︶︑浮舟︵四例︶︑蜻蛉︵1ilss︶と︑三十巻
に わ た っ て 百 三 十 二 例 である︒
墨筆による書入には︑異本注記︑平仮名表記に漢字表記を注するも
の︑本文訂正︑片仮名による読み仮名︑濁音符などがある︒
o
異 本 注 記 の 例 若な 紫 六ウ
旛
「よりせさせ﹂に﹁よせさせイ﹂
o
平仮名表記に漢字表記を注するものの例
若紫 十八ウ
「さえ﹂に﹁才﹂
o本文訂正︵補入︶
御 法 一オ
7 パ ︐^
す
F
み か
にこりぬへく﹂を﹁すみかにこもりぬへく﹂に
本
o
文 訂 正
(見消︶
椎 本 三オ
堂.
→
さへ
ふ
r
たわたり﹂を﹁ふなわたり﹂に
o
片仮名による読み仮名
総角 四十七ウ
7
e オ竃
「左﹂に﹁ピタリ﹂
○濁音符
御 法 四ウ
ぐヨ
}
﹁なたいめん﹂
4
の
「た﹂に圏点
墨筆による書入は︑筆跡から二筆と見られる︒異本注記や平仮名表
記 に 漢 字 表
記を注するものが一筆︑本文訂正︑片仮名による読み仮名︑
濁音符がもう一筆と思われる︒さらに検討を要する︒
朱筆と墨筆とを合わせても︑書入の数は百三十四例にすぎない︒書 入 のない巻もあり︑議会図書館本の書入は︑総じて疎らである︒議会
図書館本は︑高度な学習本として享受されてきたものではなさそうで
ある︒
書
入 以 外 にも︑議会図書館本には旧蔵者の痕跡を見出すことができ
る︒葵には薄紅色の不審紙がある︒鈴虫と御法には︑上欄に和紙を剥
がした跡がある︒かつては付箋があったのであろう︒不審紙や付箋の
跡 に つ いて︑詳細な確認は行っていないので︑他日の調査を期したい︒
なお︑議会図書館本の書入は︑神田久義・斎藤達哉・小木曽智信・
高田智和﹁米国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄書入一覧﹂︵本報告書に収
録︶に全用例を掲げているので︑参照されたい︒
前に︑議会図書館本には︑外題のほかに︑見返裏に仮題命があると
述べた︒外題と対照させて巻名を示すと次のようになる︒便宜的に一
段目に通行の漢字表記による巻名を示し︑二段目には外題による巻名︑
三
段目には仮題愈による巻名を記す︒
桐 壼 帯 木 空 蝉 夕顔若
紫 末 摘 花 紅葉賀 花宴
葵
賢 木
花散里
須磨 きりつほ
はsき木
うつせみ
ゆふかほわ
か むらさき す ゑ つ む 花
もみちの賀
花 のえん
あふひさか木
花ちるさと すま
きりつほは
sきs
うつせみはsきンのならひ一
ゆふかほはsきsのならひ二
わ か むらさき す ゑ つ
む花わかむらさきのならひ
もみちのか
花のえんあ
ふ ひ
さかき
花ちるさと
すま
8
明 石 濡 標 蓬 生 関屋絵
合 松 風
薄雲
朝顔
少 女 玉 璽
初音胡蝶
蛍 常夏 舞 火 野 分 御 幸 藤 袴 真 木 柱 梅 枝
藤裏葉
若 菜 上
あかしみをつくし
よもきふせき屋
ゑあはせ 松 か せ
うす雲あさかほ
をとめ玉 か つら は つね
こ て ふ ほ たる とこなつか
sり火野
わき みゆき ふちはかま 真 木 はしら む め かえ
藤のうら葉
わ か 菜 上
あかしみをつくし
よもきふみをつくしのならひ一
せきやみをつくしのならひ二
ゑあはせ
まつかせうすくも
あさかほ
をとめたまかつら は つね 玉 か つらのならひ一
こ て ふ 玉 か
つらのならひ二
ほ
たる玉かつらのならひ三
とこなつ玉かつらのならひ四
かsりひ玉かつらのならひ六
野
わき玉かつらのならひ六
み
ゆき玉かつらのならひ七
ふちはかま玉かつらのならひ八
まきはしら玉かつらのならひ九
む め かえ
ふちのうらは
わ かな上
若 菜 下
柏木横笛
鈴虫
夕.霧
御 法
匂宮 幻
紅 梅 竹 河 橋 姫 椎 本
総角
早 蕨 宿 木 東 屋 浮 舟
蜻蛉
手習 夢 浮 橋
わ かな下 かしは木
よこ笛すsむし
ゆふきりみ
のり
まほろし
に ほ ふ宮 こうはいたけ河
はしひめ
しゐかもと
あけまき
さわらひやとりき
あつま屋うきふね
かけろふ 手ならひ 夢 のうき橋
わ か な 下 かしはき
よこふえす﹂むしよこふえのならひ
ゆふきりみ
のり
まほろしに
ほ ふ ひ
やうふけやう
こうはいたけかは はしひめ
しゐかもと
あけまきさわらひ
やとりき
あ つまや
うきふね
かけろふ てならひ
ゆめのうきはし
漢 字
/
仮名などの表記の違いを除いて︑外題と仮題命とで巻名が異
9
なっているのは︑空蝉︑夕顔︑末摘花︑蓬生︑関屋︑初音︑胡蝶︑蛍︑
常夏︑舞火︑野分︑行幸︑藤袴︑真木柱︑鈴虫︑匂宮の十六巻である︒
匂宮の仮題倉では︑異名の﹁にほふひやうふけやう︵匂兵部卿︶﹂が 記
載されている︒そのほかの十五巻では︑﹁うつせみはsきsのなら
ひ一﹂﹁ゆふかほはsきsのならひ二﹂のように︑巻名に並びの巻で
あることが記されている︒
源 氏 物 語
に は 並 び の 巻 が
知られている︒池田亀鑑編﹃源氏物語事典﹄
(東 京
堂出版︑一九六〇年︶に整理された並びは︑次の通りである︒
二︑ハハキギ ニノナラビ︑ウツセミ︑ユフガホ
三︑ワカムラサキ 三ノナラビ︑スヱツムハナ
+1︑ミヲツクシ 十1ノナラビ︑ヨモギフ︑セキヤ
十七︑タマカヅラ 十七ノナラビ︑ハツネ︑コテフ︑ホタル︑ト
コナツ︑カガリビ︑ノワキ︑ミユキ︑フヂバカマ︑マキハシラ
ニ十二︑ヨコブエ ニ十ニノナラビ︑スズムシ
ニ
十七︑ニホフ匂兵部卿 二十七ノナラビ︑コウバイ︑タケガハ
仮
題余の並びの立て方は︑紅梅と竹河を匂宮の並びとしていない点
を除くと︑既知のものと一致している︒
議
会図書館本の見返裏の仮題命は︑改装時のものと推定されるので︑
可 能
性として︑改装前の巻名を写し取った場合と︑改装者が巻名をつ
けた場合とが考えられる︒諸伝本と古注釈での並びの立て方を精査す ることで︑解決の糸口が得られるかもしれない︒
議
会図書館本の本文系統について︑伊藤鉄也﹁米国議会図書館アジ
ア
部日本課蔵﹃源氏物語﹄の調査概要﹂︵斎藤達哉・高田智和編﹃米
国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄翻刻−桐壼〜藤裏葉ー﹄︑国立国語研究
i
EI︑ 11O1 1 ur︶では︑﹁今後さまざまな分野から検討が加えられるは ず
である︒今は︑伊藤の分類試案︿乙類﹀とする︒従来の︿別本群﹀
に 近 いものである﹂︑と︑初音での校合結果をもとに︑本文系統の見通
しを述べている︒
また︑豊島秀範﹁﹁柏木﹂巻主要十一本対校の特徴−巻別稿本の具
体 例に即してー﹂ ︵豊島秀範編﹃源氏物語本文の再検討と新提言﹄︑國
學院大學文学部日本文学科︑二〇一〇年︶では︑﹁未確認の議会図書
館
本は︑保坂本の本文の近似していること︒国宝源氏物語絵巻詞書の
本
文もそれらに類似するところが多い︒そして︑それらの本文は︑い
わゆる河内本系の本文に近い﹂と述べている︒
議
会図書館本の本文系統については︑源氏物語本文研究者による多
角的詳細な検討が︑今後期待されるところである︒
最
後に︑議会図書館本の原本調査にあたり︑米国議会図書館アジア
部日本課の伊東英一氏︑中原まり氏︑PIPHER・Y清代氏に格
別 の
御高配を賜ったことを記し︑篤く感謝の意を表すものである︒
10
、
米 国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄翻字本文
11
担 当者一覧
〔巻名︺
匂宮紅
梅 竹 河 橋 姫 椎 本
総角
早 蕨 宿 木 東 屋 浮 舟
蜻蛉
手習
夢 浮 橋
〔翻
字
担当者︺
淺川槙子
畠山大二郎杉本裕子
野口あゆみ 楠 木 陽 子 野 崎 花 菜 楠 木 陽 子 野 崎 花 菜 阿部友敬 菅野早月 荻野仁賀秋山あゆみ
阿 部 江 美 子 小 川 千 寿
香 大石裕子
千 川彩佳 伊藤朋 山田友美 大 石 裕 子 杉 本 裕 子
畠山大二郎 小川千寿香
阿 部 友 敬 大 石 裕 子
菅野早月
淺 川 槙 子
〔校
正
担当者︺
小
木曽智信
阿 部 江 美 子 太田幸代 大石裕子 斎藤達哉
高田智和畠山大二郎
大 石 裕 子
斎藤達哉
斎藤達哉 豊島秀範
神田久義 阿 部 江 美 子 小 川 千 寿 香 太田幸代 大石裕子 杉本裕子阿部江美子 伊藤鉄也
13
寸t
凡 例
行移り・丁移り
1 本文の行移りは原本にしたがった︒
2 丁移りは︑その丁の表および裏の冒頭において丁数・表裏を四角囲みで示した︒
3 半丁内の行番号をアラビア数字で示した︒
文
4
321字
5
仮名は現行の平仮名を用いた︒
漢字は現代通用の字体によることを原則とした︒
語を漢字表記にする場合の漢字と︑仮名表記にする場合の字母とが︑
は︑漢字として扱った︒ ︵例︶見くるし︑気しき
繰り返し符号は次のように統一した︒
仮名一文字の繰り返し ︵例︶こsち
漢字一文字の繰り返し ︵例︶人々 複 数 文 字 の
繰り返し ︵例︶ひとノ\
判読できない文字は■で表した︒
一致 するときに
和 21歌
和 歌 は四字下げとした︒
散らし書き風の和歌は︑
配 置を再現することはせず︑末尾に#を付した︒
傍記等
1 傍記等の書込は︑この翻字では省いた︒
2 擦消箇所は︑﹁米国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄擦消一覧︵匂宮〜夢浮橋︶﹂
3 書込箇所は︑﹁米国議会図書館蔵﹃源氏物語﹄書込一覧﹂に掲載した.︑
に 掲 載した︒
図
1版
各巻の表紙および第一丁表の原本写真を掲載した.︑匂宮
t 9
固
1ひかりかくれ給にし後かの御かけにたちつき給ふへき人そこらの御すゑくに2ありかたかりけるおりゐのみかとをかけたてまつらんはかたしけなしたう
3たいの111の宮そのおなしおと﹀にておひ出給し宮のわか君此二ところ
4なんとりくにきよらなる御名とり給ふてけにいとなへてならぬ御あり
5さまともなれといとまはゆききはにはおはせさるへした﹀よの
6つねの人さまにめてたくあてになまめかしくおはするをもと﹀してさる
7御ならひに人の思きこえたるもてなしありさまもいにしへの御ひ﹀き
8けはひよりもや﹀たちまさり給へるおほえからなんかたへはこよなういつく
9しかりけるむらさきのうへの御心よせことにはく﹀みきこえ給しゆへ三の
固
10宮は二条院におはします春宮をはさるやむことなき物に思をきて1たてまつりたまてみかときさきいみしうかなしうしたてまつりかしつき
2きこえさせ給宮なれは内すみをせきせたてまつり給へとなを心やす
3きふる里にすみよくし給なりけり御けんふくし給ては兵部卿の宮と
4聞ゆ女一の宮は六条院みなみのまちのひんかしのたいをそのよの御
5しつらひあらためすおはしましてあさ夕に恋しのびきこえ給二の宮
6もおなしおとAのしんてんを時々の御やすみところにし給て梅つほを
7御さうしにし給て右のおほい殿のなかひめ君をえたてまつり給へりつきの
8はうかねにていとおほえことにをもくしう人からもすくよかになん物し給
9けるおほい殿の御むすめはいとあまた物し給大ひめ君は春宮にま
10
団
いり給てまたきしろう人のなきさまにてさふらひ給そのつきくなを1みなついてのま﹀にこそはと世の人も思きこえきさいの宮ものた
2まはすれと此兵部卿の宮はさしもおほしたらす我御心よりおこら
3さらむ事はすましくもおほしぬへき御けしきなめりおと﹀もなにかは
4やうの物とさのみうるはしういとしつめ給へとまたさる御けしき
5あらんをはもてはなれてもあるましうおもむけていといたうかしつき
6きこえ給六の君なんそのころのすこし我いと思のほり給へるみこ
7たちかんたちめの御心つくすくさはひに物し給けるさまくつとひ8給へりし御かたくなくくつゐにおはすへきすみかともにみなをのく
9うつろひ給しに花ちる里と聞しにひんかしの院をそ御そうふん
10
固
のところにてわたり給にける入道の宮は三条の宮におはしますいま1きさきは内にのみさふらひ給へは院の内さひしく人すくなになりに
2けるを右のおと﹀人のうへにていにしへのためしを見聞にもいける
3かきりの世に心をと﹀めてつくりしめたる人の家ゐなこりなく打
4すてられて世のならひもつねなく見ゆるそいとあはれにはかなさしら
5る﹀を我世にあらんかきりたに此院あらさすほとりのおほちなと人
6影かれはつましうおほしのたまはせてうしとらのまちにかの一条の
7宮をわたしたてまつり給てなん三条殿と夜ことに十五日つ﹀うるはしう
8かよひすみ給ける二条院にてつくりみかき六条院の春のおと﹀とて世
9にの﹀しり給ふて名もた﹀ひとりの御すゑのためなりけりと見えてあかしの
L I
団
10御かたはあまたの宮たちの御うしろをしつ﹀あつかひきこえ給へりおほい1とのはいつかたの御事をもむかしの御心をきてのまAにあらためかはる事なくあま
2ねきおや心につかうまつり給にもたいのうへのかやうにてとまり給へらましかは
3いかはかり心をつくしてつかうまつり見えたてまつらましつゐにいさ﹀かも
4とりわきて我心よせとえしり給ふへきふしもなくてすき給にし事をくち
5おしうあかすかなしう思ひ出きこえ給あめのしたの人院を恋きこえぬ
6なくとにかくにつけても世はた﹀火をけちたるやうに何事もはやなけ
7きせぬおりなかりけりまして殿の内の人々御かたく宮たちなとはさらにも
8きこえすかきりなる御事をはさる物にてかのむらさきの御ありさまを心に
9しめつ︑ようつの事つけて思ひ出きこえたまはぬ時のまなし春の桜の
固
10さかりはけになかAらぬしもおほえまさる物になん二品の宮のわか君は院のき1こえつけ給へりしま﹀に冷泉院のみかととりわきておほしかしつききさ
2いの宮もみこたちなとおはせす心ほそうおほさる﹀まAにうれしき御うし
3うみにまめやかにたのみきこえ給へり御けんふくなとも院にてせさせ
4給十四にて二月に侍従になり給秋うこんの中将になりて御たうはりの
5かAゐなとをさへいつこの心もとなきにかいそきくはへておとなひさせ給おは
6しますおと﹀ちかきたいをさうしにしつらひなとみつから御らんしいれてわかき
7人もわらはしもつかへまてすくれたるをえりとAのへ女の御きしきよりもまは
8ゆくと﹀のへさせ給へりうへにも宮にもさふらふ女房の中にもかたちより
9あてやかにめやすきはみなうつしわたさせ給つ︑院の内を心につけてすみよく
團
10ありよくおもふへくとのみわさとかましき御あつかひけにおほされ給へりこ1ちしのおほい殿の女御ときこえし御はらに女御た﹀一ところおはしけるをなんかきり
2なくかしつき給御ありさまにをとらすきさきの宮の御おほえの年月にまさり給
3けはひにこそはなとかさしもと見るまてなんは﹀宮はいまはた﹀御をこなひを
4しつかにし給て月ことの御ねんふつ年に二たひのみ八かうおりくのたうとき
5御いとなみはかりをし給てつれくにおはしませは此君の出入給をかへりておや
6のやうにたのもしきかけにおほしたれはいとあはれにて院にも内にもめし
7まとはし春宮もつきくの宮たちもなつかしき御あそひかたきにてともなひ
8給へはいとまなくくるしくいかて身をわけてしかなとおほえ給けるをさなご
9こちにほのき﹀給しことのおりくいふかしうおほつかなふ思わたれととふへき人
固
10もなし宮にはことけしきにてもしりけりとおほされむかたはらいたきすちな1れは夜とともの心にかけていかなりける事とかはなにの契りにてかうやすから
2ぬ思そひたる身にしもなり出けんせんくいたいしの我身にとひけむ
3さとりをもえてしかなとそひとりこたれ給ける
4 おほつかなたれにとはましいかにしてはしめもはても
5しらぬ我身そいらふへき人もなしことになれて我身につ﹀かあるこAち
6するもたAならす物なけかしくのみ思めくらしつ︑宮もかくさかりの御かたちを
7やつし給てなにはかりの御道心にてかにはかにおもむき給けんかくおもはす
8なりける事のみたれにかならすうしとおほしなるふしありけん人もまさに
8 L
9もりいてしらしやはなをつ﹀むへき事のきこえにより我にはけしきを
固
10しらする人のなきなめりと思ふ明暮つとめ給やうなめれとはかもなくおほ−とき給へる女の御さとりの程にはちすの露もあきらかに玉とみかきた
2まはん事もかたしいつしのなにかしもなをうしろめたきをわれ此御こ﹀ちを
3おなしうは後の世をたにと思かのすき給にけんやすからぬ思ひに
4むすほ﹀れてやなとをしはかるに世をかへてもたいめんせまほしき心
5つきてけんふくは物うかり給けれとすまひはてすをのつから世中にもて
6なされてまはゆきまて花やかなる御身のかさりも心につかすのみ思ひ
7しつまり給へり内にもは﹀宮の御かたさまの御心よせふかくていとあは
8れなる物におほされきさいの宮はたもとよりひとつおとAにて宮
9たちもろともにおひ出あそひ給し御もてなしおさくあらためたまはす
固
10すゑにむまれ給て心くるしうおとなしうもえ見をかぬ事と院の−おほしのたまひしを思ひ出きこえ給つ﹀をうかならす思きこえ給へり
2右のおと﹀も我御子ともの君たちよりも此君をはこまやかにやむことなく
3もてなしかしつきたてまつり給むかしひかる君ときこえしはさるまた
4なき御おほえなからそねみ給人打そひは﹀かたの御うしろみなくなとあり.
5しに御心さまも物ふかく世中をおほしなたらめし程にならひなき
6御ひかりをまはゆからすもてしつめたまひつゐにさるいみしき世のみたれも
7出きぬへかりし事をもことなくすくし給て後の世の御つとめもをくらかしたま
8はすようつさりけなくてひさしくのとけき御心をきてにこそありしかこの
9君はまたしきに世のおほえいとすきて思あかりたる事こよなくなとそ
10
固
物し給けにさるへくていと此世の人とはつくり出さりけるかりにやと−れるかとも見ゆる事そひ給へりかほかたちもそこはかといつこなんすくれたる
2あなきよらとみゆるところもなきかた﹀いとなまめかしうはつかしけに心のおく
3おほかりけなるけはひの人ににぬなりけりかのかうはしさそ此世の
4にほひならすあやしきまて打ふるまひ給へるあたりとをくへた﹀る
5をひ風まことに百ふのほかもかほりぬへきこ﹀ちしけり誰もさはかり
6になりぬる御ありさまのいとやつれはみた﹀ありなるやはあるへき
7さまくにわれ人にまさらんとつくろひようゐすへかめるをかたはなる
8まて打しのひ立よらむ物のくまもしるきほのめきのかくれあるまし
9きにうるさかりておさくとりもつけたまはねとあまたの御からひつ
10
固
にうつもれたるかうとも﹀此君のはいふよしもなきにほひをくはへ−おまへの花の木もはかなく袖かけ給梅の香は春さめのしつくにも
2ぬれ身にしむる人おほく秋の野にぬしなきふちはかまもとのか
3ほりはかくれてなつかしきをひ風ことにおりなしからなんまさりけるかく
4あやしきまて人のとかむる香にしみ給へるを兵部卿の宮なんこと
5ことよりもいとましくおほしてそれはわさとようつのすくれたる
6うつしをしめたまひあさ夕のことわさにあはせいとなみおまへのせんさい
7にも春は梅の花そのをなかめ給秋はよの人のめつるをみなへしさほ
6 L
8しかの妻にすめる萩の露にもおさく御心うつしたまはす老をわす
9るA菊におとろへゆくふちはかま物けなきわれもかうなとはいとすさ
團
10ましき霜かれのころをひまておほしすてすなとわさとめきて香に1めつる思をなんたて﹀このましうおはしけるかAる程にすこしなよひやはら
2きてすいたるかたにひかれ給へりと世の人は思きこえたりむかしの源氏は
3すへてたて﹀その事とやうかはりしみ給へるかたそなかりしかし源中将
4此宮にはつねにまいりつ︑御あそひなにもましろふ物のねを吹たてけに
5いとましくもわかきとち思かはし給つへき人さまになんれいの
6世の人はにほふ兵部卿かほる中将と聞にく﹀いひつ﹀けてそのころ
7よきむすめおはするやむことなきところくは心ときめきにき
8こえこちなとし給もあれは宮はさまくにおかしうもありぬへき
9わたりをはのたまひよりて人の御けはひありさまをもけし
固
10きとり給わさと御心につけておほすかたはことになかりけり1れせい院の一の宮をそさやうにても見たてまつらはやかひありなんかし
2とおほしけるはは﹀女御もいとをもく心にく︑物し給あたりにてひめ宮
3の御けはひけにとありかたくすくれてよそのきこえもおはしますに
4ましてすこしちかくもさふらひなれたる女房なとのくはしき御ありさま
5のことにふれてきこえつたふるなともあるにいとAしのひかたくおほすへ
6かめり中将は世中をふかくあちきなき物に思すましたる心なれは中々
7心とAめてゆきはなれかたき思や残らんなとおもふにわつらはしき思あらん
8あたりにか﹀つらはんはつ︑ましくなと思すて給さしあたりて心にしむへき
9事のなき程さかしたつにやありけん人のゆるしなからん事なとはまして思よる
ーo
固
へvもあらす十九になり給年三位の宰相にてなを中将もはなれす1みかときさきの御もてなしにた﹀人にてははAかりなきめてたき人
2のおほえにて物し給へと心のうちには身を思しるかたありて物あは
3れになともありけれは心にまかせてはやりかなるすきことおさく
4このますようつの事もてしつめつ﹀をのつからおよすけたる心さまを
5人にもしられ給へり三の宮の年にそへて心をくたき給める院の
6ひめ宮を見るにもひとつ院の内に明暮立なれ給へはことにふれても
7人のありさまを聞見たてまつるにけにいとなへてならす心にく︑ゆへく
8しき御もてなしかきりなきをおなしくはけにかうやうなる人を見んにこそ
9いけるかきりの心ゆくへき妻なれと思なから大かたこそへたつる事なく
固
10おほしたれひめ宮の御かたさまのへたてはこよなくけとをくならはせ1給もことはりにわつらはしけれはあなかちにもましらひよらすもし
2心よりほかのこAうもつかは我も人もいとあしかるへきと思しりて
3物なれよることもなかりけりわかかく人にめてられむとなり給へるあり
4さまなれははかなくなけのこと葉をちらし給あたりもこよなくもて
5はなる﹀心なくなひきやすなる程にをのつからなをさりのかよひ
6ところもあまたになるを人のためにことくしくなともてなさす
o g
7いとよくまきらはしそこはかとなくなさけなからぬ程の中々心やま
8しきを思よれる人はいさなはれつ﹀三条の宮にまいりあつまるは
9あまたありつれなきを見るもくるしけなるわさなめれとたえなん
團
10よりはと心ほそきに思わひてさもあるましききはの人々の−はかなき契りにたのみをかけたるおほかりさすかにいとなつかしう
2見ところある人の御ありさまなれは見る人みな心には﹀かりしやうにて
3みすくさる宮のおはしまさん世のかきりはあさ夕に御めかれす御らむ
4せられ見えたてまつらんをたにと思のたまへは右のおと﹀もあまた物し給
5御むすめたちをひとりくいと心さし給なからえことに出たまはすさす
6かにゆかしけなきなからひなるをとは思なせと此君たちををきてほかには
7なすらひなるへき人をもとめ出へき世かいとおほしわつらふやむことなき
8よりも内侍のすけはらの六の君とかいとすくれておかしけに心はへなとも
9たらひておひ出給をよそのおほえのおとしめさまなるへきしもかくあた
固
10らしきを心くるしうおほして一条の宮のさるあつかひ草も給へらてさうく−しきにむかへとりたてまつり給へりわさとはなくて此人々に見せそめてはかならす
2心と﹀め給ふてん人のありさまをも見しる人はことにこそあるへけれなとおほして
3いといつくしくはもてなしたまはすいまめかしくおかしきやうに物このみせさせて人
4の心つけんたよりおほくつくりなし給のりゆみのかへりあるしのまうけ六条院にて
5いと心ことにし給てみこをもおはしまさせんの心つかひし給へりその日みこたち
6おとなにおはするはみなさふらひ給きさいはらのはいつれともなくけたかくきよ
7けにおはします中にも此兵部卿の宮はけにいとすくれてこよなう見え給四の
8みこひたちの宮と聞ゆるかういはらのは思なしにやけはひこよなうをとり給へり
9れいの左あなかちにかちぬれいよりはとく事はて﹀大将まかて給兵部卿の宮ひた
﹇川団 ︑
ーoちの宮きさきはらの五の宮とひとつくるまにまねきのせたてまつりてまかて−給宰相の中将はまけかたにてをとなくまかて給にけるをみこたちおはします御をく
2りにはまいり給ましやとをしとめさせて御このゑもんのかみ権大納言右大弁
3なとさらぬかんたちめあまたこれかれにのりましりいさなひたて﹀六条院へ
4おはすみちのや﹀程ふるに雪いさ﹀かちりてえんなるたそかれ時也物のねおか
5しき程に吹たてあそひて入給をけにご﹀ををきていかならんほとけの
6国にかはかやうのおりふしの心やりところをもとむと見えたりしんてんのみ
7なみのひさしにつねのことみなみむきに中少将のつきわたり北むきにむ
8かへてゑかのみこたちかんたちめの御さあり御かはらけなとはしまりて物おも
9しろくなりゆくにもとめこまひかはる袖ともの打かへす羽風におまへちかき
ーo梅のいといたうほころひごほれたるにほひのさと打ちりわたれるに
−れいの中将の御かほりのいとAしくもてはやされていひしらすなまめかし
2はつかにのぞく女房なともやみはあやなく心もとなき程なれと香に
3こそけににたる物なかりけれとめてあへりおと﹀もいとめてたしと見
4給かたちようゐもつねよりまさりてみたれぬさまにおさめたるを
5見てみきのすけもすゑくはへ給へやいたうまらうとた︑しや
6とのたまへはにくからぬほとに神のますなと
L Z
NN
紅 梅
;・三懸
_・認ぺ、烈
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ぞ嚢窯
K㌶1二
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騨冷Lξξ二㌶鷺蕊竃§
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鱒 舗蝋
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